説明

構造物の振動監視装置および監視方法

【課題】振動測定の対象物表面に対して、超音波トランスデューサ設置の容器壁が傾きを有している場合にも、容器内の測定対象物の振動を非破壊で高精度に振動監視をすることができ、信頼性の高い構造物の振動監視装置および監視方法を提供する。
【解決手段】本発明の構造物の振動監視装置10は、容器11内の構造物16の振動を容器外部から監視するものである。この振動監視装置10は、容器11の外壁に角度調整手段14を介して設けられた超音波トランスデューサ13と、超音波送受信装置18と、A/D変換装置19と、測定対象物16振動情報に変換する信号処理装置20と、測定対象物16の振動情報を表示する表示装置21とからなり、超音波トランスデューサ13は、容器外壁12との間に超音波伝播媒体を有し、かつ容器11内の測定対象物16から反射してくる超音波を受信可能に、容器外壁12に傾きを持って設置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の振動監視技術に係り、特に、水などの液体で満たされている容器の内部にある測定対象物の振動を容器の外部から超音波送受信装置により測定する構造物の振動監視装置および監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の非破壊検査装置において、容器内部や容器内を流れる流路の内側にある測定対象物の振動を非破壊で監視する技術として、測定対象物に加速度計を設け直接振動を監視する方法、外部に設けた超音波送受信装置により測定対象物の振動を監視する方法が用いられている。
【0003】
超音波を用いた振動監視方法は、容器の外部に設置した超音波送受信装置から測定対象物に向けて超音波を発信し、容器の壁と容器内の媒質を伝わって測定対象物に入射した超音波は測定対象物から反射される。測定対象物からの超音波エコーを受信して信号処理し、その伝播時間を計測するとともに、超音波の媒質中での伝播速度を考慮して距離に換算する。この計測プロセスを高速に繰り返すことで、測定対象物の振動変位量を計測し、測定対象物である構造物を監視し、その異常有無を非破壊で検出するものである。
【0004】
このような超音波を用いた振動監視装置として、特許文献1には、原子炉圧力容器内の炉内構造物を監視するために、圧力容器の外側に設置した超音波送受信装置から超音波を炉内構造物に向けて送受信し、炉内構造物からの反射エコーを信号処理により炉内構造物の振動に基づく超音波の伝搬時間の変化分を測定することにより、炉内構造物の振動を監視することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、容器内に設置された電動ポンプの回転軸の振動を監視するために、容器外部に設置された超音波送受信装置から超音波を回転軸に向けて送受信し、超音波エコーの反射波形を周波数解析等の信号処理により、回転軸の変位を測定し、電動ポンプの振動を監視することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−125688号公報
【特許文献2】特開2004−020540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した加速度計を直接測定対象物に取り付ける従来の振動監視方法では、測定対象物が複数箇所に及ぶ場合、加速度計も多数設置する必要があるほか、測定対象物の動作に影響を及ぼしたり、配線の引き出しが必要になったり、また、加速度計の劣化、脱落等、コスト上および構造上、多くの問題があった。
【0008】
また、特許文献1および2に記載の振動監視装置では、容器や流路の外側から内部にある構造物の振動を監視することが可能であるが、振動する測定対象物の表面に対して、超音波トランスデューサを設置する容器壁が傾きを有している場合、構造物である測定対象物に対して発信された超音波が測定対象物に対して垂直に入射されないため、反射してくる超音波は入射方向に反射せず、超音波トランスデューサで受信できないという問題があった。
【0009】
このような場合、超音波が反射してくる位置が異なる場合、受信用の超音波トランスデューサを別に設置することも可能であるが、設置できる場所の面積が限られている場合には、超音波トランスデューサを2つ設置することができず、測定対象物の振動を正確に計測できない問題があった。
【0010】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、振動測定の対象物表面に対して、超音波トランスデューサ設置の容器壁が傾きを有している場合にも、容器内の測定対象物の振動を非破壊で高精度に監視をすることができ、信頼性の高い構造物の振動監視装置および監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る構造物の振動監視装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、容器内の構造物の振動を容器外部から監視する構造物の振動監視装置において、前記容器の外壁に角度調整手段を介して設けられた超音波トランスデューサと、この超音波トランスデューサから送信され、前記容器内構造物の測定対象物から反射される超音波を受信する超音波送受信装置と、受信した超音波の信号をデジタル信号に変換するA/D変換装置と、変換されたデジタル信号を演算処理し、前記デジタル信号の時間波形形状の変化から前記測定対象物の振動情報に変換する信号処理装置と、この信号処理装置で信号処理された前記測定対象物の振動情報を表示する表示装置とからなり、前記超音波トランスデューサは、前記容器外壁との間に超音波伝播媒体を有し、かつ前記容器内の測定対象物から反射してくる超音波を受信可能に、前記容器外壁に傾きを持って設置されたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る構造物の振動監視方法は、上述した課題を解決するために、請求項8に記載したように、容器内の構造物の振動を容器外部から監視する構造物の振動監視方法において、前記容器の外壁に設けられた超音波トランスデューサにより超音波を送信するとともに、前記容器内構造物の測定対象物から反射してきた超音波を受信し、受信した超音波の信号をデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号の時間波形形状の変化から前記測定対象物の振動情報に変換して前記容器内の被測定物の振動を監視する際に、前記容器の外壁が傾きを持っている場合に、超音波の屈折を利用して前記測定対象物の振動を測定可能とすることを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、容器内の測定対象物の振動測定を容器外部から非破壊で測定することができ、振動測定の測定対象物表面に対して、超音波トランスデューサ設置の容器壁が傾きを有している場合にも、測定対象物を容器外部から非破壊で高精度に振動監視を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る構造物の振動監視装置の第1の実施形態を示す構成図。
【図2】図1に示された構造物の振動監視装置において、超音波の伝播経路を説明する図。
【図3】本発明に係る構造物の振動監視装置における超音波パルス信号タイミングチャートを示す図。
【図4】図3に示された超音波パルス信号を連続的に信号処理して得られる振動波形の説明図。
【図5】本発明に係る構造物の振動監視装置の第2の実施形態を示すもので、縦軸ポンプの回転軸振動計測に適用した場合の構成図。
【図6】本発明に係る構造物の振動監視装置の第3の実施形態を示す構成図。
【図7】本発明に係る構造物の振動監視装置の第3の実施形態を示すもので、(A)は第2実施形態に備えられる角度調整手段を示す側断面図、(B)は図7(A)のA−A線に沿う図、(C)は図7(A)のB−B線に沿う図。
【図8】本発明に係る構造物の振動監視装置の第3の実施形態の第1実施例を示すもので、(A)は第1実施例に備えられる角度調整手段の側断面図、(B)は前記角度調整手段を背面側から見た図。
【図9】本発明に係る構造物の振動監視装置の第3の実施形態の第2実施例を示すもので、(A)は第2実施例に備えられる角度調整手段の側断面図、(B)は前記角度調整手段を背面側から見た図。
【図10】本発明に係る構造物の振動監視装置の第4の実施形態を示すもので、(A)は超音波トランスデューサに1回の矩形波の電圧入力により行われる超音波パルス発信波形の例、(B)はN回(Nは整数)の矩形波の電圧入力により行われる超音波パルス発信波形の例をそれぞれ示す図。
【図11】超音波パルスの発信波数(パルス数)Nと受信超音波レベルの倍率(増幅比)の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る構造物の振動監視装置および監視方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る構造物の振動監視装置の第1の実施形態を示す基本構成図である。
【0017】
第1の実施形態の構造物の振動監視装置10は、内部に水等の液体を収容した容器11の外壁12に超音波トランスデューサ13が設けられる。超音波トランスデューサ13は、容器壁12の外側面に、角度調整手段である角度調整部材14を介して設置される。
【0018】
角度調整部材14は、容器壁12と超音波トランスデューサ13との間に位置して超音波伝播媒体として機能する。
【0019】
また、容器11内には、構造物としての測定対象物16が水等の液体に浸漬状態で設けられる。容器11は、例えば原子炉圧力容器、原子炉容器、ポンプのケーシングや揚水管、熱交換器またはタービンの容器等であり、測定対象物は、容器11内に収容される、例えば炉内構造物やジェットポンプ、インターナルポンプの炉内機器、ポンプ回転軸、伝熱管やタービン機器等である。
【0020】
超音波トランスデューサ13から測定対象物16に向けて超音波パルス(送信波)aが送信され、送信された超音波aは測定対象物16で反射する。反射した超音波エコー(超音波パルスの受信波)bは超音波トランスデューサ13を経て超音波送受信装置18で受信される。受信した超音波(受信波)のアナログ信号は、A/D変換装置19に送られてデジタル信号に変換される。
【0021】
A/D変換装置19からのデジタル信号は、続いて信号処理装置20に送られ、信号処理される。信号処理装置20は、デジタル信号の時間波形形状の変化から超音波波形データをもとにして、(測定対象物16の振動情報である)振動波形に変換するとともに、周波数分析等の信号処理を行う。
【0022】
信号処理装置20で信号処理された測定対象物16の振動波形や振動スペクトル等の振動情報は、表示装置21に表示される。また、信号処理装置20からの振動情報は、振動判定装置22に入力される。振動判定装置22は、測定対象物16の振動情報を元にして監視対象である測定対象物の異常の有無等を判定する。
【0023】
次に、構造物の振動監視装置10を図1を参照して超音波信号の伝播関係を説明する。
【0024】
容器11の外壁12が監視対象となる構造物の測定対象物16に対して傾きを持って設置されている場合、容器壁12の外側面に直角に超音波トランスデューサ13を設置すると、超音波トランスデューサ13から発信された超音波(超音波パルスの発信波)aは、容器壁12に対して垂直に入射され、容器壁12を直角方向に伝播して容器11内に入り、測定対象物16に所要の傾斜角度を持って入射され、測定対象物16の密度差により反射される。
【0025】
反射された超音波(超音波エコー)bは、測定対象物16の入射角と等しい角度(反射角)で反射するため、超音波トランスデューサ13とは異なる位置に到達することとなり、超音波トランスデューサ13では受信することができない。入射角は、入射超音波が測定対象物16の被測定面からの垂線に対して形成される角度である。
【0026】
これに対し、容器壁12が構造材の測定対象物16に対して相対的に傾斜している場合には、容器壁12と超音波トランスデューサ13との間に、例えばくさび状の角度調整部材14を設ける。この角度調整部材14は、超音波トランスデューサ13を測定対象物16の被測定面に垂直に設置するため、角度調整機能を有する。この角度調整手段として角度調整部材14を設けることにより、測定対象物16の被測定面と超音波トランスデューサ13の設置面とが平行になるようにセットすることができ、超音波トランスデューサ13から出力される超音波を、測定対象物16の被測定面に垂直に入射させることができる。
【0027】
容器外壁12と超音波トランスデューサ13との間に、所要のくさび角を有する角度調整部材14を設けることにより、超音波トランスデューサ13から発信された超音波パルス(送信波)aは、その屈折の原理に基づき、角度調整部材14と容器壁12、容器壁12と容器11内の液体のそれぞれの間を伝播する際に屈折する。超音波は屈折しても図1の送信経路23a、受信経路23bで示すように、同一の送受信経路23a,23bを伝播することとなる。超音波トランスデューサ13で送信された超音波aは、測定対象物16で反射して超音波エコーの受信波bとなって同じ超音波トランスデューサ13で受信することができる。
【0028】
図2は、超音波トランスデューサ13から発信された超音波の屈折による伝播経路を説明するものである。
【0029】
超音波トランスデューサ13より発信された超音波は、角度調整部材14に入射される。超音波は角度調整部材14を伝播し、続いて、容器壁12に伝播することとなるが、角度調整部材14と容器壁12は、それぞれの音速が異なるため、数式(1)であらわされる関係で屈折が生じる。
【数1】

【0030】
【数2】

【0031】
次に、液体中を伝播した超音波が測定対象物16により反射されるとき、角度θ5が直角であるとすると、測定対象物16から反射する超音波bは、送信経路23aと同じ受信経路23bの経路を通って超音波トランスデューサ13に到達することとなる。このように、角度θ5が90度となるように、容器壁12への入射角θ1を決定すれば、容器壁12が傾きを持っている場合においても、超音波を受信することができ、測定対象物16の振動を高精度で監視することが可能となる。
【0032】
監視対象となる機器の容器壁12、液体の材質とそのときの温度条件により、容器壁12への入射角θ1を求めて角度調整部材14を製作すればよい。また、監視対象となる機器の個体差や、温度条件の変化により音速が異なる場合には、容器壁12への入射角θ1の異なる複数の角度調整部材14を準備しておけばよい。
【0033】
また、角度調整部材14中を伝播する音速C1が容器11内の液体中の音速C4と等しい場合、容器壁への入射角θ1、液体での屈折角θ4が等しい角度となる。例えば、測定対象物16が垂直に配置されている場合、超音波トランスデューサ13から水平に超音波を発信できることとなり、設置する場合の作業が容易になる。
【0034】
次に、図1および図3を参照し、測定対象物16である構造物の振動を測定し、監視する方法を説明する。
【0035】
超音波送受信装置18からの電気信号を入力して超音波トランスデューサ13から容器11内の構造物である測定対象物(計測対象物)16に向けて超音波aが図1に示すように発信される。このときの超音波トランスデューサ13への入力信号eと、超音波トランスデューサ13で受信される超音波パルス(受信波)b(b,b)のタイミングチャートを図3に示す。
【0036】
測定対象物16が図1の矢印の方向Dに振動している場合は、受信された超音波パルス(受信波)bの検出される時間Tは、測定対象物16の振動振幅に比例して変動する。超音波パルス(受信波)bと超音波パルス(受信波)bでは、時間ΔT異なっているが、これは測定対象物16が矢印方向に振動しているため、図1では左方向に移動したことにより、超音波パルスが液体中を伝播する距離が長くなったため、時間ΔTの遅れが生じていることを意味する。
【0037】
このように超音波パルス(受信波)b,bの検出時間差ΔTを連続的に処理してプロットするにより図4に示すような振動波形Wを得ることができる。振動波形Wは、検出時間差ΔTに液体中の音速をかけ合せることにより算出できる。振動波形Wが得られれば、周波数分析することにより、測定対象物16の振動特性を把握できる。測定対象物16の振動状態を定期的あるいは連続して監視を行うことで、測定対象物16に発生している異常を検知することが可能となる。
【0038】
本実施形態によれば、容器壁12が傾きを持っている場合においても、超音波を確実に受信できることなり、超音波(超音波エコー)を受信して、測定対象物16の振動を高精度で監視することが可能となる。
【0039】
[第2の実施形態]
図5は、本発明に係る構造物の振動監視装置の第2の実施形態を示す図である。
【0040】
この構造物の振動監視装置10Aは、縦型ポンプ25の回転軸の振動計測に適用した例を示す。
【0041】
縦型ポンプ25は、揚水管27内に羽根車(図示せず)が連結されたポンプ軸28を有しており、ポンプ軸28が回転することにより、羽根車により下部にある水等を吸い上げて送水するポンプ機器である。縦型ポンプ25のようなポンプ軸28を回転軸として有するポンプ機器は、回転軸28の振動を監視することにより、異常の有無を判断することができるため、回転軸28の振動監視が行なわれている。
【0042】
この図5に示された構造物の振動監視装置10Aにおいて、揚水管27は第1の実施形態の容器11に対応し、揚水管壁28は容器壁12に相当する。この構造物の振動監視装置10Aを説明するに当り、第1の実施形態で示した構造物の振動監視装置10と同じ構成には、同一符号を付して、構成および作用の重複する説明を省略する。
【0043】
通常、揚水管27は、図5に示すように垂直方向から水平方向に曲がっており、この湾曲部分が超音波トランスデューサ1を設置可能な領域30となる場合が多い。揚水管壁29は、曲面の湾曲部分であり、回転軸に対して傾きを持っている。このような、形状の容器壁である揚水管壁29に対しても、角度調整部材14の角度θ1(図2の角度θ1に対応)を調整することにより、超音波トランスデューサ13により超音波の送受信が可能となることから、回転軸であるポンプ軸28の振動測定が可能となる。角度θ1は、揚水管壁29への入射角である。
【0044】
[第3の実施形態]
図6および図7は、本発明に係る構造物の振動監視装置の第3の実施形態を示すものである。
【0045】
第3の実施形態に示された構造物の振動監視装置10Bは、容器外壁12に対して超音波トランスデューサ13を角度調整手段35により角度調整自在に設けたものであり、他の構成および作用は、第1の実施形態で示された構造物の振動監視装置10と異ならないので、同じ構成および作用にはそれぞれ同一符号を付し、重複説明を省略あるいは簡略化する。
【0046】
角度調整手段35は、図6および図7(A)に示すように、容器11の外壁12に固定される枠組構造の基礎ベースとしての基礎枠36と、この基礎枠36から突出する複数の支持ロッド37に支持された矩形等の任意形状の取付板38と、この取付板38と容器壁12の間に設けられた音響カップリング材としての形状変更可能な媒体39とを有し、超音波トランスデューサ13は、取付板38の取付口に外側から挿入され、固定される。
【0047】
図7(A)および(B)において、上方の支持ロッド37は基礎枠36に固定され、取付板38とは回転自由度をもって連結される。下方の支持ロッド37は、基礎枠36に固定されて先端側にねじ部を有し、このねじ部に取付板38の位置を支持ロッド37の軸方向に変更(移動)調整可能に調整ナット40がねじ結合されている。媒体39はスリーブ状あるいは筒状の可撓性袋などに封入され、容器壁12に対する取付板38の俯仰方向の傾斜に応じて媒体の形状が追従して変化する液体あるいはジェル状のものである。
【0048】
角度調整手段35は、図6に示すように、調整ナット40の締付操作により、容器外壁12に対する取付板38の傾斜角度を調整し、位置設定することができる。取付板38の傾斜角度を角度調節自在に設定することができる。
【0049】
[第3の実施形態の第1実施例]
図8(A)および(B)は、本発明に係る構造物の振動監視装置の第3の実施形態の第1実施例を示すものである。
【0050】
この第1実施例に示された構造物の振動監視装置10Bは、角度調整手段35Aを図6および図7に示す角度調整手段35に改良を加えたものである。第3実施形態に示された角度調整手段35と同じ構成には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0051】
第1実施例に示された角度調整手段35Aは、取付板38の角度調整を、図6に示す取付板38の俯仰方向の角度調整だけでなく、この角度調整方向に対して直交する方向、すなわち首振り方向にも行なうことができるようにしたものである。
【0052】
角度調整手段35Aにより、俯仰方向および首振り方向に取付板38の角度調整が容易にできるように、図8(A)および(B)に示すように基礎枠36に4本の支持ロッド37a〜dのうち、左右2本の支持ロッド37c,37dのねじ部に調整ナット40,40をねじ結合させたものである。この調整ナット40,40の操作により、俯仰方向だけでなく、首振り方向にも角度調整することができる。
【0053】
容器11の容器壁12の表面が、加工精度や温度歪みの問題で僅かに傾いている場合のように、微調整が必要な場合に、角度調整手段35Bの各調整ナット40を操作して、取付板38を俯仰方向だけでなく首振り方向にも調製可能とすることで、容器11内に収納された測定対象物16を、個体差によらず、容器外の遠隔から円滑かつスムースに測定することができ、測定対象物16の振動監視を外部から超音波を用いて無接触かつ非破壊で行なうことができる。
【0054】
[第3の実施形態の第2実施例]
図9(A)および(B)は、本発明に係る構造物の振動監視装置の第3の実施形態の第2実施例を示すものである。
【0055】
第2実施例に示された構造物の振動監視装置10B2は、角度調整手段35Bの取付板38に超音波トランスデューサ13を送信用と受信用にセパレートさせて用いたもので、他の構成および作用は、第3の実施形態に示されたものと異ならないので、同じ構成には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0056】
第2実施例に示された振動監視装置10B2は、取付板38に送信用超音波トランスデューサ13aと、この送信用超音波トランスデューサ13aの俯仰方向(上下方向)両側に受信用超音波トランスデューサ13b,13bを、それぞれ備えたものである。取付板38に送信用超音波トランスデューサ13aの他に受信用超音波トランスデューサ13b,13bを備えることで、温度変化などにより、反射経路がずれた場合にも、被測定対象物の測定が行なうことができるようにしたものである。
【0057】
[第4の実施形態]
図10および図11は、本発明に係る構造物の振動監視装置の第4の実施形態を示すものである。
【0058】
第4の実施形態に示される構造物の振動監視装置10Cのレイアウト構成は、図1および図2に示すものと異ならないので、第1の実施形態に示された構造物の振動監視装置10と同じ構成および作用にも同じ符号を付し、重複説明を省略あるいは簡略化する。
【0059】
第4の実施形態に示された構造物の振動監視装置10Cは、角度調整部材14により、超音波トランスデューサ13から角度θ1で超音波aを発信する場合、図2に示すように測定対象物16(図2参照)から反射した超音波(超音波エコー)bは液体中と容器壁12の境界および容器壁12と角度調整部材14との境界でそれぞれ反射し(図2の符号44a,44b参照)、超音波トランスデューサ13に受信される超音波エコーレベルが低下する。エコーレベルが低下すると振動測定ができない場合があるため、図10に示す方法により超音波エコーレベルを改善し、増幅させることができる。
【0060】
通常、超音波送受信装置18から超音波トランスデューサ13に発信される超音波パルスは図10(A)に示すように、1回の矩形波の電圧入力により行われる。これに対して、図10(B)に示すように、第4の実施形態に示される構造物の振動監視装置10Cでは超音波トランスデューサ13に超音波送受信装置18から複数回Nの電圧入力を行うことにより超音波aを複数回発信させ、受信される超音波エコーレベルを増幅することができる。図10(B)には、N回(Nは整数)の矩形波の電圧入力を超音波トランスデューサ13に入力させる例を示している。複数回電圧入力することにより入力されるエネルギーが増加するため、受信されるエコーレベルが徐々に増幅する。ある回数に達すると容器壁内で多重反射したエコーとの重なりにより増幅率が増加する。多重反射したエコーと重なる回数は容器壁の厚さにより個体差があるため、実際に測定を行う測定対象物16に対して最適なN値を選べばよい。
【0061】
超音波トンラスデューサ13からの電圧入力回数(パルス数)Nと超音波エコーレベルの増幅倍率の相関関係の一例を図11に示す。図11は、容器壁が鋼材12mmの厚さで超音波トランスデューサの共振周波数が2MHzの場合を示している。容器壁厚さ12mm、音速6000m/sとすると、多重エコーの観測される時間は、2×0.12/6000=4μsecである。周波数2MHzの超音波の周期は、0.5μsecであるため、Nが8のとき容器壁の多重エコーと重なるため超音波エコーレベルの増幅倍率が高く(約3.5倍)なっている。
【0062】
また、矩形波の電圧入力間隔を超音波トランスデューサ13の共振周波数と同じ周波数とすることにより、共振現象が生じて増幅させることかでき、より効果的に超音波エコーレベルを受信することができるようになる。
【0063】
第4実施形態に示される構造物の振動監視装置10Cは、超音波送受信装置18において複数回電圧入力を行って超音波トランスデューサ13から超音波を発信させることにより、容器11内の測定対象物16から反射してくる超音波の信号レベルを増幅させることができる。その際、超音波送受信装置18から超音波トランスデューサ13への電圧信号を、超音波トランスデューサ13の共振周波数と同じ周波数で入力させることにより、発信超音波の信号レベルを増幅させることができ、結果として、測定対象物16から反射してくる超音波の信号レベルを増幅させることができる。
【0064】
また、超音波送受信装置18は、反射してくる超音波の信号レベルが最大となるように、発信波数あるいは発信周波数を調整可能とすることが好ましい。
【0065】
以上に説明したように本発明により、振動測定の測定対象物16の表面に対して、超音波トランスデューサ13を設置する容器壁が傾きを有している場合においても、超音波エコーを効率的にできるようにし、測定対象物16の振動を高精度で監視することができる振動監視装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
10,10A,10B,10B1,10B2,10C 構造物の振動監視装置
11 容器
12 容器壁(外壁)
13 超音波トランスデューサ
14 角度調整部材(角度調整手段)
16 測定対象物(構造物)
18 超音波送受信装置
19 A/D変換装置
20 信号処理装置
21 表示装置
22 振動判定装置
23a 送信経路
23b 受信経路
25 縦型ポンプ
27 揚水管
28 ポンプ軸(回転軸)
29 揚水管壁
30 設置可能領域
35 角度調整手段
36 基礎枠
37 支持ロッド
38 取付板
39 媒体
40 調整ナット
θ1 容器壁への入射角
θ2 容器壁での屈折角
θ3 液体への入射角
θ4 液体での屈折角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の構造物の振動を容器外部から監視する構造物の振動監視装置において、
前記容器の外壁に角度調整手段を介して設けられた超音波トランスデューサと、
この超音波トランスデューサから送信され、前記容器内構造物の測定対象物から反射される超音波を受信する超音波送受信装置と、
受信した超音波の信号をデジタル信号に変換するA/D変換装置と、
変換されたデジタル信号を演算処理し、前記デジタル信号の時間波形形状の変化から前記測定対象物の振動情報に変換する信号処理装置と、
この信号処理装置で信号処理された前記測定対象物の振動情報を表示する表示装置とからなり、
前記超音波トランスデューサは、前記容器外壁との間に超音波伝播媒体を有し、かつ前記容器内の測定対象物から反射してくる超音波を受信可能に、前記容器外壁に傾きを持って設置されたことを特徴とする構造物の振動監視装置。
【請求項2】
前記角度調整手段は、前記容器外壁に対して傾きを持って設置される前記超音波トランスデューサの俯仰角度を調節可能に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の構造物の振動監視装置。
【請求項3】
前記角度調整手段は、前記超音波トランスデューサを俯仰方向と首振り方向の直交する2方向の角度調整を可能としたことを特徴とする請求項2に記載の構造物の振動監視装置。
【請求項4】
前記超音波トランスデューサは、送信用超音波トランスデューサと受信用超音波トランスデューサがセパレートして設けられたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の構造物の振動監視装置。
【請求項5】
前記容器内の測定対象から反射してくる超音波の信号レベルを増幅するため、前記超音波送受信装置において複数回電圧入力を行うことにより超音波を発信することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の構造物の振動監視装置。
【請求項6】
前記超音波送受信装置において、複数回電圧を入力する場合、前記超音波トランスデューサの共振周波数と同じ周波数で電圧信号を入力することを特徴とする請求項5に記載の構造物の振動監視装置。
【請求項7】
前記超音波送受信装置は、反射してくる超音波の信号レベルが最大となるように、発信波数あるいは発信周波数を調整可能としたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の構造物の振動監視装置。
【請求項8】
容器内の構造物の振動を容器外部から監視する構造物の振動監視方法において、
前記容器の外壁に設けられた超音波トランスデューサにより超音波を送信するとともに、前記容器内構造物の測定対象物から反射してきた超音波を受信し、
受信した超音波の信号をデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号の時間波形形状の変化から前記測定対象物の振動情報に変換して前記容器内の被測定物の振動を監視する際に、
前記容器の外壁が傾きを持っている場合に、超音波の屈折を利用して前記測定対象物の振動を測定可能とすることを特徴とする構造物の振動監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−214952(P2011−214952A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82432(P2010−82432)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】