説明

楽音処理システム

【課題】楽音処理装置とシーケンサ及びエディタとの間で制御情報をループさせない。
【解決手段】この楽音処理システムでは、音源装置(楽音処理装置)TMと制御装置PCのシーケンサDA及びエディタEDとの間には第1及び第2のMIDIポート:Port1,Port4が設定され、シーケンサDAは第2ポート Port1で受信した情報を全て第1ポート Port1にエコーバックする。音源装置TMは、外部鍵盤装置KBから第1ポート Port1に入力された制御情報Msに音源装置宛てID:“7F”+“03”が付与されていると(Ms=Mst)、制御情報に基づく楽音処理を行い、エディタ宛てID:“7F”+“0B”が付与された制御情報Mseを生成して第2ポート Port4から出力する。制御装置PCでは、第2ポート Port4で受信した制御情報Msにエディタ宛てIDが付与されていると(Ms=Mse)音源エディタEDにより当該制御情報に基づいた処理が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、MIDIなどの制御情報を使って、電子音源装置や電子楽器などの楽音処理装置とシーケンサ機能及び音源エディタ機能を備えたパーソナルコンピュータなどの制御装置とを連携させた楽音処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子音源装置や電子楽器などの楽音処理装置とパーソナルコンピュータなどの制御装置とを連携させたシステムが知られており、例えば、非特許文献1,2には、パーソナルコンピュータ(パソコン)に、「DAW (Digital Audio Workstation)」と呼ばれるシーケンサ機能を搭載したり音源装置用エディタ機能をプラグインし、MIDIなどの制御情報を使って、電子音源装置とパソコン上のシーケンサ及びパソコン上の音源装置用エディタを連携させるシステムが開示されている。
【非特許文献1】「MOTIF XS6/MOTIF XS7/MOTIF XS8取扱説明書」(2007年ヤマハ株式会社)http://www2.yamaha.co.jp/manual/pdf/emi/japan/synth/motifxs_ja_om_c1.pdf
【非特許文献2】「MOTIF XSエディターマニュアル」(2007年ヤマハ株式会社)http://www2.yamaha.co.jp/manual/pdf/emi/japan/synth/motifxseditor_ja_om_v10a.pdf
【0003】
一般に、DAWを搭載したパソコンにおいては、複数のMIDIポートの夫々に電子楽器Aと音源機能を持たない外部鍵盤装置(或いは鍵盤付き電子楽器)Bとをつなぎ、音源機能を持たない外部鍵盤装置(或いは鍵盤付き電子楽器)Bの操作で電子楽器A(或いは電子楽器B自身)の音源が鳴るように、初期設定では、全てのポートの入力が、DAWに接続されている各ポートから出力されるようになっていることが多く、このようなポート設定は「エコーバック」と呼ばれる。従って、更に音源装置用エディタ機能を搭載した場合にも同様のポート設定にしておくと、システムエクスプルーシブ(SysEx)メッセージを用いて音源設定などを行う場合にSysExがループしてしまうことがある。
【0004】
例えば、SysExで音源設定などの制御情報を、音源機能を持たない外部鍵盤装置(或いは電子楽器)Bから電子楽器Aに送る際、電子楽器Aでは、音源専用ポート:Port1から入ってきたSysExは、音源装置用エディタとの同期のために、エディタ専用ポート:Port4にそのまま出力され、パソコンでは、Port4から入力された信号をDAW(シーケンサ機能部)で音源専用ポート:Port1に出力するようなポート設定にしておくと、SysExがループしてしまう。そして、このような事態に陥ると、DAWが動作しているパソコンと電子楽器Aは、MIDIメッセージをぐるぐると転送する処理で忙しくなり通常の動作が困難になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、このような事情に鑑み、MIDIメッセージなどの制御情報を使って、電子音源装置などの楽音処理装置とシーケンサ機能及び音源エディタ機能を備えた制御装置とを連携させる際に、両装置間で制御情報のループが起こらないようにすることができる楽音処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の主たる特徴に従うと、制御情報(Ms)を入力するための第1の楽音処理側入力ポート〔 Port1 In(T)〕及び制御情報(Ms)を出力するための楽音処理側出力ポート〔Port4 Out(T)〕を備えた楽音処理装置(TM)と、楽音処理側出力ポート〔Port4 Out(T)〕及び第1の楽音処理側入力ポート〔 Port1 In(T)〕にそれぞれ対応付けられた制御側入力ポート〔 Port4 In(P)〕及び第1の制御側出力ポート〔Port1 Out(P)〕を備えた制御装置(PC)とから成る楽音処理システムであって、楽音処理装置(TM)は、第1の楽音処理側入力ポート〔 Port1 In(T)〕から、楽音処理の内容を表わす制御情報(Ms)を取得し(T1=YES)、当該制御情報(Ms)について第1の識別情報(音源装置宛てID:“7F”+“03”)が付与されているか否かを判断する(T2)楽音処理側識別情報判断手段(T1,T2)と、第1の識別情報(音源装置宛てID)が付与されていると判断された制御情報(Ms=Mst)に基づいて楽音処理(音源部TGに反映)を行う(T2=YES,T3)と共に、当該制御情報(Ms=Mst)の第1の識別情報(音源装置宛てID)に代えて第2の識別情報(エディタ宛てID:“7F”+“0B”)が付与された制御情報(Ms=Mse)を生成し、楽音処理側出力ポート〔Port4 Out(T)〕から出力する(T4)第1の楽音処理手段(T2〜T4)とを具備し、制御装置(PC)は、制御側入力ポート〔 Port4 In(P)〕から、楽音処理の内容を表わす制御情報(Ms)を取得し(E1=YES)、当該制御情報(Ms)について第2の識別情報(エディタ宛てID)が付与されているか否かを判断する(E2)制御側識別情報判断手段(E1,E2)と、第2の識別情報(エディタ宛てID)が付与されていると判断された制御情報(Ms=Mse)に基づいて、対応する処理(内部状態を同期させ表示に反映)を行う(E2=YES,E3)第1の制御側処理手段(ED)と、制御側入力ポート〔 Port4 In(P)〕から取得された制御情報(Ms)を第1の制御側出力ポート〔Port1 Out(P)〕から出力する(D1〜D2)第2の制御側処理手段(DA)とを具備することを特徴とする楽音処理システム〔請求項1〕が提供される。なお、括弧書きは、理解の便のために、実施例の参照記号や用語等を付記したものであり、以下においても同様である。
【0007】
また、この発明による楽音処理システムにおいて、制御装置(PC)は、第2の制御側出力ポート〔Port4 Out(P)〕及び制御側入力操作手段(IN)を備え、第1の制御側処理手段(ED)は、制御側入力操作手段(IN)の操作に応じた処理(内部状態を変更し表示に反映)を行う(E5)と共に、当該操作に基づく制御情報(Ms)を第2の制御側出力ポート〔Port4 Out(P)〕から出力し(E6)、楽音処理装置(TM)は、第2の制御側出力ポート〔Port4 Out(P)〕に対応付けられた第2の楽音処理側入力ポート〔 Port4 In(T)〕を備え、第2の楽音処理側入力ポート〔 Port4 In(T)〕から制御情報(Ms)を取得し、当該制御情報(Ms)に基づいて楽音処理(音源部TGに反映)を行う第2の楽音処理手段(T8〜T10)を具備する〔請求項2〕ように構成することができる。
【0008】
さらに、この発明による楽音処理システムにおいて、楽音処理装置(TM)は、楽音処理側入力操作手段(14a)を備え、楽音処理側入力操作手段(14a)の操作に応じて楽音処理(音源部TGに反映)を行う(T6)と共に、当該操作に基づく楽音処理の内容を表わし第2の識別情報(エディタ宛てID)が付与された制御情報(Mse)を生成し、楽音処理側出力ポート〔Port4 Out(T)〕から出力する(T7)第3の楽音処理手段(T5〜T7)を具備する〔請求項3〕ように構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明の主たる特徴による楽音処理システムは(請求項1)、電子音源装置や電子楽器などの楽音処理装置(TM)と、楽音処理装置(TM)の音源部(TG)に設定される種々の楽音信号生成用パラメータを編集する音源エディタとして機能する第1の制御側処理手段(ED)及びシーケンサとして機能する第2の制御側処理手段(DA)を有するパーソナルコンピュータのような制御装置(PC)との間で、MIDIのシステムエクスクルーシブ(SysEx)メッセージのような所定のデータ形式で制御情報を授受し合って両装置(TM,PC)が連携するように構成されており、楽音処理装置(TM)には、音源部(TG)で取り扱われる制御情報を入力するための第1の楽音処理側入力ポート〔 Port1 In(T)〕と当該制御情報(Ms)を出力するための楽音処理側出力ポート〔Port4 Out(T)〕が設定され、制御装置(PC)には、楽音処理側出力ポート〔Port4 Out(T)〕に対応して制御側入力ポート〔 Port4 In(P)〕が設定され、第1の楽音処理側入力ポート〔 Port1 In(T)〕に対応して第1の制御側出力ポート〔Port1 Out(P)〕が設定されている。楽音処理装置(TM)では、外部鍵盤装置(KB)などから第1の楽音処理側入力ポート〔 Port1 In(T)〕に、楽音処理の内容を表わす制御情報(Ms)が入力され(T1=YES)、この制御情報(Ms)に第1の識別情報(音源装置宛てID:“7F”+“03”)が付与されていない場合は当該制御情報は破棄され(T2=NO)、第1の識別情報(音源装置宛てID)が付与されている場合に限って(T2=YES)、当該制御情報(Ms=Mst)に基づく楽音処理(音源部TGに反映)が行われる(T3)と共に、当該制御情報(Ms=Mst)の第1の識別情報(音源装置宛てID)に代えて第2の識別情報(エディタ宛てID:“7F”+“0B”)が付与された制御情報(Ms=Mse)を生成し、楽音処理側出力ポート〔Port4 Out(T)〕から出力する(T4)。これに対して、制御装置(PC)では、楽音処理装置(TM)から制御側入力ポート〔 Port4 In(P)〕を通じて、楽音処理の内容を表わす制御情報(Ms)が受信されると(E1=YES)、第1の制御側処理手段(ED)により、この制御情報(Ms)に第2の識別情報(エディタ宛てID)が付与されていない場合はこの制御情報は破棄され(E2=NO)、第2の識別情報(エディタ宛てID)が付与されている場合に限って(E2=YES)、当該制御情報に基づいて、対応する処理(内部状態を同期させ表示に反映)を行う(E3)。この場合、制御側入力ポート〔 Port4 In(P)〕から取得された制御情報(Ms=Mse)は、第2の制御側処理手段(DA)により第1の制御側出力ポート〔Port1 Out(P)〕から楽音処理装置(TM)の第1の楽音処理側入力ポート〔 Port1 In(T)〕へとエコーバックされるが(D1〜D2)、楽音処理装置(TM)では、第1の楽音処理側入力ポート〔 Port1 In(T)〕を通じて受信されても、第1の識別情報(音源装置宛てID)が付与されていないので破棄される(T2=NO)。従って、この発明によれば、MIDIメッセージなどの制御情報を使って、電子音源装置などの楽音処理装置とシーケンサ機能及び音源エディタ機能を備えた制御装置とを連携させる際に、楽音処理装置の第1の楽音処理側入力ポートから入力される制御情報について両装置間でループが起こらないようにすることができる。
【0010】
また、この発明による楽音処理システムにおいては(請求項2)、制御装置(PC)には第2の制御側出力ポート〔Port4 Out(P)〕が設定され、楽音処理装置(TM)には第2の制御側出力ポート〔Port4 Out(P)〕に対応して第2の楽音処理側入力ポート〔 Port4 In(T)〕が設定され、制御側入力操作手段(IN)の操作があった場合は(E4=YES)、第1の制御側処理手段(ED)により、この操作に応じた処理(内部状態を変更し表示に反映)が行われると共に(E5)、当該操作に基づく制御情報(Ms)を第2の制御側出力ポート〔Port4 Out(P)〕から出力し(E6)、楽音処理装置(TM)では、第1の制御側処理手段(ED)から第2の楽音処理側入力ポート〔 Port4 In(T)〕を通じて受信した制御情報(Ms)に基づき楽音処理(音源部TGに反映)が行われる(T8〜T10)。従って、この発明によれば、特に、制御装置上でのエディタ操作に基づいて音源エディタ機能部を動作させると共にエディタ操作の結果を楽音処理装置に反映させる楽音処理システムにおいて、両装置間で制御情報のループが起こらないようにすることができる。
【0011】
さらに、この発明による楽音処理システムにおいては(請求項3)、楽音処理装置(TM)に設けられた楽音信号生成用パラメータ調整用のノブ等のような楽音処理側入力操作手段(14a)の操作に応じて(T5=YES)、楽音処理装置(TM)での楽音処理(音源部TGに反映)が行われる(T6)と共に、この操作に基づく楽音処理の内容を表わし第2の識別情報(エディタ宛てID)が付与された制御情報(Mse)が生成され、楽音処理側出力ポート〔Port4 Out(T)〕から出力される(T7)。この制御情報(Mse)は、前述したように、制御装置(PC)の制御側入力ポート〔 Port4 In(P)〕を通じて受信され、第1の制御側処理手段(ED)で、対応する処理(内部状態を同期させ表示に反映)が行われ(E3)、第2の制御側処理手段(DA)により第1の制御側出力ポート〔Port1 Out(P)〕から楽音処理装置(TM)の第1の楽音処理側入力ポート〔 Port1 In(T)〕へとエコーバックされても(D1〜D2)、第1の識別情報(音源装置宛てID)が付与されていないので、楽音処理装置(TM)で破棄される(T2=NO)。従って、この発明によれば、さらに、楽音処理装置の入力操作手段の操作に基づいて入力される制御情報について両装置間でループが起こらないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつこの発明の好適な実施の形態について詳述するが、これは単なる一例であって、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0013】
〔システムの概要〕
この発明の一実施例による楽音処理装置は、音色データ(ボイスデータ)の編集を含む音楽情報処理機能を有する一種のコンピュータであり、電子音源装置(単に音源装置ともいう)や電子楽器のように楽音信号生成部を備える音楽専用機器が用いられる。図1は、この発明の一実施例による楽音処理システムの構成を説明するための図であり、図1(1)は、この発明の一実施例による電子音源装置(楽音処理装置)のハードウエア構成ブロック図である。この例では、楽音処理装置TMに電子音源装置が用いられ、電子音源装置TMは、中央処理装置(CPU)1、ランダムアクセスメモリ(RAM)2、読出専用メモリ(ROM)3、外部記憶装置4、検出回路(パネル操作検出回路、設定操作検出回路ともいう)5、表示回路6、音源回路7、効果回路8、通信インターフェース(I/F)9、MIDIインターフェース(I/F)10、USBインターフェース(I/F)11などを備え、これらの要素1〜11はバス12を介して互いに接続される。なお、楽音処理装置TMとして電子楽器を用いる場合には、破線で示すように、鍵盤などの演奏操作子と、演奏操作子の操作内容を検出し演奏操作の内容に応じた情報をデータ処理部(1〜3)に導入する演奏操作検出回路とから成る演奏操作部が追加的に設けられる。
【0014】
CPU1は、RAM2及びROM3と共にデータ処理部を構成し、所定の制御プログラムに従い、タイマ13によるクロックを利用して楽音処理を含む種々の音楽情報処理を実行する。RAM2は、これらの処理に際して必要な各種データを一時記憶するためのワーク領域として用いられ、ROM3には、これらの処理を実行するために必要な各種制御プログラムや制御データ、演奏データ等が予め記憶される。
【0015】
外部記憶装置4は、ハードディスク(HD)や、フラッシュメモリのような書換え可能な不揮発性の半導体メモリ、などの内蔵記憶媒体の外に、コンパクトディスク・リード・オンリィ・メモリ(CD−ROM)、フレキシブルディスク(FD)、光磁気(MO)ディスク、ディジタル多目的ディスク(DVD)、スマートメディア(登録商標)等の小型メモリカード、等々、種々の可搬性の外部記録媒体を含み、制御プログラムや制御データ、演奏データ等を含む任意のデータを任意の外部記憶装置4に記憶することができる。
【0016】
検出回路5は、スイッチやノブ等の操作子(パネル操作子、設定操作子ともいう)14と共にパネル操作部を構成し、パネル操作子14の操作内容を検出し、パネル操作の内容に対応する各種パネル設定情報をデータ処理部に導入する。表示回路6は、各種インジケータ(図示せず)やLCD表示器15の点灯/表示内容をCPU1からの指令に従って制御し、各種パネル操作に対する表示援助を行う。
【0017】
音源回路7は、DSPを有する効果回路8と共に楽音信号生成部(音源部ともいう)TGを構成し、外部鍵盤装置(KB)の演奏操作に基づく演奏データ(MIDI)に従ってオーディオ形式の楽音信号を生成し、効果回路8は、この楽音信号に所望の効果を付与する。そして、効果回路8に接続されたサウンドシステム16は、D/A変換部やアンプ、スピーカを備え、効果回路8からの楽音信号に基づく楽音を発生する。楽音信号生成部TGは、記憶手段3,4等からの演奏データに基づく楽音信号を生成することもできる。
【0018】
通信I/F9には、インターネットやローカルエリアネットワーク(LAN)などの通信ネットワークCNが接続され、外部のサーバコンピュータSV等から制御プログラムや演奏データをダウンロードし外部記憶装置4に保存してこの電子音源装置TMで利用することができる。
【0019】
MIDII/F10には、MIDIケーブルを介してこの電子音源装置TMと同様にMIDI音楽情報処理機能を有する外部MIDI機器KBが接続され、この例では、外部MIDI機器KBとして電子鍵盤装置(外部鍵盤装置、外部キーボード装置ともいう)が用いられる。従って、この音源装置TMは、外部鍵盤装置KBからMIDII/F10を通じてMIDI演奏情報を受信することができる。なお、外部鍵盤装置KBのハードウエア構成は、音源装置TMと同様であるが、破線で示すように演奏操作部が追加される。この場合は、演奏操作部からの演奏情報に基づく楽音信号を楽音信号生成部TGから生成させて1つの電子楽器として機能する。しかし、楽音信号生成部TGはなくてもよい。
【0020】
USBI/F11には、USBケーブルを介してパーソナルコンピュータ(パソコンともいう)PCが接続され、パソコンPCは、図1(2)に示すように、エディタ機能部(エディタ部、エディタともいう)ED及びシーケンサ機能部(シーケンサ部、シーケンサともいう)DAを有し、エディタ部EDにより、音源装置TMの楽音信号生成部TGに設定される各種の音源データを編集することができ、シーケンサ部DAにより、外部機器からMIDIメッセージを時系列に記録したり曲データファイルを取り込んだりパソコンPC上のUIで新規作成したりして曲データを制作し、制作した曲データを再生してMIDIメッセージを楽音信号生成部TGに送ることにより曲データに基づいた楽音生成を行わせることができる。なお、パソコンPCのハードウエア構成は、音源装置TMと同様であるが、楽音生成部やMIDII/Fはなくてもよい。また、設定操作子INとしてキーボードやマウスが設けられる。
【0021】
〔制御情報に関する全体構成〕
図1(2)は、この発明の一実施例による楽音処理システムにおける各装置間の制御情報に関する接続構成を説明するための概念図である。このシステムでは、MIDIデータを使って電子音源装置TMと、電子音源装置TMに対する制御装置として機能するパーソナルコンピュータPCとの間で情報が伝送される。MIDIチャンネルは「16」までしか規定されていないが、このシステムでは、1ポート当り16チャンネルを扱うことができる「MIDIポート」が規定され、外部鍵盤装置KBとの間では、MIDIケーブルでは同時に1ポート分(16チャンネル分)のデータしか通信できないが、音源装置TMと制御装置PCとの間では、USBケーブルを使用することにより、同時に、最大8ポート分(16×8=128チャンネル分)のMIDIデータを扱うことができる。
【0022】
このシステムでは、2つのMIDIポート:Port1,4が使用される。第1ポート:Port1は、音源装置TMの音源部TGで扱われるMIDIポートであり、外部鍵盤装置KBや制御装置(パーソナルコンピュータ)PCのシーケンサDAからのMIDIデータによる演奏情報や演奏データを第1入力ポート Port1 In(T)で受信して音源装置TMの音源部TGを鳴らすことができ、音源部TGからのMIDIデータを第1出力ポートPort1 Out(T)から制御装置PCのシーケンサDAに出力することができる。一方、制御装置PC側では、音源装置TMから受信したMIDIデータが第1入力ポート Port1 In(P)を通じてシーケンサDAに入力されると共に、シーケンサDAのエコーバック機能を働かせて対応する第1出力ポートPort1 out(P)から音源装置TMの音源部TGに送られるように初期設定されていることが多い。また、第2ポート:Port4は、音源装置TMを制御装置PCに接続したときにエディタEDと通信するために使用されるMIDIポートであり、制御装置PC側では、第2ポート:Port4で音源部TGの設定に関するMIDIデータを送受信することができる。この場合も、音源装置TMから第2入力ポート Port4 In(P)を介して受信したMIDIデータは、シーケンサDAのエコーバック機能を働かせてシーケンサDAの第1出力ポートPort1 Out(P)から出力するように初期設定されていることが多い。
【0023】
なお、ここでは外部鍵盤装置KBの操作に応じて生成されるMIDIメッセージが、直接、電子音音源装置TMの Port1 In(T)に入力されるようにしたが、それに替えて、外部鍵盤装置KBの操作に応じて生成されるMIDIメッセージが制御装置PCの任意の入力ポート〔例えば、 Port2 In(P)など〕に入力され、それがエコーバック機能によりPort1
Out(P)から出力され、電子音源装置TMの Port1 In(T)に入力されるようにしてもよい。
【0024】
〔MIDIメッセージとその流れ〕
上述のように、音源装置TMから制御装置(パーソナルコンピュータ)PCの第2入力ポート Port4 In(P)を介して受信したMIDIデータは、シーケンサDAのエコーバック機能によりシーケンサDAの第1出力ポートPort1 Out(P)から音源装置TMの音源部TGに送られるように設定されている場合は、MIDIのシステムエクスプルーシブ(SysEx)メッセージを用いて音源設定などに関する情報を音源装置TMから制御装置PCのエディタEDに送ると、この情報がループしてしまい、通常の動作が困難になる。
【0025】
例えば、電子鍵盤装置KBから、電子音源装置TMの音源部TGに対する音源設定などの制御情報をSysExメッセージにより電子音源装置TMの第1入力ポート Port1 In(P)に送ると、このSysExメッセージは、音源装置TMでは、制御装置PCのエディタEDとの同期のために、エディタ専用の第2出力ポートPort4 Out(T)にそのまま出力され、制御装置PCでは、シーケンサDAのエコーバック機能により、第2入力ポート Port4 In(P)及び第1出力ポートPort1 Out(P)を介して音源装置TMに出力されてループしてしまう。また、電子音源装置TMのパネル操作子14のうち音源設定用に割り当てられたノブを操作することによって音源部TGに対する音源設定などを行う場合も、音源設定などの制御情報をSysExメッセージにより第2出力ポートPort4 Out(T)を介して制御装置PCの第2入力ポート Port4 In(P)に送るので、同様にSysExのループが生じる。そして、このようなループ動作の状態になると、シーケンサDAが動作している制御装置PC及び音源装置TMは、当該SysExメッセージのループ転送処理に負担がかかり過ぎて、演奏データ等に関する通常の処理動作を行うことが非常に困難になる。
【0026】
この発明の一実施例による楽音処理システムでは、装置モデルのIDを用いた宛て先IDを付与したSysExメッセージを用いて音源設定などの制御情報を送受することにより、このようなループ動作が生じないようにしている。図2及び図3は、この発明の一実施例による楽音処理システムで用いられるMIDIメッセージとその流れを表わす。
【0027】
このシステムで使用されるMIDISysExメッセージは、パラメータチェンジメッセージ(単にパラメータチェンジともいう)Msと呼ばれ、図2(1)は、このメッセージMsの形式例を1バイト毎のデータで表わしている。図2(1a)の音源装置宛てパラメータチェンジMstは、最初のExステータス(Exclusive Status)バイト=“F0”(16進表示。以下、同じ)でSysExメッセージの開始を表わし、その後には、メーカーIDバイト:例えば“43”、発信元のデバイスIDバイト:例えば“10”が続き、更に、宛て先に関する識別情報(宛て先ID)として、2バイト分の音源装置TMのモデルID(型式記号):例えば“7F”+“03”が記述される。この宛て先IDは音源装置宛てIDと呼ばれ、このパラメータチェンジMstの宛て先が音源装置TMであることを明示するのに用いられる。音源装置宛てIDに続いて、上位、中位及び下位の3バイトから成るアドレス情報:“aa”+“aa”+“aa”が記述され、その後にデータ部分が任意数のデータバイト:“dd”+“dd”+…+“dd”で記述され、アドレス情報及びデータバイトは、制御情報において具体的な処理内容を示す指示情報として機能する。ここで、アドレス情報やデータのエンコードは、所定のビット数(例えば、7ビット)ずつ分割して各バイトに埋め込み、デコードは各バイトのうち所定のビット数ずつを取り出して処理するようにしてもよい。そして、エンドオブEx(End of Exclusive)バイト=“F7”で終わる。
【0028】
これに対して、図2(1b)に示されるエディタ宛てパラメータチェンジMseも、音源装置宛てパラメータチェンジMstと同様の形式で記述されるが、宛て先に関する識別情報(宛て先ID)としてエディタ宛てIDが用いられており、このパラメータチェンジMseの宛て先がエディタEDであることを示している点が異なっている。つまり、Exステータス=“F0”、メーカーID:“43”及びデバイスID:“10”に続き、エディタ宛てIDとして、2バイト分のエディタEDのモデルID(型式記号):例えば“7F”+“0B”が記述され、その後に、上位、中位及び下位バイトのアドレス情報:“aa”+“aa”+“aa”とデータバイト:“dd”+“dd”+…+“dd”が続き、エンドオブExバイト=“F7”で終わる。ここでも、アドレス情報やデータを所定のビット数(例えば、7ビット)ずつエンコード/デコードするようにしてもよい。
【0029】
次に、図2(2)及び図3に従って、外部鍵盤装置KB、電子音源装置TMのノブ14a及びに制御装置PCの入力操作手段INの操作に応じて生成されるパラメータチェンジメッセージMst,Mseの流れの一例を説明すると、次のとおりである:
(1)まず、図1(2)のようにMIDIポートが設定されると、音源装置TMはエディタ宛てIDを定義し、制御装置PCのエディタED及び外部鍵盤装置KBは音源装置宛てIDを定義する。
(2)電子音源装置TMは、例えば、図2(2)に示すように、外部鍵盤装置KBから第1入力ポート Port1 In(T)で受けたパラメータチェンジメッセージMsの宛て先IDとして音源装置宛てIDが付与されていたら(Ms=Mst)、このパラメータチェンジMstが指示する楽音処理の内容(楽音信号生成用パラメータの変更など)に従って、音源装置TM自身の音源部TGにおけるパラメータの設定に反映させると共に、音源装置TMのパラメータが変更されたことを制御装置PCのエディタEDに伝えるために、当該パラメータチェンジMstの音源装置宛てIDに代えてエディタ宛てIDが付与されたパラメータチェンジMseをエディタED専用の第2出力ポートPort4 Out(T)から出力する。この場合、もしパラメータチェンジメッセージMsに付与された識別情報(モデルID)が音源装置TM自身宛てでなかったら、そのメッセージMsを破棄する。
(3)また、電子音源装置TMは、例えば、図3(1)に示すように、この装置自身に備えられた楽音信号生成用パラメータ調整用のノブ等14aの操作があると、このノブ操作に応じて音源部TG自身のパラメータ設定に反映させると共に、音源パラメータが変更されたことを表わしエディタ宛てIDが付与されたパラメータチェンジメッセージMseを第2出力ポートPort4 Out(T)から出力する。
(4)制御装置PC上のシーケンサDAは、制御装置PCの全てのMIDI入力を、電子音源装置TMの音源部TG即ち第1入力ポート Port1 In(T)につながる第1出力ポートPort1 Out(P)から、そのままエコーバック出力する。従って、音源装置TMからエディタED用の第2ポートPort4 Out(T),Port4 In(P)経由で受けたパラメータチェンジメッセージMsも、図2(2)及び図3(1)に示すように、エコーバックされる。また、もし音源部TG・シーケンサDA間用の第1出力ポートPort1 Out(T)を経由して音源部TGからのメッセージMsを受けた場合、図2(2)及び図3(1),(2)に示すように、このメッセージMsもエコーバックする。
(5)制御装置PC上のエディタEDは、例えば、図2(2)及び図3(1)に示すように、専用の第2入力ポート Port4 In(P)で受けたパラメータチェンジMsにエディタ宛てIDが付与されていたら(Ms=Mse)、このパラメータチェンジMseの内容に対応する処理を行い、エディタED自身のパラメータ設定に反映させる。つまり、エディタEDの内部状態を楽音処理の内容に合わせ(同期させ)表示にも反映させる。もしパラメータチェンジMsの宛て先IDがエディタ宛てIDでなかったら、そのメッセージを破棄する。また、エディタED自体はエコーバックはしない。
(6)また、制御装置PC上のエディタEDは、例えば、図3(2)に示すように、制御装置PCに備えられたマウスやキーボード等の入力操作手段INの操作に応じて、エディタ内部のパラメータを変更し表示を更新する(内部状態を変更し表示に反映させる)と共に、当該パラメータが変更されたことを表わし音源装置宛てIDが付与されたパラメータチェンジメッセージMsを専用の第2出力ポートPort4 Out(P)から出力する。
(7)電子音源装置TMは、制御装置PC上のエディタEDからの第2入力ポート Port4 In(T)で受けたパラメータチェンジメッセージMsに音源装置宛てIDが付与されていたら(Ms=Mst)、音源部TG自身のパラメータ設定に反映させる。もしメッセージMsの宛て先IDが音源装置宛てIDでなかったら、そのメッセージMsを破棄する。また、エディタED専用入力ポートのMIDIデータについてはエコーバックはしない。
なお、ここでパラメータチェンジのやりとりで変更される楽音信号生成用パラメータは、例えば、電子音源装置TMをマルチ音源(ソングモード/パターンモード)として使用する場合のコモン/パートパラメータ(Volume、Effect、Pan、EG、Cutoffなど)やマルチ音源の各パートに割り当てられたボイス(音色)に関するさまざまなパラメータである。
【0030】
つまり、この発明の一実施例による楽音処理システムの特徴は次のとおりである:このシステムでは、電子音源装置や電子楽器などの楽音処理装置TMと、パーソナルコンピュータなどの制御装置PCにおいて楽音処理装置TMの音源部TGに演奏データを供給するシーケンサDA及び音源部TGの楽音信号生成用パラメータを編集する音源エディタEDとの間には、第1及び第2のMIDIポート:Port1,Port4が設定され、楽音処理の内容を表わす制御情報MsがMIDIのSysExのような所定形式で授受される。楽音処理装置TMは、外部の鍵盤装置や電子楽器などの外部MIDI機器KBから第1入力ポート:Port1 In(T)に入力された制御情報Msに音源装置宛てID:“7F”+“03”が付与されている場合に限って(Ms=Mst)、当該制御情報に基づく楽音処理を行い、エディタ宛てID:“7F”+“0B”が付与された制御情報(Ms=Mse)を生成し、第2出力ポートPort4 Out(T)から出力する。制御装置PCでは、第2入力ポート Port4 In(P)から受信した制御情報Msにエディタ宛てIDが付与されている場合に限って(Ms=Mse)、音源エディタEDにより、当該制御情報に基づいた処理が行われる。シーケンサDAにより、第2入力ポートで受信したMIDIデータは全て第1出力ポートPort1 Out(P)にエコーバックするように設定されているが、エディタ宛て制御情報Mseは、音源装置宛てIDが付与されていないので、楽音処理装置TMではブロックされる。
【0031】
〔処理フロー例〕
この発明の一実施例による楽音処理システムでは、上述したように、楽音処理に関する制御情報の伝送に宛て先ID付きSysExメッセージを用いて電子音源装置TMと制御装置PCのシーケンサDA及びエディタEDとが連携するようにしているので、このメッセージが両装置間でループしないようにすることができる。図4及び図5は、この発明の一実施例によるSysExに関するメッセージ処理を表わすフローチャートである。
【0032】
電子音源装置TMにおいては、図4に示すように、CPU1は、最初のステップT1で、第1ポート Port1 In(T)にて受信したMIDIデータがSysExメッセージMsであるか否かを調べることにより、第1ポートにてパラメータチェンジメッセージMsを受信したか否かを判定する。ここで、パラメータチェンジMsを受信したときは(T1=YES)、ステップT2に進んで、さらに、このパラメータチェンジMsに付与されている宛て先IDを調べて音源装置宛てIDであるか否かを判定する。そして、音源装置宛てIDが付与された音源装置宛てパラメータチェンジメッセージMstを第1ポートにて受信したことが分かると(T2=YES)、ステップT3に進み、この音源装置宛てメッセージMst内のアドレス情報とデータバイト情報に応じて、音源部TG内部の楽音信号生成用パラメータ(内部パラメータ)を変更し、続くステップT4で、この音源装置宛てメッセージMstの音源装置宛てIDに代えてエディタ宛てIDを付与したエディタ宛てパラメータチェンジメッセージMseを生成し、第2ポートPort4 Out(T)から出力する。
【0033】
第1ポートにてパラメータチェンジMsを受信しないと判定したとき(T1=NO)、第1ポートにて受信したパラメータチェンジMsに付与されている宛て先IDが音源装置宛てIDではないと判定したとき(T2=NO)、或いは、ステップT4で、エディタ宛てパラメータチェンジMseの作成及び出力処理の後は、ステップT5に進む。なお、第1ポートにてMIDIデータを受信しなかったときはステップT1から直ちにステップT5に進み、第1ポートにて受信したMIDIデータがパラメータチェンジMsでないときは、受信したMIDIデータの内容に応じた処理をした後ステップT5に進む。また、受信したパラメータチェンジMsの宛て先IDが音源装置宛てIDではないときは、当該パラメータチェンジMsを破棄する処理をした後ステップT5に進む。
【0034】
ステップT5では、「ノブ操作」即ちパネル操作子14中の音源調整用のノブ等14aの操作がなされたか否かを判定し、ノブ操作があれば(T5=YES)、ステップT6,T7へと進む。まず、ステップT6では、ノブ操作に応じて内部パラメータを変更し、次のステップT7では、エディタ宛てIDを付与したエディタ宛てパラメータチェンジメッセージMseを生成し、第2ポートPort4 Out(T)から出力する。ステップT5で、ノブ操作がなかったと判定したとき(T5=NO)、或いは、ステップT7のパラメータチェンジMseの作成及び出力処理の後は、ステップT8に進む。
【0035】
ステップT8では、第2ポート Port4 In(T)にてパラメータチェンジメッセージMsを受信したか否かを判定し、パラメータチェンジMsを受信したときは(T8=YES)、ステップT9に進み、さらに、このメッセージMsに付与されている宛て先IDが音源装置宛てIDであるか否かを判定する。そして、第2ポートにて受信したメッセージMsが、音源装置宛てIDが付与された音源装置宛てパラメータチェンジメッセージMstであることが分かると(T9=YES)、ステップT10に進んで、この音源装置宛てメッセージMst内のアドレス情報とデータバイト情報に応じて、内部パラメータを変更する。
【0036】
第2ポートにてパラメータチェンジMsを受信しないと判定したとき(T8=NO)、第4ポートにて受信したパラメータチェンジMsに付与されている宛て先IDが音源装置宛てIDではないと判定したとき(T9=NO)、或いは、ステップT10で、内部パラメータの変更処理の後は、ステップT1に戻って、上述したステップT1〜T10の動作を繰り返す。なお、第2ポートにてMIDIデータを受信しなかったときはステップT8から直ちにステップT1に戻り、第2ポートにて受信したMIDIデータがパラメータチェンジMsでないときは、受信したMIDIデータの内容に応じた処理をした後ステップT1に戻る。また、受信したパラメータチェンジMsの宛て先IDが音源装置宛てIDではないときは、当該パラメータチェンジMsを破棄する処理の後ステップT1に戻る。
【0037】
制御装置PCにおいて、エディタEDは、図5の上段に示すように、最初のステップE1で、制御装置PCの第2ポート Port4 In(P)にてパラメータチェンジメッセージMsを受信したか否かを判定し、パラメータチェンジMsを受信したときは(E1=YES)、ステップE2に進み、さらに、このメッセージMsに付与されている宛て先IDがエディタ宛てIDであるか否かを判定する。そして、第2ポートにて受信したメッセージMsが、エディタ宛てIDが付与されたエディタ宛てパラメータチェンジメッセージMseであるときは(E2=YES)、ステップE3で、このエディタ宛てメッセージMse内のアドレス情報とデータバイト情報に応じてエディタED上の内部パラメータを変更する。
【0038】
また、第2ポートにてパラメータチェンジMsを受信しないと判定したとき(E1=NO)、第4ポートにて受信したパラメータチェンジMsに付与されている宛て先IDがエディタ宛てIDではないと判定したとき(E2=NO)、或いは、ステップE3で、内部パラメータの変更処理を行った後は、ステップE4に進む。なお、第2ポートにてMIDIデータを受信しなかったときはステップE1から直ちにステップE4に進み、第2ポートにて受信したMIDIデータがパラメータチェンジMsでないときは、受信したMIDIデータの内容に応じた処理をした後ステップE4に進む。また、受信したパラメータチェンジMsの宛て先IDがエディタ宛てIDではないときは、当該パラメータチェンジMsを破棄する処理を行った後でステップE4に進む。
【0039】
ステップE4では、制御装置PCの入力操作手段INであるマウスやキーボードについて楽音生成用パラメータの変更操作(エディタ操作)がなされたか否かを判定し、このようなエディタ操作がなされたときには(E4=YES)、まず、ステップE5で、マウスやキーボード等入力操作手段INの操作に応じてエディタED上の内部パラメータを変更し、次のステップE6において、音源装置宛てIDを付与した音源装置宛てパラメータチェンジメッセージMstを生成し、第2ポートPort4 Out(P)から出力する。ステップE4で、上述のようなパラメータの変更操作(エディタ操作)がなかったと判定したとき(E4=NO)、或いは、ステップE6のパラメータチェンジMstの作成及び出力処理の後は、ステップE1に戻って、上述したステップE1〜E6の動作を繰り返す。
【0040】
一方、シーケンサDAは、図5の中段に示すように、最初のステップD1で、制御装置PCの何れかのポート Port1 In(P),Port4 In(P)にてパラメータチェンジメッセージMsを含むMIDIメッセージを受信したか否かを判定し、MIDIメッセージを受信したときは(D1=YES)、ステップD2に進み、受信したMIDIメッセージをそのまま第1ポートPort1 Out(P)にエコーバックする。そして、MIDIメッセージを受信しないとき(D1=NO)或いはステップD2のエコーバックの後は、ステップD1に戻り、上述したステップD1〜D2の動作を繰り返す。
【0041】
また、外部鍵盤装置KBでは、ユーザにより、電子音源装置TMの音源部TGに設定される楽音生成用パラメータを変更する等の音源設定メッセージを送る操作がある毎に、当該メッセージに音源装置宛てIDを付与して音源装置宛てパラメータチェンジメッセージMstを作成し、電子音源装置TMの第1ポート Port1 In(T)に送るステップK1の動作を繰り返し行う。
【0042】
図2(2)の外部鍵盤装置操作の場合について、図4及び図5の処理フローに従ってメッセージの流れをみると、外部鍵盤装置KBで音源設定メッセージを送る操作があると(K1)、電子音源装置TMは、外部鍵盤装置KBからの音源装置宛てメッセージMstを受容し、このメッセージに従って、音源部TGにパラメータを設定し(T1〜T3)、エディタ宛てメッセージMseを生成してエディタEDに送る(T4→E1)。制御装置PCのエディタEDは、このメッセージMseを受容し、このメッセージに従って内部パラメータを音源部TGの設定パラメータに合わせる(E1〜E3)。このメッセージMseは、シーケンサDAにより、第1ポートにエコーバックされるが(D1〜D2→T1)、
エディタ宛であるため、電子音源装置TMでブロックされる(T2=NO)。
【0043】
また、図3(1)のノブ操作の場合は、電子音源装置TMは、ノブ操作に基づいて、音源部TGにパラメータを設定し(T5〜T6)、エディタ宛てメッセージMseを生成してエディタEDに送る(T7→E1)。以下は、外部鍵盤装置操作の場合と同様にシステムが動作し、このメッセージMseは、最終的に電子音源装置TMでブロックされる(E1〜E3→D1〜D2→T1→T2=NO)。さらに、図3(2)のエディタ操作の場合には、エディタEDは、ノブ操作に基づいて、内部パラメータを変更すると共に音源装置宛てメッセージMstを作成して音源装置TMに送るので(E4〜E6)、電子音源装置TMは、この音源装置宛てメッセージMstを受容し、このメッセージMstに従って音源部TGのパラメータをエディタEDの内部パラメータに合わせる(T8〜T10)。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の一実施例による楽音処理システムの構成を示す図である。
【図2】この発明の一実施例によるメッセージの流れを示す図の一部である。
【図3】この発明の一実施例によるメッセージの流れを示す図の他部である。
【図4】この発明の一実施例によるメッセージ処理フローの一部である。
【図5】この発明の一実施例によるメッセージ処理フローの他部である。
【符号の説明】
【0045】
TM 電子音源装置又は電子楽器(楽音処理装置)、
PC パーソナルコンピュータ(制御装置)、
DA,ED シーケンサ[機能部]及びエディタ[機能部]、
KB 外部MIDI機器(外部鍵盤装置又は外部電子楽器)、
Ms:Mst,Mse システムエクスクルーシブ(SysEx)メッセージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御情報を入力するための第1の楽音処理側入力ポート及び制御情報を出力するための楽音処理側出力ポートを備えた楽音処理装置と、楽音処理側出力ポート及び第1の楽音処理側入力ポートにそれぞれ対応付けられた制御側入力ポート及び第1の制御側出力ポートを備えた制御装置とから成る楽音処理システムであって、
楽音処理装置は、
第1の楽音処理側入力ポートから、楽音処理の内容を表わす制御情報を取得し、当該制御情報について第1の識別情報が付与されているか否かを判断する楽音処理側識別情報判断手段と、
第1の識別情報が付与されていると判断された制御情報に基づいて楽音処理を行うと共に、当該制御情報の第1の識別情報に代えて第2の識別情報が付与された制御情報を生成し、楽音処理側出力ポートから出力する第1の楽音処理手段と
を具備し、
制御装置は、
制御側入力ポートから、楽音処理の内容を表わす制御情報を取得し、当該制御情報について第2の識別情報が付与されているか否かを判断する制御側識別情報判断手段と、
第2の識別情報が付与されていると判断された制御情報に基づいて、対応する処理を行う第1の制御側処理手段と、
制御側入力ポートから取得された制御情報を第1の制御側出力ポートから出力する第2の制御側処理手段と
を具備する
ことを特徴とする楽音処理システム。
【請求項2】
前記制御装置は、第2の制御側出力ポート及び制御側入力操作手段を備え、
第1の制御側処理手段は、制御側入力操作手段の操作に応じた処理を行うと共に、当該操作に基づく制御情報を第2の制御側出力ポートから出力し、
前記楽音処理装置は、
第2の制御側出力ポートに対応付けられた第2の楽音処理側入力ポートを備え、
第2の楽音処理側入力ポートから制御情報を取得し、当該制御情報に基づいて楽音処理を行う第2の楽音処理手段を具備する
ことを特徴とする請求項1に記載の楽音処理システム。
【請求項3】
前記楽音処理装置は、楽音処理側入力操作手段を備え、
楽音処理側入力操作手段の操作に応じて楽音処理を行うと共に、当該操作に基づく楽音処理の内容を表わし第2の識別情報が付与された制御情報を生成し、前記楽音処理側出力ポートから出力する第3の楽音処理手段を具備する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の楽音処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−210746(P2009−210746A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52739(P2008−52739)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】