説明

極低温装置

【課題】極低温装置の冷凍機の交換作業に際し、冷凍機スリーブ内に大気が流入することを防ぐ。
【解決手段】格納容器14と装置外部とにつながる冷凍機挿入空間内から冷凍機30を抜き取るに際し、外部からパージガス導入管80を通じて冷凍機挿入空間内にパージガスを導入することにより、同空間内に格納容器14側から装置外部側に向かうパージガス流を形成して同空間内への外気の流入を抑止できるようにする。前記パージガス導入管80は冷凍機30に沿って設け、この冷凍機30とともに冷凍機挿入空間に対して挿脱されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導磁石等を冷却するための極低温装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超伝導磁石(超伝導マグネット)等を冷却するための極低温装置として、極低温冷凍機を装備したものが知られている。その例を図5に示す。
【0003】
図示の装置は、MRI(磁気共鳴診断装置)として利用されるもので、ソレノイド型超伝導磁石10を内蔵し、このソレノイド型超伝導磁石10の中心軸が水平方向を向くように同磁石10が配置される横置き型のものとなっている。
【0004】
図例の装置は冷媒式のもので、液体ヘリウムからなる冷媒12を収容する格納容器14と、この格納容器14を外側から囲む熱シールド体16と、この熱シールド体16をさらに外側から囲む真空容器18とを備え、前記冷媒12中に前記超伝導磁石10が浸漬されている。前記格納容器14と前記真空容器18との間の空隙では真空状態が保たれており、この空隙内に前記熱シールド体16が配置されている。
【0005】
この装置の中央には、水平方向に延びる磁場利用空間20が確保されており、この磁場利用空間20を取り囲むように、前記格納容器14、前記熱シールド体16、及び前記真空容器18がそれぞれドーナツ状に形成されている。
【0006】
前記格納容器14及び前記熱シールド体16には、それぞれ、その天壁から上方に延びるスリーブ24,26が形成され、前記熱シールド体16のスリーブ26の内側に前記格納容器14のスリーブ24の上端部分が下から挿入されている。そして、これらスリーブ24,26の内側の空間に冷凍機30が挿脱可能に配置されるようになっている。すなわち、両スリーブ24,26は、その内側に冷凍機30が挿脱される冷凍機挿入空間を形成する冷凍機挿入部を構成している。
【0007】
前記冷凍機30は、格納容器14内で前記冷媒12が蒸発することにより生成された冷媒ガスを再凝縮させるためのもので、この再凝縮により、冷媒12の消費量及び補充頻度が大幅に低減される。
【0008】
図例では、前記冷凍機30として2段式のGM冷凍機が用いられている。具体的に、この冷凍機30は、上下方向に延びる略円柱状の全体形状をなし、その中段部分に第1冷却ステージ31を有し、下端部分に前記第1冷却ステージ31よりも設定温度の低い第2冷却ステージ32を有している。そして、前記第1冷却ステージ31が前記熱シールド体16のスリーブ26に熱伝導可能に連結されるとともに、前記第2冷却ステージ32に再凝縮器であるフィン34が熱伝導可能に接続されていて、このフィン34が前記格納容器14のスリーブ24内に配置されている。このフィン34の表面の冷却温度は冷媒12の凝縮温度(ヘリウムの場合には4.2K)よりも低い温度に設定されており、このフィン34の表面に冷媒ガスが接触することにより当該フィン34の表面上で当該冷媒ガスが再凝縮するようになっている。
【0009】
なお、前記格納容器14には、同容器14の内圧が一定以上になるのを回避するための安全装置36が設けられている。この安全装置36は、前記格納容器14から外部に連通するように設けられた安全排出管37と、この安全排出管37の上端の出口に設けられた逆止弁からなる安全弁38とで構成され、前記格納容器14内の圧力が一定以上になると同容器14内の余剰のヘリウムガスを装置外部へ逃がす役割を果たす。
【0010】
ところで、このような極低温装置では、前記冷凍機30について定期的なメンテナンス作業を行う必要がある。一般には、前記スリーブ24,26内から前記冷凍機30を抜き取り、同スリーブ24,26内に新しい冷凍機30を挿入した後、この冷凍機30を起動させて定常状態まで移行させるといった作業が行われる。
【0011】
このメンテナンス作業の際、前記冷凍機30をスリーブ24,26内から抜き取ったときに、それまで冷凍機30が占めていた容積分に相当する外気が装置外部から流入するおそれがあり、このような外気の流入があると、当該外気に含まれる酸素や水素、水蒸気といった比較的凝固点の高い成分が一瞬のうちにスリーブ24,26内で凍結してしまう不都合が生じる。このような凍結が生じると、その後新たに挿入する冷凍機30の第1冷却ステージ31と熱シールド体16との間の熱伝導率が低下する等して、当該冷凍機30の能力が十分発揮できなくなるおそれがある。
【0012】
そこで、このような不都合を解消するための手段として、従来、下記特許文献1に記載されるような方法が提案されている。この方法は、前記冷凍機が挿入されているスリーブを外側から塞ぐように膨張収縮可能なメンテナンス袋を取付け、このメンテナンス袋内に冷媒ガスを入れて冷媒雰囲気にした状態で、当該メンテナンス袋に形成されているグローブを利用して当該メンテナンス袋内の冷凍機を袋外からメンテナンス操作するようにしたものである。
【特許文献1】特開平5−223379号公報(第3頁〜第5頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記特許文献1に記載される方法では、冷凍機のメンテナンス作業の度にわざわざメンテナンス袋を別途取り付ける必要がある。さらに、当該メンテナンス袋内を冷媒ガス雰囲気にするために当該袋内から大気を吸引するための排気用ブロアや当該袋内に冷媒ガスを供給するガスボンベ等を用意しなければならず、その準備は非常に面倒なものとなる。
【0014】
また、前記メンテナンス袋内でのメンテナンス作業は、作業者がグローブを介して袋内に手を差し入れるようにして行わなければならず、その作業は容易でない。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑み、冷凍機のメンテナンス作業の際、この冷凍機が挿入されているスリーブ内に大気等が流入するのを有効に抑止しながら、当該メンテナンス作業を容易に行うことを可能にする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、前記課題を解決するための手段として、少なくとも前記冷凍機挿入空間内から前記冷凍機を引き抜く際、この冷凍機挿入空間内に装置外部からパージガス導入管を通じてパージガスを導入して同冷凍機挿入空間内に前記格納容器側から装置外部側に向かうパージガス流を形成することにより、この冷凍機挿入空間内に外気が流入するのを防ぐ方法に想到した。
【0017】
しかしながら、このような方法では、前記パージガス中に誤って一定以上の高凝固点不純物(例えば水や二酸化炭素)が混じっている場合に、この不純物が固化して前記パージガス導入管の閉塞を招くことがあり、このような閉塞状態を解除するにはパージガス導入管中の温度を上げて前記の固化した不純物を気化する必要が生じる。このとき、前記パージガス導入管が例えば極低温装置の装置本体側に固定的に設置されているとすると、当該導入管を加温するには超電導マグネットの消磁及び昇温を伴う極低温装置全体の運転停止を行わなければならず、その後の装置の立上げに多大な時間とコストを費やさなければならないことになる。
【0018】
また、装置全体の運転を止めずに部分的な加熱で前記パージガス導入管内の固化物を溶融(液化)する方法も考えられるが、この方法を実施してもその液化した不純物は前記パージガス導入管を通じて低温の格納容器内に流下し、ここで再び固化してしまうので、抜本的な解決とはならない。
【0019】
本発明は、以上記したような背景からなされたものであり、被冷却体を格納する格納容器と、この格納容器内に格納される前記被冷却体の冷却に寄与する冷熱を発生させる冷凍機とを備えた極低温装置において、前記格納容器の内部と装置外部とにつながって装置外部から前記冷凍機が挿入可能である冷凍機挿入空間を囲む冷凍機挿入部と、前記冷凍機挿入空間から装置外部へ前記冷凍機が引き抜かれたときに当該冷凍機挿入空間内に外気が流入するのを防ぐためのパージガスを装置外部から前記冷凍機挿入空間内に導入して前記格納容器側から装置外部側に向かうパージガス流を形成するためのパージガス導入管とを備え、このパージガス導入管は、前記冷凍機に沿って設けられて当該冷凍機とともに前記冷凍機挿入空間に対して挿脱されるように構成されているものである。
【0020】
また本発明は、被冷却体を格納する格納容器を備えた極低温装置に設けられ、この格納容器内に格納される前記被冷却体の冷却に寄与する冷熱を発生させる冷凍機を含む極低温装置用冷凍機ユニットであって、前記冷凍機が、前記極低温装置の外部と前記格納容器の内部とにつながるように当該極低温装置に形成された冷凍機挿入空間内に当該極低温装置の外部から挿入可能となる外形を有するとともに、この冷凍機が前記冷凍機挿入空間から装置外部へ引き抜かれたときに当該冷凍機挿入空間内に外気が流入するのを防ぐためのパージガスを装置外部から前記冷凍機挿入空間内に導入して前記格納容器側から装置外部側に向かうパージガス流を形成するためのパージガス導入管を備え、このパージガス導入管が前記冷凍機に沿って設けられて当該冷凍機とともに前記冷凍機挿入空間に対して挿脱されるように構成されているものである。
【0021】
以上の構成によれば、冷凍機挿入空間内に冷凍機が挿入されている状態で、この冷凍機に沿って設けられたパージガス導入管を通じて前記冷凍機挿入空間内にパージガスを導入することにより、当該冷凍機挿入空間内に格納容器側から装置外部側に向かうパージガス流を形成することができ、このようなパージガス流を形成しながら前記冷凍機を前記冷凍機挿入空間から抜き取ることにより、その抜き取り時に装置外部から前記冷凍機挿入空間内に大気等が流入するのを有効に抑止することができる。
【0022】
ここで、仮にパージガス中の不純物が凝固して前記パージガス導入管を閉塞させる事態が発生しても、このパージガス導入管を冷凍機とともに冷凍機挿入空間から抜き取ることによって、極低温装置本体の運転には著しい影響を与えることなく、当該装置本体の外部で前記パージガス導入管の復旧(加熱等)を行うことができる。
【0023】
本発明に係る極低温装置は、いわゆる冷媒式のもの、すなわち、前記格納容器が前記被冷却体を冷却するための液体状の冷媒を収容してこの冷媒中に前記被冷却体が浸漬される状態で当該被冷却体を格納するものであり、前記冷凍機は前記格納容器内で前記冷媒が蒸発して生じた冷媒ガスを前記冷凍機挿入空間内で再凝縮させるものであってもよいし、いわゆる無冷媒式のもの、すなわち、前記冷凍機が前記格納空間内の被冷却体に熱伝導可能となるように接続されているものであってもよい。
【0024】
前者の冷媒式のものにおいては、前記パージガス導入管のガス排出口が前記冷凍機挿入空間内において前記冷凍機の挿入方向奥側端部(例えば冷媒ガスを再凝縮させるためのフィン等の再凝縮部)よりも奥方の位置で装置外部側に向くように配置されていることが、より好ましい。この構成によれば、前記冷凍機挿入空間が前記格納容器側に開口していても、その格納容器側から装置外部側に向かう安定したパージガス流を形成して、当該パージガスが前記格納容器側に流入するのを抑止することが可能である。
【0025】
本発明では、前記パージガス導入管が冷凍機に沿って設けられていればよく、その具体的な配管態様は問わない。例えば、前記パージガス導入管が前記冷凍機の周囲に巻付けられている構成とすれば、当該導入管が冷凍機から離れにくく、より円滑に冷凍機とパージガス導入管とを冷凍機挿入空間に対して挿脱することが可能になる。
【0026】
本発明では、前記冷凍機挿入空間に前記冷凍機が挿入された状態で当該冷凍機挿入空間の装置外部側端部がパージガス排出通路を残して塞がれるとともに、前記パージガス排出通路に前記パージガスの前記装置外部への排出方向の流れのみを許容する逆止弁が設けられていることが、より好ましい。
【0027】
この構成によれば、冷凍機挿入空間から冷凍機を引き抜く前の状態においても、同空間内にパージガス導入管からパージガス導入管を導入して前記逆止弁から同空間外へ排出することにより、前記冷凍機挿入空間内に良好なパージガス流を形成することができる。このように、冷凍機の引抜き作業を行う前の段階から安定したパージガス流を形成しておくことにより、大気等が前記冷凍機挿入空間内に流入するのをより有効に抑止することが可能になる。
【0028】
一方、前記冷凍機の運転が定常状態になり、再凝縮室の温度が極低温(4K付近)になったとき、パージガス導入管内部には、装置外部側から冷凍機挿入空間側にかけて、室温から極低温に至る温度分布を持つパージガスが充満していることになる。このように大きな温度勾配を持つパージガスが充満するパージガス導入管には、往々にして大きな脈動や振動を起こす熱音響振動が生じるおそれがあるが、前記パージガス導入管が、バルブを有するバイパス管を介して前記冷凍機挿入空間の装置外部側端部の近傍に連通している構成とすれば、パージガス導入管を使用しないときには前記バイパス管を介して前記パージガス導入管内を大容積の冷凍機挿入空間内に連通させることによって、当該導入管内の熱音響振動の発生を抑えることが可能となる。
【0029】
また、本発明では、前記冷凍機挿入空間内に導入されるパージガスが前記格納容器内に流れ込むのを抑止するガス流入抑止手段を備えることが、より好ましい。この構成によれば、冷媒ガスよりも高温のパージガスが格納容器内に流入することによる同容器内の冷媒の蒸発を抑制し、ひいては冷媒の損失を有効に削減することができる。
【0030】
このガス流入抑止手段としては、例えば、前記冷凍機挿入空間と前記格納容器内の空間とを連通する連通路を形成する連通部を有し、この連通部の連通路の流路断面積が、前記冷凍機挿入空間内に前記冷凍機が挿入された状態での当該冷凍機挿入空間内の最小流路断面積より小さいものが、好適である。
【0031】
この構成によれば、前記冷凍機挿入部と格納容器とを連結する連結管の内部空間の断面積が抑えられているので、パージガス導入管から冷凍機挿入空間内に導入されたパージガスが前記連結管側すなわち格納容器側へ流入することが有効に抑止される。
【0032】
また、前記ガス流入抑止手段としては、前記冷凍機挿入空間の格納容器側端部を開閉する弁体と、この弁体を装置外部から操作するための弁操作手段とを含むものも、有効である。
【0033】
この構成によれば、パージガス導入の際、前記弁体によって前記冷凍機挿入空間の格納容器側端部を閉じておくことにより、当該パージガスが格納容器側に流入するのを有効に抑止することができる。
【0034】
前記弁操作手段としては、前記弁体をこの弁体が前記冷凍機挿入空間の格納容器側端部を開く向きに付勢する付勢手段と、一方の端部が前記弁体に連結され、他方の端部が装置外部に導出される操作用索体とを備え、この操作用索体を装置外部から引張ることにより前記弁体が前記付勢手段の付勢力に抗して前記冷凍機挿入空間の格納容器側端部を閉じる位置に移動するように前記操作用索体が配索されているものが、好適である。
【0035】
この構成によれば、通常使用時には前記付勢手段によって前記弁体を開弁位置に保持しておくことにより格納容器から冷凍機挿入空間内への冷媒ガスの流入を許容する一方、パージガス導入時には装置外部から前記操作用索体を操作するだけで前記弁体を前記付勢手段の付勢力に抗して閉じておくことができる。
【0036】
ここで、前記操作用索体は、前記冷凍機挿入空間内に前記冷凍機が存在する状態でも装置外部からの引張操作が可能となるように当該冷凍機挿入空間における当該冷凍機の挿入位置を迂回するように配索されていることが、より好ましい。
【0037】
また、前記弁体のうち、この弁体がその閉弁時に相手方の弁座部分と接触する部位に前記冷凍機挿入空間の格納容器側端部と接触する部位には、当該弁体を構成する材料よりも弾性変形し易い金属材料(例えばハンダやインジウム)からなるシール層が設けられていることが、より好ましい。この構成により、当該弁体と弁座部分とのシール性を高めて、格納容器内へのパージガスの流入を抑止する効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明によれば、冷凍機に沿って設けられるパージガス導入管を通じて冷凍機挿入空間内にパージガスを導入しながら同空間内から冷凍機を抜き取ることにより、その抜取り時に同空間内に大気が流入することを防ぎながら前記冷凍機のメンテナンス作業を容易に行うことができる。また、前記パージガス導入管内で不純物の固化等による閉塞が生じても、このパージガス導入管を前記冷凍機とともに前記冷凍機挿入空間から抜き取ることにより、極低温装置本体の運転にはほとんど影響を与えずに前記パージガス導入管の復旧を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の第1の実施の形態を図1に示す。なお、この実施の形態に係る極低温装置の構成は、その要部である冷凍機30の挿入部位を除いて前記図5に示したものと共通しているので、その共通部分については説明を省略し、以下、当該装置の要部のみを説明するものとする。
【0040】
また、この実施の形態は、被冷却体として超電導磁石10を冷却する超電導マグネット装置について本発明を適用するものであるが、本発明では冷却対象を問わず、SQUID磁力計その他の超伝導素子の冷却にも適用し得るものである。
【0041】
図1は、前記極低温装置に設けられる冷凍機30と、この冷凍機30の挿入部を構成する各スリーブ24,26の具体的構造を示している。
【0042】
既述のように、前記冷凍機30は、2段式のGM冷凍機により構成され、上下方向に延びる略円柱状の全体形状をなし、その中段部分に第1冷却ステージ31を有し、下端部分に前記第1冷却ステージ31よりも設定温度の低い第2冷却ステージ32を有している。各ステージ31,32は他の部分よりも外径の大きいフランジ状をなし、前記第2冷却ステージ32に再凝縮器であるフィン34が熱伝導可能に接続されている。そして、前記第1冷却ステージ31の外径が前記第2冷却ステージ32の外径及び前記フィン34の外径よりも大きく設定されている。
【0043】
一方、前記熱シールド体16及び真空容器18には、前記冷凍機30を挿入するための貫通孔40,42がそれぞれ穿設されるとともに、その冷凍機が挿入される冷凍機挿入空間を囲む冷凍機挿入部が設けられている。具体的に、この冷凍機挿入部は、上下方向に伸縮可能なべローズからなるスリーブ44,46と、その下側の管材からなるスリーブ48とで構成されている。
【0044】
前記スリーブ44は、前記真空容器18の外側(上側)で前記貫通孔40を覆う位置に設けられている。このスリーブ44の下端は前記真空容器18の天壁に密着状態で連結され、上端開口部分には、前記冷凍機30に固定された冷凍機支持用フランジ50が挿脱可能に圧入されるようになっている。
【0045】
この冷凍機支持用フランジ50は、前記冷凍機30に固定されるフランジ部52と、このフランジ部52から下方に延びる円筒状の圧入部54とを有している。前記フランジ部52は、前記冷凍機30においてその第1冷却ステージ31よりも上側の部位に固定されており、当該冷凍機30から径方向に大きく突出する形状を有している。前記圧入部54は、前記スリーブ44の上端部の内径よりもやや小さい外径を有し、その外周面上にシール用のOリング56が全周にわたって設けられている。そして、このOリング56が前記スリーブ44の上端部内周面に密着する状態(気密状態)で当該上端部に挿脱可能に圧入されるようになっている。
【0046】
この冷凍機支持用フランジ50のフランジ部52は、高さ調節機構60を介して前記真空容器18の天壁上に支持されるようになっている。前記高さ調節機構60は、前記真空容器18の天壁上で前記貫通孔42の周囲に立設された複数本のねじ棒62と、各ねじ棒62が挿通可能な貫通孔をもつ高さ調節フランジ64と、前記各ねじ棒62に螺合されるナット66,68とを有するもので、前記冷凍機支持用フランジ50のフランジ部52に前記各ねじ棒62が挿通可能な貫通孔が設けられている。そして、下側のナット66上に前記高さ調節フランジ64を載せ、この高さ調節フランジ64に前記フランジ部52を載せてその上からナット68を締めることにより、当該フランジ部52が前記ねじ棒62に高さ調節可能に固定されるようになっている。
【0047】
前記スリーブ46は、前記真空容器18の天壁と、その下方に配される第1冷却用フランジ70とを連結するように配置されている。具体的に、このスリーブ46の上端は前記真空容器18の天壁における前記貫通孔42の周縁部分に密着状態で連結され、同スリーブ46の下端は前記第1冷却用フランジ70の外周部に密着状態で連結されている。また、この第1冷却用フランジ70の外周部は銅製の編組線などで構成された熱伝導体72を介して前記熱シールド体16の天壁に熱伝導可能に接続されている。
【0048】
前記第1冷却用フランジ70は、中空のドーナツ板状をなし、前記冷凍機30の第2冷却ステージ32及びフィン34がともに上から挿通可能な内径を有している。そして、この第1冷却用フランジ70の内側に前記冷凍機30が挿通された状態で当該冷凍機30の第1冷却ステージ31の外縁部と前記第1冷却用フランジ70の内縁部とが接触して両者が熱伝導可能に接続されるようになっている。従って、この接続状態では、第1冷却ステージ31が前記第1冷却用フランジ70及び熱伝導体72を介して熱シールド体16を適当な温度まで冷却することが可能となる。
【0049】
なお、前記第1冷却ステージ31には、温度計測用センサを挿入するための図略の貫通孔が設けられており、この貫通孔を通じて後述のパージガスが下から上に向かって流れるようになっている。
【0050】
前記スリーブ48は、前記第1冷却用フランジ70から、前記格納容器14の天壁に設けられた貫通孔74に至るまでの空間を囲むもので、当該スリーブ48の上端が前記第1冷却用フランジ70の外周部下面に密着状態で連結され、下端が前記格納容器14の天壁における前記貫通孔74の周縁部に密着状態で連結されている。
【0051】
ここで、前記冷凍機30の長さ寸法は、その第1冷却ステージ31が前記第1冷却用フランジ70に接触するまで当該冷凍機30が挿入された状態(以下「冷凍機挿入状態」と称する。)で、当該冷凍機30の下端のフィン34が前記スリーブ48内に同スリーブ48の中間位置まで進入するように設定されている。従って、前記中間位置よりも上側の空間(スリーブ44,46,48内の空間)が冷凍機挿入空間となっている。
【0052】
前記スリーブ48の下部であって、前記冷凍機挿入状態で前記フィン34よりも下方に位置する部分(つまり冷凍機挿入部を構成する部分よりも下方の部分)には、局所的に縮径する形状の連通部76が形成されている。この連通部76は、当該連通部76よりも上側の冷凍機挿入空間と前記格納容器14内の空間とを連通する連通路78を囲むもので、この連通路78の流路断面積は、前記冷凍機挿入状態での冷凍機挿入空間内の最小流路断面積(すなわち冷凍機30の外面とスリーブ48の内面とに挟まれる空隙部を上下方向から見た面積の最小値)よりも小さく設定されている。
【0053】
この極低温装置の特徴として、前記冷凍機30に沿ってパージガス導入管80が設けられ、当該冷凍機30及びパージガス導入管80が冷凍機ユニットとして一体に前記冷凍機挿入空間に対して挿脱されるようになっている。
【0054】
前記パージガス導入管80は、装置外部から前記冷凍機挿入空間内にパージガスを導入して格納容器14側から装置外部側に向かうパージガス流を形成するためのものであり、図例では前記冷凍機30の周囲に巻付けられている。
【0055】
このパージガス導入管80の中間部は、前記第1冷却用フランジ70を貫通している。同管80の上部は前記冷凍機支持用フランジ50を貫通して装置外部に導出されており、その上端(ガス入口端)にバルブ82が設けられている。このバルブ82には、図略のパージガス供給源(例えばヘリウムガスボンベ)が接続される。これに対して前記パージガス導入管80の下端部すなわちガス排出部84は、前記フィン34のさらに下方に回され、かつ、この位置で略180°転回して上向き(すなわち装置外部側向き)に指向した状態となっている。
【0056】
このパージガス導入管80としては、熱伝導率の小さい材料(例えばステンレス鋼)で構成された小径の中空管が好適である。また、前記パージガスは通常運転時における前記冷凍機挿入空間内の温度で凝固しない低沸点のものであればよいが、一般にはヘリウムガスが望ましい。
【0057】
一方、前記冷凍機支持用フランジ50には、前記パージガス導入管80と別の位置で排気管86の一端が貫通しており、この排気管86の他端に逆止弁88が設けられている。この逆止弁88は、前記冷凍機挿入空間内の圧力が大気圧よりも一定圧力以上高くなったときにのみ開弁して当該冷凍機挿入空間内のガスを外部に放出することにより、内圧を一定以下に保持する役割を果たす。
【0058】
また、装置外部において前記パージガス導入管80からはバルブ92を有するバイパス管90が分岐し、前記スリーブ44の内側空間につながっている。すなわち、前記パージガス導入管80のうち装置外部に位置する部分が前記バイパス管90を介して冷凍機挿入空間の装置外部側端部の近傍に連通可能となっている。このバイパス管90の役割については後に詳述する。
【0059】
さらに、この極低温装置では、前記連通路78を開閉するための弁体94と、この弁体94を装置外部から操作するための操作用索体98とが設けられている。
【0060】
前記弁体94は、前記スリーブ48内において前記格納容器14の天壁の直上方の位置に昇降可能に配置されている。この弁体94は銅等の熱伝導性の高い材料で形成され、その上面は円錐状をなしている。一方、前記スリーブ48の前記連通部76の直下方の箇所は、前記弁体94の上面と密着可能な円錐状内面をもつ弁座部96とされ、この弁座部96と前記弁体94との密着によって、前記連通路78と格納容器14内の空間とが遮断されるようになっている。
【0061】
なお、前記弁体94が前記弁座部96に密着する部位には、当該弁体94を構成する材料よりも弾性変形し易い金属材料からなるシール層を設けておくことが、より好ましい。このシール層としては、例えば、ハンダからなる層とインジウムからなる層とを積層したものなどが好適である。
【0062】
前記操作用索体98は、その下端が前記弁体94の頂点部分につながれ、この弁体94を吊下げ状態で保持する。この操作用索体98は、前記弁体94から前記冷凍機30に沿って上方に導かれ、前記スリーブ44から外側に延設された案内管100を通して装置外部に導出されており、この導出端に操作板102が固定されている。この操作板102と前記案内管100の端部との間には引張ばね104が介在している。そして、この引張ばね104が引張変形していない状態で図示のように前記弁体94の上面が前記弁座部96から下方に離間する一方、当該状態から前記引張ばね104の付勢力に抗して前記操作板102を引き上げると、弁体94が上向きに引張られて当該弁体94の上面が前記弁座部96に密着するように、前記操作用索体98の長さが設定されている。
【0063】
なお、前記操作用索体98は、前記冷凍機挿入空間内に前記冷凍機30が挿入されていても前記の引張操作が可能となるように、この冷凍機30を迂回するように配索されており、その配索状態を保持するために前記操作用索体98を案内するガイド106が前記スリーブ44,46,48の内面適所に設けられている。
【0064】
次に、この極低温装置の使用要領を説明する。
【0065】
まず、通常運転は次の状態にて行うようにする。
【0066】
1)冷凍機挿入空間内の正規の位置に冷凍機30が挿入された状態にする。具体的には、当該冷凍機30の第1冷却ステージ31を第1冷却用フランジ70に熱伝導可能に接続するとともに、冷凍機支持用フランジ50の圧入部54をスリーブ44の上端部内側に圧入する。また、適当な高さ位置で同フランジ50のフランジ部52を高さ調節機構60のねじ棒62に固定する。具体的には、各ねじ棒62に下側ナット66によって支持された高さ調節フランジ64上に前記フランジ部52を載せ、これに上側ナット68を締め付けて固定する。
【0067】
2)操作板102は操作せずに弁体94を図示の開弁位置(弁座部96から離間した位置)に保っておく。
【0068】
3)パージガス導入管80のバルブ82は閉じ、バイパス管90のバルブ92は開いておく。
【0069】
この状態で、冷凍機30が定常運転にまで達すると、この冷凍機30の第1冷却ステージ31が第1冷却用フランジ70及び熱伝導体72を通じて熱シールド体16を適温まで冷却するとともに、同冷凍機30の第2冷却ステージ32がフィン34を約4Kまで冷却する状態となる。従って、格納容器14内で冷媒12が蒸発することにより生成される冷媒ガスが、同容器14の貫通孔74及び連通路78を通じて上昇しても、このガスが前記フィン34と接触することにより再凝縮され、格納容器14内に還元されることになり、これにより冷媒12の消費量及び補充頻度が著しく低減する。
【0070】
これに対し、前記冷凍機30のメンテナンス(例えば定期的なメンテナンス)を行う際には、当該冷凍機30の運転を一旦中断して当該冷凍機30を冷凍機挿入空間から抜き取り、新しい冷凍機30を前記冷凍機挿入空間内に挿入して再起動させる作業を要するが、この作業は次の手順にて行う。
【0071】
1)操作用索体98につながる操作板102を引張ばね104の弾性復帰力に抗して上向きに引張ることにより、弁体94の上面を弁座部96に密着させる。これにより、格納容器14内が前記弁体94よりも上方の冷凍機挿入空間から遮断されるため、この冷凍機挿入空間内に後述のパージガスが導入されても当該パージガスが格納容器14側に流入することが防がれる。また、前記弁体94の直上の連通路78の流路断面積は、冷凍機挿入空間内の最小流路断面積よりも小さいため、仮に前記弁体94の閉弁動作に不良があっても、前記パージガスが前記連通路78を通じて格納容器14側に流入することが有効に抑止される。
【0072】
2)前記バイパス管90のバルブ92を閉じてパージガス導入管80のバルブ82を開くことにより、このパージガス導入管80を通じて冷凍機挿入空間内にパージガスを導入する。具体的に、このパージガスは、冷凍機30のフィン34よりも下方の位置で、前記パージガス導入管80の下端のガス排出部84から上向きに排出されることになる。このパージガスの導入により冷凍機挿入空間内の圧力が一定以上になると排気管86の逆止弁88が開弁する。これにより、前記ガス排出部84から第2冷却ステージ32の図略の開口を通じて前記逆止弁88へ向かう(すなわち格納容器14側から装置外部側に至る)上向きのパージガス流が形成され、そのパージガスは冷凍機30全体を徐々に暖めながら前記排気管86及び逆止弁88を通じて大気に放出される。
【0073】
3)第2冷却ステージ32及びフィン34の近傍の温度が適当な温度(例えば酸素の沸点以上の温度)まで上昇した時点で、前記パージガスの導入は継続しながら、冷凍機30を冷凍機挿入空間内から装置外部へ(すなわち上側へ)抜き取る。これに伴い、前記冷凍機30に固定されている冷凍機支持用フランジ50や排気管86、さらには前記冷凍機30に巻付けられているパージガス導入管80も前記冷凍機30と一体に装置外へ引き上げる。その際、前記パージガス導入管80とバイパス管90とは予め切り離しておく。
【0074】
このように、パージガス流を形成しながら冷凍機30の引き抜きを行うことにより、その引抜き時に装置外部から冷凍機挿入空間内に大気や水蒸気等が流入することが有効に抑制される。
【0075】
ここで、前記パージガス中に誤って一定以上の高凝固点不純物(例えば水や二酸化炭素)が混じっている場合、この不純物が固化して前記パージガス導入管80の閉塞を招くことがあり、このような閉塞状態を解除するにはパージガス導入管80の中の温度を上げて前記の固化した不純物を気化する必要が生じる。このとき、比較例として図2に示すように前記パージガス導入管80が例えばスリーブ48に固定的に接続されているとすると、当該パージガス導入管80内を加温するためには、被冷却体10の昇温を伴う極低温装置全体の運転停止を行わなければならず、その後の立上げに多大な時間とコストを要することになる。特に、被冷却体が前記のような超電導磁石10である場合にはこれを一旦消磁しなければならず、その復旧に要する時間はきわめて長大なものとなる。
【0076】
これに対して、図1に示す極低温装置では、前記パージガス導入管80が前記冷凍機30に沿って設けられていて、両者が一体的に冷凍機挿入空間から引き上げられるので、仮にパージガス導入管80に前記のような閉塞が生じても、極低温装置全体の運転は停止することなく、当該装置本体の外部で前記パージガス導入管80の復旧(加熱等)を行うことができる。
【0077】
4)前記のようにして冷凍機30の引抜きを行った後、新しい冷凍機30を冷凍機挿入空間内に迅速にセットし、引抜き前の状態に戻す。すなわち、パージガス導入管80のバルブ82を閉じてバイパス管90のバルブ92を開き、弁体94を開弁位置に下げる。そして、前記冷凍機30を起動して定常状態まで移行する。
【0078】
このとき、前記バイパス管90は次のような役割を果たす。
【0079】
前記冷凍機30を再起動した後、定常状態になり、再凝縮室の温度が4K付近になったとき、パージガス導入管80内部には、室温から絶対零度付近に至る温度分布を持つヘリウムガスが充満する。このように大きな温度勾配を有するガスが充填された配管では、ガスの熱音響振動が生じると共に非常に大きな熱伝達が起こり、再凝結室へ向けての大きな熱流入が発生する(例えば、超伝導・低温工学ハンドブック、(社)低温工学協会編を参照)。しかし、前記バイパス管90を通じて前記パージガス導入管80を冷凍機挿入空間のような大容積空間に連通しておくことで、前記熱音響振動の発生を有効に抑止することが可能となる。
【0080】
図3は、前記バイパス管90の効果を端著に表すデータを示したものである。同図に示されるグラフの右縦軸は、パージガス導入管80に設けられたバルブ82の位置で測定したパージガス導入管80内の圧力振動の振幅と周波数を示し、左縦軸は冷凍機30の第2冷却ステージ32の温度及び冷媒12(液体ヘリウム)の液面温度を示しており、横軸は時間を示している。
【0081】
同図左端に示されるように、冷凍機30が定常状態にあるときは、格納容器14の内圧は大気圧以下であり、冷媒12の液面温度は約4Kである。ここで、バルブ92を閉じてバイパス管90を閉塞すると、圧力変動の振幅や周波数が急激に上がるとともに、第2冷却ステージ32の温度が急上昇する。これは、パージガス導入管80の中で発生した熱音響振動によって大きな熱が前記第2冷却ステージ32及びフィン34に入力されたためと考えられる。その後、前記バルブ92を開いてバイパス管90を連通状態にすると、前記第2冷却ステージ32の温度は迅速に復帰している。
【0082】
なお、本発明において前記バイパス管90は必須のものではなく、パージガス導入管80の内径や管長によっては適宜省略し得るものである。また、格納容器14側へのパージガスの流入を抑止する手段である小断面積の連通部76及び弁体94は必ずしも併設しなくてもよく、いずれか一方のみ設けてもよいし、双方を省略してもよい。また、弁体94によって格納容器14側の流路を遮断する場合には、パージガス導入管80の下端部(ガス排出部84)を下に向けても結果的に上向きのパージガス流を形成することは可能である。
【0083】
本発明の第2の実施の形態を図4に示す。
【0084】
前記図1に示した装置は、被冷却体10を冷媒12に浸漬して冷却するものであるが、第2の実施の形態に係る装置は、冷媒を使わずに冷凍機30により直接被冷却体10を冷却する無冷媒方式のものとなっている。この装置では、前記図1に示した熱シールド体16、フィン34、及び小断面積の連通部76が省略され、前記冷凍機30の第2冷却ステージ32が被冷却体10に直結されている。
【0085】
また、超電導マグネット10の上面から真空容器18の天壁を貫いて装置外部に至るまでの領域にスリーブ(冷凍機挿入部)110が設置されており、このスリーブ110の内側に冷凍機挿入空間が形成されている。
【0086】
このような装置においても、冷凍機30のメンテナンスの際には、当該冷凍機30に巻付けられているパージガス導入管80を通じてスリーブ44,46,48内の冷凍機挿入空間にパージガスを導入して上向きのパージガス流を形成しながら、当該冷凍機30を引き上げることにより、前記冷凍機挿入空間内への外気の流れ込みを有効に抑止しつつ冷凍機30の交換を行うことができる。また、前記第1の実施の形態と同様、前記冷凍機30とともにパージガス導入管80を引き上げることにより、このパージガス導入管80に閉塞が発生しても極低温装置全体の運転は停止させることなく前記パージガス導入管80の復旧を行うことができる。
【0087】
なお、本発明において前記パージガス導入管80は必ずしも冷凍機30に巻き付けられていなくてもよく、例えば当該冷凍機30に沿って略直線的に配管されていてもよい。ただし、図示のように冷凍機30にパージガス導入管80を巻付けるようにすれば、当該導入管80が冷凍機30から離れにくく、当該パージガス導入管80が第1冷却用フランジ70等に引掛かるといつた不都合をより確実に回避できる利点がある。あるいは、前記パージガス導入管80を前記冷凍機30の本体内に組み込むようにしてもよい。
【0088】
また、本発明では冷凍機30の具体的な構成も問わず、例えば単一段の冷凍機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる極低温装置の要部を示す断面図である。
【図2】本発明の比較例にかかる極低温装置の要部を示す断面図である。
【図3】バイパス管がないときにパージガス導入管に起因する熱音響振動の発生状況を表すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施の形態にかかる極低温装置の全体構成を示す断面図である。
【図5】従来の極低温装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10 ソレノイド型超伝導磁石(被冷却体)
12 冷媒
14 格納容器
16 熱シールド体
18 真空容器
20 磁場利用空間
30 冷凍機
31 第1冷却ステージ
32 第2冷却ステージ
34 フィン
44,46,48 スリーブ(冷凍機挿入部)
70 第1冷却用フランジ
76 連通部
78 連通路
80 パージガス導入管
82 バルブ
84 ガス排出部
86 排気管
88 逆止弁
90 バイパス管
92 バルブ
94 弁体
96 弁座部
98 操作用索体
102 操作板
104 引張ばね(付勢手段)
106 ガイド
110 スリーブ(冷凍機挿入部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却体を格納する格納容器と、この格納容器内に格納される前記被冷却体の冷却に寄与する冷熱を発生させる冷凍機とを備えた極低温装置において、
前記格納容器の内部と装置外部とにつながって装置外部から前記冷凍機が挿入可能である冷凍機挿入空間を囲む冷凍機挿入部と、
前記冷凍機挿入空間から装置外部へ前記冷凍機が引き抜かれたときに当該冷凍機挿入空間内に外気が流入するのを防ぐためのパージガスを装置外部から前記冷凍機挿入空間内に導入して前記格納容器側から装置外部側に向かうパージガス流を形成するためのパージガス導入管とを備え、
このパージガス導入管は、前記冷凍機に沿って設けられて当該冷凍機とともに前記冷凍機挿入空間に対して挿脱されるように構成されていることを特徴とする極低温装置。
【請求項2】
請求項1記載の極低温装置において、前記格納容器は前記被冷却体を冷却するための液体状の冷媒を収容してこの冷媒中に前記被冷却体が浸漬される状態で当該被冷却体を格納するものであり、前記冷凍機は前記格納容器内で前記冷媒が蒸発して生じた冷媒ガスを前記冷凍機挿入空間内で再凝縮させるものであることを特徴とする極低温装置。
【請求項3】
請求項2記載の極低温装置において、前記パージガス導入管のガス排出口が前記冷凍機挿入空間内において前記冷凍機の挿入方向奥側端部よりも奥方の位置で装置外部側に向くように配置されていることを特徴とする極低温装置。
【請求項4】
請求項1記載の極低温装置において、前記冷凍機は前記格納空間内の被冷却体に熱伝導可能となるように接続されるものであることを特徴とする極低温装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の極低温装置において、前記パージガス導入管が前記冷凍機の周囲に巻付けられていることを特徴とする極低温装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の極低温装置において、前記冷凍機挿入空間に前記冷凍機が挿入された状態で当該冷凍機挿入空間の装置外部側端部がパージガス排出通路を残して塞がれるとともに、前記パージガス排出通路に前記パージガスの前記装置外部への排出方向の流れのみを許容する逆止弁が設けられていることを特徴とする極低温装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の極低温装置において、前記パージガス導入管は、バルブを有するバイパス管を介して前記冷凍機挿入空間の装置外部側端部の近傍に連通していることを特徴とする極低温装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の極低温装置において、前記冷凍機挿入空間内に導入されるパージガスが前記格納容器内に流れ込むのを抑止するガス流入抑止手段を備えたことを特徴とする極低温装置。
【請求項9】
請求項8記載の極低温装置において、前記ガス流入抑止手段として、前記冷凍機挿入空間と前記格納容器内の空間とを連通する連通路を形成する連通部を有し、この連通部の連通路の流路断面積が、前記冷凍機挿入空間内に前記冷凍機が挿入された状態での当該冷凍機挿入空間内の最小流路断面積より小さいことを特徴とする極低温装置。
【請求項10】
請求項8または9記載の極低温装置において、前記ガス流入抑止手段は、前記冷凍機挿入空間から前記格納容器へのガス流路を開閉する弁体と、この弁体を装置外部から操作するための弁操作手段とを含むことを特徴とする極低温装置。
【請求項11】
請求項10記載の極低温装置において、前記弁操作手段として、前記弁体をこの弁体が前記冷凍機挿入空間の格納容器側端部を開く向きに付勢する付勢手段と、一方の端部が前記弁体に連結され、他方の端部が装置外部に導出される操作用索体とを備え、この操作用索体を装置外部から引張ることにより前記弁体が前記付勢手段の付勢力に抗して前記冷凍機挿入空間の格納容器側端部を閉じる位置に移動するように前記操作用索体が配索されていることを特徴とする極低温装置。
【請求項12】
請求項11記載の極低温装置において、前記操作用索体は、前記冷凍機挿入空間内に前記冷凍機が存在する状態でも装置外部からの引張操作が可能となるように当該冷凍機挿入空間に挿入される冷凍機を迂回するように配索されていることを特徴とする極低温装置。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかに記載の極低温装置において、前記弁体のうち、この弁体がその閉弁時に相手方の弁座部分と接触する部位に、当該弁体を構成する材料よりも弾性変形し易い金属からなるシール層が設けられていることを特徴とする極低温装置。
【請求項14】
被冷却体を格納する格納容器を備えた極低温装置に設けられ、この格納容器内に格納される前記被冷却体の冷却に寄与する冷熱を発生させる冷凍機を含む極低温装置用冷凍機ユニットであって、
前記冷凍機が、前記極低温装置の外部と前記格納容器の内部とにつながるように当該極低温装置に形成された冷凍機挿入空間内に当該極低温装置の外部から挿入可能となる外形を有するとともに、
この冷凍機が前記冷凍機挿入空間から装置外部へ引き抜かれたときに当該冷凍機挿入空間内に外気が流入するのを防ぐためのパージガスを装置外部から前記冷凍機挿入空間内に導入して前記格納容器側から装置外部側に向かうパージガス流を形成するためのパージガス導入管を備え、
このパージガス導入管が前記冷凍機に沿って設けられて当該冷凍機とともに前記冷凍機挿入空間に対して挿脱されるように構成されていることを特徴とする極低温装置用冷凍機ユニット。
【請求項15】
請求項14記載の極低温装置用冷凍機ユニットにおいて、前記極低温装置の格納容器は前記被冷却体を冷却するための液体状の冷媒を収容してこの冷媒中に前記被冷却体が浸漬される状態で当該被冷却体を格納するものであり、前記冷凍機は前記格納容器内で前記冷媒が蒸発して生じた冷媒ガスを前記冷凍機挿入空間内で再凝縮させるものであることを特徴とする極低温装置用冷凍機ユニット。
【請求項16】
請求項15記載の極低温装置用冷凍機ユニットにおいて、前記パージガス導入管のガス排出口が前記冷凍機の挿入方向奥側端部よりも奥方の位置で装置外部側に向くように配置されていることを特徴とする極低温装置用冷凍機ユニット。
【請求項17】
請求項14記載の極低温装置用冷凍機ユニットにおいて、前記冷凍機は前記格納空間内の被冷却体に熱伝導可能となるように接続されるものであることを特徴とする極低温装置用冷凍機ユニット。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれかに記載の極低温装置用冷凍機ユニットにおいて、前記パージガス導入管が前記冷凍機の周囲に巻付けられていることを特徴とする極低温装置用冷凍機ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−127298(P2007−127298A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318142(P2005−318142)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】