説明

構成可能なデュアルプロセス溶接ヘッドおよびその構成方法

溶接ヘッドが、トラックまたはガイドに沿ってそれを誘導するためのキャリッジアセンブリを採用し、上に取り付けられたトーチアセンブリが、溶接プロセス用に構成される。トーチアセンブリは、取り付け板上に合わせて取り付けられたトーチブロックおよびGTA溶加ワイヤガイドを含み、前記ワイヤガイドは、トーチブロック上に取り付けられた溶接トーチに近接して配置される。前記ブロックには、GMAトーチおよびGTAトーチのいずれかを取り付ける場所がある。トーチブロックには、GMAトーチを通して前記ワイヤを送給するために、トーチブロック内にGMAアダプタスリーブを配置する場所がある。制御ユニットは、電源、ガスの供給部、冷却液供給部を含む手動、半自動、自動制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、アーク溶接の分野に関し、特に、GMAおよびGTA溶接プロセスの両方に適応可能である構成可能なデュアルプロセス溶接ヘッドと、GMAまたはGTA溶接プロセスのいずれかを実行するために、デュアルプロセス溶接ヘッドを構成する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスメタルアーク(GMA)溶接およびガスタングステンアーク(GTA)溶接プロセスが、当業者によく知られている。両プロセスにおいて、電気アークからの熱が、消耗溶加ワイヤを溶融して、溶接部を形成する。GMAプロセスにおいて、溶加ワイヤが、溶接ガンまたはトーチアセンブリを介して送給され、溶加ワイヤそのものが通電されて、溶加ワイヤの端部とワークピースとの間にアークを形成する。溶加ワイヤの端部が溶融してなくなるにつれ、溶加ワイヤは、溶加ワイヤの端部をワークピースに近接した位置に維持するように前進する。フラックスコアードアーク(FCA)溶接として知られるGMAプロセスに特化した場合、溶加ワイヤは、様々な合金および洗浄剤を含有するフラックスコアを有する。
【0003】
GTAプロセスにおいて、溶接ガンまたはトーチアセンブリによって保持される非消耗タングステン電極とワークピースとの間にアークが作り出される。アークからの熱がワークピースを溶融し、溶接池を形成する。溶接部に材料を添加するために、溶接池に溶加ワイヤが適用されてもよい。
【0004】
GMAおよびGTAの両方のプロセスでは、典型的に、シールドガスが使用される。いずれのプロセスに対しても、様々なシールドガスが使用されるが、異なるガスまたはガス混合物が、一般に、各プロセスに対して選択され、特化されたガス混合物が、あるタイプの溶接部に合わせて、またはある金属を溶接するために採用されてもよい。
【0005】
これらのプロセスにはそれぞれ、利点と欠点とがある。GTAプロセスの場合、典型的に、ビードの形状および外観が選択的で、欠陥がほとんどない。しかしながら、GTAプロセスは、一般に、溶加金属の堆積速度が遅いため、より多くの時間がかかってしまう。GMAプロセスは、堆積速度がより速く、充填およびキャップ工程のビードプロファイルが一般に許容可能である。FCAプロセスは、堆積速度が最も速く、充填およびカバー工程のビードプロファイルが許容可能であり、熱影響域の冶金特性がGMAプロセスに類似したものである。しかしながら、FCAプロセスでは、工程ごとにスラグを除去する必要があり、大量のヒュームが生成される。
【0006】
プロセス間に違いがあるとすれば、単一の溶接タスクが、2つ以上のプロセスを採用してもよい。例えば、管を接合する際に採用されたある溶接手法において、GTA溶接プロセスは、1回以上の工程に対して最初に使用されてもよく、溶接継手を充填しカバーするために、1回以上のGMA工程を用いて仕上げられてもよい。
【0007】
複雑で、時間がかかり、または高精度な溶接を実行するために、様々な半自動、自動、またはロボット溶接装置が知られている。1つのタイプの溶接装置は、管の溶接、例えば、球状溶接に特化される。
【0008】
球状溶接装置は、多くの場合、管の周辺に位置するトラックに沿って乗りながら、管の周囲を走行する溶接ヘッドを採用する。既知の球状溶接装置は、GTA溶接ヘッドまたはGMA溶接ヘッドのいずれかを採用する。このように、GTAおよびGMAプロセスの両方が採用される溶接タスクの場合、GTAおよびGMA溶接機器システムの両方を獲得する必要がある。
【0009】
最初にGTA溶接工程を実行し、その続、GMA溶接工程を実行するには、少なくとも、プロセスごとに溶接ヘッドを取り替える必要がある。さらに、GTAおよびGMAプロセスの異なる要求に見合うように、シールドガスの供給および電源が交換されなければならない。さらに、溶接ヘッドとトラックとの間の適合性の問題により、GTAプロセスに対して設置されたトラックをすべて除去し、GMA溶接ヘッドと適合可能なトラックを、管継手と位置合わせして取り替えることが必要となる場合もある。さらに、溶接トラックを許容可能な方法で配置するには、時間がかかり、作業が面倒なものでありうる。溶接タスクの過程で機器を変更する必要があるとともに、別々のGTAおよびGMA溶接機器を獲得および維持する必要があることで、GTAおよびGMA溶接プロセスの両方を必要とする溶接タスクを完了させるためのコストが高くなってしまう。
【0010】
以上の理由から、GTAおよびGMA溶接プロセスの両方を実行するのに適応可能な溶接装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本明細書に開示される溶接システムが、ガスメタルアーク(GMA)およびガスタングステンアーク(GTA)溶接プロセスの両方に適応可能な溶接ヘッドを含む。溶接ヘッドは、溶接ヘッドをトラックまたはガイドに沿って誘導するためのキャリッジアセンブリを採用する。キャリッジ上に搭載されたトーチアセンブリが、GMAおよびGTA溶接プロセス(およびGMAプロセスに機能的に一般に類似したフラックスコアアーク(FCA)プロセス)の両方を実行するために構成可能である。トーチアセンブリは、トーチブロックおよびGTA溶加ワイヤガイドの位置が、互いに対して変更されうるように、取り付け板上に合わせて取り付けられたトーチブロックおよびGTA溶加ワイヤガイドを含む。トーチブロックには、GMAトーチまたはGTAトーチのいずれかを取り付ける場所がある。さらに、トーチブロックには、GMA溶接プロセス中にGMAトーチを通して溶加ワイヤを供給するためのトーチブロック内のGMAアダプタスリーブを配置する場所がある。
【0012】
トーチアセンブリは、トーチブロックにGMAトーチアセンブリを設置し、トーチブロックにGMAアダプタスリーブを設置し、溶加ワイヤ供給導管をGMAアダプタスリーブに接続することによって、GMA溶接プロセス用に構成される。トーチアセンブリは、GMAトーチアセンブリをGTAトーチアセンブリと取り替え、GMAアダプタスリーブを除去してキャップを適所に差し込むことによって、GTA溶接プロセス用に再構成される。溶加ワイヤ供給導管は、GTA溶接プロセス用のGTA溶加ワイヤガイドに接続される。
【0013】
システム制御ユニットにより、溶接システムリソースの手動、半自動、または自動制御が得られる。これらの溶接システムリソースは、溶接電源、1つ以上のシールドガスの供給部、および流体冷却液供給部を含む。システム制御ユニットはまた、トラックに沿ったキャリッジの移動、溶加ワイヤフィーダの動作、溶接アーク電圧、および溶接線に沿った溶接トーチの発振を含むキャリッジアセンブリの動作を制御する。
【0014】
添付の図面において、同様の参照番号は、対応する特徴を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、ガスメタルアーク(GMA)およびガスタングステンアーク(GTA)溶接プロセスの両方に適応可能な溶接ヘッドと、GMAまたはGTA溶接プロセスのいずれかを実行するように溶接ヘッドを適応するための方法を包含する。図1を参照すると、溶接ヘッド12を含む溶接システム10が図示されている。溶接ヘッド12は、溶接ヘッド12を操作するために、様々なケーブルおよび導管によって、冷却流体、溶接電源、シールドガス、および電力および制御信号を供給するためのシステムコンポーネントに接続されている。図示した構成において、溶接システム10は、循環流体導管16によって溶接ヘッド12に接続された流体冷却器14と、溶接電源ケーブル19によって溶接ヘッド12に接続された溶接電源18と、電力をよび制御信号を溶接ヘッド12に供給するためのシールドガス導管および電気ワイヤを含むケーブル束22によって、溶接ヘッド12に接続されたシステム制御ユニット20とを含む。
【0016】
溶接システム10は、GMAおよびGTA溶接プロセスの両方に必要なリソースを溶接ヘッド12に供給する。システム制御ユニット20は、溶接プロセスの全自動または半自動性能を与える。オペレータの手動制御またはシステム制御ユニット20内で動作するコンピュータプログラムの制御下のいずれかにあるシステム制御ユニット20は、複数のシールドガスソース24から選択するか、またはこれらのソースを混合することによって、シールドガス混合物を供給する。同様に、システム制御ユニット20は、電流、電圧、パルス、および他のパラメータを設定するとともに、溶接電源の開始、停止、検知、および調節を行うように、溶接電源18を制御する。システム制御ユニット20はまた、冷却流体の流れの開始、停止、検知、および調節を行うように、流体冷却器14を制御する。
【0017】
溶接ヘッド12は、キャリッジアセンブリ上に配置された溶接トーチアセンブリ32(図1に図示していないが、図3に図示)を備える。図2を参照すると、1つの例示的なキャリッジアセンブリ26が示されている。キャリッジアセンブリ26は、溶接トーチアセンブリ(図示せず)を担持し、ガイドまたはトラック(図示せず)に沿って走行するように適応される。図示したキャリッジアセンブリ26は、円形または環状のトラックとともに使用するのに適応されるが、キャリッジアセンブリは、他の形態として、他のトラック構成とともに使用するように構成されてもよい。
【0018】
キャリッジアセンブリ26は、取り付けられた溶接トーチアセンブリ(図2には図示せず)の位置を操作するための電動式のアクチュエータを含む。第1の電動式アクチュエータ28は、溶接トーチ電極とワークピースとの間のアークギャップを変化させながら、ワークピースに対して溶接トーチアセンブリを離したり近づけたりして移動させる。アークギャップを変化させると、アーク電圧が変化するため、第1の電動式アクチュエータ28は、アーク電圧制御(AVC)アクチュエータとも呼ばれる。第2の電動式アクチュエータ30は、溶接線を横断して溶接トーチを前後に移動させながら、溶接トーチアセンブリを線と交差するように移動させる。第2の電動式アクチュエータ30は、発振アクチュエータとも呼ばれる。
【0019】
キャリッジアセンブリ26上に位置するワイヤ送給モータ31が、溶加ワイヤ供給部から溶加ワイヤ供給導管46を通ってトーチアセンブリ32へ溶加ワイヤを送給するワイヤ送給デバイス33を駆動する。溶加ワイヤ供給導管46の第1の端部47が、ワイヤ送給デバイス33から溶加ワイヤを受け取る。溶加ワイヤ供給導管46の第2の端部50には、内側にねじを切ったキャップナットまたは嵌め合い取り付け部品と係合するように適応された別の取り付け部品などの連結取り付け部品52が装着されている。走行モータ(図示せず)が、トラックに沿ってキャリッジアセンブリを推進させる。
【0020】
以下、図3を参照すると、溶接トーチアセンブリ32が、キャリッジアセンブリ26上に取り付けられた状態で示されており、この溶接トーチアセンブリ32は、GMA溶接プロセス用に構成されている。キャリッジアセンブリ26は、ワークピース36を囲むトラック34上に位置付けて示されている。溶接トーチアセンブリ32は、トーチブロック38およびGTA溶加ワイヤ調節モジュール40を含み、これらはいずれも、取り付け板42(図4に図示せず)上に取り付けられている。トーチブロック38上に、GMAトーチ44が取り付けられ、トーチブロック38に、溶加ワイヤ供給導管46が接続されている。
【0021】
このGMAプロセス構成において、連結取り付け部品52は、GMAトーチ44を通して溶加ワイヤ48を送るためのトーチブロック38に、溶加ワイヤ供給導管46の第2の端部50を取り付ける。溶加ワイヤ供給導管46を通ってトーチブロック38に供給される溶加ワイヤ48がGMAトーチ44から延伸した状態が図から分かる。
【0022】
図4および図5を参照すると、溶接トーチアセンブリ32がさらに詳細に記載されている。トーチブロック38およびGTA溶加ワイヤ調節モジュール40は、取り付け板42上に互いに対して一般に近接した位置に取り付けられる。取り付け板42は、細長く弓形のスロット55を画定する溝穴のあいた弓形部分54を含む。トーチブロック38およびGTA溶加ワイヤ調節モジュール40は、トーチブロック38およびGTA溶加ワイヤ調節モジュール40の取り付け位置が可変であるように、滑動可能に取り付けられている。この実施形態によれば、取り付け板42は、AVCアクチュエータ28上に取り付けられた状態で示されている。
【0023】
GTA溶加ワイヤ調節モジュール40は、細長いスライドトラック60が画定されている上面58を有するベースプレート56を備える。ベースプレート56は、取り付け板42に取り付けられている。スライドプレート62が、ベースプレート56のスライドトラック60と滑動可能に係合されることで、スライドプレート62は、ベースプレート56に沿って可変に位置付けられてもよい。スライドトラック60は、ベースプレート56の背壁64によって、ベースプレート56の一端で終端する。調節ねじ66が、背壁64を通って延伸し、スライドトラック60に沿ったスライドプレート62の位置が、調節ねじ66を回すことで調節できるように、スライドプレート62に連結される。
【0024】
スライドプレート62に、溶加ワイヤガイドホルダ68が連結されている。図示した実施形態において、溶加ワイヤガイドホルダ68は、1対のスペーサによってスライドプレート62に連結されている。スライドプレート62の上面58に、第1のスペーサ70が取り付けられ、第1のスペーサ70に、第2のスペーサ72が取り付けられている。溶加ワイヤガイドホルダ68は、第2のスペーサ72に枢動可能に取り付けられた第1の端部74と、クランプ部分78が形成されている第2の端部76とを有する。溶加ワイヤガイドホルダ68のクランプ部分78は、溶加ワイヤガイド82(図6〜図8に図示)が保持されてもよい溝穴80を画定する。
【0025】
GTA溶加ワイヤ調節モジュール40により、図3〜図5に示すGMAプロセス構成から、GTAプロセス構成へ、溶接トーチアセンブリ32を再構成できる。
【0026】
以下、図6〜図8を参照すると、GTA溶接プロセス用に構成された溶接トーチアセンブリ32が示されている。GTAプロセス構成において、溶加ワイヤガイドホルダ68のクランプ部分78に、溶加ワイヤガイド82が差し込まれている。溶加ワイヤ供給導管46は、トーチブロック38から取り外され、その代わりに、溶加ワイヤガイド82に接続されている。マルチプロセス溶接タスクの場合、溶加ワイヤガイド82は、溶接トーチアセンブリ32がGMAプロセス用に構成されている間、溶加ワイヤガイドホルダ68に適所に保持され、GMAトーチの邪魔にならない場所に位置付けられてもよいことに留意されたい。
【0027】
GMAトーチ44(図3〜図5に図示)は、GTA構成においてタングステン電極88を有するGTAトーチ86と取り替えられる。GTAプロセスの動作中、溶加ワイヤガイド82は、溶加ワイヤガイド82を通過した溶加ワイヤ48が、タングステン電極88とワークピース36との間で画定されたアークによって、ワークピース36に形成された溶接池に近接した位置にもたらされる。
【0028】
溶加ワイヤガイド82は、第1の端部92および第2の端部94を有する一般に管状の主要本体90を備える。第1の端部92は、外側にねじが切られているか、または溶加ワイヤ供給導管46上の連結取り付け部品52と係合するように適応される。ワイヤノズル95が、主要本体90の第2の端部94から延伸する。ワイヤノズル95と主要本体90とを通して、溶加ワイヤ48を通すための長手方向の通路が画定される。GTAプロセス動作中、溶加ワイヤ48は、溶加ワイヤ供給導管46によって溶加ワイヤソースから受け取られ、溶加ワイヤガイド82を通過して、ワイヤノズル95から出る。
【0029】
以下、図9および図10を参照すると、トーチブロック38がさらに詳細に示されている。図9において、トーチブロック38は、GTAプロセス用のGTAトーチコンポーネントとともに構成されて示されているのに対して、図10は、GMAプロセス用のGMAトーチコンポーネントとともに構成されたトーチブロック38を示す。
【0030】
トーチブロック38は、フェノール系ハウジング98内に保持されたトーチ本体96を備える。トーチブロック38を取り付け板42に取り付けるために、フェノール系ハウジング98の側壁に、フェノール系取り付けブラケット100が取り付けられている。トーチ本体96は、一般に、銅または別の適切な材料の立方体ブロックである。トーチ本体96内に、いくつかの穴または通路が画定される。第1の通路102が、背面108からトーチブロックを通って前面106へ延伸している。第2の通路104が、第1の通路102とつながるために、トーチ本体96内に延伸している。第1の通路102は、トーチコンポーネントを受けるために、トーチ本体96の前面106に隣接して内側にねじが切られた第1の端部105を有する。さらに、第1の通路102は、GMAプロセス構成において使用されるGMAアダプタスリーブ110、またはGTAプロセス構成において使用されるキャップ112のいずれかを受けるために、トーチ本体96の背面108に隣接して内側にねじが切られた第2の端部103を有する。GMAアダプタスリーブ110は、GMA溶加ワイヤを通すための貫通孔を有する。さらに、GMAアダプタスリーブは、溶加ワイヤ供給導管46を取り付けるために、ねじが切られているか、または他の方法で適応されている。
【0031】
第2の通路104により、シールドガスをトーチ本体96内に導入でき、シールドガスは、第1の通路102内に入り、トーチ本体96に取り付けられたトーチを通過する。第2の通路104と連通状態にあるトーチ本体に、ガス取り付け部品114が取り付けられ、これによりシールドガス供給ラインの取り付けが可能となる。
【0032】
さらなる通路が、トーチ本体96内に画定され、トーチ本体96を通って流体冷却液を循環させるための入口116および出口118を有する冷却流体チャネルを形成する。入口116および出口118と連通状態にあるトーチ本体96に取り付けられた流体取り付け部品120により、冷却流体チャネルと連通状態にある冷却液供給および戻りラインを取り付けることができる。
【0033】
GTAプロセスまたはGMAプロセス用に、トーチブロック38にトーチアセンブリが取り付けられてもよい。図9を参照すると、GTAトーチ86が、トーチ本体96の前面106で第1の通路102に係合されてもよい外側にねじが切られた端部124を有するガスレンズ122を備える。GTAトーチ86内にタングステン電極を受け、保有するために、ガスレンズ122内にコレット126が保持される。ガスレンズ122に隣接した位置に、ガスレンズアダプタ128が設けられ、ノズルカップ130が、組み立てられたGTAトーチコンポーネント上に装着される。Oリング132により、ノズルカップ130とトーチブロック38との間に密封性が得られる。
【0034】
GTAトーチ86のコンポーネントのいくつかは、標準的な市販のトーチコンポーネントである。例示的な市販のGTAトーチコンポーネントは、カリフォルニア州バーバンクのウェルドクラフト・プロダクツ・インコーポレイテッド(Weldcraft Products,Inc.、Burbank、California)によって製造されたガスレンズ(部品番号45V25)、コレット(部品番号10N23)、およびノズルカップ(部品番号57N75)を含む。
【0035】
以下、図10を参照すると、GMAトーチ44が、ガス拡散器134と、ガス拡散器134内に保持されたコンタクトチップ136と、組み立てられたGMAトーチコンポーネント上に装着されたノズルカップ138とを備える。トーチ本体96の前面106に隣接した第1の通路102の内側にねじ切りした部分が、外側にねじ切りされた市販のGTAトーチコンポーネントと互換性があるが、市販のGMAトーチコンポーネントは、外側にねじ切りされた取り付け部品に取り付けるために適応されることに留意されたい。このようにして、GMAトーチ44をトーチ本体96に取り付けるために、アダプタ140が利用される。アダプタは、トーチ本体96の前面106に隣接した第1の通路102の内側にねじ切りされた部分と係合するように、外側にねじ切りされサイズ調整された第1の端部142を有する。アダプタ140の第2の端部144が、ガス拡散器134を取り付けるために外側にねじ切りされサイズ調整される。
【0036】
GMAトーチ44のコンポーネントのいくつかは、標準的な市販の部品である。例示的な市販のGMAトーチコンポーネントは、ウィスコンシン州アップルトンのミラー・エレクトリック・マニュファクチャリング・カンパニー(Miller Electric Mfg Company、Appleton、Wisconsin)によって製造され、Roughneckという商標名で販売されているガス拡散器(部品番号198 957)、コンタクトチップ(部品番号205 177)、およびノズルカップ(部品番号199 610)を含む(Roughneckは、ミラー・エレクトリック・マニュファクチャリング・カンパニーの登録商標である)。
【0037】
トーチブロック38をGMAプロセス用に構成する場合、上述したようなトーチ本体96上にGMAトーチコンポーネントを組み立てることによって、トーチブロックにGMAトーチ44が据え付けられる。さらに、GMAアダプタスリーブ110は、トーチ本体96の背面108の第1の通路102に据え付けられ、トーチ本体96と、取り付けられたGMAトーチ44に溶加ワイヤ48を通すことができる。溶加ワイヤ供給導管46は、連結取り付け部品52をGMAアダプタスリーブ110に係合することによって、GMAアダプタスリーブ110に取り付けられる。
【0038】
トーチブロック38をGTAプロセス用に構成する場合、上述したようなトーチ本体96上にGTAトーチコンポーネントを組み立てることによって、トーチ本体96にGTAトーチ86が据え付けられる。さらに、溶加ワイヤ供給導管46は、GMAアダプタスリーブ110から取り外され、GMAアダプタスリーブ110は、トーチ本体96の背面108の第1の通路102から取り外され、キャップ112は、適所に据え付けられる。
【0039】
このようにして、トーチブロック38上にGTAまたはGMAトーチコンポーネントを交換可能に据え付け、GMAアダプタスリーブ110またはGTA溶加ワイヤガイド82のいずれかに溶加ワイヤ48を供給するように溶加ワイヤ供給導管46を構成することによって、溶接ヘッド12は、GTAおよびGMA溶接プロセス用に構成可能であるように示されている。溶接ヘッド12を特定の溶接プロセス用に構成することに加え、溶接システム10は、適正なシールドガスまたはガス混合物を選択し、溶接電源パラメータを設定することによって、溶接プロセス用に構成されなければならない。図1を参照しながら上述したように、システム制御ユニット20が、主として、これらの構成を制御するが、溶接電源の極性は、溶接電源18上のプラスおよびマイナス(または接地)端子と接続した状態の電源ラインを交換することによって手動で変更される。
【0040】
以下、図1および図11を参照しながら、システム制御ユニット20についてさらに詳細に記載する。システム制御ユニット20は、溶接システム10のコンポーネントに制御信号を発生するためのユーザインタフェースコンポーネントおよびインタフェースを含むコンピュータ制御のコントローラである。図11のブロック図に示すシステム制御ユニット20は、ランダムアクセスメモリ(RAM)1106および読み出し専用メモリ(ROM)1108の両方を備えるメインメモリ1104の領域へバス1103によって接続されたコンピュータプロセッサ1102を一般に有する典型的なアーキテクチャの汎用コンピュータを含む。RAM1106内にロードされ、マイクロプロセッサ1102によって実行されてもよい1つ以上のコンピュータプログラムを格納するため、ディスクドライブやリムーバブルメディアリーダなどのデータストレージデバイス1110が、コンピュータプロセッサ1102と連通状態に設けられてもよい。他の形態として、ROM1108に、1つ以上のコンピュータプログラムがすべて格納されてもよい。
【0041】
システム制御ユニット20は、ユーザインタフェースを与えるために、コンピュータプロセッサ1102と連通状態にある表示デバイス1112およびキーボード1114を含む。溶接システム10の制御および動作用に、さらなるインタフェースが設けられる。シールドガスインタフェースが、複数のガスソレノイド弁1116を含み、これらの弁の各々は、ガスソースと連通状態にある入力を有する。ガスソレノイド弁の各々からのガス出力は、溶接ヘッド12の単一のシールドガス供給部に混合される。システム制御ユニット20は、ガスソレノイド弁1116を選択的に動作することによって、複数のソースから単一のシールドガスを、または特定の溶接プロセスまたはタスクの場合、複数のシールドガスの混合物を溶接ヘッド12へと供給してもよい。
【0042】
システム制御ユニット20は、コンピュータプロセッサ1102と連通状態にある溶接電力インタフェース1118を含む。溶接電力インタフェース1118は、電圧、電流、作動状態、および他のデータなどのデータを溶接電源18から受信し、コンピュータプロセッサ1102の制御下で溶接電源18を動作するための制御信号を供給する。
【0043】
システム制御ユニット20は、コンピュータプロセッサ1102と連通状態にある冷却液インタフェース1120を含む。冷却液インタフェース1120は、冷却液温度、冷却液の流量、作動状態、および他のデータなどのデータを流体冷却器14から受信し、コンピュータプロセッサ1102の制御下で流体冷却器14を動作するために、流体冷却器14に制御信号を供給する。
【0044】
さらに、システム制御ユニット20は、コンピュータプロセッサ1102と連通状態にある溶接ヘッド制御インタフェース1122を含む。溶接ヘッド制御インタフェース1122は、走行モータ、発振アクチュエータ30、AVCアクチュエータ28、およびキャリッジアセンブリ26上のワイヤ送給モータ31を動作するように制御信号を供給する。溶接ヘッド制御インタフェース1122はまた、溶接ヘッド12から様々なデータを受信してもよい。
【0045】
システム制御ユニット20は、ディスプレイのカーソルなどを操作するためのポインティングデバイス1124などのさらなるユーザインタフェースデバイスを含んでもよい。さらに、ディスプレイ1112およびキーボード1114から離れた場所でシステム制御ユニット20を全制御または部分制御するために、リモートペンダント1128が使用されてもよい。
【0046】
コンピュータプロセッサによって実行するために、ROM1108のシステム制御ユニットまたはストレージデバイス1110上に、作動コンピュータプログラムまたは演算システムが格納される。演算コンピュータプログラムは、オペレータが、溶接システム10へのインタフェースの各々を手動で操作することができるユーザインタフェース機能を与え、システム制御ユニット20によって溶接システム10のオペレータ制御を与える。さらに、演算コンピュータプログラムにより、オペレータは、溶接システム10のコンポーネントのシーケンス動作を命令することによって、様々な溶接タスクを自動化するために、さらなるコンピュータプログラムを作成、実行、読み込み、および削除できる。
【0047】
上述した実施形態および方法は、本質的に例示的なものであり、これらの修正が、当業者になしうることを理解されたい。以上のことから、本発明は、本明細書に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲にのみ規定されたものにのみ限定されると見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ガスメタルアーク(GMA)およびガスタングステンアーク(GTA)溶接プロセスの両方に適応可能な溶接ヘッドを組み込んだ溶接システムの略図である。
【図2】本発明による溶接ヘッドにあるキャリッジ装置の一実施形態の斜視図である。
【図3】GMA溶接プロセス用に構成された溶接トーチアセンブリの一実施形態の斜視図である。
【図4】図3の溶接トーチアセンブリの平面図である。
【図5】図3の溶接トーチアセンブリの立面図である。
【図6】GTA溶接プロセス用に構成された溶接トーチアセンブリの一実施形態の斜視図である。
【図7】図6の溶接トーチアセンブリの平面図である。
【図8】図6の溶接トーチアセンブリの立面図である。
【図9】GTA溶接プロセス用に構成された溶接トーチブロックの一実施形態の分解図である。
【図10】GMA溶接プロセス用に構成された図9のトーチブロックの分解図である。
【図11】GMAおよびGTA溶接プロセスの両方に適応可能な溶接ヘッドを組み込んだ溶接システムにあるシステム制御ユニットのブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジと、
取り付け板と、前記取り付け板上に取り付けられ、第1および第2の端部を有する貫通路および前記貫通路と連通状態にある溶接ガス通路を画定するトーチブロックとを含む、前記キャリッジ上に配置されたトーチアセンブリと、
前記溶接トーチに近接した前記トーチアセンブリ上に配置されたGTA溶加ワイヤ調節モジュールと、
前記貫通路の第1の端部に取り付けるように適応されたGMAトーチアセンブリと、
前記貫通路の第1の端部に取り付けるように適応されたGTAトーチアセンブリと、
前記貫通路の第2の端部に取り付けるように適応されたGMAアダプタスリーブと、
前記貫通路の第2の端部に取り付けるように適応可能なキャップと、
を備える、溶接ヘッドキット。
【請求項2】
第1の端部および第2の端部を有する溶加ワイヤ供給導管をさらに備え、前記第2の端部は、前記GTA溶加ワイヤガイドおよび前記GMAアダプタスリーブのいずれかと係合するように適応される連結取り付け部品を有する、請求項1に記載の溶接ヘッドキット。
【請求項3】
前記溶加ワイヤ供給導管を通って延伸する溶加ワイヤを供給するワイヤ供給部をさらに備える、請求項2に記載の溶接ヘッドキット。
【請求項4】
前記GMAトーチアセンブリは、
GMAトーチ拡散器と、
前記貫通路の第1の端部に取り付けるための第1の端部と、前記GMAトーチ拡散器を受けるための第2の端部とを有するアダプタと、
を備える、請求項1に記載の溶接ヘッドキット。
【請求項5】
前記GTAトーチアセンブリは、前記貫通路の第1の端部に取り付けるための第1の端部を有するガスレンズを備える、請求項1に記載の溶接ヘッドキット。
【請求項6】
前記取り付け板は、細長いスロットを画定し、前記トーチブロックは、前記スロットに沿って移動可能である、請求項1に記載の溶接ヘッド。
【請求項7】
前記取り付け板は、細長いスロットを画定し、前記GTA溶加ワイヤ調節モジュールは、前記スロットに沿って移動可能である、請求項1に記載の溶接ヘッド。
【請求項8】
前記GTA溶加ワイヤ調節モジュールは、
ベースプレートと、
前記ベースプレートに調節可能に連結されるGTA溶加ワイヤガイドと、
を備える、請求項1に記載の溶接ヘッド。
【請求項9】
キャリッジと、
第1および第2の端部を有する貫通路および前記貫通路と連通状態にあるシールドガス通路を画定するトーチブロックと、前記第1の端部に取り外し可能に係合され、前記第1の端部から延伸する溶接トーチと、前記第2の端部に取り外し可能に係合されるGMAアダプタスリーブとを備える、前記キャリッジ上に配置されたトーチアセンブリと、
前記トーチブロックに近接した前記トーチアセンブリ上に取り付けられたGTA溶加ワイヤガイドと、
前記キャリッジ上に配置された溶加ワイヤフィーダと、
溶加ワイヤを受けるために前記溶加ワイヤフィーダと連通状態にある第1の端部と、第2の端部とを有する溶加ワイヤ導管と、
前記GTA溶加ワイヤガイドおよび前記GMAアダプタスリーブのいずれかに前記溶加ワイヤ導管を連結するように適応される、前記溶加ワイヤ導管の第2の端部上に配置された連結取り付け部品と、
を備える、溶接ヘッド。
【請求項10】
GTA溶接の場合、
前記貫通路の第2の端部から前記GMAアダプタスリーブを取り外すことと、
前記貫通路の第2の端部にキャップを差し込むことと、
前記GTA溶加ワイヤガイドに前記溶加ワイヤ供給導管の第2の端部を連結することと、
前記溶接トーチをGTAトーチと取り替えることと、
の各ステップを備える、請求項9の溶接ヘッドを構成する方法。
【請求項11】
GTA溶接プロセス用の前記GTAトーチに電源を印加するステップをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シールドガス通路に、GTA溶接プロセス用のシールドガスを供給するステップをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
キャリッジと、
第1および第2の端部を有する貫通路および前記貫通路と連通状態にあるシールドガス通路を画定するトーチブロックを備える、前記キャリッジ上に配置されたトーチアセンブリと、
前記貫通路の第1の端部に取り外し可能に係合され、前記第1の端部から延伸する溶接トーチと、
前記貫通路の第2の端部に取り外し可能に係合されるGMAアダプタスリーブと、
前記トーチブロックに近接した前記トーチアセンブリ上に取り付けられたGTA溶加ワイヤガイドと、
前記キャリッジ上に配置される溶加ワイヤフィーダと、
溶加ワイヤを受けるために前記溶加ワイヤフィーダと連通状態にある第1の端部と、第2の端部とを有する溶加ワイヤ導管と、
前記GTA溶加ワイヤガイドおよび前記GMAアダプタスリーブのいずれかに前記溶加ワイヤ導管を連結するように適応される、前記溶加ワイヤ導管の第2の端部上に配置された連結取り付け部品と、
前記シールドガス通路と連通状態にあるガス出力と、複数のガス入力とを有するシールドガス制御ユニットと、
前記シールドガス制御ユニットと連通状態にあり、GMAプロセスシールドガスまたはGTAプロセスシールドガスを前記シールドガス通路に供給するように、前記ガス制御ユニットを選択的に制御するための命令を備えるコンピュータプログラムを包含するコンピュータプロセッサと、
を備える溶接システム。
【請求項14】
前記コンピュータプロセッサと連通状態にある溶接電源制御インタフェースをさらに備え、前記コンピュータプログラムは、GMAプロセスまたはGTAプロセスに溶接電力を供給するように、溶接電源を選択的に制御するための命令をさらに備える、請求項13に記載の溶接システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−502504(P2009−502504A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522867(P2008−522867)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/027728
【国際公開番号】WO2007/015819
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(399020784)ティーアールアイ・トゥール・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】