説明

楽曲合奏公開システム

【課題】楽器を演奏することができないユーザであっても、容易に楽曲を作成することのできる楽曲合奏公開システムを提供することを課題とする。
【解決手段】図1に示す楽曲合奏公開システムは、複数の無線端末10と、楽曲サーバ20とによって構成される。楽曲サーバ20は、ホスト端末10Hから送信される指示に基づいて、楽曲情報から演奏情報と合奏情報を抽出する。無線端末10は、ユーザが演奏情報を利用して演奏するために、演奏操作情報を入力すべきタイミングを伴奏情報の再生に同期させて指示する。また、無線端末10は、演奏操作情報の入力タイミングに応じて再生された演奏音符を、演奏操作情報の入力タイミングに基づいて記録する。記録された演奏音符は、演奏記録情報として保存され、楽曲サーバ20にアップロードされる。楽曲サーバ20は、各無線端末10が記録した演奏記録情報をマージして、合成楽曲情報を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器を演奏することができないユーザであっても容易に楽曲を合奏し、合奏した楽曲を公開することができる楽曲合奏公開システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔地に居住する複数のユーザが、PCやネットワークを利用して、楽曲の共同制作を行っている。たとえば、楽器を演奏することができるユーザは、担当する楽器の演奏パートを演奏する。このとき、楽器を演奏するユーザは、自らの演奏を録音し、インターネットなどを介して録音した演奏情報を遠隔地のユーザに提供する。そして、演奏情報の提供を受けたユーザが、複数の演奏情報に対してミキシングなどの処理を行って楽曲を作成するのである。
【0003】
また、非特許文献1は、P2P(ピアツーピア)接続を用いて、離れた場所で楽器を演奏している複数のユーザをリアルタイムで共演させることができるシステムを開示している。
【0004】
また、非特許文献2は、携帯電話を用いてロックバンドやオーケストラなどが演奏する楽曲を合奏することができるシステムを開示している。具体的には、複数のユーザが同じ場所に集合し、各ユーザは、楽曲に対応する楽譜を簡略化した簡易譜面をダウンロードした携帯電話を用いて、表示される簡易譜面に基づいて演奏操作を行う。これにより、携帯電話のユーザは、リアルタイムで楽曲の合奏を疑似的に行うことができる。
【0005】
また、非特許文献3は、非特許文献2が開示するシステムと同様に、ロックバンドやオーケストラなどが演奏する楽曲を、無線端末を用いて合奏することができるシステムを開示している。このシステムでは、ユーザの演奏能力に従って演奏レベルを設定することができる。また、各無線端末のユーザは、無線端末を用いてオリジナルな楽譜を作成することができるとともに、無線端末の通信機能を用いて作成した楽譜をユーザ間でやりとりすることも可能である。
【0006】
【非特許文献1】“WIRED VISION 世界中の「在宅ミュージシャン」とリアルタイムで共演”、[平成19年5月29日検索]、インターネットURL<http://wiredvision.jp/news/200705/2007051622.html>
【非特許文献2】“「発信メロディプロジェクト発動!」”、[平成19年6月7日検索]、インターネットURL<http://dwango.jp/sp/hassin/index.html?cp_webto=pctop>
【非特許文献3】“「大合奏!バンドブラザーズ」”、[平成19年6月8日検索]、インターネットURL<http://www.nintendo.co.jp/ds/abbj/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の非特許文献1が開示するシステムは、楽器を演奏する複数のユーザをリアルタイムで共演させる機能の他に、ユーザの演奏を録音する録音機能を有している。非特許文献1に開示するシステムを利用するユーザは、上記の録音機能を利用して、各自の演奏を演奏情報として録音し、録音した演奏情報の提供を受けたユーザが、これらの演奏情報に対してミキシング等の処理を施して楽曲を作成することができる。
【0008】
しかしながら、上述した非特許文献1が開示するシステムは、楽器の演奏能力を有する複数のユーザが使用することが前提となっている。このため、楽器の演奏能力を有していないユーザが上記の非特許文献1が開示するシステムを用いることができない。したがって、楽器の演奏能力を有しないユーザが、非特許文献1が開示するシステムを用いて楽曲を作成または合奏をすることは非常に困難であるという問題があった。
【0009】
また、上述したように、非特許文献2および非特許文献3が開示するシステムは、ユーザが所持する携帯電話などに簡易譜面を送信し、ユーザが簡易譜面に従って携帯電話などを操作することで、楽曲の合奏を疑似的に体験できるシステムである。しかしながら、非特許文献2および非特許文献3が開示するシステムを利用するユーザは、同じ場所に集合する必要がある。また、合奏した楽曲を広く公開するためには、非特許文献2および非特許文献3が開示するシステムの他に、合奏した楽曲を録音する録音手段を予め別に用意しなければならないという問題があった。
【0010】
また、上述の非特許文献が開示するシステムでは、演奏する楽器の演奏パートが予め決められている。したがって、合奏に参加する人数が少ない場合、全ての演奏パートに対してユーザを割り当てることができない。また、合奏に参加する人数が多すぎる場合、特定の演奏パートを演奏するユーザの数が多すぎるために、合奏時の演奏パートのバランスがくずれることがある。このように、上述の非特許文献が開示するシステムでは、合奏に参加するユーザの数に応じた演奏パートの割り当てを変更することが難しいという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、本発明は、楽器を演奏することができないユーザであっても、遠隔地にいながら容易に楽曲の合奏を疑似的に体験することができ、さらに合奏した楽曲を録音して公開することができる楽曲合奏公開システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、一つ以上の端末と、前記一つ以上の端末とネットワークで接続されたサーバとを備える楽曲合奏公開システムであって、各端末は、各端末が担当する演奏パートに係る演奏情報に記録されている演奏音符の再生タイミングを、演奏操作タイミングとしてユーザに通知する通知手段と、前記演奏音符を、演奏操作情報が入力されたタイミングで再生する再生手段と、前記演奏操作情報が入力されたタイミングに基づいて、再生された演奏音符を演奏記録情報として記録する記録手段と、を備え、前記サーバは、予め保持する楽曲情報から前記演奏情報を抽出して各端末に設定する演奏情報設定手段と、各端末から送信された前記演奏記録情報を合成して、合成楽曲情報を作成する合成手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の楽曲合奏公開システムにおいて、前記演奏情報設定手段は、前記一つ以上の端末の数に応じて前記楽曲情報から前記演奏情報を抽出する抽出手段、を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の楽曲合奏公開システムにおいて、前記演奏情報設定手段は、前記楽曲情報から所定数の演奏情報を抽出して、前記一つ以上の端末の数に応じて前記演奏情報を各端末に設定する設定手段、を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、前記通知手段は、それぞれの演奏音符に対して、前記演奏操作タイミングを通知することを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、前記通知手段は、連続して記録されている複数の演奏音符で構成された演奏音符群に対応する演奏操作タイミングとして、前記演奏音符群の先頭の演奏音符の再生タイミングのみを通知し、前記再生手段は、前記最初の演奏音符に対応する前記演奏操作情報が入力された場合、前記複数の演奏音符を連続して再生することを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、前記再生手段は、他の演奏パートに係る伴奏情報を再生する手段、を含み、前記通知手段は、前記伴奏情報の再生タイミングと前記演奏音符の再生タイミングとを同期させて、前記演奏操作タイミングを通知する手段、を含み、前記記録手段は、前記演奏操作情報が入力されたタイミングに対応する演奏時刻情報を前記伴奏情報に記録された時刻情報に基づいて取得し、前記再生された演奏音符と前記演奏時刻情報とを対応付けて記録することを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項6に記載の楽曲合奏公開システムにおいて、前記演奏情報設定手段は、前記楽曲情報から前記伴奏情報を抽出して各端末に設定する手段、を含み、前記合成手段は、各端末から送信された前記演奏記録情報を合成するための基準時刻情報として、前記伴奏情報に記録された時刻情報を用いることを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、各端末は、さらに、音声を入力する音声入力手段、を備え、前記記録手段は、前記音声入力手段に入力される音声情報を、前記演奏記録情報として記録することを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、前記サーバは、インターネットを通じて前記合成楽曲情報を配信することを特徴とする。
【0021】
請求項10記載の発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、各端末は、携帯電話であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の楽曲合奏公開システムによれば、各端末の通知手段は、再生される伴奏情報と同期した演奏情報の再生タイミングを、演奏操作タイミングとして通知する。また、各端末の再生手段は、演奏操作情報が入力されたタイミングで、演奏情報に記録された演奏音符を再生する。また、記録手段は、演奏操作情報が入力されたタイミングで演奏音符を記録し、演奏記録情報として保存する。これにより、各端末のユーザは、それぞれ個別に各楽器に対応する演奏パートを演奏し、その演奏を録音することで、遠隔地にいながら疑似的に合奏演奏を体験することができる。
【0023】
また、演奏情報設定手段は、楽曲合奏公開システムに参加する端末の数に応じて演奏情報を設定する。また、通知手段は、演奏情報に記録されている演奏音符の内容に応じて、演奏操作タイミングの通知内容を変更する。これにより、端末の数に応じた演奏情報の設定の変更や、演奏操作レベルの変更に柔軟に対応できるため、楽器の演奏ができないユーザや、演奏情報を利用した演奏に慣れていないユーザでも、遠隔地にいながら疑似的に楽曲合奏を体験することができる。
【0024】
また、サーバの合成手段は、各端末から送信された演奏記録情報を、伴奏情報に記録された時間情報に基づいて合成して合成楽曲情報を作成する。このように、演奏記録情報は、クオンタイズ等をされることなくそのまま合成されるため、無線端末のユーザは、マスタ情報である楽曲情報と比較しても、オリジナリティのある合成楽曲情報を作成するとともに、作成した合成楽曲情報を、合奏した楽曲として公開することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<楽曲合奏公開システムの全体構成>
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る楽曲合奏公開システムの全体構成図である。図1に示す楽曲合奏公開システムは、複数の無線端末10,10・・・と、楽曲サーバ20とによって構成される。
【0026】
複数の無線端末10,10・・・のうちの1台は、ホスト端末10Hとして設定されている。そして、ホスト端末10Hを除く無線端末10は、クライアント端末10Cとして動作する。図1では、1台のホスト端末10Hと、3台のクライアント端末10C1,10C2,10C3とから楽曲合奏公開システムが構成されている。
【0027】
以下の説明において、ホスト端末10Hとクライアント端末10Cとを特に区別せず、共通の機能、性質を説明するときには、無線端末10と総称することとする。また、各クライアント端末10C1〜10C3を特に区別せず、共通の機能、性質を説明するときには、クライアント端末10Cと総称することとする。
【0028】
ホスト端末10Hおよびクライアント端末10Cは、それぞれが担当する演奏パートの演奏、および演奏の記録という点では、同じ役割を有する端末であるが、システムの動作を設定する役割などが異なる。
【0029】
また、ホスト端末10Hおよびクライアント端末10Cとは、ユーザが手に持って操作可能な携帯電話である。図1の例であれば、1人のユーザがホスト端末10Hを持ち、後の3人のユーザがクライアント端末10C1〜10C3をそれぞれ持って操作を行う。また、図1に示す楽曲合奏公開システムにおいて、無線端末10のユーザは、同じ場所に集合して操作してもよいし、それぞれの自宅などで操作してもよい。
【0030】
楽曲サーバ20は、無線端末10のユーザがそれぞれ演奏する演奏パートに係る演奏情報を保持しており、無線端末10に演奏情報をそれぞれ配信するサーバである。また、楽曲サーバ20は、演奏情報を利用した演奏を記録した演奏記録情報を合成し、合成楽曲情報を作成する。このため、各無線端末10のユーザが演奏情報を利用して演奏パートを演奏する際に、楽曲サーバ20は無線端末10の動作に関与しない。
【0031】
<無線端末の構成>
図2は、無線端末10のブロック図である。つまり、ホスト端末10Hとクライアント端末10Cに共通の機能ブロック図である。無線端末10は、制御部100と、モニタ101と、操作部102と、スピーカ103と、マイク104と、記憶部105と、無線部106とを備える。
【0032】
制御部100は、CPUやRAMなどを備え、無線端末10の全体制御を行う。制御部100は、また、タイミング通知部111と、音楽再生部112と、記録部113とを備えている。タイミング通知部111は、演奏情報を利用した演奏時において、ユーザが演奏操作情報を入力すべきタイミングを、モニタ101に対してグラフィカル表示させてユーザに通知する。音楽再生部112は、ユーザが演奏操作情報を入力したタイミングに基づいて演奏情報PIに記述された演奏音を再生する。音楽再生部112が再生する演奏音は、スピーカ103から出力される。記録部113は、演奏操作情報が入力されたタイミングで演奏情報PIに記述された演奏音を記録し、演奏記録情報RIとして記憶部105に保存する。
【0033】
モニタ101は、ユーザが演奏操作情報を入力すべきタイミングや、演奏情報PIの再生状態など、各種の情報表示に用いられる。また、モニタ101は、タッチパネル式ディスプレイであってもよい。この場合、操作部102は、モニタ101にソフトウェアキーとして表示される。
【0034】
操作部102は、テンキーなどの複数のボタンで構成される。無線端末10のユーザは、操作部102を操作して、演奏操作情報や設定情報などの各種の操作情報を入力する。
【0035】
マイク104は、音声入力用のインターフェースである。また、記憶部105は、楽曲サーバ20からダウンロードした演奏情報PIおよび伴奏情報AIと、演奏記録情報RIを保存する。また、無線部106は、楽曲サーバ20と無線通信を行う。
【0036】
<楽曲サーバの構成>
次に、楽曲サーバ20の構成について、図3を用いて説明する。図3は、楽曲サーバ20のブロック図である。楽曲サーバ20は、楽曲保存部201と、演奏情報生成部202と、コンテンツ保持部203と、合成部204と、記録情報保存部205と、配信部206と、通信部207とを備える。
【0037】
楽曲保存部201は、様々な楽曲を楽曲情報SIとして保存する。ホスト端末10Hのユーザは、ウェブブラウザ等を介して楽曲情報SIを、楽曲保存部201から選択する。
【0038】
演奏情報生成部202は、選択された楽曲情報SIを楽曲保存部201から取得し、ホスト端末10Hから送信される配信情報DIに基づいて、楽曲情報SIから演奏情報PIおよび伴奏情報AIを作成する。
【0039】
コンテンツ保持部203は、選択された楽曲情報SIと、演奏情報生成部202が作成した演奏情報PIおよび伴奏情報AIとを保持する。また、コンテンツ保持部203は、演奏情報PIおよび伴奏情報AIを、ホスト端末10Hおよびクライアント端末10Cに配信するための配信情報DIを保存している。
【0040】
合成部204は、各無線端末10から送信された演奏記録情報RIを合成して合成楽曲情報MIを作成する。記録情報保存部205は、各無線端末10から送信された演奏記録情報RIと、合成部204が作成した合成楽曲情報MIとを保存する。
【0041】
配信部206は、演奏情報PIおよび合成楽曲情報MIの保存先URLを、各無線端末10に通知するとともに、各無線端末10から受信した演奏情報PIの取得要求に応じて、演奏情報PIおよび伴奏情報AIを各無線端末10に送信する。
【0042】
通信部207は、インターネット30を介して接続する各無線端末10との間で、TCP/IPなどのプロトコルを利用してデータの送受信を行う。
【0043】
<演奏情報と演奏情報を用いた演奏>
次に、演奏情報PIの内容について説明する。演奏情報PIとは、各無線端末10に割り当てられた演奏パートに対応した情報であり、各無線端末10が出力する楽器音に関する情報を記述した情報である。演奏情報PIとしては、たとえば、MIDIデータが利用可能である。つまり、演奏情報PIは、楽譜情報を含んでいる。音楽再生部112は、演奏情報PIに従って、演奏音を再生することが可能である。ここでいう演奏音とは、発音する音の音階や音の長さなどを示した演奏音符に対応する情報のことを指す。演奏情報PIとしてMIDIデータを利用する場合、音楽再生部112は、MIDI音源データを有している。
【0044】
次に、ユーザが演奏情報PIを用いた演奏を行う際の、タイミング通知部111および音楽再生部112の処理について説明する。
【0045】
具体的には、まず、音楽再生部112が、演奏操作情報の入力の有無に関わらず、伴奏情報AIを連続的に再生する。なお、伴奏情報AIは、伴奏演奏のパートに対応する演奏情報PIのことである。また、音楽再生部112は、演奏情報PIを連続的に再生するのではなく、ユーザによって入力される演奏操作情報に基づいて、演奏情報PIに記述された演奏音ごとに再生する。
【0046】
また、タイミング通知部111が、伴奏情報AIの再生タイミングと演奏情報PIに記述された演奏音の演奏タイミングとを同期させる。そして、タイミング通知部111は、演奏タイミングを、伴奏情報AIに合わせて演奏操作情報を入力すべきタイミングとしてユーザに通知する。このとき、タイミング通知部111は、演奏タイミングをモニタ101にグラフィカル表示させる。
【0047】
また、音楽再生部112は、ユーザによって入力された演奏操作情報を検出する。そして、演奏操作情報の入力タイミングと演奏タイミングとが一致した場合、音楽再生部112は、演奏情報PIに記述された演奏音をスピーカ103に出力する。一方、入力タイミングと演奏タイミングとが一致しない場合、音楽再生部112は、たとえば、入力タイミングに一番時間的に近い演奏タイミングに対応する演奏音を再生する。
【0048】
このように、「演奏情報PIを利用した演奏」とは、演奏操作情報の入力タイミングに応じて、演奏情報PIに記述された演奏音を再生することをいう。このため、演奏情報PIに記述された演奏音が実際に再生されるタイミングは、ユーザの演奏操作に依存する。このため、演奏操作情報の入力タイミングによっては、演奏情報PIに記述された演奏音のうち、再生されない演奏音が発生する場合がある。したがって、無線端末10のユーザは、演奏情報PIを利用した演奏であっても、オリジナリティのある演奏をすることが可能となり、実際に特定の演奏パートを演奏しているような体感を得ることができるのである。
【0049】
<楽曲情報>
上述したように、演奏情報PIは、各無線端末10に割り当てられる演奏パートごとの情報である。これら演奏情報PIの集合が楽曲情報SIである。つまり、楽曲情報SIは、全演奏パートの演奏情報PIを全て記述した情報である。
【0050】
楽曲情報SIは、演奏情報PIの集合であるとともに、ヘッダ情報SIHを有している。図4は、ヘッダ情報SIHの記述内容を示す図である。ヘッダ情報SIHには、楽曲合奏公開システムに参加している無線端末10の数に応じて、演奏パートをどのように割り振るかの規則が記述されている。
【0051】
次に、図4に示す各トラックについて説明する。図4に示すように、楽曲情報SIで記録されている楽曲は、トラックT1からトラックT5までの5つの演奏パートからなっている。これらの演奏パートは、バイオリンや、ピアノなどの各楽器に対応した演奏パートである。したがって、楽曲情報SIには、これら各トラックT1〜T5に対応した演奏情報PIが含まれている。
【0052】
図4に示すように、トラックT2〜T5は、無線端末10の数に応じて割り当てられる演奏パートである。たとえば、楽曲合奏公開システムに参加している無線端末10の数が2台であれば、ヘッダ情報SIHは、ID=1の無線端末10にトラックT2およびT4を割り当て、ID=2の無線端末10にトラックT3およびT5を割り当てるように規定される。
【0053】
また、楽曲合奏公開システムに参加している無線端末10の数が3台であれば、ヘッダ情報SIHは、ID=1の無線端末10にトラックT2およびT5を割り当て、ID=2の無線端末10にトラックT3を割り当て、ID=3の無線端末10にトラックT4を割り当てるように規定される。
【0054】
このように、楽曲の合奏に参加する無線端末10の数がトラックの数より少ない場合、無線端末10に複数のトラックを割り当てることができる。
【0055】
なお、楽曲の合奏に参加する無線端末10の数がトラックの数より多い場合、一つのトラックに複数の無線端末10を割り当ててもよい。また、無線端末10の数がトラックの数より多い場合、トラックを時間で分割し、無線端末10ごとに分割されたトラックを割り当ててもよい。トラックを時間で分割する方法としては、たとえば、各フレーズの再生開始時間と再生終了時間とでトラックを分割することなどが考えられる。この場合、トラックを分割する条件に基づいて、分割された各トラックに対応する伴奏情報AIを作成すればよい。
【0056】
なお、図4に示すヘッダ情報SIHにおいて、トラックT1は、各無線端末10に共通の伴奏演奏用のトラックとして規定されている。なお、伴奏演奏用のトラックは、伴奏情報AIに対応する。また、伴奏演奏用のトラックをトラックT1に固定する必要はなく、各無線端末に演奏情報PIとして割り当てられるトラック以外であればどのトラックでもよい。たとえば、トラックT2に対応する伴奏演奏用のトラックを、トラックT1、およびT3〜T5のうちのいずれか一つ、または複数のトラックの組み合わせとしてもよい。この場合、トラックT1は、演奏情報PIとして無線端末10に割り当てるように規定される。
【0057】
なお、上述の各トラックに割り当てられた無線端末10のIDは、ヘッダ情報SIHを取得したホスト端末10Hにおいて設定される。つまり、ホスト端末10Hは、楽曲合奏公開システムに参加している無線端末10の数に応じて、各無線端末10にIDを割り振る。通常は、ホスト端末10Hは、自装置を含めた全無線端末10にIDを割り振る。あるいは、ホスト端末10Hは、設定用端末という位置づけにし、クライアント端末10Cに対してのみIDを割り振り、クライアント端末10Cのみで演奏情報PIを再生するようにしてもよい。
【0058】
<楽曲システムの処理の流れ>
以下の説明では、図1に示す4台の無線端末10のユーザが楽曲合奏公開システムを利用する場合を例にして、本実施の形態の楽曲合奏公開システムの処理の流れを説明する。また、無線端末10のユーザが無線端末10を操作する場所は、問わないものとする。
【0059】
なお、楽曲合奏公開システムを利用するユーザの中の一人が所持する無線端末10が、ホスト端末10Hとして使用される。また、他のユーザが所持する無線端末10は、クライアント端末10Cとして使用される。また、ホスト端末10Hに、各無線端末10のメールアドレスが登録されているものとする。
【0060】
まず、無線端末10のユーザは、タイミング通知部111、音楽再生部112、記録部113などの機能を有するアプリケーションプログラムを楽曲サーバ20からダウンロードし、無線端末10にインストールする。なお、上記のアプリケーションプログラムが既に無線端末10にインストールされている場合、ユーザは上述の作業を行う必要はない。
【0061】
次に、ホスト端末10Hのユーザは、アプリケーションプログラムを起動させ、アプリケーションプログラムを介して楽曲サーバ20にアクセスする。そして、ホスト端末10Hのユーザは、楽曲保存部201から楽曲情報SIを選択する。楽曲サーバ20は、楽曲情報SIを選択したユーザごとにコンテンツ保持部203を作成し、作成したコンテンツ保持部203に楽曲情報SIを保存する。そして、楽曲サーバ20は、選択された楽曲情報SIに含まれるヘッダ情報SIHをホスト端末10Hに送信する。以下、アプリケーションプログラムにおける動作を、タイミング通知部111、音楽再生部112、記録部113、または制御部100の動作として説明する。
【0062】
次に、ホスト端末10Hの制御部100は、無線端末10の数と、受信したヘッダ情報SIHとに基づいて、各無線端末10にIDを割り当てる。各無線端末10に対するIDの割り当ては、ホスト端末10Hのユーザが手動で行ってもよいし、ホスト端末10Hの制御部100が自動で行ってもよい。そして、ホスト端末10Hの制御部100は、各無線端末10のメールアドレスと各無線端末10に割り当てられたIDとを対応付けた配信情報DIを楽曲サーバ20に送信する。このように、ホスト端末10Hは、各無線端末10にIDを割り当てる動作を行う点がクライアント端末10Cと異なる。
【0063】
楽曲サーバ20が配信情報DIを受信すると、演奏情報生成部202は、受信した配信情報DI、およびヘッダ情報SIHに基づいて、演奏情報PIおよび伴奏情報AIを生成する。そして、演奏情報生成部202は、生成した演奏情報PIおよび伴奏情報AIをコンテンツ保持部203に保存する。
【0064】
次に、楽曲サーバ20の配信部206は、演奏情報PIおよび伴奏情報AIのダウンロードが可能となったことを各無線端末10に通知する。たとえば、配信部206が、配信情報DIを参照して、各無線端末10にコンテンツ保持部203のURLを送信すればよい。なお、配信部206は、ホスト端末10Hのみにコンテンツ保持部203のURLを通知してもよい。この場合、ホスト端末10Hが、クライアント端末10Cにコンテンツ保持部203のURLを通知すればよい。
【0065】
楽曲サーバ20の配信部206がコンテンツ保持部203のURLを通知すると、無線端末10のユーザは、操作部102を操作してコンテンツ保持部203にアクセスし、演奏情報PIおよび伴奏情報AIをダウンロードする。このとき、楽曲サーバ20は、各無線端末10に対して、それぞれに割り当てられたIDに対応する演奏情報PIおよび伴奏情報AIのダウンロードのみを許可する。
【0066】
そして、各無線端末10のユーザは、ダウンロードした演奏情報PIおよび伴奏情報AIを利用して演奏パートの演奏を行う。このとき、無線端末10のユーザは、集合して演奏情報PIを利用した演奏を行う必要はなく、たとえば、自宅などで演奏情報PIを利用した演奏を行うことができる。
【0067】
ここで、図5を用いて、演奏情報を利用した演奏時の無線端末10の操作、および演奏情報を利用した演奏時の記録部113の動作について説明する。図5は、演奏情報PIを利用した演奏時における、無線端末10のモニタ101の表示例を示す図である。
【0068】
まず、無線端末10の操作について説明する。最初に、ユーザは、ダウンロードしたアプリケーションプログラムを起動させる。そして、アプリケーションプログラムに対して、ユーザの操作により演奏情報PIおよび伴奏情報AIが設定される。
【0069】
次に、タイミング通知部111は、図5に示すように、選択された演奏情報PIに基づいた演奏用楽譜PISをモニタ101に表示させる。図5に示す演奏用楽譜PISに記載された音符が、演奏情報PIに記述された演奏音に対応する。これにより、無線端末10は、演奏情報PIを利用した演奏の待機状態となる。このとき、モニタ101において、演奏情報PIの演奏位置を示すポインタPは、演奏用楽譜PISの先頭位置を指している。なお、図5では、演奏情報PIを利用した演奏が途中まで進行した状態を示している。このため、ポインタPは、演奏用楽譜PISの途中に記載された音符を指している。また、ユーザは、模範演奏として演奏情報PIを自動再生させ、自身が担当する演奏パートの内容を予め確認してもよい。
【0070】
そして、演奏開始の指示ボタンである「#」キー123をユーザが押すと、演奏情報PIを利用した演奏が開始される。具体的には、音楽再生部112が伴奏情報AIの再生を開始するとともに、タイミング通知部111は、伴奏情報AIの再生と同期させて、モニタ101に表示された演奏用楽譜PISを右から左方向に移動させる。これにより、ポインタPが演奏用楽譜PISを指示する位置が変化する。なお、モニタ101の下側に表示されている数字は、左から順に、ポインタPが演奏用楽譜PISを指示している小節の通し番号、ポインタPが指示する小節内の拍数、および演奏時間に対応する。
【0071】
ユーザは、演奏用楽譜PIS中の音符をポインタPが指示するタイミングで、「2」キー127を押す。ここで、「2」キー127の押下は、演奏情報PIの演奏操作情報が入力されたことを意味する。音楽再生部112は、ユーザが入力した演奏操作情報に応じて、演奏情報PIの記述された演奏タイミングのうち、ユーザが「2」キー127を押すタイミングに一番近い演奏タイミングに対応する演奏音を再生する。このように、ユーザは、適切なタイミングで「2」キー127を押すことによって、演奏情報PIを利用して演奏することができる。また、ユーザは、「2」キー127を押す操作に代えて、図5に示す「1」キー〜「6」キーのいずれかのキーを押してもよい。
【0072】
なお、ユーザは、「*」キー121を押すことによって演奏を途中で中断することも可能である。このとき、ユーザが「*」キー121を押すと、タイミング通知部111は演奏用楽譜PISの移動を一時的に停止し、音楽再生部112は伴奏情報AIの再生を一時的に停止する。そして、ユーザは、もう一度「*」キー121を押すことによって、タイミング通知部111と音楽再生部112は、上記の動作を再開する。また、ユーザは、「*」キー121を押した後に「0」キー122を押すことによって、演奏をリセットし、演奏情報PIを利用した演奏を最初からやり直すこともできる。
【0073】
次に、記録部113の動作について詳しく説明する。ユーザが「#」キー123を押して、演奏情報PIを利用した演奏が開始されると同時に、記録部113は、演奏情報PIを利用した演奏の記録を開始する。具体的には、記録部113は、入力される演奏操作情報に応じて再生される、演奏情報PIに記述された演奏音を、演奏操作情報が入力されるタイミングで記録する。つまり、記録部113は、スピーカ103から出力された音声そのものの録音を行わない。
【0074】
記録部113は、伴奏情報AIに記述された時刻情報を用いて、演奏情報PIに記述された演奏音を記録する。ここで、時刻情報とは、演奏情報PIまたは伴奏情報AIに記述された演奏音の演奏タイミングを、再生開始時刻からの経過時間で記述したものである。
【0075】
つまり、記録部113は、演奏操作情報が入力されたタイミングに対応する演奏時刻情報を、伴奏情報AIの再生開始時刻からの経過時間として取得する。そして、記録部113は、演奏情報PIに記述された演奏音と、その演奏音が再生されたタイミングを示す演奏時刻情報とを対応付けて記録する。
【0076】
以下、楽曲システムの処理の流れに戻って説明を続ける。
【0077】
演奏情報PIを利用した演奏が終了すると、記録部113は、記録した演奏音を演奏記録情報RIとして保存する。その後、ユーザは、演奏記録情報RIを再生して、演奏情報PIを利用した演奏の内容を確認する。このとき、無線端末10のユーザは、「2」キー127を押すタイミングを誤り、正確な演奏ができなかった場合などに、再度、演奏情報PIを利用して演奏パートを演奏してもよい。また、演奏パートの特定のフレーズに対応した演奏情報PIの一部のみを再度演奏してもよい。
【0078】
なお、自分の演奏内容を確認するための操作方法としては、以下のような操作が挙げられる。たとえば、演奏記録情報RIのみを再生したい場合、「7」キー124を押せばよいし、演奏記録情報RIと伴奏情報AIとを合わせて再生する場合、「8」キー125を押せばよいし、伴奏情報AIのみを再生したい場合は、「9」キー126を押せばよい。
【0079】
そして、演奏記録情報RIの確認後、無線端末10のユーザは、操作部102を操作して演奏記録情報RIを楽曲サーバ20にアップロードする。楽曲サーバ20は、無線端末10からアップロードされた演奏記録情報RIを、記録情報保存部205に保存する。
【0080】
なお、無線端末10に複数の演奏パートが割り当てられている場合、無線端末10のユーザは、複数の演奏情報PIをダウンロードする必要がある。そして、ダウンロードした演奏情報PIごとに、上述の操作を行えばよい。
【0081】
そして、楽曲サーバ20は、全ての演奏パートに対応する演奏記録情報RIがアップロードされたことを確認すると、演奏記録情報RIのマージが可能となったことをホスト端末10Hのユーザに通知する。
【0082】
ホスト端末10Hのユーザは、操作部102を操作して楽曲サーバ20にアクセスし、演奏記録情報RIのマージを指示する。楽曲サーバ20の合成部204は、マージの指示を受けて、各無線端末10からアップロードされた演奏記録情報RIをマージして、合成楽曲情報MIを作成する。このとき、合成部204は、各演奏記録情報RIに対するクオンタイズ(演奏記録情報RIに記述された演奏音の演奏タイミングの調整)などの処理を行うことなく演奏記録情報RIをマージする。そして、作成された合成楽曲情報MIは、記録情報保存部205に保存される。また、合成部204は、MIDI SMFやCompact MIDI DATA,mp3などの各種フォーマットに対応させて合成楽曲情報MIを作成することができる。
【0083】
なお、上述したように、演奏記録情報RIは、伴奏情報AIの時刻情報と同一の時刻情報を用いて記録されている。このため、各無線端末10で記録された演奏記録情報RIは、同一の時刻情報を用いて記録されていると考えることができる。したがって、合成部204は、演奏記録情報RI同士の時刻同期処理を行う必要はなく、伴奏情報AIに記述された時刻情報を基準時刻情報として演奏記録情報RIをマージする。
【0084】
次に、配信部206は、無線端末10の各ユーザが演奏パートの録音が終了したことと、合成楽曲情報MIが作成されたことを無線端末10に通知する。このとき、配信部206は、合成楽曲情報MIの保存先URLを同時に通知する。無線端末10のユーザは、操作部102を操作して、楽曲サーバ20にアクセスする。そして、無線端末10のユーザは、合成楽曲情報MIをダウンロードし、ダウンロードした合成楽曲情報MIを再生させる。なお、ホスト端末10Hのユーザは、記録情報保存部205をプライベートサイトやパブリックサイトとして公開することで、合成楽曲情報MIなどを第三者が視聴できるようにしてもよい。また、合成楽曲情報MIに画像やメッセージなどを添付して、第三者に提供してもよい。
【0085】
以上説明したように、本実施の形態の楽曲合奏公開システムにおいて、各無線端末10のユーザは、ダウンロードした演奏情報PIを利用して演奏パートを個別に演奏し、同時に演奏情報を利用した演奏を記録する。これにより、無線端末10のユーザは、楽曲の演奏パートの演奏を疑似的に体験することができる。また、ユーザによって個別に記録された演奏情報PIを利用した演奏を記録し、記録した演奏記録情報RIを合成して合成楽曲情報MIを作成する。これにより、遠隔地にいる複数のユーザが疑似的な合奏演奏をすることが可能となる。また、演奏記録情報RIに対してクオンタイズなどの処理を行うことなく合成楽曲情報MIを作成する。これにより、マスタ情報である楽曲情報SIと比較してオリジナリティのある合成楽曲情報MIを、合奏した楽曲として公開することができる。
【0086】
なお、上記実施の形態において、ユーザは、演奏情報PIを利用した演奏を行うものとして説明したが、これに限られるものではなく、マイク104を介して音声を入力してもよい。たとえば、楽器の演奏パートの他にボーカルパートを作成し、特定の無線端末10にボーカルパートを割り当てればよい。この場合、ボーカルパートの旋律や歌詞などをモニタ101に表示させ、モニタ101の表示に従って音声を入力すればよい。また、他の例として、コーラスパートを作成してもよい。この場合、複数の無線端末10にコーラスパートを割り当てることになる。これにより、さらにオリジナリティのある楽曲を作成することが可能となる。
【0087】
また、上記実施の形態において、ホスト端末10Hの制御部100が、楽曲サーバ20から送信されたヘッダ情報SIHに基づいて、各無線端末10にIDを割り当てると説明したが、これに限られるものではない。たとえば、楽曲サーバ20は、ヘッダ情報SIHをホスト端末10Hに送信しなくてもよい。この場合、ホスト端末10Hは、各無線端末10の数と、各無線端末10のメールアドレスとを、配信情報DIとして楽曲サーバ20に通知すればよい。そして、楽曲サーバ20の演奏情報生成部202が、受信した配信情報DIとヘッダ情報SIHとに基づいて、各無線端末10にIDを割り当てればよい。
【0088】
また、上記実施の形態において、楽曲サーバ20の配信部206が、各無線端末10に対して、割り当てられたIDに対応する演奏情報PIおよび伴奏情報AIのダウンロードのみを許可すると説明したが、これに限られるものではない。たとえば、各無線端末10のユーザが、演奏したい楽器に対応する演奏情報PIおよび伴奏情報AIをダウンロードしてもよい。この場合、演奏情報生成部202は、配信情報DIの受信することなく、演奏情報PIおよび伴奏情報AIを生成すればよい。この場合、ホスト端末10Hは、各無線端末10のメールアドレスのみを楽曲サーバ20に送信すればよい。
【0089】
また、上記実施の形態において、楽曲サーバ20が演奏情報PIおよび伴奏情報AIを作成するものとして説明したが、これに限られるものではなく、ホスト端末10Hが演奏情報PIおよび伴奏情報AIを作成してもよい。この場合、ホスト端末10Hが、作成した演奏情報PIおよび伴奏情報AIをクライアント端末10Cに送信する。
【0090】
また、上記実施の形態において、楽曲サーバ20が演奏情報PIおよび伴奏情報AIを作成するものとして説明したが、これに限られるものではなく、無線端末10が楽曲情報SIを保持し、ホスト端末10Hから送信されるIDに基づいて演奏情報PIおよび伴奏情報AIを作成してもよい。
【0091】
また、上記実施の形態において、複数の無線端末10が楽曲合奏公開システムに参加するものとして説明したが、一台の無線端末10で全ての演奏パートを担当してもよい。
【0092】
また、上記実施の形態において、無線端末10のユーザが演奏情報PIを利用した演奏時に、音階を指定する操作は行わないものとして説明したが、図5に示す無線端末10のテンキーに音階を割り当ててもよい。
【0093】
また、上記実施の形態において、一つの無線端末10に複数の演奏パートが割り当てられている場合、ユーザは、演奏情報PIごとに演奏情報PIを利用した演奏を行うものとして説明したが、これに限られるものではなく、複数の演奏情報PIを同時に利用した演奏を行ってもよい。
【0094】
しかし、複数の演奏情報PIを利用した演奏を行う場合、演奏操作情報の入力回数が増加するため、演奏情報PIを利用した演奏が困難になることが考えられる。このような場合、演奏情報生成部202が、ユーザが演奏操作情報を入力する必要のある演奏音に対して入力属性を付与すればよい。そして、タイミング通知部111が、演奏操作情報を入力すべきタイミングとして、入力属性が付与された演奏音の演奏タイミングを指示すればよい。
【0095】
三連符を例とした場合、三連符の1番目の音符に対応する演奏音に対して入力属性を付与し、2、3番目の音符に対応する演奏音には入力属性を付与しない。そして、複数の演奏情報PIを利用した演奏時に、ポインタPが三連符の1番目の音符を指示したタイミングで、ユーザが演奏操作情報を入力する。これにより、三連符の1番目の音符に対応する演奏音が再生され、続いて、2、3番目の音符に対応する演奏音が自動的に連続して再生される。つまり、2、3番目の音符に対応する演奏音は、演奏操作情報が入力されなくても再生される。
【0096】
このとき、2、3番目の音符に対応する演奏音は、1番目の音符に対応する演奏操作情報が入力されたタイミングを基準時間として再生される。つまり、2、3番目の音符に対応する演奏音は、1番目の音符に対応する演奏音の演奏タイミングと2、3番目の音符に対応する演奏音の演奏タイミングとの相対的な時間差、および基準時間に基づいたタイミングで再生される。
【0097】
また、モニタ101に表示される演奏用楽譜PISにおいて、入力属性のある音符と、入力属性のない音符とが異なる色で表示される。これにより、ユーザは、演奏操作情報を入力する必要のある音符を簡単に識別することができる。
【0098】
また、入力属性を付与する演奏音の例として連音符の先頭の演奏音を用いて説明したが、複数の演奏音符で構成されるフレーズの先頭の演奏音に入力属性を付与してもよい。
【0099】
なお、上述の演奏音に対する属性を、ユーザが設定した演奏レベルに基づいて付与してもよい。この場合、タイミング通知部111が、演奏用楽譜PISをモニタ101に表示させる際に、設定された演奏レベルに応じて演奏音に属性を付与すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本実施の形態に係る楽曲合奏公開システムの全体構成図である。
【図2】無線端末10のブロック図である。
【図3】楽曲サーバ20のブロック図である。
【図4】ヘッダ情報SIHの記述内容を示す図である。
【図5】演奏情報PIを利用した演奏時における、無線端末10のモニタ101の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
10 無線端末
10H ホスト端末
10C(10C1,10C2,10C3) クライアント端末
20 楽曲サーバ
100 制御部
105 記憶部
111 タイミング通知部
112 音楽再生部
113 記録部
202 演奏情報生成部
203 コンテンツ保持部
204 合成部
205 記録情報保存部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の端末と、前記一つ以上の端末とネットワークで接続されたサーバとを備える楽曲合奏公開システムであって、
各端末は、
各端末が担当する演奏パートに係る演奏情報に記録されている演奏音符の再生タイミングを、演奏操作タイミングとしてユーザに通知する通知手段と、
前記演奏音符を、演奏操作情報が入力されたタイミングで再生する再生手段と、
前記演奏操作情報が入力されたタイミングに基づいて、再生された演奏音符を演奏記録情報として記録する記録手段と、
を備え、
前記サーバは、
予め保持する楽曲情報から前記演奏情報を抽出して各端末に設定する演奏情報設定手段と、
各端末から送信された前記演奏記録情報を合成して、合成楽曲情報を作成する合成手段と、
を備えることを特徴とする楽曲合奏公開システム。
【請求項2】
請求項1に記載の楽曲合奏公開システムにおいて、
前記演奏情報設定手段は、
前記一つ以上の端末の数に応じて前記楽曲情報から前記演奏情報を抽出する抽出手段、
を含むことを特徴とする楽曲合奏公開システム。
【請求項3】
請求項1に記載の楽曲合奏公開システムにおいて、
前記演奏情報設定手段は、
前記楽曲情報から所定数の演奏情報を抽出して、前記一つ以上の端末の数に応じて前記演奏情報を各端末に設定する設定手段、
を含むことを特徴とする楽曲合奏公開システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、
前記通知手段は、それぞれの演奏音符に対して、前記演奏操作タイミングを通知することを特徴とする楽曲合奏公開システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、
前記通知手段は、連続して記録されている複数の演奏音符で構成された演奏音符群に対応する演奏操作タイミングとして、前記演奏音符群の先頭の演奏音符の再生タイミングのみを通知し、
前記再生手段は、前記最初の演奏音符に対応する前記演奏操作情報が入力された場合、前記複数の演奏音符を連続して再生することを特徴とする楽曲合奏公開システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、
前記再生手段は、
他の演奏パートに係る伴奏情報を再生する手段、
を含み、
前記通知手段は、
前記伴奏情報の再生タイミングと前記演奏音符の再生タイミングとを同期させて、前記演奏操作タイミングを通知する手段、
を含み、
前記記録手段は、前記演奏操作情報が入力されたタイミングに対応する演奏時刻情報を前記伴奏情報に記録された時刻情報に基づいて取得し、前記再生された演奏音符と前記演奏時刻情報とを対応付けて記録することを特徴とする楽曲合奏公開システム。
【請求項7】
請求項6に記載の楽曲合奏公開システムにおいて、
前記演奏情報設定手段は、
前記楽曲情報から前記伴奏情報を抽出して各端末に設定する手段、
を含み、
前記合成手段は、各端末から送信された前記演奏記録情報を合成するための基準時刻情報として、前記伴奏情報に記録された時刻情報を用いることを特徴とする楽曲合奏公開システム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、
各端末は、さらに、
音声を入力する音声入力手段、
を備え、
前記記録手段は、前記音声入力手段に入力される音声情報を、前記演奏記録情報として記録することを特徴とする楽曲合奏公開システム。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、
前記サーバは、インターネットを通じて前記合成楽曲情報を配信することを特徴とする楽曲合奏公開システム。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の楽曲合奏公開システムにおいて、
各端末は、携帯電話であることを特徴とする楽曲合奏公開システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−304821(P2008−304821A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153738(P2007−153738)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】