構造的ガラスアセンブリに関する改善
【解決手段】窓ガラス、支持部材、及び窓ガラスを支持部材に取り付けるための取付アセンブリを具える建物用グレージングシステムが開示される。取付アセンブリは支持部材に固定される取付部材、及び窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材を具える。取付部材は取付部及び、フック部を具えるガラス嵌合部材を具え、取付部材はフック部と取付部との連結によってガラス嵌合部材に結合される。取付アセンブリはさらに緩衝装置を具え、緩衝装置によって取付アセンブリが窓ガラスに加えられた衝撃に対して支持部材に対して相対的に移動し、それによって窓ガラスの耐衝撃性を向上させる。かかるグレージングシステムにおいて用いられる取付部材及び嵌合部材が開示され、懸架された窓ガラスの耐衝撃性を向上させる方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物用グレージングシステムに関するものであり、また、かかるグレージングシステムで、建物に窓ガラスを固定する取付部材及び嵌合部材に関するものであり、さらには、窓ガラスの耐衝撃性を改善する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物用のフレームレスのグレージングシステムがよく知られている。Pilkington Planar(商標)グレージングシステムを含む、構造的ガラスファサードまたは構造的カーテンウォールを、組み込んでいる建物がその一例である。この種類の構造的グレージングシステムは、典型的には1m×1m〜2.5m×4.5mのサイズに及ぶ複数の窓ガラスを具え、それぞれの窓ガラスは、機械的取付部材または機械的嵌合部材によって、隣接する支持構造に独立に固定される。それぞれの窓ガラスは通常、強化され、ラミネート加工されて、特定の法的な要件を満たす一枚のガラスを備える。窓ガラスを二重または三重のガラスとして環境性能を向上させることができる。
【0003】
かかるフレームレスのグレージングシステムにおいて、各窓ガラスには通常多数の穴が空けられており、穴を真っ直ぐなボア、またはさら穴にされたボアとすることができ、そのボアに機械的な嵌合部材を固定することができる。矩形の窓ガラスにおいて、嵌合穴または嵌合ボアは通常角部付近に設けられ、機械的嵌合部材がそれぞれのボアによって窓ガラスに連結される。窓ガラスのサイズによっては、窓ガラス外周の他の位置に付加的な穴を設けることもできる。
【0004】
ガラス嵌合部材は窓ガラスのボアを貫通し、適切なねじアセンブリによって窓ガラスに固定される。ガラスの嵌合部材は通常、建物の内側に突出するフックを有する。その結果フックは、隣接し、建物の一部を形成する構造的支持要素に固定される取付部を具える適切な取付部材に連結される。ガラス嵌合部材及び取付部材は通常、同じグレードのステンレス鋼でできているが、設計上の要求によって機械的強度を変えることができる。そのようなガラス取付部及び取付部材を具えるアセンブリが、(905取付部材として知られ、アセンブリ等の業務例である)Pilkington Planar(商標)構造的ガラスシステムに用いられる。
【0005】
建物の外壁または建物のファサードに用いられる場合には、そのようなガラス嵌合部材及び取付部材には、エンジニアにより、負荷される風荷重を支持するのに十分な強度を持つものが指定される。同時に、アセンブリの2つの構成要素は十分な公差及びクリアランスを持ち、妥当な熱膨張、及び窓ガラスが取り付けられたガラス嵌合部材内の取付部材の、回転・並進による建物の動きに備えておくように設計される。
【0006】
しかしながら、従来の手法で設計されたアセンブリでは、特定の天候において、風荷重、熱膨張及び建物の動きに対する純粋な機械的強度が不十分である。例えば、ハリケーン下では、空中の破片が窓ガラスに衝突し、通常の機械的アセンブリはそのような機械的衝撃に耐えるのに十分な強度または柔軟性を持っていないことがある。
【0007】
グレージングシステムの耐衝撃性は、多数の要素に影響され、例えば、窓ガラスの原材料(通常はガラス)、窓ガラスがラミネート加工されているか否かや、ラミネートの中間層素材の種類、及び窓ガラスのサイズが影響している。
【0008】
単一の板ガラスからなる窓ガラスでは、板ガラスを(熱的または化学的に)強化することによって、耐衝撃性を改善している。熱的に強化されたガラスシートでは、加熱することで、ニッケル硫化物包有物による潜在的な問題を回避することができる。また、二つのガラスの構成要素及び、PVB等の中間層素材を具える窓ガラスが、耐衝撃性を向上させる手段として知られている。特定の応用例では、窓ガラスは耐衝撃性によって分類されており、窓ガラスは通常、認可された、利用状況に適合する試験方法に合格することで、特定の法的な規格を満足することが必要となる。
【0009】
アメリカのある州では、ハリケーンへの耐衝撃性があると分類されるために、グレージングシステムは特定の建築基準に適合しなければならない。特に、国際建築基準(IBC)、国際住宅基準(IRC)、フロリダ建築基準(FBC)及びテキサス州保険庁 (TDI)は、ハリケーン等の強風現象から建物を守るための、最低限の建築基準の主要部を形成する。この建築基準群は、カーテンウォールを、強風時に飛来する破片により損傷を受ける、建物外面の一部とみなす。建築外面のひび割れを防止することは、加圧の合力に対する建物の構造健全性を継続するために極めて重要であるだけでなく、ビルの在中物や居住者を保護するためにも極めて重要である。国際的に認知された基準であるASTM E 1996-08では、ハリケーンによって飛ばされる破片が衝突した際の、グレージングシステムの性能を決定する標準的な仕様を提供している。
【0010】
現在、窓ガラスをラミネート加工することによって、窓に対する耐ハリケーン衝撃性能が改善されている。ハリケーン衝撃抵抗性があるラミネート加工された典型的な窓ガラスは、2つの窓ガラスの間に接着された中間層材を具える。とりわけ適した中間層材がデュポン(商標)社から入手可能であり、SentryGlas(登録商標)として販売されている。従来のPVB中間層と比較すると、SentryGlas(登録商標)は高剛性かつ強靱であり、それゆえに上述した衝撃試験の際に窓ガラスにひび割れが発生することを防止する能力を向上させることができる。
【0011】
従来のフレームに嵌合するのではなく、機械的嵌合部材によって窓ガラスの孔を経て支持される板ガラスを具える窓ガラスでは、窓ガラスの風荷重受容力及び耐衝撃性に対する制限因子は、ガラス及び中間層の、ガラス嵌合部材が貫通する孔付近の領域である。孔を囲んでいるこの領域において、中間層及びガラスはともに、局所化された高い負荷、大きな歪み、大きな圧力に弱い。このことは、ガラスアセンブリの風荷重への耐性及び衝撃への耐性において、要求されたレベルを達成することを困難としている。
【0012】
フレームレスの展示用ケース、店舗の窓、商業ビルの機能ガラス等を製造する際にガラス枠を固定する、この種類の一般的なボルト固定のシステムはすでに既知である。かかる一般的なボルト留めのシステムの一例が、特許文献1に記載されている。この文献では、ねじの胴部が板ガラスの孔を貫通し、クリップにねじ留めされている。金属ワッシャに裏打ちされたゴムワッシャが、ねじの頭部の下に配設され、クリップ及びワッシャによってガラス枠が固定される。かかる取付アセンブリは、ガラスアセンブルが、現在の衝撃に関する法規制、特に上述したハリケーンによる高荷重及び高衝撃の試験に合格するためには適切でない。
【0013】
特許文献2には、壁体パネル用の取付具が開示されている。取付具を用いることでパネルの風抵抗性を向上させている。壁体パネルに加えられる実質的に標準な風荷重に対し、この取付具は壁体パネルを風荷重が加えられた方向に変位させてしまう。
【0014】
特許文献3には、窓ガラスを建物に取り付けるための嵌合部材が開示されている。嵌合部材は、中心部に沿って形成された隆起部を持つ支持シャフトを具える。フック部を有するガラス嵌合部材は窓ガラスに取り付けられ、該嵌合部材は隆起部を経てフック部に連結される。かかる取付具は、風荷重の影響に対抗する特殊な例である。
【0015】
特許文献4に記載されているように、ガラス枠の積層を越えて延在する中間層を用いて、ラミネート加工された窓ガラスの耐衝撃性を向上させることが可能である。露出した中間層はそれから囲んでいる枠組みに接着され、または枠組みの一部を形成している隣接した金属突起上へ接着される。露出した中間膜は取り囲まれた枠に接合されるか、または隣接する枠の金属突起部に接合される。この解決法は、上述した種類のフレームレスのガラスアセンブリには適用できない。窓ガラスを取り囲み、中間層が接着されるフレームが存在しないためである。
【0016】
非特許文献1に記載されている別の解決法では、強力な構造接着剤を用いてガラス取付部材をガラス枠の表面に接着することによって、窓ガラス内に孔を設ける必要性をなくして関連する脆弱性を解消している。かかるシステムは、カーテンウォール及びファサード等のフレームレスのグレージングシステム用に開発されているが、必要な接続の耐久性及び接続の紫外線安定性を獲得するために、制御された環境で適用される専用の接着材を利用する必要がある。このような方法には、高いコストが伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】英国特許第311616号明細書
【特許文献2】特開平8−333831号公報
【特許文献3】仏国特許出願公開第2738271号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0188498号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Glass Magazine 2007年10月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、窓ガラスの耐衝撃性、特に板ガラスを具え、板ガラスのボアを経て板ガラスに固定される機械的嵌合部材持つ窓ガラスの耐衝撃性を改善するという課題に対し、これまでに代わる解決案を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、本発明の第一の態様では建物用グレージングシステムが提供される。このシステムでは、窓ガラス、支持部材、及び前記窓ガラスを前記支持部材に取り付けるための取付アセンブリを具える建物用グレージングシステムで、前記取付アセンブリは、前記支持部材に固定される取付部材、及び前記窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材を具え、前記取付部材は取付部及び、フック部を具える前記ガラス嵌合部材を具え、前記取付部材は、前記フック部と前記取付部との連結によって前記ガラス嵌合部材に結合される建物用グレージングシステムであって、前記取付アセンブリはさらに緩衝装置を具え、前記緩衝装置によって取付アセンブリが、窓ガラスに加えられた衝撃に対し、前記支持部材に対して相対的に移動し、それによって窓ガラスの耐衝撃性を向上させている。
【0021】
あるコンポーネントを他のコンポーネントと連結させながら、高速の衝撃部材から受ける衝撃波を弱め、運動エネルギーを分散させる際に、緩衝装置を用いることができる。
【0022】
かかるグレージングシステムでは、他の既知のグレージングシステムと比較して機械的衝撃に対する耐性を向上させることができる。
【0023】
好ましくは、前記取付部材が前記支持部材のボアを貫通する固定部材によって前記支持部材に固定され、前記緩衝装置は前記固定部材を取り囲んでいる。
【0024】
好ましくは、前記緩衝装置が、前記支持部材の前記ボアに配設される。
【0025】
ある実施形態では、前記緩衝装置が中空で剛性の部材に取り付けられる。
【0026】
ある実施形態では、前記緩衝装置が実質的に環状である。
【0027】
好ましくは、前記緩衝装置は圧縮可能である。また好ましくは、前記緩衝装置は少なくとも一つのゴム製リングを具える。
【0028】
最も好ましい実施形態では、前記緩衝装置は3つのゴム製Oリングを具える。
【0029】
好適には、前記緩衝装置は前記取付部から物理的に分離している。
【0030】
他の好ましい実施形態では、前記緩衝装置は前記ガラス嵌合部材の前記フック部と連結する。好適には、前記緩衝装置は前記ガラス嵌合部材と一体のコンポーネントである。
【0031】
本発明の第1の態様の実施形態は、他の好ましい構成を有する。好ましくは、前記窓ガラスに衝撃が加えられた時に、前記ガラス嵌合部材が前記取付部に対して回転することができるように前記取付部は前記嵌合部材と連結する。また好ましくは、前記取付部は隆起部を持ち、前記ガラス嵌合部材は前記隆起部によって前記取付部に連結される。
【0032】
好ましくは、前記窓ガラスはラミネート材を具える。また好ましくは、前記窓ガラスは前記ラミネート材に接着される板ガラスを具える。さらに好ましくは、前記ラミネート材はハリケーンによる衝撃に対する耐性を窓ガラスに与えるために用いられる種類のものである。またさらに好ましくは、前記窓ガラスはASTM E 1996−08に合格する。好適には、前記窓ガラスは、性能レベルがAからDまでの種類の大きな飛翔体によるASTM E 1996−08に合格している。
【0033】
好ましくは、前記グレージングシステムは構造的ファサードまたは構造的カーテンウォールの一部である。
【0034】
好ましくは、前記グレージングシステムは建物の一部である。
【0035】
好適には、前記緩衝装置は不可逆的に圧縮可能である。
【0036】
好適には、前記窓ガラスはボアを有する板ガラスを有し、前記ガラス嵌合部材が前記ボアによって前記窓ガラスに固定される。
【0037】
前記窓ガラスを断熱ユニットとすることができる。前記窓ガラスは2枚の離間した板ガラスを具え、前記板ガラスは周縁が密封されており、それによって2枚の板ガラスの間に空隙を画定している。前記断熱ユニットは3枚の板ガラスを具えることができる。
【0038】
本発明の第二の態様では、窓ガラスを建物に取り付けるための取付部材が提供される。この窓ガラスでは、窓ガラスを建物に取り付けるための取付部材であって、前記取付部材は、前記建物の構造要素内のボアを貫通する固定部材によって前記建物に固定されるように構成され、前記取付部材は、前記窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材に連結可能な取付部を具え、前記取付部を前記ガラス嵌合部材に連結することで、前記窓ガラスは前記建物に、取り付けることができ、前記取付部材に連結される緩衝装置が存在し、該取付部材は、前記窓ガラスが前記建物に取り付けられた場合に、前記窓ガラスは向上した耐衝撃性を持つように構成され、前記緩衝装置は前記構造要素内の前記ボアに配設されている。
【0039】
好ましくは、前記緩衝装置が圧縮可能である。
【0040】
好ましくは、前記緩衝装置が前記構造要素の前記ボアに配設可能な中空の剛性部材に取り付けられており、前記中空の剛性部材は前記固定部材が前記中空の剛性部材を貫通することができるように構成されている。このことは、前記構造要素と十分強固な連結を維持しながら、前記支持部材を前記構造的支持要素に、緩衝装置を圧縮させることなしに固定することができる点で有利である。
【0041】
ある実施形態では、前記窓ガラスに衝撃が加えられたときに、前記取付部が前記ガラス嵌合部材に対して回転することができるように、前記取付部材を前記ガラス嵌合部材に連結することができる。このことは、加えられた衝撃を窓ガラスの動きによってさらに消散することができる点で有利である。
【0042】
他の実施形態において、前記取付部がステム部を具え、前記ステム部は前記ステム部に沿って形成される隆起部を有する。好ましくは、前記取付部は前記隆起部によって前記ガラス嵌合部材に連接可能である。
【0043】
本発明の第二の態様による実施形態は、他の好ましい構成を有する。好ましくは、前記緩衝装置は実質的に環状である。好適には、前記緩衝装置はゴム製のリングを具える。好適には、前記緩衝装置は3つのゴム製のリングを具える。また好ましくは、前記窓ガラスは一枚のガラスを具える。また好適には、前記窓ガラスでは高速度の大きな物体の衝突に対する耐衝撃性が改善されている。
【0044】
好ましくは、十分大きな衝撃の際に、加えられた衝撃の少なくとも一部が、前記取付部に永久的な歪みを生じさせるように、前記取付部が構成される。このことは、加えられた衝突によるエネルギーの少なくとも一部が、前記取付部の局所化された変形によって消散される点で有利である。
【0045】
好適には、前記緩衝装置は不可逆的に圧縮可能である。
【0046】
本発明の第三の態様では、窓ガラスを建物に取り付けるためのガラス嵌合部材が提供される。このガラス嵌合部材では、前記ガラス嵌合部材は前記窓ガラスに固定可能であり、前記嵌合部材はフック部を具え、前記ガラス嵌合部材は取付部を具えて前記建物に取り付け可能な取付部材に連結可能であり、前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結させることで、前記窓ガラスは前記建物に取付可能であり、前記窓ガラスが前記建物に取り付けられた時に、前記窓ガラスは耐衝撃性を向上させるように構成されるガラス嵌合部材の前記フック部に連結される緩衝装置が存在している。
【0047】
好ましくは、前記フック部が前記緩衝装置を経て前記取付部に接続可能である。
【0048】
好ましい実施形態において、前記窓ガラスのボアを経て前記窓ガラスに固定可能であるように前記ガラス嵌合部材が構成される。
【0049】
好ましくは、前記窓ガラスは1枚のガラスを具える。
【0050】
好ましくは、前記緩衝装置は圧縮可能である。好適には、緩衝装置は不可逆的に圧縮可能である。
【0051】
本発明の第四の態様では、本発明の第二の態様における取付部材と、本発明の第三の態様におけるガラス嵌合部材とを具える、窓ガラスを建物に取り付ける際に用いられる取付アセンブリが提供される。
【0052】
好ましくは、前記ガラス嵌合部材が窓ガラスに固定されている場合に、前記取付部が実質的に前記ガラス嵌合部材と直交するように前記取付部は前記ガラス嵌合部材と連接可能である。
【0053】
本発明の第五の態様では、(a)取付アセンブリは、取付部を有して隣接する支持部材に固定可能な取付部材と、窓ガラスに固定するためのガラス嵌合部材とを具え、前記ガラス嵌合部材はフック部を具え、前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結することで、前記窓ガラスは前記隣接する支持部材に取り付け可能であり、前記取付アセンブリによって、前記窓ガラスを隣接する前記支持部材に固定するステップと、(b)前記ガラス嵌合部材を前記窓ガラスに固定するステップであって、好ましくは前記窓ガラスのボアを経て固定するステップと、(c)前記取付部材を、前記支持部のボアと緩衝装置のボアとを貫通する固定部材によって、前記隣接する支持部材に固定するステップと、及び(d)前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結するステップとを含み、前記緩衝装置によって、前記窓ガラスの衝撃時に前記取付アセンブリが前記支持部材に対して相対的に移動できるように構成されている、懸架された窓ガラスの耐衝撃性を向上させる方法が提供される。
【0054】
前記のステップ(b)とステップ(c)の順序は、入れ替えることができる。
【0055】
好ましくは、前記緩衝装置は前記支持部の前記ボアに配設される。
【0056】
好ましくは、前記取付部材を前記支持部に固定するために、前記固定部が前記中空の剛性部材を貫通するように、前記緩衝装置は中空の剛性部材に取り付けられる。
【0057】
他の実施形態では、前記窓ガラスに衝撃が加えられたときに、前記取付部材が前記ガラスアセンブリ嵌合部材に対して回転することができるように、前記取付部が前記ガラス嵌合部材に連結されている。好ましくは、前記取付部が隆起部を有するステム部を具え、前記取付部が、前記隆起部によって前記ガラス嵌合部材と連接可能である。
【0058】
他の実施形態では、前記緩衝装置は前記ガラス嵌合部材に連接される。好ましくは、前記嵌合部材はフック部を具え、前記緩衝部材が前記緩衝装置によって前記取付部に連接されるように、前記緩衝装置は前記取付部に連結されている。
【0059】
好ましくは、緩衝装置は、圧縮可能である。
【0060】
本発明の第五の態様の実施形態において、好適には前記緩衝装置は不可逆的に圧縮可能である。好ましくは、前記ガラス嵌合部材は、前記窓ガラスのボアに固定される。好適には、前記窓ガラスは一枚のガラスを具える。好適には、前記窓ガラスは建物の窓である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ガラス嵌合部材と連結可能で、窓ガラスを建物に取り付けるために用いられる従来の取付部材を示す側断面図である。
【図2】図1に示される取付部と連結している従来のガラス嵌合部材の側断面図である。
【図3】取付アセンブリが窓ガラスを建物の構造支持部材に取り付けられている状態で示される、従来のグレージングシステムの部分側断面図を示す。
【図4】窓ガラスを建物に取り付ける際に用いられる、他の従来の取付部材の側断面図を示す。
【図5】図4に示される取付部材に接続されて示される、他の従来のガラス嵌合部材の側断面図を示す。
【図6】他の取付アセンブリが窓ガラスを建物の構造支持部材に取り付けた状態で示される、他の従来のグレージングシステムの部分側断面図を示す。
【図7】図6に示されるグレージングシステムの平面図であり、ラミネート加工された内側窓ガラスを具える断熱ユニットに連結されている様子を示す。
【図8】図6に示されるグレージングシステムの平面図であり、ラミネート加工された窓ガラスに連結されている様子を示す。
【図9】本発明の第二の態様における取付部材の断面図を示す。
【図10】本発明の第一の態様におけるグレージングシステムを示す。
【図11】図10に示される取付アセンブリの分解図を示す。ただし、図を明瞭にするために、窓ガラスは図示していない。
【図12】他の取付部材の側断面図を示す。
【図13】図2に示す種類の従来のガラス嵌合部材に接続される、図12の取付部材の側断面図を示す。
【図14】図1に示される種類の従来の取付部に接続される、本発明の第三の態様におけるガラス嵌合部材の側断面図を示す。
【図15】図1に示される種類の従来の取付部に接続される、本発明の第三の態様における他のガラス嵌合部材の側断面図を示す。
【図16】4枚の窓ガラスが建物の構造要素の角部で連結されている、本発明の第一の態様におけるグレージングシステムの一部の部分断面図を示す。
【図17】本発明の第一の態様におけるグレージングシステムの一部を示す。
【図18】本発明の第一の態様におけるガラスファサードを示す図である。
【図19】図18に示される種類のガラスファサードを持つ建物の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
例示のみを目的として、以下添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0063】
図1は、フレームレスのグレージングシステム(カーテンウォールまたはファサード等)を設置する際に、窓ガラスを建物に取り付けるのに用いられる従来の取付部材1を示す。取付部材1は、適切なグレードのステンレス鋼で製造される取付部2を具える。取付品2は、窓ガラスを建物に取り付けるために、取付アセンブリで用いるのに十分な剛性を持つ。取付品2はステム部3を持つ。ステム部3は円柱状のベース部5と一体で、外側に延在している。取付部2はステム部3に沿って延びる中心軸に対して対称である。取付品2の軸に沿って、固定ボルト9を受け止めるのに適した直径の止りねじ穴7が配設される。固定ボルトは取付部と同じグレードのステンレス鋼で製造することができる。ボルト9を建物の構成要素または図示しない支持部のボアを貫通し、止りねじ穴7にねじ留めされることで、取付部2は構造要素または支持要素に固定される。ワッシャ11、12は構造要素の両側に用いることができる。ワッシャは、また、取付部と同じグレードのステンレス鋼で製造することができる。取付部品2は、しばしば取付ロッドと呼ばれる。
【0064】
ある取付部材1では、ステム部3の直径は約13mmであり、長さは約45mmである。円柱状のベース部5の高さは約10mmであり、直径は約40mmである。円柱状のベース部及びステム部は物理的につながっており、一片のステンレス鋼から機械加工することができる。止りねじ孔7の直径は約11mmであり、深さは約25mmである。
【0065】
図2は従来の嵌合部材13を示し、窓ガラスに設けられた孔またはボアによって固定される。この種類のガラス嵌合部材は、フレームレスのグレージングシステム(カーテンウォールまたはファサード等)を設置する際に、窓ガラスを建物に取り付けるために用いられる。通常、窓ガラスは板ガラスを具える。ガラス嵌合部材13は通常、図1に記載される取付部2と同じグレードのステンレス鋼から製造されるが、設計上必要であれば、ガラス嵌合部材の機械的強度のためにガラス部材部材13の材料を取付部2と異なるものとすることもできる。ガラス嵌合部材13は窓ガラスに隣接して構成される円柱状のベース部15を有する。ガラス嵌合部材を窓ガラスのボアに固定するために固定ねじ16が提供される。適切なナットアセンブリ(図示せず)を、ガラス嵌合部材13を窓ガラスに固定するために用いることができる。窓ガラスのボアにガラス支持嵌合部材を固定する他の類似の方法が当業者に知られている。
【0066】
円柱部17はベース部15と一体で、ベース部15の外側に延在しており、フックを画定する実質的に水平な条溝19を持つ。条溝19は取付部2のステム部3がフックと係合するのに実質的に十分な大きさを持つ。保持ねじ20はガラス嵌合部材の取付部材に対する垂直方向の動きを妨げ、ガラスが破損した際にガラス嵌合部材を取付部のステム部上に保持している。
【0067】
図3に既知のグレージングシステムを示す。板ガラスを具える窓ガラス23を建物の支持要素または構造要素25に取り付けた状態の、従来の機械的取付アセンブリ21が示される。この種類の取付アセンブリ21は従来のピルキントン905嵌合部材に類似している。取付アセンブリは、構造要素25に固定される、図1に記載される種類の取付部材1を具える。取付部材と構造要素との結合は強固である。
【0068】
図2に記載される種類のガラス嵌合部材は、窓ガラス内の孔及びボアによって、窓ガラス23に固定される。取付部2のステム部3はガラス嵌合部材に連結され、ガラス嵌合部材は、取付部材と実質的に直交する。条溝19は、取付部材がガラス嵌合部材に際にされる場合に、ガラス嵌合部材が取付部材と直交しないように適切に構成することもできる。取付アセンブリにより、窓ガラス23と構造要素25との間は強固に連結される。
【0069】
窓ガラスは、ラミネート加工構造または、ラミネート加工された内面構成要素を具える断熱構造とすることができる。窓ガラスを二重または三重とすることができ、その際に、ガラス嵌合部材の詳細は窓ガラスに問題無く嵌合するように適切に改良される。
【0070】
使用に際し、取付部材1は構造ムリオンまたは支持トラス等の建物の構造要素25に固定される。取付部2の円柱状のベース部5を構造要素25に当接させることができ、または図3に示されるように、構造要素25と円柱部5の基部との間にステンレス鋼のワッシャ12を配設させることができる。ステンレス鋼のワッシャ11は構造要素のワッシャ13とは別の側面に配設され、ボルト9はワッシャと構造要素のボアを貫通する。ワッシャ11及び12を他の適切な材料で製造することもできる。ボルト9は取付部の止りねじ穴7にねじ留めされ、固定部は構造要素に強固に固定される。
【0071】
ガラス嵌合部材は窓ガラスに当業者が既知の方法で適切に固定される。ステム部をフックに連結することで、窓ガラスは取付部のステム部3から懸架される。ガラス要素の垂直方向の動きを妨げるために保持ねじ20が挿入される。保持ねじ20はガラス破損時に付加的な固定をもたらす。
【0072】
図4はフレームレスのグレージングシステム(カーテンウォールまたはファサード等)を取り付ける際に窓ガラスを建物に取り付けるために用いられる、従来の取付部材27を示す。取付部材27は取付部28の丈に沿って隆起部31が形成されている点を除いて、取付部材1と同様である。一般的に隆起部31はステム部29の丈の略中間に形成され、窓ガラスに取り付けられる際にはガラス嵌合部材の中心線に沿って配設される。
【0073】
図5はボアによって窓ガラスに固定するための他の従来のガラス嵌合部材33を示す。ガラス嵌合部材33はガラス嵌合部材13と基本的に同様であるが、条溝35のフックが図4に記載された種類の取付部28の隆起部31と連結可能となるように、円柱部37の条溝35の寸法が決定されている点が異なっている。
【0074】
図6は他の既知のグレージングシステムを示す。窓ガラス23を建物の支持要素または構造要素25に取り付けた状態の機械的取付アセンブリ41が図示されている。取付アセンブリ41は図4に記載された種類の取付部材27を具える。取付部材27は構造要素25に固定されている。取付アセンブリは図5に記載された種類のガラス嵌合部材33も具えている。ガラス嵌合部材33は窓ガラス23のボアによって窓ガラスに固定される。
【0075】
取付部28は、隆起部31によってガラス嵌合部材33に連結される。図3に記述される取付アセンブリのように、ガラス嵌合部材33は取付部材28と実質的に直交するように連結される。
【0076】
この種類の取付アセンブリ41では、窓ガラスと構造要素との連結が図3に示す取付アセンブリ21の連結よりも緩やかになる。これは、隆起部31によってガラス嵌合部材33が取付部28に対してある程度の回転が可能となることによるものである。従って、この種類の取付アセンブリは、窓ガラスに高い風負荷が与えられている際に、窓ガラス23のある程度の動きを許容する。
【0077】
図7は、図6に記載された取付アセンブリを組み込んだグレージングシステムの平面図を示す。この場合、ガラス嵌合部材33は二重ガラスの窓ガラス45に、当業者が既知の方法で固定されている。窓ガラス45は厚さ10mmの強化・熱浸フロートガラス47の外面、厚さ16mmの空隙49、及びラミネート加工された厚さ20.3mmの窓ガラス51を具える。ラミネート加工された窓ガラスは、厚さ2.3mmのラミネート材層55に接着された厚さ10mmの強化・熱浸フロートガラス53を具える。ラミネート材はPVBまたはデュポン社のSentryGlas(登録商標)またはそれらの組み合わせとすることができる。ラミネート材層55の他方の面は厚さ8mmの強化・熱浸フロートガラス57に接着されている。適切なシーラント59がガラス47及びガラス51の周辺に延在し、空隙49を画定する。同様に、シリコンが注入されたプラスチックのボス58は断熱ユニット全体を通過するボアを密閉する。中間層の穴及びプラスチックのボスは中間層に入り込む寸法となっており、ガラスの全てが破壊された時であっても該中間層はなお全構造荷重を支持することができる。図3に示される取付アセンブリを代わりに用いることもできる。
【0078】
図8は、図6に記載される取付アセンブリを組み込んだ他の既知のグレージングシステムの平面図を示す。この場合、ガラス嵌合部材33はラミネート加工された窓ガラス51に固定される。窓ガラス51の厚さは20.3mmである。ラミネート加工された窓ガラス51は、厚さ2.3mmのラミネート材層に接着される厚さ10mmの強化フロートガラス53(熱浸することもできる)を具える。ラミネート材は、PVBまたはデュポン社のSentryGlas(登録商標)またはそれらの組合わせとすることができる。ラミネート材層55の他方の面は、厚さ8mmの強化・熱浸フロートガラス57に接着されている。取付部材27及びガラス嵌合部材33は、取付部材1及びガラス嵌合部材13と交換できる。
【0079】
図7及び図8の両方で、板ガラス及びラミネート材の厚さを必要に応じて変えることができる。
【0080】
図9は本発明の第二の態様の取付部材61を示す。取付部材61は取付部62を具え、取付部62は適切なグレードのステンレス鋼でできており、図4に記載される取付部と同様である。取付部材62はステム部63を有する。ステム部63はステム部29の丈の略中間に形成される隆起部31を有する。ステム部は円柱状のベース部65と一体で、円柱状のベース部65の外側に延在している。取付部62の中心軸66に沿って、固定ボルト69を受け止めるのに適した直径を持つ止りねじ穴67が配設される。取付部材はボルト69が貫通できるワッシャ71、73を具える。取付部材61は中心軸66の周りに放射相称である。
【0081】
取付部材61は、さらに緩衝装置75を具える。あるコンポーネントを他のコンポーネントと連結させながら、高速の衝撃部材から受ける衝撃波を弱め、運動エネルギーを分散させる際に緩衝装置を用いることができる。
【0082】
緩衝装置75は硬いステンレス鋼のチューブ83に取り付けられる3つのゴム製Oリング77、79、81を具える。緩衝装置が負荷荷重に対して変形できるように、ゴム製のOリングは圧縮可能である。ゴム製のOリングはそれぞれ外直径約21mm、内直径約14mmである。それぞれのOリングの厚みは約3.5mmである。それぞれのOリングは、実質的に円形の輪郭を持つ。ボルト69が構造要素のボアを貫通し、ボルトがワッシャやステンレス鋼チューブ83のボアを貫通し、ボルトを止りねじ穴67にねじ留めすることで、取付部材61を建物の構造要素(すなわち、トラスまたはムリオン)に固定することができる。ステンレス鋼チューブ83は、3つのゴム製Oリング77、79、81の厚みの合計よりもわずかに長い。このことによって、ワッシャ71、73がステンレス鋼のチューブ83の端部に当接するので、取付部材が建物の構造要素に固定されている際にゴム製のOリング77、79、81が非圧縮のままにできる。
【0083】
図9に示されるように、緩衝装置は取付部62と物理的に分離している。物理的に分離した緩衝装置を取り入れることで、緩衝装置を既存の取付部材に取り入れることができる。
【0084】
図4に記載される隆起部を有するステム部63が示され、かかる隆起部はガラス嵌合部材の回転を促進し、可塑性のスチール製の取付部材でのエネルギー消散を促進することで、窓ガラスの耐衝撃性を向上させる。必要であれば、ステム部63に隆起部を持たせないことも可能である。
【0085】
図10は、本発明の第一の態様におけるグレージングシステムを示している。グレージングシステムは取付アセンブリ85を具える。取付アセンブリ85は、図9に記載される取付部材61、及び図5に記載されるガラス嵌合部材33を具える。窓ガラス23を建物の構造要素25に取り付けた状態の取付アセンブリ85が示される。ガラス嵌合部材33は、窓ガラス23のボアによって窓ガラス23に固定される。あるいは、ガラス嵌合部材が窓ガラス23の外面または内面に接着するように、ガラス嵌合部材を適切に構成することができる。窓ガラスは、図7及び図8に記載される種類の断熱ユニットまたはラミネート加工された窓ガラスとすることができる。
【0086】
構造要素25に固定された取付部材61が示される。ワッシャ73に隣接しているベース部65の平坦面と、構造部材25に隣接しているワッシャ73が示される。特定の状況ではワッシャ73をなくすことができる。
【0087】
構造要素25にはボア87が存在する。ワッシャ71は構造部材のもう一方に配設され、固定ボルト69の頭部に隣接するように構成される。緩衝装置75は構造要素25のボア87に配設される。緩衝装置75は3つのゴム製のOリングを具える。Oリングはステンレス鋼チューブ83上に設置される。ボルト69はワッシャ71、ステンレス鋼チューブ83、ワッシャ73を貫通し、取付部62の止りねじ穴67にねじ留めされ、それによって取付部材61を構造部材25に固定する。
【0088】
ステンレス鋼チューブ83がワッシャ71、73に密接できるように、3つのOリングの厚さの合計はステンレス鋼チューブ83の丈よりもわずかに小さくなっている。ステンレス鋼チューブは、通常の使用時に嵌合部材が十分強固となるようにし、通常の使用時にゴム製のOリングが圧縮されないようにする。それぞれのOリングの外直径は構造要素内のボア87の直径よりもわずかに小さく、それによって、Oリングはボア内でボルト69の周りを回転することができる。Oリングは、Oリングがステンレス鋼チューブ83にぴったり嵌合するような内直径を持つ。
【0089】
窓ガラスの外側から機械的な衝撃が与えられた場合(建物において窓ガラスの外面は、建物の外部に露出している面である)、ゴム製のOリングは圧縮可能であり、衝撃の一部を吸収することができる。それに比べて、強固な嵌合部材は衝撃を十分に吸収することができない。ガラス嵌合部材がボアによって窓ガラスに設置される場合に、ボアは窓ガラスの弱点となる。従って、窓ガラスと建物の構造要素との間に強固な取付アセンブリが存在すると耐衝撃性が低下する。
【0090】
明瞭化のため、取付アセンブリ85の分解図が図11に示される。組立てアセンブリは以下のように組み立てられる。3つのゴム製Oリング77、79、81はステンレス鋼チューブ83を覆って配設される。ステンレス鋼チューブの外直径はゴム製Oリングの内ぐりボアの直径と近似しており、Oリングをステンレス鋼チューブ83に取り付けた際にぴったり嵌合する。Oリングは1つ以上とすることができる。緩衝装置はゴム製のチューブを具えることができる。ゴム製のチューブは、ステンレス鋼チューブ等の中空の剛性部材に取り付けることができる。
【0091】
ステンレス鋼チューブ83及びOリング77、79、81のアセンブリは構造要素25のボア87に配設される。ボルト69はワッシャ内のボア及びステンレス鋼チューブを貫通する(矢印89の方向に組立てられる)。ステンレス鋼チューブのボアの直径はチューブがボルトの周りを自由に回転するのに十分な大きさとなる。ボルトは取付部62の止りねじ穴67にねじ留めされる。これによって取付部材が構造要素に固定される。
【0092】
窓ガラス嵌合部材33は(図4の記載した種類の)取付部と(矢印90の方向に)連結可能であり、ガラス嵌合部材は窓ガラスのボアによって窓ガラスに固定される。
【0093】
図12は、他の取付部材91を示す。取付部材91はステム部3を有する取付部2を具える。ステム部外壁の一部を覆う圧縮可能な緩衝材のスリーブ95が存在している。スリーブはステム部の壁面を完全に取り囲むことができる。衝撃を吸収するために、緩衝材は不可逆的に圧縮可能とすることができる。
【0094】
ボルト9を止りねじ穴7にねじ留めすることによって、取付部材を図示しない支持部に固定することができる。ワッシャ11を取付部材を支持部材に固定する際に用いることができる。
【0095】
図13は図2に記載された種類のガラス嵌合部材97に連結された取付部材91を示す。ガラス嵌合部材97はスリーブ95よりもわずかに広い幅を持つ条溝99を有し、条溝99はスリーブ95を収容するフックを画定する。
【0096】
図14は本発明の第三の態様におけるガラス嵌合部材101を示す。ガラス嵌合部材101は窓ガラスのボアによって窓ガラスに固定されるように構成される。ガラス嵌合部材は図2に記載されたものに類似しているが、円柱部105の条溝103がフックを形成し、条溝103に連結された緩衝装置107を具える点で異なる。図1に示される従来の取付部のステム部3がフックに連結される際にステム部は衝撃緩衝装置107と接触している。緩衝装置107は、条溝の基部に配設されフックを画定する「U字型」のゴム溝である。好ましくは、緩衝装置107は条溝に接着材等によって固定される。
【0097】
図15に本発明の第三の態様における代替的なガラス嵌合部材111を示す。この特定の実施形態では、緩衝装置113がフックの三日月形部内の切欠部に配設され、フックが緩衝装置113を経て従来の取付部のステム部3に連結する。緩衝装置113の弾性率は加えられる最大風荷重を支持できるのに十分である一方、必要に応じて機械的衝撃の高いエネルギーを吸収できる値が選択される。緩衝装置113を適切な接着剤によって切欠部に固定することができる。
【0098】
図14または図15のいずれにおいても、図4または図9に記載される取付部材を使用することができる。
【0099】
図16は本発明の第一の態様におけるグレージングシステム121の典型的な十字構造の概略図を示している。グレージングシステムは4枚の窓ガラス123、125、127及び129を具える。図2に記載された種類のガラス嵌合部材131、133、135及び137は、窓ガラス123、125、127、129のそれぞれのボアによってそれぞれの窓ガラスの角部で固定される。本発明の第三の態様におけるガラス嵌合部材は、図16に示される任意のまたは全てのガラス取付部材に用いることができる。
【0100】
図9に記載される種類の4つの取付部材139、141、143及び145が構造要素147に固定される。それぞれの取付部材は、図9に記載される取付部を具える。それぞれの取付部はステム部の丈に沿って形成された隆起部を持たないこともできる。窓ガラス123、125、127及び129はより大きなファサードの一部であるため、構造要素147は、ムリオンまたはトラスとすることができる。
【0101】
一対の取付部材139、141は、ねじ部149によって構造要素147に連結されており、ねじ部149は、取付部材139、141の止りねじ穴151、153のそれぞれにねじ留めされる。同様に、一対の取付部材143、145は、ねじ部155によって構造要素147に連結されており、ねじ部155は、取付部の取付部材143、145の止りねじ穴157、159のそれぞれにねじ留めされる。ワッシャは構造要素のいずれの側面に対しても用いることができる。
【0102】
構造要素147内のボア161には緩衝装置162が配設される。構造要素147内のボア163には、緩衝装置164が配設される。ボア162、163のそれぞれの緩衝装置162、164はステンレス鋼チューブ上に取り付けられた3つのゴム製Oリングであり、緩衝装置は図9、10、11に記載されているものである。窓ガラスの主要面を見ている場合(すなわち、図16のように見た場合)、それぞれの緩衝装置162、164はそれぞれの窓ガラスの周縁の外側に配設されている。グレージングシステムが外部の環境から密閉されるように、通常それぞれの窓ガラスの周縁にはシールが存在している。
【0103】
それぞれの窓ガラス123、125、127、129をラミネート加工することができる。それぞれの窓ガラスは断熱ユニット、すなわち2重ガラスまたは3重ガラスとすることができる。
【0104】
図17では、図16に示されるグレージングシステムをより詳細に示す。それぞれの窓ガラスは窓ガラスの角部にガラス嵌合部材を具え、ガラス嵌合部材は窓ガラスのボアによって窓ガラスに固定される。図17には2枚の完全な窓ガラス127、180が示されている。
【0105】
図18は建物183のガラスファサード181の背面図(建物内部からの図)を示す。ファサードは図16及び17に記載される種類のグレージングアセンブリである。ファサード181は9枚の窓ガラスを有している。中央の窓ガラスは建物周縁の枠に取り付けられておらず、開口部にわたって延在し、必要に応じてそれぞれの支持点で窓ガラスを構造的に支持する支持ムリオンまたは支持トラスに取り付けられている。それぞれの窓ガラスは取付アセンブリによって構造要素に取り付けられており、取付アセンブリは図9に記載される取付部材及び図5に記載される従来のガラス取付部材を具える。窓ガラスの寸法によって、ガラス嵌合部材及びガラス嵌合部材の取付部材を角部だけでなく他の位置にも使用することができる。
【0106】
図19に、図18に記載された種類のガラスファサード181を具える建物183の斜視図を示す。このファサードは米国材料試験協会E 1996−08に合格している。
【実施例1】
【0107】
取付アセンブリを具える支持フレームに取り付けられた、9枚の窓ガラスから成るグレージングシステムを建造した。それぞれの取付アセンブリは、図9に示される取付部材と同様の単一のまたは一対の取付部材を具える。図5に示されるガラス嵌合部材と同様のガラス嵌合部材が、窓ガラスのボア孔によって窓ガラスに取り付けられる。9枚の窓ガラスを、図18に示されるように碁盤状のガラスファサードに配置し、下記の標準試験プロトコルを用いて耐ハリケーン認証の承認を得るための試験を行った。
<換気試験>
TAS202(ASTM E283)を行う。
<均一静荷重試験>
30秒間75(lbs/ft2)(PSF)の正荷重を加えてTAS202(ASTM E330)を行う。
<均一静荷重試験>
75PSFの負荷重を加えて30秒間TAS202(ASTM E330)を行う。
<均一静荷重試験>
100PSFの正荷重を加えて30秒間TAS202(ASTM E330)を行う。
<均一静荷重試験>
100PSFの負荷重を加えて30秒間TAS202(ASTM E330)を行う。
<漏水試験>
15PSFの荷重を加えて15分間TAS202(ASTM E331)を行う。
<均一静荷重試験>
150PSFの正荷重を加えて30秒間TAS202(ASTM E330)を行う。
<均一静荷重試験>
150PSFの負荷重を加えて30秒間TAS202(ASTM E330)を行う。
<角材を試験体に当てて耐貫通性能を測る試験>
TAS201(ASTM E1996)を行う。
<反復負荷試験>
100PSFの荷重を加えてTAS203(ASTM E1996)を行う。
【0108】
ファサードは図18に示されるものと同様であり、下列、中列、及び上列の3列から成る。下列は3枚のラミネート加工された窓ガラスから成り、それぞれの窓ガラスは幅5フィート、高さ5フィートである。中列は3枚のラミネート加工された窓ガラスから成り、それぞれの窓ガラスは幅5フィート、高さ10フィートである。上列は3枚のラミネート加工された窓ガラスから成り、それぞれの窓ガラスは幅5フィート、高さ5フィートである。ファサード全体の寸法は幅15フィート、高さ20フィートである。ファサードの、ラミネート加工されたそれぞれの窓ガラスは、厚さ10mmの強化・熱浸フロートガラスの外面、厚さ2.28mmのデュポン社のSentryGlas(登録商標)Plusの中間層、及び厚さ8mmの強化・熱浸フロートガラスの内面からなる。外面及び内面はそれぞれ、中間層の反対の面に接着されている。内面とは建物の内部の面を意味する。外面とは外部環境にさらされる面を意味する。
【0109】
下列及び上列の窓ガラスはそれぞれ、窓ガラスの角部のボアによって窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材を有する。中列の窓ガラスは他の列よりも大きな高さを持つため、これらの窓ガラスはそれぞれ8つのガラス嵌合部材により支持され、4つの嵌合部材が幅10フィート縁に沿って等間隔で(それぞれの窓ガラスの角部に)配設される。
【0110】
ASTM E 1996−08によれば、2インチ×4インチの4.1kgの角体(タイプDの大きな飛翔体)がそれぞれの窓ガラスの所定の位置に発射される。角材は秒速50フィートの速度で窓ガラスに発射される。この試験計画の一部では、窓ガラスに局所的な機械的衝撃を与える。
【0111】
このファサードはタイプDの大きな飛翔体を用いたASTM E 1996−08に合格した。緩衝装置をそれぞれの取付部に組み込むことで、窓ガラスと構造支持要素との間の連結の強固さを低減することができる。それぞれの取付部のステム部上の隆起部は、飛翔体の衝突時にて窓ガラスが移動してエネルギーを吸収することを可能とする。
【0112】
加えられた衝撃によりそれぞれの取付部のステム部は永久的に変形し、衝撃のエネルギーは、砕けやすいガラス材が即時に破壊されることではなく、可塑性の取付部の鋼材の局所的な降伏されることによって消散する。このことにより、衝撃による破壊的エネルギーを、窓ガラスの動き及び比較的しなやかなステンレス鋼の歪みによってグレージングシステムにおいてさらに消散できるようになる。
【0113】
本発明の応用例として、耐ハリケーン性があり、ASTM E 1996−08に合格するガラスファサードが提供され、特にガラスファサードが、窓ガラスのボアによって窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材を有する場合に顕著な効果が得られる。本発明の第一の態様におけるグレージングシステムは、Dタイプの大きな飛翔体によるASTM E 1996−08で要求されるような局所的な機械的衝撃に対する耐性を改善する。
【0114】
本発明の第二の態様による取付部材及び、本発明の第三の態様によるガラス嵌合部材を既知の(単一層、積層または断熱ユニットの)窓ガラスに用いることができることが、当業者にとって直ちに理解されよう。
【0115】
本発明を適用することで耐衝撃性を向上させることができ、例えば爆発による爆風への耐性を向上させることができる。かかる耐爆発性を持たせた適用例では、窓ガラスが関連する試験に合格するように緩衝装置の特定が選択される。また本発明を適用することで、BS 6206またはBS EN356等の基準で定義された特性要求である一般的な耐衝撃性を向上させることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物用グレージングシステムに関するものであり、また、かかるグレージングシステムで、建物に窓ガラスを固定する取付部材及び嵌合部材に関するものであり、さらには、窓ガラスの耐衝撃性を改善する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物用のフレームレスのグレージングシステムがよく知られている。Pilkington Planar(商標)グレージングシステムを含む、構造的ガラスファサードまたは構造的カーテンウォールを、組み込んでいる建物がその一例である。この種類の構造的グレージングシステムは、典型的には1m×1m〜2.5m×4.5mのサイズに及ぶ複数の窓ガラスを具え、それぞれの窓ガラスは、機械的取付部材または機械的嵌合部材によって、隣接する支持構造に独立に固定される。それぞれの窓ガラスは通常、強化され、ラミネート加工されて、特定の法的な要件を満たす一枚のガラスを備える。窓ガラスを二重または三重のガラスとして環境性能を向上させることができる。
【0003】
かかるフレームレスのグレージングシステムにおいて、各窓ガラスには通常多数の穴が空けられており、穴を真っ直ぐなボア、またはさら穴にされたボアとすることができ、そのボアに機械的な嵌合部材を固定することができる。矩形の窓ガラスにおいて、嵌合穴または嵌合ボアは通常角部付近に設けられ、機械的嵌合部材がそれぞれのボアによって窓ガラスに連結される。窓ガラスのサイズによっては、窓ガラス外周の他の位置に付加的な穴を設けることもできる。
【0004】
ガラス嵌合部材は窓ガラスのボアを貫通し、適切なねじアセンブリによって窓ガラスに固定される。ガラスの嵌合部材は通常、建物の内側に突出するフックを有する。その結果フックは、隣接し、建物の一部を形成する構造的支持要素に固定される取付部を具える適切な取付部材に連結される。ガラス嵌合部材及び取付部材は通常、同じグレードのステンレス鋼でできているが、設計上の要求によって機械的強度を変えることができる。そのようなガラス取付部及び取付部材を具えるアセンブリが、(905取付部材として知られ、アセンブリ等の業務例である)Pilkington Planar(商標)構造的ガラスシステムに用いられる。
【0005】
建物の外壁または建物のファサードに用いられる場合には、そのようなガラス嵌合部材及び取付部材には、エンジニアにより、負荷される風荷重を支持するのに十分な強度を持つものが指定される。同時に、アセンブリの2つの構成要素は十分な公差及びクリアランスを持ち、妥当な熱膨張、及び窓ガラスが取り付けられたガラス嵌合部材内の取付部材の、回転・並進による建物の動きに備えておくように設計される。
【0006】
しかしながら、従来の手法で設計されたアセンブリでは、特定の天候において、風荷重、熱膨張及び建物の動きに対する純粋な機械的強度が不十分である。例えば、ハリケーン下では、空中の破片が窓ガラスに衝突し、通常の機械的アセンブリはそのような機械的衝撃に耐えるのに十分な強度または柔軟性を持っていないことがある。
【0007】
グレージングシステムの耐衝撃性は、多数の要素に影響され、例えば、窓ガラスの原材料(通常はガラス)、窓ガラスがラミネート加工されているか否かや、ラミネートの中間層素材の種類、及び窓ガラスのサイズが影響している。
【0008】
単一の板ガラスからなる窓ガラスでは、板ガラスを(熱的または化学的に)強化することによって、耐衝撃性を改善している。熱的に強化されたガラスシートでは、加熱することで、ニッケル硫化物包有物による潜在的な問題を回避することができる。また、二つのガラスの構成要素及び、PVB等の中間層素材を具える窓ガラスが、耐衝撃性を向上させる手段として知られている。特定の応用例では、窓ガラスは耐衝撃性によって分類されており、窓ガラスは通常、認可された、利用状況に適合する試験方法に合格することで、特定の法的な規格を満足することが必要となる。
【0009】
アメリカのある州では、ハリケーンへの耐衝撃性があると分類されるために、グレージングシステムは特定の建築基準に適合しなければならない。特に、国際建築基準(IBC)、国際住宅基準(IRC)、フロリダ建築基準(FBC)及びテキサス州保険庁 (TDI)は、ハリケーン等の強風現象から建物を守るための、最低限の建築基準の主要部を形成する。この建築基準群は、カーテンウォールを、強風時に飛来する破片により損傷を受ける、建物外面の一部とみなす。建築外面のひび割れを防止することは、加圧の合力に対する建物の構造健全性を継続するために極めて重要であるだけでなく、ビルの在中物や居住者を保護するためにも極めて重要である。国際的に認知された基準であるASTM E 1996-08では、ハリケーンによって飛ばされる破片が衝突した際の、グレージングシステムの性能を決定する標準的な仕様を提供している。
【0010】
現在、窓ガラスをラミネート加工することによって、窓に対する耐ハリケーン衝撃性能が改善されている。ハリケーン衝撃抵抗性があるラミネート加工された典型的な窓ガラスは、2つの窓ガラスの間に接着された中間層材を具える。とりわけ適した中間層材がデュポン(商標)社から入手可能であり、SentryGlas(登録商標)として販売されている。従来のPVB中間層と比較すると、SentryGlas(登録商標)は高剛性かつ強靱であり、それゆえに上述した衝撃試験の際に窓ガラスにひび割れが発生することを防止する能力を向上させることができる。
【0011】
従来のフレームに嵌合するのではなく、機械的嵌合部材によって窓ガラスの孔を経て支持される板ガラスを具える窓ガラスでは、窓ガラスの風荷重受容力及び耐衝撃性に対する制限因子は、ガラス及び中間層の、ガラス嵌合部材が貫通する孔付近の領域である。孔を囲んでいるこの領域において、中間層及びガラスはともに、局所化された高い負荷、大きな歪み、大きな圧力に弱い。このことは、ガラスアセンブリの風荷重への耐性及び衝撃への耐性において、要求されたレベルを達成することを困難としている。
【0012】
フレームレスの展示用ケース、店舗の窓、商業ビルの機能ガラス等を製造する際にガラス枠を固定する、この種類の一般的なボルト固定のシステムはすでに既知である。かかる一般的なボルト留めのシステムの一例が、特許文献1に記載されている。この文献では、ねじの胴部が板ガラスの孔を貫通し、クリップにねじ留めされている。金属ワッシャに裏打ちされたゴムワッシャが、ねじの頭部の下に配設され、クリップ及びワッシャによってガラス枠が固定される。かかる取付アセンブリは、ガラスアセンブルが、現在の衝撃に関する法規制、特に上述したハリケーンによる高荷重及び高衝撃の試験に合格するためには適切でない。
【0013】
特許文献2には、壁体パネル用の取付具が開示されている。取付具を用いることでパネルの風抵抗性を向上させている。壁体パネルに加えられる実質的に標準な風荷重に対し、この取付具は壁体パネルを風荷重が加えられた方向に変位させてしまう。
【0014】
特許文献3には、窓ガラスを建物に取り付けるための嵌合部材が開示されている。嵌合部材は、中心部に沿って形成された隆起部を持つ支持シャフトを具える。フック部を有するガラス嵌合部材は窓ガラスに取り付けられ、該嵌合部材は隆起部を経てフック部に連結される。かかる取付具は、風荷重の影響に対抗する特殊な例である。
【0015】
特許文献4に記載されているように、ガラス枠の積層を越えて延在する中間層を用いて、ラミネート加工された窓ガラスの耐衝撃性を向上させることが可能である。露出した中間層はそれから囲んでいる枠組みに接着され、または枠組みの一部を形成している隣接した金属突起上へ接着される。露出した中間膜は取り囲まれた枠に接合されるか、または隣接する枠の金属突起部に接合される。この解決法は、上述した種類のフレームレスのガラスアセンブリには適用できない。窓ガラスを取り囲み、中間層が接着されるフレームが存在しないためである。
【0016】
非特許文献1に記載されている別の解決法では、強力な構造接着剤を用いてガラス取付部材をガラス枠の表面に接着することによって、窓ガラス内に孔を設ける必要性をなくして関連する脆弱性を解消している。かかるシステムは、カーテンウォール及びファサード等のフレームレスのグレージングシステム用に開発されているが、必要な接続の耐久性及び接続の紫外線安定性を獲得するために、制御された環境で適用される専用の接着材を利用する必要がある。このような方法には、高いコストが伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】英国特許第311616号明細書
【特許文献2】特開平8−333831号公報
【特許文献3】仏国特許出願公開第2738271号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0188498号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Glass Magazine 2007年10月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、窓ガラスの耐衝撃性、特に板ガラスを具え、板ガラスのボアを経て板ガラスに固定される機械的嵌合部材持つ窓ガラスの耐衝撃性を改善するという課題に対し、これまでに代わる解決案を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、本発明の第一の態様では建物用グレージングシステムが提供される。このシステムでは、窓ガラス、支持部材、及び前記窓ガラスを前記支持部材に取り付けるための取付アセンブリを具える建物用グレージングシステムで、前記取付アセンブリは、前記支持部材に固定される取付部材、及び前記窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材を具え、前記取付部材は取付部及び、フック部を具える前記ガラス嵌合部材を具え、前記取付部材は、前記フック部と前記取付部との連結によって前記ガラス嵌合部材に結合される建物用グレージングシステムであって、前記取付アセンブリはさらに緩衝装置を具え、前記緩衝装置によって取付アセンブリが、窓ガラスに加えられた衝撃に対し、前記支持部材に対して相対的に移動し、それによって窓ガラスの耐衝撃性を向上させている。
【0021】
あるコンポーネントを他のコンポーネントと連結させながら、高速の衝撃部材から受ける衝撃波を弱め、運動エネルギーを分散させる際に、緩衝装置を用いることができる。
【0022】
かかるグレージングシステムでは、他の既知のグレージングシステムと比較して機械的衝撃に対する耐性を向上させることができる。
【0023】
好ましくは、前記取付部材が前記支持部材のボアを貫通する固定部材によって前記支持部材に固定され、前記緩衝装置は前記固定部材を取り囲んでいる。
【0024】
好ましくは、前記緩衝装置が、前記支持部材の前記ボアに配設される。
【0025】
ある実施形態では、前記緩衝装置が中空で剛性の部材に取り付けられる。
【0026】
ある実施形態では、前記緩衝装置が実質的に環状である。
【0027】
好ましくは、前記緩衝装置は圧縮可能である。また好ましくは、前記緩衝装置は少なくとも一つのゴム製リングを具える。
【0028】
最も好ましい実施形態では、前記緩衝装置は3つのゴム製Oリングを具える。
【0029】
好適には、前記緩衝装置は前記取付部から物理的に分離している。
【0030】
他の好ましい実施形態では、前記緩衝装置は前記ガラス嵌合部材の前記フック部と連結する。好適には、前記緩衝装置は前記ガラス嵌合部材と一体のコンポーネントである。
【0031】
本発明の第1の態様の実施形態は、他の好ましい構成を有する。好ましくは、前記窓ガラスに衝撃が加えられた時に、前記ガラス嵌合部材が前記取付部に対して回転することができるように前記取付部は前記嵌合部材と連結する。また好ましくは、前記取付部は隆起部を持ち、前記ガラス嵌合部材は前記隆起部によって前記取付部に連結される。
【0032】
好ましくは、前記窓ガラスはラミネート材を具える。また好ましくは、前記窓ガラスは前記ラミネート材に接着される板ガラスを具える。さらに好ましくは、前記ラミネート材はハリケーンによる衝撃に対する耐性を窓ガラスに与えるために用いられる種類のものである。またさらに好ましくは、前記窓ガラスはASTM E 1996−08に合格する。好適には、前記窓ガラスは、性能レベルがAからDまでの種類の大きな飛翔体によるASTM E 1996−08に合格している。
【0033】
好ましくは、前記グレージングシステムは構造的ファサードまたは構造的カーテンウォールの一部である。
【0034】
好ましくは、前記グレージングシステムは建物の一部である。
【0035】
好適には、前記緩衝装置は不可逆的に圧縮可能である。
【0036】
好適には、前記窓ガラスはボアを有する板ガラスを有し、前記ガラス嵌合部材が前記ボアによって前記窓ガラスに固定される。
【0037】
前記窓ガラスを断熱ユニットとすることができる。前記窓ガラスは2枚の離間した板ガラスを具え、前記板ガラスは周縁が密封されており、それによって2枚の板ガラスの間に空隙を画定している。前記断熱ユニットは3枚の板ガラスを具えることができる。
【0038】
本発明の第二の態様では、窓ガラスを建物に取り付けるための取付部材が提供される。この窓ガラスでは、窓ガラスを建物に取り付けるための取付部材であって、前記取付部材は、前記建物の構造要素内のボアを貫通する固定部材によって前記建物に固定されるように構成され、前記取付部材は、前記窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材に連結可能な取付部を具え、前記取付部を前記ガラス嵌合部材に連結することで、前記窓ガラスは前記建物に、取り付けることができ、前記取付部材に連結される緩衝装置が存在し、該取付部材は、前記窓ガラスが前記建物に取り付けられた場合に、前記窓ガラスは向上した耐衝撃性を持つように構成され、前記緩衝装置は前記構造要素内の前記ボアに配設されている。
【0039】
好ましくは、前記緩衝装置が圧縮可能である。
【0040】
好ましくは、前記緩衝装置が前記構造要素の前記ボアに配設可能な中空の剛性部材に取り付けられており、前記中空の剛性部材は前記固定部材が前記中空の剛性部材を貫通することができるように構成されている。このことは、前記構造要素と十分強固な連結を維持しながら、前記支持部材を前記構造的支持要素に、緩衝装置を圧縮させることなしに固定することができる点で有利である。
【0041】
ある実施形態では、前記窓ガラスに衝撃が加えられたときに、前記取付部が前記ガラス嵌合部材に対して回転することができるように、前記取付部材を前記ガラス嵌合部材に連結することができる。このことは、加えられた衝撃を窓ガラスの動きによってさらに消散することができる点で有利である。
【0042】
他の実施形態において、前記取付部がステム部を具え、前記ステム部は前記ステム部に沿って形成される隆起部を有する。好ましくは、前記取付部は前記隆起部によって前記ガラス嵌合部材に連接可能である。
【0043】
本発明の第二の態様による実施形態は、他の好ましい構成を有する。好ましくは、前記緩衝装置は実質的に環状である。好適には、前記緩衝装置はゴム製のリングを具える。好適には、前記緩衝装置は3つのゴム製のリングを具える。また好ましくは、前記窓ガラスは一枚のガラスを具える。また好適には、前記窓ガラスでは高速度の大きな物体の衝突に対する耐衝撃性が改善されている。
【0044】
好ましくは、十分大きな衝撃の際に、加えられた衝撃の少なくとも一部が、前記取付部に永久的な歪みを生じさせるように、前記取付部が構成される。このことは、加えられた衝突によるエネルギーの少なくとも一部が、前記取付部の局所化された変形によって消散される点で有利である。
【0045】
好適には、前記緩衝装置は不可逆的に圧縮可能である。
【0046】
本発明の第三の態様では、窓ガラスを建物に取り付けるためのガラス嵌合部材が提供される。このガラス嵌合部材では、前記ガラス嵌合部材は前記窓ガラスに固定可能であり、前記嵌合部材はフック部を具え、前記ガラス嵌合部材は取付部を具えて前記建物に取り付け可能な取付部材に連結可能であり、前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結させることで、前記窓ガラスは前記建物に取付可能であり、前記窓ガラスが前記建物に取り付けられた時に、前記窓ガラスは耐衝撃性を向上させるように構成されるガラス嵌合部材の前記フック部に連結される緩衝装置が存在している。
【0047】
好ましくは、前記フック部が前記緩衝装置を経て前記取付部に接続可能である。
【0048】
好ましい実施形態において、前記窓ガラスのボアを経て前記窓ガラスに固定可能であるように前記ガラス嵌合部材が構成される。
【0049】
好ましくは、前記窓ガラスは1枚のガラスを具える。
【0050】
好ましくは、前記緩衝装置は圧縮可能である。好適には、緩衝装置は不可逆的に圧縮可能である。
【0051】
本発明の第四の態様では、本発明の第二の態様における取付部材と、本発明の第三の態様におけるガラス嵌合部材とを具える、窓ガラスを建物に取り付ける際に用いられる取付アセンブリが提供される。
【0052】
好ましくは、前記ガラス嵌合部材が窓ガラスに固定されている場合に、前記取付部が実質的に前記ガラス嵌合部材と直交するように前記取付部は前記ガラス嵌合部材と連接可能である。
【0053】
本発明の第五の態様では、(a)取付アセンブリは、取付部を有して隣接する支持部材に固定可能な取付部材と、窓ガラスに固定するためのガラス嵌合部材とを具え、前記ガラス嵌合部材はフック部を具え、前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結することで、前記窓ガラスは前記隣接する支持部材に取り付け可能であり、前記取付アセンブリによって、前記窓ガラスを隣接する前記支持部材に固定するステップと、(b)前記ガラス嵌合部材を前記窓ガラスに固定するステップであって、好ましくは前記窓ガラスのボアを経て固定するステップと、(c)前記取付部材を、前記支持部のボアと緩衝装置のボアとを貫通する固定部材によって、前記隣接する支持部材に固定するステップと、及び(d)前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結するステップとを含み、前記緩衝装置によって、前記窓ガラスの衝撃時に前記取付アセンブリが前記支持部材に対して相対的に移動できるように構成されている、懸架された窓ガラスの耐衝撃性を向上させる方法が提供される。
【0054】
前記のステップ(b)とステップ(c)の順序は、入れ替えることができる。
【0055】
好ましくは、前記緩衝装置は前記支持部の前記ボアに配設される。
【0056】
好ましくは、前記取付部材を前記支持部に固定するために、前記固定部が前記中空の剛性部材を貫通するように、前記緩衝装置は中空の剛性部材に取り付けられる。
【0057】
他の実施形態では、前記窓ガラスに衝撃が加えられたときに、前記取付部材が前記ガラスアセンブリ嵌合部材に対して回転することができるように、前記取付部が前記ガラス嵌合部材に連結されている。好ましくは、前記取付部が隆起部を有するステム部を具え、前記取付部が、前記隆起部によって前記ガラス嵌合部材と連接可能である。
【0058】
他の実施形態では、前記緩衝装置は前記ガラス嵌合部材に連接される。好ましくは、前記嵌合部材はフック部を具え、前記緩衝部材が前記緩衝装置によって前記取付部に連接されるように、前記緩衝装置は前記取付部に連結されている。
【0059】
好ましくは、緩衝装置は、圧縮可能である。
【0060】
本発明の第五の態様の実施形態において、好適には前記緩衝装置は不可逆的に圧縮可能である。好ましくは、前記ガラス嵌合部材は、前記窓ガラスのボアに固定される。好適には、前記窓ガラスは一枚のガラスを具える。好適には、前記窓ガラスは建物の窓である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ガラス嵌合部材と連結可能で、窓ガラスを建物に取り付けるために用いられる従来の取付部材を示す側断面図である。
【図2】図1に示される取付部と連結している従来のガラス嵌合部材の側断面図である。
【図3】取付アセンブリが窓ガラスを建物の構造支持部材に取り付けられている状態で示される、従来のグレージングシステムの部分側断面図を示す。
【図4】窓ガラスを建物に取り付ける際に用いられる、他の従来の取付部材の側断面図を示す。
【図5】図4に示される取付部材に接続されて示される、他の従来のガラス嵌合部材の側断面図を示す。
【図6】他の取付アセンブリが窓ガラスを建物の構造支持部材に取り付けた状態で示される、他の従来のグレージングシステムの部分側断面図を示す。
【図7】図6に示されるグレージングシステムの平面図であり、ラミネート加工された内側窓ガラスを具える断熱ユニットに連結されている様子を示す。
【図8】図6に示されるグレージングシステムの平面図であり、ラミネート加工された窓ガラスに連結されている様子を示す。
【図9】本発明の第二の態様における取付部材の断面図を示す。
【図10】本発明の第一の態様におけるグレージングシステムを示す。
【図11】図10に示される取付アセンブリの分解図を示す。ただし、図を明瞭にするために、窓ガラスは図示していない。
【図12】他の取付部材の側断面図を示す。
【図13】図2に示す種類の従来のガラス嵌合部材に接続される、図12の取付部材の側断面図を示す。
【図14】図1に示される種類の従来の取付部に接続される、本発明の第三の態様におけるガラス嵌合部材の側断面図を示す。
【図15】図1に示される種類の従来の取付部に接続される、本発明の第三の態様における他のガラス嵌合部材の側断面図を示す。
【図16】4枚の窓ガラスが建物の構造要素の角部で連結されている、本発明の第一の態様におけるグレージングシステムの一部の部分断面図を示す。
【図17】本発明の第一の態様におけるグレージングシステムの一部を示す。
【図18】本発明の第一の態様におけるガラスファサードを示す図である。
【図19】図18に示される種類のガラスファサードを持つ建物の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
例示のみを目的として、以下添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0063】
図1は、フレームレスのグレージングシステム(カーテンウォールまたはファサード等)を設置する際に、窓ガラスを建物に取り付けるのに用いられる従来の取付部材1を示す。取付部材1は、適切なグレードのステンレス鋼で製造される取付部2を具える。取付品2は、窓ガラスを建物に取り付けるために、取付アセンブリで用いるのに十分な剛性を持つ。取付品2はステム部3を持つ。ステム部3は円柱状のベース部5と一体で、外側に延在している。取付部2はステム部3に沿って延びる中心軸に対して対称である。取付品2の軸に沿って、固定ボルト9を受け止めるのに適した直径の止りねじ穴7が配設される。固定ボルトは取付部と同じグレードのステンレス鋼で製造することができる。ボルト9を建物の構成要素または図示しない支持部のボアを貫通し、止りねじ穴7にねじ留めされることで、取付部2は構造要素または支持要素に固定される。ワッシャ11、12は構造要素の両側に用いることができる。ワッシャは、また、取付部と同じグレードのステンレス鋼で製造することができる。取付部品2は、しばしば取付ロッドと呼ばれる。
【0064】
ある取付部材1では、ステム部3の直径は約13mmであり、長さは約45mmである。円柱状のベース部5の高さは約10mmであり、直径は約40mmである。円柱状のベース部及びステム部は物理的につながっており、一片のステンレス鋼から機械加工することができる。止りねじ孔7の直径は約11mmであり、深さは約25mmである。
【0065】
図2は従来の嵌合部材13を示し、窓ガラスに設けられた孔またはボアによって固定される。この種類のガラス嵌合部材は、フレームレスのグレージングシステム(カーテンウォールまたはファサード等)を設置する際に、窓ガラスを建物に取り付けるために用いられる。通常、窓ガラスは板ガラスを具える。ガラス嵌合部材13は通常、図1に記載される取付部2と同じグレードのステンレス鋼から製造されるが、設計上必要であれば、ガラス嵌合部材の機械的強度のためにガラス部材部材13の材料を取付部2と異なるものとすることもできる。ガラス嵌合部材13は窓ガラスに隣接して構成される円柱状のベース部15を有する。ガラス嵌合部材を窓ガラスのボアに固定するために固定ねじ16が提供される。適切なナットアセンブリ(図示せず)を、ガラス嵌合部材13を窓ガラスに固定するために用いることができる。窓ガラスのボアにガラス支持嵌合部材を固定する他の類似の方法が当業者に知られている。
【0066】
円柱部17はベース部15と一体で、ベース部15の外側に延在しており、フックを画定する実質的に水平な条溝19を持つ。条溝19は取付部2のステム部3がフックと係合するのに実質的に十分な大きさを持つ。保持ねじ20はガラス嵌合部材の取付部材に対する垂直方向の動きを妨げ、ガラスが破損した際にガラス嵌合部材を取付部のステム部上に保持している。
【0067】
図3に既知のグレージングシステムを示す。板ガラスを具える窓ガラス23を建物の支持要素または構造要素25に取り付けた状態の、従来の機械的取付アセンブリ21が示される。この種類の取付アセンブリ21は従来のピルキントン905嵌合部材に類似している。取付アセンブリは、構造要素25に固定される、図1に記載される種類の取付部材1を具える。取付部材と構造要素との結合は強固である。
【0068】
図2に記載される種類のガラス嵌合部材は、窓ガラス内の孔及びボアによって、窓ガラス23に固定される。取付部2のステム部3はガラス嵌合部材に連結され、ガラス嵌合部材は、取付部材と実質的に直交する。条溝19は、取付部材がガラス嵌合部材に際にされる場合に、ガラス嵌合部材が取付部材と直交しないように適切に構成することもできる。取付アセンブリにより、窓ガラス23と構造要素25との間は強固に連結される。
【0069】
窓ガラスは、ラミネート加工構造または、ラミネート加工された内面構成要素を具える断熱構造とすることができる。窓ガラスを二重または三重とすることができ、その際に、ガラス嵌合部材の詳細は窓ガラスに問題無く嵌合するように適切に改良される。
【0070】
使用に際し、取付部材1は構造ムリオンまたは支持トラス等の建物の構造要素25に固定される。取付部2の円柱状のベース部5を構造要素25に当接させることができ、または図3に示されるように、構造要素25と円柱部5の基部との間にステンレス鋼のワッシャ12を配設させることができる。ステンレス鋼のワッシャ11は構造要素のワッシャ13とは別の側面に配設され、ボルト9はワッシャと構造要素のボアを貫通する。ワッシャ11及び12を他の適切な材料で製造することもできる。ボルト9は取付部の止りねじ穴7にねじ留めされ、固定部は構造要素に強固に固定される。
【0071】
ガラス嵌合部材は窓ガラスに当業者が既知の方法で適切に固定される。ステム部をフックに連結することで、窓ガラスは取付部のステム部3から懸架される。ガラス要素の垂直方向の動きを妨げるために保持ねじ20が挿入される。保持ねじ20はガラス破損時に付加的な固定をもたらす。
【0072】
図4はフレームレスのグレージングシステム(カーテンウォールまたはファサード等)を取り付ける際に窓ガラスを建物に取り付けるために用いられる、従来の取付部材27を示す。取付部材27は取付部28の丈に沿って隆起部31が形成されている点を除いて、取付部材1と同様である。一般的に隆起部31はステム部29の丈の略中間に形成され、窓ガラスに取り付けられる際にはガラス嵌合部材の中心線に沿って配設される。
【0073】
図5はボアによって窓ガラスに固定するための他の従来のガラス嵌合部材33を示す。ガラス嵌合部材33はガラス嵌合部材13と基本的に同様であるが、条溝35のフックが図4に記載された種類の取付部28の隆起部31と連結可能となるように、円柱部37の条溝35の寸法が決定されている点が異なっている。
【0074】
図6は他の既知のグレージングシステムを示す。窓ガラス23を建物の支持要素または構造要素25に取り付けた状態の機械的取付アセンブリ41が図示されている。取付アセンブリ41は図4に記載された種類の取付部材27を具える。取付部材27は構造要素25に固定されている。取付アセンブリは図5に記載された種類のガラス嵌合部材33も具えている。ガラス嵌合部材33は窓ガラス23のボアによって窓ガラスに固定される。
【0075】
取付部28は、隆起部31によってガラス嵌合部材33に連結される。図3に記述される取付アセンブリのように、ガラス嵌合部材33は取付部材28と実質的に直交するように連結される。
【0076】
この種類の取付アセンブリ41では、窓ガラスと構造要素との連結が図3に示す取付アセンブリ21の連結よりも緩やかになる。これは、隆起部31によってガラス嵌合部材33が取付部28に対してある程度の回転が可能となることによるものである。従って、この種類の取付アセンブリは、窓ガラスに高い風負荷が与えられている際に、窓ガラス23のある程度の動きを許容する。
【0077】
図7は、図6に記載された取付アセンブリを組み込んだグレージングシステムの平面図を示す。この場合、ガラス嵌合部材33は二重ガラスの窓ガラス45に、当業者が既知の方法で固定されている。窓ガラス45は厚さ10mmの強化・熱浸フロートガラス47の外面、厚さ16mmの空隙49、及びラミネート加工された厚さ20.3mmの窓ガラス51を具える。ラミネート加工された窓ガラスは、厚さ2.3mmのラミネート材層55に接着された厚さ10mmの強化・熱浸フロートガラス53を具える。ラミネート材はPVBまたはデュポン社のSentryGlas(登録商標)またはそれらの組み合わせとすることができる。ラミネート材層55の他方の面は厚さ8mmの強化・熱浸フロートガラス57に接着されている。適切なシーラント59がガラス47及びガラス51の周辺に延在し、空隙49を画定する。同様に、シリコンが注入されたプラスチックのボス58は断熱ユニット全体を通過するボアを密閉する。中間層の穴及びプラスチックのボスは中間層に入り込む寸法となっており、ガラスの全てが破壊された時であっても該中間層はなお全構造荷重を支持することができる。図3に示される取付アセンブリを代わりに用いることもできる。
【0078】
図8は、図6に記載される取付アセンブリを組み込んだ他の既知のグレージングシステムの平面図を示す。この場合、ガラス嵌合部材33はラミネート加工された窓ガラス51に固定される。窓ガラス51の厚さは20.3mmである。ラミネート加工された窓ガラス51は、厚さ2.3mmのラミネート材層に接着される厚さ10mmの強化フロートガラス53(熱浸することもできる)を具える。ラミネート材は、PVBまたはデュポン社のSentryGlas(登録商標)またはそれらの組合わせとすることができる。ラミネート材層55の他方の面は、厚さ8mmの強化・熱浸フロートガラス57に接着されている。取付部材27及びガラス嵌合部材33は、取付部材1及びガラス嵌合部材13と交換できる。
【0079】
図7及び図8の両方で、板ガラス及びラミネート材の厚さを必要に応じて変えることができる。
【0080】
図9は本発明の第二の態様の取付部材61を示す。取付部材61は取付部62を具え、取付部62は適切なグレードのステンレス鋼でできており、図4に記載される取付部と同様である。取付部材62はステム部63を有する。ステム部63はステム部29の丈の略中間に形成される隆起部31を有する。ステム部は円柱状のベース部65と一体で、円柱状のベース部65の外側に延在している。取付部62の中心軸66に沿って、固定ボルト69を受け止めるのに適した直径を持つ止りねじ穴67が配設される。取付部材はボルト69が貫通できるワッシャ71、73を具える。取付部材61は中心軸66の周りに放射相称である。
【0081】
取付部材61は、さらに緩衝装置75を具える。あるコンポーネントを他のコンポーネントと連結させながら、高速の衝撃部材から受ける衝撃波を弱め、運動エネルギーを分散させる際に緩衝装置を用いることができる。
【0082】
緩衝装置75は硬いステンレス鋼のチューブ83に取り付けられる3つのゴム製Oリング77、79、81を具える。緩衝装置が負荷荷重に対して変形できるように、ゴム製のOリングは圧縮可能である。ゴム製のOリングはそれぞれ外直径約21mm、内直径約14mmである。それぞれのOリングの厚みは約3.5mmである。それぞれのOリングは、実質的に円形の輪郭を持つ。ボルト69が構造要素のボアを貫通し、ボルトがワッシャやステンレス鋼チューブ83のボアを貫通し、ボルトを止りねじ穴67にねじ留めすることで、取付部材61を建物の構造要素(すなわち、トラスまたはムリオン)に固定することができる。ステンレス鋼チューブ83は、3つのゴム製Oリング77、79、81の厚みの合計よりもわずかに長い。このことによって、ワッシャ71、73がステンレス鋼のチューブ83の端部に当接するので、取付部材が建物の構造要素に固定されている際にゴム製のOリング77、79、81が非圧縮のままにできる。
【0083】
図9に示されるように、緩衝装置は取付部62と物理的に分離している。物理的に分離した緩衝装置を取り入れることで、緩衝装置を既存の取付部材に取り入れることができる。
【0084】
図4に記載される隆起部を有するステム部63が示され、かかる隆起部はガラス嵌合部材の回転を促進し、可塑性のスチール製の取付部材でのエネルギー消散を促進することで、窓ガラスの耐衝撃性を向上させる。必要であれば、ステム部63に隆起部を持たせないことも可能である。
【0085】
図10は、本発明の第一の態様におけるグレージングシステムを示している。グレージングシステムは取付アセンブリ85を具える。取付アセンブリ85は、図9に記載される取付部材61、及び図5に記載されるガラス嵌合部材33を具える。窓ガラス23を建物の構造要素25に取り付けた状態の取付アセンブリ85が示される。ガラス嵌合部材33は、窓ガラス23のボアによって窓ガラス23に固定される。あるいは、ガラス嵌合部材が窓ガラス23の外面または内面に接着するように、ガラス嵌合部材を適切に構成することができる。窓ガラスは、図7及び図8に記載される種類の断熱ユニットまたはラミネート加工された窓ガラスとすることができる。
【0086】
構造要素25に固定された取付部材61が示される。ワッシャ73に隣接しているベース部65の平坦面と、構造部材25に隣接しているワッシャ73が示される。特定の状況ではワッシャ73をなくすことができる。
【0087】
構造要素25にはボア87が存在する。ワッシャ71は構造部材のもう一方に配設され、固定ボルト69の頭部に隣接するように構成される。緩衝装置75は構造要素25のボア87に配設される。緩衝装置75は3つのゴム製のOリングを具える。Oリングはステンレス鋼チューブ83上に設置される。ボルト69はワッシャ71、ステンレス鋼チューブ83、ワッシャ73を貫通し、取付部62の止りねじ穴67にねじ留めされ、それによって取付部材61を構造部材25に固定する。
【0088】
ステンレス鋼チューブ83がワッシャ71、73に密接できるように、3つのOリングの厚さの合計はステンレス鋼チューブ83の丈よりもわずかに小さくなっている。ステンレス鋼チューブは、通常の使用時に嵌合部材が十分強固となるようにし、通常の使用時にゴム製のOリングが圧縮されないようにする。それぞれのOリングの外直径は構造要素内のボア87の直径よりもわずかに小さく、それによって、Oリングはボア内でボルト69の周りを回転することができる。Oリングは、Oリングがステンレス鋼チューブ83にぴったり嵌合するような内直径を持つ。
【0089】
窓ガラスの外側から機械的な衝撃が与えられた場合(建物において窓ガラスの外面は、建物の外部に露出している面である)、ゴム製のOリングは圧縮可能であり、衝撃の一部を吸収することができる。それに比べて、強固な嵌合部材は衝撃を十分に吸収することができない。ガラス嵌合部材がボアによって窓ガラスに設置される場合に、ボアは窓ガラスの弱点となる。従って、窓ガラスと建物の構造要素との間に強固な取付アセンブリが存在すると耐衝撃性が低下する。
【0090】
明瞭化のため、取付アセンブリ85の分解図が図11に示される。組立てアセンブリは以下のように組み立てられる。3つのゴム製Oリング77、79、81はステンレス鋼チューブ83を覆って配設される。ステンレス鋼チューブの外直径はゴム製Oリングの内ぐりボアの直径と近似しており、Oリングをステンレス鋼チューブ83に取り付けた際にぴったり嵌合する。Oリングは1つ以上とすることができる。緩衝装置はゴム製のチューブを具えることができる。ゴム製のチューブは、ステンレス鋼チューブ等の中空の剛性部材に取り付けることができる。
【0091】
ステンレス鋼チューブ83及びOリング77、79、81のアセンブリは構造要素25のボア87に配設される。ボルト69はワッシャ内のボア及びステンレス鋼チューブを貫通する(矢印89の方向に組立てられる)。ステンレス鋼チューブのボアの直径はチューブがボルトの周りを自由に回転するのに十分な大きさとなる。ボルトは取付部62の止りねじ穴67にねじ留めされる。これによって取付部材が構造要素に固定される。
【0092】
窓ガラス嵌合部材33は(図4の記載した種類の)取付部と(矢印90の方向に)連結可能であり、ガラス嵌合部材は窓ガラスのボアによって窓ガラスに固定される。
【0093】
図12は、他の取付部材91を示す。取付部材91はステム部3を有する取付部2を具える。ステム部外壁の一部を覆う圧縮可能な緩衝材のスリーブ95が存在している。スリーブはステム部の壁面を完全に取り囲むことができる。衝撃を吸収するために、緩衝材は不可逆的に圧縮可能とすることができる。
【0094】
ボルト9を止りねじ穴7にねじ留めすることによって、取付部材を図示しない支持部に固定することができる。ワッシャ11を取付部材を支持部材に固定する際に用いることができる。
【0095】
図13は図2に記載された種類のガラス嵌合部材97に連結された取付部材91を示す。ガラス嵌合部材97はスリーブ95よりもわずかに広い幅を持つ条溝99を有し、条溝99はスリーブ95を収容するフックを画定する。
【0096】
図14は本発明の第三の態様におけるガラス嵌合部材101を示す。ガラス嵌合部材101は窓ガラスのボアによって窓ガラスに固定されるように構成される。ガラス嵌合部材は図2に記載されたものに類似しているが、円柱部105の条溝103がフックを形成し、条溝103に連結された緩衝装置107を具える点で異なる。図1に示される従来の取付部のステム部3がフックに連結される際にステム部は衝撃緩衝装置107と接触している。緩衝装置107は、条溝の基部に配設されフックを画定する「U字型」のゴム溝である。好ましくは、緩衝装置107は条溝に接着材等によって固定される。
【0097】
図15に本発明の第三の態様における代替的なガラス嵌合部材111を示す。この特定の実施形態では、緩衝装置113がフックの三日月形部内の切欠部に配設され、フックが緩衝装置113を経て従来の取付部のステム部3に連結する。緩衝装置113の弾性率は加えられる最大風荷重を支持できるのに十分である一方、必要に応じて機械的衝撃の高いエネルギーを吸収できる値が選択される。緩衝装置113を適切な接着剤によって切欠部に固定することができる。
【0098】
図14または図15のいずれにおいても、図4または図9に記載される取付部材を使用することができる。
【0099】
図16は本発明の第一の態様におけるグレージングシステム121の典型的な十字構造の概略図を示している。グレージングシステムは4枚の窓ガラス123、125、127及び129を具える。図2に記載された種類のガラス嵌合部材131、133、135及び137は、窓ガラス123、125、127、129のそれぞれのボアによってそれぞれの窓ガラスの角部で固定される。本発明の第三の態様におけるガラス嵌合部材は、図16に示される任意のまたは全てのガラス取付部材に用いることができる。
【0100】
図9に記載される種類の4つの取付部材139、141、143及び145が構造要素147に固定される。それぞれの取付部材は、図9に記載される取付部を具える。それぞれの取付部はステム部の丈に沿って形成された隆起部を持たないこともできる。窓ガラス123、125、127及び129はより大きなファサードの一部であるため、構造要素147は、ムリオンまたはトラスとすることができる。
【0101】
一対の取付部材139、141は、ねじ部149によって構造要素147に連結されており、ねじ部149は、取付部材139、141の止りねじ穴151、153のそれぞれにねじ留めされる。同様に、一対の取付部材143、145は、ねじ部155によって構造要素147に連結されており、ねじ部155は、取付部の取付部材143、145の止りねじ穴157、159のそれぞれにねじ留めされる。ワッシャは構造要素のいずれの側面に対しても用いることができる。
【0102】
構造要素147内のボア161には緩衝装置162が配設される。構造要素147内のボア163には、緩衝装置164が配設される。ボア162、163のそれぞれの緩衝装置162、164はステンレス鋼チューブ上に取り付けられた3つのゴム製Oリングであり、緩衝装置は図9、10、11に記載されているものである。窓ガラスの主要面を見ている場合(すなわち、図16のように見た場合)、それぞれの緩衝装置162、164はそれぞれの窓ガラスの周縁の外側に配設されている。グレージングシステムが外部の環境から密閉されるように、通常それぞれの窓ガラスの周縁にはシールが存在している。
【0103】
それぞれの窓ガラス123、125、127、129をラミネート加工することができる。それぞれの窓ガラスは断熱ユニット、すなわち2重ガラスまたは3重ガラスとすることができる。
【0104】
図17では、図16に示されるグレージングシステムをより詳細に示す。それぞれの窓ガラスは窓ガラスの角部にガラス嵌合部材を具え、ガラス嵌合部材は窓ガラスのボアによって窓ガラスに固定される。図17には2枚の完全な窓ガラス127、180が示されている。
【0105】
図18は建物183のガラスファサード181の背面図(建物内部からの図)を示す。ファサードは図16及び17に記載される種類のグレージングアセンブリである。ファサード181は9枚の窓ガラスを有している。中央の窓ガラスは建物周縁の枠に取り付けられておらず、開口部にわたって延在し、必要に応じてそれぞれの支持点で窓ガラスを構造的に支持する支持ムリオンまたは支持トラスに取り付けられている。それぞれの窓ガラスは取付アセンブリによって構造要素に取り付けられており、取付アセンブリは図9に記載される取付部材及び図5に記載される従来のガラス取付部材を具える。窓ガラスの寸法によって、ガラス嵌合部材及びガラス嵌合部材の取付部材を角部だけでなく他の位置にも使用することができる。
【0106】
図19に、図18に記載された種類のガラスファサード181を具える建物183の斜視図を示す。このファサードは米国材料試験協会E 1996−08に合格している。
【実施例1】
【0107】
取付アセンブリを具える支持フレームに取り付けられた、9枚の窓ガラスから成るグレージングシステムを建造した。それぞれの取付アセンブリは、図9に示される取付部材と同様の単一のまたは一対の取付部材を具える。図5に示されるガラス嵌合部材と同様のガラス嵌合部材が、窓ガラスのボア孔によって窓ガラスに取り付けられる。9枚の窓ガラスを、図18に示されるように碁盤状のガラスファサードに配置し、下記の標準試験プロトコルを用いて耐ハリケーン認証の承認を得るための試験を行った。
<換気試験>
TAS202(ASTM E283)を行う。
<均一静荷重試験>
30秒間75(lbs/ft2)(PSF)の正荷重を加えてTAS202(ASTM E330)を行う。
<均一静荷重試験>
75PSFの負荷重を加えて30秒間TAS202(ASTM E330)を行う。
<均一静荷重試験>
100PSFの正荷重を加えて30秒間TAS202(ASTM E330)を行う。
<均一静荷重試験>
100PSFの負荷重を加えて30秒間TAS202(ASTM E330)を行う。
<漏水試験>
15PSFの荷重を加えて15分間TAS202(ASTM E331)を行う。
<均一静荷重試験>
150PSFの正荷重を加えて30秒間TAS202(ASTM E330)を行う。
<均一静荷重試験>
150PSFの負荷重を加えて30秒間TAS202(ASTM E330)を行う。
<角材を試験体に当てて耐貫通性能を測る試験>
TAS201(ASTM E1996)を行う。
<反復負荷試験>
100PSFの荷重を加えてTAS203(ASTM E1996)を行う。
【0108】
ファサードは図18に示されるものと同様であり、下列、中列、及び上列の3列から成る。下列は3枚のラミネート加工された窓ガラスから成り、それぞれの窓ガラスは幅5フィート、高さ5フィートである。中列は3枚のラミネート加工された窓ガラスから成り、それぞれの窓ガラスは幅5フィート、高さ10フィートである。上列は3枚のラミネート加工された窓ガラスから成り、それぞれの窓ガラスは幅5フィート、高さ5フィートである。ファサード全体の寸法は幅15フィート、高さ20フィートである。ファサードの、ラミネート加工されたそれぞれの窓ガラスは、厚さ10mmの強化・熱浸フロートガラスの外面、厚さ2.28mmのデュポン社のSentryGlas(登録商標)Plusの中間層、及び厚さ8mmの強化・熱浸フロートガラスの内面からなる。外面及び内面はそれぞれ、中間層の反対の面に接着されている。内面とは建物の内部の面を意味する。外面とは外部環境にさらされる面を意味する。
【0109】
下列及び上列の窓ガラスはそれぞれ、窓ガラスの角部のボアによって窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材を有する。中列の窓ガラスは他の列よりも大きな高さを持つため、これらの窓ガラスはそれぞれ8つのガラス嵌合部材により支持され、4つの嵌合部材が幅10フィート縁に沿って等間隔で(それぞれの窓ガラスの角部に)配設される。
【0110】
ASTM E 1996−08によれば、2インチ×4インチの4.1kgの角体(タイプDの大きな飛翔体)がそれぞれの窓ガラスの所定の位置に発射される。角材は秒速50フィートの速度で窓ガラスに発射される。この試験計画の一部では、窓ガラスに局所的な機械的衝撃を与える。
【0111】
このファサードはタイプDの大きな飛翔体を用いたASTM E 1996−08に合格した。緩衝装置をそれぞれの取付部に組み込むことで、窓ガラスと構造支持要素との間の連結の強固さを低減することができる。それぞれの取付部のステム部上の隆起部は、飛翔体の衝突時にて窓ガラスが移動してエネルギーを吸収することを可能とする。
【0112】
加えられた衝撃によりそれぞれの取付部のステム部は永久的に変形し、衝撃のエネルギーは、砕けやすいガラス材が即時に破壊されることではなく、可塑性の取付部の鋼材の局所的な降伏されることによって消散する。このことにより、衝撃による破壊的エネルギーを、窓ガラスの動き及び比較的しなやかなステンレス鋼の歪みによってグレージングシステムにおいてさらに消散できるようになる。
【0113】
本発明の応用例として、耐ハリケーン性があり、ASTM E 1996−08に合格するガラスファサードが提供され、特にガラスファサードが、窓ガラスのボアによって窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材を有する場合に顕著な効果が得られる。本発明の第一の態様におけるグレージングシステムは、Dタイプの大きな飛翔体によるASTM E 1996−08で要求されるような局所的な機械的衝撃に対する耐性を改善する。
【0114】
本発明の第二の態様による取付部材及び、本発明の第三の態様によるガラス嵌合部材を既知の(単一層、積層または断熱ユニットの)窓ガラスに用いることができることが、当業者にとって直ちに理解されよう。
【0115】
本発明を適用することで耐衝撃性を向上させることができ、例えば爆発による爆風への耐性を向上させることができる。かかる耐爆発性を持たせた適用例では、窓ガラスが関連する試験に合格するように緩衝装置の特定が選択される。また本発明を適用することで、BS 6206またはBS EN356等の基準で定義された特性要求である一般的な耐衝撃性を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラス、支持部材、及び前記窓ガラスを前記支持部材に取り付けるための取付アセンブリを具える建物用グレージングシステムで、
前記取付アセンブリは、前記支持部材に固定される取付部材、及び前記窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材を具え、
前記取付部材は取付部及び、フック部を具える前記ガラス嵌合部材を具え、前記取付部材は、前記フック部と前記取付部との連結によって前記ガラス嵌合部材に結合される建物用グレージングシステムであって、
前記取付アセンブリはさらに緩衝装置を具え、前記緩衝装置によって取付アセンブリが、窓ガラスに加えられた衝撃に対し、前記支持部材に対して相対的に移動し、それによって窓ガラスの耐衝撃性を向上させることを特徴とする建物用グレージングシステム。
【請求項2】
前記取付部材が前記支持部材のボアを貫通する固定部材によって前記支持部材に固定され、
前記緩衝装置は前記固定部材を取り囲んでいる、請求項1に記載のグレージングシステム。
【請求項3】
前記緩衝装置が前記支持部材の前記ボアに配設される、請求項2に記載のグレージングシステム。
【請求項4】
前記緩衝装置が中空で剛性の部材に取り付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項5】
前記緩衝装置が実質的に環状である、請求項1から4のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項6】
前記緩衝装置が前記ガラス嵌合装置の前記フック部と連結する、請求項1に記載のグレージングシステム。
【請求項7】
前記窓ガラスがラミネート材を具え、好ましくは、該ラミネート材はハリケーンによる衝撃に対する耐性を窓ガラスに与えるために用いられる種類である、請求項1から6のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項8】
前記窓ガラスはASTM E 1996-08に合格し、好ましくは、前記窓ガラスは、性能レベルがAからDまでの種類の大きな飛翔体の種類によるASTM E 1996-08に合格している、請求項1から7のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項9】
前記窓ガラスが、ボアを有する板ガラスを具え、
前記ガラス嵌合部材が前記ボアによって前記窓ガラスに固定される、請求項1から8のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項10】
前記緩衝装置が圧縮可能である、請求項1から9のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項11】
窓ガラスを建物に取り付けるための取付部材であって、
前記取付部材は、前記建物の構造要素内のボアを貫通する固定部材によって前記建物に固定されるように構成され、
前記取付部材は、前記窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材に連結可能な取付部を具え、前記取付部を前記ガラス嵌合部材に連結することで、前記窓ガラスは前記建物に、取り付けることができ、
前記取付部材に連結される緩衝装置が存在し、該取付部材は、前記窓ガラスが前記建物に取り付けられた場合に、前記窓ガラスは向上した耐衝撃性を持つように構成され、前記緩衝装置は前記構造要素内の前記ボアに配設される、窓ガラスを建物に取り付けるための取付部材。
【請求項12】
前記緩衝装置が圧縮可能である、請求項11に記載の取付部材。
【請求項13】
前記緩衝装置が、前記構造要素の前記ボアに配設可能な中空の剛性部材に取り付けられており、前記固定部材が前記中空の剛性部材を貫通できるように前記緩衝装置が構成される、請求項11または請求項12に記載の取付装置。
【請求項14】
前記取付部材がステム部を具え、前記ステム部は前記ステム部に沿って形成される隆起部を有する、請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の取付装置。
【請求項15】
前記緩衝装置が実質的に環状である、請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の取付装置。
【請求項16】
前記緩衝装置が圧縮可能である、請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の取付装置。
【請求項17】
窓ガラスを建物に取り付けるためのガラス嵌合部材であって、
前記ガラス嵌合部材は前記窓ガラスに固定可能であり、前記嵌合部材はフック部を具え、前記ガラス嵌合部材は取付部を具えて前記建物に取り付け可能な取付部材に連結可能であり、前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結させることで、前記窓ガラスは前記建物に取付可能であり、
前記窓ガラスが前記建物に取り付けられた時に、前記窓ガラスは耐衝撃性を向上させるように構成されるガラス嵌合部材の前記フック部に連結される緩衝装置が存在する、窓ガラスを建物に取り付けるためのガラス嵌合部材。
【請求項18】
前記フック部が、前記緩衝装置を経て前記取付部に接続可能である、請求項17に記載のガラス嵌合部材。
【請求項19】
前記ガラス嵌合装置が、前記窓ガラスのボアを経て前記窓ガラスに固定可能であるように構成される、請求項17または請求項18に記載のガラス嵌合部材。
【請求項20】
前記緩衝装置が圧縮可能である、請求項17から請求項19のいずれか一項に記載のガラス嵌合部材。
【請求項21】
請求項11から請求項16までのいずれかに記載の取付部材と、請求項17から請求項20までのいずれかに記載のガラス嵌合部材とを具える、窓ガラスを建物に取り付ける際に用いられる取付アセンブリ。
【請求項22】
(a)取付アセンブリは、取付部を有して隣接する支持部材に固定可能な取付部材と、窓ガラスに固定するためのガラス嵌合部材とを具え、
前記ガラス嵌合部材はフック部を具え、前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結することで、前記窓ガラスは前記隣接する支持部材に取り付け可能であり、
前記取付アセンブリによって、前記窓ガラスを隣接する前記支持部材に固定するステップと、
(b)前記ガラス嵌合部材を前記窓ガラスに固定するステップであって、好ましくは前記窓ガラスのボアを経て固定するステップと、
(c)前記取付部材を、前記支持部のボアと緩衝装置のボアとを貫通する固定部材によって、前記隣接する支持部材に固定するステップと、及び
(d)前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結するステップとを含み、
前記緩衝装置によって、前記窓ガラスの衝撃時に前記取付アセンブリが前記支持部材に対して相対的に移動できるように構成されている、懸架された窓ガラスの耐衝撃性を向上させる方法。
【請求項23】
前記緩衝装置が前記支持部材の前記ボア内に配設される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記緩衝装置が圧縮可能である、請求項22または請求項23に記載の方法。
【請求項1】
窓ガラス、支持部材、及び前記窓ガラスを前記支持部材に取り付けるための取付アセンブリを具える建物用グレージングシステムで、
前記取付アセンブリは、前記支持部材に固定される取付部材、及び前記窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材を具え、
前記取付部材は取付部及び、フック部を具える前記ガラス嵌合部材を具え、前記取付部材は、前記フック部と前記取付部との連結によって前記ガラス嵌合部材に結合される建物用グレージングシステムであって、
前記取付アセンブリはさらに緩衝装置を具え、前記緩衝装置によって取付アセンブリが、窓ガラスに加えられた衝撃に対し、前記支持部材に対して相対的に移動し、それによって窓ガラスの耐衝撃性を向上させることを特徴とする建物用グレージングシステム。
【請求項2】
前記取付部材が前記支持部材のボアを貫通する固定部材によって前記支持部材に固定され、
前記緩衝装置は前記固定部材を取り囲んでいる、請求項1に記載のグレージングシステム。
【請求項3】
前記緩衝装置が前記支持部材の前記ボアに配設される、請求項2に記載のグレージングシステム。
【請求項4】
前記緩衝装置が中空で剛性の部材に取り付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項5】
前記緩衝装置が実質的に環状である、請求項1から4のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項6】
前記緩衝装置が前記ガラス嵌合装置の前記フック部と連結する、請求項1に記載のグレージングシステム。
【請求項7】
前記窓ガラスがラミネート材を具え、好ましくは、該ラミネート材はハリケーンによる衝撃に対する耐性を窓ガラスに与えるために用いられる種類である、請求項1から6のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項8】
前記窓ガラスはASTM E 1996-08に合格し、好ましくは、前記窓ガラスは、性能レベルがAからDまでの種類の大きな飛翔体の種類によるASTM E 1996-08に合格している、請求項1から7のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項9】
前記窓ガラスが、ボアを有する板ガラスを具え、
前記ガラス嵌合部材が前記ボアによって前記窓ガラスに固定される、請求項1から8のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項10】
前記緩衝装置が圧縮可能である、請求項1から9のいずれか一項に記載のグレージングシステム。
【請求項11】
窓ガラスを建物に取り付けるための取付部材であって、
前記取付部材は、前記建物の構造要素内のボアを貫通する固定部材によって前記建物に固定されるように構成され、
前記取付部材は、前記窓ガラスに固定されるガラス嵌合部材に連結可能な取付部を具え、前記取付部を前記ガラス嵌合部材に連結することで、前記窓ガラスは前記建物に、取り付けることができ、
前記取付部材に連結される緩衝装置が存在し、該取付部材は、前記窓ガラスが前記建物に取り付けられた場合に、前記窓ガラスは向上した耐衝撃性を持つように構成され、前記緩衝装置は前記構造要素内の前記ボアに配設される、窓ガラスを建物に取り付けるための取付部材。
【請求項12】
前記緩衝装置が圧縮可能である、請求項11に記載の取付部材。
【請求項13】
前記緩衝装置が、前記構造要素の前記ボアに配設可能な中空の剛性部材に取り付けられており、前記固定部材が前記中空の剛性部材を貫通できるように前記緩衝装置が構成される、請求項11または請求項12に記載の取付装置。
【請求項14】
前記取付部材がステム部を具え、前記ステム部は前記ステム部に沿って形成される隆起部を有する、請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の取付装置。
【請求項15】
前記緩衝装置が実質的に環状である、請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の取付装置。
【請求項16】
前記緩衝装置が圧縮可能である、請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の取付装置。
【請求項17】
窓ガラスを建物に取り付けるためのガラス嵌合部材であって、
前記ガラス嵌合部材は前記窓ガラスに固定可能であり、前記嵌合部材はフック部を具え、前記ガラス嵌合部材は取付部を具えて前記建物に取り付け可能な取付部材に連結可能であり、前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結させることで、前記窓ガラスは前記建物に取付可能であり、
前記窓ガラスが前記建物に取り付けられた時に、前記窓ガラスは耐衝撃性を向上させるように構成されるガラス嵌合部材の前記フック部に連結される緩衝装置が存在する、窓ガラスを建物に取り付けるためのガラス嵌合部材。
【請求項18】
前記フック部が、前記緩衝装置を経て前記取付部に接続可能である、請求項17に記載のガラス嵌合部材。
【請求項19】
前記ガラス嵌合装置が、前記窓ガラスのボアを経て前記窓ガラスに固定可能であるように構成される、請求項17または請求項18に記載のガラス嵌合部材。
【請求項20】
前記緩衝装置が圧縮可能である、請求項17から請求項19のいずれか一項に記載のガラス嵌合部材。
【請求項21】
請求項11から請求項16までのいずれかに記載の取付部材と、請求項17から請求項20までのいずれかに記載のガラス嵌合部材とを具える、窓ガラスを建物に取り付ける際に用いられる取付アセンブリ。
【請求項22】
(a)取付アセンブリは、取付部を有して隣接する支持部材に固定可能な取付部材と、窓ガラスに固定するためのガラス嵌合部材とを具え、
前記ガラス嵌合部材はフック部を具え、前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結することで、前記窓ガラスは前記隣接する支持部材に取り付け可能であり、
前記取付アセンブリによって、前記窓ガラスを隣接する前記支持部材に固定するステップと、
(b)前記ガラス嵌合部材を前記窓ガラスに固定するステップであって、好ましくは前記窓ガラスのボアを経て固定するステップと、
(c)前記取付部材を、前記支持部のボアと緩衝装置のボアとを貫通する固定部材によって、前記隣接する支持部材に固定するステップと、及び
(d)前記取付部を前記ガラス嵌合部材の前記フック部に連結するステップとを含み、
前記緩衝装置によって、前記窓ガラスの衝撃時に前記取付アセンブリが前記支持部材に対して相対的に移動できるように構成されている、懸架された窓ガラスの耐衝撃性を向上させる方法。
【請求項23】
前記緩衝装置が前記支持部材の前記ボア内に配設される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記緩衝装置が圧縮可能である、請求項22または請求項23に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2012−518103(P2012−518103A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549681(P2011−549681)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050260
【国際公開番号】WO2010/094958
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(591229107)ピルキントン グループ リミテッド (82)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050260
【国際公開番号】WO2010/094958
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(591229107)ピルキントン グループ リミテッド (82)
【Fターム(参考)】
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