説明

構造体連結構造及び建物

【課題】建物の構造体を基礎の側方で支持する場合において、その構造体を安定して支持することができる構造体連結構造及び建物を提供する。
【解決手段】基礎11は、鉄筋として基礎11に沿って延びる上端主筋55、腹筋56及び下端主筋57と、上下に延びるあばら筋58とを有している。基礎11にはアンカー金具41が設けられ、アンカー金具41は基礎11の立ち上がり部11bの側面に板面が露出する平板状の連結プレート42と、連結プレート42から基礎11の内方に延びるアンカー部43とを備えている。アンカー部43は上下方向に所定間隔をおいて上側アンカー部43Aと下側アンカー部43Bとを備え、上側アンカー部43Aが上端主筋55の上方で上端主筋55と交差している一方、下側アンカー部43Bが腹筋56の上方で腹筋56と交差している。連結プレート42の露出面にはブラケット46を介してスキップ柱47が連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体連結構造及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、上階と下階との間に、それら上階及び下階の階高よりも低い中間階を形成し、その中間階を収納スペースとして利用可能としたものが知られている。かかる建物では、その骨組構造が建物の全体構造を構成する主架構と、収納スペースを形成する副架構とから構成されているものがある。例えば、特許文献1では、主架構を構成する柱を基礎の立ち上がり部上において支持させる一方、副架構を構成する柱を立ち上がり部の側面に設けられた支持金具に連結させて基礎の側方において支持させる骨組構造が開示されている。この場合、副架構が主架構から独立して設定されるため、副架構を考慮に入れずに主架構の構造計算をすることができ、その結果従来の建物と主架構を同一のものとして設計することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−315166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の骨組構造は、基礎の立ち上がり部の側方において柱を支持する構造であるため、基礎の立ち上がり部上で下方より柱を支持する一般の建物構造と比べ、安定性の面で懸念がある。また、上記特許文献1の構造は、支持部材により柱を支持する構成であるため、重量物である柱(ひいては副架構)の荷重が支持部材に作用し、ひいてはその荷重が基礎に作用する。そのため、支持部材と基礎との連結構造にはその荷重を安定して支える構造が求められるが、上記文献1にはかかる連結構造についてその詳細が開示されていない。
【0005】
なお、かかる問題は、基礎の立ち上がり部の側方において柱を支持する場合にのみ生じる問題ではなく、基礎の立ち上がり部の側方において梁等その他の構造体を支持する場合においても同様に生じる問題である。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建物の構造体を基礎の側方で支持する場合において、その構造体を安定して支持することができる構造体連結構造及び建物を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の構造体連結構造は、建物の基礎の立ち上がり部に一部が埋設されたアンカー金具を介して建物の構造体を前記基礎に連結する構造体連結構造において、前記アンカー金具は、前記基礎の立ち上がり部の側面に露出して前記構造体を連結する連結部と、この連結部から前記基礎の内方に延びるアンカー部とを備え、前記アンカー部は、前記基礎内に配設されている複数の基礎鉄筋のうち前記基礎の長手方向に延びる横鉄筋の上方で当該横鉄筋と交差していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、基礎の立ち上がり部の側面に露出するアンカー金具の連結部に建物の構造体(例えば柱や梁)を連結させることにより、建物の構造体を同立ち上がり部の側方において支持することができる。この場合、建物の構造体の荷重がアンカー金具に作用することとなるが、アンカー金具において連結部から基礎の内方に延びるアンカー部が基礎の長手方向に延びる横鉄筋の上方でその横鉄筋と交差しているため、アンカー金具に作用する荷重を基礎のコンクリートだけでなく横鉄筋によっても支えることができる。これにより、建物の構造体を基礎の側方で支持する場合において、その構造体を安定して支持することができる。
【0009】
また、アンカー部は、異形鉄筋により形成されているとよい。これにより、基礎内のコンクリートに対するアンカー部の付着性を異形鉄筋の凹凸(節)により高めることができるため、アンカー部の基礎からの抜け防止を高める効果を期待できる。
【0010】
第2の発明の構造体連結構造は、第1の発明において、前記アンカー部は、前記基礎の内部において、前記基礎の立ち上がり部の厚み方向に延び前記横鉄筋の上方で当該横鉄筋と交差している第1アンカー部と、前記第1アンカー部に対して屈曲している第2アンカー部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、アンカー部において第1アンカー部が横鉄筋の上方でその横鉄筋と交差しているため、アンカー金具に作用する構造体の荷重を基礎のコンクリートだけでなく横鉄筋によっても支えることができる。したがって、第1の発明の効果を得ることができる。また、アンカー部において、基礎の立ち上がり部の厚み方向に延びる第1アンカー部に対して第2アンカー部が屈曲して設けられているため、アンカー部の全長を同立ち上がり部の厚み寸法よりも長くすることができる。これにより、アンカー部に第2アンカー部が設けられていない場合と比べ、基礎内のコンクリートに対するアンカー部の定着性を高めることができ、その結果アンカー部の基礎からの抜け防止効果を高めることができる。
【0012】
第3の発明の構造体連結構造は、第2の発明において、前記第2アンカー部は、前記基礎鉄筋を挟んで前記連結部とは反対側において当該基礎鉄筋と交差していることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、アンカー部の第2アンカー部が、基礎鉄筋を挟んで連結部とは反対側においてその基礎鉄筋と交差しているため、構造体に外力が加わる等してアンカー金具に基礎からの引き抜き力が作用した場合にその引き抜き力を基礎のコンクリートのみならず基礎鉄筋によっても受けることができる。これにより、より一層安定した状態で構造体を基礎の側面に連結することができる。
【0014】
第4の発明の構造体連結構造は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記アンカー金具は、前記連結部を2つ備えており、前記各連結部は、前記基礎の立ち上がり部における両側面にそれぞれ露出して設けられ、前記アンカー部は前記各連結部を繋ぐように設けられていることを特徴とする
本発明によれば、基礎の立ち上がり部における両側面にそれぞれ連結部が露出しており、その2つの連結部に建物の構造体をそれぞれ連結させることができる。つまり、一つの基礎に対して二つの構造体を基礎の側方において支持させることができる。また、アンカー部が横鉄筋の上方で当該横鉄筋と交差しているため、アンカー金具に作用する2つの構造体の荷重を基礎のコンクリートのみならず横鉄筋によっても支えることができる。
【0015】
ここで、連結部を一つだけ備えたアンカー金具を二つ用いても同様の効果を得ることができるが、この場合、アンカー金具を基礎に配置する際基礎内で互いのアンカー部同士が干渉しないよう配慮する必要がある。その点、本発明によれば、そのような配慮をすることなく、上記の効果を得ることができる利点がある。
【0016】
第5の発明の構造体連結構造は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記連結部には、前記構造体の連結基準位置に対して左右それぞれに前記アンカー部が設けられ、前記各アンカー部が前記連結基準位置に対して非対称に配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、アンカー金具において、連結部には構造体の連結基準位置に対して左右非対称にアンカー部が配置されている。これにより、同じ二つのアンカー金具を、基礎の立ち上がり部の両側面において基礎の長手方向における同位置にそれぞれ設ける場合に、互いのアンカー部同士が干渉することなく設けることができる。
【0018】
第6の発明の構造体連結構造は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記基礎内には、前記横鉄筋が上下方向に所定間隔をおいて複数配設されている一方、前記アンカー金具は、前記アンカー部を上下方向に所定間隔をおいて複数備えており、これら複数の各アンカー部がそれぞれ別々の前記横鉄筋の上方で各々の横鉄筋と交差していることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、複数のアンカー部がそれぞれ別々の横鉄筋の上方で各々の横鉄筋と交差しているため、アンカー金具に作用する構造体の荷重を基礎のコンクリートの他、複数の横鉄筋によって支えることができる。この場合、構造体の荷重を複数の横鉄筋に分散させることができるため、1本の横鉄筋によりその荷重を支える場合と比べ、(1本当たりの)横鉄筋に作用する荷重を小さくすることができる。これにより、建物の構造体を基礎の側方で支持する場合において、より一層安定した状態で支持することができる。
【0020】
第7の発明の建物は、建物の骨組構造として、建物の全体構造を構成する主架構と、建物内の所定の空間を形成し前記主架構とは独立して設定された副架構とを有する建物において、前記基礎の立ち上がり部の上面には、前記主架構を構成する柱が設置されている一方、当該立ち上がり部の側面には、前記副架構を構成する柱が請求項1乃至6のいずれか一項に記載の構造体連結構造により連結されていることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、副架構を構成する柱が基礎の立ち上がり部の側面に構造体連結構造により連結されているため、立ち上がり部の側方でその柱を安定して支持することができる。すなわち、主架構とは独立して設定された副架構を基礎の側方で安定して支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】建物の骨組構造を示す正面図。
【図2】基礎周辺のスキップ架構の構成を示す縦断面図。
【図3】アンカー金具の構成図。
【図4】スキップ架構の分解斜視図。
【図5】アンカー金具の別例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、発明を具体化した一実施形態である建物について、図1を参照しつつ説明する。なお、図1は建物の骨組構造を示す正面図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の建物10は、基礎11上に形成された下階としての一階部分12と、その一階部分12の上方に連続して形成された上階としての二階部分13とを備えている。基礎11は、周知の鉄筋コンクリート造の基礎として構成されており、建物外周部とそれよりも内側の壁(耐力壁等)の設置部分とに設けられ、底部であるフーチング11aとその上方に延びる立ち上がり部11bとからなる。基礎11の立ち上がり部11bの上端(天端)の高さ位置はいずれも同一であるのに対し、フーチング11aの位置は上下相違するものとなっている。これは、例えば図のA部に、床面が地上面GLよりも低いロアストレージ(床下収容部)を形成するためである。
【0025】
建物10は、鋼材が骨組として利用され基礎11上に設けられた骨組構造20を備え、この骨組構造20に外壁その他の各種建築材が設けられることにより構築されている。骨組構造20は、建物10の全体構造を構成する主架構30と、この主架構30から独立して(すなわち絶縁させて)設けられる副架構としてのスキップ架構40とからなる。以下、主架構30及びスキップ架構40について説明する。
【0026】
まず、主架構30について説明すると、基礎11の立ち上がり部11bの上端部には、下階柱31a〜31dが立設されている。ここで、下階柱31b,31dは、剛性維持のためにラチス柱により構成されている。各下階柱31a〜31dの上端は水平方向に延びる上階床梁32と連結されている。その連結構造は、例えば連結金具がそれぞれにボルト止めされたり溶接されたりすることにより実現される。
【0027】
上階床梁32においてその上部に図示しない上階床材が設置されるとともにその下部に下階天井材が設置されることにより、一階部分12と二階部分13との境界部が構築される。上階床梁23には上階柱33a〜33cの下端が連結されており、これら各上階柱33a〜33cの上端には水平方向に延びる上階天井梁(図示略)が連結されている。なお、これらの連結構造も、下階柱31a〜31dの場合と同様、例えば連結金具がそれぞれにボルト止めされたり溶接されたりすることにより実現される。
【0028】
続いてスキップ架構40について説明すると、本実施形態では、ロアストレージの上方に一階床を形成する目的でスキップ架構40が設けられており、図1ではA部を囲む基礎11(フーチング11aが他よりも低位になっている基礎)に連結してスキップ架構40が設けられている。スキップ架構40は、基礎11の立ち上がり部11bの側面部に連結されているスキップ柱部S1と、このスキップ柱部S1の上端に連結されるスキップ床部S2とからなる。
【0029】
次に、図2〜図4を用いて、基礎11及びスキップ架構40の構成をより詳細に説明する。なお、図2は基礎11周辺のスキップ架構40の構成を拡大して示す断面図であり、図3は基礎11に設けられたアンカー金具の構成図であり、図4はスキップ架構40の分解斜視図である。
【0030】
図2に示すように、基礎11は、コンクリートの内部に複数の鉄筋を有しており、具体的には鉄筋として、基礎11に沿って延びる上端主筋55、腹筋56及び下端主筋57と、上下に延びるあばら筋58とを有している。なおここで、上端主筋55、腹筋56及び下端主筋57が横鉄筋であり、あばら筋58が縦鉄筋である。上端主筋55、腹筋56及び下端主筋57はそれぞれ、あばら筋58の上下方向における上端位置、中間位置及び下端位置に配設されており、それら各位置であばら筋58に対し溶接等により固定されている。また、上端主筋55、腹筋56、下端主筋57及びあばら筋58は、異形鉄筋により構成されている。
【0031】
基礎11の立ち上がり部11bには、アンカー金具41が設けられている。アンカー金具41は、その一部がA部側に露出するとともに他の部位が基礎11の立ち上がり部11bの内部に埋められた状態で設けられている。アンカー金具41は、図3に示すように、平板状の連結プレート42と、その連結プレート42の板面(以下、アンカー面という)に連結されたアンカー部43とを備えている。
【0032】
連結プレート42は、例えば金属製の板材よりなる。連結プレート42のアンカー面には、上下方向に所定間隔をおいて複数(図面では2つ)の埋め込みナット44が設けられ、これら各埋め込みナット44が連結プレート42の幅方向における略中央部に配置されている。したがって、各埋め込みナット44に対してアンカー面とは反対側からボルトを締結させることが可能となっている。
【0033】
アンカー部43は、異形鉄筋を曲げ加工することにより形成されており、その全長が基礎11の立ち上がり部11bの厚み寸法よりも長くなるように設定されている。アンカー部43は、上下方向に延び連結プレート42のアンカー面に連結されている連結部43aと、連結部43aの上端部から連結プレート42に対し離間する側(以下、離間側という)に延びる水平部43bと、水平部43bの離間側端部から下方に延びる垂下部43cとを有している。本実施形態では、水平部43bが垂下部43cよりも長くなっている。但し、これを変更して垂下部43cを水平部43bより長くしてもよい。また、本実施形態では、水平部43b及び垂下部43cが連結部43aよりも長くなっている。
【0034】
アンカー部43は、上下方向に所定間隔をおいて複数設けられており、本実施形態ではアンカー部43として上側アンカー部43Aと下側アンカー部43Bとが設けられている。また、図3(b)に示すように、各アンカー部43A,43Bは水平方向に所定間隔をおいてそれぞれ一対ずつ設けられており、それら一対のアンカー部43A(43B)が埋め込みナット44の配設位置を基準として左右非対称に配置されている。すなわち、埋め込みナット44の配設位置は構造体の連結基準位置であり、この連結基準位置に対して左右非対称に各アンカー部43A(43B)が配置されている。
【0035】
連結プレート42の略中央部には、同プレート42を貫通する貫通孔(図示略)が設けられており、その貫通孔には磁石61が設けられている。磁石61は、例えば板状をなして形成されており、その磁石面が連結プレート42におけるアンカー面の対向面と略同一面となるよう設定されている。この磁石61は、基礎11を構築するコンクリートが流し込まれる金属製の型枠にアンカー金具41を取り付けるためのものであり、施工時にはこの磁石61を用いてアンカー金具41を型枠の内側面に連結プレート42の板面(アンカー面の対向面)を当接させた状態で所定位置に取り付けることができる。したがって、本実施形態では、アンカー金具41を容易に所定位置に取り付けることが可能となっており、これにより、施工時の負荷軽減を図ることができる。
【0036】
図2の説明に戻り、上記構成のアンカー金具41は、基礎11に設けられた状態において、連結プレート42のアンカー面とは反対側の面が基礎11の立ち上がり部11bにおけるA部側の側面に露出している。具体的には、連結プレート42は、例えばA部に露出した板面(以下、露出面という)が基礎11の立ち上がり部11bの側面と略同一面となるように設けられている。
【0037】
アンカー部43は、上側アンカー部43Aにおいて、水平部43bが上端主筋55の上方で上端主筋55と交差しており、垂下部43cが上端主筋55を挟んで連結プレート42とは反対側で上端主筋55と交差している。一方、下側アンカー部43Bにおいて、水平部43bが腹筋56の上方で腹筋56と交差しており、垂下部43cが腹筋56を挟んで連結プレート42とは反対側で腹筋56と交差している。なお、上側アンカー部43Aと上端主筋55との間及び下側アンカー部43Bと腹筋56との間にはそれぞれ所定の隙間が設けられており、各アンカー部43A,43Bの周囲にコンクリートが十分に周り込むようになっている。
【0038】
アンカー金具41の連結プレート42には、スキップ柱部S1が連結されている。スキップ柱部S1は、図4に示すように、連結プレート42の露出面に連結されるブラケット46と、上下に延びるスキップ柱47とを備えてなる。ブラケット46は、横断面略コ字状をなす板金部材よりなり、上下方向に延びるように形成されている。ブラケット46は、連結プレート42の露出面に当接される当接板部46aと、当接板部46aの幅方向両端部から基礎11に対して離間する側に折り曲げ形成される一対の側板部46bとを備える。ブラケット46の当接板部46aは、連結プレート42の埋め込みナット44にボルト(図示略)が締結されることによりアンカー金具41に固定されている。
【0039】
ブラケット46の内側には、スキップ柱47の下部が配設されている。スキップ柱47は、H形鋼よりなる柱本体48と、柱本体48の上端部に固定された梁受けプレート49とを備えている。柱本体48は、そのフランジ部48aの外側面をブラケット46の側板部46bの内側面に対向させた状態でブラケット46の内側に配設されており、その配設状態でフランジ部48aがブラケット46の側板部46bにボルト等により固定されている。一方、梁受けプレート49は平板状の板金部材であり、その板面を上方に向けた状態で柱本体48の上端部に溶接等により固定されている。なおここで、ブラケット46及びスキップ柱47(スキップ柱部S1)が建物10の構造体に相当する。また、スキップ柱47は、A部の平面視で少なくとも四隅となる位置にそれぞれ設けられている。
【0040】
各スキップ柱47の梁受けプレート49の上面には、水平方向に延びるスキップ床梁51がそれぞれ連結されている。ここで、各スキップ床梁51がスキップ床部S2を構成している。スキップ床梁51はH形鋼よりなり、その下側フランジ51aが梁受けプレート49に対してボルト等により固定されている。スキップ床梁51においてその上部に図示しないスキップ床材が設置されるとともにその下部にスキップ天井材が設置されることにより、一階部分12においてロアストレージ(A部)とその上方空間との境界部が構築される。
【0041】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0042】
基礎11の立ち上がり部の側面に露出するアンカー金具41の連結プレート42に、ブラケット46を介してスキップ柱47を連結した。これにより、スキップ柱47を基礎11の側方で支持することができる。また、アンカー金具41のアンカー部43を基礎11内における横鉄筋としての上端主筋55又は腹筋56(以下、横鉄筋という)の上方で当該横鉄筋と交差させるようにした。そのため、アンカー金具41に作用するスキップ柱47の荷重を基礎11のコンクリートのみならず、横鉄筋によっても支えることができる。したがって、スキップ柱47を基礎11の側方で支持する場合において、スキップ柱47を安定して支持することができる。
【0043】
基礎11の立ち上がり部の厚み方向に延びる水平部43bと、水平部43bの離間側端部から下方に延びる垂下部43cとを備えてアンカー部43を構成した。ここで、垂下部43cは基礎11の立ち上がり部の厚み方向に対して直交する方向に延びているため、アンカー部43の全長を同立ち上がり部の厚み寸法よりも長くすることができる。これにより、アンカー部43に垂下部43cが設けられていない構成と比べ、基礎11内のコンクリートに対するアンカー部43の定着性を高めることができ、その結果アンカー部43の基礎11からの抜けを防止する効果を高めることができる。
【0044】
また、アンカー部43の垂下部43cを、横鉄筋を挟んで連結プレート42とは反対側において当該横鉄筋と交差させるようにした。これにより、建物10に外力が加わる等してアンカー金具41に基礎11からの引き抜き力が作用した場合にその引き抜き力を基礎11のコンクリートのみならず横鉄筋によっても受けることができる。これにより、より一層安定した状態でスキップ柱47を基礎11の側面に連結することができる。
【0045】
アンカー金具41にはアンカー部43A,43Bを上下方向に所定間隔をおいて複数備え、それら複数のアンカー部43A,43Bのうち上側アンカー部43Aを上端主筋55の上方で上端主筋55と交差させる一方、下側アンカー部43Bを腹筋56の上方で腹筋56と交差させるようにした。これにより、スキップ柱47の荷重を上端主筋55と腹筋56とに分散させることができるため、1本の横鉄筋(例えば上端主筋55)によりその荷重を支える場合と比べ、(1本当たりの)横鉄筋に作用する荷重を小さくすることができる。これにより、スキップ柱47を基礎11の側方で支持する場合において、より一層安定した状態で支持することができる。
【0046】
上側アンカー部43A及び下側アンカー部43Bをそれぞれ水平方向に所定間隔をおいて一対ずつ設けるとともに、それら一対の各アンカー部43A(43B)を埋め込みナット44の配設位置を基準として、つまり連結プレート42の幅方向における中央位置を基準として左右非対称に配置した。これにより、同じ二つのアンカー金具41を、各連結プレート42が基礎11の立ち上がり部11bを挟んで対向するように設ける場合に、互いのアンカー部43同士が基礎11内で干渉するのを回避することができる。
【0047】
アンカー部43を異形鉄筋により構成したため、異形鉄筋の凹凸(節)により基礎11内のコンクリートに対するアンカー部43の付着性を高めることができる。これにより、アンカー部43の基礎11からの抜け防止を高める効果を期待できる。
【0048】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0049】
(1)上記実施形態におけるアンカー金具41に代えて、連結プレート42を2つ備えたアンカー金具を用いてもよい。以下、その具体例について図5を参照しつつ説明する。図5に示すように、アンカー金具65は、対向する2つの連結プレート42と、これら各連結プレート42を繋ぐアンカー部66とを備えている。アンカー部66は、各連結プレート42の間を同プレート42に対して直交する方向に延びる水平部66aと、水平部66aの長手方向両端部からそれぞれ下方に延びる一対の連結部66bとを有しており、これら各連結部66bが各連結プレート42の対向面にそれぞれ溶接等により固定されることで、両連結プレート42とアンカー部66とが一体化されている。また、アンカー部66は、上下方向に所定間隔をおいて複数設けられている。本実施例では、図5に示すように、アンカー部66として上側アンカー部66Aと下側アンカー部66Bとが設けられている。
【0050】
アンカー金具65は、基礎11の立ち上がり部において、その両側面に2つの連結プレート42をそれぞれ露出させた状態で設けられている。具体的には、各連結プレート42は、その板面が基礎11の立ち上がり部の側面と略同一面となるように設けられている。そして、各連結プレート42には、それぞれブラケット46を介してスキップ柱47が連結されている。つまり、本アンカー金具65を用いれば一つの基礎11に対して二つのスキップ柱47を基礎11の側方において支持させることができる。
【0051】
上側アンカー部66Aは、その水平部66aが上端主筋55の上方において当該上端主筋55と交差しており、下側アンカー部66Bは、その水平部66aが腹筋56の上方において当該腹筋56と交差している。したがって、アンカー金具65に作用するスキップ柱47の荷重を基礎11のコンクリートのみならず上端主筋55及び腹筋56によっても支えることができる。これにより、基礎11を挟んだ両側で2つのスキップ柱47を支持する場合において、両スキップ柱47を安定して支持することができる。
【0052】
ここで、上記実施形態におけるアンカー金具41を二つ用いても同様の効果を得ることができるが、この場合、アンカー金具41を基礎11に配置する際基礎11内で互いのアンカー部43同士が干渉しないよう配慮する必要がある。その点、本アンカー金具65を用いれば、そのような配慮をすることなく、上記効果を得ることができる。
【0053】
(2)上記実施形態では、基礎11の側面にアンカー金具41を介してスキップ柱47を連結させる構成について説明したが、これを変更して、基礎11の側面にアンカー金具41を介して床梁等その他の構造体を連結させてもよい。例えば、基礎11の側面に床梁を連結させれば、その分基礎11を減らすことができるため、施工工数の低減を図ることができる。
【0054】
(3)アンカー部43の形状は、上記実施形態における形状に必ずしも限定する必要はなく、その他の形状にしてもよい。例えば、上記実施形態では、アンカー部43に水平部43bの離間側端部から下方に延びる垂下部43cを設けたが、垂下部43cに代えて、水平部43bの離間側端部から下方以外の方向に延びる部位を設けてもよい。例えば、アンカー部43に、水平部43bの離間側端部から基礎11の長手方向に沿って延びる部位を設ければ、その部位を上記実施形態における垂下部43cよりも長く延ばすことができるため、アンカー部の全長をその分長くすることができる。よって、基礎11内のコンクリートに対するアンカー部の定着性をより一層高めることができる。また、この場合、その部位を上端主筋55等の横鉄筋に沿って配設するとともに、結束線等を用いてその横鉄筋と結束するようにしてもよい。これにより、アンカー部43を横鉄筋に対して一体化させることができるため、アンカー金具41と基礎11との連結強度を高める効果が期待できる。さらに、その部位を、あばら筋58を挟んで連結プレート42とは反対側であばら筋58と交差させるようにすれば、建物10に外力が加わる等してアンカー金具41に基礎11からの引き抜き力が作用した場合にその引き抜き力を基礎11のコンクリートのみならずあばら筋58によっても受けることができる。
【0055】
また、アンカー部に、上記実施形態における垂下部43cに代えて、水平部43bの離間側端部から半円状に曲げられたフック部と、そのフック部から連結プレート42側に延びるとともに水平部43bの上方に配置される戻り部とを設けてもよい。この場合、横鉄筋が戻り部と水平部43bとの間を通るようにアンカー部43を配置すれば、横鉄筋の上方において戻り部を当該横鉄筋と交差させることができるため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、この場合、フック部が横鉄筋を挟んで連結プレート42とは反対側において当該横鉄筋と交差するため、アンカー金具41に作用する力を基礎11のコンクリートのみならず横鉄筋によっても受けることができる。これにより、基礎11の側面にスキップ柱47をより一層安定した状態で連結することができる。
【0056】
なお、アンカー部43には、必ずしも垂下部43cを設ける必要はなく、垂下部43cを設けない構成としてもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では、複数のアンカー部43を上下方向及び水平方向にそれぞれ所定間隔をおいて配置する構成としたが、これら各アンカー部43の配置の仕方は必ずしもこれに限定されることはなく任意である。例えば、複数の各アンカー部43を上下方向にのみ又は水平方向にのみ所定間隔をおいて配置するようにしてもよい。また、アンカー部43は必ずしも複数設ける必要はなく、1つだけ設けるようにしてもよい。
【0058】
(5)上記実施形態では、スキップ柱47をアンカー金具41にブラケット46を介して連結したが、ブラケット46を介さないで連結してもよい。例えば、スキップ柱をC型鋼により構成した場合には、スキップ柱のウェブの外側面を連結プレート42の露出面に当接させて、スキップ柱を直接連結プレート42にボルト等により連結することが考えられる。
【0059】
(6)上記実施形態では、アンカー部43と、横鉄筋としての上端主筋55又は腹筋56との間に所定の隙間を設けたが、これを変更して、アンカー部43と横鉄筋とを接触させてもよい。また、この場合、アンカー部43を鉄筋に対して溶接等により固定すれば、アンカー金具41を基礎11に対してより一層強固に連結することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…建物、11…基礎、11b…立ち上がり部、30…主架構、31a〜31d…下階柱、40…副架構としてのスキップ架構、41…アンカー金具、42…連結部としての連結プレート、43…アンカー部、43b…第1アンカー部としての水平部、43c…第2アンカー部としての垂下部、47…構造体としてのスキップ柱、55…基礎鉄筋及び横鉄筋としての上端主筋、56…基礎鉄筋及び横鉄筋としての腹筋、65…アンカー金具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎の立ち上がり部に一部が埋設されたアンカー金具を介して建物の構造体を前記基礎に連結する構造体連結構造において、
前記アンカー金具は、前記基礎の立ち上がり部の側面に露出して前記構造体を連結する連結部と、この連結部から前記基礎の内方に延びるアンカー部とを備え、
前記アンカー部は、前記基礎内に配設されている複数の基礎鉄筋のうち前記基礎の長手方向に延びる横鉄筋の上方で当該横鉄筋と交差していることを特徴とする構造体連結構造。
【請求項2】
前記アンカー部は、前記基礎の内部において、前記基礎の立ち上がり部の厚み方向に延び前記横鉄筋の上方で当該横鉄筋と交差している第1アンカー部と、前記第1アンカー部に対して屈曲している第2アンカー部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の構造体連結構造。
【請求項3】
前記第2アンカー部は、前記基礎鉄筋を挟んで前記連結部とは反対側において当該基礎鉄筋と交差していることを特徴とする請求項2に記載の構造体連結構造。
【請求項4】
前記アンカー金具は、前記連結部を2つ備えており、
前記各連結部は、前記基礎の立ち上がり部における両側面にそれぞれ露出して設けられ、前記アンカー部は前記各連結部を繋ぐように設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の構造体連結構造。
【請求項5】
前記連結部には、前記構造体の連結基準位置に対して左右それぞれに前記アンカー部が設けられ、
前記各アンカー部が前記連結基準位置に対して非対称に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の構造体連結構造。
【請求項6】
前記基礎内には、前記横鉄筋が上下方向に所定間隔をおいて複数配設されている一方、
前記アンカー金具は、前記アンカー部を上下方向に所定間隔をおいて複数備えており、
これら複数の各アンカー部がそれぞれ別々の前記横鉄筋の上方で各々の横鉄筋と交差していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の構造体連結構造。
【請求項7】
建物の骨組構造として、建物の全体構造を構成する主架構と、建物内の所定の空間を形成し前記主架構とは独立して設定された副架構とを有する建物において、
前記基礎の立ち上がり部の上面には、前記主架構を構成する柱が設置されている一方、当該立ち上がり部の側面には、前記副架構を構成する柱が請求項1乃至6のいずれか一項に記載の構造体連結構造により連結されていることを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−209628(P2010−209628A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58909(P2009−58909)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】