説明

極端紫外光生成装置

【課題】極端紫外光生成装置に用いた場合生成される極端紫外光の強度を安定化させる。
【解決手段】チャンバ装置は、少なくとも1つのレーザ装置と共に用いられるチャンバ装置であって、前記少なくとも1つのレーザ装置から出力される少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するためのターゲット供給部と、前記少なくとも1つのレーザ光を前記所定の領域で集光させるためのレーザ集光光学系と、前記少なくとも1つのレーザ光の前記所定の領域におけるビーム断面の光強度分布を補正するための光学素子と、を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外(EUV)光を生成するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィにおける微細化が急速に進展しており、次世代においては、60nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。そのため、例えば、32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)方式装置、放電によって生成されるプラズマが用いられるDPP(Discharge Produced Plasma)方式装置、及び軌道放射光が用いられるSR(Synchrotron Radiation)方式装置の3種類が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7239686号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係るチャンバ装置は、少なくとも1つのレーザ装置と共に用いられるチャンバ装置であって、前記少なくとも1つのレーザ装置から出力される少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するためのターゲット供給部と、前記少なくとも1つのレーザ光を前記所定の領域で集光させるためのレーザ集光光学系と、前記少なくとも1つのレーザ光の前記所定の領域におけるビーム断面の光強度分布を補正するための光学素子と、を備えてもよい。
【0006】
本開示の別の観点に係る極端紫外光生成装置は、少なくとも1つのレーザ装置と、前記少なくとも1つのレーザ装置から出力される少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するためのターゲット供給部と、前記少なくとも1つのレーザ光を前記所定の領域で集光させるためのレーザ集光光学系と、前記少なくとも1つのレーザ光の集光位置におけるビーム断面の光強度分布を補正するための光学素子と、前記レーザ装置における前記少なくとも1つのレーザ光の出力タイミングを制御するためのレーザ制御部と、を備えてもよい。
【0007】
本開示の別の観点に係る極端紫外光生成装置は、マルチ横モードで発振するマスターオシレータを含む少なくとも1つのレーザ装置と、前記少なくとも1つのレーザ装置から出力される少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するためのターゲット供給部と、前記少なくとも1つのレーザ光を前記所定の領域で集光させるためのレーザ集光光学系と、前記レーザ装置における前記少なくとも1つのレーザ光の出力タイミングを制御するためのレーザ制御部と、を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1A〜図1Cは、本開示における技術課題例を説明するための図である。
【図2】図2A〜図2Cは、本開示において、プリパルスレーザ光をドロップレットに照射したときのターゲット物質の挙動についての例を示す図である。
【図3】図3A〜図3Cは、本開示において、プリパルスレーザ光をドロップレットに照射したときのターゲット物質の挙動についての他の例を示す図である。
【図4】図4A及び図4Bは、本開示におけるドロップレット径とビーム径との関係をビームの軸方向に見た図である。
【図5】図5は、本開示におけるドロップレットのばらつきに関するΔXの値の設定例を示す表である。
【図6】図6は、本開示におけるドロップレットの位置のばらつき方向とビーム径との関係をビームの軸方向に見た図である。
【図7】図7A〜図7Cは、本開示におけるプリパルスレーザ光の光強度分布の例を説明するための図である。
【図8】図8は、ターゲット物質に照射されるレーザ光の光強度分布について説明するための図である。
【図9】図9は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
【図10】図10は、補正光学素子に関する1つの例を示す概念図である。
【図11】図11は、補正光学素子に関する別の例を示す概念図である。
【図12】図12は、補正光学素子に関するさらなる別の例を示す概念図である。
【図13】図13は、補正光学素子に関するさらなる別の例を示す概念図である。
【図14】図14は、補正光学素子に関するさらなる別の例を示す概念図である。
【図15】図15は、第2の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
【図16】図16Aは、第3の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図であり、図16Bは、図16Aに示すEUV光生成装置のXVIB−XVIB面における断面図である。
【図17】図17は、第4の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
【図18】図18Aは、第5の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図であり、図18Bは、図18Aに示すEUV光生成装置のXVIIIB−XVIIIB面における断面図である。
【図19】図19は、第6の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
【図20】図20Aは、ドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図であり、図20B及び図20Cは、ドロップレットにプリパルスレーザ光を照射したことによって形成されたトーラス型の拡散ターゲットにトップハット型の光強度分布を有するメインパルスレーザ光を照射する様子を示す概念図である。
【図21】図21は、第7の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するチタンサファイヤレーザの構成例を示す概念図である。
【図22】図22は、第8の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するファイバレーザの構成例を示す概念図である。
【図23】図23は、本開示におけるプリパルスレーザ光の照射条件の例を示す表である。
【図24】図24は、第9の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
【図25】図25は、第10の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
【図26】図26は、第11の実施形態に係るEUV光生成装置において用いられるレーザ装置の構成例を示す概念図である。
【図27】図27は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光のフルーエンスに応じたCEの測定値をプロットしたグラフである。
【図28】図28は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光が照射されるまでの遅延時間に応じたCEの測定値をターゲット物質のドロップレット径ごとにプロットしたグラフである。
【実施形態】
【0009】
<内容>
<1.実施形態の背景>
<2.実施形態の概要>
<3.所定の均一性を有する領域の径>
<4.光強度分布の例>
<5.第1の実施形態>
<6.補正光学素子の例>
<7.第2の実施形態>
<8.第3の実施形態>
<9.第4の実施形態>
<10.第5の実施形態>
<11.第6の実施形態>
<12.第7の実施形態>
<13.第8の実施形態>
<14.プリパルスレーザ光の照射条件>
<15.第9の実施形態>
<16.第10の実施形態>
<17.第11の実施形態>
<17−1.構成>
<17−2.動作>
<18.フルーエンスの制御>
<19.遅延時間の制御>
【0010】
以下、幾つかの実施形態について、単なる例として、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明する実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の範囲を限定するものではない。また、以下の実施形態で説明される構成の全てが本開示の構成として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
<1.実施形態の背景>
図1A〜図1Cは、本開示における技術課題例を説明するための図である。この技術課題例は、1次ターゲット(primary target)である金属ドロップレットにプリパルスレーザ光を照射して2次ターゲット(secondary target)を生成し、この2次ターゲットにメインパルスレーザ光を照射する方式において、新たに生じたものである。
【0012】
図1A〜図1Cは、ターゲット物質のドロップレットDLにプリパルスレーザ光Pを照射したときのターゲット物質の挙動の例を示している。プリパルスレーザ光Pは、図1Bに示すように、ドロップレットDLが図中の一点鎖線との交点に到来するタイミングで、当該交点に向けて照射されるのが好ましい。
【0013】
ドロップレットDLの径やプリパルスレーザ光Pの光強度などの条件にもよるが、ドロップレットDLにプリパルスレーザ光Pが照射されると、プリパルスレーザ光Pが照射されたドロップレットDLの表面から、プリプラズマが生成され得る。図1Bに示すように、プリプラズマは、プリパルスレーザ光Pの進行方向に対してほぼ逆方向に噴出し得る。プリプラズマとは、ドロップレットDLの内、プリパルスレーザ光Pの照射表面付近の部分がイオン又は中性粒子を含む蒸気になったものをいう。このプリプラズマが生成される現象をレーザアブレーションともいう。
【0014】
また、ドロップレットDLにプリパルスレーザ光Pが照射されると、ドロップレットDLが破壊され得る。図1Bに示すように、破壊されたドロップレットは、プリプラズマの噴出による反力などによって、プリパルスレーザ光Pの進行方向に対してほぼ同方向に拡散し得る。
【0015】
このように、ドロップレットに対するプリパルスレーザ光の照射により生成されたプリプラズマ及び破壊されたドロップレットの少なくともいずれか一方を含むターゲットを、以下では拡散ターゲットと称する。
【0016】
プリパルスレーザ光Pの照射時におけるドロップレットDLの位置は不安定であり、図1Aに示すように一点鎖線との交点より紙面上側にずれている場合や、図1Cに示すように一点鎖線との交点より紙面下側にずれている場合等があり得る。1つの方法においては、プリパルスレーザ光のビーム径を大きくすることにより、プリパルスレーザ光がドロップレットに照射されるようにしてもよい。
【0017】
しかしながら、レーザ装置から出力されるレーザ光の光強度分布は、通常は、ビーム軸に直交する断面における中央部で光強度が高く、周辺部に向かって光強度が低くなるガウス分布となっている。そのような通常のレーザ光をプリパルスレーザ光PとしてドロップレットDLに照射した場合に、上記の方法においては、図1A及び図1Cに示すように、ガウス分布の中心以外の部分にドロップレットDLの中心が位置するようにドロップレットDLにプリパルスレーザ光Pが照射されてしまう可能性がある。
【0018】
プリパルスレーザ光Pの内で、ガウス分布の中心以外の部分にドロップレットDLの中心が位置するようにプリパルスレーザ光Pが照射された場合には、ドロップレットDLの照射表面の内で、プリパルスレーザ光Pにおけるガウス分布の中心に近い部分に、照射エネルギーが偏って与えられ得る。その結果、プリプラズマは、プリパルスレーザ光Pのビーム軸方向とは異なる方向に噴出し得る。また、上述の破壊されたドロップレットも、プリプラズマの噴出による反力などによって、プリパルスレーザ光Pのビーム軸とは異なる方向に拡散し得る。
【0019】
このように、ドロップレットへのプリパルスレーザ光の照射により生成される拡散ターゲットは、プリパルスレーザ光照射時のプリパルスレーザ光のビーム軸に対するドロップレットの位置によって異なる方向に拡散してしまう。このため、メインパルスレーザ光Mを安定して拡散ターゲットに照射することが困難となる場合がある。
【0020】
<2.実施形態の概要>
図2A〜図2Cは、本開示において、プリパルスレーザ光をドロップレットに照射したときのターゲット物質の挙動についての1つの例を示している。図2A〜図2Cに示す場合においては、図1A〜図1Cに示す場合と同様に、プリパルスレーザ光Pの照射時におけるドロップレットDLの位置が不安定である(例えば、図2A、図2C)。しかし、図2A〜図2Cに示す場合においては、プリパルスレーザ光Pのビーム軸に直交する断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域(径Dt)が存在する。
【0021】
図2A〜図2Cに示す何れの場合においても、プリパルスレーザ光Pの光強度分布において所定の均一性を有する領域(径Dt)の中にドロップレットDLが位置している。このため、プリパルスレーザ光PがドロップレットDLの全体に略均一な光強度で照射され得る。従って、プリパルスレーザ光PがドロップレットDLに照射される時において、ドロップレットDLの位置がばらついても、プリパルスレーザ光Pのビーム軸に沿う方向にターゲットを拡散させることができる。その結果、メインパルスレーザ光Mを拡散ターゲットの全体に照射することができると推測される。
【0022】
図3A〜図3Cは、本開示において、プリパルスレーザ光をドロップレットに照射したときのターゲット物質の挙動についての他の例を示している。図3A〜図3Cに示す場合においても、図2A〜図2Cに示す場合と同様に、プリパルスレーザ光Pのビーム軸に直交する断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域(径Dt)が存在する。
【0023】
図3A〜図3Cに示す場合においては、図2A〜図2Cに示す場合と異なり、ドロップレットDLが粉々に破壊されて、円盤状に拡散することにより拡散ターゲットとなり得る。ターゲット物質のこのような挙動は、例えば、ドロップレットDLの径を略マスリミテッド(約10μm)とし、プリパルスレーザ光Pの光強度が所定の強度に調節される場合に得られる。
【0024】
図3A〜図3Cに示す場合において、プリパルスレーザ光Pに対するドロップレットDLの位置が不安定である場合(例えば、図3A、図3C)でも、プリパルスレーザ光Pの光強度分布において所定の均一性を有する領域(径Dt)の中にドロップレットDLが位置している。このため、プリパルスレーザ光PがドロップレットDLの全体に略均一な光強度で照射され得る。従って、プリパルスレーザ光Pは、ドロップレットDLの位置がばらついても、プリパルスレーザ光Pのビーム軸に沿う方向にターゲット物質を拡散させることができる。その結果、メインパルスレーザ光Mを拡散ターゲットの全体に照射することができると推測される。
【0025】
<3.所定の均一性を有する領域の径>
次に、図2A〜図2C及び図3A〜図3Cを参照しながら、レーザ光の光強度分布において所定の均一性を有する領域の径Dtについて説明する。
【0026】
ドロップレットDLにプリパルスレーザ光Pを照射するときに、プリパルスレーザ光Pのビーム軸方向にターゲットを拡散させるには、ビーム断面において光強度が所定の均一性を有する部分がドロップレットDLの半球面全体に照射されることが好ましい。従って、ドロップレットDLの径をDdとしたとき、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域の径Dtは、ドロップレットDLの径Ddを超える大きさであることが好ましい。
【0027】
また、プリパルスレーザ光Pを照射する時のドロップレットDLの位置のばらつきが想定される場合には、想定されるばらつきΔXを考慮することが好ましい。例えば、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域の径Dtは、以下の条件を満足することが好ましい。
Dt≧Dd+2ΔX
すなわち、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域の径Dtは、ドロップレットDLの径Ddに、ドロップレットDLの位置のばらつきΔXを加えた大きさ以上であることが好ましい。ここでは、ビーム軸方向に見て上下及び左右両方向のばらつきが想定されるものとして、ドロップレットDLの径DdにΔXの2倍を加えている。
【0028】
図4A及び図4Bは、本開示におけるドロップレット径とビーム径との関係をビーム軸方向から見た図である。図4Aに示すように、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域の径Dtは、ドロップレットDLの径DdにΔXの2倍を加えた大きさ以上であることが好ましい。
【0029】
次に、図4Bに示すように、メインパルスレーザ光Mを拡散ターゲットの全体に照射できるように、メインパルスレーザ光Mのビーム径Dmは、拡散ターゲットの径De以上の大きさであることが好ましい。
【0030】
さらに、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域が存在する場合には、拡散ターゲットの位置のばらつきについて、以下のことが言える。拡散ターゲットは、プリパルスレーザ光Pのビーム軸方向に拡散し得る。従って、拡散ターゲットの位置のばらつきは、拡散ターゲットの拡散方向に起因しているのではなく、主として、プリパルスレーザ光Pを照射したときに生じていたドロップレットDLの位置のばらつきΔXに起因していると推定される。従って、メインパルスレーザ光Mのビーム径Dmは、例えば以下の条件を満足することが好ましい。
Dm≧De+2ΔX
すなわち、メインパルスレーザ光Mのビーム径Dmは、拡散ターゲットの径Deに、ドロップレットDLの位置のばらつきΔXを加えた大きさ以上であることが好ましい。ここでは、ビーム軸方向に見て上下及び左右両方向のばらつきが想定されるものとして、拡散ターゲットの径DeにΔXの2倍を加えている。
【0031】
図5は、本開示におけるドロップレットDLの位置のばらつきに関するΔXの値の設定例を示す表である。プリパルスレーザ光Pのビーム軸とドロップレットDLの中心との間の距離の標準偏差をσとしたとき、ΔXとしては、例えばσ、2σ、3σ、・・・に設定することが考えられる。
【0032】
ここで、プリパルスレーザ光Pのビーム軸とドロップレットDLの中心との間の距離が正規分布に従うと仮定すると、上述のDt≧Dd+2ΔXの条件下で、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域がドロップレットDLに照射される確率(又は照射されない確率)を算出できる。
【0033】
図5の右欄は、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域がドロップレットDLに照射されない確率を示したものである。図示するように、所定の均一性を有する領域がドロップレットDLに照射されない確率は、ΔX=σの場合は15.9%、ΔX=2σの場合は2.28%、ΔX=3σの場合は0.135%である。EUV光の強度を安定化させるには、ΔXを2σ以上の値に設定することが好ましい。
【0034】
なお、プリパルスレーザ光P及びメインパルスレーザ光Mのビーム断面が円形であり、ドロップレットDL及び拡散ターゲットの断面(レーザ光のビーム軸に直交する断面)が円形である場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、プリパルスレーザ光の所定の均一性を有する領域の面積が、ドロップレットDLの断面における最大面積を超える大きさであってもよい。また、プリパルスレーザ光Pの所定の均一性を有する領域の寸法の最小値が、ドロップレットDLの断面における寸法の最大値にドロップレットDLの位置のばらつきの範囲を加えた値以上の大きさであってもよい。また、メインパルスレーザ光Mのビーム断面の面積が、拡散ターゲットの断面における最大面積を超える大きさであってもよい。また、メインパルスレーザ光Mのビーム断面の寸法の最小値が、拡散ターゲットの断面における寸法の最大値に拡散ターゲットの位置のばらつきの範囲を加えた値以上の大きさであってもよい。
【0035】
図6は、本開示におけるドロップレットDLの位置のばらつき方向とビーム径との関係をビーム軸方向に見た図である。図6に示すように、プリパルスレーザ光Pのビーム軸に直交する方向へのドロップレットDLの位置のばらつきは、複数の方向において評価されてもよい。図6においては、プリパルスレーザ光Pのビーム軸を含む面からのドロップレットDLの中心位置のX方向(紙面の横方向)のばらつきの最大値とドロップレットDLの半径との和をXdmaxとし、プリパルスレーザ光のビーム軸を含む面からのドロップレットDLの中心位置のY方向(紙面の縦方向)のばらつきの最大値とドロップレットDLの半径との和をYdmaxとしている。そして、例えばX方向のばらつきの最大値がY方向のばらつきの最大値より大きい場合を示している(Xdmax>Ydmax)。
【0036】
このような場合、例えば、ばらつきの大きいX方向を基準としてプリパルスレーザ光Pのビーム断面の寸法を決めてもよい。例えば、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度が所定の均一性を有する領域は、半径FRがXdmax以上である円形であるようにしてもよい。あるいは、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度が所定の均一性を有する領域は、X方向の寸法(ビーム軸の中心から所定の均一性を有する領域の縁までの長さ)がXdmax以上である楕円形又はその他の形状を有するようにしてもよい。また、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度が所定の均一性を有する領域の寸法にもばらつきTRがあり得ることを考慮し、所定の均一性を有する領域は、X方向の寸法が(Xdmax+TR)以上である形状を有するようにしてもよい。
【0037】
また、ドロップレットDLの位置のばらつきに応じて、プリパルスレーザ光Pのビーム径を変更できるようにしてもよい。プリパルスレーザ光Pの光エネルギーを一定にしたままビーム径を変更すると、プリパルスレーザ光Pの照射面における光強度(単位面積あたりの光エネルギー)がビーム径の二乗に反比例して変化する。従って、光強度を一定にするために、光エネルギーを調整してもよい。また、例えば、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度が所定の均一性を有する領域の形状(ビームの断面形状)を、X方向の寸法が(Xdmax+TR)であり、Y方向の寸法が(Ydmax+TR)である楕円形状となるように調整してもよい。メインパルスレーザ光Mについても、例えば拡散ターゲットのX方向のばらつきとY方向のばらつきとに応じて、ビーム断面の寸法や形状を調整してもよい。
【0038】
<4.光強度分布の例>
図7A〜図7Cは、本開示におけるプリパルスレーザ光の光強度分布の例を説明するための図である。図7Aに示すように、プリパルスレーザ光Pが、ビーム断面の全範囲において略均一な光強度を有する場合には、当該プリパルスレーザ光Pの光強度分布は、略均一なトップハット(top hat)型であり、均一性を有すると言える。
【0039】
また、図7Bに示すように、プリパルスレーザ光Pが、ビーム径方向の端部付近において光強度が漸減する領域を有している場合でも、当該端部に囲まれた中央部付近において略均一な光強度を有する場合には、均一性を有する領域を含むと言える。
【0040】
また、図7Cに示すように、プリパルスレーザ光Pが、ビーム径方向の端部付近において光強度が高い領域を有している場合でも、当該端部に囲まれた中央部付近において略均一な光強度を有する場合には、均一性を有する領域を含むと言える。
【0041】
ドロップレットDLにプリパルスレーザ光Pを照射したときに、プリパルスレーザ光Pのビーム軸方向にターゲットを拡散させるには、図7A〜図7Cに示すように、プリパルスレーザ光Pが略均一な光強度を有する領域を含むことが好ましい。しかし、以下に説明するように、レーザ光の光強度分布は、完全に均一ではなくても、ビーム軸に直交する断面の内の一定の領域において所定の均一性を有していればよい。
【0042】
図8は、ターゲット物質に照射されるレーザ光の光強度分布について説明するための図である。図8に示すように、レーザ光のビーム軸に直交する断面の内の一定の領域(径Dt)において最も高い光強度の値Imaxと、当該領域において最も低い光強度の値Iminとの差が大きすぎる場合には、所定の均一性を有するとは言えない。所定の均一性を有すると言えるためには、例えば、以下に示すばらつきCの値が20(%)以下であることが好ましい。
C={(Imax−Imin)/(Imax+Imin)}×100(%)
より好ましくは、上記のばらつきCの値は10(%)以下である。
【0043】
また、レーザ光のビーム断面における光強度分布が、上記所定の均一性を有する領域内において複数のピークP1〜P6を有する場合には、ピーク間の間隔ΔPがドロップレットDLの径Ddの半分以下であることが好ましい。
【0044】
<5.第1の実施形態>
図9は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。第1の実施形態に係るEUV光生成装置では、レーザ光をターゲット物質に照射してターゲット物質を励起することによりEUV光が生成されるLPP方式が採用されている。図9に示すように、EUV光生成装置20は、チャンバ1と、ターゲット供給部2と、プリパルスレーザ装置3と、メインパルスレーザ装置4と、EUV集光ミラー5とを備えてもよい。ここで、プリパルスレーザ装置3及びメインパルスレーザ装置4は、レーザ光生成機構を構成している。
【0045】
チャンバ1は、EUV光の生成が内部で行われる真空チャンバでよい。チャンバ1には、露光装置接続ポート11と、窓12とが設けられてもよい。露光装置接続ポート11を介して、チャンバ1内で生成されるEUV光は外部の露光装置(縮小投影反射光学系)に出力されてもよい。窓12を介して、プリパルスレーザ装置3及びメインパルスレーザ装置4から出力されたレーザ光がチャンバ1内に入射してもよい。
【0046】
ターゲット供給部2は、EUV光を生成するために用いられるスズ(Sn)やリチウム(Li)等のターゲット物質をチャンバ1内に供給するための装置でよい。ターゲット物質は、ターゲットノズル13を介して噴出されて、球状のドロップレットDLとなり得る。ドロップレットDLは、例えば10μm以上100μm以下の径を有してもよい。チャンバ1内に供給された複数のドロップレットDLの内で、レーザ光が照射されなかったものは、ターゲット回収部14に回収されてもよい。
【0047】
プリパルスレーザ装置3及びメインパルスレーザ装置4は、ターゲット物質を励起するために用いられる駆動用のレーザ光を出力する発振増幅型レーザ装置でよい。プリパルスレーザ装置3及びメインパルスレーザ装置4から出力されるレーザ光は、高い繰返し周波数(例えば、パルス時間幅が数ns〜数十ns程度、繰返し周波数が10kHz〜100kHz程度)を有するパルスレーザ光でよい。プリパルスレーザ装置3はプリパルスレーザ光Pを出力し、メインパルスレーザ装置4はメインパルスレーザ光Mを出力してもよい。プリパルスレーザ装置3としては、例えばYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ装置が用いられ、メインパルスレーザ装置4としては、例えばCOレーザ装置が用いられてもよいが、これらに限定されず、他のレーザ装置が用いられてもよい。
【0048】
プリパルスレーザ装置3から出力されたプリパルスレーザ光Pは、ビームコンバイナ15a、軸外放物面ミラー15b等を含むレーザ集光光学系、窓12、EUV集光ミラー5の中央部に形成された貫通孔21a等を介して、チャンバ1内に供給されるドロップレットDL上に集光されてもよい。
【0049】
一方、メインパルスレーザ装置4から出力されたメインパルスレーザ光Mは、ビームコンバイナ15a、軸外放物面ミラー15b等を含むレーザ集光光学系、窓12、貫通孔21a等を介して、チャンバ1内で生成される拡散ターゲット上に集光されてもよい。
【0050】
プリパルスレーザ光PがドロップレットDLに照射されると、ドロップレットDLが拡散して、拡散ターゲット(例えば、図2A〜図2Cに示すようなプリプラズマ、又は、図2A〜図2C及び図3A〜図3Cに示すような破壊されたドロップレット)が生成され得る。
【0051】
メインパルスレーザ光Mは、ドロップレットDLへのプリパルスレーザ光Pの照射によって形成された拡散ターゲットに照射されてもよい。メインパルスレーザ光Mのエネルギーによって、拡散ターゲットが励起されてプラズマ化されると、そこからEUV光を含む様々な波長の光が放射され得る。
【0052】
EUV集光ミラー5は、プラズマから放射される様々な波長の光の内から、所定の波長(例えば、13.5nm付近の波長を有するEUV光)の光を集光反射する光学系である。EUV集光ミラー5は、例えば、波長が13.5nm付近のEUV光を選択的に反射するモリブデン(Mo)/シリコン(Si)多層膜が形成された回転楕円面の凹面状反射面を有するミラーでよい。EUV集光ミラー5は、回転楕円面の第1の焦点がプラズマ生成領域PSに位置するように配置されてもよく、EUV集光ミラー5で反射されたEUV光は、回転楕円面の第2の焦点、即ち、中間集光点(IF)に集光され、外部の露光装置に出力されてもよい。
【0053】
第1の実施形態においては、プリパルスレーザ装置3から出力されるプリパルスレーザ光Pと、メインパルスレーザ装置4から出力されるメインパルスレーザ光Mとが、ビームコンバイナ15aによってそれらの進行方向を略一致させられてチャンバ1内に供給されてもよい。
【0054】
プリパルスレーザ装置3は、第1の所定波長でプリパルスレーザ光Pを出力してもよい。プリパルスレーザ光Pは、ビームエキスパンダ30においてビーム径が拡大された後、補正光学素子31に入射してもよい。
【0055】
補正光学素子31は、ドロップレットDLに照射されるプリパルスレーザ光Pの光強度分布を補正するための素子でよい。補正光学素子31は、ドロップレットDLへの照射位置におけるプリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域を含み、且つ、当該所定の均一性を有する領域の径DtがドロップレットDLの径Ddを超える大きさとなるように、プリパルスレーザ光Pの光強度分布を補正してもよい。補正光学素子31から出力されたプリパルスレーザ光Pは、ビームコンバイナ15aに入射してもよい。
【0056】
メインパルスレーザ装置4は、マスターオシレータ4aと、プリアンプ4cと、メインアンプ4eと、それらの下流側に、それぞれリレー光学系4b、4d、4fとが配置されて構成されてもよい。マスターオシレータ4aは、第2の特定波長でシード光を出力してもよい。マスターオシレータ4aから出力されたシード光は、プリアンプ4c及びメインアンプ4eによって所望の光強度に増幅され、メインパルスレーザ光Mとしてビームコンバイナ15aに入射してもよい。
【0057】
ビームコンバイナ15aは、プリパルスレーザ装置3から出力されたプリパルスレーザ光Pに含まれる第1の特定波長を有するレーザ光を高い透過率で透過させ、メインパルスレーザ装置4から出力されたメインパルスレーザ光Mに含まれる第2の特定波長を有するレーザ光を高い反射率で反射する光学素子でよい。ビームコンバイナ15aは、透過したプリパルスレーザ光Pの進行方向と反射されたメインパルスレーザ光Mの進行方向とが略一致するようにこれらのレーザ光の進行方向を制御してチャンバ1内に供給してもよい。ここで、ビームコンバイナ15aは、例えば、波長1.06μmのプリパルスレーザ光Pを高い透過率で透過させ、波長10.6μmのメインパルスレーザ光Mを高い反射率で反射する光学素子でよい。具体的には、ビームコンバイナ15aは、ダイヤモンド基板上に、上記のような反射透過特性を有する多層膜がコートされた光学素子でよい。或いは、ビームコンバイナ15aは、プリパルスレーザ光Pを高い反射率で反射し、メインパルスレーザ光Mを高い透過率で透過させる光学素子でもよい。その場合には、プリパルスレーザ装置3の位置とメインパルスレーザ装置4の位置とを入れ替えて配置してもよい。
【0058】
第1の実施形態によれば、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域が存在するようにし、且つ、当該所定の均一性を有する領域の径DtがドロップレットDLの径Ddを超える大きさとなるように構成してもよい。これにより、ドロップレットDLの位置のばらつきに起因する拡散ターゲットの位置のばらつきが低減され、生成されるEUV光のエネルギーと光学性能の安定性を改善することができると推測される。
【0059】
また、第1の実施形態によれば、プリパルスレーザ光Pとメインパルスレーザ光Mとを略同軸でプラズマ生成領域PSに照射できる。このため、EUV集光ミラー5に形成されるレーザ光導入用の貫通孔の数を少なくすることができる。
【0060】
第1の実施形態においては、プリパルスレーザ装置3及びメインパルスレーザ装置4を含むEUV光生成装置20について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、プリパルスレーザ装置3及びメインパルスレーザ装置4等の励起エネルギー源とは別個に構成され、これらのレーザ装置等から励起エネルギーが導入されることにより、チャンバ内に供給されるターゲット物質を励起してEUV光が生成される装置にも、本開示に係る実施形態を適用することができる。このように、プリパルスレーザ装置3及びメインパルスレーザ装置4等を外部装置として組み合わせてEUV光を生成するための装置のことを、本願においては、「EUV光生成システム」という場合もある。
【0061】
<6.補正光学素子の例>
図10は、補正光学素子に関する1つの例を示す概念図である。図10に示す補正光学素子は、回折光学素子31aを含んでもよい。回折光学素子31aは、例えば、入射光を回折させるための微小な凹凸が形成された透明板によって構成されてもよい。回折光学素子31aの凹凸パターンは、回折光を集光光学系によって集光した場合に集光点において光強度分布を均一化させるように設計されてもよい。回折光学素子31aから出力された回折光は、集光光学系15(図9に示す軸外放物面ミラー15b等)を用いて集光されてもよい。これにより、トップハット型の光強度分布を有するプリパルスレーザ光Pが、ドロップレットDLに照射され得る。
【0062】
図11は、補正光学素子に関する別の例を示す概念図である。図11に示す補正光学素子は、位相シフト光学系31bを含んでもよい。位相シフト光学系31bは、例えば、中央部を周辺部より肉厚とした透明板によって構成されてもよい。位相シフト光学系31bは、中央部を透過する光と周辺部を透過する光との間に位相差πを与えてもよい。これにより、光強度分布がガウス分布である入射光が、エアリー関数に近似した電界強度分布を有する光に変換されて、位相シフト光学系31bから出力され得る。
【0063】
そして、例えば、集光光学系15の後焦点の位置がドロップレットDLの通過経路上のある点と一致するように当該集光光学系15を配置し、当該集光光学系15の前焦点の位置に位相シフト光学系31bを配置してもよい。これにより、エアリー関数をフーリエ変換したトップハット型の光強度分布を有するプリパルスレーザ光Pが、ドロップレットDLに照射され得る。ここでは透過型の位相シフト光学系31bが用いられる例について説明したが、これに限らず、反射型の位相シフト光学系が用いられてもよい。
【0064】
図12は、補正光学素子に関するさらなる別の例を示す概念図である。図12に示す補正光学素子は、所定形状の開口を有するマスク32を含んでもよい。マスク32と、コリメータレンズ33と、集光光学系15とにより、縮小投影光学系31cが構成されてもよい。マスク32は、入射するプリパルスレーザ光Pの光強度分布が所定の均一性を有する領域の光のみを透過させ得る。縮小投影光学系31cは、マスク32部分における像をコリメータレンズ33と集光光学系15とによってドロップレットDL上に縮小投影して結像させてもよい。これにより、トップハット型の光強度分布を有するプリパルスレーザ光Pが、ドロップレットDLに照射され得る。
【0065】
図13は、補正光学素子に関するさらなる別の例を示す概念図である。図13に示す補正光学素子は、多数の凹レンズが配列されたフライアイレンズ34を含んでもよい。フライアイレンズ34と集光光学系15とにより、ケイラー照明光学系31dが構成されてもよい。ケイラー照明光学系31dでは、入射光をフライアイレンズ34の各々の凹レンズによって各々所定の角度で広げ、その光を、集光光学系15の焦点位置において、重ね合わせることができる。その結果、集光光学系15の焦点位置においてレーザ光の光強度分布を略均一化させることができる。これにより、トップハット型の光強度分布を有するプリパルスレーザ光Pが、ドロップレットDLに照射され得る。ここでは透過型のフライアイレンズ34を用いる例について説明したが、これに限らず、反射型のフライアイ光学系が用いられてもよい。また、フライアイレンズは多数の凸レンズが配列されたものでもよいし、微小なレンズで構成されたマイクロフライアイレンズでもよい。
【0066】
図10〜図13においては、プリパルスレーザ光PをドロップレットDL上に集光するための集光光学系と、レーザ光の光強度分布を補正するための補正光学素子とを組み合わせた場合を示したが、1つの素子がこれらの機能を果たすように構成されてもよい。例えば、集光レンズに回折光学素子のような凹凸が形成された光学素子や、集光ミラーに位相シフトの機能を有する光学素子が用いられてもよい。
【0067】
図14は、補正光学素子に関するさらなる別の例を示す概念図である。図14に示す補正光学素子は、マルチモード光ファイバ31eを含んでもよい。また、プリパルスレーザ装置3とマルチモード光ファイバ31eとの間の光路には、ビームエキスパンダ30(図9参照)の代わりに、集光光学系30gが配置されてもよい。
【0068】
プリパルスレーザ装置3から出力されたプリパルスレーザ光Pは、集光光学系30gによって集光され、マルチモード光ファイバ31eに入射し得る。このとき、マルチモード光ファイバ31eの開口数に合わせてプリパルスレーザ光Pが集光されるように構成するのが好ましい。一般的にシングルモード光ファイバよりコア径が大きい光ファイバであるマルチモード光ファイバ31eにおいては、光が伝搬する経路が多数存在し得る。このため、光強度分布がガウス分布であるレーザ光がマルチモード光ファイバ31eを通過する際に、光強度分布が変化し、トップハット型の光強度分布を有するレーザ光となり得る。集光光学系15gは、マルチモード光ファイバ31eから出力されたプリパルスレーザ光Pを、ドロップレットDL上に縮小投影して結像させてもよい。これにより、トップハット型の光強度分布を有するプリパルスレーザ光Pが、ドロップレットDLに照射され得る。
【0069】
一般に、光ファイバは最小曲げ半径以上の曲げ半径であれば、自由に曲げることが出来る。さらに、数100mまでの光伝送を考えた場合、ミラーやレンズで伝送する場合に比べ、光ファイバによる光伝送では、光学素子の点数を減らすことが出来、光減衰の点でも有利である場合が多い。このため、補正光学素子として図14に示すマルチモード光ファイバ31eを用いれば、プリパルスレーザ装置3と集光光学系15gとの配置の自由度が向上し、ビーム軸調整が容易となり得る。また、プリパルスレーザ装置3と集光光学系15gとの距離が大きい場合でも、プリパルスレーザ装置3から集光光学系15gまでの光伝送が容易となり得る。
【0070】
<7.第2の実施形態>
図15は、第2の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。第2の実施形態に係るEUV光生成装置は、プリパルスレーザ装置3から出力されたプリパルスレーザ光Pと、メインパルスレーザ装置4から出力されたメインパルスレーザ光Mとを別々の経路からチャンバ1内に供給する構成を有してもよい。
【0071】
プリパルスレーザ装置3から出力されたプリパルスレーザ光Pは、高反射ミラー15c、チャンバ1に設けられた窓12b、軸外放物面ミラー15d、EUV集光ミラー5に形成された1つの貫通孔21b等を介して、チャンバ1内に供給されるドロップレットDL上に集光されてもよい。これにより、拡散ターゲットが生成され得る。
【0072】
メインパルスレーザ装置4から出力されたメインパルスレーザ光Mは、高反射ミラー15e、窓12、軸外放物面ミラー15b、EUV集光ミラー5に形成されたもう1つの貫通孔21a等を介して、拡散ターゲット上に集光されてもよい。
【0073】
第2の実施形態によれば、プリパルスレーザ光Pとメインパルスレーザ光Mとを別々の光学系を介してターゲットに照射できる。このため、プリパルスレーザ光Pとメインパルスレーザ光Mとがそれぞれ所望の大きさの集光点を形成するように、光学系の設計及び製作をすることが容易となり得る。また、プリパルスレーザ光Pとメインパルスレーザ光Mとを同軸化するためのビームコンバイナ等の光学素子を用いなくても、ドロップレットDL及び拡散ターゲットに、それぞれ、プリパルスレーザ光P及びメインパルスレーザ光Mを略同一方向から照射することができる。その他の点については、第1の実施形態における構成と同様でよい。
【0074】
<8.第3の実施形態>
図16Aは、第3の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示し、図16Bは、図16Aに示すEUV光生成装置のXVIB−XVIB面における断面図である。第3の実施形態に係るEUV光生成装置は、プリパルスレーザ装置3から出力されるプリパルスレーザ光Pを、図16Bに示す軸外放物面ミラー15fを介して、EUV光の軸に対して略直交する方向からチャンバ1内に供給する構成を有してもよい。
【0075】
第3の実施形態によれば、プリパルスレーザ光Pを導入するための貫通孔をEUV集光ミラー5に形成する必要がないので、第2の実施形態と比較してEUV集光ミラー5によるEUV光の集光効率を高めることができる。その他の点については、第2の実施形態と同様でよい。
【0076】
<9.第4の実施形態>
図17は、第4の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。第4の実施形態に係るEUV光生成装置は、図9に示す第1の実施形態に係るEUV光生成装置に、ドロップレットDLの位置検出機構が追加された構成を有してもよい。第4の実施形態に係るEUV光生成装置においては、検出されたドロップレットDLの位置に応じてレーザ光の出力タイミング等を制御してもよい。ドロップレットDLの位置検出機構は、ドロップレットZ方向検出器70と、ドロップレットXY方向検出器80とを含んでもよい。
【0077】
ドロップレットZ方向検出器70は、ドロップレットDLの進行方向(Z方向)の位置を検出してもよい。具体的には、ドロップレットZ方向検出器70は、ドロップレットDLがZ方向の所定位置に到着したときに、レーザトリガ生成機構71に対してZ位置検出信号を出力してもよい。
【0078】
レーザトリガ生成機構71は、Z位置検出信号を受信すると、所定の遅延時間が経過した時に、プリパルスレーザ装置3に対してプリパルスレーザ発振トリガ信号を出力してもよい。プリパルスレーザ装置3は、プリパルスレーザ発振トリガ信号に基づいてプリパルスレーザ光Pを出力してもよい。この所定の遅延時間は、ドロップレットDLがプラズマ生成領域PSに到着するタイミングでプリパルスレーザ装置3がプリパルスレーザ光Pを出力するように設定されてもよい。
【0079】
レーザトリガ生成機構71がプリパルスレーザ装置3に対してプリパルスレーザ発振トリガ信号を出力した後、ドロップレットDLにプリパルスレーザ光Pが照射されて、ドロプレットDLが拡散し得る。そして、レーザトリガ生成機構71は、所定の遅延時間が経過した時に、メインパルスレーザ装置4に対してメインパルスレーザ発振トリガ信号を出力してもよい。メインパルスレーザ装置4は、メインパルスレーザ発振トリガ信号に基づいてメインパルスレーザ光Mを出力してもよい。この所定の遅延時間は、拡散ターゲットが所望の大きさに拡散するタイミングでメインパルスレーザ装置4から出力されるメインパルスレーザ光Mが拡散ターゲットに照射されるように設定されてもよい。
【0080】
以上のようにして、ドロップレットDLのZ方向の位置の検出結果に応じてそれぞれのパルスレーザ光の出力タイミングが制御されてもよい。
【0081】
ドロップレットZ方向検出器70と、レーザトリガ生成機構71と、プリパルスレーザ装置3とにおいては、各種のジッター(時間軸上のゆらぎ)が存在すると考えられる。このようなジッターとしては、(1)ドロプレットZ方向検出器が信号出力に要する時間のジッター(σa)、(2)信号の送受信に要する時間のジッター(σb)、(3)信号の処理に要する時間のジッター(σc)、(4)プリパルスレーザ装置3からパルスレーザ光Pが出力されるのに要する時間のジッター(σd)及び(5)メインパルスレーザ装置4からメインパルスレーザ光Mが出力されるのに要する時間のジッター(σf)等が挙げられる。上記ジッターの標準偏差σjは、以下の式で表現される。
σj=(σa+σb+σc+σd+σf+・・・・)1/2
プリパルスレーザ光Pの照射位置とドロップレットDLの位置との間におけるZ方向のずれは、例えば、2σj×v(但し、vはドロップレットDLの移動速度)で表され得る。その場合、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域の径Dtzは、以下の条件を満足すればよい。
Dtz≧Dd+2σj×v
【0082】
ドロップレットXY方向検出器80は、ターゲット供給部2から順次供給されるドロップレットDLの進行方向に直交する面上での位置(ドロップレットDLのXY方向の位置)を検出し、ドロップレットXYコントローラ81に対してXY位置検出信号を出力してもよい。
【0083】
ドロップレットXYコントローラ81は、XY位置検出信号を受信すると、検出されたドロップレットDLの位置が所定の許容範囲内の位置にあるか否かを判定してもよい。ドロップレットDLの位置が所定の許容範囲内にはない場合、ドロップレットXYコントローラ81は、ドロップレットXY制御機構82に対してXY駆動信号を出力してもよい。
【0084】
ドロップレットXY制御機構82は、XY駆動信号に基づいて、ターゲット供給部2に設けられた駆動モータを駆動することにより、ドロップレットDLの出力位置を制御してもよい。以上のようにして、ドロップレットDLのXY方向の位置の検出結果に応じてドロップレットDLのXY方向の出力位置が制御されてもよい。
【0085】
なお、このように制御する場合においても、ドロップレット毎に出力位置を変更することは困難である。従って、XY方向の短期変動(標準偏差)をσxとすると、プリパルスレーザ光Pのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域の径Dtxは、例えば、以下の条件を満足することが好ましい。
Dtx≧Dd+2σx
第4の実施形態において、ドロップレットDLの出力位置をXY方向に制御する例を示したが、これに限定されることなく、ノズル13から出力されるドロップレットDLの出力角度を制御するようにしてもよい。
【0086】
<10.第5の実施形態>
図18Aは、第5の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図であり、図18Bは、図18Aに示すEUV光生成装置のXVIIIB−XVIIIB面における断面図である。第5の実施形態に係るEUV光生成装置は、図9に示す第1の実施形態に係るEUV光生成装置に、磁石6a及び6bが追加された構成を有してもよい。第5の実施形態においては、磁石6a及び6bによってチャンバ1内に磁場を生成することにより、チャンバ1内において発生したイオンを回収してもよい。
【0087】
磁石6a及び6bは、コイル巻き線やコイル巻き線の冷却機構等を含んだ電磁石でもよい。これらの磁石6a及び6bには、電源コントローラ6dによって制御される電源装置6cが接続されてもよい。電源装置6cから磁石6a及び6bに供給される電流を電源コントローラ6dが調節することにより、所定方向の磁場がチャンバ1内に生成され得る。磁石6a及び6bとしては、例えば超伝導電磁石が用いられてもよい。なお、ここでは2つの磁石6a及び6bが用いられる例について説明したが、1つの磁石が用いられてもよい。あるいは、永久磁石が用いられてもよい。また、磁石はチャンバ内に配置されてもよい。
【0088】
メインパルスレーザ光Mの照射によって生成されるターゲット物質のプラズマは、正イオン及び負イオン(又は電子)を含み得る。チャンバ1内を移動する正イオン及び負イオンは、磁場中でローレンツ力を受けるため、磁力線に沿って螺旋状に移動し得る。これにより、ターゲット物質のイオンが磁場にトラップされ、磁場中に設けられたイオン回収部19a及び19bに回収され得る。これにより、チャンバ1内におけるイオンの飛散を低減することができ、EUV集光ミラー5などのチャンバ内の光学素子へのイオンの付着による光学素子の劣化が抑制され得る。なお、図18Bにおいて、磁場は紙面下向きとなっているが、紙面上向きであっても同様な機能を果たす。
【0089】
なお、イオンによる汚染を低減するミチゲーション技術は、磁場を用いるものに限らず、エッチングガスを利用して、EUV集光ミラー5等に付着した物質をエッチングする構成でもよい。また、ミチゲーション技術は、磁場において水素ガス(H)又は水素ラジカル(H)を作用させてイオンを除去する構成でもよい。
【0090】
<11.第6の実施形態>
図19は、第6の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。第6の実施形態に係るEUV光生成装置は、メインパルスレーザ装置4とビームコンバイナ15aとの間に、メインパルスレーザ光Mの光強度分布を補正するための補正光学素子41を含んでもよい。
【0091】
補正光学素子41の構成は、プリパルスレーザ光Pの光強度分布を補正するための補正光学素子31の構成と同様でよい。補正光学素子41によってメインパルスレーザ光Mがそのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有するように補正され得る。これにより、メインパルスレーザ光Mが拡散ターゲットを略均等に照射できるようになり得る。その他の点については、第1の実施形態と同様でよい。
【0092】
図20Aは、ドロップレットDLにプリパルスレーザ光Pを照射した様子を示す概念図である。図20B及び図20Cは、ドロップレットDLにプリパルスレーザ光Pを照射したことによって形成されたトーラス型の拡散ターゲットにトップハット型の光強度分布を有するメインパルスレーザ光Mを照射する様子を示す概念図である。図20A及び図20Bは、プリパルスレーザ光P及びメインパルスレーザ光Mのビーム軸方向に直交する方向からターゲット物質を見たものである。図20Cは、メインパルスレーザ光Mのビーム軸方向からターゲット物質を見たものである。
【0093】
図20Aに示すように、プリパルスレーザ光PをドロップレットDLに集光して照射した時、プリパルスレーザ光Pが照射されたドロップレットDLの表面付近においてレーザアブレーションが生じ得る。その結果、レーザアブレーションのエネルギーによって、プリパルスレーザ光Pが照射されたドロップレットDLの表面からドロップレットDL内部に向かって衝撃波が発生し得る。この衝撃波はドロップレットDLの全体に伝わり得る。ここで、プリパルスレーザ光Pの光強度が第1の所定値(例えば1×10W/cm)以上である場合には、この衝撃波によってドロップレットDLが粉々に破壊されて拡散し得る。
【0094】
そして、プリパルスレーザ光Pの光強度が第2の所定値(例えば6.4×10W/cm)以上である場合には、ドロップレットDLが粉々に破壊されて、図20B及び図20Cに示すようなトーラス型の拡散ターゲットが形成され得る。図20B及び図20Cに示すように、トーラス型の拡散ターゲットは、ドロップレットDLが、プリパルスレーザ光Pのビーム軸に対して略軸対称に、かつ、トーラス状に拡散したものである。
【0095】
なお、トーラス型の拡散ターゲットを形成するための具体的条件は、例えば以下のとおりでよい。プリパルスレーザ光Pの光強度範囲は、6.4×10W/cm以上、3.2×1010W/cm以下でよい。ドロップレットDLの直径は、12μm以上、40μm以下でよい。
【0096】
次に、トーラス型の拡散ターゲットへのメインパルスレーザ光Mの照射について説明する。トーラス型の拡散ターゲットは、プリパルスレーザ光PをドロップレットDLに照射した後、例えば0.5μs〜2.0μsのタイミングで形成され得る。従って、プリパルスレーザ光PをドロップレットDLに照射した後の上記タイミングで、メインパルスレーザ光Mを拡散ターゲットに照射することが好ましい。
【0097】
また、図20B及び図20Cに示すように、トーラス型の拡散ターゲットの形状は、プリパルスレーザ光Pのビーム軸方向の長さが、プリパルスレーザ光Pのビーム軸方向に直交する方向の長さよりも短い形状となっている。このような拡散ターゲットに対して、メインパルスレーザ光Mは、プリパルスレーザ光Pと略同一方向から照射されるのが好ましい。これにより、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光Mをより均一に照射することができ、ターゲット物質にメインパルスレーザ光Mを効率的に吸収させることができると推測される。これにより、LPP式EUV光生成装置におけるCEを向上させることができる場合がある。
【0098】
少なくともメインパルスレーザ光Mのビーム断面における光強度分布は、図19を参照しながら説明した補正光学素子41によって、所定の均一性を有するように補正され得る。なお、トーラス型の拡散ターゲットを生成するためには、プリパルスレーザ光Pのビーム断面における光強度分布は、所定の均一性を有していなくてもよい。この場合、図19に示す第6の実施形態において補正光学素子31は設けなくてもよい。しかし、これに限らず、補正光学素子31を設けて、ドロップレットの位置のばらつきに起因する拡散ターゲットの位置のばらつきを低減するように構成してもよい。
【0099】
光強度分布が所定の均一性を有するメインパルスレーザ光Mを、トーラス型の拡散ターゲットに照射することにより、トーラス型の拡散ターゲットから円筒状にプラズマが放出されると推測される。そして、円筒内部に向かって拡散するプラズマをその円筒内に閉じ込められる効果が期待できる。従って、プラズマを高温かつ高密度に生成し、CEを向上させることが期待できる。なお、「トーラス型」とは円環体の形状を意味するが、拡散ターゲットは必ずしも円環体である必要はなく、実質的に環状に拡散したものであればよい。
【0100】
ここで、トーラス型の拡散ターゲットの位置のばらつきをΔXとすると、メインパルスレーザ光Mの光強度分布が所定の均一性を有する領域の径Dtopは、トーラス型の拡散ターゲットの外径Doutに対して、以下の関係を有することが好ましい。
Dtop≧Dout+2ΔX
すなわち、メインパルスレーザ光Mのビーム断面において光強度分布が所定の均一性を有する領域の径Dtopは、トーラス型の拡散ターゲットの外径Doutに拡散ターゲットの位置のばらつきΔXの2倍を加えた大きさ以上であることが好ましい。このように構成することにより、トーラス型の拡散ターゲットの全体に、光強度が略均一なメインパルスレーザ光Mを照射できる。このため、拡散ターゲットのより多くの部分をプラズマ化することができる。その結果、ターゲット物質のデブリの発生を低減することができると推測される。
【0101】
<12.第7の実施形態>
図21は、第7の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光Pを出力するチタンサファイヤレーザの構成を示す概念図である。第7の実施形態におけるチタンサファイヤレーザ50aは、上述の第1〜第6の実施形態においてドロップレットDLを拡散させるためのプリパルスレーザ光Pを出力するプリパルスレーザ装置として、チャンバの外に設けられてもよい。
【0102】
第7の実施形態におけるチタンサファイヤレーザ50aは、半導体可飽和吸収ミラー51aと出力結合ミラー52aとの間に、凹面ミラー53a、第1のポンピング用ミラー54a、チタンサファイア結晶55a、第2のポンピング用ミラー56a、並びに、2つのプリズム57a及び58aが、半導体可飽和吸収ミラー51a側からこの順に配置されたレーザ共振器を含んでもよい。さらに、チタンサファイヤレーザ50aは、レーザ共振器に励起光を導入するための励起光源59aを含んでもよい。
【0103】
第1のポンピング用ミラー54aは、レーザ共振器外部からの励起光を高い透過率で透過させ、レーザ共振器内部からの光を高い反射率で反射するミラーでよい。チタンサファイア結晶55aは、励起光を受けて誘導放出を行うレーザ媒質でよい。2つのプリズム57a及び58aは、特定の波長の光を選択的に透過させてもよい。出力結合ミラー52aは、レーザ共振器内で増幅された光の一部を透過させて出力し、残りの一部を反射してレーザ共振器内に戻してもよい。半導体可飽和吸収ミラー51aは、反射層と可飽和吸収体層とが積層されたミラーでよく、入射光の光強度が弱い部分は可飽和吸収体層に吸収され、入射光の光強度が強い部分は可飽和吸収体層を透過して反射層に反射されることにより、入射光が短パルス化され得る。
【0104】
励起光源59aとして、例えば半導体励起Nd:YVOレーザが用いられてもよい。励起光源59aからの第2高調波の光を第1のポンピング用ミラー54aを介してレーザ共振器内に導入してもよい。半導体可飽和吸収ミラー51aの位置を調整し、レーザ共振器の縦モードを同期させて発振させることにより、出力結合ミラー52aからピコ秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光が出力され得る。なお、パルスエネルギーが小さい場合は、再生増幅器によりこのパルスレーザ光を増幅してもよい。
【0105】
第7の実施形態によれば、ピコ秒オーダーのパルス時間幅を有する短パルスレーザ光を出力し、プリパルスレーザ光PとしてドロップレットDLに照射するので、小さなパルスエネルギーでドロップレットDLを拡散させることができる。
【0106】
<13.第8の実施形態>
図22は、第8の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光Pを出力するファイバレーザの構成を示す概念図である。第8の実施形態におけるファイバレーザ50bは、上述の第1〜第6の実施形態においてドロップレットDLを拡散させるためのプリパルスレーザ光Pを出力するプリパルスレーザ装置として、チャンバの外に設けられてもよい。
【0107】
第8の実施形態におけるファイバレーザ50bは、高反射ミラー51bと半導体可飽和吸収ミラー52bとの間に、グレーティングペア53b、第1の偏光維持ファイバ54b、マルチプレクサ55b、分離素子56b、第2の偏光維持ファイバ57b、及び、集光光学系58bが、高反射ミラー51b側からこの順に配置されたレーザ共振器を含んでもよい。さらに、ファイバレーザ50bは、レーザ共振器に励起光を導入するための励起光源59bを含んでもよい。
【0108】
マルチプレクサ55bは、励起光源59bからの励起光を第1の偏光維持ファイバ54bに導入するとともに、第1の偏光維持ファイバ54bと第2の偏光維持ファイバ57bとの間で光を透過させてもよい。第1の偏光維持ファイバ54bは、イッテルビウム(Yb)がドープされており、励起光を受けて誘導放出を行ってもよい。グレーティングペア53bは、所定の波長の光を選択的に反射してもよい。半導体可飽和吸収ミラー52bは、反射層と可飽和吸収体層とが積層されたミラーでよく、入射光の光強度が弱い部分は可飽和吸収体層に吸収され、入射光の光強度が強い部分は可飽和吸収体層を透過して反射層に反射されることにより、入射光が短パルス化され得る。分離素子56bは、レーザ共振器内で増幅された光の一部を分離して出力し、残りの一部をレーザ共振器内に戻してもよい。マルチプレクサ55bに光ファイバで接続された励起光源59bから、励起光が導入されると、分離素子56bを介してピコ秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光が出力され得る。
【0109】
ここで、ピコ秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光を出力するピコ秒パルスレーザ装置とは、パルス時間幅Tが1ns未満(T<1ns)のパルスレーザ光を出力するパルスレーザ装置を意味する。さらに、フェムト秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光を出力するフェムト秒パルスレーザ装置を適用しても、同様の効果を得ることができる。
【0110】
第8の実施形態によれば、第7の実施形態と同様の効果を奏する他、プリパルスレーザ光Pを光ファイバで導入できるため、プリパルスレーザ光Pの進行方向の調整が容易となり得る。
【0111】
なお、レーザ光の波長が短くなるほど、スズによるレーザ光の吸収率は高くなり得る。従って、スズによる吸収を重視する場合は、短波長の方が有利である。例えば、Nd:YAGレーザ装置から出力される基本波の波長1064nmに対し、高調波2ω=532nm、3ω=355nm、4ω=266nmの順で、吸収効率が高くなる。
【0112】
なお、ここではピコ秒オーダーのパルス時間幅を有する短パルスレーザ光を用いる例を示したが、ナノ秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光を用いても、ドロップレットDLを拡散させることができる。例えば、パルス時間幅約15ns、繰返し周波数100kHz、パルスエネルギー1.5mJ、波長1.03μm、M値1.5未満のファイバレーザでも十分使用可能である。
【0113】
<14.プリパルスレーザ光の照射条件>
図23は、本開示におけるプリパルスレーザ光Pの照射条件の例を示す表である。照射パルスエネルギーをE(J)、パルス時間幅をT(s)、光強度分布が所定の均一性を有する領域の径をDt(m)とすると、プリパルスレーザ光Pの光強度W(W/m)は、次の式で表される。
W=E/(T(Dt/2)π)
【0114】
図23には、プリパルスレーザ光Pの照射条件として、4通りの例(ケース1〜ケース4)が示されている。ケース1〜ケース4は、例えば溶融スズのドロップレットの径が10μmであり、光強度分布が所定の均一性を有する領域の径Dtが30μmである場合を想定している。このようなドロップレットを拡散させて所望の拡散ターゲットを形成するために、照射パルスエネルギーE及びパルス時間幅Tを、それぞれ0.3mJ及び20nsに設定した場合(ケース1)には、2.12×10W/cmの光強度Wが得られる。このようなプリパルスレーザ光により、例えば図2Bに示すような拡散ターゲットの生成が可能となる。
【0115】
図23に示すケース2は、照射パルスエネルギーE及びパルス時間幅Tを、それぞれ0.3mJ及び10nsに設定した場合であり、この場合は、4.24×10W/cmの光強度Wが得られる。このようなプリパルスレーザ光により、例えば図2Bに示すような拡散ターゲットの生成が可能となる。
【0116】
図23に示すケース3は、照射パルスエネルギーE及びパルス時間幅Tを、それぞれ0.3mJ及び0.1nsに設定した場合であり、この場合は、4.24×1011W/cmの光強度Wが得られる。このようなプリパルスレーザ光により、例えば図3Bに示すような拡散ターゲットの生成が可能となる。
【0117】
図23に示すケース4は、照射パルスエネルギーE及びパルス時間幅Tを、それぞれ0.5mJ及び0.05nsに設定した場合であり、この場合は、1.41×1012W/cmの光強度Wが得られる。このようなプリパルスレーザ光により、例えば図3Bに示すような拡散ターゲットの生成が可能となる。このように、プリパルスレーザ光をピコ秒オーダーにまで短パルス化することにより、高い光強度Wを得ることができる。
【0118】
図23においては、10μm径のドロップレットに対する一例を示したが、本開示は、このドロップレット径に限定されない。例えば、16μm径のドロップレットに対して、ドロップレットの位置の安定性がΔX=7μmであれば、所定の均一性を有する領域の径Dtを30μmとしてもよい。
【0119】
<15.第9の実施形態>
図24は、第9の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。第9の実施形態に係るEUV光生成装置は、プリパルスレーザ装置3(図19参照)を含んでおらず、メインパルスレーザ光Mのみによってターゲット物質をプラズマ化する点で、図19を参照しながら説明した第6の実施形態に係るEUV光生成装置とは異なる。
【0120】
第9の実施形態において、補正光学素子41は、メインパルスレーザ光Mの光強度分布を、所定の均一性を有する領域が存在する分布となるように補正してもよい。この構成によれば、メインパルスレーザ光Mの光強度が均一な範囲内でドロップレットDLの位置が変化したとしても、ドロップレットDLへの照射強度の変化が小さくて済む。その結果、生成されるプラズマの密度の安定性を向上させ、EUV光の強度の安定性を向上させることができる。その他の点については、第6の実施形態と同様でよい。
【0121】
<16.第10の実施形態>
図25は、第10の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。第10の実施形態に係るEUV光生成装置は、プリパルスレーザ光P及びメインパルスレーザ光Mの両方を出力するレーザ装置7を含んでもよい。
【0122】
レーザ装置7は、第1のマスターオシレータ7aと、第2のマスターオシレータ7bと、光路調整器7cと、プリアンプ4cと、メインアンプ4eと、リレー光学系4b、4d及び4fとを含んでもよい。第1のマスターオシレータ7aは、プリパルスレーザ光Pのシード光を生成してもよい。第2のマスターオシレータ7bは、メインパルスレーザ光Mのシード光を生成してもよい。第1のマスターオシレータ7a及び第2のマスターオシレータ7bによって生成されるこれらのシード光は、同一の波長域に含まれるレーザ光であることが好ましい。光路調整器7cは、これらのシード光の光路が空間的に略一致するように調整してリレー光学系4bに出力してもよい。
【0123】
レーザ装置7から出力されたプリパルスレーザ光P及びメインパルスレーザ光Mは、何れも、補正光学素子41によって、光強度分布が所定の均一性を有する領域が存在する分布となるように補正されてもよい。プリパルスレーザ光P及びメインパルスレーザ光Mが同一の波長域に含まれるレーザ光であれば、これらのレーザ光は、1つの補正光学素子41によって光強度分布を補正することができる。その他の点については、第6の実施形態と同様でよい。
【0124】
<17.第11の実施形態>
<17−1.構成>
図26は、第11の実施形態に係るEUV光生成装置において用いられるレーザ装置の構成を示す概念図である。第11の実施形態におけるレーザ装置8は、例えば、上述の第1〜第10の実施形態においてドロップレットDLを拡散させるためのプリパルスレーザ光Pを出力するパルスレーザ装置として、チャンバの外に設けられてもよい。
【0125】
レーザ装置8は、マスターオシレータ8aと、少なくとも1つの増幅器とを含んでもよい。少なくとも1つの増幅器は、プリアンプ8gと、メインアンプ8hとを含んでもよい。少なくとも1つの増幅器は、マスターオシレータ8aから出力されるレーザ光の光路上に配置されてもよい。
【0126】
マスターオシレータ8aは、高反射ミラー8b及び部分反射ミラー8cを含む安定共振器と、レーザ媒質8dとを備えてもよい。レーザ媒質8dは、高反射ミラー8bと部分反射ミラー8cとの間に配置されてもよい。レーザ媒質8dは、Nd:YAGの結晶、Yb:YAGの結晶等でよい。この結晶は円柱状であってもよいし、板状であってもよい。
【0127】
高反射ミラー8b及び部分反射ミラー8cは、平面ミラーであってもよいし、曲面を有するミラーであってもよい。安定共振器中の光路上には、少なくとも1つのアパーチャが形成された部材があってもよい。少なくとも1つのアパーチャが形成された部材は、アパーチャプレート8e及び8fを含んでもよい。
【0128】
プリアンプ8g及びメインアンプ8hは、いずれも、レーザ媒質を含んでもよい。プリアンプ8g及びメインアンプ8hのレーザ媒質は、Nd:YAGの結晶、Yb:YAGの結晶等でよい。この結晶は円柱状であってもよいし、板状であってもよい。
【0129】
<17−2.動作>
マスターオシレータ8aのレーザ媒質8dが図示しない励起光源により励起されると、高反射ミラー8b及び部分反射ミラー8cを含む安定共振器は、マルチ横モードでレーザ発振し得る。このとき、安定共振器中のアパーチャプレート8e及び8fに形成されたアパーチャの形状に応じて、マルチ横モードで発振したレーザ光の断面形状が変更され得る。この結果、マスターオシレータ8aから、集光した場合にアパーチャ形状に依存した断面形状を持ち、かつトップハット型の光強度分布を有するレーザ光を出力することができる。マスターオシレータ8aから出力されたレーザ光は、少なくとも1つの図示しない励起光源により励起されたレーザ媒質を含む増幅器によって増幅され、集光光学系15によってドロップレットDLに照射されるように構成してもよい。これにより、補正光学素子を用いなくても、トップハット型の光強度分布を有するレーザ光を出力することができる。
【0130】
安定共振器中のアパーチャプレート8e及び8fに形成されたアパーチャが矩形の形状をしている場合、トップハット型の光強度分布を有するレーザ光の断面形状は矩形になり得る。また、アパーチャプレート8e及び8fに形成されたアパーチャが円形の形状をしている場合、トップハット型の光強度分布を有するレーザ光の断面形状は円形になり得る。ドロップレットの位置のばらつきが方向によって異なる場合に、長方形のアパーチャが形成されたアパーチャプレート8e及び8fを用いることにより、トップハット型の光強度分布を有するレーザ光の断面形状を長方形にしてもよい。このように、アパーチャの形状を選定又は調節することによって、集光光学系15によって集光されるトップハット型の光強度分布を有するレーザ光の断面形状を調節することができる。また、アパーチャプレートを用いる場合に限らず、レーザ媒質8dの断面形状によってレーザ光の断面形状を制御してもよい。
【0131】
<18.フルーエンスの制御>
図27は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光のフルーエンス(集光点におけるビーム断面の単位面積あたりのエネルギー)に応じたCEの測定値をプロットしたグラフである。
【0132】
測定条件は、次の通りである。ターゲット物質としては、直径20μmの溶融スズのドロップレットを用いた。プリパルスレーザ光としては、YAGレーザによるパルス幅5nsから15nsのレーザ光を用いた。メインパルスレーザ光としては、COレーザによるパルス幅20nsのレーザ光を用いた。メインパルスレーザ光の光強度は6.0×10W/cmとし、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は1.5μsとした。
【0133】
図27に示すグラフの横軸はプリパルスレーザ光の照射条件(パルス幅、エネルギー、集光面積)をフルーエンスに換算した値を示している。また、縦軸はプリパルスレーザ光の各照射条件において生成された拡散ターゲットに前述のメインパルスレーザ光を略同一条件で照射した場合のCEを示している。
【0134】
図27に示す測定結果から、プリパルスレーザ光のフルーエンスを高くするとCEが3%程度にまで向上することがわかった。すなわち、少なくともプリパルスレーザ光のパルス幅が5ns〜15nsの範囲では、フルーエンスとCEとの相関があることがわかった。
【0135】
従って、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光の光強度ではなくフルーエンスを制御するように構成してもよい。図27に示す測定結果から、プリパルスレーザ光のフルーエンスは、10mJ/cm〜600mJ/cmの範囲が好ましい。また、30mJ/cm〜400mJ/cmの範囲がより好ましい。また、150mJ/cm〜300mJ/cmの範囲がさらに好ましい。
【0136】
プリパルスレーザ光のフルーエンスを上述のような範囲に制御する場合にCEが向上するという測定結果から、この条件ではターゲット物質のドロップレットは円盤状又は皿状、或いはトーラス状に拡散していたものと推測される。つまり、ドロップレットが拡散し、総表面積が大きくなった結果、拡散した微粒子にメインパルスレーザ光のエネルギーが効率的に吸収されたため、CEが向上したものと推測される。
【0137】
<19.遅延時間の制御>
図28は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間に応じたCEの測定値をターゲット物質のドロップレット径ごとにプロットしたグラフである。
【0138】
測定条件は、次の通りである。ターゲット物質としては、直径12μm、20μm、30μm及び40μmの溶融スズのドロップレットを用いた。プリパルスレーザ光としては、YAGレーザによるパルス幅5nsのレーザ光を用いた。プリパルスレーザ光のフルーエンスは490mJ/cmとした。メインパルスレーザ光としては、COレーザによるパルス幅20nsのレーザ光を用いた。メインパルスレーザ光の光強度は6.0×10W/cmとした。
【0139】
図28に示す測定結果から、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜2.5μsの範囲が好ましいことがわかった。但し、ターゲット物質のドロップレット径ごとに、高いCEを得るためのメインパルスレーザ光の遅延時間の最適範囲は異なる可能性があることがわかった。
【0140】
ドロップレット径が12μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜2μsの範囲が好ましい。また、0.6μs〜1.5μsの範囲がより好ましい。また、0.7μs〜1μsの範囲がさらに好ましい。
【0141】
ドロップレット径が20μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜2.5μsの範囲が好ましい。また、1μs〜2μsの範囲がより好ましい。また、1.3μs〜1.7μsの範囲がさらに好ましい。
【0142】
ドロップレット径が30μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜4μsの範囲が好ましい。また、1.5μs〜3.5μsの範囲がより好ましい。また、2μs〜3μsの範囲がさらに好ましい。
【0143】
ドロップレット径が40μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜6μsの範囲が好ましい。また、1.5μs〜5μsの範囲がより好ましい。また、2μs〜4μsの範囲がさらに好ましい。
【0144】
プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間を上述のような範囲に制御することにより、ターゲット物質のドロップレットが十分に細かい微粒子に拡散されたものと推測される。また、ドロップレットが拡散し、総表面積が大きくなった結果、拡散した微粒子にメインパルスレーザ光のエネルギーが効率的に吸収されたため、CEが向上したものと推測される。
【0145】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0146】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0147】
DL…ドロップレット、Dd…ドロップレットの径、De…拡散ターゲットの径、Dm…メインパルスレーザのビーム径(照射スポット径)、Dt…所定の均一性を有する領域の径、IF…中間集光点、M…メインパルスレーザ光、P…プリパルスレーザ光、P1〜P6…ピーク、ΔP…ピーク間の間隔、PS…プラズマ生成領域、1…チャンバ、2…ターゲット供給部、3…プリパルスレーザ装置、4…メインパルスレーザ装置、4a…マスターオシレータ、4b、4d、4f…リレー光学系、4c…プリアンプ、4e…メインアンプ、5…EUV集光ミラー、6a、6b…磁石、6c…電源装置、6d…電源コントローラ、7…レーザ装置、7a…第1のマスターオシレータ、7b…第2のマスターオシレータ、7c…光路調整器、8…レーザ装置、8a…マスターオシレータ、8b…高反射ミラー、8c…部分反射ミラー、8d…レーザ媒質、8e、8f…アパーチャプレート、8g…プリアンプ、8h…メインアンプ、11…露光装置接続ポート、12…窓、13…ターゲットノズル、14…ターゲット回収部、15…集光光学系、15a…ビームコンバイナ、15b、15d、15f…軸外放物面ミラー、15c、15e…高反射ミラー、15g…集光光学系、19a、19b…イオン回収部、20…EUV光生成装置、21a、21b…開口、30…ビームエキスパンダ、30g…集光光学系、31…補正光学素子、31a…回折光学素子、31b…位相シフト光学系、31c…縮小投影光学系、31d…ケイラー照明光学系、31e…マルチモード光ファイバ、32…マスク、33…光学素子、34…フライアイレンズ、41…補正光学素子、50a…チタンサファイヤレーザ、50b…ファイバレーザ、51a…半導体可飽和吸収ミラー、51b…高反射ミラー、52a…出力結合ミラー、52b…半導体可飽和吸収ミラー、53a…凹面ミラー、53b…グレーティングペア、54a…第1のポンピング用ミラー、54b…第1の偏光維持ファイバ、55a…チタンサファイア結晶、55b…マルチプレクサ、56a…第2のポンピング用ミラー、56b…分離素子、57a…プリズム、57b…第2の偏光維持ファイバ、58b…集光光学系、59a…励起光源、59b…励起光源、70…ドロップレットZ方向検出器、71…レーザトリガ生成機構、80…ドロップレットXY方向検出器、81…ドロップレットXYコントローラ、82…ドロップレットXY制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのレーザ装置と共に用いられるチャンバ装置であって、
前記少なくとも1つのレーザ装置から出力される少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するためのターゲット供給部と、
前記少なくとも1つのレーザ光を前記所定の領域で集光させるためのレーザ集光光学系と、
前記少なくとも1つのレーザ光の前記所定の領域におけるビーム断面の光強度分布を補正するための光学素子と、
を備えるチャンバ装置。
【請求項2】
前記光学素子は、前記少なくとも1つのレーザ光の前記所定の領域における前記ビーム断面の前記光強度分布が、前記ビーム断面の所定の領域において所定の均一性を有するように、前記光強度分布を補正する、請求項1記載のチャンバ装置。
【請求項3】
前記所定の領域の面積は、前記チャンバ内の前記所定の領域における前記ターゲット物質の、前記少なくとも1つのレーザ光の進行方向に垂直な断面における最大面積を超える大きさである、請求項2記載のチャンバ装置。
【請求項4】
前記レーザ光の進行方向に垂直な方向における前記所定の領域の寸法の最小値は、前記チャンバ内の前記所定の領域における前記ターゲット物質の、前記垂直な方向における寸法の最大値に、前記所定の領域における前記ターゲット物質の位置のばらつきの範囲を加えた値以上の大きさである、請求項2記載のチャンバ装置。
【請求項5】
前記所定の領域において、最も低い光強度と最も高い光強度との差が、前記最も低い光強度と前記最も高い光強度との和の20%以下となる、請求項2記載のチャンバ装置。
【請求項6】
前記チャンバ内に供給されるターゲット物質はドロップレットである、請求項1記載のチャンバ装置。
【請求項7】
前記ターゲット物質は金属を含む、請求項1記載のチャンバ装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのレーザ光は前記チャンバ内に供給される前記ターゲット物質を照射するプリパルスレーザ光と、前記プリパルスレーザ光に照射されたターゲット物質を照射するメインパルスレーザ光と、を含み、
前記光学素子は、前記プリパルスレーザ光の前記光強度分布を補正する、
請求項1記載のチャンバ装置。
【請求項9】
前記メインパルスレーザ光の前記所定の領域におけるビーム断面の面積は、前記プリパルスレーザ光に照射された前記ターゲット物質の、前記メインパルスレーザ光の進行方向に垂直な断面における最大面積を超える大きさである、請求項8記載のチャンバ装置。
【請求項10】
前記メインパルスレーザ光の前記所定の領域におけるビーム断面の寸法の最小値は、前記プリパルスレーザ光に照射された前記ターゲット物質の、前記メインパルスレーザ光の進行方向に垂直な方向における寸法の最大値に、前記プリパルスレーザ光に照射された前記ターゲット物質の位置のばらつきの範囲を加えた値以上の大きさである、請求項8記載のチャンバ装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのレーザ光は前記チャンバ内に供給される前記ターゲット物質を照射するプリパルスレーザ光と、前記プリパルスレーザ光に照射されたターゲット物質を照射するメインパルスレーザ光と、を含み、
前記プリパルスレーザ光と前記メインパルスレーザ光とは、略同一方向から前記チャンバ内に入射する、
請求項1記載のチャンバ装置。
【請求項12】
少なくとも1つのレーザ装置と、
前記少なくとも1つのレーザ装置から出力される少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するためのターゲット供給部と、
前記少なくとも1つのレーザ光を前記所定の領域で集光させるためのレーザ集光光学系と、
前記少なくとも1つのレーザ光の集光位置におけるビーム断面の光強度分布を補正するための光学素子と、
前記レーザ装置における前記少なくとも1つのレーザ光の出力タイミングを制御するためのレーザ制御部と、
を備える、極端紫外光生成装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのレーザ光は前記チャンバ内に供給される前記ターゲット物質を照射するプリパルスレーザ光と、前記プリパルスレーザ光に照射されたターゲット物質を照射するメインパルスレーザ光と、を含み、
前記プリパルスレーザ光の光強度は、6.4×10W/cm以上、3.2×1010W/cm以下であり、
前記レーザ制御部は、前記プリパルスレーザ光が前記ターゲット物質に照射された時点から、0.5〜2μSの範囲内のタイミングで、前記メインパルスレーザ光が前記プリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質に照射されるように、前記メインパルスレーザ光の前記出力タイミングを制御する、
請求項12記載の極端紫外光生成装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのレーザ光は前記チャンバ内に供給される前記ターゲット物質を照射するプリパルスレーザ光と、前記プリパルスレーザ光に照射されたターゲット物質を照射するメインパルスレーザ光と、を含み、
前記プリパルスレーザ光のフルーエンスは、10mJ/cm以上、600mJ/cm以下であり、
前記レーザ制御部は、前記プリパルスレーザ光が前記ターゲット物質に照射された時点から、0.5〜2.5μSの範囲内のタイミングで、前記メインパルスレーザ光が前記プリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質に照射されるように、前記メインパルスレーザ光の前記出力タイミングを制御する、
請求項12記載の極端紫外光生成装置。
【請求項15】
マルチ横モードで発振するマスターオシレータを含む少なくとも1つのレーザ装置と、
前記少なくとも1つのレーザ装置から出力される少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するためのターゲット供給部と、
前記少なくとも1つのレーザ光を前記所定の領域で集光させるためのレーザ集光光学系と、
前記レーザ装置における前記少なくとも1つのレーザ光の出力タイミングを制御するためのレーザ制御部と、
を備える、極端紫外光生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図3】
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【図4】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−20926(P2013−20926A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201750(P2011−201750)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】