説明

構築用表層型枠

【課題】 コンクリートの打設した後は、打設コンクリートの硬化後もコンクリート面の表層材としてそのまま残存させておき、その後において、何らの追加的な作業をも必要とすることなく、月日の経過とともに、早期に型枠の表面に草花や低木が極めて自然な状態で発芽して次第に生育し、緑で覆われることとなる土留め壁や擁壁の提供。
【解決手段】 横長の長方形状に形成された概略板状物で、表面1側に、横方向全長に亘って延びる凹入溝2が上下方向に複数段形成され、これらの凹入溝2のうち少なくとも一つの凹入溝が植物種子を混合した種子混合材Mを受容させるに足る深溝20に形成され、
背面11側には、打設コンクリートを受け止めるための横方向全長に亘って延びるコンクリート受け溝12が上下方向に複数段形成されている構成としたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山の傾斜面や、盛り土・切土の傾斜面等の土砂崩れを防ぐための土留め工事や、ダム壁や治水壁等のコンクリート壁造成工事等におけるコンクリート打設工事において、打設コンクリートの表層材として残存させておくために使用する構築用型枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から一般に普及し汎用されているコンクリート型枠は、硬質で厚手の木質合板若しくは鋼板を面板とし、その周縁部に角材やフランジ金具を連結し、中間部分にも補強用の角材やリブ金具を立設した構造としたものが大半を占めている。
【0003】
そして、これらの従来の一般的なコンクリート型枠は、コンクリートの打設・硬化後に打設したコンクリート面から剥離除去するものである。また、これらの一般的な型枠は、コンクリートを受け止める盤面が、木質合板や鋼板の平板状のものであるため打設コンクリート硬化後の型枠除去面は、変化に乏しいコンクリートの平坦面を呈するものとなっていた。
【0004】
そこで、本出願人は、下記非特許文献1に記載のような型枠のコンクリートの受け面に凹凸模様を形成し、打設したコンクリートの硬化後に型枠を除去すると、コンクリートの表面に、型枠の凹凸模様と同じ凹凸模様が形成されるようにしたコンクリート型枠を開発し、提案するとともに実施している。
【0005】
また、このような打設コンクリートの硬化後に型枠を除去する一般的なコンクリート擁壁の形成手段としては、本出願人の出願に係る下記特許文献1の、殊に図1及び図3にみられるように、コンクリート打設予定空間の前面に立設した支柱(主支柱1)に対して、コンクリート打設予定空間側にコンクリート受け面を向けて、多数のコンクリート型枠Cを上下左右に密着させながら連結して、打設コンクリートの受け面を形成していた。
【0006】
他方、このような打設コンクリートの硬化後に型枠を除去するという一般的な型枠除去作業を必要としないコンクリート擁壁の形成手段として、本出願人は下記特許文献2の、殊に図1,図2及び図5,図9にみられるように、コンクリート打設予定空間Aの前面に立設した支柱(建込みフレーム2)に対して、コンクリート型枠(表装型枠1)のコンクリート打設予定空間A側に、コンクリート型枠1の背面側を向けて、即ち、背面側をコンクリート受け面としてコンクリート型枠1を、上下左右に密着させながら多数連結し、これらの型枠1の背面側で打設コンクリートを受け止めさせることによって、打設コンクリートの表面に型枠1を連結一体化させて、打設コンクリートの硬化後も型枠を除去することなく残存させておき、型枠1をコンクリートの表面材として使用するようにした工法についても発案し提案している。
【特許文献1】特開平6−200513号公報
【特許文献2】特開2004−162433号公報
【非特許文献1】実公平2−19470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前2者(非特許文献1及び特許文献1)の、打設コンクリートの硬化後に型枠を除去するという方法にあっては、前記の型枠除去作業と、除去した型枠の表面に付着したコンクリートの除去清浄化作業とが必須の作業であってこれを省略することができないという課題を有し、更に、型枠除去後のコンクリート表面、即ち、擁壁の表面が、適宜の凹凸を有するものであっても、コンクリートの地肌を呈したものであるため、美観に欠ける点で好ましいものとは言えない。
【0008】
他方、後者(特許文献2)の、型枠をコンクリートの表面に残存させて表装体として使用する方法のものにあっては、型枠除去作業と、付着コンクリートの清掃作業とを必要としない点で大いに好ましい方法ではあるが、擁壁の表面が、残存させた型枠そのものであるため、この場合も変化に乏しく、美観に欠けるという課題を払拭することはできないものであった。
【0009】
そこで、本発明は、このような先行開発したコンクリート擁壁形成手段が有していた課題を一挙に解決することができる手段を開発したもので、前記後者の方法のように、コンクリートを打設した後は、コンクリートを受け止める型枠を取り外すことなく、打設コンクリートの硬化後もコンクリート面の表層材としてそのままコンクリート面に残存させておき、その後において、何らの追加的な作業をも必要とすることなく、月日の経過とともに、コンクリートの表面に草花や低木が極めて自然な状態で発芽して次第に生育し、緑で覆われることとなる土留め壁や擁壁を形成することができる手段をここに提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために講じた本発明の請求項1に記載の構築用表層型枠の構成を、実施例において使用した符号を用いて説明すると、横長の長方形状に形成された概略板状物で、表面1側に、横方向全長に亘って延びる凹入溝2が上下方向に複数段形成され、これらの凹入溝2のうち少なくとも一つの凹入溝が植物種子を混合した種子混合材Mを受容させるに足る深溝20に形成され、背面11側には、打設コンクリートを受け止めるための横方向全長に亘って延びるコンクリート受け溝12が上下方向に複数段形成されている構成としたものである。
【0011】
請求項2に記載の構築用表層型枠の構成は、横長の長方形状に形成された概略板状物で、表面1側に、横方向全長に亘って延びる凹入溝2が上下方向に複数段形成され、これらの凹入溝2のうち少なくとも一つの凹入溝が植物種子を混合した種子混合材Mを受容させるに足る深溝20に形成され、背面11側には、打設コンクリートを受け止めるための横方向全長に亘って延びるコンクリート受け溝12が上下方向に複数段形成されている型枠であって、上辺部31の上下方向所定長さ部分aと下辺部32の上下方向所定長さ部分bとの肉厚が、横方向全長に亘って他の部分に比して薄く形成され、前記上辺部31の所定長さ部分aの下端部分には外方に向かって突出する段部33が形成され、型枠どうしの上下方向積み重ね時に、下辺部32の所定長さ部分bの下端面34が該段部33上に載置されて支持される構成としたものである。
【0012】
請求項3に記載の構成は、請求項1または2に記載の構築用表層型枠における、型枠の長辺及び短辺が、構築用の通常型枠の寸法とほぼ同じか、そのほぼ整数倍若しくは整数分の1のサイズに形成されている構成としたものである。
【0013】
請求項4に記載の構成は、請求項1乃至3の何れかに記載の構築用表層型枠における、型枠の上辺部31における所定長さ部分aの上端側に、横方向全長に亘って延びる最薄肉部cが形成され、型枠どうしの上下方向積み重ね状態において、下辺部32における所定長さ部分bとの間に、種子混合材Mを受容させるに足る深溝20aが形成される構成としたものである。
【0014】
請求項5に記載の構成は、請求項1乃至4の何れかに記載の構築用表層型枠における、植物種子混合材Mが、天然繊維や天然素材で形成された織布か不織布、葦・ススキ・竹等の未利用植物や、間伐材のような未使用植物、廃棄木材のような廃棄植物等の、チップ状加工物や粉粒状加工物の単種類または混合物としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、背面側をコンクリート受け面として使用する型枠であって、背面側を打設コンクリートと結合させて擁壁の表面に長期間に亘って残存させておくために、打設コンクリートを受け止めるための横方向全長に亘って延びるコンクリート受け溝を上下方向に複数段形成してあるものとし、表面側には、横方向全長に亘って延びる凹入溝を上下方向に複数段形成してあるものとし、これら複数の凹入溝のうち少なくとも一つの凹入溝を植物種子を混合した種子混合材を受容させるに足る深溝としてあるものとすることによって、この深溝に、植物種子を混入した植物種子混合材を予め挿入してあるものとしておくことによって、土留め壁や擁壁の形成に際して、この型枠を使用するだけで、その後において、何らの事後的作業をも必要とすることなく、そのままコンクリート面に残存させておくだけで、散水や降雨によって、深溝内に受け止められた水分により、植物種子が発芽し、月日の経過とともに成長し、擁壁の表面を草類や花類や低木で覆われるようにしたものであるから、極めて自然環境に優しい土留め壁や擁壁を得ることができるという顕著な効果を有するものである。
【0016】
更に、型枠の表面側には、該植物種子混合材を入れた深溝のみならず、該深溝とは別に横方向全長に亘って延びる凹入溝を上下方向に複数段形成してあるので、これらの溝にも自然に塵埃類が入り込み堆積して雑草類が成長し、月日の経過に伴って、全体として擁壁の表面を雑草類や花類や低木類で覆われることとなり、極めて自然環境に優しい土留め壁や擁壁を得ることができるという効果を期待することができるものである。
【0017】
更に、本発明は、請求項2に記載のように、前記構成を備えているものでありながら、上辺部の上下方向所定長さ部分と下辺部の上下方向所定長さ部分との肉厚を、横方向全長に亘って他の部分に比して薄く形成してあるものとし、上辺部の所定長さ部分の下端部分に、外方に向かって突出する段部を形成してあるものとし、型枠どうしの上下方向積み重ね時に、上部に載置する型枠の下端面を該段部上に載置させて支持させるようにしてあるので、上下方向に複数段積み上げ配置するに際して、積み上げが容易で、迅速確実にできるという効果を、上記効果と併せて期待できるものである。
【0018】
請求項3に記載のように、型枠の長辺及び短辺を、構築用の通常型枠の寸法とほぼ同じか、そのほぼ整数倍若しくは整数分の1のサイズに形成してあるものとしておくと、何らかの計算間違い等で型枠に不足が生じた時、工事を中断することなく、通常型枠で臨時的に補うことができる利点がある。
【0019】
請求項4に記載のように、型枠の上辺部における所定長さ部分の上端側に、横方向全長に亘って延びる最薄肉部を形成し、型枠どうしの上下方向積み重ね状態において、下辺部における所定長さ部分との間に、種子混合材を受容させるに足る深溝が形成される構成としておくと、この部分の深溝にも種子混合材を収容させておくことができるので、更に、表面緑化の促進に寄与させることができる。
【0020】
請求項5に記載のように、深溝に入れる植物種子混合材を、天然繊維や天然素材で形成された織布か不織布、葦・ススキ・竹等の未利用植物や、間伐材のような未使用植物、廃棄木材のような廃棄植物等の、チップ状加工物や粉粒状加工物の単種類か混合物を使用することによって、深溝内への充填の容易化と、吸水保湿の良好性による混入種子の発芽の促進と、発芽植物の幼根の生長促進と、自然への還元の良好性とを、確実に早期に期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明にいう構築用表層型枠の実施に当たっては、型枠を形成する素材として、コンクリートの押し出し成形、コンクリートに天然繊維,化学繊維,葦・ススキ・竹等の未利用植物の繊維,間伐材や廃棄植物の繊維,ガラス繊維等を混入して強化した繊維混入コンクリートを押し出し成形したものが好ましい。さらに、他の素材として、アルミ材の押し出し成形、硬質合成樹脂材の押し出し成形、ガラス繊維を混合したガラス強化合成樹脂材の押し出し成形品としてもよい。このような押し出し成形品とするのが、押し出した長尺物を所望の定寸にカットすればよいので生産性向上のために好ましい。また、植物種子混合材は、ソーセージ状に可撓性を維持させた状態で所定の太さに押し出した柔軟棒状体の周りを、天然繊維製の糸状物によって網筒状に包んであるものとし、型枠の横方向長さ等に合わせて適宜に切断して使用することができるものとしておくのが好ましい。言うまでもなく、太さは、深溝内に押し込んで安定する程度のものであることが好ましい。
【実施例】
【0022】
以下本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図中、図1乃至図3は、本発明の第1実施例の構築用表層型枠を示す図であって、図1はその表面側の斜視図、図2は同側面図、図3は背面側の斜視図である。
【0023】
而して、該実施例に示した型枠Fは、図2の側面図にみられる凹凸を備えた形状とされ全体として平板状に、コンクリート素材や繊維強化コンクリート素材を押し出して成形し、後述する所要の長さに切断したものである。
【0024】
この実施例に示した平板形の型枠Fは、上下方向の長さ=300mm、左右方向の長さ=1500mm、厚さ20mmとしたものである。この型枠Fの平面寸法は、現在一般的に使用されている合板製型枠の大きさ=上下方向の長さ=900mm、左右方向の長さ=1500mm、または1800mmに形成してもよいが、コンクリート押出機の大型化等を考慮して、合板製型枠の整数分の1としておくのが運搬や現場での配置作業が容易である点で好ましい。この上下方向の長さを300mmとした点は、金属製型枠であるメタルフォームの寸法と同じ寸法である点でも使用し易いという利便性がある。このように、上下方向の長さを合板製型枠(コンパネ)の3分の1または2分の1等の整数分の1または整数倍としておき、また、横方向の長さについても、メタルフォームの寸法と同じ1500mmまたは1800mmに形成しておくのが、合板型枠や金属型枠と同様の工事方法で使用することができる点で好ましい。
【0025】
而して、この実施例に示した型枠Fは、図1及び図2のように、表面1側には、横方向全長に亘って延びる凹入溝2が上下方向に7段形成されていて、そのうちの上下方向ほぼ中間部に位置する凹入溝を、植物の種子を混合した種子混合材Mを挿入した時、容易にはみ出すことなくしっかりと受け止めさせるのに充分な深さを備えた深溝20に形成してある。また、背面11側には、図2及び図3のように、打設コンクリートを受け止めさせるための横方向全長に亘って延びるコンクリート受け溝12を上下方向に3段形成してある。
【0026】
また、上辺部31の上下方向所定長さ部分aと下辺部32の上下方向所定長さ部分bとの肉厚を、横方向全長に亘って他の部分に比して薄く形成してあるものとし、更に、上辺部31の所定長さ部分aの下端部分には、背面側に向かって突出する段部33を形成してあるものとし、型枠F,Fを上下方向に積み重ねた時に、下辺部32の所定長さ部分bの下端面34が該段部33の上に載置させて支持される構造としたものである。
【0027】
このようにした該第1実施例に示した型枠Fは、前記上辺部31の上下方向所定長さ部分aの上部に更に薄肉とした部分cを形成してあるものとし、型枠F,Fどうしを上下方向に積み重ねた時、表面1側に形成してある前記上辺部31の上下方向所定長さ部分aと下辺部32の上下方向所定長さ部分bとの間に、肉厚を薄くした部分cによって、上下の型枠F,Fどうしの積み重ね部分に、前記深溝20と同様形状の深溝20aが形成できるようにしてある。
【0028】
このようにした型枠は、表面1側に形成した上下方向7段の凹溝2と、背面11側に形成した上下方向3段のコンクリート受け溝12とによって、植物種子混合材Mを嵌め込む深溝20のみならず、型枠の表面全体で緑化を促進し易くし、背面側では打設コンクリートとの接触面の大面積化と剥離防止作用とをさせ、更には、運搬時の軽量化と組み立て作業の容易化等を総合的に図ったものである。
【0029】
このようにした型枠Fの表面側1の深溝20に入れる素材としては、天然繊維や天然素材で形成された古紙や廃棄布のような紙類や・織布類や編組糸・不織布等の繊維類、葦・ススキ・竹等の未利用の主として稲科の植物や、間伐材のような未使用植物や古木材のような廃棄植物繊維類を破砕加工したり粉砕加工することによってチップ状や粉粒物状とした素材やその混合物に、雑草の種や花の種や低木の種等の植物種子を混入した植物種子混合材Mを使用する。この混合材Mは、擁壁等のコンクリート表面に取り付けられた型枠Fに対して、消防ホースによる散水のように、粉粒体を放散させて、型枠Fの深溝20や他の溝2に入り込ませる方法をとることができる。また、図2に示したように、型枠Fの表面側1に形成してある深溝20にフック状部材fの一端を係止させて他端部を型枠Fの表面側1に突出させておき、この突出部に植物種子混合材Mを入れた袋またはネットを乗せたり、吊り下げたりして実施してもよい。
【0030】
しかしながら、このような擁壁等の形成後における作業を回避または不要とするための手段として、例えば図4に示したように、前記混合材Mをソーセージ状に加圧形成したり、加圧機から所定の太さに押し出して得たものの周りを、天然繊維製の糸mまたは紐状物によって網筒状に包んで柔軟棒状体とし、これを必要長さ、ここでは型枠Fの横方向長さに合わせて裁断したものを型枠Fの深溝20の中に予め押し込んであるものとして実施することもできる。
【0031】
図5乃至図7は、以上に示した型枠の使用例について説明する図である。図5は構築現場の側面図、図6は型枠と支柱と結合金具との関係説明用斜視図、図7は型枠と支柱と固定金具との斜視図である。
【0032】
而して、該型枠Fは、図5のように、コンクリート打設予定空間Sの前面、即ち、擁壁形成必要箇所の前面に支柱Pを立設し、この支柱Pに対して、そのコンクリート打設予定空間S側に、型枠Fと同形同大に形成した型枠支え枠Hを当てつけて、更に、そのコンクリート打設予定空間S側に、型枠Fのコンクリート受け面(背面)5側を向けた状態として、多数の型枠Fを上下左右方向に密着させながら、図6に示した結合金具Cを使用して連結する。また、必要に応じてその背面側には、従来工法の場合と同様に、支え金具pを連結して打設コンクリート圧を受け止めさせる。
【0033】
このようにして、多数の型枠Fによって打設コンクリートの受け面を形成させた後、コンクリート打設予定空間Sにコンクリートを打設する。この具体的な手段は周知であり、前記特許文献1にも記載されている通りである。打設コンクリートの硬化後は、各型枠Fはコンクリートの表面に取り付けられた状態で表装層として残し、支柱Pと支え枠Hと結合金具Cを取り外して工事を終わる。
【0034】
この型枠Fは、図6に示したように、ロッド金具41の先端部に側面視でL字形となるように舌片形金具42を連結し、該舌片形金具42を上記型枠Fの深溝20の上部に当てつけて回転させることにより、舌片の先端部を深溝20に差し込んで、後端側に形成してある締め付けナット43を、図7に示した座金44を介して、その外側から締め付けて支柱Pに固定する。これらの図6及び図7では、説明の便宜上型枠Fを支柱Pに直接取り付けたものとして図示してある。言うまでもなく、打設コンクリート圧が小さい時は、このように型枠Fを支柱Pに直接固定させてもよいが、打設コンクリート圧が大きい場合は、図5に示したように、例えばメタルフォームのような型枠支え枠Hを支柱Pとの間に介在させることにより、打設コンクリート圧に耐えさせるように、強度を増加させて使用することができる。このように表面側に補強枠を当てつけて使用することにより、必要以上の強度を保持するものとしておく必要はない。
【0035】
このようにして、本発明にいうところの型枠Fをコンクリート硬化後の擁壁の表面に残して表面を覆わせた状態としておくことによって、その後においては何らかの緑化用の手段や手数を施すことなくそのまま放置しておくだけで、時間の経過とともに、降雨等による吸湿吸水によって型枠Fの深溝内外に予め埋め込んだり吊り下げたりしておいた種子が発芽し、徐々に生長し、次第に擁壁の表面を緑に変えてくれることとなる。
【0036】
本発明にいうところの型枠Fは、擁壁の全表面に使用する必要はなく、例えば、人目に付き易い所要の高さ部分に使用し、奥深い山地では目立ち易い一部のみに使用することとし、人目に付きにくい箇所や擁壁の高い箇所では、部分的に従来通りのコンクリート型枠を使用した工法を採用することによって、本発明にいう型枠Fの使用量を少なくすることも可能である。
【0037】
図8乃至図16は、支柱に関する説明図であって、図8は支柱の一部中断正面図、図9は同側面図、図10は支柱構成管材の平面図、図11は図8におけるA−A線断面図、図12は同斜視図、図13はトップ金具の平面図、図14は同正面図、図15は同左側面図、図16は同斜視図である。
【0038】
而して、上記実施例に示した支柱Pは、特定構造のものでなければならないものではないが、次の構造のものとしておくと、前記図6に示したように、結合金具Cを支柱Pのセンター、即ち支柱Pの幅方向の中心部分に形成してある空間部sを通して金具桿41を締め付けることができる点で好ましい。該支柱Pは、図10に示したように、断面長方形の角管を支柱構成管材45として、図8に示したように、2本対向させて配置し、その管材間に空間部sを形成したものである。支柱Pの寸法は、特定されるものではないが、参考までに、この実施例に示した支柱Pの場合、長さは概寸3,000mm、図8の正面側の幅162mm、中間空間部の幅46mm、前後幅150mmである。
【0039】
この空間部sは、これら両管材45,45の下端部に固定して位置決めするベース金具50と、上端部に固定して位置決めするトップ金具55とに固定したコの字形金具52,52によって位置を確定させ、図8,9にみられるように、これら両管材45,45の下端部と上端部とを、コの字形金具52,52に溶接したナット金具53に対するボルト53bによる締め付け固定によって形状固定してある。
【0040】
なお、前記管材45は、図10のように長手方向の一面の中央部分を肉厚に形成してあり、この肉厚部をコの字形金具52,52に連結するようにしてある。これらの管材45の上端部に固定するトップ金具55は、基盤56の下側に連接してある前記コの字形金具52,52の他に、基盤56の上面には、足場形成用の管部材のような他の管材や棒部材を連結するためのボルト穴59付きの2枚の板金具57,58を平面視L字形に連設したものとしてある。
【0041】
以上本発明の代表的と思われる実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例に示した構造のみに限定されるものではなく、本発明にいう前記の構成要件を備えていて、本発明にいう目的を達成し、本発明にいう上記の効果を有する範囲内において、適宜に改変して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明にいうところの構築用表層型枠は、通常の土留め壁や擁壁の構築工法と全く同じ工法で使用することができるものであり、コンクリート打設後には、打設コンクリートを覆う表装層としてコンクリートの表面に残したままとしておくことによって、時間の経過とともにその表面が雑草や草花で覆われた緑化状態が得られるので、今後は大いに世上に受け入れられ、普及する可能性が大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1実施例の構築用表層型枠を示す表面側の斜視図。
【図2】同側面図。
【図3】同背面側の斜視図。
【図4】本発明の別の実施例を示す図。
【図5】構築現場の側面図。
【図6】型枠と支柱と結合金具との関係説明用斜視図。
【図7】型枠と支柱と固定金具との斜視図。
【図8】支柱の一部中断正面図。
【図9】同側面図。
【図10】支柱構成管材の平面図。
【図11】ベース金具の平面図。
【図12】同斜視図。
【図13】トップ金具の平面図。
【図14】同正面図。
【図15】同左側面図。
【図16】同斜視図。
【符号の説明】
【0044】
1 表面
11 背面
12 背面側コンクリート受溝
2 表面側の溝
20 深溝
20a 深溝
31 上辺部
32 下辺部
33 段部
34 下端面
M 種子混合材
a 上部の所定長さ部分
b 下部の所定長さ部分
c 最肉薄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長の長方形状に形成された概略板状物で、
表面(1)側に、横方向全長に亘って延びる凹入溝(2)が上下方向に複数段形成され、
これらの凹入溝(2)のうち少なくとも一つの凹入溝が植物種子を混合した種子混合材(M)を受容させるに足る深溝(20)に形成され、
背面(11)側には、打設コンクリートを受け止めるための横方向全長に亘って延びるコンクリート受け溝(12)が上下方向に複数段形成されている構築用表層型枠。
【請求項2】
横長の長方形状に形成された概略板状物で、
表面(1)側に、横方向全長に亘って延びる凹入溝(2)が上下方向に複数段形成され、
これらの凹入溝(2)のうち少なくとも一つの凹入溝が植物種子を混合した種子混合材(M)を受容させるに足る深溝(20)に形成され、
背面(11)側には、打設コンクリートを受け止めるための横方向全長に亘って延びるコンクリート受け溝(12)が上下方向に複数段形成されている型枠であって、
上辺部(31)の上下方向所定長さ部分(a)と下辺部(32)の上下方向所定長さ部分(b)との肉厚が、横方向全長に亘って他の部分に比して薄く形成され、
前記上辺部(31)の所定長さ部分(a)の下端部分には外方に向かって突出する段部(33)が形成され、型枠どうしの上下方向積み重ね時に、下辺部(32)の所定長さ部分(b)の下端面(34)が該段部(33)上に載置されて支持される構造としてある構築用表層型枠。
【請求項3】
型枠の長辺及び短辺が、構築用の通常型枠の寸法とほぼ同じか、そのほぼ整数倍若しくは整数分の1のサイズに形成されている請求項1または2に記載の構築用表層型枠。
【請求項4】
型枠の上辺部(31)における所定長さ部分(a)の上端側に、横方向全長に亘って延びる最薄肉部(c)が形成され、型枠どうしの上下方向積み重ね状態において、下辺部(32)における所定長さ部分(b)との間に、種子混合材(M)を受容させるに足る深溝(20a)が形成される構造としてある請求項1乃至3の何れかに記載の構築用表層型枠。
【請求項5】
植物種子混合材(M)が、天然繊維や天然素材で形成された織布か不織布、葦・ススキ・竹等の未利用植物や、間伐材のような未使用植物、廃棄木材のような廃棄植物等の、チップ状加工物や粉粒状加工物の単種類または混合物である請求項1乃至4の何れかに記載の構築用表層型枠。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2009−150120(P2009−150120A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329084(P2007−329084)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(391058369)株式会社エイチ・エスコーポレーション (8)
【Fターム(参考)】