説明

構造物の分割式支承装置

【課題】下部構造物に対して上部構造物を分割ゴム支承体で支承し、分割ゴム支承体の空隙部分に土砂等の堆積、目詰まりをさせることなく、長期間に亘ってその支承性能を維持可能な構造物の分割式支承装置の提供。
【解決手段】本発明の構造物の分割式支承装置は、上部構造物30側に固定される上沓11と、下部構造物20、21側に固定される下沓12と、上沓と下沓の間に設けられ、下部構造物に対して上部構造物を支承するとともに、上部構造物と、下部構造物とが相対変位したとき追従して変位可能な2つ以上に分割されている分割ゴム支承体15、16〜19とを備えたものである。分割された分割ゴム支承体の隣接する外周面間の空隙には、空隙を覆って異物を侵入させないとともに、分割ゴム支承体が変位したとき、その変位に影響を与えない覆い体40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物を分割されたゴム支承体で支承する構造物の分割式支承装置に関する。さらに詳しくは、分割されたゴム支承体の空隙を覆って、長期間に亘って、水平分力散支承、免震支承の性能を低下させることがなく構造物を支承することができる構造物の分割式支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の支承装置は、車両が走行する橋桁(上部構造物)等を支承するためのものであり、金属製支承装置、ゴム製支承装置等が知られている。阪神・淡路大地震以降は、ゴム製支承装置が多く採用されるようになっており、ゴム製支承装置には水平力分散支承、免震支承などの種類がある。大荷重を支承する橋梁等構造物の支承装置においては、大型のゴム支承体を使用する必要がある。しかし、大型のゴム支承体を一体成形するのは製造技術、設備等で困難な面があり、複数のゴム支承体に分割して支承することが知られている(例えば、特許文献1,特許文献2,特許文献3参照)。
【0003】
特に、地震時の水平力の支持機能と、常時の回転吸収性能の効果を発揮させるためには、高い静的せん断弾性率のG値〔例えばG14(1.4MPa)以上〕のゴム支承体が必要であるが、高いG値のゴム支承体を大型化させるのは製作技術上困難な状況である。
また、分割したゴム支承体の間にスポンジ材等を挿入し、側面開口部にコーキング処理を施すこともあるが、何の処置を行わない場合もあった。
【特許文献1】特開平10−292313号公報
【特許文献2】特許第2580498号公報
【特許文献3】特許第3079419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゴム支承装置は、橋梁等構造物の施工後はほとんどメンテナンスされることはない。従って、ゴム支承装置は、風雨に曝される野外に設置されており、長期間使用していると、分割されたゴム支承体の空隙に土砂、粉塵、ゴミ等異物の侵入・堆積や堆積物による目詰まりが発生する。また、堆積した土砂に雑草が根を生やし生育してしまうことも生じる。このようなことが起こると、鉛直方向載荷時の側面膨出に影響を与え、水平力分散支承、免震支承としての機能を発揮できないおそれがあるという問題点があった。例えば、地震発生時など支承装置の性能が最大限発揮されなくてはいけない場合に、設計、施工時に設計された性能、または、予定された性能が発揮できないおそれがあるという問題点もあった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術の問題点を解決するためになされたもので、次の目的を達成する。
【0006】
本発明の目的は、分割されたゴム支承体で構造物を支承する分割式支承装置において、分割された空隙部分に土砂等異物を堆積させたり、目詰まりさせることなく、長期間に亘ってその支承性能を維持して発揮できることが可能な構造物の分割式支承装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するための次の手段を有する。
本発明1の構造物の分割式支承装置は、上部構造物側に固定される上沓と、下部構造物側に固定される下沓と、前記上沓と前記下沓の間に設けられ、前記下部構造物に対して前記上部構造物を支承するとともに、前記上部構造物と前記下部構造物とが相対変位したとき追従して変位可能なゴム支承体とを備えた構造物の支承装置において、前記ゴム支承体は、2つ以上に分割され、隣接する外周面間に所定の間隔を有するように形成されている分割ゴム支承体であり、前記分割ゴム支承体には、隣接する前記外周面間の空隙を覆って、前記空隙に土砂を含む異物を侵入させないとともに、前記分割ゴム支承体が変位するとき、その変位に影響を与えることがない覆い体が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明2の構造物の分割式支承装置は、本発明1において、
前記覆い体は、前記空隙を挟む一方の前記分割ゴム支承体と他方の分割ゴム支承体に、前記空隙側に突出するように上下方向の所定の間隔毎に、一方の前記分割ゴム支承体と他方の前記分割ゴム支承体とから交互に突出するように設けられた弾性体からなる複数の瓦状覆い板部で構成され、前記瓦状覆い板部は、前記瓦状覆い板部の下方側の部位の下に次の瓦状覆い板部の上方側の部位が位置するように重なり合って配置されることで前記空隙を覆うものであることを特徴とする。
【0009】
本発明3の構造物の分割式支承装置は、本発明2において、
前記瓦状覆い板部には、表面側の両方の端部に、第1雨水誘導用凸部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明4の構造物の分割式支承装置は、本発明2または3において、
前記瓦状覆い板部には、下方側裏面に凸状の通気用突起が設けられ、適度な通気性を確保できるようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明5の構造物の分割式支承装置は、本発明2から4において、
前記瓦状覆い板部には、下方側表面に略V字状の第2雨水誘導用凸部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明6の構造物の分割式支承装置は、本発明1において、
前記覆い体は、前記空隙を挟む両側の前記分割ゴム支承体に、各々、前記空隙側に突出するように設けられた弾性体からなる長板状覆い板部であり、略L字状に弾性変形させた先端部を互いに当接させることで、前記空隙を覆っていることを特徴とする。
【0013】
本発明7の構造物の分割式支承装置は、本発明1において、
前記覆い体は、前記空隙を挟む両側の前記分割ゴム支承体に、各々、前記空隙側に突出するように、一方の先端に凸状部を、他方の先端に凹状部を形成した長板状覆い板部であり、前記凹状部に前記凸状部を嵌合させた状態を維持して、前記空隙を覆っていることを特徴とする。
【0014】
本発明8の構造物の分割式支承装置は、本発明1において、
前記覆い体は、前記空隙を挟む両側の前記分割ゴム支承体に、各々、前記空隙側に突出するように設けられた長板状覆い板部であり、一方の前記分割ゴム支承体側の長板状覆い板部と他方の前記分割ゴム支承体側の長板状覆い板部とを、前記長板状覆い板部の厚さ方向に重なるように配置して、前記空隙を覆っていることを特徴とする。
【0015】
本発明9の構造物の分割式支承装置は、本発明8において、
一方の前記長板状覆い板部、及び、他方の前記長板状覆い板部には、各々、対向する側に櫛歯が形成され、一方の前記長板状覆い板部側の櫛歯と他方の前記長板状覆い板部側の櫛歯を噛み合わせることで、前記空隙を覆っているものであることを特徴とする。
【0016】
本発明10の構造物の分割式支承装置は、本発明1において、
前記覆い体は、前記空隙に挿入されるとともに、前記空隙を挟む両側の前記分割ゴム支承体に装着され、弾性変形可能な形状に形成されたパッキンであることを特徴とする。
【0017】
本発明11の構造物の分割式支承装置は、本発明1において、
前記覆い体は、弾性変形可能な形状に形成され、前記空隙を挟む両側の前記分割ゴム支承体、または、前記空隙を挟む両側の前記上沓と前記下沓に跨って設けられた覆い板部材であることを特徴とする。
【0018】
本発明12の構造物の分割式支承装置は、本発明1から11において、
前記上部構造物は橋桁であり、前記下部構造物は橋台または橋脚であることを特徴とする。
【0019】
本発明13の構造物の分割式支承装置は、本発明1から12において、
前記分割ゴム支承体は、静的せん断弾性率のG値が14以上のゴム支承体で製作されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構造物の分割式支承装置は、空隙に土砂等異物が侵入しないように、かつ、分割ゴム支承体の変形に影響を与えないように覆い体が設けられているため、長期間に亘って、水平力分散支承、免震支承の性能低下が発生しない。すなわち、いつ発生するかわからない地震発生時において、いつでも、水平力分散支承、免震支承の性能を発揮することができる。
【0021】
また、本発明の覆い体は、分割ゴム支承体の鉛直荷重載荷時の側面膨出に影響を与えることがなく、せん断変形に対する無指向性の確実な追従性能を得ることができる。
さらに、静的せん断弾性率のG値が高い分割ゴム支承体を採用可能であることから、高い破断伸びや変形性能を確保することができ、大荷重の橋梁等構造物を支持するゴム支承装置として最適なものとすることができる。また、高いG値のゴム支承体の製作も容易であり、大荷重用のゴム支承装置において、支承(支持)性能の向上、信頼性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の構造物の分割式支承装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の分割式支承装置に支承された橋梁の全体図、図2は、本発明の構造物の分割式支承装置の平面図、図3は、分割式支承装置を一部断面にした正面図である。図4は、瓦状覆い板部を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図5は、分割ゴム支承体を部分的に示した斜視図である。図6は、分割ゴム支承体(第1、第2ゴム支承体)の変形と覆い体(瓦状覆い板部)との関係を示す説明図であって、(a)は分割ゴム支承体に変形が生じていない状態を示す説明図、(b)は分割ゴム支承体に変形が生じた状態を示す説明図である。
【0024】
図1から6に基づいて、本発明の実施の形態について、説明を行う。
図1に示すように、橋梁1は、橋桁30、30が、橋台20、橋脚21に分割式支承装置10を介して支承されている。図2、3に示すように、分割式支承装置10は、上沓11、分割ゴム支承体15、下沓12とから構成されている。分割ゴム支承体15は、矩形状の第1ゴム支承体16、第2ゴム支承体17、第3ゴム支承体18、第4ゴム支承体19とからなっている。第2ゴム支承体17は、ゴム層52と上側厚板補強板51、薄板補強板53、下側厚板補強板54とが複数層に亘って交互の積層されて一体加硫成形されたものである。上側厚板補強板52が上沓11に、下側厚板補強板54が下沓12に各々ボルト等締結部材で固定されている。なお、第1ゴム支承体16、第3ゴム支承体18、第4ゴム支承体19も、第2ゴム支承体17と同様な構成のものである。
【0025】
第1ゴム支承体16〜第4ゴム支承体19は、例えば、500〜600mmの平面視正方形の大きさで、静的せん断弾性率で、例えばG14(14MPa)、G16(16MPa)、G18(18MPa)などG14以上のゴム支承体である。そして、これらを平面的に並べて配置することで、高いG値を使用した水平力分散支承構造を採用した水平力分散支承装置とすることができる。なお、ゴム支承体は、例えば、500*1000mmの平面視矩形の大きさのものを2個並べたものであってもよく、高いG値のゴム支承体が製作可能な大きさのものを複数個並べて、構造物を支持できるように構成したものであればよい。
【0026】
なお、ゴム層と補強板が積層された分割式の水平力分散支承装置に代えて、分割式の免震支承装置にであってもよい。例えば、高減衰性ゴムと補強板とが複数層に亘って交互に積層され、一体に加硫成型された分割式の免震支承装置としてもよい。高減衰性ゴムと補強板とからなる積層ゴムはゴム自体に高い減衰性能を有する高減衰性ゴムを材料にして製作されたものであるとよい。すなわち、積層ゴムには、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム等のジエン系ゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム等から選択される1種以上のゴムに、カーボンブラック、シリカ、樹脂等の配合剤、また一般的にゴム工業で使用される加硫剤、老化防止剤等より構成される高減衰性ゴムと呼ばれている材料を使用することが好適である。さらに、分割式の免震支承装置は鉛プラグを積層ゴムに埋め込んだものであってもよい。
【0027】
この場合も、第1ゴム支承体〜第4ゴム支承体は、例えば、500〜600mmの平面視正方形の大きさで、静的せん断弾性率で、例えばG14、G16、G18などG14以上のゴム支承体である。そして、これらを平面的に並べて配置することで、高いG値を使用した分割式免震支承装置を構成するとよい。なお、ゴム支承体は、例えば、500*1000mmの平面視矩形の大きさのものを2個並べたものであってもよく、高いG値のゴム支承体が製作可能な大きさのものを複数個並べて、構造物を支持できるように構成したものであればよい。
【0028】
〔覆い体の実施の形態1〕
第1ゴム支承体16〜第4ゴム支承体19には、各々、隣接するゴム支承体間の空隙10a〜10dを覆うように覆い体40が一体に設けられている。図4〜6に従って、第1ゴム支承体16と第2ゴム支承体17との間に設けられた覆い体40について説明する。
【0029】
第1ゴム支承体16の側部には、第2ゴム支承体17側に張り出すように瓦状覆い板部42、44、46が設けられている。瓦状覆い板部42、44、46は、例えば老化防止剤が混練りされたゴム材料で形成されたものあり、第1ゴム支承体16に、加硫接合部42a、44a、46aが加硫成形されて接合されている。第2ゴム支承体17の側部には、第1ゴム支承体16側に張り出すように瓦状覆い板部41、43、45が設けられている。瓦状覆い板部41、43、45は、例えば老化防止剤が混練りされたゴム材料で形成されたものあり、第2ゴム支承体17に、加硫接合部41a、43a、45aが加硫成形されて接合されている。瓦状覆い板部のゴム材料としては、積層ゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴムなどが好適である。そして、瓦状覆い板部41の下部側の下に瓦状覆い板部42の上部側が位置するように重ね合わされている。
【0030】
同様に、瓦状覆い板部42の下部側の下に瓦状覆い板部43の上部側が、瓦状覆い板部43の下部側の下に瓦状覆い板部44の上部側が、瓦状覆い板部44の下部側の下に瓦状覆い板部45の上部側が、瓦状覆い板部45の下部側の下に瓦状覆い板部46の上部側が位置するように重ね合わされている。すなわち、屋根瓦のように瓦状覆い板部41〜46が重ね合わされている。
【0031】
瓦状覆い板部41〜46の表面には、両方の端部には、凸状に形成された第1雨水誘導用凸部41b〜46bが形成されている。このようにすることで、表面側の雨水が瓦状覆い板部41〜46の裏面側に回り込まないようにしている。すなわち、5角形状の下方側に集まり、流出、落下、滴下等していく。すなわち、雨水の大部分は瓦状覆い板部41〜46の表面に沿って流れ、空隙側に侵入しにくくしている。
【0032】
第1ゴム支承体16、第2ゴム支承体17に変形が生じていない状態を図6(a)に示している。第1ゴム支承体16、第2ゴム支承体17に矢印P方向から負荷が加わり、第1ゴム支承体16、第2ゴム支承体17が変形した状態を図6(b)に示している。どちらの場合も、第1ゴム支承体16と、第2ゴム支承体17との間の空隙10aを瓦状覆い板部41〜46が覆って、空隙10a内に土砂、ゴミ、粉塵等異物が侵入して堆積すること、空隙が目詰まりすることを防止している。また、分割式支承装置10の変形に影響を与えることがない。
【0033】
図示はしていないが、矢印P方向の反対側に負荷が加わった場合も同様な変形をし、分割式支承装置10の変形を阻害しない。また、水平面内で矢印P方向と直交する方向に負荷が加わった場合には、瓦状覆い板部41〜46が弾性変形可能なゴム等弾性部材で形成されており、瓦状覆い板部41〜46自体が変形することで分割式支承装置10の変形を阻害することがない。すなわち、せん断変形に対して、確実な無指向性を確保することができる。言い換えると、地震等が発生して分割式支承装置10に変形が生じようとした場合、分割式支承装置10の変形を阻害することがない。
【0034】
同様な構成の覆い体40(瓦状覆い板部41〜46)が、第2ゴム支承体17と第3ゴム支承体18との間の空隙10b、第3ゴム支承体18と第4ゴム支承体19との間の空隙10c、第4ゴム支承体19と第1ゴム支承体17との間の空隙10dを覆うように設けられている(図2参照)。
【0035】
図7は、実施の形態1の覆い体の変形例を示す覆い体の側面図である。
この覆い体140は、瓦状覆い板部141、142の下部の裏面(内面)に凸状の突起(通気用突起)141b、142bを形成したものである。このようにすることで、土砂などの異物の侵入を防止しながら、通気部141c、142cを介して適度な通気性を確保することで、目地部の結露防止、侵入した雨水などの乾燥を促進するものである。すなわち、狭隘な目地部の湿潤状態を維持しないようにし、長期間に亘る性能低下が発生しないようにしている。
【0036】
図8は、実施の形態1の覆い体の他の変形例を示す覆い体の正面図である。
この覆い体240は、瓦状覆い板部241、242、243、244・・の下部側の外面(表面)に、正面視Vの字状の凸部(第2雨水誘導用凸部)241d、242d、243d、244d・・を形成したものである。このようにすることで、土砂等異物の侵入を防止しながら、雨水や浸透水を確実に排水できるようにしたものである。すなわち、雨水等は、5角形状の覆い板の下方先端部である中央部近傍に集まり、中央部または中央部近傍から流出、落下又は滴下していくので、確実に排水できる。この他の変形例は、前述した形態より、積極的に下方先端部に雨水を集めるので排水の確実性が更に高まる。
なお、覆い体は、裏面の凸状の突起、外面のVの字状の凸部の両方が形成されたものであってもよい。
【0037】
〔覆い体の実施の形態2〕
図9は、覆い体の実施の形態2を示す図であって、図9(a)は覆い体の斜視図、(b)は平面図である。
分割ゴム支承体316、317には、各々、対向する側の側面に、薄板状で長手方向に延びた弾性変形可能な長板状覆い板部341、342が設けられている。長板状覆い板部341、342は例えば老化防止剤が混練りされたゴム材料で形成されたものであり、第1ゴム支承体316、第2ゴム支承体317に、各々、一体に加硫成形されている。長板状覆い板部のゴム材料としては、積層ゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴムなどが好適である。そして、第1ゴム支承体316、第2ゴム支承体317を上沓、下沓に固定する際、L字状に変形させた長板状覆い板部341、342を当接させ、空隙を覆うようにしたものである。このL字状に突き当てられた長板状覆い板部341、342の変形、相対移動等により、空隙への異物侵入防止と分割式支承装置(分割ゴム支承体)の変形を阻害しないという両方を満足させている。
【0038】
〔覆い体の実施の形態3〕
図10は、覆い体の実施の形態3を示す図であって、図10(a)は覆い体の斜視図、(b)は平面図である。
第1ゴム支承体416、第2ゴム支承体417には、各々、対向する側の側面に、薄板状で長手方向に延びた弾性変形可能な長板状覆い板部441、442が設けられている。長板状覆い板部441、442は例えば老化防止剤が混練りされたゴム材料で形成されたものであり、第1ゴム支承体416、第2ゴム支承体417に、各々、一体に加硫成形されている。そして、第1ゴム支承体416、第2ゴム支承体417を上沓、下沓に固定する際、長板状覆い板部441、442を、長板状覆い板部441、442の厚さ方向に重ね合わせ、空隙を覆うようにしたものである。長板状覆い板部441、442を重ね合わせたことと、長板状覆い板部441、442自体の変形とにより、空隙への異物侵入防止と分割式支承装置(分割ゴム支承体)の変形を阻害しないという両方を満足させている。
【0039】
〔覆い体の実施の形態4〕
図11は、覆い体の実施の形態4を示す図であって、図11(a)は覆い体の斜視図、(b)は平面図である。
第1ゴム支承体516、第2ゴム支承体517には、各々、対向する側の側面に、薄板状で長手方向に延びた弾性変形可能な平板状の第1長板状覆い板部541、凹状嵌合部542aが形成された第2長板状覆い板部542が設けられている。第1長板状覆い板部541、第2長板状覆い板部542は例えば老化防止剤が混練りされたゴム材料で形成され、第1ゴム支承体516、第2ゴム支承体517に、各々、一体に加硫成形されている。第1長板状覆い板部541の先端側は、凹状嵌合部542aに嵌め合わされる凸状嵌合部541aとなっている。そして、第1ゴム支承体516、第2ゴム支承体517を上沓、下沓に固定する際、第1長板状覆い板部541と第2長板状覆い板部542の凹状嵌合部542aとを嵌め合わせ、空隙を覆うようにしたものである。凸状嵌合部541aと凹状嵌合部542aとが嵌合することと、第1長板状覆い板部541、第2長板状覆い板部542自体の変形とにより、空隙への異物侵入防止と分割式支承装置(分割ゴム支承体)の変形を阻害しないという両方を満足させている。
【0040】
〔覆い体の実施の形態5〕
図12は、覆い体の実施の形態5を示す図であって、図12(a)は覆い体の斜視図、(b)は平面図である。
第1ゴム支承体616、第2ゴム支承体617には、各々、対向する側の側面に、薄板状で長手方向に延びた弾性変形可能な一方の櫛歯部641aが形成された長板状覆い板部641、他方の櫛歯部642aが形成された長板状覆い板部642が設けられている。長板状覆い板部641、長板状覆い板部642は例えば老化防止剤が混練りされたゴム材料で形成され、第1ゴム支承体616、第2ゴム支承体617に、各々、一体に加硫成形されている。長板状覆い板部のゴム材料としては、積層ゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴムなどが好適である。長板状覆い板部642には、櫛歯部642aに後方側に平板部642bが形成されている。そして、第1ゴム支承体616、第2ゴム支承体617を上沓、下沓に固定する際、一方の櫛歯部641a、他方の櫛歯部642aを噛み合わせるとともに、平板部642bが一方の櫛歯部641aの後部側を覆い、空隙を覆うようにしたものである。一方の櫛歯部641a、他方の櫛歯部642aを噛み合わせと、長板状覆い板部641、642自体の変形等とにより、空隙への異物侵入防止と分割式支承装置(分割ゴム支承体)の変形を阻害しないという両方を満足させている。
【0041】
〔覆い体の実施の形態6〕
図13は、覆い体の実施の形態6を示す図であって、図13(a)は覆い体の斜視図、(b)は、図13(a)をA−A線で切断した断面図である。図14は、覆い体の実施の形態6の変形例を示す斜視図である。
この実施の形態6は、空隙に矢羽根状パッキンまたは円形状パッキンを挿入、装着する構成のものである。上側厚板補強板751、ゴム体752、薄板補強板753、下側薄板補強板等からなる分割ゴム支承体717、上側厚板補強板761、ゴム体762、薄板補強板763、下側薄板補強板等からなる分割ゴム支承体716の間に形成された空隙710aに矢羽根状パッキン741が挿入、装着されている。上側厚板補強板751、761に、矢羽根状パッキン741の翼部741aを嵌め合わせ、上沓711または下沓で挟み込んで固定している。
【0042】
図14は、パッキンの形状が矢羽根形状から円形状に変更になったものである。その他は変更がない。分割ゴム支承体816、分割ゴム支承体817の間の空隙に円形状パッキン841が挿入、装着されている。
矢羽根状パッキン、円形状パッキンを空隙に挿入することにより、空隙への異物侵入防止と分割式支承装置(分割ゴム支承体)の変形を阻害しないという両方を満足させている。
なお、矢羽根状パッキン、円形状パッキンは、矢羽根形状、円形状の穴内の表面側に弾性変形可能な仕切壁を設け、矢羽根状パッキン、円形状パッキン内に異物が侵入しないようにしておいてもよい。また、パッキンの形状は、矢羽根状、円形状に限定されることはなく、弾性変形可能な形状であればよい。さらに、パッキンの材質は、ゴム、エラストマー、軟質の合成樹脂など弾性変形可能で、長期間に亘って経年変化が生じないものであればよい。
【0043】
〔覆い体の実施の形態7〕
図15は、覆い体の実施の形態7を示す図であって、図15(a)は正面図、図15(b)は、図15(a)をB−B線で切断した断面図である。覆い板部材941は、平面視略Ω字状の例えば老化防止剤が混練りされたゴム、エラストマー、軟質の合成樹脂等弾性部材で形成されたものである。覆い板部材941は、両端の平面部を、上沓911及び下沓にボルト942、942等締結部材で固定されている。また、覆い板部材941は、ゴム支承体916の厚板補強板と、ゴム支承体917の厚板補強板にボルトで固定されていてもよい。このように、弾性変形可能な覆い板部材で空隙を覆うことで、空隙への異物侵入防止と分割式支承装置(分割ゴム支承体)の変形を阻害しないという両方を満足させている。
なお、覆い板部材は、平面視の形状が、U字状、W字状など弾性変形可能な他の形状のものであってもよい。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の、目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、構造物を橋梁で説明を行っているが、建築物他の構造物であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の分割式支承装置に支承された橋梁の全体図である。
【図2】図2は、本発明の構造物の分割式支承装置の平面図である。
【図3】図3は、本発明の構造物の分割式支承装置を一部断面にした正面図である。
【図4】図4は、実施の形態1の覆い体の瓦状覆い板部を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】図5は、実施の形態1の覆い体(瓦状覆い板部)の斜視図である。
【図6】図6は、実施の形態1の分割ゴム支承体と覆い体(瓦状覆い板部)との関係を示す説明図であって、(a)は分割ゴム支承体が変形していない状態を示し、(b)は分割ゴム支承体が変形した状態を示す説明図である。
【図7】図7は、実施の形態1の覆い体の変形例を示した側面図である。
【図8】図8は、実施の形態1の覆い体の他の変形例を示した正面図である。
【図9】図9は、実施の形態2の覆い体を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図10】図10は、実施の形態3の覆い体を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図11】図11は、実施の形態4の覆い体を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図12】図12は、実施の形態5の覆い体を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図13】図13は、実施の形態6の覆い体を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図14】図14は、実施の形態6の覆い体の変形例を示す斜視図である。
【図15】図15は、実施の形態7の覆い体を示し、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…橋梁
10…分割式支承装置
11…上沓
12…下沓
15…分割ゴム支承体
16…第1ゴム支承体
17…第2ゴム支承体
18…第3ゴム支承体
19…第4ゴム支承体
20…橋台
21…橋脚
30…桁
40、140、240…覆い体
41〜46、141、142、241〜244…瓦状覆い板部
341、342、441、442、541、542、641、642…長板状覆い板部
741…矢羽根状パッキン
841…円形状パッキン
941…覆い板部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物側に固定される上沓と、下部構造物側に固定される下沓と、前記上沓と前記下沓の間に設けられ、前記下部構造物に対して前記上部構造物を支承するとともに、前記上部構造物と前記下部構造物とが相対変位したとき追従して変位可能なゴム支承体とを備えた構造物の支承装置において、
前記ゴム支承体は、2つ以上に分割され、隣接する外周面間に所定の間隔を有するように形成されている分割ゴム支承体であり、
前記分割ゴム支承体には、隣接する前記外周面間の空隙を覆って、前記空隙に土砂を含む異物を侵入させないとともに、前記分割ゴム支承体が変位するとき、その変位に影響を与えることがない覆い体が設けられている
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項2】
請求項1に記載された構造物の分割式支承装置において、
前記覆い体は、前記空隙を挟む一方の前記分割ゴム支承体と他方の前記分割ゴム支承体に、前記空隙側に突出するように上下方向の所定の間隔毎に、一方の前記分割ゴム支承体と他方の前記分割ゴム支承体とから交互に突出するように設けられた弾性体からなる複数の瓦状覆い板部で構成され、
前記瓦状覆い板部は、前記瓦状覆い板部の下方側の部位の下に次の瓦状覆い板部の上方側の部位が位置するように重なり合って配置されることで前記空隙を覆うものである
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項3】
請求項2に記載された構造物の分割式支承装置において、
前記瓦状覆い板部には、表面側の両方の端部に、第1雨水誘導用凸部が設けられている
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載された構造物の分割式支承装置において、
前記瓦状覆い板部には、下方側裏面に凸状の通気用突起が設けられ、適度な通気性を確保できるようにした
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載された構造物の分割式支承装置において、
前記瓦状覆い板部には、下方側表面に略V字状の第2雨水誘導用凸部が設けられている
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項6】
請求項1に記載された構造物の分割式支承装置において、
前記覆い体は、前記空隙を挟む両側の前記分割ゴム支承体に、各々、前記空隙側に突出するように設けられた弾性体からなる長板状覆い板部であり、略L字状に弾性変形させた先端部を互いに当接させることで、前記空隙を覆っている
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項7】
請求項1に記載された構造物の分割式支承装置において、
前記覆い体は、前記空隙を挟む両側の前記分割ゴム支承体に、各々、前記空隙側に突出するように、一方の先端に凸状部を、他方の先端に凹状部を形成した長板状覆い板部であり、前記凹状部に前記凸状部を嵌合させた状態を維持して、前記空隙を覆っている
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項8】
請求項1に記載された構造物の分割式支承装置において、
前記覆い体は、前記空隙を挟む両側の前記分割ゴム支承体に、各々、前記空隙側に突出するように設けられた長板状覆い板部であり、一方の前記分割ゴム支承体側の長板状覆い板部と他方の前記分割ゴム支承体側の長板状覆い板部とを、前記長板状覆い板部の厚さ方向に重なるように配置して、前記空隙を覆っている
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項9】
請求項8に記載された構造物の分割式支承装置において、
一方の前記長板状覆い板部、及び、他方の前記長板状覆い板部には、各々、対向する側に櫛歯が形成され、一方の前記長板状覆い板部側の櫛歯と他方の前記長板状覆い板部側の櫛歯を噛み合わせることで、前記空隙を覆っているものである
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項10】
請求項1に記載された構造物の分割式支承装置において、
前記覆い体は、前記空隙に挿入されるとともに、前記空隙を挟む両側の前記分割ゴム支承体に装着され、弾性変形可能な形状に形成されたパッキンである
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項11】
請求項1に記載された構造物の分割式支承装置において、
前記覆い体は、弾性変形可能な形状に形成され、前記空隙を挟む両側の前記分割ゴム支承体、または、前記空隙を挟む両側の前記上沓と前記下沓に跨って設けられた覆い板部材である
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載された構造物の分割式支承装置において、
前記上部構造物は橋桁であり、前記下部構造物は橋台または橋脚である
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載された構造物の分割式支承装置において、
前記分割ゴム支承体は、静的せん断弾性率のG値が14以上のゴム支承体で製作されている
ことを特徴とする構造物の分割式支承装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−30255(P2009−30255A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192789(P2007−192789)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000220147)東京ファブリック工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】