説明

検知体ユニットの取付構造

【課題】本発明の目的は、検知体ブラケットの保持部において検知体の複数の取付方向が設定されることにより、検知体ユニットの固定先に応じて検知体の取付方向を設定することができ、汎用性に優れた検知体ユニットの取付構造の提供にある。
【解決手段】車両が備える車両側変位部の変位を検知する検知体としてのリミットスイッチ41と、リミットスイッチ41を保持する検知体ブラケットとしてのスイッチブラケット50とを含む検知体ユニット40が構成される。検知体ユニット40を車両側変位部の近傍に固定することにより、リミットスイッチ41を車両側変位部に臨ませる。スイッチブラケット50は、リミットスイッチ41を保持する保持部を有し、保持部においてリミットスイッチ41の複数の取付方向が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検知体ユニットの取付構造に関し、パーキングレバー等の操作により変位する車両側変位部を検知する検知体と、検知体を保持する検知体ブラケットとを含む検知体ユニットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にパーキングブレーキを備える車両では、パーキングブレーキが確実に作動したことを検知することができるようにしていることが多い。
具体的には、操作レバーの操作によりインナーケーブルに作用する張力が設定値以上になったとき、検知スイッチが入る構造の荷重検知手段を設けておき、検知スイッチが入ることによりパーキングブレーキの作動を検知するようにしている。
因みに、荷重検知手段を操作レバーの力点側、あるいはケーブルの中間部、パーキングブレーキ側のブレーキレバー部材に設ける点は公知である。
例えば、特許文献1に開示された技術では、パーキングブレーキ側のブレーキレバー部材に板ばね部材からなる荷重検知手段を設けており、この技術では、既存のパーキングブレーキに対して大きな変更を伴わず簡単に荷重検知手段を取り付けることができるとしている。
【0003】
また、関連する従来の技術としては、例えば、特許文献2に開示されたリミットスイッチ等の取付板を挙げることができる。
この種の技術では、検知体としてのリミットスイッチを保持する取付板を梁や支柱等の取付先に取り付ける技術が開示されており、コ字状に屈曲された締着部材とねじ込みボルトが取付先を挟着することにより取付板を取付先に固定している。
この技術によれば、取付先に対して取付板の位置調節が容易である。
【特許文献1】特開昭58−209643号公報
【特許文献2】実開昭60−93244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、検知体に相当する検知スイッチ又はリミットスイッチは、検知体ブラケットに相当する板ばね部材又は取付板に対して特定の位置に保持されており、検知体ブラケットに保持される検知体の向きを必要に応じて変更することができない。
つまり、検知体と検知体ブラケットの組み合わせを検知体ユニットとするとき、検知体ブラケットに保持される検知体の向きが特定の方向に限定され、検知体ユニットとしての汎用性に乏しいという問題がある。
因みに、特許文献2では、取付板に長孔が形成されており、リミットスイッチを長孔に沿う位置で保持することはできるものの、リミットスイッチの取付方向を変更することはできない。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、検知体ブラケットの保持部において検知体の複数の取付方向を設定することにより、検知体ユニットの固定先に応じて検知体の取付方向を選択することができ、汎用性に優れた検知体ユニットの取付構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明は、車両が備える車両側変位部の変位を検知する検知体と、該検知体を保持する検知体ブラケットとを含む検知体ユニットが構成され、前記検知体ユニットを前記車両側変位部の近傍に固定することにより、前記検知体を前記車両側変位部に臨ませた検知体ユニットの取付構造であって、前記検知体ブラケットは、前記検知体を保持する保持部を有し、前記保持部において前記検知体の複数の取付方向が設定されることを特徴とする。
【0007】
本発明では、検知体ブラケットの保持部において検知体の複数の取付方向が設定されているが、検知体ブラケットに検知体を保持させる場合、特定の取付方向を選択するように保持部に検知体を保持させる。
選択すべき特定の取付方向は、検知体ユニットの固定先における検知体が固定先に対応する車両側変位部に対して適切な向きとなる取付方向とすればよい。
検知体ユニットを別の固定先に固定する場合、別の固定先に対応する車両変位部に対して適切な取付方向を選択して保持部に検知体を保持させる。
つまり、検知体ブラケットの保持部において検知体の複数の取付方向が設定されているから、検知体ユニットとしての汎用性に優れる。
【0008】
また、本発明では、上記の検知体ユニットの取付構造において、前記検知体ユニットは、前記保持部において前記検知体の複数の取付方向を設定する位置決め手段を有してもよい。
この場合、検知体ユニットが有する位置決め手段は、検知体ブラケットの保持部における検知体の複数の取付方向を設定する。
つまり、保持部における検知体は、位置決め手段を介して特定の取付方向になるように位置決めされ、位置決めされた検知体を検知体ブラケットに保持することができる。
【0009】
また、本発明では、上記の検知体ユニットの取付構造において、前記位置決め手段は、前記検知体ブラケットに形成した複数個の凹部と、前記検知体が有する凸部であり、前記凸部と前記凹部の嵌め合いにより前記検知体の取付方向が規定され、前記検知体の取付方向が前記凹部毎に異なるようにしてもよい。
この場合、検知体の凸部を、検知体ブラケットの凹部のいずれかに嵌め合わせることにより、保持部における検知体の取付方向が規定されるから、保持部における検知体の取付方向は凹部毎に異なる。
検知体に凸部を形成する場合、凸部に対応する複数の凹部を検知体ブラケットに形成するだけで位置決め手段を簡単に実現することができる。
【0010】
また、本発明では、上記の検知体ユニットの取付構造において、前記車両側変位部は、傾動、進退又は回動のいずれかにより操作される操作レバーの操作により変位する変位部材を有し、前記検知体は変位する変位部材を検知し、検知信号を発信するようにしてもよい。
この場合、検知体が検知する変位部材は、操作レバーの傾動、進退又は回動のいずれかの操作により変位され、変位する変位部材を検知することにより、検知体から検知信号が発信され、検知信号の有無により操作レバーの状態が確認される。
【0011】
また、本発明では、上記の検知体ユニットの取付構造において、前記車両は産業車両であり、前記操作レバーは該産業車両が備えるパーキング用ブレーキレバー及び荷役レバーの少なくとも一方とするようにしてもよい。
この場合、産業車両におけるパーキング用ブレーキレバー及び荷役レバーの少なくとも一方の操作状態が確認される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検知体ブラケットの保持部において検知体の複数の取付方向を設定することにより、検知体ユニットの固定先に応じて検知体の取付方向を選択することができ、汎用性に優れた検知体ユニットの取付構造を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る検知体ユニットの取付構造について図面を参照して説明する。
第1の実施形態は、検知体ユニットの取付構造が産業車両であるフォークリフトのハンドブレーキ装置に適用された一例である。
図1は、第1の実施形態に係るハンドブレーキ装置を示す側面図である。
ハンドブレーキ装置10は、図1に示すように、車両に固定されるレバーブラケット11と、レバーブラケット11に軸支され、前後方向に傾動するパーキング用ブレーキレバー(以後、単に「ブレーキレバー」と表記する)30と、ブレーキレバー30の傾動によりパーキングブレーキ(図示せず)を作動させるブレーキケーブル20と、ブレーキレバー30とブレーキケーブル20を接続するリンク機構23と、リンク機構23の一部の変位を検知する検知体ユニット40から主に構成されている。
【0014】
この実施形態のハンドブレーキ装置10では、ブレーキレバー30の後傾によりパーキングブレーキを制動状態とさせる制動位置(後傾位置)と、ブレーキレバー30の前傾によりパーキングブレーキを制動解除状態とさせる制動解除位置(前傾位置)が設定されている。
図1において、実線で示すブレーキレバー30は制動解除位置に位置し、二点鎖線で示すブレーキレバー30は制動位置に位置している。
【0015】
〔レバーブラケットについて〕
レバーブラケット11は、車両の運転席前部におけるダッシュボード(図示せず)内に収容されており、図1に示すように、板状のブラケット本体部12とブラケット本体部12の前部に形成される取付基部13と、ブレーキケーブル20を保持するフランジ部14から実質的に構成される。
レバーブラケット11は、ブラケット本体部12の板状面が両側方を臨むように、取付基部13を介して車両に固定されている。
レバーブラケット11は車両に固定されていることから、車両側静止部に相当する。
【0016】
フランジ部14は、ブラケット本体部12の下端において、ブラケット本体部12と直交するように板材を溶接することにより形成されている。
従って、図2に示すように、フランジ部14はブラケット本体部12の両側へ張り出す状態にある。
フランジ部14にはブレーキケーブル20が貫通して保持され、ブレーキケーブル20とブレーキレバー30がリンク機構23を介して接続される。
この実施形態ではブラケット本体部12の両側にブレーキケーブル20とリンク機構23が配置される構成を採用している。
【0017】
さらに、レバーブラケット11には、ブレーキケーブル20の配置方向と一致し、リンク機構23のピン26を案内するガイド長孔15が穿孔されている。
また、レバーブラケット11は、ブレーキレバー30が制動解除位置にあるときに当接するストッパ部16を備えており、ストッパ部16はゴム等の弾性を有する緩衝部材により形成され、ブレーキレバー30の保護を意図している。
レバーブラケット11の後端上部には、図2に示すように軸孔17が穿孔されている。
この軸孔17は、軸孔17に挿通される支点ピン27を介してブレーキレバー30をレバーブラケット11に連結し、支点ピン27を支点とするブレーキレバー30の前後の傾動を可能とするために設けられた軸孔である。
【0018】
〔ブレーキケーブルについて〕
ここで、ブレーキケーブル20について説明すると、ブレーキケーブル20は筒状のアウタケーシング21とアウタケーシング21内を摺動するインナケーブル22を有している。
ブレーキケーブル20のアウタケーシング21はフランジ部14に保持され、インナケーブル22の一方の端部は、フランジ部14の上方においてブレーキレバー30と連結されるリンク機構23に接続されている。
なお、インナーケーブル22の他方の端部は、図示しないパーキングブレーキに接続されている。
インナーケーブル22の一方の端部は、ブレーキレバー30が制動位置にある場合、リンク機構23によりブレーキレバー30へ最も近づいた位置となり、制動解除位置ではブレーキレバー30から離れた位置となる。
【0019】
〔リンク機構について〕
リンク機構23は、2つのリンク部材24、25(説明の便宜上、「上部リンク部材24」、「下部リンク部材25」と表記する。)がピン26により連結された機構である。
上部リンク部材24は、連結ピン28を介してブレーキレバー30に連結され、下部リンク部材25はインナケーブル22と接続されている。
因みに、下部リンク部材25は、所謂「クレビス」と称される部材であってインナーケーブル22の張力を調整することが可能である。
【0020】
ピン26は、図2に示すように、ガイド長孔15に挿通されて両側のリンク機構23を接続している。
ガイド長孔15はブレーキレバー30の傾動に応じて移動するピン26を案内する。
つまり、リンク機構23はブレーキレバー30の前後への傾動をブレーキケーブル20の直線運動に変換する機構である。
【0021】
この実施形態では、インナケーブル22とリンク機構23は、ブレーキレバー30と共にレバーブラケット11に対して変位することから、車両側変位部に相当する。
特に、下部リンク部材25は、検知体ユニット40の検知対象であって、車両側変位部における変位部材に相当する。
【0022】
〔ブレーキレバーについて〕
ブレーキレバー30は、レバー本体部31と、レバー本体部31の上端部を覆うグリップ部34とから主に構成されている。
レバー本体部31は、打ち抜き加工された金属板を折り返すように屈曲して得られる部材であり、レバー本体部31の折り目は後方を臨んでいる。
この実施形態のレバー本体部31は、屈曲により互いに対向する板体部32、32と、支点ピン27を挿通する軸孔36を有する。
【0023】
レバー本体部31は、レバーブラケット11の後部の上部寄りにおいて、支点ピン27を介して連結されており、レバー本体部31は支点ピン27を支点として前後に揺動自在である。
互いに対向する板体部32の間にはレバーブラケット11が位置する。
レバー本体部31における支点ピン27のほぼ上方には、上部リンク部材24との連結を図る連結ピン28が位置する。
レバーブラケット11においてグリップ部34を除き露出されるレバー本体部31の残りの部分は下方へ向かうにつれて前後に末広がりとなる形態を呈している。
【0024】
レバー本体部31における下端から前方に至る縁部には、板体部32と直角となる張設縁部33が備えられ、張設縁部33はレバー本体部の31一部を屈曲することにより形成されている。
張設縁部33はレバー本体部31の強度を高めるほか、ブレーキレバー30が制動解除位置にあるとき、レバーブラケット11におけるストッパ部16と当接することができる。
【0025】
グリップ部34は、ブレーキレバー30を操作し易くするため、握持に適した形状を有している。
グリップ部34には、ブレーキレバー30が制動位置を維持する状態を解除するための解除ボタン35が備えられ、解除ボタン35を押すことにより、ブレーキレバー30の制動位置からの前傾を可能としている。
なお、図1において、解除ボタン35の操作によりブレーキレバー30の傾動可能としたり傾動を規制する機構については図示を省略した。
【0026】
〔検知体ユニットについて〕
この実施形態の検知体ユニット40は、車両側静止部材であるレバーブラケット11に取り付けられるユニットである。
検知体ユニット40は、検知体としてのリミットスイッチ41と、検知体ブラケットととしてのスイッチブラケット50から主に構成されている。
図3に示すように、リミットスイッチ41のスイッチ本体42は、固定手段としての固定用ボルト49を挿通する挿通孔43を備えている。
スイッチ本体42の両側面には、位置決め手段の一部を構成する凸部としての円柱体44、45(説明の便宜上、一方の側面の円柱体を「円柱体44」とし、他方の側面の円柱体を「円柱体45」と表記する。)が夫々形成されている。
【0027】
さらにスイッチ本体41は検知部である検知片46を備えている。
検知片46は弾性を有する細長の薄板であり、検知片46の一端がスイッチ本体41に固定され、他端が自由端として斜め上方へ向けられている。
スイッチ本体41において検知片46と相対する位置には接点47が設けられている。
リミットスイッチ41は、押動された検知片46が接点47に当接するときに検知信号を発信するが、スイッチ本体41には検知信号を送るためのハーネス48が備えられている。
【0028】
スイッチブラケット50は、図3及び図4に示すように、金属板を断面U字状に屈曲した形態をしている。
因みに、図4(a)は、レバーブラケットに取り付けられた検知体ユニット40の側面図であり、図4(b)は検知体ユニット40の正面図であり、図4(c)は検知体ユニットの平面図である。
スイッチブラケット50において、屈曲により互いに対向する板体部のうち、一方の板体部はリミットスイッチ41を保持する保持側板体部51であり、他方の板体部はレバーブラケット11に検知体ユニット40を固定するための挟着側板体部55である。
この実施形態の保持側板体部51は、リミットスイッチ41が保持される保持部に相当する。
保持側板体部51には固定用ボルト49が螺入されるねじ孔52と、リミットスイッチ41における円柱体44、45を嵌め込むことができる凹部としての通孔53、54が形成されている。
【0029】
ねじ孔52の中心軸と通孔53、54の中心軸を結ぶ距離は同じ距離に設定されており、この距離はリミットスイッチ41の挿通孔43の中心軸と円柱体44、45の中心軸との距離に対応する。
通孔53、54は、円柱体44、45とともに位置決め手段を構成しており、通孔53、54への円柱体44、45の嵌め込みによりリミットスイッチ41の取付方向が規定される。
【0030】
この実施形態では、2個の通孔44、45が設けられていることから、図5に示すように、例えば、円柱体45をこれらの通孔53、54に嵌め込むことによりリミットスイッチ41の取付方向を2方向に特定できる(図5における「表−1」、「表−2」を参照)。
また、リミットスイッチ41の円柱体44、45はスイッチ本体42の両側面に備えられているので、例えば、通孔53、54に嵌め込むリミットスイッチ41の円柱体45を円柱体44に入れ替えることにより、さらに2方向の取付方向を特定することができる(図5における「裏−1」、「裏−2」を参照)。
【0031】
一方、スイッチブラケット50における挟着側板体部55には、図4(b)に示すとおり、2個のねじ孔56が形成されている。
ねじ孔56は、レバーブラケット11に固定するための挟着用ボルト57が螺入されるねじ孔である。
挟着用ボルト57は緩み止めのナット58が螺入されており、このナット58はレバーブラケット11に検知体ユニット40を挟着する際に、挟着側板体部55に当接して挟着用ボルト57の緩みを防止する。
因みに、スイッチブラケット50における保持側板体部51と挟着側板体部55の間は一定の距離の間隙が形成されており、この間隙未満の厚さのレバーブラケット11であれば、挟着用ボルト57により検知体ユニット40を固定することができる。
【0032】
次に、この実施形態に係る検知体ユニット50の取付構造の作用について説明する。
まず、リミットスイッチ41をスイッチブラケット50に保持し固定する手順について説明する。
スイッチブラケット50の通孔53とスイッチ本体42の円柱体45を一致させるとともに、固定用ボルト49をスイッチ本体42の挿通孔43に挿通してスイッチブラケット50のねじ孔52に螺入する。
固定用ボルト49の螺入と、円柱体45と通孔53との嵌め合いにより、リミットスイッチ41の取付方向は規定される。
この実施形態では、変位部材である下部リンク部材25が上下方向に移動するから、リミットスイッチ41の検知片46を下部リンク部材25の下方に位置するように、円柱体45を嵌め込む通孔53を選択している(図5における「表−1」を参照。)。
【0033】
次に、リミットスイッチ41とスイッチブラケット50が組み合わされた検知体ユニット40をレバーブラケット11に挟着する。
リミットスイッチ41の検知片46がレバーブラケット11のフランジ部14と下部リンク部材25の間に位置するように、検知体ユニット40を臨ませる。
このとき、スイッチブラケット50の保持側板体部51をレバー本体部31における板体部32の一方の面に当接させておき、ナット58を備える挟着用ボルト57をねじ孔56に夫々螺入する。
挟着用ボルト57の先端と保持側板体部51によりレバーブラケット11を強く挟着し、緩み止めのナット58を挟着用板体部55に当接させる。
【0034】
次に、ブレーキレバー30の操作と検知体ユニット40の作用について説明する。
ブレーキレバー30が制動位置に位置している状態では、下部リンク25はインナーケーブル22を引き上げるように、ブレーキレバー30側に最も近づいた位置にある。
このときは、下部リンク部材25とリミットスイッチ41の検知片46は離れており、検知片46の上方に下部リンク部材25が存在する。
このため、リミットスイッチ41における検知片46と接点47は当接しないので検知信号は発信されない。
【0035】
ブレーキレバー30を制動解除位置へ前傾させると、下部リンク部材25が下方へ向かい、下部リンク部材25の下端が検知片46と当接する。
さらに、下部リンク部材25が下降すると、検知片46と接点47が当接し、検知片46と接点47との当接によりリミットスイッチ41から検知信号が発信される。
検知信号の発信により、例えば、ブレーキレバー30が制動解除位置に位置することを示すランプが表示される。
このように、リミットスイッチ41が下部リンク部材25を検知するとにより、ブレーキレバー30が制動解除位置に位置することが認識可能となる。
なお、検知片46が弾性部材により形成されていることから、再びブレーキレバー30を制動位置へ後傾させると、検知片46は自らの弾性力により接点47から離れる。
【0036】
この実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)スイッチブラケット50の保持側板体部51においてリミットスイッチ41の複数の取付方向が設定されているから、スイッチブラケット50にリミットスイッチ41を保持させる場合、特定の取付方向を選択するようにリミットスイッチ41を保持させることができ、検知体ユニット40としての汎用性に優れる。
(2)検知体ユニット40が有するスイッチ本体42の円柱体45とスイッチブラケット50の通孔53は、保持側板体部51におけるリミットスイッチ41の取付方向を規定し、保持側板体部51におけるリミットスイッチ41の取付方向は通孔53ごとに異なるから、リミットスイッチ41に円柱体45を形成する場合、円柱体45に対応する複数の通孔53をスイッチブラケット50に形成するだけで位置決め手段を簡単に実現することができる。
【0037】
(3)リミットスイッチ41が検知する下部リンク部材25は、ブレーキレバー30の傾動操作により変位され、下部リンク部材25の変位に対応してリミットスイッチ41から検知信号が発信されるから、検知信号の有無によりブレーキレバー30の状態が確認される。
(4)スイッチブラケット50と挟着用ボルト57を用いることにより、車側変位部における変位部材、すなわち下部リンク部材25や、車両側静止部であるレバーブラケット11について特別な加工を施すことなく、検知体ユニットを40取り付けることができ、しかも、下部リンク部材25を検知するために適切なリミットスイッチ41の取付方向を簡単に規定することができ、また、検知体ユニット40の着脱も自在である。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る検知体ユニットの取付構造について説明する。
この実施形態は、フォークリフトにおける荷役レバー装置に適用した検知体ユニットの取付構造である。
また、この実施形態に係る検知体ユニットは、リフトレバーの操作によりフォークが上昇中であることを検知するために備えられている。
この実施形態に係る検知体ユニットは、第1の実施形態と同一であるため符号を共通して用い、第1の実施形態の説明を援用する。
【0039】
この実施形態に係る荷役レバー装置60は、図6及び図7に示すようにリフトレバー64を有する。
リフトレバー64は、フォークリフトが備える荷役装置においてフォークの昇降を制御するためのレバーである。
車両側静止部である一対のレバーブラケット61が車両に固定されている。
レバーブラケット61には回動自在の支点軸62が挿通されており、支点軸62にはレバーボス63が固定されており、レバーボス63は支点軸62の前方においてリフトレバー64のレバー本体65の下端部を支持している。
【0040】
リフトレバー本体65は上方へ向い途中で後方へ屈曲され、リフトレバー本体65の自由端には操作ノブ66が取り付けられている。
レバーボス63には、リフトシリンダ(図示せず)の油圧制御するコントロールバルブ(図示せず)に連結されるレバーロッド67の上端がピン68を介して軸着されている。
レバーロッド67の下端はコントロールバルブのスプールと連結されている。
なお、図示はしないが支点軸62には別のレバーボスが固定されており、このレバーボスにはリフトレバーとほぼ同じ構成のティルトレバー本体の下端部が支持されている。
ティルトレバー本体は、ティルトシリンダの油圧制御するコントロールバルブに連結されるレバーロッドと連結されている。
【0041】
この実施形態では、リフトレバー本体64と、レバーボス63と、レバーロッド67が車両側変位部に相当する。
そして、レバーロッド67を変位部材として、検知体ユニット40によりレバーロッド67の変位を検知するようにしている。
検知体ユニット40は、レバーブラケット61の取付基部と支点軸62の間の上縁部に挟着されている。
検知体ユニット40のリミットスイッチ41は、検知片46がレバーロッド67の上端を臨む取付方向でスイッチブラケット50に保持されている。
【0042】
リフトレバー本体65が最も後傾された位置(最後傾位置、図7において2点鎖線で示す)にあるとき、フォークを上昇するようにコントロールバルブがリフトシリンダを制御する。
このとき、レバーロッド67は上方へ最も引き上げられた位置となり、リミットスイッチ41の検知片46を押接し、検知片46と接点47が当接する状態となる。
従って、検知信号が発信されて、フォークが上昇中であることが確認される。
【0043】
また、リフトレバー64が最後傾位置以外の位置にある場合、レバーロッド67はリミットスイッチ41から離れるため、検知片46と接点47との当接が解除される。
リミットスイッチ41から検知信号が発信されないため、フォークが上昇中ではないことが確認される。
【0044】
因みに、最もリフトレバー本体65を最も前傾させた位置(最前傾位置)ではフォークが下降し、最後傾位置と最前傾位置の中間(中間位置)では、フォークが昇降しない中立状態を維持する。
このように、この実施形態では、レバーブラケット61やレバーロッド67に手を加えることなく、検知体ユニット40を取り付けることができ、検知体ユニット40は、リフトレバーの操作によりフォークが上昇中であることを検知することができる。
【0045】
なお、この実施形態では、リフトレバー64のための検知体ユニット40を設けるようにしたが、ティルトレバーのための検知体ユニット40を別に設けるようにしてもよい。
この場合、リフトレバー64のための検知体ユニット40が設けられていない、他方のレバーブラケット61にティルトレバーのための検知体ユニット40を別に設けることが好ましい。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る検知体ユニットの取付構造を図8に基づき説明する。
図8は、検知体ユニット40とレバー71との関係を示す側面図であり、検知体ユニット40は第1、第2の実施形態と同一構成である。
検知体ユニット40におけるリミットスイッチ41は、支点軸73を支点として傾動するレバー71を変位部材として検知している。
検知体ユニット40はレバーブラケット72の下縁部に挟着されている。
具体的には、図8において2点鎖線により示すように、レバー71を前傾させたときに、レバー71の下縁に形成された段部75と検知片46との押接により検知信号を発生し、後傾させたときに段部75による検知片46の押接が解除される。
【0047】
この実施形態によれば、検知体ユニット40におけるリミットスイッチ41が、レバー71を変位部材として検知するから、レバー71により従動される他の部材を変位部材として検知するよりもレバー71の状態を直接的に確認することができる。
【0048】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る検知ユニットの取付構造について図9に基づき説明する。
図9は、第4の実施形態に係る検知ユニット80A、80Bを示す側面図である。
この実施形態におけるスイッチブラケットの構成は、第1〜第3の実施形態に係るスイッチブラケット50の構成と異なる。
なお、リミットスイッチ41は先の実施形態におけるリミットスイッチ41と同一構成であるため符号を共通とする。
【0049】
スイッチブラケット81には、図9に示すように、リミットスイッチ41の固定用ボルト49のためのねじ孔82が設けられているほか、円弧状の溝孔83が形成されている。
ねじ孔82の軸芯から溝孔83の中心線との距離は常に一定の距離であり、溝孔83はリミットスイッチ41の円柱体44、45を挿入することができる孔である。
従って、図9に示すように、検知体ユニット80A、80Bのいずれかが構成される。
【0050】
この実施形態に係る検知ユニット80A、80Bの取付構造によれば、リミットスイッチ41の取付方向は溝孔83に沿って自在に設定でき、例えば、変位部材に対して検知片46の取付方向を無段階に設定することができ、リミットスイッチ41の取付方向をより適切な取付方向とすることができる。
【0051】
なお、本発明は、上記した第1〜第4の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
○ 第1〜第4の実施形態では、固定手段として固定用ボルトを用いたが、固定手段はボルトによる固定に限定する趣旨ではなく、例えば、圧入や接着により検知体の固定を妨げるものではない。
○ 第1〜第4の実施形態では、操作レバーは前傾及び後傾される傾動式のレバーとしたが、例えば、レバーの長手方向に進退する進退式のレバーでもよい。また、変位部材は操作レバーの操作により一定の範囲で往復動する部材であればよく、例えば、揺動や回動する部材であってもよい。
【0052】
○ 第1〜第4の実施形態では、検知体ブラケットとしてのスイッチブラケットは互いに対向する断面U字状の形態を呈する部材としたが、スイッチブラケットの少なくとも、互いに対向する一対の板材部を備えていればよく、例えば、断面が略J字状であってもよいし、変位部材の配置条件によっては一方の板材部から方向を替えて延在された保持側板体部が形成されてもよい。
○ 第1〜4の実施形態では、固定手段として固定用ボルトを用い、凹部としての通孔又は溝孔と、通孔及び溝孔に対応する凸部としての円柱体を位置決め手段としたが、凸部の形状は円柱体に限定する趣旨ではなく、適宜の形状を選択できる。また、凹部についても孔に限らず、少なくとも凸部との嵌め合いを実現する凹部であればよい。
【0053】
○ 第1〜4の実施形態では、検知体としてリミットスイッチを用いたが、リミットスイッチに代えて、例えば、光学式の非接触センサを用いてよく、この場合、非接触式センサのための電源を考慮する必要がある。
○ 第1〜第4の実施形態では、固定手段の一部を構成するねじ孔を一つとしたが、複数個のねじ孔をセンサブラケットに形成し、リミットスイッチと固定する場合にいずれかのねじ孔を選択するようにしてもよい。この場合、各ねじ孔に対応する通孔や溝孔が形成されている必要がある。ただし、複数のねじ孔に対応する兼用の通孔を設けてもよい。これによりさらに選択できるリミットスイッチの取付方向が増加する。
○ 第4の実施形態では、センサブラケットに円弧状の溝孔を形成したが、溝孔は直線状やL字状としてもよく、この場合、固定用ボルトとねじ孔による固定手段ではなく別の固定手段を採用すれば、溝孔に沿ってリミットスイッチの取付方向だけでなく前後や上下に平行移動することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施形態に係る検知体ユニットが適用されたハンドブレーキ装置の側面図である。
【図2】第1の実施形態に係る検知体ユニットが適用されたハンドブレーキ装置の背面図である。
【図3】第1の実施形態に係る検知体ユニットを分解状態で示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係る検知体ユニットの3面図である。
【図5】第1の実施形態に係る検知体ユニットの構成例を示す側面図である。
【図6】第2の実施形態に係る検知体ユニットが適用された荷役レバー装置の側面図である。
【図7】第2の実施形態に係る検知体ユニットの取付構造を示す拡大側面図である。
【図8】第3の実施形態に係る検知体ユニットを示す側面図である。
【図9】第4の実施形態に係る検知体ユニットを示す側面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 ハンドブレーキ装置
11、61、72 レバーブラケット
20 ブレーキケーブル
23 リンク機構
25 下部リンク部材
30 ブレーキレバー
40、80A、80B 検知体ユニット
41 リミットスイッチ
44、45 円柱体
46 検知片
49 固定用ボルト
50、81 スイッチブラケット
52、82 ねじ孔
53、54 通孔
57 挟着用ボルト
60 荷役レバー装置
64 リフトレバー
75 段部
83 溝孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が備える車両側変位部の変位を検知する検知体と、該検知体を保持する検知体ブラケットとを含む検知体ユニットが構成され、前記検知体ユニットを前記車両側変位部の近傍に固定することにより、前記検知体を前記車両側変位部に臨ませた検知体ユニットの取付構造であって、
前記検知体ブラケットは、前記検知体を保持する保持部を有し、
前記保持部において前記検知体の複数の取付方向が設定されることを特徴とする検知体ユニットの取付構造。
【請求項2】
前記検知体ユニットは、前記保持部において前記検知体の複数の取付方向を設定する位置決め手段を有することを特徴とする請求項1記載の検知体ユニットの取付構造。
【請求項3】
前記位置決め手段は、前記検知体ブラケットに形成した複数個の凹部と、前記検知体が有する凸部であり、前記凸部と前記凹部の嵌め合いにより前記検知体の取付方向が規定され、前記検知体の取付方向が前記凹部毎に異なることを特徴とする請求項1又は2記載の検知体ユニットの取付構造。
【請求項4】
前記車両側変位部は、傾動、進退又は回動のいずれかにより操作される操作レバーの操作により変位する変位部材を有し、前記検知体は変位する変位部材を検知し、検知信号を発信することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の検知体ユニットの取付構造。
【請求項5】
前記車両は産業車両であり、前記操作レバーは該産業車両が備えるパーキングレバー及び荷役レバーの少なくとも一方とすることを特徴とする請求項4記載の検知体ユニットの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate