説明

構造物連結手段及び構造物群

【課題】一の構造物と他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容すると共に、一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達してこの水平方向の力を一の構造物と他の構造物とで負担することができる構造物連結手段及び構造物群を得る。
【解決手段】高層構造物12(一の構造物)が水平方向の力を受けた場合、ウエブ部32を面内方向で圧縮変形、引張変形又はせん断変形させることで、水平方向の力を低層構造物14(他の構造物)へ伝達する。高層構造物12の沈下量と低層構造物14の沈下量とが異なる場合には、ウエブ部32を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、鉛直方向の異なる変位を許容する。このように、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容すると共に、高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達してこの水平方向の力を一の構造物と他の構造物とで負担することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の構造物を連結する構造物連結手段、及びこの構造物連結手段を備えた構造物群に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高層棟(一の構造物)の基礎と低層棟(他の構造物)の基礎との境部の連結工法について記載されている。
【0003】
詳細には、境部に所定幅のスリットを設けて高層棟の基礎ばりと低層棟の基礎ばりとを夫々構築した後、高層棟及び低層棟の地盤が充分に沈下し、地盤が安定してからこのスリットにコンクリートを打設して高層棟の基礎ばりと低層棟の基礎ばりとを一体的に連結させるようになっている。
【0004】
このように、高層棟及び低層棟の地盤が充分に沈下し、地盤が安定してからスリットにコンクリートを打設するため、高層棟の基礎ばりと低層棟の基礎ばりとの境部に地盤沈下に伴う強制応力が発生するのを防止すると共に、例えば高層棟が受けた水平方向の力(片土圧等)を低層棟へ伝達して水平方向の力を高層棟と低層棟とで負担する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−27809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の連結工法では、施工後に、一の構造物と他の構造物との間で、鉛直方向に異なった変位が生じるとスリットに打設されたコンクリートに強制応力が発生し、このコンクリートが損傷することが考えられる。
【0007】
本発明の課題は、一の構造物と他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容すると共に、一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達してこの水平方向の力を一の構造物と他の構造物とで負担することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る構造物連結手段は、一の構造物と他の構造物との間に設けられ、一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達すると共に、前記一の構造物と前記他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、構造物連結手段は、一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達し、一の構造物と他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0010】
例えば、構造物連結手段は、一の構造物が受けた片土圧(水平方向の力)を他の構造物へ伝達する。また、地震時には、構造物連結手段は、地震により一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達する。
【0011】
また、例えば、一の構造物の沈下量と他の構造物の沈下量とが異なる場合には、構造物連結手段は、一の構造物と他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0012】
このように、構造物連結手段が一の構造物と他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容すること、さらに、構造物連結手段が一の構造物が受けた片土圧や地震等により生じる水平方向の力を他の構造物へ伝達することで、一の構造物と他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容すると共に、一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達してこの水平方向の力を一の構造物と他の構造物とで負担することができる。
【0013】
本発明の請求項2に係る構造物連結手段は、請求項1に記載において、前記構造物連結手段は、圧縮変形、引張変形又はせん断変形をして前記一の構造物が受けた水平方向の力を前記他の構造物へ伝達する共に、鉛直方向に変形して前記一の構造物と前記他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、構造物連結手段が圧縮変形、引張変形又はせん断変形をして一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達する。さらに、構造物連結手段が鉛直方向に変形して一の構造物と他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0015】
このように、構造物連結手段を圧縮変形、引張変形又はせん断変形させることで、水平方向の力を伝達し、構造物連結手段を鉛直方向に変形させることで、構造物間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容することができる。
【0016】
本発明の請求項3に係る構造物連結手段は、請求項2に記載において、前記構造物連結手段は、前記一の構造物と前記他の構造物との間に配置固定され、板厚方向が鉛直方向を向いた鋼板であることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、鋼板を、面内方向で圧縮変形、引張変形又はせん断変形させることで、一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達することができる。さらに、鋼板を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、構造物間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容することができる。
【0018】
本発明の請求項4に係る構造物連結手段は、請求項2に記載において、前記構造物連結手段は、両端が前記一の構造物と前記他の構造物とに埋設され、水平方向に延びる鋼棒であることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、鋼棒を、鋼棒の軸方向に圧縮変形、又は引張変形させることで、一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達することができる。さらに、鋼棒を曲げて鉛直方向に変形させることで、構造物間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容することができる。
【0020】
本発明の請求項5に係る構造物連結手段は、請求項1〜4の何れか1項に記載において、前記一の構造物と前記他の構造物との間に設けられ、前記一の構造物が前記他の構造物へ接近しようとすると、圧縮されて水平方向の力を伝達する圧縮力伝達手段を備えることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、一の構造物が他の構造物へ接近しようとすると、圧縮力伝達手段が一の構造物と他の構造物との間で圧縮されて水平方向の力を一の構造物から他の構造物へ伝達する。
【0022】
このように、圧縮力伝達手段を圧縮させることで水平方向の力を一の構造物から他の構造物へ伝達することができる。
【0023】
本発明の請求項6に係る構造物連結手段は、請求項5に記載において、前記構造物連結手段は、圧縮されて水平方向の力を伝達するコンクリート製の圧縮力伝達部材を備えることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、コンクリート製の圧縮伝達部材を圧縮させることで一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達することができる。
【0025】
本発明の請求項7に係る構造物群は、一の構造物と、前記一の構造物と隣接して構築される他の構造物と、前記一の構造物と前記他の構造物との間に設けられる請求項1〜6の何れか1項に記載された構造物連結手段と、を備えることを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、請求項1〜6の何れか1項に記載された構造物連結手段を用いることで、例えば、一の構造物が受けた片土圧等の水平方向の力を一の構造物と他の構造物とで負担して構造物を支持する杭にかかる負担を減らし、杭を簡易なものとすることができる。また、直接基礎の場合は、滑動に対する抵抗を2つの構造物で抵抗することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、一の構造物と他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容すると共に、一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達してこの水平方向の力を一の構造物と他の構造物とで負担することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る構造物連結装置を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る構造物連結装置が採用された構造物群を示した正面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る構造物連結装置を示した斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る構造物連結装置を示した斜視図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る構造物連結装置を示した斜視図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る構造物連結装置を示した斜視図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る構造物連結装置を示した斜視図である。
【図8】本発明の第7実施形態に係る構造物連結装置を示した斜視図である。
【図9】本発明の第8実施形態に係る構造物連結装置を示した斜視図である。
【図10】本発明の第9実施形態に係る構造物連結装置を示した斜視図である。
【図11】本発明の第10実施形態に係る構造物連結装置を示した斜視図である。
【図12】本発明の第10実施形態に係る構造物連結装置を示した平面図である。
【図13】本発明の第11実施形態に係る構造物連結装置を示した断面図である。
【図14】本発明の第12実施形態に係る構造物連結装置を示し、図16に示す14−14断面図である。
【図15】本発明の第12実施形態に係る構造物連結装置を示し、図16に示す15−15断面図である。
【図16】本発明の第12実施形態に係る構造物連結装置を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図1〜図2に従って説明する。なお、図中に記載する矢印UPは、鉛直方向上方を示す。
【0030】
(全体構成)
図2に示されるように、構造物群28は、一の構造物の一例としての高層構造物12と、この高層構造物12に隣接して構築される他の構造物の一例としての低層構造物14とを備えている。
【0031】
高層構造物12は、低層構造物14と比して高層とされており、高層構造物12を地盤に定着させると共に、グランドラインGLより下方に設けられ、水平方向に広がるコンクリート製の基礎16を備えている。基礎16からは、鉛直方向へ延びる複数本の柱部材18が立設され、さらに、この柱部材18には、柱部材18を支える水平方向に延びた梁部材20が接続されている。
【0032】
同様に、低層構造物14は、低層構造物14を地盤に定着させると共に、グランドラインGLより下方に設けられ、水平方向に広がるコンクリート製の基礎22を備えている。基礎22からは、鉛直方向へ延びる複数本の柱部材24が立設され、さらに、この柱部材24には、柱部材24を支える水平方向に延びた梁部材26が接続されている。
【0033】
そして、高層構造物12の基礎16と低層構造物14の基礎22との間には、構造物連結手段の一例としての構造物連結装置10が設けられ、この構造物連結装置10によって基礎16と基礎22とが連結されている。
【0034】
(要部構成)
図1に示されるように、構造物連結装置10は、断面H型のH鋼部材11とされており、水平方向に延びるように基礎16と基礎22との間に設けられている。そして、このH鋼部材11は、対向する一対の板状のフランジ部30と、一対のフランジ部30の間に設けられ両端部がフランジ部30に固定されたウエブ部32と、を備えている。
【0035】
詳細には、一対のフランジ部30は、基礎16及び基礎22に埋設されたアンカーボルト27によって、基礎16及び基礎22の側面に固定されており、ウエブ部32の板厚方向は、鉛直方向を向いている。
【0036】
例えば、図2に示すように、高層構造物12が片土圧(水平方向の力)を受けた場合には、ウエブ部32を面内方向で圧縮変形、引張変形又はせん断変形させることで、高層構造物12が受けた片土圧(水平方向の力)を低層構造物14へ伝達する。
【0037】
また、地震時の場合には、ウエブ部32を面内方向で圧縮変形、引張変形又はせん断変形させることで、地震により高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達する。
【0038】
さらに、地震時の場合には、ウエブ部32を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、地震により高層構造物12が受けた鉛直方向の変位と地震により低層構造物14が受けた鉛直方向の変位との相異を許容する。
【0039】
また、施工時、施工後、及び長期間経過後において、高層構造物12の沈下量と低層構造物14の沈下量とが異なる場合には、ウエブ部32を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0040】
このように、H鋼部材11のウエブ部32を面内方向で圧縮変形、引張変形又はせん断変形させることで、高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達することができる。さらに、ウエブ部32を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、施工時、施工後、及び長期間経過後において、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容することができる。
【0041】
また、H鋼部材11のウエブ部32が、高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達することで、水平方向の力を高層構造物12と低層構造物14とで負担することができる。
【0042】
また、水平方向の力を高層構造物12と低層構造物14とで負担することで、図示せぬ地下構造及び杭などの基礎構造の設計合理化を図ることができる。例えば、杭の設計に際し、土圧を考慮しなくてもよくなる。
【0043】
また、H鋼部材11のウエブ部32を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容するため、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の変位が異なる場合でも、H鋼部材11に生じる応力を抑制することができる。
【0044】
また、H鋼部材11に生じる応力を抑制することでH鋼鋼材11が破損するのを防止することができる。
【0045】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、高層構造物12から低層構造物14へ水平方向の力を伝達する場合を例にとって説明したが、特に高層構造物12から低層構造物14へ水平方向の力を伝達する場合に限られず、低層構造物14から高層構造物12へ伝達してもよく、互いに伝達し合ってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、構造物連結装置10を高層構造物12の基礎16と低層構造物14の基礎22との間に設けたが、特に基礎16と基礎22との間に限定されず、高層構造物12と低層構造物14との間で、水平方向の力を伝達することができる位置であればどこでもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、特に言及しなかったが、高層構造物12と低層構造物14との間で全体に渡って構造物連結装置10を設けてもよいし、部分的に構造物連結装置10を設けてもよい。なお、部分的に設ける場合には、水平方向の力を効果的に伝達させるために柱部材18、24の近傍に構造物連結装置10を設けることが好ましい。
【0048】
また、上記実施形態では、特に言及しなかったが、基礎形式は、杭基礎、直接基礎、又は地盤改良等であってもよく、特に限定されるものではない。
【0049】
また、上記実施形態では、高層構造物12と低層構造物14とを例にとって説明したが、特に高層低層に限定されることなく、地盤の違い、土圧の違い、重量の違い等から生じる動きが構造物間で異なる場合に、この構造物間に構造物連結装置10を用いることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、フランジ部30と基礎16、22との接合については、アンカーボルト27での接合を例にとって説明したが、その他せん断力を伝達できる機構であればなんでもよく、例えばスタッド、ダボ鉄筋、接着剤などを用いてフランジ部30と基礎16、22とを接合してもよい。
【0051】
次ぎに、本発明の第2実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図3に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図3に示されるように、本第2実施形態の構造物連結装置40は、断面H型のH鋼とされておらず、上方が開放された断面コ字状のコ字型鋼板41とされている。
【0053】
詳細には、コ字型鋼板41は、両端側が上方に折り曲げられて形成された一対のフランジ部42と、一対のフランジ部42の間に設けられ、板厚方向が鉛直方向を向いた掛渡部44と、を備えている。そして、一対のフランジ部42は、基礎16及び基礎22に埋設されたアンカーボルト46によって、基礎16及び基礎22の側面に固定されている。
【0054】
例えば、高層構造物12が片土圧(水平方向の力)を受けた場合には、掛渡部44を面内方向で圧縮変形、引張変形又はせん断変形させることで、高層構造物12が受けた片土圧(水平方向の力)を低層構造物14へ伝達する。
【0055】
また、地震時の場合には、掛渡部44を面内方向で圧縮変形、引張変形又はせん断変形させることで、地震により高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達する。
【0056】
さらに、地震時の場合には、掛渡部44を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、地震により高層構造物12が受けた鉛直方向の変位と地震により低層構造物14が受けた鉛直方向の変位との相異を許容する。
【0057】
また、施工時、施工後、及び長期間経過後において、高層構造物12の沈下量と低層構造物14の沈下量が異なる場合には、掛渡部44を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0058】
次ぎに、本発明の第3実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図4に従って説明する。なお、第2実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図4に示されるように、本第3実施形態の構造物連結装置50は、上方が開放された断面コ字状の鋼板とされておらず、平板状の平型鋼板51とされている。
【0060】
詳細には、平型鋼板51は、一方側に設けれ、基礎16に埋設された第1埋設部52と、他方側に設けられ、基礎22に埋設された第2埋設部54と、第1埋設部52と第2埋設部54との間に設けられ、板厚方向が鉛直方向を向いた掛渡部56と、を備えている。そして、第1埋設部52及び第2埋設部54には、鉛直方向に延びるアンカーボルト58が固定されており、このアンカーボルト58と共に第1埋設部52及び第2埋設部54を基礎16及び基礎22に埋設されることで、第1埋設部52及び第2埋設部54が基礎16及び基礎22に固定されるようになっている。
【0061】
次ぎに、本発明の第4実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図5に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図5に示されるように、本第4実施形態の構造物連結装置60は、断面H型のH鋼部材11と、H鋼部材11のウエブ部32の上方及び下方に隙を空けて設けられたコンクリート製の圧縮力伝達部材62と、を備えている。
【0063】
詳細には、圧縮力伝達部材62は、断面矩形状とされ、一対のフランジ部30に挟まれるように設けられ、高層構造物12が低層構造物14へ接近しようとすると、圧縮されて水平方向の力を高層構造物12から低層構造物14へ伝達するようになっている。
【0064】
例えば、高層構造物12が片土圧(水平方向の力)を受けて低層構造物14へ接近しようとした場合には、圧縮力伝達部材62を圧縮変形させることで、高層構造物12が受けた片土圧(水平方向の力)を低層構造物14へ伝達する。
【0065】
また、地震時に高層構造物12が低層構造物14へ接近しようとした場合には、圧縮力伝達部材62を圧縮変形させることで、地震により高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達する。
【0066】
また、ウエブ部32を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、施工時、施工後、及び長期間経過後において、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0067】
ここで、ウエブ部32と圧縮力伝達部材62との間には、隙が設けられているため、ウエブ部32が湾曲して鉛直方向に変形しても圧縮力伝達部材62は損傷しないようになっている。
【0068】
このように、構造物連結装置60の圧縮力伝達部材62を圧縮変形させることで、高層構造物12が低層構造物14へ接近することで圧縮力伝達部材62が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達することができる。
【0069】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、ウエブ部32を面内方向で圧縮変形、引張変形又はせん断変形させ、さらに、圧縮力伝達部材62を圧縮変形させることで、水平方向の力を高層構造物12から低層構造物14へ伝達させたが、ウエブ部32については引張変形だけをさせ(引張り方向の伝達力のみを負担)、さらに、圧縮力伝達部材62を圧縮変形させる(圧縮方向及びせん断方向の伝達力を負担)ことで水平方向の力を高層構造物12から低層構造物14へ伝達させてもよい。
【0070】
次ぎに、本発明の第5実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図6に従って説明する。なお、第2実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0071】
図6に示されるように、本第5実施形態の構造物連結装置70は、上方が開放された断面コ字状のコ字型鋼板41と、コ字型鋼板41に備えられた掛渡部44との間で隙を空けて設けられたコンクリート製の圧縮力伝達部材72と、を備えている。
【0072】
詳細には、圧縮力伝達部材72は、断面矩形状とされ、コ字型鋼板41に備えられた一対のフランジ部42に挟まれるように設けられ、高層構造物12が低層構造物14へ接近しようとすると、圧縮されて水平方向の力を高層構造物12から低層構造物14へ伝達するようになっている。
【0073】
例えば、高層構造物12が片土圧(水平方向の力)を受けて低層構造物14へ接近しようとした場合には、圧縮力伝達部材72を圧縮変形させることで、高層構造物12が受けた片土圧(水平方向の力)を低層構造物14へ伝達する。
【0074】
また、地震時に高層構造物12が低層構造物14へ接近しようとした場合には、圧縮力伝達部材72を圧縮変形させることで、地震により高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達する。
【0075】
また、掛渡部44を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、施工時、施工後、及び長期間経過後において、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0076】
ここで、掛渡部44と圧縮力伝達部材62との間には、隙が設けられているため、掛渡部44が湾曲して鉛直方向に変形しても圧縮力伝達部材72は損傷しないようになっている。
【0077】
このように、構造物連結装置70の圧縮力伝達部材72を圧縮変形させることで、高層構造物12が低層構造物14へ接近することで圧縮力伝達部材72が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達することができる。
【0078】
次ぎに、本発明の第6実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図7に従って説明する。なお、第3実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0079】
図7に示されるように、構造物連結装置80は、平板状の平型鋼板51と、平型鋼板51の掛渡部56の上面に固定された断面L字状の一対のレール部材82と、このレール部材82に囲まれるように設けられた断面矩形状のコンクリート製の圧縮力伝達部材84と、を備えている。
【0080】
詳細には、L字状のレール部材82の一辺は掛渡部56の上面に固定され、レール部材82の他辺は基礎16、22の側面との間に一定の隙を空けて配置されている。さらに、レール部材82の他辺と基礎16、22の側面との間に設けられた隙には、板状の弾性部材であるゴム製のゴム板86が配置されている。そして、圧縮力伝達部材84は、一対のレール部材82の他辺に挟まれるように設けられ、高層構造物12が低層構造物14へ接近しようとすると、圧縮されて水平方向の力を高層構造物12から低層構造物14へ伝達するようになっている。
【0081】
例えば、高層構造物12が片土圧(水平方向の力)を受けて低層構造物14へ接近しようとした場合には、圧縮力伝達部材84を圧縮変形させることで、高層構造物12が受けた片土圧(水平方向の力)を低層構造物14へ伝達する。
【0082】
また、地震時に高層構造物12が低層構造物14へ接近しようとした場合には、圧縮力伝達部材84を圧縮変形させることで、地震により高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達する。
【0083】
また、掛渡部56を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、施工時、施工後、及び長期間経過後において、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0084】
ここで、レール部材82の他辺と基礎16、22の側面との間には、板状の弾性部材であるゴム製のゴム板86が設けられているため、掛渡部56が湾曲して鉛直方向に変形しても圧縮力伝達部材84は損傷しないようになっている。
【0085】
このように、構造物連結装置80の圧縮力伝達部材84を圧縮変形させることで、高層構造物12が低層構造物14へ接近することで圧縮力伝達部材84が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達することができる。
【0086】
次ぎに、本発明の第7実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図8に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0087】
図8に示されるように、構造物連結装置90は、直角に屈曲された一端側が高層構造物12の基礎16に埋設されると共に、直角に屈曲された他端側が低層構造物14の基礎22に埋設される水平方向に延びた鋼棒92を複数個備えている。つまり、基礎16と基礎22との間で露出された鋼棒92の露出部92Aは、水平方向に延びて基礎16と基礎22との間を掛け渡されている。
【0088】
例えば、高層構造物12が片土圧(水平方向の力)を受けた場合には、鋼棒92の露出部92Aを鋼棒92の軸方向に圧縮変形、又は引張変形させることで、高層構造物12が受けた片土圧(水平方向の力)を低層構造物14へ伝達する。
【0089】
また、地震時の場合には、鋼棒92の露出部92Aを鋼棒92の軸方向に圧縮変形、又は引張変形させることで、地震により高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達する。
【0090】
また、地震時の場合には、鋼棒92の露出部92Aを湾曲させて鉛直方向に変形させることで、地震により高層構造物12が受けた鉛直方向の変位と地震により低層構造物14が受けた鉛直方向の変位との相異を許容する。
【0091】
また、施工時、施工後、及び長期間経過後において、高層構造物12の沈下量と低層構造物14の沈下量が異なる場合には、鋼棒92の露出部92Aを湾曲させて鉛直方向に変形させることで、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0092】
このように、構造物連結装置90に備えられた鋼棒92の露出部92Aを鋼棒92の軸方向に圧縮変形、又は引張変形させることで、高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達することができる。さらに、鋼棒92の露出部92Aを湾曲させて鉛直方向に変形させることで、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容することができる。
【0093】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、鋼棒92の両側を屈曲させて基礎16及び基礎22に埋設させて鋼棒92の両側を基礎16及び基礎22に固定したが、特に屈曲させなくてもよく、例えば直線状であってもよく、鋼棒92の両側を基礎16及び基礎22に固定すればよい。
【0094】
次ぎに、本発明の第8実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図9に従って説明する。なお、第7実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0095】
図9に示されるように、構造物連結装置100に設けられた鋼棒92の露出部92Aの周りには断面矩形状のコンクリート製の圧縮力伝達部材102が設けられている。また、圧縮力伝達部材102と基礎16及び基礎22との間には、一定の隙が設けられており、この隙に、板状の弾性部材であるゴム製のゴム板104が配置されている。
【0096】
例えば、高層構造物12が片土圧(水平方向の力)を受けて低層構造物14へ接近しようとした場合には、圧縮力伝達部材102を圧縮変形させることで、高層構造物12が受けた片土圧(水平方向の力)を低層構造物14へ伝達する。
【0097】
また、地震時に高層構造物12が低層構造物14へ接近しようとした場合には、圧縮力伝達部材102を圧縮変形させることで、地震により高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達する。
【0098】
また、露出部92Aを湾曲させて鉛直方向に変形させることで、施工時、施工後、及び長期間経過後において、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0099】
ここで、圧縮力伝達部材102と基礎16及び基礎22の側面との間には、板状の弾性部材であるゴム製のゴム板104が設けられているため、鋼棒92の露出部92Aが湾曲して鉛直方向に変形しても圧縮力伝達部材102は損傷しないようになっている。
【0100】
このように、構造物連結装置100の圧縮力伝達部材102を圧縮変形させることで、高層構造物12が低層構造物14へ接近することで圧縮力伝達部材102が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達することができる。
【0101】
次ぎに、本発明の第9実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図10に従って説明する。なお、第7実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0102】
図10に示されるように、構造物連結装置110に設けられた鋼棒92の露出部92Aの周りには、基礎16に固定された断面矩形状のコンクリート製の第1圧縮力伝達部材112と、基礎22に固定された断面矩形状のコンクリート製の第2圧縮力伝達部材114とが設けられている。
【0103】
詳細には、第1圧縮力伝達部材112には、第1圧縮力伝達部材112の外周面に沿って配置され、両端部が基礎16に埋設された補強鉄筋116と、第1圧縮力伝達部材112に埋設され、補強鉄筋116の屈曲部を支持する支持鉄筋118とが設けられている。
【0104】
さらに、第2圧縮力伝達部材114は、第1圧縮力伝達部材112との間で一定の隙を設けて配置されている。そして、第1圧縮力伝達部材112と同様に、第2圧縮力伝達部材114には、第2圧縮力伝達部材114の外周面に沿って配置され、両端部が基礎22に埋設された補強鉄筋120と、第2圧縮力伝達部材114に埋設され、補強鉄筋120の屈曲部を支持する支持鉄筋122とが設けられている。
【0105】
例えば、高層構造物12が片土圧(水平方向の力)を受けて低層構造物14へ接近しようとした場合には、第1圧縮力伝達部材112と第2圧縮力伝達部材114とが接触し、第1圧縮力伝達部材112と第2圧縮力伝達部材114とを圧縮変形させることで、高層構造物12が受けた片土圧(水平方向の力)を低層構造物14へ伝達する。
【0106】
また、地震時に高層構造物12が低層構造物14へ接近しようとした場合には、第1圧縮力伝達部材112と第2圧縮力伝達部材114とが接触し、第1圧縮力伝達部材112と第2圧縮力伝達部材114とを圧縮変形させることで、地震により高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達する。
【0107】
また、露出部92Aを湾曲させて鉛直方向に変形させることで、施工時、施工後、及び長期間経過後において、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0108】
ここで、第1圧縮力伝達部材112と第2圧縮力伝達部材114との間には、隙が設けられているため、鋼棒92の露出部92Aが湾曲して鉛直方向に変形しても第1圧縮力伝達部材112及び第2圧縮力伝達部材114は損傷しないようになっている。
【0109】
このように、構造物連結装置110の第1圧縮力伝達部材112及び第2圧縮力伝達部材114を圧縮変形させることで、高層構造物12が低層構造物14へ接近することで第1圧縮力伝達部材112及び第2圧縮力伝達部材114が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達することができる。
【0110】
次ぎに、本発明の第10実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図11、図12に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0111】
図11、図12に示されるように、第10実施形態の高層構造物12の基礎16と低層構造物14の基礎22との間の距離は、第1実施形態の距離より大きくされている。
【0112】
そして、構造物連結装置130は、基礎16及び基礎22に取り付けられるT字型の一対のブラケット部材132と、両端部が一対のブラケット部材132に固定された断面H型のH鋼部材134と、H鋼部材134の一端から隣接するH鋼部材134の他端まで斜めに掛け渡されたブレース部材136とを備えている。
【0113】
詳細には、T字型のブラケット部材132には、底板部132Aと、底板部132Aから立設する立設部132Bとが設けられ、底板部132Aが、基礎16及び基礎22に埋設されたアンカーボルト138によって基礎16及び基礎22の側面に取り付けられている。さらに、H鋼部材134のウエブ部134Aの両端側とブラケット部材132の立設部132Bとが、ボルト140とナット(図示省略)とを用いて固定されている。
【0114】
また、図12に示されるように、H鋼部材134の両端部には、外側に張り出すように板状の保持部材142が設けられ、この保持部材142とブレース部材136の端部とが、ボルト144とナット(図示省略)とを用いて固定されている。
【0115】
例えば、高層構造物12が片土圧(水平方向の力)を受けた場合には、H鋼部材134を圧縮変形、引張変形させることでH鋼部材134に対して圧縮方向及び引張方向の片土圧を高層構造物12から低層構造物14へ伝達し、ブレース部材136を圧縮変形、引張変形させることでH鋼部材134に対してせん断方向の片土圧を高層構造物12から低層構造物14へ伝達する。
【0116】
また、地震時の場合には、H鋼部材134を圧縮変形、引張変形させることで地震により高層構造物12が受けたH鋼部材134に対して圧縮方向及び引張方向の力を低層構造物14へ伝達し、ブレース部材136を圧縮変形、引張変形させることで地震により高層構造物12が受けたH鋼部材134に対してせん断方向の力を低層構造物14へ伝達する。
【0117】
また、地震時の場合には、ブラケット部材132の立設部132Bの基端側を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、地震により高層構造物12が受けた鉛直方向の変位と地震により低層構造物14が受けた鉛直方向の変位との相異を許容する。
【0118】
また、施工時、施工後、及び長期間経過後において、高層構造物12の沈下量と低層構造物14の沈下量が異なる場合には、ブラケット部材132の立設部132Bの基端側を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0119】
このように、構造物連結装置130のH鋼部材134及びブレース部材136を圧縮変形、引張変形させることで、高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達することができる。さらに、ブラケット部材132の立設部132Bの基端側を湾曲させて鉛直方向に変形させることで、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容することができる。
【0120】
また、基礎16に取り付けられたブラケット部材132と基礎22に取り付らけれたブラケット部材132とをH鋼部材134及びブレース部材136で連結さえることで、基礎16と基礎22との間の距離が大きい場合でも、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容すると共に、高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達してこの水平方向の力を高層構造物12と低層構造物14とで負担することができる。
【0121】
次ぎに、本発明の第11実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図13に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0122】
図13に示されるように、第11実施形態の高層構造物12の基礎158は、上部スラブ158Aと下部スラブ158Bとを備える2重スラブとされており、低層構造物14の基礎154は、上部スラブ154Aと下部スラブ154Bとを備える2重スラブとされている。
【0123】
また、構造物連結装置150は、断面H型のH鋼部材152と、基礎158に固定された断面矩形状の第1圧縮力伝達部材155と、第1圧縮力伝達部材155との間で一定の隙を空けて配置され、基礎154に固定された断面矩形状の第2圧縮力伝達部材156と、を備えている。
【0124】
詳細には、H鋼部材152は、ウエブ部152Aと、ウエブ部152Aを挟むように設けられたフランジ部152Bとを備え、基礎158の上部スラブ158Aと基礎154の上部スラブ154Aとに挟まれるようにH鋼部材152が水平方向に延びて配置されている。そして、H鋼部材152のフランジ部152Bが基礎158及び基礎154の側面に図示せぬアンカーボルトを用いて固定されている。
【0125】
さらに、H鋼部材152の下方に、断面矩形状の第1圧縮力伝達部材155と、断面矩形状の第2圧縮力伝達部材156とが設けられ、第1圧縮力伝達部材155と第2圧縮力伝達部材156とは、一定の隙を保った状態で、水平方向に延びて配置されている。
【0126】
例えば、高層構造物12が片土圧(水平方向の力)を受けて低層構造物14へ接近しようとした場合には、第1圧縮力伝達部材155と第2圧縮力伝達部材156とが接触し、第1圧縮力伝達部材155と第2圧縮力伝達部材156とを圧縮変形させることで、高層構造物12が受けた片土圧(水平方向の力)を低層構造物14へ伝達する。
【0127】
また、地震時に高層構造物12が低層構造物14へ接近しようとした場合には、第1圧縮力伝達部材155と第2圧縮力伝達部材156とが接触し、第1圧縮力伝達部材155と第2圧縮力伝達部材156とを圧縮変形させることで、地震により高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達する。
【0128】
また、ウエブ部152Aを湾曲させて鉛直方向に変形させることで、施工時、施工後、及び長期間経過後において、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容する。
【0129】
ここで、第1圧縮力伝達部材155と第2圧縮力伝達部材156との間には、隙が設けられているため、ウエブ部152Aが湾曲して鉛直方向に変形しても第1圧縮力伝達部材155及び第2圧縮力伝達部材156は損傷しないようになっている。
【0130】
このように、構造物連結装置150の第1圧縮力伝達部材155及び第2圧縮力伝達部材156を圧縮変形させることで、高層構造物12が低層構造物14へ接近することで第1圧縮力伝達部材155及び第2圧縮力伝達部材156が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達することができる。
【0131】
次ぎに、本発明の第12実施形態に係る構造物連結手段及びこれを用いた構造物群の一例について図14〜図16に従って説明する。なお、第11実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0132】
図16は、本第12実施形態に係る構造物連結装置160を上方から見た平面図である。図16に示されるように、構造物連結装置160は、断面H型のH鋼部材152(図14参照)と、基礎158に固定された断面矩形状の第1圧縮力伝達部材162と、第1圧縮力伝達部材162との間で一定の隙を空けて配置され、基礎154に固定された断面矩形状の第2圧縮力伝達部材164(図15参照)と、を備えている。
【0133】
詳細には、H鋼部材152と、第1圧縮力伝達部材162及び第2圧縮力伝達部材164とは、水平方向で交互に設けられている。つまり、H鋼部材152と、第1圧縮力伝達部材162及び第2圧縮力伝達部材164とは、鉛直方向で重ならないようになっている。
【0134】
図14に示されるように、H鋼部材152は、ウエブ部152Aと、ウエブ部152Aを挟むように設けられたフランジ部152Bとを備え、基礎158の上部スラブ158Aと基礎154の上部スラブ154Aとに挟まれるようにH鋼部材152が水平方向に延びて配置されている。そして、H鋼部材152のフランジ部152Bが基礎158及び基礎154の側面に図示せぬアンカーボルトを用いて固定されている。
【0135】
また、図15に示されるように、基礎158と基礎154との間であって、H鋼部材152が設けられていない部位には、断面矩形状の第1圧縮力伝達部材162と、断面矩形状の第2圧縮力伝達部材164とが設けられ、第1圧縮力伝達部材162と第2圧縮力伝達部材164とは、一定の隙を保った状態で、水平方向に延びて配置されている。
【0136】
このように、H鋼部材152と第1圧縮力伝達部材162及び第2圧縮力伝達部材164とを鉛直方向で重ならないように配置することでも、高層構造物12と低層構造物14との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容すると共に、高層構造物12が受けた水平方向の力を低層構造物14へ伝達してこの水平方向の力を高層構造物12と低層構造物14とで負担することができる。
【符号の説明】
【0137】
10 構造物連結装置(構造物連結手段)
12 高層構造物(一の構造物)
14 低層構造物(他の構造物)
28 構造物群
32 ウエブ部(鋼板)
40 構造物連結装置(構造物連結手段)
44 掛渡部(鋼板)
50 構造物連結装置(構造物連結手段)
56 掛渡部(鋼板)
60 構造物連結装置(構造物連結手段)
62 圧縮力伝達部材
70 構造物連結装置(構造物連結手段)
72 圧縮力伝達部材
80 構造物連結装置(構造物連結手段)
84 圧縮力伝達部材
90 構造物連結装置(構造物連結手段)
92 鋼棒
100 構造物連結装置(構造物連結手段)
102 圧縮力伝達部材
110 構造物連結装置(構造物連結手段)
112 第1圧縮力伝達部材
114 第2圧縮力伝達部材
130 構造物連結装置(構造物連結手段)
132B 立設部(鋼板)
134A ウエブ部(鋼板)
136 ブレース部材(鋼板)
150 構造物連結装置(構造物連結手段)
152A ウエブ部(鋼板)
155 第1圧縮力伝達部材
156 第2圧縮力伝達部材
160 構造物連結装置(構造物連結手段)
162 第1圧縮力伝達部材
164 第2圧縮力伝達部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の構造物と他の構造物との間に設けられ、一の構造物が受けた水平方向の力を他の構造物へ伝達すると共に、前記一の構造物と前記他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容することを特徴とする構造物連結手段。
【請求項2】
前記構造物連結手段は、圧縮変形、引張変形又はせん断変形をして前記一の構造物が受けた水平方向の力を前記他の構造物へ伝達する共に、鉛直方向に変形して前記一の構造物と前記他の構造物との間で生じる鉛直方向の異なる変位を許容することを特徴とする請求項1に記載の構造物連結手段。
【請求項3】
前記構造物連結手段は、前記一の構造物と前記他の構造物との間に配置固定され、板厚方向が鉛直方向を向いた鋼板であることを特徴とする請求項2に記載の構造物連結手段。
【請求項4】
前記構造物連結手段は、両端が前記一の構造物と前記他の構造物とに埋設され、水平方向に延びる鋼棒であることを特徴とする請求項2に記載の構造物連結手段。
【請求項5】
前記一の構造物と前記他の構造物との間に設けられ、前記一の構造物が前記他の構造物へ接近しようとすると、圧縮されて水平方向の力を伝達する圧縮力伝達手段を備える請求項1〜4に記載の構造物連結手段。
【請求項6】
前記構造物連結手段は、圧縮されて水平方向の力を伝達するコンクリート製の圧縮力伝達部材を備える請求項5に記載の構造物連結手段。
【請求項7】
一の構造物と、
前記一の構造物と隣接して構築される他の構造物と、
前記一の構造物と前記他の構造物との間に設けられる請求項1〜6の何れか1項に記載された構造物連結手段と、
を備える構造物群。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−140758(P2011−140758A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−614(P2010−614)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】