説明

検査装置

【課題】長時間を要することなく、被検査体の欠陥を高感度に検出することができる検査装置を提供する。
【解決手段】被検査体の表面の欠陥を検出する検査装置であって、前記被検査体の表面を第1の角度で照明する明視野照明手段と、前記被検査体の表面を前記第1の角度と異なる第2の角度で照明する暗視野照明手段と、前記明視野照明手段の正反射角方向に配置され、前記被検査体の表面からの拡散光を受光するレンズ系と光電変換センサとを有する受光光学系と、前記明視野照明手段で前記被検査体を照明した際の前記光電変換センサの出力信号と前記暗視野照明手段で前記被検査体を照明した際の前記光電変換センサの出力信号との差分を演算する演算手段とを有することを特徴とする検査装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、検査装置に係り、特に、被検査体の表面の欠陥の有無又は表面状態の不均一性による欠陥を検査する検査装置に関する。本発明は、例えば、コート紙、アート紙、キャスト紙等の平面状の被検査体の表面欠陥、又は、複写機、レーザープリンタ等の画像出力装置で使用される電子写真用感光体ドラム、定着装置の定着ローラ等の円筒状の被検査体の表面欠陥の検出に好適である。
【背景技術】
【0002】
被検査体の表面に一様な投射光を照射し、かかる投射光の正反射光及び拡散反射光からなる反射光分布(又はその画像)に基づいて、被検査体の表面欠陥を検査(検出)する検査装置が従来から知られている。
【0003】
初めに、従来の検査装置によるゴミや傷などの欠陥の検出原理について説明する。ゴミや傷などの欠陥の場合、被検査体の平らな表面上の微小凹凸の有無を検出することにより欠陥があるか否かの判別が可能となる。図15は、被検査体TIの表面が平らである場合の反射光分布RLDを示す図であり、図16は、被検査体TIの表面に一つの微小凹凸DFが存在する場合の反射光分布RLDを示す図である。なお、図15及び図16において、ILは入射光、RLは正反射光である。
【0004】
図15を参照するに、被検査体TIの表面が平らである場合、正反射光RLが大半を占めるため、反射光分布RLDは正反射方向に鋭いピークを示す。一方、図16を参照するに、被検査体TIの表面に微小凹凸が存在する場合、散乱光成分が増加するため、反射光分布RLDは正反射方向のピークが鈍った形状となる。
【0005】
このような正反射光成分及び散乱光成分の変化を、光電変換センサを用いて光量の違いとして検出することで、被検査体の表面の微小凹凸による欠陥を検出することができる。なお、正反射光成分を受光する位置に配置されたセンサで検出した画像を明視野画像、散乱光成分を受光する位置に配置されたセンサで検出した画像を暗視野画像という。
【0006】
次に、従来の検査装置による表面状態の不均一性による欠陥の検出原理について説明する。この種の被検査体では、被検査体の表面に微小凹凸を均一に分布させることで、特定の機能を持たせている。ただし、製造時の変動により微小凹凸の分布が不均一になることもある。微小凹凸の分布が不均一になると、被検査体の機能にも不均一が生じ、この不均一の程度が大きくなると機能上の欠陥とみなされる。このような欠陥を検査する検査装置では、微小凹凸の粗密の状態を検出する必要がある。入射光に広がりを持たせると微小凹凸の粗密に応じて反射光分布は変化する。図17は、微小凹凸DFの密度が疎である場合の反射光分布RLDを示す図であり、図18は、微小凹凸DFの密度が密である場合の反射光分布RLDを示す図である。微小凹凸DFを密度で考える場合、反射光分布RLDは、一つ一つの微小凹凸DFで生じる反射光分布を足し合わせたものに相当する。従って、図17及び図18に示すように、微小凹凸DFの密度が疎である場合は、微小凹凸DFの密度が密である場合と比べて正反射光成分が多く、散乱光成分が少ないことがわかる。
【0007】
つまり、被検査体の表面状態の不均一性による欠陥も、正反射光成分及び散乱光成分の光量の違いとして検出することができる。
【0008】
また、一般に、鋭角な角度で被検査面を照明した方が、明視野画像及び暗視野画像共に、光量の変化分を強調して検出できることが知られている。これは、鋭角な角度で照明した方が微小凹凸のピッチによる違いをより反映しやすいからである。
【0009】
これらの技術に関しては、従来から幾つか提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開2004−279367号公報
【特許文献2】特開2003−240730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の検査装置は、円筒状の被検査体をライン型照明で照明すると共に、被検査体を副走査しながら正反射方向に配置されたラインセンサで2次元画像を撮像し、撮像した2次元画像に画像処理を施して欠陥を検出する。かかる検査装置は、ラインセンサとは別のエリアセンサを用いて正反射方向を検出し、ラインセンサを最適な位置に維持することができるため、表面の濃度変化に加えて、微小凹凸や緩やかな凹凸などの欠陥も同時に検出することができる。
【0011】
しかしながら、特許文献1の検査装置は、明視野画像のみを用いて欠陥を検出しているため、欠陥を高感度に検出しにくいという問題を有する。
【0012】
そこで、明視野画像及び暗視野画像の両方を撮像し、欠陥を検出する検査装置も提案されている。特許文献2は、半導体チップに対して垂直に光を入射して垂直位置に配置された撮像素子で明視野画像を撮像する共に、鋭角に光を入射して鋭角位置に配置された撮像素子で暗視野画像を撮像し、半導体チップの表面の異常を検出する検査装置を開示している。
【0013】
しかしながら、特許文献2の検査装置は、暗視野画像では光を鋭角に入射しているため、欠陥を高感度に検出することができるが、明視野画像では光を垂直に入射しているため、欠陥を高精度に検出しにくいという問題を有する。
【0014】
被検査体に対して鋭角に光を入射し、かかる光を射出する照明手段と対称な位置に配置した明視野画像用センサとそれとは異なる位置に配置した暗視野画像用センサとを用いて撮像すれば、明視野画像及び暗視野画像共に高感度な検出をすることができる。このような検査装置(撮像系)の一例を図19に示す。図19において、S1は明視野画像用センサ、S2は暗視野画像用センサ、LSは照明手段である。
【0015】
しかしながら、図19に示す検査装置は、画像の視点位置が異なるため、明視野画像と暗視野画像との間で欠陥位置の対応がとれないという問題を有する。かかる問題は、明視野用照明手段及び暗視野用照明手段の2つの照明手段を用いて1つのセンサで撮像することで回避することができるが、2つの照明手段の最適な配置を考える必要がある。
【0016】
更に、図19に示す検査装置は、明視野画像用センサがローアングルで画像を撮像するため、焦点面が検査面に対して斜めになり、合焦範囲が狭くなるという問題も有する。かかる問題は、レンズのフォーカス位置をずらしながら複数回撮像することで回避することができるが、撮像に時間がかかり、検査時間が長くなってしまう。また、レンズの絞りを絞り、焦点深度を深くすることで合焦範囲は拡大するが、十分な光量を得るために照明時間を長くする必要があり、同様に、検査時間が長くなってしまう。
【0017】
そこで、本発明は、長時間を要することなく、被検査体の欠陥を高感度に検出することができる検査装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての検査装置は、被検査体の表面の欠陥を検出する検査装置であって、前記被検査体の表面を第1の角度で照明する明視野照明手段と、前記被検査体の表面を前記第1の角度と異なる第2の角度で照明する暗視野照明手段と、前記明視野照明手段の正反射角方向に配置され、前記被検査体の表面からの拡散光を受光するレンズ系と光電変換センサとを有する受光光学系と、前記明視野照明手段で前記被検査体を照明した際の前記光電変換センサの出力信号と前記暗視野照明手段で前記被検査体を照明した際の前記光電変換センサの出力信号との差分を演算する演算手段とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、長時間を要することなく、被検査体の欠陥を高感度に検出することができる検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
本発明の検査装置は、被検査体を第1の角度(鋭角)で照明する明視野照明手段と、被検査体の表面を第1の角度と異なる第2の角度で照明する暗視野照明手段とを有する。また、本発明の検査装置は、明視野照明手段の正反射角方向に配置され、被検査体の表面からの拡散光を受光するレンズ系と光電変換センサとを有する受光光学系を有する。更に、本発明の検査手段は、明視野照明手段で前記被検査体を照明した際の光電変換センサの出力信号と暗視野照明手段で被検査体を照明した際の光電変換センサの出力信号とを比較演算する演算手段とを有する。
【0023】
本発明の検査装置は、被検査体を鋭角に照明する明視野照明手段と、かかる鋭角に対して小さな角度差の角度で被検査体を照明する暗視野照明手段の2つの照明手段を用いることで、同じ視点位置から明視野画像と暗視野画像を撮像することができる。換言すれば、明視野照明手段及び暗視野照明手段の両手段ともに、被検査体に対して鋭角に光を入射させているため、両方の画像(即ち、明視野画像及び暗視野画像)で欠陥を高感度に検出することができる。
【0024】
また、被検査体への入射角度がブリュースター角を越えると、p偏光及びs偏光共に、正反射光量及び散乱光量が増加するため、ノイズの影響にも強くなり、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【0025】
更に、同じ視点位置で明視野画像及び暗視野画像を撮像しているため、画像上での欠陥位置は同一であり、単純な差分演算によって欠陥を強調することで、より高感度な検出が可能となる。また、明視野照明と暗視野照明の角度差を小さくすることで、照明領域の違いによる影響を小さくすることができる。なお、特許文献2の検査装置は、明視野照明と暗視野照明との角度差が大きいため、照明領域の違いによる影響が大きい。従って、明視野画像と暗視野画像との差分、即ち、明視野照明の角度と暗視野照明の角度との角度差は小さい方が有利である。
【0026】
図7は、本発明における明視野条件(明視野照明手段の照明)での反射光分布を示す図であり、図8は、かかる明視野条件での撮像画像(明視野画像)を示す図である。図7において、TIは被検査体、DFは微小凹凸、BILは明視野照明手段からの入射光、RLは正反射光、PDは光電変換センサ(撮像素子)、RLDは反射光分布である。図7及び図8を参照するに、正反射光RLを撮像する明視野では、被検査体TI上の微小凹凸DFが存在する位置は暗くなり、微小凹凸DFの存在しない(即ち、平らな)位置は明るくなる。
【0027】
図9は、本発明における暗視野条件(暗視野照明手段の照明)での反射光分布を示す図であり、図10は、かかる暗視野条件での撮像画像(暗視野画像)を示す図である。図9において、DILは暗視野照明手段からの入射光である。図9及び図10を参照するに、散乱光を撮像する暗視野では、被検査体TI上の微小凹凸DFが存在する位置は明るくなり、微小凹凸DFの存在しない(即ち、平らな)位置は暗くなる。
【0028】
図8に示す撮像画像及び図10に示す撮像画像は、同じ視点位置から被検査体TIを撮像した画像であるため、微小凹凸DFによる光量レベルの変化の発生する位置は同一である。従って、図8に示す撮像画像と図10に示す撮像画像とを差分演算すると、図11に示すように、被検査体TI上の微小凹凸DFが存在する位置を強調することができる。これは、被検査体TIの表面に1つの微小凹凸DFが存在する微小凹凸の有無による欠陥(ゴミ、傷など)だけではなく、微小凹凸DFの密度(疎密)が異なる場合、つまり、表面微小凹凸の不均一性による欠陥にも同様に適用することができる。ここで、図11は、図8に示す撮像画像と図10に示す撮像画像との差分画像を示す図である。
【0029】
また、本発明の検査装置は、被検査体の表面、受光光学系のレンズ系の主平面及び光電変換センサの受光面が後述するシャインプルーフの法則を満足するように、受光光学系のレンズ系が構成されている。
【0030】
被検査体TIに対するカメラの撮影角が鋭角な場合の撮像であっても、シャインプルーフの法則を満足するレンズ系を使用することで、被検査体TIの表面(観察面、即ち、検査面)と撮像素子ILSの撮像面を共役の関係にすることができる。
【0031】
図12は、シャインプルーフの法則を説明するための図である。一般に、撮像レンズ系PUDの主平面と撮像素子ILSの撮像面とが平行であれば、被写体TBが斜めになっている場合、被写体TBの全域が撮像レンズ系PUDを透過して撮像素子ILSの撮像面上に結像されることはない。被写体TBの全域が撮像レンズ系PUDを透過して撮像素子ILSの撮像面上に結像されるには、図12に示すように撮像素子ILSの撮像面と被写体TBとの交点IPが、撮像レンズ系PUDの主平面と交わればよい。これが、シャインプルーフの法則と呼ばれる法則である。
【0032】
シャインプルーフの法則を満足する光学系を使用することで、被写界深度の浅いカメラでも短い露光時間で被検査体の広範囲の画像撮影が可能となり、撮像回数を低減させることができる。従って、斜めに傾いた被検査体(検査面)を高速に撮影することができる。
【0033】
また、本発明の検査装置において、明視野照明手段は、5°以上25°以下の角度で被検査体を照明する。本発明者は、被検査体に対する光の角度が5°以上25°以下の範囲であれば、被検査体の欠陥を高感度に検出することができることを実験的に見出した。
【0034】
被検査体に対する光の角度が大きいと、0次の回折光に対するm次の回折角の広がりが大きくなる。図13に示すように、被検査体TIに対する入射光ILの入射角をθ、入射光ILの波長をλ、微小凹凸の周期をPDとすると、回折の式は、以下に示す数式1で表される。なお、図13において、DLは回折光である。ここで、図13は、被検査体TIに入射する入射光ILの入射角θと回折角θ’との関係を示す図である。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、mは回折の次数、θ’は回折角である。
【0037】
また、数式1から、回折角θ’は、以下に示す数式2で表される。
【0038】
【数2】

【0039】
数式2において、m=1、λ=0.6328μm、PD=100μmとして、入射角θを変化させたときの回折角θ’の広がりを表すグラフを図14に示す。なお、図14では、横軸に照明角(90°−入射角)を、縦軸に1次回折光の回折角と正反射角との角度差を採用している。
【0040】
図14を参照するに、照明角が25°よりも小さい範囲において、正反射光と1次回折光との角度差が急激に増加していることがわかる。換言すれば、照明角を5°以上25°以下にすることで、回折光を正反射光から分離することができ、検出しやすくなる。
【0041】
また、本発明の検査装置において、暗視野照明手段は、明視野照明手段(即ち、被検査体に入射する入射光)の入射角度に対して、−20°以上+20°以下の角度差で被検査体を照明する。本発明者は、被検査体を鋭角に照明する明視野照明に対して、−20°以上+20°以下の角度差を設けることで、暗視野状態が実現できると共に、被検査体を鋭角に照明することができ、欠陥を高感度に検出することができることを実験的に見出した。
【0042】
回折角は、欠陥の周期が大きい場合には小さくなり、欠陥の周期が小さい場合には大きくなる。数式2において、m=1、λ=0.6328μm、θ=75°とする。例えば、PD=100μmの場合、θ’=73.7°であり、正反射光との角度差は1.3°である。この場合、1次回折光の方向、高次光も含めて正反射角と小さい角で取るのが好ましい。また、PD=10μmの場合、θ’=64.5°であり、正反射光との角度差は10.5°である。正反射光との角度差は、1次回折光及び2次回折光共に、20°以内におさまっている。また、PD=5μmの場合、θ’=57.1°であり、正反射光との角度差は17.9°である。1次回折光は、20°程度である。
【0043】
このように、周期が5μm乃至100μm程度の欠陥を検出するのであれば、正反射光から±20°以内の正反射光が到達しない領域で検出することが好ましい。従って、本発明の検査装置は、明視野照明手段の入射角度に対して、暗視野照明手段の入射角度を−20°以上+20°以下の角度差で照明する。
【0044】
また、本発明の検査装置は、明視野照明手段で被検査体を照明した際の光電変換センサの出力信号と暗視野照明手段で被検査体を照明した際の光電変換センサの出力信号との信号レベルを調整する信号レベル調整部を有する。
【0045】
光電変換センサの感度が同一の場合、明視野画像の方が暗視野画像よりも明るい。これは、正反射光の絶対光量が、散乱光の絶対光量よりも多いからである。両画像の撮像に同じ光電変換センサを用いる場合、光電変換センサの受光量が飽和することを防止するために、明視野画像に応じて感度を決定しなければならない。従って、暗視野画像が暗くなりすぎて、演算手段で比較演算を行っても欠陥を強調する効果が薄れてしまう可能性がある。そこで、信号レベル調整部は、演算手段における比較演算の効果が発揮されるように、明視野画像の信号レベル及び暗視野画像の信号レベルを調整する。信号レベル調整部は、例えば、明視野画像と暗視野画像の欠陥部位における輝度値の差分演算が最も大きくなるように、信号レベルを調整する。なお、演算手段における比較演算は差分演算に限ったものではなく、例えば、除算、非線形演算などを用いることもできる。
【0046】
また、本発明の検査装置は、明視野照明手段及び暗視野照明手段による被検査体の照明又は非照明を各々独立して切り換えることができる。これにより、時分割で明視野画像と暗視野画像を撮像することができる。
【0047】
また、本発明の検査装置は、同期信号出力部を有する。同期信号出力部は、明視野照明と暗視野照明との切り換え(即ち、明視野照明手段及び暗視野照明手段による被検査体の照明又は非照明)の信号を出力する。これにより、明視野画像と暗視野画像の撮像を時分割することができる。
【0048】
また、本発明の検査装置において、明視野照明手段と暗視野照明手段とは、異なる波長の光で被検査体を照明し、受光光学系は、明視野照明手段からの光の波長と暗視野照明手段からの光の波長とを分離する波長分離手段を有する。
【0049】
明視野照明と暗視野照明に異なる波長の光を用いると共に、光電変換センサよりも前段に波長分離手段を配置すれば、明視野画像と暗視野画像を同時に撮像することができる。これにより、高解像度な画像を高速に撮像することができる。
【0050】
また、本発明の検査装置において、明視野照明手段と暗視野照明手段とは、異なる偏光の光で被検査体を照明し、受光光学系は、明視野照明手段からの光の偏光と暗視野照明手段からの光の偏光とを分離する偏光分離手段を有する。
【0051】
明視野照明と暗視野照明に異なる偏光の光を用いると共に、光電変換センサよりも前段に偏光分離手段を配置すれば、明視野画像と暗視野画像を同時に撮像することができる。これにより、高解像度な画像を高速に撮像することができる。
【0052】
また、本発明の検査装置は、演算手段で得られる比較信号に基づいて、被検査体の表面の欠陥の有無又は密度を判定する判定手段を有する。欠陥の判定処理には、例えば、エッジ抽出処理や微分処理などの手法を用いる。
【0053】
以下、本発明の検出装置の構成及び動作について具体的に説明する。
【実施例1】
【0054】
図1は、本発明の第1の実施例の検査装置1の構成を示す概略ブロック図である。検査装置1は、被検査体TIの被検査面(表面)TISの欠陥を検出する。
検査装置1は、明視野照明光源(明視野照明手段)10と、暗視野照明光源(暗視野照明手段)20と、あおりレンズ系30と、画像センサ(光電変換センサ)40と、同期信号出力部50とを有する。更に、検査装置1は、暗視野画像レベル調整部62と、明視野画像レベル調整部64と、画像差分演算部70と、欠陥判定部80とを有する。
【0055】
まず、同期信号出力部50からの出力信号による明視野照明光源10、暗視野照明光源20及び画像センサ40の動作の一例を図2に示す。図2を参照するに、同期信号出力部50から一定周波数で正負のトリガー信号が出力される。正のトリガー信号が出力される時間T1では、明視野照明光源10が点灯し、暗視野照明光源20は消灯すると共に、画像センサ40によって明視野画像が撮像される。負のトリガー信号が出力される時間T2では、明視野照明光源10は消灯し、暗視野照明光源20が点灯すると共に、画像センサ40によって暗視野画像が撮像される。
【0056】
このように、実施例1では、明視野照明光源10と暗視野照明光源20を時分割で切り換えることで、明視野画像と暗視野画像を取得する。
【0057】
なお、明視野照明光源10及び暗視野照明光源20は、例えば、蛍光灯、LED、ハロゲンランプなどを使用し、好ましくは、蛍光灯を使用する。
【0058】
次に、検査装置1による被検査面TISの欠陥の検出動作について説明する。
【0059】
明視野照明光源10からの光は、鋭角な照明角θi1で被検査面TISに照射される。ここで、鋭角な照明角θi1とは、0°以上45°以下である。被検査面TISからの拡散反射光は、被検査面TISに対して受光角θrで配置されたあおりレンズ30を介して、画像センサ40の受光面に結像する。これにより、明視野画像が取得される。取得された明視野画像は、明視野画像レベル調整部64に出力される。
【0060】
一方、暗視野照明光源20からの光は、入射角θi2で被検査面TISに照射される。被検査面TISからの拡散反射光は、あおりレンズ30を介して、画像センサ40の受光面に結像する。これにより、暗視野画像が取得される。取得された暗視野画像は、暗視野画像レベル調整部62に出力される。
【0061】
明視野画像レベル調整部64及び暗視野画像レベル調整部62は、明視野画像及び暗視野画像の信号レベルを調整し、画像差分演算部70に出力する。
【0062】
画像差分演算部70は、周期が同一の明視野画像と暗視野画像との差分を演算する。明視野画像と暗視野画像では、欠陥での明暗が逆転する。従って、画像差分演算部70で演算された差分画像は、欠陥が強調されている。
【0063】
欠陥判定部80は、画像差分演算部70で演算された差分画像に基づいて、被検査面TISに欠陥の有無又は/及び密度を検出する。欠陥判定部80は、例えば、エッジ抽出処理や微分処理などの欠陥判定処理によって、欠陥を検出する。
【実施例2】
【0064】
図3は、本発明の第2の実施例の検査装置1Aの構成を示す概略ブロック図である。
【0065】
検査装置1Aは、波長λ1の光で被検査面TISを照明する光源を明視野照明光源10に使用し、波長λ1とは異なる波長λ2の光で被検査面TISを照明する光源を暗視野照明光源20に使用して、被検査面TISを同時に照明する。また、検査装置1Aは、あおりレンズ30と画像センサ40との間に、波長λ1の光と波長λ2の光とを分離するカラーフィルタ92を有する。
【0066】
カラーフィルタ92と画像センサ40には、一般的なカラー撮像素子を用いることができる。原色カラーフィルタは、一般的に、図4に示すように、RGB(R:赤、G:緑、B:青)という構成を有する。例えば、明視野照明光源10に波長700nm程度の赤色光源を、暗視野照明光源20に波長550nm程度の緑色光源を用いる。この場合、カラー撮像素子からのRの出力信号が明視野画像に対応し、カラー撮像素子からのGの出力信号が暗視野画像に対応する。但し、原色カラーフィルタは、Rの信号、又は、Bの信号を使用する場合には解像点数は1/4に、Gの信号を使用する場合には解像点数が1/2に低下する。また、波長λ1と波長λ2との波長差Δλが大きくなるため、散乱光成分と反射光成分の波長依存性が高い場合には、原色カラーフィルタを用いることができない。ここで、図4は、カラーフィルタ92及び画像センサ40として用いる原色カラーフィルタの構成を示す概略平面図である。
【0067】
検査装置1Aによる被検査面TISの欠陥の検出動作は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0068】
図5は、本発明の第3の実施例の検査装置1Bの構成を示す概略ブロック図である。
【0069】
実施例2の検査装置1Aは、カラーフィルタ92によって、明視野照明光源10からの光と暗視野光源20からの光とを分離した。実施例3の検査装置1Bは、波長分離ミラー94によって、明視野照明10からの波長λ1の光と暗視野照明20からの波長λ2の光とを分離し、2つの画像センサ40を用いて明視野画像と暗視野画像とを同時に撮像する。
【0070】
波長分離ミラー94は、明視野照明10からの波長λ1の光を透過し、暗視野照明20からの波長λ2の光を反射する機能を有する。これにより、波長分離ミラー94は、波長λ1の光と波長λ2の光とを分離することができる。
【0071】
検査装置1Bは、2つの画像センサ40を必要とするため、構造が複雑になるが、色分離による解像点数の低下(実施例1)を防止することができる。また、波長分離ミラー94が分離する波長差Δλを小さくすれば、散乱光成分と反射光成分の波長依存性が高い場合にも、その影響を最小限に抑えることができる。
【0072】
検査装置1Bによる被検査面TISの欠陥の検出動作は、実施例1と同様である。
【実施例4】
【0073】
図6は、本発明の第4の実施例の検査装置1Cの構成を示す概略ブロック図である。
【0074】
実施例2及び3の検査装置1A及び1Cでは、明視野照明光源10と暗視野照明光源20に異なる波長の光源を使用し、明視野画像と暗視野画像とを同時に撮像した。実施例4の検査装置1Cは、明視野照明光源10と暗視野照明光源20に異なる偏光状態の光源を使用し、偏光分離ミラー96によって、明視野照明10からの光(p偏光)と暗視野照明20からの光(s偏光)とを分離する。そして、検査装置1Cは、2つの画像センサ40を用いて明視野画像と暗視野画像とを同時に撮像する。
【0075】
図6は、明視野照明光源10にp偏光の光を照射する光源を、暗視野照明光源20にs偏光の光を照射する光源を用いた例を示している。偏光分離ミラー96は、s偏光の光を反射し、p偏光の光を透過する機能を有する。これにより、偏光分離ミラー96は、s偏光の光とp偏光の光とを分離することができる。
【0076】
検査装置1Cは、検査装置1Bと同様に、2つの画像センサ40を必要とするため、構造が複雑化するが、解像点数の低下(実施例1)を防止することができる。但し、被検査体TIの表面TISで偏光状態が大きく変化する場合には、実施例3を適用することができない。
【0077】
検査装置1Cによる被検査面TISの欠陥の検出動作は、実施例1と同様である。
【0078】
このように、本発明の検査装置は、鋭角に被検査体を照明する明視野照明手段及び暗視野照明手段を用いて撮影した明視野画像及び暗視野画像を差分演算することにより、被検査体の欠陥を高感度に検出することができる。また、シャインプルーフの法則を満足する光学系を使用することによって、斜めに傾いた広範囲の被検査体を高速に撮像できる検査装置を実現することができる。
【0079】
また、明視野照明手段と暗視野照明手段に異なる波長の光、又は、異なる偏光の光の光源を用いることで、明視野画像と暗視野画像を同時に撮像することができ、更なる高速化を実現することができる。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び偏光が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施例の検査装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】図1に示す検査装置の同期信号出力部からの同期信号による明視野照明、暗視野照明及び画像センサの動作の一例を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施例の検査装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】図3に示すカラーフィルタ及び画像センサとして用いる原色カラーフィルタの構成を示す概略平面図である。
【図5】本発明の第3の実施例の検査装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施例の検査装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図7】本発明における明視野条件(明視野照明手段の照明)での反射光分布を示す図である。
【図8】図7に示す明視野条件での撮像画像を示す図である。
【図9】本発明における暗視野条件(暗視野照明手段の照明)での反射光分布を示す図である。
【図10】図9に示す暗視野条件での撮像画像を示す図である。
【図11】図8に示す撮像画像と図10に示す撮像画像との差分画像を示す図である。
【図12】シャインプルーフの法則を説明するための図である。
【図13】被検査体に入射する入射光の入射角と回折角との関係を示す図である。
【図14】被検査体に入射する入射光の入射角を変化させた場合における1次回折光と正反射光との角度差を示すグラフである。
【図15】被検査体の表面が平らである場合の反射光分布を示す図である。
【図16】被検査体の表面に一つの微小凹凸が存在する場合の反射光分布を示す図である。
【図17】被検査体の表面の微小凹凸の密度が疎である場合の反射光分布を示す図である。
【図18】被検査体の表面の微小凹凸の密度が密である場合の反射光分布を示す図である。
【図19】視野位置の異なる2つのセンサを用いて明視野画像及び暗視野画像を取得する検出装置(撮像系)の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 検査装置
10 明視野照明光源
20 暗視野照明光源
30 あおりレンズ系
40 画像センサ
50 同期信号出力部
62 暗視野画像レベル調整部
64 明視野画像レベル調整部
70 画像差分演算部
80 欠陥判定部
1A 検査装置
92 カラーフィルタ
1B 検査装置
94 波長分離ミラー
1C 検査装置
96 偏光分離ミラー
TI 被検査体
TIS 被検査面(表面)
DF 微小凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の表面の欠陥を検出する検査装置であって、
前記被検査体の表面を第1の角度で照明する明視野照明手段と、
前記被検査体の表面を前記第1の角度と異なる第2の角度で照明する暗視野照明手段と、
前記明視野照明手段の正反射角方向に配置され、前記被検査体の表面からの拡散光を受光するレンズ系と光電変換センサとを有する受光光学系と、
前記明視野照明手段で前記被検査体を照明した際の前記光電変換センサの出力信号と前記暗視野照明手段で前記被検査体を照明した際の前記光電変換センサの出力信号との差分を演算する演算手段とを有することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記レンズ系は、前記被検査体の表面、前記レンズ系の主平面及び前記光電変換センサの受光面がシャインプルーフの法則を満足するように、構成されることを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記第1の角度は、5°以上25°以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の検査装置。
【請求項4】
前記第1の角度と第2の角度との差は、−20°以上+20°以下であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の検査装置。
【請求項5】
前記明視野照明手段で前記被検査体を照明した際の前記光電変換センサの出力信号と前記暗視野照明手段で前記被検査体を照明した際の前記光電変換センサの出力信号との信号レベルを調整する信号レベル調整部を更に有し、
前記信号レベル調整部は、前記演算手段で得られる信号が最大となるように、前記信号レベルを調整することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の検査装置。
【請求項6】
前記明視野照明手段及び前記暗視野照明手段は、各々独立して前記被検査体の照明又は非照明を切り換えることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の検査装置。
【請求項7】
前記被検査体の照明又は非照明を切り換える信号を出力する同期信号出力部を更に有することを特徴とする請求項6記載の検査装置。
【請求項8】
前記明視野照明手段は、第1の波長の光で前記被検査体を照明し、
前記暗視野照明手段は、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光で前記被検査体を照明し、
前記受光光学系は、前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とを分離する波長分離手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の検査装置。
【請求項9】
前記明視野照明手段は、第1の偏光の光で前記被検査体を照明し、
前記暗視野照明手段は、前記第1の偏光とは異なる第2の偏光の光で前記検査体を照明し、
前記受光光学系は、前記第1の偏光の光と前記第2の偏光の光とを分離する偏光分離手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の検査装置。
【請求項10】
前記演算手段で得られる信号に基づいて、被検査体の表面の欠陥の有無又は密度を判定する判定手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか一項記載の検査装置。

【図9】
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【図13】
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【図17】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−327896(P2007−327896A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160511(P2006−160511)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】