説明

極性官能基を持つ重合体で修飾された固相抽出用の多孔性基質

【課題】従来の重合体からなる収着媒は、粒子状をしているため収着媒用ベッド中に加えるか、または繊維からなる個状組織に絡ませることが必要であった。しかし、このような収着媒は高価であり、固相抽出に使用するのに不便であり、検体に対して良好な保持率を示さず、少量の溶離剤ではうまく検体を回収できない。そこでこれらの欠点を改良した収着媒を提供する。
【解決手段】多孔性基質を特定構造で表わされる重合体によって修飾して一体としたものを収着媒として提供する。とくに極性官能基を持った重合体で多孔性基質を修飾してなる一体物を収着媒として提供する。またその収着媒の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般に分析分離および準備分離などのための装置と方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この出願は2005年5月2日に出願された「重合体で修飾された固相抽出用の多孔性基質」と題する米国特許出願第11/120,003号に関連するものである。
【0003】
重合体の一体物を使用することは、分析分離および製造分離の領域で知られている。1つの普通に使用されている重合体の一体物は、スチレンとジビニルベンゼンとのフリーラジカル重合によって作られている。その多孔構造は、単量体の選択、橋かけ結合をする共重合体の量、重合温度、および普通はドデカノールのような気孔発生溶剤の量と種類によって制御できる。これらのパラメーターと、一体物の気孔構造に与えるパラメーターの影響は、下記非特許文献1によりさらに詳しく説明されており、その中では巨大分子(蛋白質)の混合物を分離するのに代表的な重合体の一体物からなるディスクが用いられた。
【0004】
同様に、一体物からなるクロマトグラフィーベッドの性能が、微小薄膜重合体ビーズを充填したカラムと比較された(下記非特許文献2)。ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)の一体物が毛管中で作られ、電気噴霧イオン化質量分析に備えて二重螺旋状の核酸を分離するのに用いられた。一体物のカラムは重合体ビーズを充填したカラムに比べてカラムの性能では進歩を示した。重合体吸着剤の使用は分析分離と調製分離の分野では知られている。多孔性構造は単量体の選択、橋かけ結合をしている共重合体の量、重合温度、および気孔発生溶剤の量と種類によって制御できる。これらのパラメーターと、一体物の気孔構造に及ぼすこれらパラメーターの影響は下記非特許文献3に詳しく検討されている。
【0005】
一般に用いられている重合体の一体物は、スチレンとジビニルベンゼンとのフリーラジカル重合によって作られている。スチレン/ジビニルベンゼンの重合体の多くの例が当業界では知られており、固相抽出およびクロマトグラフィーの分野で用いられて来た。例えば、下記非特許文献2はポリ(スチレン、ジビニルベンゼン)からなる一体物のクロマトグラフィーベッドの性能を記載し、微小薄膜状のポリ(スチレン、ジビニルベンゼン)重合体ビーズを充填したカラムと比較した。一体物のポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)は、毛管中で作られ、電気噴霧イオン化質量分析の準備のために二重螺旋状の核酸を分離するのに用いられた。その一体物のカラムは、重合体ビーズを充填したカラムに比べてカラム性能において進歩を示した。
【0006】
Xieの下記特許文献1は、カラムケーシングに入れる透過性重合体の一体物材料の調製を記載しており、そこでは圧力の適用が壁の影響と膨潤を避けると説明されている。或る具体例では、重合体の棒またはシリカのビーズのような充填材が重合体のための骨組として用いられ、より大きな機械的な力を与えると説明されている。
【0007】
さらに、重合体のビーズは分析方法と製造方法において多くの使用を見出した。例えばKalluryの下記特許文献2は、双極性相互作用と疎水性相互作用からなる群から選ばれた1または2以上の相互作用を容易にするに適した重合体の背骨と、重合体背骨に関連し、プロトン受容、プロトン供与および双極性相互作用からなる群から選ばれた1または2以上の相互作用を受けるに適し、また極性分子の保持に対して強い能力を示すアミド官能基とを含んだ重合体収着媒を記載している。その収着媒は、試料の前処理のためのディスク、膜、注射器筒のカートリッジを含んだ支持物に関連している。
【0008】
Bouvierの下記特許文献3は、溶液から有機溶質を取り出す方法を記載しており、その方法は疎水性単量体と1または2以上の親水性単量体で作られたビーズまたはペレットの形をした重合体に溶液を接触させることからなり、そこでは溶質が重合体に吸着される。その疎水性単量体はジビニルベンゼンであり、その親水性単量体はビニルピリジンまたはN−ビニルピロリドンのような複素環式単量体である。
【0009】
Fritzの下記特許文献4は、検体を吸着するためのイオン性官能基を含んだ官能基を持つ大気孔性のポリ(スチレン、ジビニルベンゼン)粒子を記載している。同様に、Fritzの下記特許文献5は、繊維状母体と収着性粒子とからなり、収着性粒子と繊維状母体とは単量比で40:1から1:4の割合で存在し、収着性粒子が母体の網に絡まっている上記大気孔性のポリ(スチレン、ジビニルベンゼン)粒子の固相抽出媒体中での使用を記載している。下記特許文献6はPTFEフィブリル母体と、母体中に絡んでいる収着性粒子とからなる固相抽出媒体の製造方法と、検体の単離方法とを記載している。その固相抽出媒体は粒子をPTFEエマルジョンと混合し、撹拌してPTFE粒子の繊維組織を形成させ、カレンダーにかけてシートとすることによって作られている。粒子は互いに離れているものとして記載され、粒子を捕捉しているPTFEフィブリルケージ中に単離されている。
【0010】
Hagenの下記特許文献7はPTFEと風に吹かれた微小繊維とからなる多孔性の不織布繊維母体と、収着性または反応性疎水性シリカ質の分子篩とが40:1から1:40の重量比で母体中に粒子が絡んでいる固相抽出媒体を記載している。
【0011】
重合体収着剤の製造に用いられる単量体についての変更が調査された。例えば下記特許文献8およびTakahashiの下記特許文献9は、報告によると疎水性とイオン交換基とを持った疎水性イオン性物質からなる固相抽出用充填材を記載している。その充填材は、疎水性単量体(A)と親水性単量体(B)とを共重合させ、その中にイオン交換基を導入することによって作られ、その場合説明によると、イオン交換基は疎水性基の場所を損なうことなく導入される。
【0012】
Leeの下記特許文献10は、固相抽出のためチャンネルによって入り込んだ橋かけ結合された重合体粒子からなる多孔性樹脂を記載している。その重合体粒子は疎水性成分と、少なくとも1種の親水性成分と、少なくとも1種のイオン交換性の官能基とからなることを特徴としている。或る具体例では、疎水性単量体はジビニルベンゼンであり、親水性単量体はN−ビニルピロリドンであり、共重合体はスルホン化されたポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)である。
【0013】
Kataoka, H.は繊維と重合体固定相で被覆された毛管とを用いる微小抽出技術を記載している(下記非特許文献4)。
下記特許文献11と下記非特許文献5において、Tsudaほかは低濃度のガス状トルエンを吸着させるために、シリカ微小粒子を付着させた一種の繊維吸着剤の調製を記載している。そのシリカ微小粒子は、報告によれば、アルカリ性の条件下でシリカのオリゴマーを重合させ、ガラス繊維上にそれを固定し、その繊維をガラス繊維中に織り込んで作られた。シリカの微小粒子の表面はC18相を結合させることによって化学的に修飾された。
【0014】
下記特許文献12は吸着剤粒子、細かいプラスチック粒子および強化繊維の混合物からなる吸着剤成形体を記載している。その吸着剤は活性炭素、シリカ、アルミナまたはゼオライトである。Crowderの下記特許文献13は2相間の差別的分布を行うための分子分離カラム、すなわち、母体中に微粒子を不動にしている多孔性母体からなる実質的に均一な固定相を含むカラムを記載している。
【0015】
しかし、当業界で記載されている多くの重合体収着媒は、収着媒ベッド中に添加されるか、または繊維の網状組織中に絡める粒子として提供されている。こうして作られている粒子は便利なものでなくて製造するに高価となり、またはその粒子は固相抽出の用途に使用するに容易でない。その固相抽出特性は限定されており、収着媒は極性検体に対しても非極性検体に対しても良好な保持率を示さない。さらに、その固相抽出媒体はすぐれた流速でも、少量の溶離剤では検体を回収させないで、分析の用途では時間と、労力と溶剤との迅速で有効な使用を与えない。
【特許文献1】米国特許第6,749,749号明細書
【特許文献2】米国特許第6,926,823号明細書
【特許文献3】米国特許第6,726,842号明細書
【特許文献4】米国特許第5,616,407号明細書
【特許文献5】米国特許第5,618,438号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第498557号明細書
【特許文献7】米国特許第5,738,790号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1159995号明細書
【特許文献9】米国特許第6,759,442号明細書
【特許文献10】米国特許第6,322,695号明細書
【特許文献11】米国特許第6,723,157号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第0432438号明細書
【特許文献13】米国特許第4,512,897号明細書
【特許文献14】米国特許第5,328,758号明細書
【特許文献15】米国特許出願第11/018168号明細書
【特許文献16】米国特許第4,017,528号明細書
【特許文献17】国際特許出願第PCT/US2004/016904号明細書
【特許文献18】米国特許第5,906,796号明細書
【特許文献19】米国特許第6,200,533号明細書
【非特許文献1】Merhar, M., et al. (2002) Materiali in Tehnologije, 36:163
【非特許文献2】Premstaller, A., (2000) Anal. Chem., 72:4386
【非特許文献3】Okay, O., (2000) Prog. Polym. Sci., 25:711-779
【非特許文献4】Kataoka, H., (2005) Current Pharm. Analysis 1, 65-84
【非特許文献5】Tsuda, et al. (2003) Analytical Sciences 20, 1061
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、この発明の主たる目的は、固相抽出用の重合体で修飾された多孔性基質を提供して、当業界における上述の必要を満足させることである。
この発明のさらなる目的は、固相抽出のための改良された方法を提供することである。
この発明のさらなる目的は、固相抽出媒体を調製するための改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、固相抽出用又はクロマトグラフィー用の極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質が提供され、その基質は、多孔性基質とその上に形成された極性官能基を持つ重合体との一体物からなり、その重合体の一体物は、式
[CH2−CR−]n [CH2−CR−]m
| |
L L
| |
A Q
| |
r

r
で表わされる。式中、AはC5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリールであり、これらは場合によってはC1-12の分枝または直鎖のヒドロカルビル、またはハロによって置換されたものであり、式中n/mは約0.001から約1000までであり、式中rは0または1であり、式中Qは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)s−,および−(CH2CH2CH2O)s−(ここでsは1−12),−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NR−,−NRq−,および−NRq+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−,−OHまたはそれらの組み合わせであり、Lは結合、またはC1-12の分枝、直鎖、または環式ヒドロカルビルであり、Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖、または環式ヒドロカルビル、これらは場合によってはハロ、ニトロ、またはアルキルで置換されたものであり、


Pは −CH2−CR− であり
ここでは[−CH2−CR−L−A−Pr]と[−CH2−CR−L−Q−R−Pr]との順序はランダム、ブロックまたはそれらの組み合わせである。その多孔性基質は一体物、凝集粒子、または織布または不織布の形であることが好ましい。好ましい具体例では多孔性基質はガラス繊維の一体物である。こうして提供される極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、少なくとも40mL/分の流速を示す。
【0018】
追加の具体例では、重合体の一体物は次式で表わされる。
[CH2−CR−]n [CH2−CR−]m [CH2−CR−]o
| | |
L L L
| | |
A Q A
| | |
r R L
| |
rp

q
式中、qは0−3であり、pは0−5であり、o/mは0.001から100までであり、またここでは[−CH2−CR−L−A−Pr],[−CH2−CR−L−Q−R−Pr]および[−CH2−CR−L−A−L−Q−R]の順序はランダム、ブロックまたはそれらの組み合わせである。この重合体の一体物は、多孔性基質上に作られたあとで、さらに極性官能基を用いて官能基を与えることができる。
【0019】
また、重合体で修飾された多孔性基質を製造する方法が提供されたが、その方法は(a)1または2以上の疎水性単量体、1または2以上の親水性単量体、気孔発生溶剤および重合開始剤からなる溶液に多孔性基質を接触させ、(b)酸素の存在しないところで多孔性基質と含有溶剤とを加熱して多孔性基質上で単量体を重合させることから成るものである。疎水性単量体と親水性単量体とは橋かけ結合をすることのできる単量体であっても、橋かけ結合をできない単量体であっても、またはそれらの組み合わせであってもよい。疎水性単量体は次式を持つことが好ましい。
CH2=CR−L−A−Lr[−CR=CH2]r
式中、Lは結合またはC1-12の分枝、直鎖、または環式のヒドロカルビル、AはC5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、これらは場合によっては、C1-12の分枝または直鎖のヒドロカルビル、またはハロで置換されたものであってもよく、rは0または1である。親水性単量体は次式を持つことが好ましい。
CH2=CR−L−Q−R−Lr[−CR=CH2]r
式中、Qは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)s−および−(CH2CH2CH2O)s−(ここでsは1−12),−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3,−SO2NR−,−NRq−および−NRq+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−,−OHまたはこれらの組み合わせであり、Lは結合、またはC1-12の分枝、直鎖、または環式ヒドロカルビルであり、Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖、または環式ヒドロカルビルであり、これらは場合によってはハロ、ニトロ、またはアルキルで置換されていてもよく、rは0または1である。
【0020】
追加の具体例では、親水性単量体は次式を持つことができる。
CH2=CR−L−A−L−Q−R
式中、Qは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)s−および−(CH2CH2CH2O)s−(ここではsは1−12),−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NR−,−NRq−および−NRq+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−,−OHまたはそれらの組み合わせであり、Lは結合、またはC1-12の分枝、直鎖、または環式ヒドロカルビル、Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖、または環式ヒドロカルビルであり、これらは場合によってはハロ、ニトロ、またはアルキルで置換されたものであってもよく、AはC5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリールであり、これらは場合によってはC1-12の分枝または直鎖ヒドロカルビル、またはハロで置換されたものであってもよく、rは0または1である。その方法はさらに、重合体で修復された多孔性基質を加熱して追加の極性官能基を導入することを含んでいる。多孔性基質は一体物、凝集粒子、または織布または不織布の形であることが好ましく、多孔性基質はガラス繊維の一体物であることがさらに好ましい。
【0021】
追加の具体例では、アミドの官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を製造する方法が提供され、その方法は、(a)多孔性基質を1または2以上の疎水性単量体、1または2以上のアミド化された単量体、気孔発生溶剤および重合開始剤を含んだ溶液に接触させ、(b)多孔性基質とそれに含まれている溶液とを酸素の存在しないところで加熱して上記1または2以上の単量体を重合させて重合体で修飾された多孔性基質を生成することから成る。アミド化された単量体は、N−ビニルアセトアミド、N−アリルアセトアミド、N−メチルビニルアセトアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルベンズアミド、N−ビニル−2−クロロ−4−ニトロベンズアミド、n−ビニルピロリドン、またはビニルベンゼンスルホンアミドから選ばれることが好ましい。
【0022】
追加の具体例では極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質が提供されるが、それは上で述べた方法で調製されている。
追加の具体例では検体を単離する方法が提供されるが、その方法は(a)極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を有機溶剤と場合によっては水溶性溶剤、またはそれらの混合物でコンディショニングし、(b)分析すべき試料中に存在する検体をコンディショニングした重合体で修飾された多孔性基質を吸着させ、(c)重合体で修飾された多孔性基質から有機溶剤、水溶性溶剤、またはそれらの混合物を用いて吸着された検体を溶離させることから成るものである。
【0023】
また、検体のクロマトグラフィーによる分離を行う方法が提供されるが、その方法は、a)極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質をクロマトグラフィー装置に入れ、b)この重合体で修飾された多孔性基質を有機溶剤、水溶液またはそれらの混合物でコンディショニングし、c)この重合体で修飾された多孔性基質を1または2以上の検体が含まれている溶液と接触させ、d)有機溶剤、水溶液、またはそれらの混合物を含んだ移動相を上記重合体で修飾された多孔性基質に通し、e)重合体で修飾された多孔性基質から1または2以上の検体を溶離することから成るものである。
【0024】
或る具体例では、固相抽出またはクロマトグラフィーを実施するための装置が提供されるが、その装置は支持物に関連する極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質から成るものである。好ましくは支持物は注射器筒のカートリッジ、クロマトグラフィーカラム、微細流体素子工学プラットフォーム、1または2以上の追加膜、ピペットチップまたはマルチウエルドプレートである。
【0025】
この発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は以下に述べる記載の中で一部説明され、一部は以下の記載を検討すると当業者には明白であり、またはこの発明の実施によって知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
I.定義と概要
この発明を詳しく説明する前に、特別のことわりがなければ、この発明は特別な検体、溶剤、化合物に限定されるものでなく、それらは変わるものであることが理解されなければならない。また、ここで使用される用語は特定の具体例を説明するだけのためであって、この発明の範囲を限定する積りのないことが理解されなければならない。
【0027】
この中でまたクレームの中で使用されているように、単数形の「a」、「and」、および「the」は前後関係が明らかにそうでないと記載しているのでなければ、複数の指示物を含むということに注意しなければならない。従って、例えば「1つの溶剤」というのは、2つ以上の溶剤を含み、「1つの検体」というのは「2つ以上の検体」を含み、以下同様である。
【0028】
或る値の範囲が与えられている場合には、前後関係が明らかにそうでないと記載しているのでなければ、その範囲の上限と下限との間にある値はすべて下限値の単位の10分の1までこの発明の中に包含され、またその説明されている範囲の中のそのほかの値または中間の値はこの発明の中に含まれる。これらのより小さい範囲の上限と下限とは、独立してそのより小さい範囲内に含まれ、またその説明されている範囲内から特別に除外されているもの以外は、この発明の中に含まれる。説明されている範囲が限界に一方または双方を含む場合には、これら含まれる限界の一方または双方を除外する範囲はまたこの発明に含まれる。
【0029】
この中で用いられているように、「吸着」という用語とその文法上の派生語は、検体が重合体からなる吸着剤の表面の分子と物理的に相互に作用することによって、重合体表面と可逆的に関連を持つに至る表面現象を意味している。その関連は、例えばヴァンデルワース力、双極子−双極子相互作用、双極子誘導双極子、または分散力のような何等かの非共有結合機構により、疎水性の相互作用または水素供与のまたは受容の相互作用によるものである。
【0030】
この中で用いられているように、「検体」という用語は、生物、有機、合成、天然または無機の起源の資料中で特徴とし、確認しまたは定量されるべき分子をすべて意味している。例えば健康に良いとされる化合物またはその代謝生成物は検体となり得るし、例えば血漿のサンプル、唾液、尿、飲料水、合成物または天然物の混合物、または環境資料中に存在するものも検体である。検体は無極から極性まで何等かの極性を示す。
【0031】
この中で用いられているように、「一体物」という用語は連続構造物を意味し、例えば蜂の巣構造、発泡体および繊維を含み、繊維は織物に織られたもの、不織布マットまたは薄い紙のようなシートとされたものを含んでいる。発泡体は一般にスポンジのような構造を示している。
この中で用いられているように、「基質」という用語は、一般に洗濯または反応条件下で安定な多孔性の水不溶性材料を言うのであって、例えば溶剤抽出工程および現場での反応段階を含む試料調製および/または合成操作中に遭遇する物である。
【0032】
「有極性」「無極性」および「極性」という用語は、一般に関心のある化合物の分配係数Pを指しており、それは水性相(例えば水)に対する有機相(例えばオクタノール)中のその化合物の平衡濃度の比率である。ここで用いられているように、有極性化合物は一般に2.0より小さいlog Pの値を持つことが特徴とされるが、無極性化合物は一般に約2.0より大きいlog P値を持つことが特徴とされる。
【0033】
「極性官能基」という用語は、一般に次の化学的な基を指している:−NRC(O)−(アミド),−C(O)NR−(カルバミル),−OC(O)NR−(カルバメート),−OC(O)R−(アルキルオキシ),−NRC(O)O−(ウレタン),−NRC(O)NR−(カルバミドまたは尿素),−NCO(イソシアネート),−CHOHCHOH−(ジオール),CH2OCHCH2O−(グリシドキシ),−(CH2CH2O)s−(エトキシ),−(CH2CH2CH2O)s−(プロポキシ),−C(O)−(カルボニル),−C(O)O−(カルボキシ),−CH2C(O)CH2−(アセトニル),−S−(チオ),−SS−(ジチオ),−CHOH−,−O−(エーテル),−SO−(スルフィニル),−SO2−(スルホニル),−SO3−(スルホン酸),−OSO3(サルフェート),−SO2NMe−(スルホンアミド),−NRq−(アミン)および−NRq+−、ここでRはH(第四級アミン),−CN(ニトリル),−NC(イソニトリル),−CHOCH−(エポキシ),−NHC(NH)NH−(グアニジノ),−NO2(ニトロ),−NO(ニトロソ),−OPO3−(ホスフェート),−OH(ヒドロキシ)ではなくて、ここでsは1より大きく、好ましくは1−12であり、Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルである。
【0034】
「ヒドロカルビル」という用語は、従来の意味で炭素と水素とを含む炭化水素基を指しており、直鎖または分枝鎖状の脂肪族、脂環族化合物であり、脂肪族と脂環族部分の組み合わせ物を含むこともある。脂肪族および脂環族のヒドロカルビルは飽和であってもよく、または1または2以上の不飽和結合、普通は二重結合を含んでいてもよい。特定数の炭素原子を持ったヒドロカルビル残基が命名されるときには、その数の炭素原子を持っているすべての幾何学的異性体が含まれる積りであり、従って、例えば「ブチル」はノルマルブチル、第二級ブチル、イソブチルおよび第三級ブチルを含む意味であり、「プロピル」はノルマルプロピルおよびイソプロピルを含んでいる。
【0035】
この発明者は、驚くべきことに、極性官能基を持つ重合体で修飾された基質は、すぐれた固相抽出媒体を提供するものであり、極性検体のすぐれた保持率を提供でき、また無極性検体の保持率も提供するものであることを見出した。さらに、その重合体で修飾された基質は使用と製造が簡単であり、検体の固相抽出の技術で著しい進歩を提供するものである。さらに、その重合体が1または2以上の極性成分を持った官能基を与えられるときには、極性検体のすぐれた保持率と、特定の極性を持った検体を選択的に回収する方法が提供される。
極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質の成分と利点とを以下に詳しく記載する。
【0036】
II.重合体
重合体で修飾された多孔性基質上に形成されている重合体の一体物は、無極性化合物を吸着するために疎水性成分を含んでおり、極性化合物のすぐれた保持率を提供するために、1または2以上の極性官能基を含んでいる。その重合体の一体物は一般に次式で表わされる。
[CH2−CR−]n [CH2−CR−]m
| |
L L
| |
A Q
| |
r

r
式中、AはC5-10の単環式又は二環式アリールまたはヘテロアリールから選ばれ、n/mは約0.001から約1000までであり、rは0または1であり、Qは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,−CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)s−,および−(CH2CH2CH2O)s−(ここでsは1−12),−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NR−,−NRq−,および−NRq+−(ここではRはHではない),−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−,−OHまたはこれらの組み合わせであり、Lは結合、またはC1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビル、これらは場合によってはハロ、ニトロ、またはアルキルで置換されたものであり、


Pは −CH2−CR− であり、
式中、[−CH2−CR−L−A−Pr]と[−CH2−CR−L−Q−R−Pr]との順序はランダム、ブロックまたはそれらの組み合わせである。[−CH2−CL−L−Q−R−Pr]に対してrが1であるときには、Rは水素ではないということは理解されよう。
【0037】
成分Pは、2つの異なった重合体の背骨で結合された橋かけ結合を持った重合体を提供している。その重合体の一体物は1または2以上の疎水性単量体と、1または2以上の親水性単量体とを重合させることによって作られ、それらの単量体は橋かけ結合ができる単量体、橋かけ結合のできない単量体、またはそれらの組み合わせ物である。n/mは約0.001から約1000までであることが好ましく、約0.01から約100までであることがさらに好ましい。或る具体例ではn/mは約0.1から約10までである。従って、好ましい具体例では重合体は単量体単位[−CH2−CR−L−A−Pr]と[−CH2−CR−L−Q−R−Pr]とを約0.1と約10との間のモル比で含んでいる。
【0038】
単量体単位[−CH2−CR−L−A−Pr]は重合体に疎水性の特徴を与えて、無機性検体、または極性検体の無極性部分との相互作用を高めている。また、重合体はジビルベンゼンのような橋かけ結合をする単量体から作ることができ、その単量体は重合体に構造強度を追加している。重合体は、例えばポリ(スチレン、ジビニルベンゼン)、ハロまたはアルキルのような置換基を持ったスチレンまたはヘテロ環状体のような、官能基を持つアリールまたはヘテロアリール部分を持ったスチレンまたはジビニルベンゼンの共重合体を含むことができる。従って、多孔性基質を修飾するための重合体として使用することのできる代表的な、しかしそれに限定するものではない重合体のリストはこれに限定するのではないが、ポリスチレン、ポリ(スチレン、ジビニルベンゼン)、スチレンまたはジビニルベンゼンと、ハロゲン化またはアルキル化されたスチレン、ピリジン、チオフェン、フラン、イミダゾール等からなる共重合体である。単量体単位[−CH2−CR−L−A−Pr]中のL−A−Prは普通CH265,CH265CH2,CH26565CH2,CH255Nである。
【0039】
極性化合物のすぐれた保持率は、疎水性相互作用だけでなく親水性相互作用(例えばプロトン受容、プロトン供与、双極性、静電引力、イオン交換など)の能力を持った重合体の一体物を使用することによって達成することができる。極性化合物のすぐれた吸着性を表わすために重合体は極性官能基を含み、疎水性相互作用を加えて親水性相互作用を提供している。従って、重合体一体物は単量体単位[−CH2−CR−L−Q−R−Pr]中のL−Q−R−Prが極性官能基を与えて、検体と親水性相互作用をする能力を提供している。好ましい具体例では、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、ジビニルベンゼンとn−ビニルアセトアミドとの重合によって作られる。こうして提供された重合体の一体物は、検体と疎水性相互作用のほかに双極性相互作用の能力を持っている。極性検体のすぐれた保持率は極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質が用いられたこの中の実施例中で具体的に示されている。好ましい具体例では、極性官能基を持つ重合体一体物に対する比率n/mは約1から約5の間にある。
【0040】
追加の具体例では、重合体一体物は次式で表わされる。
[CH2−CR−]n [CH2−CR−]m [CH2−CR−]o
| | |
L L L
| | |
A Q A
| | |
r R L
| |
rp

q
式中、qは0−3であり、pは0−5であり、o/mは0.001から100までであり、[−CH2−CR−L−A−Pr],[−CH2−CR−L−Q−R−Pr]および[−CH2−CR−L−A−L−Q−R]の順序はランダム、ブロックまたはそれらの組み合わせである。[−CH2−CR−L−Q−R−Pr]に対してrが1のときは、Rは水素でないことは言うまでもない。
【0041】
単量体単位[−CH2−CR−L−A−L−Q−R]は任意であり、一般にo/mは0から約100までであり、さらに好ましくは約0.1から約10までである。当業者は単量体単位[−CH2−CR−L−A−Pr],[−CH2−CR−L−Q−R−Pr]および[−CH2−CR−L−A−L−Q−R]の相対的な割合を変えると、特定検体の最大保持率が得られるようにすることができる特定の吸着特性を持った重合体が結果として得られるということが認められよう。一般に、単量体単位[−CH2−CR−L−A−Pr],[−CH2−CR−L−Q−R−Pr]および[−CH2−CR−L−A−L−Q−R]とは、どのような整数割合ででも存在することができる。或る具体例では、その単量体単位は例えば約1:1:1,2:1:1,10:1:0,1:10:0,1:2:5の比率で存在し、制限がない。
【0042】
さらに仕込んだ化合物のすぐれた吸着性は、イオン交換能力を持った重合体によって達成される。イオン交換能力を持った重合体で修飾された多孔性基質を得るために、重合体にイオン交換官能基を導入することができる。好ましい具体例では、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、ジビニルベンゼン、n−ビニルアセトアミドおよびビニルベンゼンスルホン酸の重合によって作られる。こうして作られた重合体の一体物はカチオン交換能力と、検体との双極性相互作用と、また検体との疎水性相互作用とを持っている。他の好ましい具体例では、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、スチレンと、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテルと、ビニルピリジニウムとの重合によって作られ、アニオン交換能力と、電子供与(プロトン受容)性で検体との疎水性相互作用とを持った重合体一体物が得られる。
【0043】
従って、重合体の一体物は単量体単位L−Q−RまたはL−A−L−Q−Rとして際限がなく、例えばNHC(O)CH3,NCH3C(O)CH3,CH2CH2NCH3C(O)CH3,NC65C(O)CH3,NHC(O)C65,NCH2CH3C(O)CH2CH3,NHC(O)C64NO2,NHC(O)C43O(フロイルアミド),NHC(O)C64NHC(O)CH3;C(O)NH2,CH2CH2C(O)NH2,CH264C(O)NH2,CH264C(O)N(CH3)2,CH264C(O)NH2;CH264NH3,CH2CH2NH3,CH264N(CH3)3+,CH264SO3-;OC(O)NHCH2CH3,OC(O)NC65CH2CH3;OC(O)CH2CH3,OC(O)C65;OC(O)CH265;NCH3C(O)OCH3,NC65C(O)OCH3,NCH3C(O)OC65;NCH2CH3C(O)NHCH2CH3,NCH3C(O)NHC65,C64NCH3C(O)NHCH2CH3;CH2NCO,CH264NCO;CH2OH,CH2CH2OH,CH264OH,CH2CHOHCHOHCH3,CH2CHOHCH2OH;CH2OCHCH2O;(CH2CH2O)4,(CH2CH2CH2O)2,(CH2CH2CH2O)3;CH2C(O)CH3,CH2CH2CH2C(O)CH3,CH2C(O)C65;CH2C(O)OCH3,CH2C(O)OC65;CH2CH2CH2SCH3,CH2CH2CH2SCH265;CH2CH2CH2SSCH3;CH2OC65;CH2OCH2CH2CH3;CH264SO3-,CH2CH2SO3;CH2SO2NCH3,CH264SO2NCH3;CH2CH2N(CH3)2,CH2CH264N(CH3)2;CH2CH2N(CH3)3+,CH2CH264N(CH3)3;CH2CH2NCH2,CH2CH2CN;CH2CH264NO2,C64NO2,CH2CHOCH;またはCH2NHC(NH)NH2を含んでいる。好ましい具体例では、L−Q−R−PrはNHC(O)CH3またはNCH3C(O)CH3から選択される。
【0044】
アリールまたはヘテロアリール成分は検体と疎水性相互作用として無機性検体の保持率を高める。さらに、重合体の一体物が多孔性基質上に生成された後で、必要によりアリールまたはヘテロアリール成分を−L−Qp−Rqで置換することによって、アリールまたはヘテロアリール成分は極性官能基で官能化される。そこではqは0−3であり、pは0−5であり、Qは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−および−(CH2CH2CH2O)n−(ここでnは1−12),−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3,−SO2NR−,−NRq−および−NRq+−であり、ここでRはH,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−または−OHでなくて、Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖、または環式ヒドロカルビルである。
【0045】
こうして提供された極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、親水性相互作用のほかに疎水性相互作用を利用して検体を吸着するが、それはプロトン受容、プロトン供与、双極性、静電気引力およびイオン交換相互作用から選ばれた少なくとも1つの相互作用を含んでいる。
【0046】
III.多孔性基質
多孔性基質は、溶剤と検体への充分な接近と、気孔率(例えば約1cc/gより大きくない密度)を与えれば、どのような多孔性固体構造であってもよい。また、多孔性基質は実質的な不活性を示し、従って多孔性基質は重合体が生成されまたは検体が単離される条件下で溶解も腐食もしないことが好ましい。多孔性基質は一体物、凝集粒子または織布または不織布の形であることが好ましく、不織物は上記特許文献14とその中に引用された参考文献に記載されているような、メルトブロウンウェブ、スパンボンデェッドまたはエアレイドウェブおよびブロウンファイバーウェブのような大繊維および微小繊維のウェブを含むことが好ましい。多孔性基質は無機材料、例えば金属またはメタロイドオキサイド(例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、バナジア、ゼオライト、ムライト、ガラス等)、金属(例えばステンレススチール)または有機材料、例えば炭素繊維、セルロース材料(例えばニトロセルロース、セルロースアセテート)、ポリ(ビニルクロライド)、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリシロキサン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)等または上記のものの何れかの混合物または複合物を含んだ合成重合体から作ることもできる。多孔性基質は、多孔性基質の表面と内部の全体にわたって単量体が重合しているために、それ自身相当量の検体を吸着しない。多孔性基質はガラスファイバーの一体物であることが好ましい。
【0047】
或る具体例では、多孔性基質は不活性である。「不活性」とは、重合体で修飾された多孔性基質の下部にある多孔性基質が使用(例えば溶剤、酸、塩基、塩または緩衝剤等を用いて検体の単離と調製)の条件下で充分に安定であって、重合体で修飾された多孔性基質が検体溶液を汚染しないで使用できる程であることを意味している。特定の具体例では、多孔性基質は充分に不活性であって、アミド官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を、その構造の完全性を失うことなく、例えば強酸または強塩基の使用を含めて、製造するのに使用することができる。代表的な不活性基質は、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、PTFE)、ポリシロキサン、ポリスチレン等のような重合体基質を含み、またシリカ、ジルコニア、バナジアおよびアルミナのような材料から作られた無機基質で、ガラスまたはセラミック繊維等および金属(例えばステンレススチール網)の形をしたものを含んでいる。基質はガラス繊維の一体物であることが好ましい。使用できるガラス繊維のタイプについてはとくに制限がない。例えば大きさが約0.010と0.050インチの間のガラス繊維を用いて良い結果が得られた。しかし、他の太さの繊維を使用することができる。
【0048】
多孔性基質は、たとえば2004年12月20日に出願され共有になっている上記特許文献15に記載された、超多孔性の一体的な基質を含んでいる。さらに不活性な多孔性基質は、シリカ粒子を合着させて多孔性構造にし成形することによって作ることができる。1つの変異がUngerの上記特許文献16に記載されており、その特許はアルキル官能基をシリカの骨格構造と表面とに結合させて、ハイブリッドシリカを製造する方法を記載している。その方法は、テトラエトキシシラン(TEOS)とオルガノトリエトキシシランとの混合物を作り、酸触媒の存在下にシランを加水分解してポリアルキルエトキシシランのオリゴマーを作り、その後このオリゴマーを塩基触媒の存在下にゲル化して、多孔性のハイブリッド粒子とすることを含んでいる。
多孔性基質は検体の固相抽出を実施するに適した形状であることが好ましい。以下に応用を説明する。
【0049】
IV.気孔発生溶剤
多孔性基質上に生成される重合体は、それ自身が多孔性である。気孔率は以下の特性を示す気孔発生溶剤によって与えられる。気孔発生溶剤は、単量体混合物中に溶解し、重合反応に不活性であって、生成される重合体を溶解しない。適当な気孔発生溶剤はこれに限定されるのではないが、トルエン、キシレン、エチルベンゼンおよびジエチルベンゼンのような芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびデカンのような飽和炭化水素、イソアミルアルコール、オクタノール、デカノール、ドデカノールおよび2−エチルヘキシルアルコールのようなアルコール類;ジクロロメタン、ジクロロエタンおよびトリクロロエタンのような脂肪族ハロゲン化炭化水素;エチルアセテート、ブチルアセテート、ジメチルフタレートおよびジエチルフタレートのような脂肪族または芳香族エステル;トリアセチン、トリブチリンおよびトリカプリンのようなグリセロールトリエステルを含んでいる。気孔発生溶剤は個別にまたは2以上のものを組み合わせて用いることができる。気孔発生溶剤の添加量は、単量体の全量を基準として約10から300質量%の範囲内で変えることができる。
【0050】
V.重合開始剤
重合開始剤は、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシジイソブチレート、ラウロイルパーオキサイド、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)およびアゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(CAN)のようなラジカル重合開始剤を含んでいる。
【0051】
VI.重合体で修飾された基質へ極性官能基の付与
重合体の一体物は、1または2以上の疎水性単量体と、1または2以上の親水性単量体との重合によって作られる。従って、重合体の一体物は、極性官能基の追加を必要としないで、極性官能基とともに疎水性官能基を含んでいる。好ましい具体例では極性官能基はアミド、アミン、カルバミド、カルバメート、ウレタン、アルキルオキシ、ヒドロキシまたはニトロである。他の好ましい具体例では、極性官能基はカチオン交換官能基(例えばスルホン酸)である。さらに好ましい具体例では、極性官能基はアニオン交換官能基(例えば第四級アミノ)である。追加の具体例では、極性官能基の2以上の組み合わせが存在し、例えば重合体一体物がアミド+スルホン酸、アミド+ヒドロキシ、アミド+アミン、アミド+ニトリル等である。
【0052】
或る追加の具体例では、多孔性基質上に形成された重合体一体物中のアリールまたはヘテロアリール成分は、重合体一体物が多孔性基質上に形成されたあとで−L−Qp−Rqのような極性官能基を導入するために、重合体を処理することによって、追加の極性官能基を与えることができる。この場合qは0−3であり、pは0−5であり、さらに好ましくはpは0−2であり、Qは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R−,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3,−SO2NR−,−NRqおよび−NRq+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−,−OHであり、ここでnは1より大きく、好ましくは1−12であり、Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルである。こうして作られた極性官能基質を持ち修飾された多孔性基質は、親水性相互作用のほかに疎水性相互作用を利用して検体を吸着し、その相互作用はプロトン受容、プロトン供与、双極性、静電気引力およびイオン交換相互作用から選ばれた少なくとも1つの相互作用を含んでいる。
【0053】
VII.装置
追加の側面では固相抽出を実施するための装置が提供される。例えば、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、さらに支持体または支持フォーマットと関連させられる。代表的な支持体と支持フォーマットのリストは、それに限るものではないが、注射器筒のカートリッジ、クロマトグラフィーカラム、追加の重合体膜またはガラス繊維膜、微細流体素子工学のプラットフォーム、ピペットチップおよび多数の井戸のある板を含み、ディスクおよびその他の支持体もまた用いることができる。極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、支持フォーマットの表面上で、例えば多数の井戸のある板上で処分されるかまたはその重合体で修飾された多孔性基質は支持フォーマット中に例えば重合体の膜またはガラス繊維膜の間に埋め込まれる。従って「関連」とは一般的に吸着剤が支持体または支持フォーマットと接触していることを意味している。
【0054】
他面では、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、支持物と関連して溶剤による検体のローディングおよび/または溶離を容易にする。支持体または支持フォーマットは、紐、板、円盤、中空チューブ、棒等のような多くの構造または形のうちのどの1つをも取ることができる。支持体または支持フォーマットは疎水性、親水性であり、また親水性にされることもできる。代表的な支持体および支持フォーマットは制限がないが、注射器筒カートリッジ、ピペットチップ、多数の井戸のある板、微細流体素子工学のプラットフォーム、集団試料調製、注入および検地装置等を含み、支持装置の表面上で処理され、または装置内のチャンネルまたはチューブ内に埋め込まれる。
【0055】
好ましい具体例では、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、例えば2004年5月28日に出願された上記特許文献17に記載されている固相抽出ピペットのような固相抽出装置内で使用されるものであり、上記の出願はシランと反応することができる反応性の金属酸化物含有の金属酸化物またはメタロイド酸化物からなる結合相で埋め込まれたガラス繊維マトリックスからなる官能基を持つ一体の収着媒を含む固相抽出装置の製造と使用とに関するものである。固相抽出ピペットは、1つの広い方の開口と、ピペット先端として機能する1つの狭い方の開口とを持った中空チューブからなるのが普通である。固相抽出ピペットを作る1つの方法は、一般に次の工程によってピペットの小さい方の開口内に重合体で修飾された多孔性基質を入れることから成る。すなわち、重合体で修飾された多孔性基質をピペットの大きい方の開口から挿入し、ピペットの小さい方の開口に減圧を適用して重合体で修飾された多孔性基質を移動させ、ピペットの大きい方の開口に加圧を適用して重合体で修飾された多孔性基質をピペット先端に挿入し、重合体で修飾された多孔性基質を圧密にする工程からなるものである。固相抽出ピペットを製造するための追加方法では、多孔性基質をピペット内へ挿入して後、疎水性単量体を多孔性基質上で重合させる。或る好ましい具体例では、重合体で修飾された多孔性基質はピペット内へ挿入される以前または後に、極性官能基を与えられる。
【0056】
追加の具体例では、Blevinsの上記特許文献18に記載されているように、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質はディスクの形で用いられて、部屋の側壁間に嵌められた1または2個以上の固相抽出ディスクプレスを使用して固相抽出板中に加えられる。
追加の具体例では、重合体で修飾された多孔性基質が固相抽出カートリッジまたは多数の井戸のある板内で用いられる。そのようなカートリッジ(例えば注射器筒のカートリッジ)や多数の井戸のある板は例えば上記特許文献19に記載されている。
【0057】
VIII.極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質の製造方法
極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル等のような重合性オレフィン成分からなる疎水性単量体と、親水性単量体とのフリーラジカル反応を用いて、多孔性基質上に形成される。重合体で修飾された多孔性基質を製造する方法は一般に、(a)1または2以上の疎水性単量体、1または2以上の親水性単量体、気孔発生溶剤および重合開始剤を含んだ溶液を多孔性基質に接触させ、(b)酸素の存在しない中で多孔性基質と保持された溶液とを加熱して1または2以上の単量体を多孔性基質上で重合させることから成るものである。その方法はさらに(c)加熱前に多孔性基質から過剰の溶液を取り除くことを含んでいる。好ましい具体例では、多孔性基質はガラス繊維の一体物であり、その上に形成される極性官能基を持つ重合体の一体物は橋かけ結合できるか、またはできない単量体が1:1000から1000:1、さらに好ましくは1:100から100:1のモル比で含まれている疎水性単量体と親水性単量体とで構成されている。しかし、使用できる橋かけ結合できる単量体または橋かけ結合できない単量体の量には特に制限がなく、一般原則として何れか一方を100%用いて良い結果を得ることができる。
【0058】
疎水性単量体と親水性単量体との相対的な量は、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質が所望の吸着特性を持つように選択される。さらに、検体を保持するのに有効であるとともに、重合体が水に濡れるに充分なように疎水性単量体と親水性単量体との比を選択することが望ましい。特定の具体例では、疎水性単量体と親水性単量体とがそれぞれ1:1000から1000:1まで、またはさらに好ましくは1:100から100:1までのモル比で存在している。好ましい具体例では、疎水性単量体と親水性単量体とが約1:1から約5:1までのモル比で存在している。実施例中に示されているように、3:1と1:1の比を用いて極性検体のすぐれた保持率を達成することができる。
【0059】
疎水性単量体はC5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール基、場合によってはこれらは例えばC1-12の分枝または直鎖ヒドロカルビル、またはハロを含む無極性置換基で置換されたものであってもよいアリール成分を含んでいることが好ましい。疎水性単量体は次式を持つことが好ましい。
CH2=CR−L−A−Lr[−CR=CH2]r
式中、Lは結合またはC1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、AはC5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリールであり、場合によってはこれらはC1-12の分枝または直鎖のヒドロカルビル、またはハロで置換されたものであり、rは0または1である。代表的なアリール成分は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンであり、他方ヘテロアリール成分としてはチオフェン、チアゾール、フラン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール、ピロール、ピラジン、プリン等でより一層親水性の大きい性格を与えるものを用いることができる。特定の具体例では、アリール成分は1つの環がアリールであり、他の環がアリールではない二環式リングを含むことができる。
【0060】
代表的な単量体はビニル、アリル、プロペニル、ブテニル等で一または二置換されたものである。重合可能なオレフィン基をただ1個持つだけの単量体は、橋かけ結合をすることができず、従ってビニル、またはアリルで置換されたC5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリールを普通含んでおり、これらは場合によってはC1-12の分枝または直鎖のヒドロカルビル、またはハロ、またはそれらの組み合わせ物で置換されているものを含んでいる。橋かけ結合できない単量体の或る例は、スチレン、ビニルピリジン(例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン)、ビニルナフタレン、ビニルキシレン、アリルトルエン、ビニルチオフェン、ビニルチアゾール、アリルフラン、アリルイミダゾール、ビニルベンズイミダゾール、ビニルピラゾール、アリルピロール、ビニルピラジンまたはこれらの組み合わせ物を含んでいる。
【0061】
少なくとも2個の重合可能なオレフィン基を持つ単量体は、橋かけ結合することができ、ジビニルまたはジアリルで置換されたC5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリールを普通含んでおり、これらのものは場合によってはC1-12の分枝または直鎖のヒドロカルビル、またはハロ、またはそれらの組み合わせ物で置換されていることもあるものを含んでいる。橋かけ結合のできる単量体は、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジアリルナフタレン、ジビニルピリジン(例えば2,4−ジビニルピリジン)、ジアリルチオフェン、ジビニルチアゾール、ジビニルフラン、ジアリルイミダゾール、ジビニルベンズイミダゾール、ジアリルピリジン、ジビニルピラゾール、ジアリルピロール、ジビニルピラジンまたはそれらの組み合わせ物を含んでいる。
【0062】
親水性単量体は、1または2以上の極性官能基を含んでいて、極性検体と親水性相互作用をすることが好ましい。親水性単量体は式
CH2=CR−L−Q−R−Lr[−CR=CH2]r
を持つことが好ましい。式中Qは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)s−および−(CH2CH2CH2O)s−(ここでsは1−12),−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3,−SO2NR−,−NRq−および−NRq+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−,−OHまたはこれらの組み合わせ物であり、Lは結合またはC1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビル、Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、これらは場合によってはハロ、ニトロ、またはアルキルで置換されているものであり、rは0または1である。親水性単量体はビニル、ジビニル、アリルまたはジアリルで置換されたアセトアミド、アルキルアセトアミド、アクリルアミド、アルキルアクリルアミド、アクリル酸、アルキルアクリル酸、アルコール、アミン、ウレタン、カルバミド、カルバメート、イソシアネート、シアネート、ニトリル、イソニトリル、ジオール、チオール、ジチオール、ピロリドン、アセテート、スルホンアミドまたはそれらの組み合わせ物から選ばれることが好ましい。典型的な親水性単量体は、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、2−シアノ−N−ビニルアセトアミド、N−アリルアセトアミド、N−メチル−N−アリルアセトアミド、n−ビニルピロリドンのようなN−ビニルアミド類およびジアクリレート、ジメタクリレート、ジアクリルアミド、ジメタクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートまたはアクリレートを含んでいる。
【0063】
アリールまたはヘテロアリール成分を含む追加の親水性単量体は、式
CH2=CR−L−A−L−Q−R
を持つものを用いることができる。式中、Qは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)s−および−(CH2CH2CH2O)s−(ここでsは1−12),−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3,−SO2NR−,−NRq−および−NRq+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−,−OHまたはこれらの組み合わせ物であり、Lは結合またはC1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであって、これらは場合によってはハロ、ニトロ、またはアルキルで置換されていることもあり、AはC5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリールであり、これらは場合によってはC1-12の分枝または直鎖のヒドロカルビル、またはハロで置換されていることもあり、rは0または1である。アリールまたはヘテロアリール成分を含んだ親水性単量体は、ビニル、ジビニル、アリルまたはジアリルで置換されたベンズアミド(例えばN−ビニル−2−クロロ−4−ニトロベンズアミド)、ベンズアミン類、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホンアミド、ニトロベンゼン、ビニルピリジニウム等から選ばれることが好ましい。
【0064】
重合体の一体物は一段階の反応で多孔性基質上に形成されるのが好ましいけれども、重合体の吸着特性を変えるために必要ならば、重合体を多孔性基質上に形成されたあとで重合体に極性官能基を持たせることができる。従って重合体の一体物が多孔性基質上に形成されたあとで、アリールまたはヘテロアリール成分を処理して極性置換基−L−Qp−Rqを導入することによって、アリールまたはヘテロアリール成分に極性官能基を持たせることができる。ここでQは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R−,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3,−SO2NMe−,−NRq−および−NRq+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−,−OHであり、ここでnは1より大きく、1−12であることが好ましく、Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、qは0−3で、pは0−5であり、さらに好ましくはpは0−2であり、Lは結合またはC1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルである。好ましい具体例では導入される極性官能基はアミド、ニトロ、カルバミド、ウレタン、カルバミル、カルバメート、カルボキシルまたはヒドロキシルであり、また第四級アミンおよびスルホネートのようなイオン交換官能基またはすべての極性官能基の混合物を含むことができる。
【0065】
好ましいカチオン交換官能基は、スルホネートであり、これは極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質上に、ビニルベンゼンスルホン酸のようなスルホン酸を含んだ単量体を含ませることにより、またはスルホン化することによって導入することができる。重合体をスルホン化する典型的な方法は、Leeの上記特許文献10に記載されている。簡単に説明すると、スルホン化されて極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質(例えばポリ(n−ビニルアセトアミド−ジビニルベンゼン)またはポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)共重合体で修飾されたガラス繊維)は、次のようにしてスルホン酸で誘導体にすることによって作ることができる。温度計、撹拌器、凝縮器、および反応温度制御システムが付設されたフラスコ内へ硫酸と重合体で修飾された多孔性基質とを約5対100の硫酸(95−98%)対重合体の質量比で入れ、選んだ温度で、確実に適度な混合が起こるように撹拌を調整して反応させる。一定の温度で或る時間混合物を撹拌し、次いで重合体で修飾された多孔性基質を水で洗浄し、その後乾燥する。スルホン化の程度は、硫黄元素の分析(例えばAtlantic Microlab Inc., Norcross, Ga)によって決定することができる。反応温度と反応時間は、適当に選んで希望のイオン交換能力を持った重合体を作ることができる。
【0066】
好ましいアニオン交換官能基はアミノであり、それは重合中にアミノ部分を含んだ親水性単量体(例えばビニルアミノベンゼンまたはビニルピリジニウム)を含ませるかまたはアミノ化によって、重合体で修飾された多孔性基質上に導入することができる。重合体で修飾された多孔性基質をアミノ化する典型的な方法は、実施例3に記載されている。簡単に説明すると、その方法は濃硝酸(約30モル当量)を用いて撹拌しながら、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質をニトロ化することを含んでいる。冷水中で混合物を冷却する間、濃硫酸(18モル当量)を1から1.5時間にわたって一滴ずつ加えて撹拌を続ける。次いでニトロ化された重合体で修飾された多孔性基質を取り出し、水に浸漬し、放置し、その後2.0MのNaOH、脱イオン水およびアセトンで洗浄し、乾燥する。その後、ニトロ化された重合体で修飾された多孔性基質を次のように実施する還元工程に付する。すなわち、その後、ニトロ化された重合体で修飾された多孔性基質を氷酢酸中に懸濁し、機械的に撹拌している間は、塩酸の1:1塩化第一錫の溶液で処理し、混合物を室温で撹拌する。アミノ化重合体で修飾された多孔性基質を反応から取り出し、脱イオン水中に浸漬し、すべての錫の痕跡が洗出されるまで1.0Mの水酸化ナトリウムで数回洗浄する。その後、洗浄水のpHが中性になるまでアミノ化された重合体で修飾された多孔性基質を洗浄し、その後、アセトンで洗浄し乾燥する。
【0067】
重合反応中にアミド官能基を持つ単量体(例えば、n−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−クロロ−4−ニトロベンズアミド、n−ビニルピロリドン)を含ませることによって、または重合体をアミド化することによって、アミド官能基を重合体の一体物中に導入することができる。疎水性単量体の単位にアミド成分を導入する典型的な方法は、実施例3に記載されている。簡単に説明すると、その方法は、上述のように、重合体で修飾された多孔性基質をニトロ化し、アミノ化し、さらにアミノ化された重合体を酸、酸塩化物または酸無水物のような適当な反応物と反応させることを含んでいる。アミノ化された重合体で修飾された多孔性基質を過剰の塩基(例えば、トリエチルアミンまたはビリジン)中に懸濁し、撹拌しながら、室温で酸、酸塩化物または酸無水物(アミノ化された重合体中の窒素1モルに対して1.5モル当量)を一滴ずつ加えて処理する。アミド官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を反応混合物から取り出し、数回0.1Mの塩酸で洗浄し、次いで脱イオン水、メタノールおよびアセトンで洗浄する。最後に、アミド官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を乾燥する。
【0068】
IX.検体を分離する方法
極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、クロマトグラフィーのような分析用化合物を分離する方法で使用される。適当なクロマトグラフィーの利用または分離方法は、例えば薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグライフィー、順相クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー、イオン対クロマトグラフィー、逆相イオン対クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、キラルレコグニションクロマトグラフィー、パーフュージョンクロマトグラフィー、通電クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、ミクロカラム液体クロマトグラフィー、毛管クロマトグラフィー、液・固クロマトグラフィー、準備クロマトグラフィー、親水相互作用クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、プレシピテイション液体クロマトグラフィー、結合相クロマトグラフィー、ファスト液体クロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー・マススペクトロメトリー、ガスクロマトグラフィー、微細流体素子工学に基づく分離、固相抽出分離、または一体物を基礎とした分離等を含み、際限がない。重合体で修飾された多孔性基質の好ましいクロマトグラフィーの応用は、例えばSPEカートリッジまたはイオン交換クロマトグラフィーを用いて実施する固相抽出である。
【0069】
液体分離技術をナノの尺度まで小さくすることは、(<内径100ミクロン)の小さなカラム内径と(<300nL/分)の遅い移動相速度に関係している。毛管クロマトグラフィー、毛管領域電気泳動(CZE)、ナノ−LC、オープンチューブラー液体クロマトグラフィー(OTLC)および毛管電気クロマトグラフィー(CEC)のような技術は、従来の尺度の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)よりも多くの利益を与える。これらの利益はより高い分離効率、高速分離、少量試料分析、および2次元技術の結合を含んでいる。
【0070】
検体をクロマトグラフィーによって分離するための方法は、一般に、a)クロマトグラフィー装置(例えばカラム、カートリッジ、ミクロチップ上のチャンネル、ピペットチップ等)に入れられた極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を用意し、b)1または2以上の移動相(例えば有機溶剤、アセトニトリル/蟻酸/水または溶剤混合物からなる勾配溶剤のような任意の緩衝液または塩の水溶液)を用いて上記の重合体で修飾された多孔性基質をコンディショニングし、c)1または2以上の検体(例えばプラズマ、環境水試料、合成反応物の混合物、生成物および中間物等)を含んだ溶液を上記の重合体で修飾した多孔性基質に接触させ、d)有機溶剤、水溶液、またはそれらの混合物を含んだ移動相を上記重合体で修飾された多孔性基質中に通し、e)1または2以上の検体を上記重合体で修飾された多孔性基質から溶離する(例えば対イオン、有機溶剤等を含む適当な移動相を用いて)ことから成るものである。重合体は多孔性基質上で直接生成されるから、クロマトグラフィー装置内の収着剤(重合体で修飾された多孔性基質)のチャンネリングと収縮は、ガラス繊維の一体物のような非膨潤性多孔性基質を用いたときには最小にすることができる。
【0071】
X.固相抽出の実施方法
一面では、固相抽出を利用して試料から検体を単離する方法が開示される。重合体で修飾された多孔性基質と、ここに記載する方法は、生物、環境、合成および薬剤的な試料等から検体を単離するのにとくに適しているが、試料はどのような出所からも得ることができる。例えば、試料は問題の検体(例えば薬剤)を含む生物学的母体(例えば血液全体または血漿または唾液または尿)を含むことができる。その代わり、試料は環境試料、例えば飲料水または公知の水または汚染の疑がある水を含むことができる。他の例では、試料は治療上の活性剤または前駆体またはその代謝生成物である検体を含むことができる。
【0072】
検体を単離するための方法は一般に次の4工程からなるものである。(a)有機溶剤、場合によっては水性溶剤、またはそれらの混合物を用いて、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質をコンディショニングし、(b)分析されるべき試料中に存在する検体を上記のコンディショニングされた重合体で修飾された多孔性基質に吸着させ、(c)有機溶剤、水性溶剤、またはそれらの混合物で上記重合体で修飾された多孔性基質から吸着された検体を溶離させることから成るものである。この方法は、さらに工程(c)を実施する前に、重合体で修飾された多孔性基質と吸着された検体とを洗浄する工程を含むことができ、さらに何等かの適当な分析方法または装置を用いて、検体を分析することを含むことができる。
【0073】
コンディショニング工程は、一般に極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を、表面特性を向上させる溶剤で処理することを含んでいる。好ましい具体例では、その方法は重合体で修飾された多孔性基質を有機コンディショニング溶剤(例えばメタノール)で洗浄し、次いで水で洗浄し、例えば何れも約1mLで洗浄することによって重合体で修飾された多孔性基質をコンディショニングすることを含んでいる。重合体で修飾された多孔性基質は、カートリッジまたはカラムのような支持体と関連することがあり、その場合にはコンディショニングの工程はカートリッジまたはカラムに有機溶剤を通し、次いでカートリッジまたはカラムに水性溶剤を通すことを含むことになる。メタノールは重合体で修飾された多孔性基質を膨潤させて、有効な表面積を増大させる。水処理は過剰のメタノールを除き重合体表面を水和物にする。次いで、コンディショニングされた表面は過剰の溶剤を除くために真空にかけられ、この処理の後で重合体で修飾された多孔性基質は完全に水和されたままになっている。検体を含んでいる試料は、重合体で修飾された多孔性基質に接触せしめられて、重合体で修飾された多孔性基質と検体との複合物を作る。この工程は時には試料ローディングと言われ、1または2以上の検体が、もし存在するとすれば重合体で修飾された多孔性基質上に検体を吸着させる。検体の吸着は従って検体の保持率は、多孔性基質の上に形成された重合体と検体との親水性(例えば双極子、プロトン受容、プロトン供与、静電引力等の)相互作用は勿論、疎水性相互作用の関数である。従って、検体と親水性相互作用は勿論、疎水性相互作用を容易にする極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、色々な極性と化学的特性を持った検体を保持する。その後、検体の脱離と回収は、検体と重合体収着媒との疎水性および親水性相互作用を破壊することのできる溶剤を用いて行うことができる。
【0074】
従って、好ましい具体例では極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、固相抽出フォーマットにおいて用いられ、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を含んでいる。多孔性基質上に形成される典型的な極性官能基を持つ重合体の一体物は、ポリ(ビニルアセトアミド−ジビニルベンゼン)、スチレン、アリルベンゼン、ジビニルまたはジアリルベンゼン、ヒドロカルビルまたはハロ置換スチレン、ビニルフラン、ビニルピリジン等のような疎水性単量体と、n−ビニルアセトアミド、アクリルアミド、アクリル酸、ビニルピロリドンのような親水性単量体、またはこれらの組み合わせ物の共重合体を含んでいる。そのような極性官能基を持つ重合体の一体物は、極性検体を非常に好都合に保持することができ、検体の極性と直線的な相関関係さえも示す。追加の好ましい具体例では重合体で修飾された多孔性基質は、アミノ、第四級アミノ、ニトロ、スルホン酸等のような他の極性基で官能性を持つものとなり、極性検体に対して追加の保持特性を与えることができる。
【0075】
試料が血漿を含むときには、試料は希薄な水溶液として(少なくとも1:1希釈度)導入される。動物および人間からの血漿試料は粘度が高いため、希釈して粘度を下げなければ自由な流れが妨げられるので、この慣習は望ましいことである。しかし、重合体で修飾された多孔性基質はすぐれた流れ特性を持つために、試料の粘度は固相抽出に用いられた従来の収着媒で行うよりも問題が少なくなっている。この工程で有機溶剤の使用を避けることは通常望ましい。なぜならば、これらの溶剤は血漿溶液から蛋白質を沈殿させ、沈殿した蛋白質が収着媒の表面を汚すからである。また、重合体で修飾された多孔性基質のすぐれた流れ特性はこの困難の幾らかを取り除く。重合体が検体を吸着するのを助けるような条件下で、重合体で修飾された多孔性基質に試料を接触させることは望ましいことである。同時に、これらの条件は、収着媒の表面に望ましくない蛋白質や他の不純物を保持するのに都合が悪くて望ましい。そのような条件は大よそ室温と中性pHで接触させることを含んでいる。
【0076】
1つの具体例では、試料は1:1の水溶液で入れられ、検体(例えば薬剤)は1ミリリットルあたり1ナノグラムから10ミクログラムの割合で存在している。約100から約1000ミクロリットルの容量で試料が入れられる。但し、約400から約500ミクロリットルの容量が好ましい。重合体で修飾された多孔性基質と試料との複合物は、その後水で洗浄され、次いで有機洗浄溶剤で洗浄される。1つの具体例では、試料を吸着している収着媒が水で洗浄され、その後約10から約30%のアセトニトリル水溶液(約200から約1000ミクロリットルの体積が好ましいが、どのような体積をも用いることができる)で洗浄する。水による洗浄は、蛋白質系物質に加えて試料中に存在する塩とその他の水溶性母体成分を除去する。水と有機の二成分洗浄は、収着媒表面に接着している水に不溶性の母材成分を含んだ有機不純物を除去することができる。この洗浄は、重合体からなる収着媒表面への検体の結合を破壊しないように構成することが望ましい。多くの公知のシリカを基材とし、また重合体からなる収着媒を分離に用いるときには、そのような二成分洗浄によると、収着媒から多くの極性検体を取り除くことができる。
【0077】
次いで、重合体で修飾された多孔性基質と検体との複合物から溶離剤で検体を溶離することができる。溶離は吸着された検体を含んでいる重合体で修飾された多孔性基質上に或る量の溶離用溶剤を通すことによって行うことができる。代表的な溶離用溶剤は水性成分と有機成分とからなる二成分溶剤を含んでいる。有機成分は溶剤の少なくとも約80〜90%を占めていることが好ましい。代表的な有機成分はアセトニトリルとメタノールを含んでいるが、それに限定されない。トリフルオロ酢酸のような同伴するイオンを溶離剤の一成分として用いて、極性薬剤と収着媒との間の極性相互作用を破壊するのに役立たせることができる。1つの具体例では60:30:10のメタノール/アセトニトリル/0.1%のトリフルオロ酢酸は、広範囲の極性を持った薬剤に対して大よそ90%の定量的回収物を与えることが判明している(図8参照)。約400ミクロリットルから約1000ミクロリットル量の溶離剤を使用することができ、或る場合には約400から約500ミクロリットルの量が好ましい。
【0078】
溶離剤は集めて回収された検体の正体を、例えば質量分光測定、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーまたはこれらと当業者に公知の他の技術との組み合わせによって確かめることができる。問題の検体(例えば薬剤)が血漿中にピコグラム程度に存在するときには、溶離剤を蒸発させて、残留する検体をLCまたはLC/MSに用いられる約40から約100ミクロリットルの移動相に再び溶解する(即ち再構成する)。
【0079】
この発明に係る極性官能基を持つ重合体からなる収着媒とそれに関連する方法の利点は、検体確認用の装置に直接溶離剤を通すことができることである。分析装置に直接多くの先行技術の収着媒を用いると、一部では先行技術の収着媒がイオン抑制効果を持つためと、これらの収着媒が極性の強い検体に対して穏当な極性を保持することができないために、分析装置に直接通すことができない。これらの欠点は溶離剤中に希望しない成分が存在することとなり、このことは検体確認操作を複雑にし、まずいMSスペクトルを与える。例えば、この発明に係る収着媒は、収着媒とLC/MS/MSシステムからなるシステムの一成分を形成することができる。試料をこの収着媒に送ることができ、溶離される検体と溶離剤の流れを直接LC/MS/MSシステム、HPLCシステムまたは或る範囲のどのような分析装置にも直接供給することができる。
【0080】
XI.極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質の利点
ここに記載された極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、実施例8に示したように、すぐれた流速を示し、より迅速な試料調製時間と試料調製の効率上昇とをもたらす。重合体で修飾された多孔性基質は、5%のメタノール水溶液からなる溶剤を用いて、約47mmの直径のディスクに通して試験をすると、少なくとも40mL/分の流速、約40mL/分から約1L/分の間の流速、さらに普通は少なくとも100mL/分の流速を示す。このすぐれた流動特性はチャンネル効果を減少または消滅させる結果をもたらすとともに、検体の抽出過程で多孔性基質の詰まりを減少させ、検体回収の一貫性を増大させ、時間と費用のさらなる節約を提供するものである。
【0081】
ここに記載された極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、検体回収と回収効率を改善する。ここに記載された基質は、極性官能基を持ち、分析のために回収しようと努める極性検体含有の試料とともに用いるときには、とくに有利である。さらに、ここに記載された基質は処理量の多い用途で用いることができ、高い生産性を与える。
【0082】
さらに、検体を少量の溶離剤を用いて収着媒から溶離することができ、分析用試料濃度の一層の向上と溶剤量の減少と、溶剤蒸発工程の省略と、その後の時間の節約とが提供される。これらの特徴は、材料だけでなく、時間と労力の節約を提供する。
【0083】
ここに記載された極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、色々な極性を持った検体に対して異なった保持率を与え、このことは所望の極性を持った検体を単離するのに有利となる。ここで提供された極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、極性検体の保持率の改善を示し、極性官能基を持たない重合体の一体物に比べて、極性検体に対してすぐれた保持率を示す。また、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、極性検体に対してすぐれた吸着能力を与える。この重合体で修飾された多孔性基質は、検体保持率と或る範囲内のlog P値との間に直線的な相関関係を与え、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、log P値のより広い範囲にわたって直線的相関関係を与える。或る具体例では、極性検体の保持率がイオン交換官能基を使用しないで改善される。
【0084】
実施例5に示しているように、重合体で修飾された多孔性基質、PSDVBで修飾されたガラス繊維による各検体の保持率は、log P値の範囲内で約2.5から5まで直線状であった。しかし、約1.75のlog P値を持つ検体に対して80%より少ない相対的保持率を示し、約1.6のlog P値を持つ検体に対して60%より小さい相対的保持率を示し、2.5のlog P値以下では保持率は減少した。従って、相対的に無極性の検体(例えば2.5より大きいlog P値を持つ検体)は、PSDVBで修飾された多孔性基質により保持することが好ましい。
【0085】
極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質、PSDVB−NHCOCH3で修飾されたガラス繊維による検体の相対的保持率は、約1.6から5までの試験されたlog P値の範囲内で直線状であって大抵の検体の相対的保持率はノルトリプチリンの保持率の90%内であった。従って、極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を用いての検体の保持率は、検体の保持率によって僅かに変わるだけである。
【0086】
極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質で、NVA−DVBで「高い」に修飾されたガラス繊維は、約1.7から5までのlog P値の範囲内で直線状であって、大抵の検体の相対的保持率が90%以内であった。しかし、1.6のlog P値を持つ検体に対しては保持率が上昇し、ノルトリプチリンに対して120%以上の高い保持率を示した。
【0087】
極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質で、NVA−DVBで「低い」に修飾されたガラス繊維は、約1.6から5までの試験されたlog P値の全範囲内で直線状であって、試験されたすべての検体に対して相対的保持率が90%以内であった。従って、NVA−DVBの「低い」収着媒は、試験された検体の範囲では最も直線状で一貫した保持率を与えた。
【0088】
極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質の使用は、少量の溶離溶剤中で広い範囲のlog P値内で吸着された検体の回収を可能にし、あとの分析のために試料を濃縮する必要を最小にしている。図7に示したように、NVA−DVBで「高い」に修飾されたガラス繊維からの検体の溶離は、少量の溶離溶剤を用いて広く変化する極性を持った検体を非常によく回収したことを示している。大抵の極性検体は比較的少量の溶離溶剤を用いて溶離された。そのほかの検体は非常によく似た回収を示した。400μLの溶離溶剤を用いてすべての検体に対して95%より大きい回収を観測した。
【0089】
図8に示したように、NVA−DVBで「低い」に修飾したガラス繊維からの検体の溶離は、また少量の溶離溶剤を使用して、広範囲の極性基を持った検体について非常に良好な回収率を実証した。検体は非常によく似た溶離性をもって回収された。すべての検体に対して95%より大きい回収率が400μLの溶離溶剤を用いて観察され、試験されたすべての検体に対して僅か250μLで85%より大きい回収率が達成された。
【0090】
極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質の検体に対する能力は高く、従って所望の極性を持った検体を保持するように選択することができる。NVA−DVBで「高い」に修飾された多孔性基質の極性検体に対する能力は相当に比較的高く、保持される検体の量は検体によって異なり、4と65μgの間で変化した。NVA−DVBで「低い」に修飾された多孔性基質の極性検体に対する能力は最大であった。保持された検体の量は約8と80μgの間で変化し、極性検体のさらに一層大量の吸着量を実証した。追加の能力が望まれる場合には、例えば一層大量の重合体で修飾された多孔性基質を用いることにより、または追加の装置を加えることによって、追加の極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を用いることができる。好ましい実施態様では、重合体で修飾された多孔性基質はガラス繊維ディスクの形をしており、追加のディスクを積み重ねて、より大きい検体吸着能力を与えることができる。
【0091】
さらに、ここに記載した極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質の製造方法は効率がよく簡単であり、製造過程における費用と労力を節約する。ここに記載した極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質は、また流速が早いだけでなく、色々な極性基を持つ検体の保持率が高いために、効率がよくて使用に簡単であり、検体分析のために必要な時間と溶剤とを節約する。
【0092】
この発明を好ましい特定の具体例に関連させてここに説明して来たが、その説明は以下に述べる実施例とともに、この発明を具体的に説明することを意図するものであって、発明の範囲を限定するものではない。この発明の実施は、特別の指示がなければこの業界の技術の範囲内にある有機化学、重合体化学、生化学等の従来技術を使用するものである。この発明の範囲内にあるその他の見方、利点および変更は、この発明に関連している当業者に明らかであろう。そのような技術は文献に詳しく説明されている。
【0093】
以下の実施例では、使用されている数字(例えば、量、温度など)について正確さを確実にするように努力して来たが、或る程度の誤りと偏差は斟酌されなければならない。特別のことわりがなければ、温度は℃、圧力は気圧または概略気圧で示す。溶剤はすべてHPLCグレードとして購入したものであり、反応はすべて特別のことわりがなければ、通常通りアルゴンの不活性気圧の下で行った。特別のことわりがなければ、試薬は次の販売元から入手した。NVA,ドデカノール,THF,スチレン,DVB,AIBNおよびデカノールはSigma Aldrichから入手した。
省略記号
NVA N−ビニルアセトアミド
DVB ジビニルベンゼン
AIBN アゾビスイソブチロニトリル
THF テトラヒドロフラン
ST スチレン
【実施例1】
【0094】
アミド官能基を持つ重合体で修飾されたガラス繊維一体物の製造
N−ビニルアセトアミド(3.4gm)(NVA)、ジビニルベンゼン(17.14mL)、1−ドデカノール(26.1gm)、テトラヒドロフラン(4mL)およびアゾビスイソブチロニトリル(200mg)(AIBN)の混合物を作り、NVAとAIBNが溶解するまでビーカー内で撹拌し、その後広い容器(プラスチックトレイ)内に注いだ。ガラス繊維の約4.5”×3.0”大の塊を媒体と決定し、記録し、このガラス繊維を上記の調製した単量体混合物中に約7分間浸漬した。飽和したガラス繊維をトレイから取り出し、約1.5分間放置して滴下させ、過剰の反応混合物を除去した。ガラス繊維を支える器具(例えばテフロン(登録商標)ラック)を備えた適当な容器(乾燥剤なしで、通気口を備えてデシケーター)内に飽和したガラス繊維を入れた。容器を乾燥した窒素で約30分間換気して、デシケーターから空気を取り除き、その後換気具を取り除きデシケーターの通気口を閉じた。重合反応を行わせるために、デシケーターを70℃のオーブン中に24時間入れた。反応期間のあとで、アミド官能基を持つ重合体で修飾されたガラス繊維の一体物(低いNVA−DVB)を取り出し、メタノール、水およびアセトンでよく洗浄し、その後70℃のオーブン中で24時間乾燥した。その反応は図1に模型的に描かれている。
【実施例2】
【0095】
アミド官能基を持つ重合体で修飾されたガラス繊維一体物の製造
大量のN−ビニルアセトアミドを含む重合体形成溶液を次のようにして調製した。N−ビニルアセトアミド(7.7gm)(NVA)と、ジビニルベンゼン(10mL)と、1−デカノール(46mL)と、テトラヒドロフラン(4mL)と、アゾビスイソブチロニトリル(200mg)(AIBN)の混合物を作り、NVAとAIBNとが溶解するまでビーカー内で撹拌し、その後混合物を広い容器(プラスチックトレイ)中に注いだ。ガラス繊維の約4.5”×3.0”大の塊を媒体と決定し、記録し、その後上述のようにして調製した単量体混合物中に約7分間浸漬した。飽和したガラス繊維をトレイから取り出し、約1.5分間放置して滴下させ、過剰の反応混合物を除去した。ガラス繊維を支える器具を備えた適当な容器(乾燥剤なしで、通気口を備えたデシケーター)内に飽和したガラス繊維を入れた。容器を乾燥した窒素で約30分間換気して、デシケーターから空気を取り除いた。換気具を取り除き、デシケーターの通気口を閉じた。その後、重合反応を行わせるために、デシケーターを70℃のオーブン中に24時間入れた。反応期間のあとで、アミド官能基を持つ重合体で修飾されたガラス繊維の一体物(高いNVA−DVB)を取り出し、メタノール、水およびアセトンでよく洗浄し、その後70℃のオーブン中で24時間乾燥した。
【実施例3】
【0096】
アミド官能基を持つ重合体で修飾されたガラス繊維一体物の製造
PSDVBで修飾されたガラス繊維一体物を作り、次の操作によってアミド化した。その反応は図2中で模型的に描かれている。
【0097】
A.スチレン(10mL)、ジビニルベンゼン(10mL)、1−デカノール(26mL)、テトラヒドロフラン(4mL)およびアゾビスイソブチロニトリル(200mg)(AIBN)を含む重合体生成溶液を作り、ビーカー内で溶解するまで撹拌し、その後混合物を広い容器(プラスチックトレイ)中に注いだ。ガラス繊維の約4.5”×3.0”大の塊を媒体と決定し、記録し、その後上記の調製した単量体混合物中に約7分間浸漬した。飽和したガラス繊維をトレイから取り出し、約1.5分間放置して滴下させ、過剰の反応混合物を除去した。ガラス繊維を支える器具を備えた適当な容器(乾燥剤なしで、通気口を備えたデシケーター)内に溶液で飽和したガラス繊維を入れた。容器を乾燥した窒素で約30分間換気して、デシケーター内から空気を取り除いた。換気具を取り除き、デシケーターの通気口を閉じた。その後重合反応を行わせるために、デシケーターを70℃のオーブン中に24時間入れた。反応期間のあとで、重合体で修飾されたガラス繊維の一体物(PSDVB)を取り出し、メタノール、水およびアセトンでよく洗浄し、その後70℃のオーブン中で24時間乾燥した。
【0098】
B.次のようにしてニトロ化工程を行った。工程Aで作られたPSDVBで修飾されたガラス繊維一体物を濃硝酸(30モル相当)中に懸濁し、混合物を機械的に撹拌した。混合物を冷水中で冷却している間に、濃硫酸(18モル相当)を1から1.5時間にわたって滴下して加え同時に撹拌を継続した。混合物をさらに室温で3時間以上撹拌した。修飾されたガラス繊維の一体物を取り出し、水中に浸漬し、2時間放置し、その後2.0MのNaOH、脱イオン水およびアセトンで洗浄し、70℃のオーブン中で24時間乾燥した。
【0099】
C.次のようにして還元工程を行った。ニトロ化されたPSDVBガラス繊維の一体物を氷酢酸中に懸濁させ、機械的に撹拌している間に、一体物を第一塩化スズ(375g)の1:1塩酸(951mL)溶液で処理した。混合物を室温で約60時間撹拌した。重合体で修飾されたガラス繊維の一体物を反応から取り出し、脱イオン水中に浸漬し、スズの痕跡がすべて洗い出されるまで一体物を1.0Mの水酸化ナトリウムで数回洗浄した。その後に洗浄水のpHが中性になるまで一体物を水で洗浄し、その後アセトンで洗浄した。その後、一体物を70℃のオーブン中で24時間乾燥した。
【0100】
D.次のようにしてアシル化工程を行った。アミノ化されたPSDVBガラス繊維の一体物を塩基(トリエチルアミンまたはピリジン、過剰)中に懸濁し、ゆっくりと機械的に撹拌し、無水酢酸(アミノ化した重合体の窒素のモル数の1.5モル相当)を滴下して無水酢酸で処理した。撹拌を室温で3.5時間続けた。アミド基の官能基を持つ重合体で修飾されたガラス繊維一体物(PSDVB−NHCOCH3)を反応容器から取り出し、0.1Mの塩酸で数回洗浄し、その後脱イオン水、メタノールおよびアセトンで洗浄した。最後に一体物を70℃で乾燥した。
【実施例4】
【0101】
アミド官能基を持つ重合体で修飾された一体物の元素分析
実施例1〜3に記載したアミド官能基を持つ重合体で修飾されたガラス繊維の一体物(低いNVA−DVB、高いNVA−DVB、およびPSDVB−NHCOCH3)、および実施例3に従って作られアミド官能基付与(PSDVB)前のPSDVBで修飾されたガラス繊維の一体物(すなわちニトロ化、還元およびアセチル化工程以前)を元素分析に付した。結果を表1に示す。
【0102】
実施例1の重合体で修飾されたガラス繊維の一体物(低いNVA−DVB)は、実施例2と3の重合体で修飾されたガラス繊維一体物に比べて、N含有量の低いことが特徴とされている。PSDVBで修飾されたガラス繊維膜だけは窒素含有量が無視できる少量である(N<0.02%)。Nの最大量は実施例3で作られた重合体で修飾されたガラス繊維一体物中に存在している(PSDVB−NHCOCH3)。炭素、水素および窒素に対する結果だけが示されている。
【0103】
【表1】

【実施例5】
【0104】
重合体で修飾されたガラス繊維一体物による検体の相対的保持率
検体の下記混合物を含む2%メタノール溶液を作った。各検体の最終濃度をアンフェタミン(2500ng/mL)、エフェドリン(5900ng/mL)、ノルトリプチリン(2280ng/mL)、ミアンセリン(2170ng/mL)、クロルフェニラミンマレエート(4500ng/mL)、ノルフルオキセチン(4000ng/mL)、ブロムフェニラミン(3000ng/mL)およびキニジン(4400ng/mL)とした。各検体のlog P値は下記表2に示すとおりである。
【0105】
【表2】

【0106】
4種の収着媒、すなわち低いNVA−DVB、高いNVA−DVB、PSDVB−NHCOCH3およびPSDVBのうちの1種を使用して、96の井戸固相抽出板を作った。各収着媒は、400μLのメタノールと400μLの脱イオン水を使用してコンディショニングを行った。その後、各井戸内の収着媒に200μLの検体混合物を適用した。6:3:1:の割合のメタノール/アセトニトリル/1%蟻酸の2×100μLアリコートを使用して(全部で200μL)、検体を各収着媒から溶離した。溜まった溶離剤の50μLアリコートを追加の1%蟻酸50μLで薄め(全量100μL)、10μLの薄められた溶離液を分析し、下記の表に記載した移動相勾配を持ったPURSUIT(登録商標)C18カラム(50×2.0mm、3μm粒子大)を使用し、LC−MS(Varian1200L質量分光計)によって定量した。各収着媒に対しN=5。
【0107】
【表3】

【0108】
各検体の保持率は検体のlog P値対収着媒からの回収率%の関数としてプロットされた。PSDVBで修飾されたガラス繊維一体物による検体の保持率だけは、log P値が約2.5から5までの範囲内で直線状であり、この範囲の内のlog P値を持つ各検体は約67%が溶離画分内で回収された。しかしlog P値が2.5以下では回収率は減少し、1.76のlog P値を持つ検体に対しては回収率51%であり、1.6のlog P値を持つ検体に対しては回収率40%であり、従って疎水性のPSDVBで修飾されたガラス繊維の一体物によれば、高いlog P値を持つ検体だけでなく、低いlog P値を持つ検体が保持されることが示されている。これに対して、実施例3のPSDVB−NHCOCH3で修飾されたガラス繊維一体物による検体の保持率は、log P値が約1.6から5までの範囲内で直線状であって、この範囲内でlog P値を持つ各検体は63%から73%が回収された。
【0109】
実施例2の「高い」NVA−DVBで修飾されたガラス繊維一体物による検体の保持率は、log P値が約1.7から5までの範囲内で直線状であり、検体の回収率は約65%であった。しかし、log P値が1.6の検体に対しては回収率が高かった(82%)。
【0110】
「低い」NVA−DVBで修飾されたガラス繊維一体物による検体の保持率は、log P値が約1.6から5までの、試験をしたlog P値の全範囲内で直線状であり、検体の回収率は試験をしたすべての検体で約62%から70%の範囲内にあった。
【0111】
ノルトリプチリンに基準を合わせて相対的な保持率として表現すると、図3に示したように、PSDVBで修飾されたガラス繊維一体物による各検体の保持率は、log P値が約2.5から5までの範囲内で直線状であった。また、log P値が2.5より低いと、保持率は減少しlog P値が約1.75の検体に対しては相対的保持率が80%より小さく、log P値が約1.6の検体に対しては相対的保持率が60%より小さかった。これに対して、PSDVB−NHCOCH3で修飾されたガラス繊維一体物による検体の相対的保持率は、log P値が約1.6から5までの範囲内で直線状であり、大抵の検体の相対的保持率はノルトリプチリンの保持率の90%内であった。
【0112】
「高い」NVA−DVBで修飾されたガラス繊維一体物による検体の相対的保持率は、log P値が約1.7から5までの範囲内で直線状であり、大抵の検体の相対的保持率は90%内であった。しかし、log P値が1.6の検体に対しては、保持率が高く、ノルトリプチリンに比較して120%以上の高い保持率を示した。
【0113】
「低い」NVA−DVBで修飾されたガラス繊維一体物による検体の相対的保持率は、log P値が約1.6から5までの試験をした全範囲にわたって直線的であり、試験をしたすべての検体に対して相対的保持率は90%内であった。従って、「低い」NVA−DVBで修飾された収着媒は、試験をした検体に対して最も直線的で一貫した保持率を与えた。
【実施例6】
【0114】
重合体で修飾したガラス繊維一体物の検体に対する能力
下記の極性検体混合物の高、中、低の濃度の異なる3種類の元溶液を作った。各元溶液中の検体の濃度は次のとおりである。アテノロール(840,42,2μg/mL)、ラニチジンHCl(806,40,2μg/mL)、サルブタモール(810,40,2μg/mL)、バマサンヘミサルフェート(806,40,2μg/mL)、チモロールマレエート(823,41,2μg/mL)、カリソプロドール(840,42,2μg/mL)のそれぞれ異なる3つの濃度のものである。各検体のlog P値は下記表4に示したとおりである。
【0115】
【表4】

【0116】
96個の井戸固相抽出板を作り、4種の収着媒、低いNVA−DVB、高いNVA−DVB、PSDVB−NHCOCH3およびPSDVBのうちの1種を装填した。各収着媒は1mLのメタノールと1mLの脱イオン水でコンディショニングをした。その後、500μLの検体溶液を各井戸内の収着媒に適用した。溶離剤を集めた。別の500μLを適用し、その後に溶離剤を集めた。その後1500μLのアリコート(部分)を収着媒に適用し、溶離剤を集めた。最後の1500μLのアリコートを収着媒に適用し、溶離剤を集めた。
【0117】
適用された各濃度において各収着媒から得られた溶離剤中に回収された検体(吸着されない検体)をPURSUIT(登録商標)C18カラム(50×2.0mm、3μm粒子大)を用い、また40%メタノール/60%の0.1%蟻酸を用い、移動相アイソクラチック法を用いてLC−MS(Varian1200L)により定量した。各収着媒と濃度に対しN=3。
【0118】
異なる極性基を持った検体に対する各収着媒の容量を下記表5に示し、図4にグラフとして示す。各収着媒の容量は30%突破時(即ち、適用された検体の30%が吸着されないで収着媒から溶出する時)の吸着された各検体の重量として表わされる。
【0119】
【表5】

【0120】
図4に示し、表5に提示したように、チモロールおよびアテノロールのような極性検体に対し、PSDVBで修飾されたガラス繊維一体物だけは容量が1μgより小さく、または測定不可能で、吸着された検体は検索されなかったので、極性検体はこの疎水性収着媒によってよく保持されないことが示されている。
PSDVB−NHCOCH3によって修飾されたガラス繊維一体物の極性検体に対する容量も、全く小さく、少量のラニチジン、バマサン、チモロール、およびカリソプロドールが保持された(1−2μg)。PSDVB−NHCOCH3によって修飾されたガラス繊維一体物の極性検体に対する容量は全く小さく、1.2μgのチモロールを保持しアテノロールを保持しなかった。
【0121】
「高い」NVA−DVBで修飾されたガラス繊維一体物の極性検体に対する容量は、かなり高く検体によって異なっていた。保持される検体の量は、4と65μgの間で変化し、極性検体の非常に大きな保持率を示している。「高い」NVA−DVBで修飾されたガラス繊維一体物の極性検体に対する容量は、65μgのチモロールを保持し、7μgのアテノロールを保持していたので、極性検体に対し大きな保持率と容量とを持つことが示されている。
「低い」NVA−DVBで修飾されたガラス繊維一体物の極性検体に対する容量は最大であった。保持される検体の量は、約8と80μgの間で変化し、80μgのチモロールと12.5μgのアテノロールが吸着され、試験された収着媒の中で極性検体の最大吸着量を示した。
【実施例7】
【0122】
PSDVBで修飾された一体物からの溶離特性の比較分析
4種の異なる重合体で修飾されたガラス繊維一体物から種々の検体の回収率を調査した。エフェドリン、ノルトリプチリン、ミアンセリン、クロルフェニラミンマレエート、ブロムフェニラミン、およびキニジンを含む検体混合物を調製した。各検体は0.1μg/mLの最終濃度であった。
【0123】
96の井戸固相抽出板を準備し、4種の収着媒、低いNAV−DVB、高いNVA−DVB、PSDVB−NHCOCH3およびPSDVBのうちの1種を装填した。各収着媒を最初1mLのメタノール、次いで1mLの脱イオン水でコンディショニングを行った。その後各一体物に0.4mLの検体混合物を適用し溶離剤を捨てた。低いNVA−DVB以外のすべての収着媒に対し6:3:1の割合でメタノール/アセトニトリル/1%蟻酸の溶液25μL,50μL,100μL,200μLおよび1000μLの全溶離量で各収着媒からの画分中の検体を溶離した。低いNVA−DVBに対しては、6:3:1の割合のメタノール/アセトニトリル/1%蟻酸の溶液25μL,50μL,150μL,250μLおよび1000μLの全溶離量で分画した。すべての分画を蒸発させ、15%メタノール、残余が0.1%蟻酸の溶液100μLの中で戻した。
【0124】
上記表3に記載した移動相勾配を用いて、PURSUIT(登録商標)C18カラム(50×2.0mm,3μm粒子大)を使用したLC−MS(Varian1200L)によって各検体の定量を決定した。各収着媒に対してN=5。
【0125】
図5に示したように、PSDVBで修飾されたガラス繊維一体物からの検体の溶離は、収着媒が広範囲の極性にわたって検体を吸着し、極性化合物(エフェドリン)と無極性化合物(キニジン)に対して同じような回収率が観測された。他の検体はより長く保持されたが同じような溶剤量で溶離された。しかし、検体の回収割合は変化を示した。或る検体を溶離するのに大量の溶離剤が必要とされて回収率は種々であり、400μLの溶離剤で溶離したあとで、吸着された検体の75%から95%が回収された。
【0126】
図6に示したように、PSDVB−NHCOCH3で修飾されたガラス繊維一体物からの検体の溶離は、少量の溶離溶剤を用いて色々な極性基を持つ検体について非常に良好な回収率を示した。95%より大きい回収率が、400μLの溶離溶剤ですべての検体に対して観測された。
【0127】
図7に示したように「高い」NVA−DVBで修飾されたガラス繊維一体物からの検体の溶離は、少量の溶離溶剤を用いて色々な極性基を持つ検体について非常に良好な回収率を示した。極性が最大の検体は一層少量の溶離溶剤で溶離された。その余の検体は極めて類似した回収率を示した。95%より大きい回収率が400μLの溶離溶剤を用いてすべての検体に対して観測された。
【0128】
図8に示したように、「低い」NVA−DVBで修飾されたガラス繊維一体物からの検体の溶離は、少量の溶離溶剤を用いて色々な極性基を持った検体について非常に良好な回収率を示した。検体は非常によく似た溶離の側面をもって回収された。95%より大きい回収率が400mLの溶離溶剤を用いてすべての検体に対して観測され、85%より大きい回収率が僅か250μLで試験されたすべての検体に対して達成された。従って、この収着媒は、log P値の広い範囲にわたって少量の溶離溶剤中に吸着された検体を回収させており、あとでの分析のために試料を濃縮する必要を最も少なくしている。
【実施例8】
【0129】
PSDVBで修飾された一体物と、市販の固相抽出濾過ディスクからの流動特性の比較
下記の表6に示したように、色々な量のジビニルベンゼン、スチレンおよびn−ビニルアセトアミドを用いて、実施例1〜3に記載した重合体で修飾された多孔性基質を作った。市販の固相抽出ディスク、商品名:商標「エンポール」(Empore)、高速抽出ディスク、SDB−XC,Part#12145010を購入し、比較器として使用した。
【0130】
ディスクはすべて同じ大きさであった(直径47mm)。流速はディスクをディスクホルダー内に入れスクリーン側を下方にし、真空程度を水銀柱の10インチに設定した。ディスクホルダーと真空源との間にバルブを設置した。試料の体積は5mLのメタノールを含む脱イオン水1Lであった。試験を実施するために、約3mLのメタノールをディスクに加えて試料を加える前にディスクをコンディショニングした。試料をディスクホルダーの漏斗に加え、真空を適用し、時間を開始してディスクから試料を引き出すに必要な時間を記録した。試験の結果は下記表6に示している。
【0131】
【表6】

【0132】
これらの結果は、ここに記載した重合体で修飾された多孔性基質を用いてすぐれた流速が得られることを示している。そのすぐれた流速は一層迅速な試料調製時間と向上した能率を与える。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】重合体で修飾された多孔性基質を製造する方法の概略を示している。
【図2】重合体で修飾された多孔性基質を製造する方法の別の概略を示している。
【図3】種々の重合体で修飾された多孔性基質の持つ極性の変化による検体の相対的保持率を示している。
【図4】変化する極性を持った検体に対し、種々の重合体で修飾された多孔性基質の能力を示している。
【図5】1つの重合体で修飾された多孔性基質から検体の溶離を示している。
【図6】第2の重合体で修飾された多孔性基質から検体の溶離を示している。
【図7】第3の重合体で修飾された多孔性基質から検体の溶離を示している。
【図8】第4の重合体で修飾された多孔性基質から検体の溶離を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基質と、その上に形成された極性官能基を持つ重合体との一体物からなり、上記重合体の一体物は式
[CH2−CR−]n [CH2−CR−]m
| |
L L
| |
A Q
| |
r

r
で表わされることを特徴とする、固相抽出またはクロマトグラフィー用の極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質。
式中AはC5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリールであり、これらは場合によってはC1-12の分枝または直鎖のヒドロカルビル、またはハロで置換されたものであり、
式中n/mは約0.001から1000までであり、
式中rは0または1であり、
式中Qは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)s−,および−(CH2CH2CH2O)s−(ここでsは1−12),−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NR−,−NRq−,および−NRq+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−,−OHまたはこれらの組み合わせであり、
式中Lは結合またはC1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、
式中Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、これらは場合によってはハロ、ニトロまたはアルキルで置換されたものであり、


式中Pは −CH2−CR− であり
式中[−CH2−CR−L−A−Pr]と[−CH2−CR−L−Q−R−Pr]の順序はランダム、ブロックまたはこれらの組み合わせである。
【請求項2】
前記多孔性基質が、一体物、集塊粒子、または織布または不織布の形となっている、請求項1に記載の極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質。
【請求項3】
前記多孔性基質がガラス繊維の一体物である、請求項2に記載の極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質。
【請求項4】
前記重合体で修飾された多孔性基質が、直径約47mmのディスクを通って少なくとも40mL/分の流速を示す、請求項1に記載の極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質。
【請求項5】
前記重合体の一体物が式
[CH2−CR−]n [CH2−CR−]m [CH2−CR−]o
| | |
L L L
| | |
A Q A
| | |
r R L
| |
rp

q
で表わされる、請求項1に記載の極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質。
式中qは0−3であり、
式中pは0−5であり、
式中o/mは0.001から100であり、
式中[−CH2−CR−L−A−Pr],[−CH2−CR−L−Q−R−Pr]および[−CH2−CR−L−A−L−Q−R]の順序は、ランダム、ブロックまたはそれらの組み合わせである。
【請求項6】
前記重合体の一体物が多孔性基質上に形成されたあとで、重合体の一体物がさらに極性官能基を与えられる、請求項1に記載の極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質。
【請求項7】
(a)1または2以上の疎水性単量体、1または2以上の親水性単量体、気孔発生溶剤および重合開始剤に多孔性基質を接触させ、
(b)酸素の存在しないところで前記多孔性基質と保持された溶液とを加熱して、多孔性基質上で単量体を重合させることからなる、重合体で修飾された多孔性基質の製造方法。
【請求項8】
前記疎水性単量体と親水性単量体とが、橋かけ結合できる単量体、橋かけ結合できない単量体またはそれらの組み合わせからなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記疎水性単量体が式
CH2=CR−L−A−Lr[−CR=CH2]r
で表わされる、請求項7に記載の方法。
式中Lは結合またはC1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、
式中AはC5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリールであり、これらは場合によってはC1-12の分枝または直鎖のヒドロカルビル、またはハロで置換されたものであり、
式中rは0または1である。
【請求項10】
前記親水性単量体が式
CH2=CR−L−Q−R−Lr[−CR=CH2]r
で表わされる、請求項7に記載の方法。
式中Qは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)s−および−(CH2CH2CH2O)s−(ここでsは1−12),−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3,−SO2NR−,−NRq−および−NRq+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−,−OHまたはそれらの組み合わせであり、
式中Lは結合、またはC1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、
式中Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、これらは場合によってはハロ、ニトロ、またはアルキルで置換されたものであり、
式中rは0または1である。
【請求項11】
前記親水性単量体が式
CH2=CR−L−A−L−Q−R
で表わされる、請求項7に記載の方法。
式中Qは−NRC(O)−,−C(O)NR−,−OC(O)NR−,−OC(O)R,−NRC(O)O−,−NRC(O)NR−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)s−および−(CH2CH2CH2O)s−(ここでsは1−12),−C(O)−,−C(O)O−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NR−,−NRq−および−NRq+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−,−OHまたはこれらの組み合わせであり、
式中Lは結合またはC1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、
式中Rは水素、C5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリール、C1-12の分枝、直鎖または環式ヒドロカルビルであり、これらは場合によってはハロ、ニトロ、またはアルキルで置換されたものであり、
式中AはC5-10の単環式または二環式アリールまたはヘテロアリールであり、これらは場合によってはC1-12の分枝または直鎖のヒドロカルビル、またはハロで置換されたものであり、
式中rは0または1である。
【請求項12】
前記重合体で修飾された多孔性基質をさらに処理して、追加の極性官能基を導入することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔性基質が一体物、集塊粒子、または織布または不織布の形をしている、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔性基質がガラス繊維一体物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(a)1または2以上の疎水性単量体、1または2以上のアミド基を持つ単量体、気孔発生溶剤および重合開始剤に多孔性基質を接触させ、
(b)酸素の存在しないところで多孔性基質と保持された溶液とを加熱し、多孔性基質上で1または2以上の単量体を重合させて重合体で修飾された多孔性基質を作ること、
からなる、アミド官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質の製造方法。
【請求項16】
前記アミド基を持つ単量体が、N−ビニルアセトアミド、N−アリルアセトアミド、N−メチルビニルアセトアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルベンザミド、N−ビニル−2−クロロ−4−ニトロベンザミド、n−ビニルピロリドン、またはビニルベンゼンスルホンアミドから選ばれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項7に記載の方法によって作られた極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質。
【請求項18】
請求項15に記載の方法によって作られたアミド官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質。
【請求項19】
(a)極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を、有機溶剤および場合によっては水性溶剤、またはこれらの混合物でコンディショニングをし、
(b)コンディショニングをした重合体で修飾された多孔性基質に、分析すべき試料中に存在する検体を吸着させ、
(c)有機溶剤、水性溶剤、またはこれらの混合物で、重合体で修飾された多孔性基質から吸着された検体を溶離することからなる検体を単離する方法。
【請求項20】
(a)極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質をクロマトグラフィー装置に設置し、
(b)有機溶剤、水性溶剤、またはこれらの混合物で上記の重合体で修飾された多孔性基質をコンディショニングし、
(c)上記の重合体で修飾された多孔性基質に1または2以上の検体を含む溶液を接触させ、
(d)上記の重合体で修飾された多孔性基質中に、有機溶剤、水性溶剤、またはこれらの混合物からなる移動相を通過させ、
(e)上記の重合体で修飾された多孔性基質から1または2以上の検体を溶離することからなる、検体のクロマトグラフィー分離方法。
【請求項21】
極性官能基を持つ重合体で修飾された多孔性基質を支持体と関連させたものからなる、固相抽出またはクロマトグラフィーを実施するための装置。
【請求項22】
支持体が注射器筒のカートリッジ、クロマトグラフィーカラム、微細流体素子工学のプラットホーム、1または2以上の追加膜、ピペットチップまたは多くの井戸を持った板である、請求項21に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−540084(P2008−540084A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510045(P2008−510045)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/015718
【国際公開番号】WO2006/118887
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】