説明

検査装置

【課題】皮膚等の状態を簡易に低コストで検査することのできる検査装置を提供する。
【解決手段】第1の偏光方向の直線偏光の光を検査対象に照射する光源と、前記光源より照射された光のうち、前記検査対象において正反射された光を検出する正反射光検出器と、前記光源より照射された光のうち、前記検査対象において拡散反射された光であって、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の光を透過する光学素子と、前記光学素子を通過した光を検出する拡散反射光検出器と、前記光源、前記正反射光検出器、前記光学素子、前記拡散反射光検出器を覆い、前記光源より前記検査対象に光が照射される部分に開口を有する暗箱と、前記暗箱の前記開口に設けられた前記検査対象と接する透明板と、を有することを特徴とする検査装置を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、皮膚等の生体組織等の散乱体の表面や内部の構造、状態を計測する方法として、共焦点顕微鏡、光コヒーレンス・トモグラフィ(OCT:Optical Coherence Tomography)、SHG(Second harmonic generation:第2高調波発生)光顕微鏡、超音波エコー、X線、MRI(magnetic resonance imaging)等の様々な手法が存在している。このうち、生体計測においては、光を用いた光計測が、被爆等の問題がなく、また、照射光の波長を選択することにより計測対象を限定することができるため適している。また、光計測は、X線等と比較して、装置を小型化することができ、また低価格化することもできるといった利点も有している。
【0003】
例えば、生体組織に近赤外光を照射し、生体組織内において拡散反射した光を光検出器により検出し、光検出器により得られた信号より、生体組織の定量的な分析を行なう近赤外分光法等の光計測方法がある。この近赤外分光法等の光計測方法では、生体組織内における様々な情報を非侵襲的に瞬時に得ることができるため、医療分野における多くの用途で注目されており、血液中の酸素濃度の測定等に用いられている。
【0004】
生体光計測としては、これ以外にも、皮膚内部におけるコラーゲン構造の状態やコラーゲンの定量的評価を行なう方法がある。皮膚内部において真皮層の7割以上を占めるコラーゲン構造の配向性や分布状態は、皮膚のハリやシワ等と密接な関係があることが知られている。このため、スキンケア商品を使用した前後における皮膚内部のコラーゲン構造の変化や皮膚表面の形態変化を総合的に評価することは、化粧品の有用成分の開発や、使用する化粧品を選定する上でも非常に有効である。
【0005】
ところで、従来はコラーゲン構造を傷つけることなく、非侵襲で皮膚内部の真皮の状態を評価することは困難であったが、近年においては光計測手法により、コラーゲン構造を傷つけることなく、非侵襲で皮膚内部の真皮の状態を評価することが可能となりつつある。
【0006】
特許文献1には、皮膚の内部に向けて長短パルス光を照射し、発生した第2高調波発生光(SHG光)を検出し、その検出結果により皮膚内部のコラーゲン配向を測定する方式が開示されている。また、OCTを応用して皮膚内部のコラーゲン構造を可視化する方法等も提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、皮膚のハリや弾力性等の性状評価に利用する画像を取得するための皮膚画像取得装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、皮膚表面にP偏光の光を入射しS偏光成分の反射光を受光するとともに、皮膚表面にS偏光の光を入射しP偏光成分の反射光を受光して得られるS偏光成分の反射光とP偏光成分の反射光の2つの反射光について反射率の合計値に基づいて皮膚の透明感を評価する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、用いられる計測装置が高額なものであり、また、大型なものとなるため、一般的なユーザは利用することができないという問題点を有している。
【0010】
また、特許文献2に記載されている皮膚画像取得装置により得られる情報は、皮膚の表面に基づく情報のみであるため、皮膚の弾力性等の皮膚の内部構造に関連した情報をある程度間接的に知ることはできるものの、皮膚内部のコラーゲン構造の状態等をより直接的に評価することは不十分であった。
【0011】
また、特許文献3に記載されている方法では、特定方向の偏光の光を照射し、照射された光に直交する偏光成分の光を検出するものであるため、皮膚の表面状態を十分に知ることができず、詳細に皮膚の状態を判別することは困難である。
【0012】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、皮膚の表面及び内面の状態を容易に検出することができ、皮膚の状態を判別することが可能な小型の検査装置を低価格で提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1の偏光方向の直線偏光の光を検査対象に照射する光源と、前記光源より照射された光のうち、前記検査対象において正反射された光を検出する正反射光検出器と、前記光源より照射された光のうち、前記検査対象において拡散反射された光であって、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の光を透過する光学素子と、前記光学素子を通過した光を検出する拡散反射光検出器と、前記光源、前記正反射光検出器、前記光学素子、前記拡散反射光検出器を覆い、前記光源より前記検査対象に光が照射される部分に開口を有する暗箱と、前記暗箱の前記開口に設けられた前記検査対象と接する透明板と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記透明板は、一方の面と他方の面とが平行ではないことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、第1の偏光方向の直線偏光の光を検査対象に照射する光源と、前記光源より照射された光のうち、前記検査対象において正反射された光を検出する正反射光検出器と、前記光源より照射された光のうち、前記検査対象において拡散反射された光であって、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の光を透過する光学素子と、前記光学素子を通過した光を検出する拡散反射光検出器と、前記光源、前記正反射光検出器、前記光学素子、前記拡散反射光検出器を覆い、前記光源より前記検査対象に光が照射される部分に開口を有する暗箱と、前記暗箱の内部全体に形成された透明部材と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記光源より出射された光は、前記検査対象における照射領域に照射され、前記拡散反射光検出器は、前記照射領域において前記検査対象の表面に対し略垂直方向に設置されているものであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記光源、前記正反射光検出器及び前記拡散反射光検出器を含む測定系を複数有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記光源は、発光ダイオードと、前記発光ダイオードより出射された光のうち、第1の偏光方向の成分のみを透過する光学素子と、を有するものであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記光源は1または複数の面発光レーザを有するものであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記光源は複数の前記面発光レーザが2次元的に配列されている面発光レーザアレイであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、前記正反射光検出器及び前記拡散反射光検出器は解析部と接続されており、前記解析部には、前記正反射光検出器により得られた値及び前記拡散反射光検出器により得られた値に基づき前記検査対象の表面及び表面近傍の内部状態を前記解析部に接続された表示部に表示させることを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、皮膚の表面及び内面の状態を容易に検出することができ、皮膚の状態を判別することが可能な小型の検査装置を低価格で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態における検査装置の構造図
【図2】第1の実施の形態における検査装置の要部拡大図
【図3】光の反射の説明図
【図4】第1の実施の形態における検査装置の説明図
【図5】第2の実施の形態における検査装置の構造図
【図6】面発光レーザ素子の構造図
【図7】第3の実施の形態における検査装置の上面図
【図8】第3の実施の形態における検査装置の構造図
【図9】第4の実施の形態における検査装置の構造図
【図10】第5の実施の形態における検査装置の構造図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。また、本実施の形態において散乱体とは、散乱媒質で構成される任意のものを意味し、例えば、生体組織が挙げられる。本実施の形態における検査装置は、散乱体内部の散乱媒質中に存在する検査対象について計測するものであり、検査対象として皮膚が挙げられる。本願明細書においては、皮膚等について説明するが、本実施の形態における検査装置の検査対象は皮膚等に限定されるものではない。
【0025】
〔第1の実施の形態〕
本実施の形態における検査措置は、皮膚表面の平滑度と、皮膚内部の真皮層におけるコラーゲンの配向や密度といった皮膚内部の状態を検査することにより非侵襲的に皮膚の状態を定量化するものである。加齢に伴う皮膚の老化現象の1つとしてはシワ等の増加が挙げられるが、美容の観点からシワ等の防止や改善のため、シワ等を定量的に検査する方法及び検査装置が求められている。
【0026】
シワ等の形成には皮膚内部の真皮層の状態が大きく関与すると考えられるため、皮膚表面の状態だけではなく皮膚内部の状態も同時に定量的に検査することが必要となる。シワの検査方法としては、しわグレード標準が定められているが、目視や、写真による二次元画像解析法等により行なわれる。しかしながら、いずれも皮膚表面の情報のみに基づいた検査であり、シワの状態を正確に検査するには不十分である。また、シワのレプリカを取って共焦点顕微鏡等を用いて3次元的に解析する方法もあるが、この場合も皮膚の表面状態のみの解析であり、更には、装置も高価なものとなる。
【0027】
次に、図1に基づき本実施の形態における検査装置について説明する。本実施の形態における検査装置は、光学センサを有する光学式検査装置である。具体的には、光源10、偏光フィルタ11、コリメートレンズ20、正反射光検出器30、拡散反射光検出器40、偏光フィルタ41を有している。光源10、偏光フィルタ11、コリメートレンズ20、正反射光検出器30、拡散反射光検出器40、偏光フィルタ41は、暗箱50内に収納されており、検査対象となる皮膚等と接する面には透明板60が設けられている。また、正反射光検出器30及び拡散反射光検出器40は、解析部70に接続されており、正反射光検出器30及び拡散反射光検出器40により得られた情報に基づき、皮膚等の解析を行ない、表示部80において、検査された皮膚等の状態の表示を行なう。
【0028】
暗箱50は、アルミニウム製であり、外乱光及び迷光の影響を低減するため、表面に黒アルマイト処理が施されており、検査対象となる皮膚等と接する面には開口を有している。この開口には、光源10から出射された波長の光が透過する透明板60が設置されている。
【0029】
図2は、本実施の形態における検査装置の光学センサ部分を示すものである。光源10には、LED(Light Emitting Diode)が用いられている。偏光フィルタ11により、光源10から出射された光は、S偏光の光となり、コリメータレンズ20を介し、皮膚等に照射される。この際、光源10からの出射された光の皮膚等の入射角θは、60°である。即ち、皮膚表面の法線方向に対し60°の角度で、透明板60を介して入射するように設置されている。尚、本実施の形態においては、透明板60に入射する光は、屈折するが、図面等においては、光が屈折している様子は図示されていないものとする。
【0030】
コリメートレンズ20は、光源10から出射された光の光路上に設置されており、光源10から出射された光を略平行光とするものである。本実施の形態では、コリメートレンズ20から出射された光の光束の幅が4mmとなるように形成されている。コリメートレンズ20から出射された光は、透明板60を介して、皮膚等に照射される。尚、光源10からの光が皮膚等の表面に照射される領域を照明領域と記載し、この照明領域の中心を「照明中心」と記載する場合がある。また、コリメートレンズ20より出射された光を「照射光」とも記載する場合がある。尚、本実施に形態における検査装置は、透明板60の外側の面で皮膚等が接触した状態で検査を行なうものであるが、皮膚等を透明板60の外側の面と接触させることにより皮膚等における照明中心の位置を正確に確定させることができる。
【0031】
一般的に、光が媒質の境界面に入射するとき、入射光線と入射点において境界面の法線とを含む面は「入射面」と呼ばれている。そこで、入射光が複数の光線から場合には、各々の光線ごとに入射面が存在することとなるが、本願明細書においては、便宜上、照明に入射する光線の入射面を皮膚等における入射面と記載する。また、本実施の形態では、3次元直交座標系において、皮膚等の表面に直交する方向をZ軸方向、皮膚等の表面に平行な面をXY面として記載する。即ち、照明中心を含みXZ面に平行な面が皮膚等における光の入射面である。
【0032】
正反射光検出器30は、XZ面において照明中心の+X側に配置されている。照明中心と正反射光検出器30の中心とを結ぶ線L1と、皮膚等の表面とのなす角度ψは、約150°である。
【0033】
偏光フィルタ41は、照明中心の+Z側に配置されている。この偏光フィルタ41は、P偏光の光を透過し、S偏光の光を遮光する偏光フィルタである。尚、偏光フィルタ41に代えて、同等の機能を有する偏光ビームスプリッタを用いてもよい。
【0034】
拡散反射光検出器40は、偏光フィルタ41の+Z側に配置されている。尚、本実施の形態では、照明中心と偏光フィルタ41及び拡散反射光検出器40の中心とを結ぶ線L2と皮膚等の表面とのなす角度φは、約90°である。
【0035】
以上のように、光源10、偏光フィルタ11、偏光フィルタ41、正反射光検出器30、拡散反射光検出器40の各々の中心は、入射面上に存在している。
【0036】
ところで、散乱体である皮膚等に光を照射した場合、皮膚等からの反射光は、皮膚等の表面で反射された光と、皮膚等の内部で反射された光とに分けられる。また、皮膚等の表面で反射された反射光は、正反射された反射光と、拡散反射された反射光とに分けられる。以下、本実施の形態では、便宜上、図3(a)に示されるように、皮膚等の表面で正反射された反射光を「表面正反射光」、図3(b)に示されるように、拡散反射された反射光を「表面拡散反射光」ともいう。
【0037】
皮膚等の表面は、平面な部分(平面部)と傾斜し斜面となった部分(斜面部)とにより構成されており、その割合により皮膚等の表面の平滑性が決定される。平面部において反射された光は表面正反射光となり、斜面部において反射された光は、表面拡散反射光となる。表面拡散反射光は、完全に散乱反射された反射光であり、反射方向は等方的となる。このため、平滑性が高くなるほど、表面正反射光の光量は増加する。
【0038】
一方、皮膚等の表層組織の内部からの反射光は、真皮層内のコラーゲン繊維等で多重散乱するため拡散反射光のみとなる。以下、便宜上、皮膚等の内部からの反射光を「内部拡散反射光」という。この内部拡散反射光も、表面拡散反射光と同様に、完全に散乱反射された反射光であり、反射方向は等方的である。
【0039】
表面正反射光及び表面拡散反射光における偏光方向は、入射光の偏光方向と同じ方向である。ところで、皮膚等の表面で偏光方向を回転させるには、入射光がその光軸に沿って偏光方向の回転の向きに傾斜した面で反射されなくてはならない。ここで、光源10と照明中心と正反射光検出器30は同一平面内にあるため、表面で反射された光のうち、偏光方向の回転した反射光は、正反射光検出器30においては検出されない。
【0040】
一方、内部拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向から回転している。これは、皮膚等の内部におけるコラーゲン繊維等の中を透過し、多重反射により旋光し、偏光方向が回転するためと考えられる。
【0041】
そこで、図4に示すように、偏光フィルタ41には、表面拡散反射光及び内部拡散反射光が入射するものの、表面拡散反射光の偏光方向は、入射光と同じS偏光の光であるため、表面拡散反射光は、偏光フィルタ41で遮光される。一方、内部拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向に対し回転しているため、内部拡散反射光に含まれるP偏光の成分は、偏光フィルタ41を透過する。従って、内部拡散反射光に含まれるP偏光成分が光検出器40により受光される。
【0042】
内部拡散反射光に含まれるP偏光成分の光量は、皮膚等の表層組織内の成分や密度と相関を有している。これは、このP偏光成分の光量が、皮膚内部の生体組織を通過する際の生体組織への吸収や光路長等に依存するからである。
【0043】
正反射光検出器30には、表面正反射光と、表面拡散反射光及び内部拡散反射光の一部が入射する。正反射光検出器30及び拡散反射光検出器40には、それぞれ受光光量に対応する電気信号(光電変換信号)が出力され、この電気信号は解析部70に入力される。尚、本実施の形態では、光源10からの光を皮膚等に照射することにより発生した反射光において、正反射光検出器30の出力信号における信号レベルを「S1」とし、拡散反射光検出器40の出力信号における信号レベルを「S2」とする。
【0044】
解析部70では、様々な状態における多数の皮膚等のサンプルに対して予め計測されたS1及びS2の値が「皮膚状態判別テーブル」として、解析部70内のROM等の記憶部71に記憶されている。解析部70は、計測対象となる皮膚等により検出されたS1及びS2の値に基づき、皮膚状態判別テーブルにおける多数の皮膚等のサンプルのうち、最も近い皮膚の状態を選定し、選定された皮膚の状態等を表示部80に表示する。
【0045】
より具体的に説明すると、例えば、計測対象の皮膚等から取得したS1及びS2の値に対し、皮膚状態判別テーブルにおける皮膚等のサンプルのS1a、S2aとの適合率を数1に示す式より算出し、適合率が最も大きくなる皮膚等のサンプルを計測対象の皮膚等に最も近い皮膚等のサンプルとして特定する。
【0046】
【数1】

この皮膚等のサンプルは、皮膚等におけるキメの間隔、角質水分量、メラニン量、ヘモグロビン量等の生理特性値が、それぞれ適切な方法により既に測定されており、計測対象となる皮膚等の生理特性値は、この皮膚等のサンプルの生理特性値に近い値であると推定することができる。
【0047】
また、S1及びS2の値は、各々皮膚等の表面状態及び内部状態を示しており、これらの比S1/S2の値を用いて、例えば、「皮膚表面にはシワが少ないが、コラーゲン繊維の構造が乱れており、将来シワができやすいため早期のケアが必要」等である旨を表示部80に表示させることも可能である。
【0048】
また、皮膚状態判別テーブルにおいて、S1及びS2の値と、シワグレード標準のグレードとの相関を記憶させておき、検出されたS1及びS2の値に基づき解析部70においてシワグレードのレベルを判別し、表示部80においてシワグレードを表示することも可能である。
【0049】
このように、本実施の形態における検査装置では、表示部80において表示された情報に基づき、最適なスキンケア商品やスキンケア方法を選定することができ、また、有用な化粧品成分の開発に活用したりすることができる。
【0050】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態における検査装置は、光源に面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)素子を用いた構造のものである。
【0051】
本実施の形態における検査装置について、図5に基づき説明する。本実施の形態における検査装置は、光学センサを有する光学式検査装置である。具体的には、光源110、コリメートレンズ20、正反射光検出器30、拡散反射光検出器40、偏光フィルタ41を有している。
【0052】
本実施の形態においては、光源110は、同一の基板面に複数のVCSELからなる発光部を有する面発光レーザ素子であり、図6に示すように、9個の発光部(ch1〜ch9)が2次元配列されている面発光レーザアレイである。具体的には、1つの面発光レーザ素子、即ち、1つのVCSELチップには、9個の発光部(VCSEL)を含んでおり、各々の発光部は各々の発光部に対応して設けられた電極パッドと配線を介し接続されている。
【0053】
本実施の形態では、光源110は面発光レーザ素子により形成されているものであるため、第1の実施の形態における光源近傍に設けられた光源から出射された光を所定の直線偏光の光とする偏光フィルタが不要となる。また、本実施の形態では、光源110には、直線偏光された多ch(チャネル)の面発光レーザアレイを形成したものであるが、発光部が1つの面発光レーザを形成したものであってもよい。但し、この場合、照射光量に対する内部旋光の光量の割合が微小であるため、S/Nの観点から、高出力照射させることができるよう、複数chを同時に発光させている。
【0054】
尚、光源110、コリメートレンズ20、正反射光検出器30、拡散反射光検出器40、偏光フィルタ41は、第1の実施の形態と同様に、暗箱50内に収納されており、検査対象となる皮膚等と接する面には透明板60が設けられている。
【0055】
ところで、反射光量から皮膚等の表面状態を検出するためには、S/Nを向上させるために、光源110には本実施の形態のようにエネルギー密度の高い半導体レーザを用いることが好ましい。しかしながら、この場合、皮膚等の表面のような粗面に光を照射するとスペックルパターンが発生する。このスペックルパターンは、光が照射される部分により異なるため、正反射光検出器30及び拡散反射光検出器40における検出光にばらつきが生じ、識別精度の低下を招いてしまう。
【0056】
このため、複数のchを同時に発光させることにより、1chだけを発光させた場合に比べて、反射光のスペックルパターンのコントラスト比を低減させることができ、より正確な反射光量の検出が可能となる。よって、計測精度を高め、識別精度を高めることができる。
【0057】
更に、光源110において面発光レーザを用いる場合には、LED等では困難とされている高密度な集積化が可能となり、コリメートレンズ20の光軸近傍に光源110より出射されたすべてのレーザ光を集めることができる。これにより、これらのレーザ光について入射角を一定にしてコリメートすることができる。
【0058】
本実施の形態では、光源110に面発光レーザを用いることにより、光源110からの出射光側に設けられていた偏光フィルタが不要となるため、検査装置をより一層小型化及び低コスト化することができる。
【0059】
尚、上記以外の内容は第1の実施の形態と同様である。
【0060】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態における検査装置ついて説明する。本実施の形態は、光源、正反射光検出器及び散乱反射光検出器からなる測定系を2つ有するものである。具体的には、図7及び図8に示すように、本実施の形態における検査装置は、第1の測定系201と第2の測定系202を有している。第1の測定系201は、第1の光源部210と、第1の正反射光検出器231と第1の散乱反射光検出器241とを有している。第1の光源部210は、VCSEL等からなる光源211とコリメートレンズ212とを有している。また、第1の散乱反射光検出器241の前には、偏光フィルタ251が設けられている。第2の測定系202は、第2の光源部220と、第2の正反射光検出器232と第2の散乱反射光検出器242とを有している。第2の光源部220は、VCSEL等からなる光源221とコリメートレンズ221とを有している。また、第2の散乱反射光検出器242の前には、偏光フィルタ252が設けられている。本実施の形態では、第1の正反射光検出器231及び第2の正反射光検出器232は、各々に対応する第1の光源部210及び第2の光源部220からの出射された光の正反射光を検出するものである。また、第1の散乱反射光検出器241及び第2の散乱反射光検出器242は、各々に対応する第1の光源部210及び第2の光源部220からの出射された光の散乱反射光を検出するものである。
【0061】
第1の測定系201及び第2の測定系202は、暗箱260内に収納されており、測定対象となる皮膚等と接する部分には透明板261が設けられている。また、第1の正反射光検出器231及び第2の正反射光検出器232、第1の散乱反射光検出器241及び第2の散乱反射光検出器242は、解析部70に接続されており、第1の正反射光検出器231及び第2の正反射光検出器232、第1の散乱反射光検出器241及び第2の散乱反射光検出器242はより得られた情報に基づき、皮膚等の解析を行ない、表示部80において、検査の結果となる皮膚等の状態の表示を行なう。
【0062】
暗箱260は、アルミニウム製であり、外乱光及び迷光の影響を低減するため、表面に黒アルマイト処理が施されており、検査対象となる皮膚等と接する面の一部には開口を有している。この開口には、第1の光源部210及び第2の光源部220から出射された波長の光が透過する透明板261が設置されている。
【0063】
光源211及び221は、第2の実施の形態に記載されている光源と同様にVCSELが用いられている。第1の光源部210及び第2の光源部220からは、各々S偏光の光が出射されるように形成されている。
【0064】
第1の光源部210より皮膚等に照射される光の照射角度と第2の光源部220より皮膚等に照射される光の照射角度はともに同じ角度θであり、本実施の形態では、角度θは80°である。尚、角度θは、皮膚等の表面の法線に対する角度である。また、第1の光源部210より皮膚等に光の照射される照射領域と第2の光源部220より皮膚等に光の照射領域とは略同じ位置であり、略同じ面積となるように形成されている。
【0065】
照明中心と第1の正反射光検出器231の中心とを結ぶ線と皮膚等の表面とのなす角度と、照明中心と第2の正反射光検出器232の中心とを結ぶ線と皮膚等の表面とのなす角度とは同じ角度ψであり、本実施の形態では角度ψは170°である。
【0066】
照明中心と第1の拡散反射光検出器241の中心とを結ぶ線と皮膚等の表面とのなす角度と、照明中心と第2の拡散反射光検出器242の中心とを結ぶ線と皮膚等の表面とのなす角度とは同じ角度φであり、本実施の形態では角度φは約90°である。
【0067】
尚、第1の光源部210、照明中心、第1の正反射光検出器231、第1の散乱反射光検出器241は略同一面上に配置されており、第2の光源部210、照明中心、第2の正反射光検出器232、第2の散乱反射光検出器242は略同一面上に配置されている。
【0068】
偏光フィルタ251及び252は、照明中心の+Z側に配置されており、P偏光の光を透過し、S偏光の光は遮光するものである。尚、この偏光フィルタ251及び252に代えて、同等の機能を有する偏光ビームスプリッタを用いてもよい。
【0069】
本実施の形態における検査装置では、第1の実施形態と同様に解析部70および表示部80を備えており、第1の正反射光検出器231及び第2の正反射光検出器232、第1の散乱反射光検出器241及び第2の散乱反射光検出器242は、それぞれ受光光量に対応する電気信号(光電変換信号)を出力し、これらの電気信号は解析部70に入力されて解析が行なわれる。尚、本実施の形態では、第1の光源部210から出射された光束が皮膚等に照射した場合において、第1の正反射光検出器211の出力信号における信号レベルを「S11」、第1の拡散反射光検出器212の出力信号における信号レベルを「S12」と記載する。また、第2の光源部220から出射された光束が皮膚等に照射した場合において、第2の正反射光検出器221の出力信号における信号レベルを「S21」、第2の拡散反射光検出器222の出力信号における信号レベルを「S22」と記載する。また、内部拡散反射光を精度良く検出するために、第1の光源部210における発光時間と第2の光源部220における発光時間とが重なることのないように、各々個別に点灯させることにより解析部70等により制御されている。これにより、相互に異なる測定系における反射光が検出されることはない。
【0070】
解析部70では、様々な状態における多数の皮膚等のサンプルに対して予め計測された信号レベルS11、S12、S21及びS22の値が「皮膚状態判別テーブル」として、解析部70内のROM等からなる記憶部71に記憶されている。解析部70は、計測対象となる皮膚等により検出された信号レベルS11、S12、S21及びS22の値に基づき、皮膚状態判別テーブルにおける多数の皮膚等のサンプルから、最も近い皮膚の状態を特定し、特定された状態等を表示部80に表示する。
【0071】
このように、本実施の形態における検査装置では、表示部80において表示された情報に基づき、最適なスキンケア商品やスキンケア方法を選定することができ、また、有用な化粧品成分の開発に活用したりすることができる。
【0072】
皮膚等の真皮層におけるコラーゲンのような配向を持つ繊維状の散乱体では、反射光はXY面内で異方性があり、照射方向によって正反射と拡散反射の割合が変化する。本実施の形態のおける検査装置では、XY面における複数の方向から光を照射して、正反射光量、表面拡散反射光量、内部拡散反射光量、およびそれぞれの変化量などの演算値を用いることにより皮膚の表面および内部の状態をより精度良く検査することが可能であり、皮膚内部のコラーゲン配向の有無や配向方向の検査をより確かなものとすることができる。
【0073】
コラーゲンの配向状態は、皮膚のしわの発生と相関があると考えられるため、本実施の形態における検査装置を用いて皮膚内部のコラーゲンの状態と皮膚のしわの状態を同時に検査することにより、しわの発生原因が皮膚内部の変化に起因するかどうかなどの判定を行うことができる。また、皮膚表面にしわが発生する前に皮膚内部の状態を知ることで、しわを予防するためのスキンケア製品を選定したりすることができる
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様である。
【0074】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、透明板360の両面は平行ではなく、一方の面に対し他方の面が傾斜している。即ち、図9に示されるように、本実施の形態における検査装置は、平行平板ではない透明板360を有している。この透明板360は外側の一方の面と内側の他方の面が平行には形成されてはいないため、光源10から出射された光のうち、透明板360の外側の一方の面と皮膚等との間で正反射された光は、正反射光検出器30において検出されるが、透明基板360の内側の他方の面で反射された光は、一方の面とは異なる角度で反射されるため、正反射光検出器30に入射することはない。
【0075】
よって、透明板360において裏面反射した光、即ち、他方の面からの反射した光が正反射光検出器30に入射しないように形成されているため、正確な検査を行なうことができる。
【0076】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様であり、第2の実施の形態及び第3の実施の形態にも適用することができる。
【0077】
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態における検査装置は、光学センサを有する光学式検査装置である。具体的には、図10に示すように、光源10、偏光フィルタ11、コリメートレンズ20、正反射光検出器30、拡散反射光検出器40、偏光フィルタ41を有している。光源10、偏光フィルタ11、コリメートレンズ20、正反射光検出器30、拡散反射光検出器40、偏光フィルタ41は、暗箱50内に収納されており、暗箱50内部全体が透明部材450により固められている構造のものである。
【0078】
このような透明部材450としては、透明な樹脂材料等が挙げられる。透明部材450の表面は、皮膚等と直接接する面であり、この面により照明中心の位置も定まるため、平坦化や研磨等により鏡面等の平面となるように形成されている。
【0079】
このように、暗箱50内部全体を透明部材450により固定することにより、光源10、偏光フィルタ11、コリメートレンズ20、正反射光検出器30、拡散反射光検出器40、偏光フィルタ41等の位置を確実に固定することができる。これにより、振動等により位置ずれが生じることがなく、信頼性の高い検査を行なうことができる。
【0080】
また、暗箱50内部全体を透明部材450により固めることにより、透明板等における裏面反射の問題が生じなくなり、また、透明板の界面において生じる光の屈折等を考量する必要がない。よって、特性を向上させるとともに、設計や製造しやすいといった利点を有している。
【0081】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様であり、第2の実施の形態及び第3の実施の形態にも適用することができる。
【0082】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0083】
10 光源
11 偏光フィルタ
20 コリメートレンズ
30 正反射光検出器
40 散乱反射光検出器
41 偏光フィルタ
50 暗箱
60 透明板
70 解析部
71 記憶部
80 表示部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2009−236610号公報
【特許文献2】特開2008−302101号公報
【特許文献3】特許第4105554号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏光方向の直線偏光の光を検査対象に照射する光源と、
前記光源より照射された光のうち、前記検査対象において正反射された光を検出する正反射光検出器と、
前記光源より照射された光のうち、前記検査対象において拡散反射された光であって、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の光を透過する光学素子と、
前記光学素子を通過した光を検出する拡散反射光検出器と、
前記光源、前記正反射光検出器、前記光学素子、前記拡散反射光検出器を覆い、前記光源より前記検査対象に光が照射される部分に開口を有する暗箱と、
前記暗箱の前記開口に設けられた前記検査対象と接する透明板と、
を有することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記透明板は、一方の面と他方の面とが平行ではないことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
第1の偏光方向の直線偏光の光を検査対象に照射する光源と、
前記光源より照射された光のうち、前記検査対象において正反射された光を検出する正反射光検出器と、
前記光源より照射された光のうち、前記検査対象において拡散反射された光であって、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の光を透過する光学素子と、
前記光学素子を通過した光を検出する拡散反射光検出器と、
前記光源、前記正反射光検出器、前記光学素子、前記拡散反射光検出器を覆い、前記光源より前記検査対象に光が照射される部分に開口を有する暗箱と、
前記暗箱の内部全体に形成された透明部材と、
を有することを特徴とする検査装置。
【請求項4】
前記光源より出射された光は、前記検査対象における照射領域に照射され、
前記拡散反射光検出器は、前記照射領域において前記検査対象の表面に対し略垂直方向に設置されているものであることを特徴とする請求項1から3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記光源、前記正反射光検出器及び前記拡散反射光検出器を含む測定系を複数有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の検査装置。
【請求項6】
前記光源は、
発光ダイオードと、
前記発光ダイオードより出射された光のうち、第1の偏光方向の成分のみを透過する光学素子と、を有するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の検査装置。
【請求項7】
前記光源は1または複数の面発光レーザを有するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の検査装置。
【請求項8】
前記光源は複数の前記面発光レーザが2次元的に配列されている面発光レーザアレイであることを特徴とする請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記正反射光検出器及び前記拡散反射光検出器は解析部と接続されており、
前記解析部には、前記正反射光検出器により得られた値及び前記拡散反射光検出器により得られた値に基づき前記検査対象の表面及び表面近傍の内部状態を前記解析部に接続された表示部に表示させることを特徴とすることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−187358(P2012−187358A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55826(P2011−55826)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】