説明

検測システム及び検測装置及び無線局

【課題】検測装置を搭載した移動体(例えば列車)が検測モードを解除せずにゾーンを渡ると、中央装置は列車がゾーンを渡ったことを判断できないため検測モードが解除できなくなるなどの問題があった。
【解決手段】中央装置1a,1bは、検測装置4による検測の対象となる検測対象回線の使用状態を示す報知情報を伝送する「下り電波6a、6b」を基地局2a,2bから送信する。列車5内に設置された検測装置4がゾーンAからゾーンBに移動する場合、中央装置1a、1bから伝送路8a、8bを経由して基地局2a、2bが送信する下り電波6a、6bを検測用移動局3にて受信する。検測装置4の検測側報知情報受信部41は検測用移動局3を介して下り電波6a、6bにより伝送された「報知情報」を伝送路9を経由して受信する。検測側報知情報受信部41が「空き」の報知情報を受信した場合、検測側品質測定部42は検測を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中央装置と有線接続された複数の基地局により構成するゾーンを複数有する無線システムにおいて、複数ゾーン間を移動するとともに、基地局と無線方式によって交信を行う検測用移動局と、検測用移動局と有線接続された検測装置とを使用した無線システムの無線回線品質を測定する検測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の検測システムでは、検測装置を搭載した移動体(例えば列車)がゾーン間をまたいで検測を行う場合、ゾーンを渡る手前で手動により中央装置に検測モードの解除を通達して検測を中断し、ゾーンを渡った後に手動により中央装置に検測モードの開始を通達して検測を再開していた。
【0003】
このように、中央装置は検測装置から手動により検測モードの開始または解除を指示されて、検測モードの開始又は解除を行っていた。検測に関する文献として特許文献1がある。
【特許文献1】特開2004−48482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシステムは以上のように構成されているため、検測装置を搭載した移動体(例えば列車)が中央装置の検測モードを解除せずにゾーンを渡った場合、中央装置は列車がゾーンを渡ったことを判断できず、検測モードが解除できなくなるなどの問題があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、検測装置を搭載した移動体(例えば列車)がゾーン間をまたいで検測を行う場合でも、中央装置の検測モードを自動的に解除することを目的とする。また、手動により検測を中断することなく検測を自動再開するとともに、自動で中央装置に対して検測モードの開始を要求することが可能な検測システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の検測システムは、
複数の無線回線を使用して無線通信を行なう無線局と、
移動体に装備される移動体通信装置であって前記複数の無線回線により前記無線局と通信を行なう移動体通信装置と通信可能に接続するとともに前記複数の無線回線のうち測定対象となる測定対象回線の品質を測定する検測装置と
を備えた検測システムにおいて、
前記無線局は、
前記測定対象回線の使用状態を示す報知情報を作成する局側報知情報作成部と、
前記局側報知情報作成部が作成した前記報知情報を送信する局側通信部と、
前記検測装置による前記測定対象回線の品質の測定に対応する動作状態を示す検測モードを開始する局側検測モード制御部と
を備え、
前記検測装置は、
前記移動体通信装置を介して前記報知情報を受信する検測側報知情報受信部と、
前記検測側報知情報受信部が受信した前記報知情報の示す前記測定対象回線の使用状態に基づいて前記測定対象回線の品質の測定を開始するとともに測定の開始を示す開始信号を前記移動体通信装置を介して前記無線局に送信する検測側品質測定部とを備え、
前記無線局の前記局側通信部は、
前記検測装置の検測側品質測定部が送信した前記開始信号を受信し、
前記無線局の前記局側検測モード制御部は、
前記局側通信部が前記開始信号を受信した場合に、受信した前記開始信号に応答して前記検測モードを開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、検測装置、及び無線局は自動的に検測を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による検測システム1000の構成を示す構成図である。図において、検測システム1000は、列車5(移動体の一例)、無線局100a、無線局100bを備える。無線局100aと無線局100bとの構成、動作は同じである。なお無線局100bの構成要素の説明をする場合は、符号「b」を付す。
【0009】
列車5は、検測用移動局3(移動体通信装置)と、検測装置4とを備える。検測装置4は、検測側報知情報受信部41と検測側品質測定部42とを備える。検測用移動局3と検測装置4とは伝送路9により有線接続されている。伝送路9は、「下り電波6a、6b」により伝送される「報知情報」の内容が「空き」、「使用中」、「検測中」のいずれかであることを検測用移動局3から検測装置4に伝送するための伝送路である。検測装置4は、検測用移動局3を介して、中央装置1a、1bに検測モードの開始指示を行うための「検測要求」や、検測モードの解除指示を行うための「検測解除要求」を伝送する「上り電波7」を基地局2a、2bに送信する。
【0010】
無線局100aは、中央装置1aと2つの基地局2a(局側通信部の一例)とを備える。中央装置1aは、局側報知情報作成部101a、局側検測モード制御部102a、局側監視部103aを備える。基地局2aは、後述する「報知情報」を伝送する「下り電波6a」を、検測用移動局3に向けて送信する。中央装置1aと各基地局2aは伝送路8aにより有線接続されている。
【0011】
図2は、図1に示した中央装置1aの外観の一例を示す図である。図2の中央装置1aは、CPU(Central Processing Unit)、入出力部、記憶部を備えるコンピュータである。図2において、中央装置1aは、システムユニット700、液晶ディスプレイ610、キーボード(K/B)611、マウス612、コンパクトディスク装置(CDD)750、プリンタ760を備え、これらはケーブルで接続されている。また、中央装置1aは各基地局2aに有線接続されている。
【0012】
図3は、図2の中央装置1aのハードウェア構成図である。図3において、中央装置1aは、プログラムを実行するCPU710を備えている。CPU710は、バス711を介してROM731、RAM732、液晶ディスプレイ610、K/B611、マウス612、通信ボード733、FDD(Flexible Disk Drive)740、CDD750、プリンタ760、及び磁気ディスク装置720と接続されている。図3において上記通信ボード733を介して各基地局2aと有線接続されている。
【0013】
磁気ディスク装置720には、オペレーティングシステム(OS)721、ウィンドウシステム722、プログラム群723、ファイル群724が記憶されている。プログラム群723は、CPU710、OS721、ウィンドウシステム722により実行される。図3において、キーボード611、FDD740、CDD750等は入力部である。液晶ディスプレイ610、プリンタ760、FDD740、CDD750等は出力部である。磁気ディスク装置720、ROM731、RAM732等は記憶部である。
【0014】
上記プログラム群723には、以下に述べる実施の形態の中央装置1aにおいて「局側報知情報作成部」、「局側検測モード制御部」、「局側監視部」等として説明する機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU710により読み出され実行される。
【0015】
また、以下に述べる実施の形態の説明において「局側報知情報作成部」、「局側検測モード制御部」、「局側監視部」等として説明するものは、ROM731に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、ハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。
【0016】
また、実施の形態1における検測装置4も図2、図3に示す中央装置1aと同様のコンピュータである(図示はしていない)。検測装置4の場合も中央装置1aと同様に、プログラム群723には、以下に述べる実施の形態の検測装置4において「検測側品質測定部」、「検測側報知情報受信部」等として説明する機能を実行するプログラムが記憶されている。また、中央装置1aの場合は通信ボード733を介して基地局2aと接続しているのに対して、検測装置4は通信ボード733を介して検測用移動局3と接続している。
【0017】
次に、「報知情報」について説明する。中央装置1aは、「報知情報」を常時送信している。本検測システム1000は、1つのゾーン(例えばゾーンA)に複数在線する列車(検測用移動局)が、有限の「通話及びデータ回線(例えば1回線)」を共用して中央装置の「指令卓」と通話またはデータ伝送を行うことを想定している。検測装置4は、この「通話及びデータ回線」の回線品質を測定する。測定対象になる「通話及びデータ回線」を以下、測定対象回線という場合がある。「通話及びデータ回線」の使用状態は、「通話及びデータ回線」と別の回線を使用して「報知情報(空き、使用中、検測中のいずれかを示す)」により、全ての列車(検測用移動局)に同報されている。このように、中央装置と列車の検測用移動局とは、「測定対象回線」、及び報知情報を伝送する回線との少なくとも2つの無線回線(複数の無線回線)を使用して通信を行う。ここで「報知情報」とは、中央装置との通信に使用する「測定対象回線」の使用状態を示す情報である。「報知情報」は3つの状態がある。「空き」、「使用中」、「検測中」である。「空き」とは、「測定対象回線」が使用されておらず、使用可能な状態を示す。「使用中」とは、「測定対象回線」が通話またはデータ伝送に使用されている状態を示す。また、「検測中」とは「測定対象回線」が検測のため、検測装置4に使用されている状態を示す。3つの状態のうち「報知情報」が「空き」の場合のみ、列車は、指令卓と通話でき、あるいは検測装置4は品質を検測できる。「報知情報」の内容が「検測中」又は「使用中」の場合は、検測装置4は検測を開始することはできない。検測システム1000は、この通話またはデータ伝送を行なう無線回線(測定対象回線)の品質を確認するために、「通話及びデータ回線」を使用して通信する。
【0018】
次に、図4を参照して検測の開始を説明する。図4は、検測システム1000における検測の開始動作を説明するシーケンス図である。図において基地局は中央装置からのデータを電波に変換して検測用移動局に送信し、また検測用移動局からの電波を受信して中央装置にデータを渡す機能のため、中央装置に含めて「中央/基地局」と表現している。
【0019】
図1において、ゾーンAに在線する列車5に装備された検測装置4が、検測を開始する場合を説明する。
【0020】
(1)検測用移動局3は、「下り電波6a」を受信する。この「下り電波6a」は、中央装置1aから伝送路8aを経由され基地局2aが送信する。この「下り電波6a」は、中央装置1aの局側報知情報作成部101aが作成した「報知情報」を含む(S1)。
(2)検測用移動局3は、「下り電波6a」にて伝送された「報知情報」を、伝送路9を経由して検測装置4に伝送する(S2)。検測装置4の検測側報知情報受信部41は、この報知情報を受信する。「報知情報」を受信した検測装置4は、検測側品質測定部42により「報知情報」の内容が「空き」、「使用中」、「検測中」のいずれになっているのかを確認する。
(3)検測装置4の検測側品質測定部42が「報知情報」の内容を「空き」と確認した場合、検測側品質測定部42は、測定対象回線の測定の開始動作を起動する。すなわち、中央装置1aに対して検測モードの開始を求めるため、検測モードの開始を指示する最初の「検測要求」(開始信号の一例)を作成する。ここで「最初の」とは、後述のように測定を開始した以降は、測定中に検測要求は断続的に送信されるからである。また「検測モード」とは、検測装置4による測定対象回線の品質の測定に対応する中央装置1aの動作状態を意味する。検測側品質測定部42は、作成した「検測要求」を伝送する「上り電波7」を検測用移動局3に送信させる(S3、S4)。このように検測装置4は、「空き」の「報知情報」を受信した場合、検測を要求することが一つの特徴である。
(4)検測用移動局3が送信した「検測要求」を伝送する「上り電波7」は、基地局2aにて受信され、伝送路8aを経由して中央装置1aに伝送される。これにより「最初の検測要求」が中央装置1aに伝送される。中央装置1aの局側検測モード制御部102aは、受信した「最初の検測要求」に応答して、検測モードを開始する。
(5)中央装置1aの局側報知情報作成部101aは、局側検測モード制御部102aによる検測モードの開始に伴い、「報知情報」を「空き」から「検測中」に変更し、伝送路8aを経由して基地局2aから「報知情報」の内容が「検測中」になった「下り電波6a」を送信する(S5)。
(6)「報知情報」の内容が「検測中」になった「下り電波6a」は、検測用移動局3にて受信され、伝送路9を経由して検測装置4の検測側報知情報受信部41に受信される。そして「報知情報」の内容が「検測中」になったことが、検測側品質測定部42に伝送される(S6)。そして、検測装置4の検測側品質測定部42は検測を開始する。図4の破線で囲むステップが検測中の動作を示している。以上が図4のS1〜S6の過程である。
【0021】
次に、列車5(検測装置4)がゾーンAからゾーンBに移動した場合、すなわちゾーン渡りした場合における、中央装置1aの検測モードの自動解除、及びゾーンBに移動した検測装置4の検測モードの自動開始について説明する。
(1)検測装置4の検測側品質測定部42は、所定の時間間隔(均等な時間間隔、あるいは不均等な時間間隔)で断続的に、検測用移動局3を介して、2回目以降の「検測要求」(測定中信号の一例)を伝送する「上り電波7」を送信させる。基地局2aがこの「上り電波7」を受信し、伝送路8aを経由し、中央装置1aに2回目以降の「検測要求」を伝送する。
(2)中央装置1aの局側監視部103aは、断続的に伝送される2回目以降の「検測要求」を基地局2aが受信できているかどうかを監視し、基地局2aが2回目以降の「検測要求」を受信できているかどうかを判定する。局側監視部103aが「基地局2aは2回目以降の検測要求を受信できている」と判定した場合、局側検測モード制御部102aは検測モードを継続する。一方、列車5がゾーンAからゾーンBに移動した場合、検測装置4が断続的に送信する「検測要求」は、中央装置1aに届かなくなる。この場合、局側監視部103aは「基地局2aは2回目以降の検測要求を受信できていない」と判定する。局側監視部103aが「基地局2aは2回目以降の検測要求を受信できていない」と判定した場合、局側検測モード制御部102aは検測モードを解除する。このように、検測モード中、一定時間経過しても中央装置1aに2回目以降の「検測要求」が伝送されなかった場合、中央装置1aの局側監視部103aは、検測装置4がゾーンAから他のゾーン(例えばゾーンB)に移動したと判断する。この判断に伴い、局側検測モード制御部102aは、検測モードを解除する。検測モードが解除された場合、局側報知情報作成部101aは、「報知情報」の内容を「検測中」から「空き」に変更し、伝送路8aを経由して基地局2aから「空き」の報知情報を伝送する「下り電波6a」を送信させる。この動作により中央装置1aは、自動的に検測モードを解除することができる。
(3)検測装置4がゾーンBに移動し、検測側報知情報受信部41が検測用移動局3を介して「空き」の「報知情報」を中央装置1bから受信した場合に、図4のS3以降のステップ同様、検測装置4の検測側品質測定部42は、中央装置1bに検測を要求し、以下、検測が開始される。これにより、自動的に検測モードを開始することが可能となる。これについては図6の説明で詳しく述べる。
【0022】
次に図5を参照して、検測装置4がゾーンA内で検測を開始するとともに検測を終了する場合を説明する。図5は、実施の形態1における検測システムの検測終了時の動作を示す。図において基地局は中央装置からのデータを電波に変換して移動局に送信し、また移動局からの電波を受信して中央装置にデータを渡すだけの機能のため、中央装置に含めて「中央/基地局」と表現した。
(1)図5の破線で囲む部分は、図4の破線で囲む部分と同様に検測中のステップを示している。S27以降から説明する。ゾーンAに在線する列車5内の検測装置4が検測を終了する場合、検測装置4の検測側品質測定部42は、中央装置1aに対して検測モードの解除を伝送するため、検測用移動局3から検測モードの解除指示を行うための「検測解除要求」を伝送する「上り電波7」を送信させる(S26,S27)。
(2)「検測解除要求」を伝送する「上り電波7」は基地局2aにて受信され、伝送路8aを経由して中央装置1aに「検測解除要求」が伝送される。中央装置1aの局側検測モード制御部102aは、検測モードを解除する。そして、中央装置1aの局側検測モード制御部102aは、検測終了の応答を基地局2aを介して送信する(S28,S29)。
(3)中央装置1aの局側報知情報作成部101aは「報知情報」を「検測中」から「空き」に変更し、伝送路8aを経由して基地局2aにて「報知情報」の内容が「空き」になった「下り電波6a」を送信する(S30,S31)。
(4)「報知情報」の内容が「空き」になった「下り電波6a」は検測用移動局3にて受信され、伝送路9を経由して検測装置4の検測側報知情報受信部41に伝送され、これを受けて、検測側品質測定部42は、検測(測定)を終了する(S31)。
(5)以上、図3のS26〜S31で説明したように、ゾーンをまたがず検測を行なう場合、検測装置4が最初の「検測要求」を送信して検測が開始され、「検測解除要求」を送信して検測を終了する。一方、ゾーンをまたいで検測を行なう場合、列車が抜けてしまったゾーンの中央装置1aは、「検測解除要求」を送信する列車がいなくなったので、「検測解除要求」を受信することができない。このため、上記のように、中央装置1aでは局側監視部103aが2回目以降の「検測要求」を監視している。監視の結果、局側監視部103aが2回目以降の「検測要求」が受信できなくなったと判定した場合に、局側検測モード制御部102aが検測モードを終了する。ゾーンBにおいて検測を開始又は終了する場合も同様の動作である。
【0023】
次に、図6を参照して、ゾーンAに在線する列車5内の検測装置4が、検測を行いながらゾーンBに移動する場合について説明する。図6は、実施の形態1における検測システム1000のゾーン渡り時の動作を示す。図において基地局は中央装置からのデータを電波に変換して移動局に送信し、また移動局からの電波を受信して中央装置にデータを渡すだけの機能のため、中央装置に含めて「中央/基地局」と表現した。
【0024】
(1)図6において、S41〜S45の破線で囲む部分は、図4の破線で囲む部分と同様に検測中のステップを示している。ゾーンAにおいては、検測用移動局3は、中央装置1aから伝送路8aを経由して基地局2aが送信する「下り電波6a」を受信する。そして、検測用移動局3から伝送路9を経由して検測装置4に「下り電波6a」が伝送される。検測装置4は検測中(図6の破線で囲む部分に対応)であるので、検測装置4に伝送される「下り電波6a」の含む「報知情報」の内容は、「検測中」である。
(2)検測装置4がゾーンBに移動した場合(S46以降)を説明する。列車5内の検測装置4がゾーンAからゾーンBに移動する場合を考える。検測装置4は、中央装置1bから伝送路8bを経由して基地局2bが送信する「下り電波6b」(報知情報)を、検測用移動局3を介して検測側報知情報受信部41により受信する。図6の場合、S46において無線局100b(中央装置1b、基地局2b)と移動局5’とが音声通信により測定対象回線を使用中である。よって、無線局100b(中央装置1b、基地局2b)が送信する「報知情報」の示す回線の使用状態は「使用中」である(S47、S48)。S49で、この音声通信が終了し、「報知情報」が「空き」となる。検測装置4の検測側品質測定部42による測定対象回線の品質測定中に「空き」を示す「報知情報」が「伝送路9」を経由して検測側報知情報受信部41により新たに受信された場合(S50、S51)、図4のS3以降の動作同様、検測側品質測定部42は測定動作を新たに起動し、検測モードの開始指示を行う最初の「検測要求」(開始信号)を伝送する「上り電波7」を検測用移動局3から送信させる(S52、S53)。検測要求を伝送する「上り電波7」は基地局2bにて受信され、伝送路8bを経由して中央装置1bに伝送される。これにより、検測要求が中央装置1bに伝送され、中央装置1bの局側検測モード制御部102bは、検測モードを開始する。
(3)また、中央装置1bでは局側報知情報作成部101bが「報知情報」を「空き」から「検測中」に変更する。「検測中」に変更された「報知情報」は、伝送路8bを経由して基地局2bから「下り電波6b」として送信される。
(4)検測中となった「報知情報」を伝送する「下り電波6b」は、検測用移動局3にて受信され、伝送路9を経由して検測装置4の検測側報知情報受信部41に「報知情報」の内容が「検測中」になったことが伝送され、検測装置4の検測側品質測定部42が検測(測定)を開始する。
(5)その後、検測装置4の検測側品質測定部42は、2回目以降の「検測要求」を伝送する「上り電波7」を検測用移動局3から断続的に送信させる。
(6)基地局2bは、「検測要求」を伝送する「上り電波7」を受信し、伝送路8bを経由して中央装置1bに「検測要求」を伝送する。
(7)中央装置1bの局側監視部103bは、断続的に伝送される「検測要求」を例えば一定時間ごとに確認する。この監視の結果、「検測要求」が受信できている場合、局側検測モード制御部102bは、検測モードを継続させる。
(8)前述のようにゾーンAでは中央装置1aに「検測要求」が一定時間経過しても伝送されなくなるため、中央装置1aの局側監視部103aは検測装置4がゾーンAからゾーンBに移動したとして判断し、これに伴い局側検測モード制御部102aが検測モードを解除する。検測モードが解除されると、局側報知情報作成部101aは「報知情報」の内容を「検測中」から「空き」に変更し、伝送路8aを経由して基地局2aから「下り電波6a」を送信させる。
(9)以上のようにして、検測装置4がゾーンAからゾーンBに移動した場合でも検測を自動再開するとともに、中央装置1aの検測モードを自動的に解除することができる。
【0025】
図7は、検測システム1000において、検測装置及び中央装置が検測を開始する場合、解除する場合をまとめた図である。
【0026】
検測装置が検測を開始するのは次の場合である。
(1)測定中でない場合に「空き」の報知情報を受信した場合に、検測装置は検測(測定)を開始する。
(2)測定中において検測解除要求を送信する前に「空き」の報知情報を受信した場合に、検測装置は新たに検測を開始する。
【0027】
検測装置が検測を解除するのは次の場合である。
(1)測定中において検測解除要求を送信する前に「空き」の報知情報を受信した場合に、検測装置はそれまでの検測を終了する(それまでの検測を解除し、新たに検測を再開する)。
(2)検測装置は検測が終了した場合に検測を解除する。
【0028】
中央装置が検測を開始するのは次の場合である。
(1)検測装置から最初の「検測要求」を受信した場合に、中央装置は検測モードを開始する。
【0029】
中央装置が検測を解除するのは次の場合である。
(1)「検測解除要求」を受信した場合に、中央装置は検測モードを解除する。
(2)検測中に2回目以降の「検測要求」を受信できなくなった場合に、中央装置は検測モードを解除する。
【0030】
実施の形態1の検測システム1000は、検測装置4の検測側報知情報受信部41が「空き」の報知情報を受信した場合、検測側品質測定部42が検測を開始する。よって検測装置4は自動的に検測を開始することができる。また、中央装置は、基地局を介して最初の検測要求を受信した場合に、局側検測モード制御部が検測モードを開始する。よって中央装置は自動的に検測モードを開始することができる。
【0031】
実施の形態1の検測システム1000は、検測装置4の検測側品質測定部42が検測中に2回目以降の検測要求を断続的に送信する。そして中央装置の局側監視部が2回目以降の検測要求が受信できているかを監視し、受信できていないと判定した場合、局側検測モード制御部が検測モードを解除するので、列車がゾーン渡りした場合にも検測モードを自動的に解除することができる。
【0032】
実施の形態1の検測システム1000では、検測側品質測定部42は、検測中に検測側報知情報受信部41が空きを示す報知情報を受信した場合に回線品質の測定を再開する。よって、ゾーン渡りした場合にも、回線品質の測定を再開することができる。
【0033】
実施の形態1の検測装置4は、検測側報知情報受信部41が「空き」の報知情報を受信した場合、検測側品質測定部42が検測を開始する。よって検測装置4は自動的に検測を開始することができる。
【0034】
実施の形態1の検測装置4では、検測側品質測定部42は、検測中に検測側報知情報受信部41が空きを示す報知情報を受信した場合に回線品質の測定を再開する。よって、ゾーン渡りした場合にも、回線品質の測定を再開することができる。
【0035】
実施の形態1の中央装置では、検測装置4から基地局を介して最初の検測要求を受信した場合に、局側検測モード制御部が検測モードを開始する。よって中央装置は自動的に検測モードを開始することができる。
【0036】
実施の形態1の中央装置は、局側監視部が2回目以降の検測要求が受信できているかを監視し、受信できていないと判定した場合、局側検測モード制御部が検測モードを解除する。よって、列車がゾーン渡りした場合にも検測モードを自動的に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施の形態1による検測システム1000の構成を示す構成図である。
【図2】実施の形態1による中央装置の外観の例を示す図である。
【図3】実施の形態1による中央装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【図4】実施の形態1による検測システム1000の検測開始時の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1による検測システム1000の検測終了時の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1による検測システム1000のゾーン渡り時の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1による検測システム1000の検測装置及び中央装置の検測の開始、終了を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1a,1b 中央装置、2a,2b 基地局、3 検測用移動局、4 検測装置、41 検測側報知情報受信部、42 検測側品質測定部、5 列車、6a,6b 下り電波、7 上り電波、8a,8b 伝送路、9 伝送路、100a,100b 無線局、101a 局側報知情報作成部、102a 局側検測モード制御部、103a 局側監視部、611 キーボード、612 マウス、610 液晶ディスプレイ、700 システムユニット、720 磁気ディスク装置、721 OS、722 ウィンドウシステム、723 プログラム群、724 ファイル群、731 ROM、732 RAM、733 通信ボード、740 FDD、750 CDD、760 プリンタ、1000 検測システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線回線を使用して無線通信を行なう無線局と、
移動体に装備される移動体通信装置であって前記複数の無線回線により前記無線局と通信を行なう移動体通信装置と通信可能に接続するとともに前記複数の無線回線のうち測定対象となる測定対象回線の品質を測定する検測装置と
を備えた検測システムにおいて、
前記無線局は、
前記測定対象回線の使用状態を示す報知情報を作成する局側報知情報作成部と、
前記局側報知情報作成部が作成した前記報知情報を送信する局側通信部と、
前記検測装置による前記測定対象回線の品質の測定に対応する動作状態を示す検測モードを開始する局側検測モード制御部と
を備え、
前記検測装置は、
前記移動体通信装置を介して前記報知情報を受信する検測側報知情報受信部と、
前記検測側報知情報受信部が受信した前記報知情報の示す前記測定対象回線の使用状態に基づいて前記測定対象回線の品質の測定を開始するとともに測定の開始を示す開始信号を前記移動体通信装置を介して前記無線局に送信する検測側品質測定部とを備え、
前記無線局の前記局側通信部は、
前記検測装置の検測側品質測定部が送信した前記開始信号を受信し、
前記無線局の前記局側検測モード制御部は、
前記局側通信部が前記開始信号を受信した場合に、受信した前記開始信号に応答して前記検測モードを開始することを特徴とする検測システム。
【請求項2】
前記検測装置の前記検測側品質測定部は、
前記測定対象回線の品質の測定を開始した場合に、測定中であることを示す測定中信号を前記移動体通信装置を介して所定の間隔で前記無線局に送信し、
前記無線局の前記局側通信部は、
前記測定中信号を受信し、
前記無線局は、さらに、
前記局側通信部により受信する前記測定中信号の受信状態を監視し、前記局側通信部により前記測定中信号が受信できているかどうかを判定する局側監視部を備え、
前記無線局の前記局側検測モード制御部は、
前記検測モード中に前記局側監視部が前記局側通信部により前記測定中信号の受信ができていないと判定した場合に、前記検測モードを解除することを特徴とする請求項1記載の検測システム。
【請求項3】
前記検測装置の前記検測側品質測定部は、
前記測定対象回線の品質の測定中に前記検測側報知情報受信部が前記測定対象回線の使用状態が空きであることを示す報知情報を前記移動体通信装置を介して受信した場合に、前記測定対象回線の品質の測定を新たに開始することを特徴とする請求項1記載の検測システム。
【請求項4】
無線回線の品質を測定する検測装置において、
品質を測定する測定対象となる無線回線である測定対象回線の使用状態を示す報知情報を受信する検測側報知情報受信部と、
前記検測側報知情報受信部が受信した前記報知情報の示す前記測定対象回線の使用状態に基づいて、前記測定対象回線の品質の測定を開始する検測側品質測定部と
を備えたことを特徴とする検測装置。
【請求項5】
前記検測側品質測定部は、
前記測定対象回線の品質の測定中に前記検測側報知情報受信部が前記測定対象回線の使用状態が空きであることを示す報知情報を受信した場合に、前記測定対象回線の品質の測定を新たに開始することを特徴とする請求項4記載の検測装置。
【請求項6】
自局の使用する複数の無線回線のうち測定対象となる測定対象回線の品質を測定される無線局において、
前記測定対象回線の使用状態を示す報知情報を作成する局側報知情報作成部と、
前記局側報知情報作成部が作成した前記報知情報を送信するとともに、前記報知情報を受信した前記測定対象回線の品質を測定する検測装置から前記検測装置が前記報知情報の示す前記測定対象回線の使用状態に基づき生成した前記測定対象回線の品質の測定開始を示す開始信号を受信する局側通信部と、
前記局側通信部が受信した前記開始信号に応答して、前記検測装置による前記測定対象回線の品質の測定に対応する動作状態を示す検測モードを開始する局側検測モード制御部と
を備えたことを特徴とする無線局。
【請求項7】
前記検測装置は、
前記測定対象回線の品質の測定を開始した場合に、測定中であることを示す測定中信号を所定の間隔で送信し、
前記局側通信部は、
前記測定中信号を受信し、
前記無線局は、さらに、
前記局側通信部により受信する前記測定中信号の受信状態を監視し、前記局側通信部により前記測定中信号が受信できているかどうかを判定する局側監視部を備え、
前記局側検測モード制御部は、
前記検測モード中に前記局側監視部が前記局側通信部により前記測定中信号の受信ができていないと判定した場合に、前記検測モードを解除することを特徴とする請求項6記載の無線局。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−13367(P2007−13367A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189349(P2005−189349)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】