説明

構造補強材料、構造補強インサート、及びそれらを備える補強された空洞

構造補強材料(20)は、熱硬化性物質、短い遷移相を有する低粘性熱可塑性物質、低融点金属合金、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された基材を含むものとして提供されている。STP周辺で、構造補強部材(20)は、固体若しくは成形可能な塊、又はそれらの混合状態である。活性化温度に加熱されると、構造補強材料(20)は空洞(10)内に流動可能になる。冷却に続いて、構造補強材料(20)は、固体、又は熱硬化性物質になり、空洞(10)を十分に補強する強度を有する。構造補強材料(20)を備えている構造補強インサート(111)は、自動車(2)の空洞(10)を補強するものとして、及び空洞(10)を補強する方法として提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くの製品は、中空空洞を含むボディー又はハウジングを有している。幾つかの実施例を挙げると、自動車、トラック、その他車両、及び消費材は、それらの個々のボディー又はハウジングを形成するピラー部分内、又はフレーム部材内に、内側パネル及び外側パネル間に形成された中空空洞を有している。
【0002】
特に、自動車ボディーの幾つかの構造部材は、様々な孔、中空支柱、空洞、管路、及び開口部を有している。これらの製品において最終製品の全体重量を減らし、材料費を減らすため、中空空洞が作られることが多い。しかしながら、構造内に中空空洞を導入することは、それに伴う欠点を含んでいる。例えば、中空空洞を導入することにより、構造部材の全体的な強度、又はエネルギー吸収特性が減少する場合がある。さらに、中空空洞によって、製品の他の部分へ、振動又は音が伝わり易くなる場合がある。
【0003】
これらの、及びその他の中空空洞に伴う欠点を相殺することを試みるため、構造補強材料を使用することは既知とされている。幾つか現状の補強物は、一般的な鋳造構成部品である担持体に適用された、膨張性材料を含んでいる。膨張性材料が製品の製造工程において膨張し、膨張した材料が、製品の隣接する表面に接触するように適所に補強物を固定する。しかしながら、そのような補強物中の膨張性材料は担持体に対してしっかりと結合されていない場合があり、一様でない、又は不適切な密閉をもたらす場合がある。さらに、材料の膨張は、異常に形成された、又は不規則に形成された担持体の全ての隅及び割れ目に届かないかもしれない。
【0004】
さらに、幾つかの既知とされた膨張性構造補強材料は、例えば”焼き”工程などの、加熱工程に影響を受け得る。そのような膨張性材料の性能は、加熱時間及び加熱温度に依存する膨張率と関連がある。
【0005】
さらに、幾つかの既知とされた膨張性構造補強材料は、膨張前であっても厚い。そのような場合、膨張前の材料厚さに、補強インサートと構造空洞との間の隙間を加えると、約8〜10mmになり得て、電子被膜流れ(e-coat flow)及び組み立ての公差を許容する。厚さを減らした構造補強材料は、全体的なシステム性能を改善し得る。
【0006】
従って、これらの及びその他の少なくとも幾つかの欠点を軽減するため、構造補強材料を改善する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/075009号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5266133号明細書
【特許文献3】米国特許第5373027号明細書
【特許文献4】米国特許第6387470号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付の特許請求の範囲には、従来の補強材料の少なくとも幾つかの上述された欠点を軽減する、改善された構造補強材料が記載される。構造補強材料は、ここでは、基材を備えるものとして記載される。基材は、熱硬化性物質、短い過渡期間を有する低粘性熱可塑性物質、低融点金属合金、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択されても良い。標準温度及び標準圧力(STP)の周辺で、構造補強部材は、固体、成形可能な塊、又はそれらの混合状態である。構造補強材料は、活性化温度で加熱している間に流動性相に移行し、該流動性相は、液体相又は実質的な液体相に制限することなく含んでいる。活性化に続く、架橋及び/又は冷却によって、構造補強材料は実質的に固体となり、空洞を十分に補強する強度を有する。
【0009】
空洞を補強する方法が、ここに記載される。前記方法は、構造補強材料を、インサートを形成する担持体に付着する段階を含んでいる。構造補強材料は、熱硬化性物質、短い遷移相を有する低粘性熱可塑性物質、低融点金属合金、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された基材を備えている。標準温度及び標準圧力(STP)の周辺で、構造補強部材は、固体若しくは成形可能な塊、又はそれらの混合状態である。前記方法は、インサートを空洞内に配置する段階を含んでいる。前記方法における別の段階は、活性化温度にインサートを加熱することを含んでいて、それによって、構造補強材料が、液体又は実質的液体になり、空洞内に流れ込む。架橋工程は基材の性質に依存して生じる場合があり、結果として、熱硬化性物質が形成される。インサートを冷却することに続いて、固体の構造補強が空洞の少なくとも一部に付着され、それによって空洞を補強する。
【0010】
構造補強インサートが、ここに記載される。インサートは、第一端部及び第一端部に対向する第二端部を有する担持体と、第一端部及び第二端部間の少なくとも一つの保持領域とを備えている。前記保持領域は、構造補強材料を含んでいる。構造補強材料は、熱硬化性物質、短い遷移相を有する低粘性熱可塑性物質、低融点金属合金、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された基材を備えている。標準温度及び標準圧力(STP)の周辺で、構造補強部材は、固体若しくは成形可能な塊、又はそれらの混合状態である。構造補強材料は、活性化温度への加熱に続く、流動性相にある。活性化後の冷却及び/又は架橋に続いて、構造補強材料は固体又は熱硬化性固体であり、空洞を十分に補強する強度を有している。またインサートは、担持体の第一端部で、又はその近傍で、未架橋の膨張性発泡体を含んでいる。またインサートは、担持体の第二端部で、又はその近傍で、未架橋の膨張性発泡体を含む。活性化温度への加熱に関し、膨張した発泡体は、液体状構造補強材料が、膨張発泡体を超えて延在する保持領域から空洞の他の領域内に流れ出ることを防止する。
【0011】
補強された空洞が、ここに記載される。前記空洞は、空洞内にインサートを含んでいる。インサートは保持領域を含んでいる。前記空洞は、架橋又は固化された構造補強材料を含んでおり、該構造補強材料は、熱硬化性物質、短い遷移相を有する低粘性熱可塑性物質、低融点金属合金、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された基材を備えている。架橋又は固化された構造補強材料がインサートの保持領域から流れ、空洞の少なくとも一部分に付着され、空洞を補強する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】活性化前構造ボディーの水平空洞内のインサートの側面図
【図2】活性化後構造ボディーの水平空洞内のインサートの側面図
【図3】活性化前構造ボディーの垂直空洞内のインサートの側面図
【図4】活性化後構造ボディーの垂直空洞内のインサートの側面図
【図5】複数の空洞を有する自動車フレームの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び2は水平指向の空洞10の一実施形態を表し、この空洞10は、インサート111上での構造補強材料20を使用して補強され得る。インサート111は最初に、構造用接着剤33、他の化学的接着剤、又は機械的締結部品を使用して、空洞10内に配置又は固定される。或いは、インサート111は、空洞10内にインサート111を保持する脚状支持体(図示せず)を有しても良い。図1は、活性化温度への加熱、又は活性化温度での加熱の前の空洞10を表している。図1において、インサート111は、構造補強材料20と構造発泡体12と共に担持体11を備えている。担持体11は、クリップ26等の機械的締結部品を含む任意の利用可能な方法を使用して、保持領域22内に構造補強材料29を保持している。
【0014】
図2は、活性化温度に加熱した後の、水平指向の空洞の一実施形態を表している。図2において、インサート111は、構造補強材料20と構造発泡体12と共に担持体11を備えている。加熱している間、構造補強材料20は、固体又は成形可能な塊から、液体又は実質的液体相に変化する。その後、重力によって、構造補強材料20は、保持領域22から空洞10内の表面上に流れる。この実施形態において、担持体11の底面末端部上の構造発泡体12は、加熱している間に膨張し、空洞10に付着した。担持体11の膨張した構造発泡体12が物理的障壁として作用して構造補強材料20の流れを制限する一方で、構造補強材料20は実質的に液体状態にある。架橋及び/又は冷却に続いて、構造補強材料20は、固体又は固形化した熱硬化性段階にあり、空洞10に対して構造補強を提供する。
【0015】
図3及び4は垂直指向の空洞10の一実施形態を表し、この空洞10はインサート111上の構造補強材料20を使用して補強され得る。インサート111は、接着剤(図示せず)、機械的締結部品(図示せず)、又は水平方向出っ張り(図示せず)を提供するための実質的に垂直な空洞10での屈曲部を含む、任意の方法によって、空洞10に配置又は固定され得る。図3は、活性化温度への加熱前の空洞10を表している。図3において、インサート111は、構造補強材料20と構造発泡体12と共に担持体11を備えている。担持体11は、活性化の前には、接着剤24を含む任意の方法を使用して構造補強材料20を適所に保持している。
【0016】
図4は、活性化温度に加熱した後の、垂直指向の空洞の一実施形態を表している。図4で、インサート111は、構造補強材料20と構造発泡体12と共に担持体11を備えている。加熱している間、構造補強材料20は、固体又は成形可能な塊から、液体又は実質的液体相に変化する。その後、重力によって、構造補強材料20は、担持体11から、空洞10の表面上及び構造発泡体12上に流れる。この実施形態において、構造発泡体12は、担持体11から膨張し、空洞10に付着した。担持体11上の構造発泡体12が物理的障壁として作用して構造補強材料20の流れを制限する一方で、構造補強材料20は実質的に液体状態にある。架橋及び/又は冷却に続いて、構造補強材料20は、固体又は熱硬化性段階にあり、空洞10に対して構造補強を提供する。
【0017】
図5において、自動車2は、構造補強材料20で補強され得る多くの(全てではないが)空洞10を特定して示されている。そのような幾つかの空洞10は垂直、又は実質的に垂直であってよく、他の物は水平、又は実質的に水平であってよい。そのような幾つかの空洞10は、例えば鋼鉄などの金属から形成されるが、空洞10は、プラスチックを含む任意の材料から形成されても良い。それに制限されるわけではない、自動車2の空洞10を有する潜在的に補強可能な構造体は、Aピラー4、ロッカー6、幼児用シートベルト補強物100、フレームレール32、燃料タンク密閉部材36、バンパー40、Bピラー42、及びドア/乗降口44を含む。
【0018】
図1〜5は単に例示的なものであり、自動車用途、特にインサートの構成、特に空洞の形状又は方向性などに添付クレームを限定するものではない。
【実施例1】
【0019】
構造補強材料20は、熱硬化性物質、短い遷移相を有する低粘性熱可塑性物質、低融点金属合金、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された基材を備えている。標準温度及び標準圧力(STP)の周辺で、構造補強部材は、固体若しくは成形可能な塊、又はそれらの混合状態である。このように、射出成型、押し出し成形、切削型押し加工、又は打ち抜き型押し加工を含んだ製造技術は、インサート111を形成する担持体11上、又は担持体内に含有する目的で、又は空洞10内部に直接挿入する目的で、構造補強材料20を形成するのに使用されて良い。
【0020】
インサート111が活性化温度に加熱されると、構造補強材料20は、例えば液相又は実質的な液相などの、流動性相に変態する。このように、構造補強材料20は、担持体11から空洞10の表面上に流れ、空洞10の形態をとるが、一様でない場合がある。重力が、物理的な障壁の変化に伴って、構造補強材料20の流れを制御する。架橋及び/又は冷却されると、構造補強材料20は、空洞10に付着し、空洞10を補強するに十分な強度である、固体又は固化した熱硬化性物質のどちらかになる。
【0021】
活性化温度は、約100℃(もし、構造補強材料20が金属合金を備えていれば)、約120℃、約140℃、又は約150℃ほどに低く出来て、約170℃、約180℃、又は約190℃ほどに高く出来る。これらの温度の一つからこれらの他の一つの温度範囲までが意図されている。自動車の場合、活性化温度は、”焼き”工程の間に到達させることができる。
【0022】
固体状態又は固化した熱硬化性物質への、冷却、及び架橋又は硬化にしたがって、構造補強材料20は、空洞10を十分に補強する強度を有する。一つの実施形態において、補強材料20の引張強度及びヤング係数は、活性化に続く膨張性構造補強発泡体12のそれと等しいか、又はそれより大きい。
【0023】
一つの実施形態において、構造補強材料20の引張強度は、約20MPa以上であり、それは、約40MPa、約50MPa、又は約70MPaにまで変動し得る。一つの実施形態において、構造補強材料20のヤング係数は、約500MPa以上であり、それは、約1000MPa、約1500MPa、又は約3000MPaにまで変動し得る。
【0024】
膨張性構造補強発泡体12とは異なり、構造補強材料20の強度特性は、例えば”焼き”工程などの加熱条件と実質的に無関係である。膨張性構造補強発泡体12の強度特性は、実質的に膨張率に依存しており、前記膨張率は、実質的に、加熱時間及び加熱温度を含む加熱条件に依存している。それに反して、下記添付された特許請求の範囲の幾つかの実施形態では、構造補強材料20は、発泡剤として既知とされる膨張性物質を含んでおらず、その強度特性は膨張率と無関係である。しかしながら、構造補強材料20の他の実施形態は、選択的に発泡剤を含んでも良い。
【0025】
未架橋の膨張性構造補強材料12と比較して、構造補強材料20の厚さは薄い。構造補強材料20の厚さに、インサート111及び構造空洞10の隙間を加えると、約3〜5mmになり得て、流れ及び組み立ての公差を許容する。この薄くされた厚さが、全体的なシステム性能を改善する。
【0026】
一つ以上の熱硬化性物質が基材を備えているという実施形態において、結晶性環状オリゴエステルに基づいた熱硬化性重合体は、環状オリゴ(ブチルテレフタル酸エステル)に基づいた重合体を含んで使用されてもよい。そのようなオリゴエステルは、Cyclics社から市販されている。そのようなオリゴエステルから形成された熱硬化性重合体は、特許文献1に記載されており、それは、その全体を参照してここに組み込まれている。そのようなオリゴエステルは、有機物親和性の粘土及びナノ粘土と、エポキシ樹脂と、それらの組み合わせとによって、異なる種類の化合物の間で選択的に部分修正されても良い。理論に制限されること無く、そのような部分修正は、材料20により高い強度を与え、重合に続いて成形性を向上させるかもしれなく、活性化に先立って提供されてもよいことが信じられている。オリゴエステルは、高分子量を有するポリエステルを作るための開環溶融重合工程によって重合されている。
【0027】
他の実施形態において、熱硬化性物質は、標準温度及び標準圧力(STP)の周辺で、固体又は成形可能な塊である一液型エポキシ樹脂配合を備えていてもよい。好適な配合は、液状エポキシ樹脂の重量で約1%〜約50%、固体状エポキシ樹脂の重量で約10%〜約50%、補強剤の重量で約5%〜約30%、潜在硬化剤の重量で約2%〜約40%、及び充填剤と添加剤との重量で約5%〜約40%を備える混合体を含んでいる。
【0028】
好適な液状エポキシ樹脂は、例えば、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical社から市販されているDER液状エポキシ樹脂、及びテキサス州ヒューストンのResolution Performance Productsから市販されているEPON液状エポキシ樹脂などの、ビスフェノールAエポキシ樹脂を含んでいる。好適なエポキシ樹脂は、”1型”から”6型”(約1000〜6000Daltonに亘る分子量を有している)であってもよい。好適な固体状エポキシ樹脂は、室温で固体であり、30℃以上のガラス転移温度を有している。好適な固体状エポキシ樹脂は、少なくとも約120℃、140℃、又は150℃に加熱されると実質的に液体状であるべきで、400mPas〜15000mPas間の粘性を有するべきである。好適な液状エポキシ樹脂は、例えば、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical社から市販されているDER液状エポキシ樹脂などの、ビスフェノールAエポキシ樹脂を含んでいる。エポキシ樹脂配合は、チキソトロープ剤を含んでもよいが、チキソトロープ剤の量は、液状又は実質的液状相での良好な流れを確実にするため、液状エポキシ樹脂の存在によって釣り合わされるべきである。
【0029】
好適な補強剤は、反応性ニトロルゴム、ポリウレタンに基づいた反応性液状ゴム、及び同様のものを含んでいる。好適な補強剤は、オハイオ州クリーブランドのB. F. Goodrich Chem.社から市販されている、CTB、CTBN、CTBNX、及びATBNという、液状ゴム、単量体ゴム、及び反応性ゴムを含んでいる。コアシェル粒子及びポリアクリル酸塩が、補強剤として使用されても良い。好適な潜在硬化剤は、ジシアンジアミド、4ジアミノジフェニルスルホン、4’ ジアミノジフェニルスルホン、三フッ化ホウ素、アミン錯体、潜在イミダゾール、ポリカルボン酸、多価アジド、ジシアンジアミド、潜在エポキシアミン付加物、置換された尿素、及びそれら同様のものを含んでいる。好適な充填剤は、例えば、シリカ、アルミナ、雲母粉、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、タルク、粘土、カオリン、ドロマイト、炭化ケイ素、ガラス粉末、ガラス泡、二酸化チタン、窒化ホウ素、又は窒化ケイ素などと、例えば雲母、ガラス、ポリエステル、アラミド、及び/又はポリイミド及びそれら同様のものなどのシート及びテープ材との無機充填剤を含んでいる。
【0030】
好適な添加剤は、顔料、着色剤、難燃剤、希釈剤、結合剤、軟化剤、化学的発泡剤、物理的発泡剤、微量の架橋促進剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、例えばHALSなどの光安定剤、例えばゴム粒子などの補強剤、及びそれら同様のものを含んでいるかなり多数の選択的原料は、イソシアヌル酸トリグリシジル、テレフタル酸ジグリシジルエーテル、トリメリット酸トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン‐ジグリシジルのハイドロキノンジグリシジルエーテル固形化合物、ジオソシアナート、及びそれらの混合体を含む一液型エポキシ系に含まれてもよい。
【0031】
市販の一液型エポキシ樹脂系は、固体として使用されることができ、高充填剤充填で部分修正されることのできる、SikaPower493及びSikaPower498を含む。
【0032】
他の実施形態において、熱硬化性物質は、一液型のポリウレタンエラストマー(PUR)熱溶解系を備えても良い。好適なポリウレタンエラストマー(PUR)熱溶解系は、結晶構造、又は低分子量ポリオール又はポリエーテルポリオールと結合した水酸基終端ポリエステルを含む。活性化するまで生じない潜在的架橋は、粉末被膜技術で通常使用される閉ざされたイソシアネートを含む。市販の架橋剤は、ニュージャージー州Parsippanyにあるドイツ系会社のDegussa社製のVESTAGON BF 1350、及びBF 1540である。例えばカプロラクタム、フェノール、又はベンゾオキサゾロンなどの求核試薬で閉ざされたポリイソシアネートが適している。さらに、不活性シェルを有するマイクロカプセル化されたイソシアネート粒子は、例えば活性化温度などの高温で、イソシアネートを解放するウレタン又は尿素を備えている。この実施形態において、不活性シェルのアミン部分は、ポリウレタンエラストマー(PUR)を形成するために加熱をすると、イソシアネート及びポリオールと反応する。
【0033】
その他の熱硬化性物質は、活性化温度でここに記載されるように熱硬化性物質が相を変える限りは使用されてもよく、空洞10を十分に補強する強度を有するために架橋する。
【0034】
一つ以上の熱可塑性物質が基材を備えているという実施形態において、熱可塑性材料は、その液相において、短い遷移相及び低粘性を有するべきである。特に、200℃又は210℃を越えるような高い活性化温度を要求する用途に対して、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体、及びそれら同様のものが適している。低い活性化温度を要求する用途、及び低い補強強度を要求する用途に対しては、低密度ポリエチレン及びそれと同様のものが適しているかもしれない。遷移相の適切な範囲は、約140℃で約10分から約195℃で約30分まで、約150℃で約10分から約175℃で約30分まで、及び約150℃で約15分から約170℃で約30分までを含んでいる。液相での粘性の適切な範囲は、約500mPasから約100000mPasまで、約5000mPasから約50000mPasまで、約7000mPasから約18000mPasまでを含んでいる。
【0035】
その他の熱可塑性物質は、活性化温度でここに記載されるように熱可塑性物質が相を変える限りは使用されてもよく、空洞10を十分に補強する強度を有するために架橋する。
【0036】
一つ以上の金属合金が基材を備えているという実施形態において、金属製基部は、例えばスズ(Sn)、インジウム(In)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、又はそれらの組み合わせなどの金属を備えても良い。スズに基づいた溶接、又は半田付けされたたいていの合金は適している。幾つかの実施形態において、潜在的な毒性の懸念を除くため、鉛フリー合金が使用されても良い。その他の合金が使用されてもよい。少なくとも一つの金属合金を含む実施形態において、合金は、共晶又は略共晶であり、低融点を有する。低融点は、約100℃、約120℃、約140℃、又は約150℃ほどに低くすることができ、約170℃、約180℃、約190℃ほどに高くすることもできる。典型的な適切な合金は、Biを約50%、Pbを約25%、及びSnを約25%(Bi50Pb25Sn25)含むローズ合金(Rose's Metal)のようなビスマス‐スズ‐鉛合金を含む。アメリカのIndium社から入手可能で、103℃〜227℃の融点を有するインダロイ(lndalloys)もまた適している。その他の典型的な合金は、少なくとも、オリオンメタル(42Pb42Sn16)、ビブラメタル(Pb6020Bi15Sn)、及びウォーカー合金(Bi45Pb28Sn22Sb5)を含んでも良い。
【0037】
その他の金属合金は、活性化温度でここに記載されるように合金が相を変える限りは使用されてもよく、空洞10を十分に補強する強度を有するために凝固させる。
【実施例2】
【0038】
構造発泡体12は、担持体11上で、又は担持体11内で選択的に使用されても良い。図1〜4に表された実施形態で示されるように、膨張した構造発泡体12は、液相の構造補強材料20が空洞10の特定の領域内に流れ込むことを防ぐための物理的障壁として作用し得る。そのような実施形態において、未架橋の構造発泡体12は活性化中に膨張し、空洞10に付着する。構造発泡体12は、”焼き”工程などの加熱工程中に、構造補強材料20がそれら領域(空洞10の領域)に流れ込むことを防ぐために、空洞10の領域を効果的に密封してもよい。
【0039】
発泡体12は、市販の膨張性発泡体の何れかであれば良い。ミシガン州Madison HeightsのSika社は、特許文献2及び3に記載されている熱的膨張性材料を、SikaBaffle(登録商標)という商標名で市販しており、それら文献はその全体を参照としてここに組み込まれている。Sika社はまた、熱的膨張性補強材料をSikaReinforcer(登録商標)という商標名で市販している。Sika社に所有される、一連の熱的膨張性補強材料は特許文献4に記載されており、その文献はその全体を参照してここに含まれている。発泡体12を採用する実施形態において、化学的又は物理的発泡剤と架橋剤とを備える一液型エポキシ樹脂配合が好適である。
【0040】
一つの実施形態において、発泡体12は、構造補強材料20が溶解する温度よりも僅かに低い温度で、活性化、膨張、及び架橋する。発泡体12が空洞10に付着し、液状又は実質的液状構造補強材料20の流れを妨げることができるように膨張する限りは、任意の発泡体12が使用されてもよく、一方で空洞10の温度は、活性化温度のまま、又は活性化温度の周辺のままである。
【実施例3】
【0041】
構造接着剤33は空洞10内にインサート111を固定するために選択的に使用されても良く、この空洞10は鋼鉄又は被膜された鋼鉄などの金属を備えている。また、空洞10はプラスチック又はその他の材料を備えても良い。シガン州Madison HeightsのSika社は、SikaSeal(登録商標) 及びSikaflex(登録商標)という商標名の適切な構造接着剤を市販しており、それらは、添付されたクレームの様々な実施形態で使用するのに適している。適切な接着剤はエポキシに基づいてもよいが、任意の接着剤33が、少なくとも空洞10が活性化温度に加熱されるまで、空洞10内にインサート111を固定できる限り使用されても良い。活性化に続いて、図2に記載された実施形態において、インサート111は、発泡体12及び構造補強材料20によって適所に付加的に保持されている。
【0042】
前述の好適な実施形態及び代わりの実施形態を参照しながら、本発明が詳細に示され、記載されているが、ここで記載された本発明の様々な代替的な実施形態が、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の精神と範囲とを逸脱しないで本発明を実施する限りにおいて採用されても良いことが、当業者によって理解されるべきである。添付の特許請求の範囲は本発明の範囲を規定しており、請求項の記載及びそれらと同等なものに含まれる方法及び装置はそこで保護されている。本発明のこの詳細な説明は、ここで記載された要素の全ての新規性及び進歩性の組み合わせを含んでいることが理解されるべきであり、クレームは、この用途、又はこれらの要素の任意全ての新規性及び進歩性の組み合わせに対する後の出願において公開されても良い。前述の実施形態は例示的なものであり、一つの特徴又は要素は、この点において又は後の出願において、特許請求の範囲に記載される全ての実施可能な組み合わせに対して絶対不可欠なものではない。
【符号の説明】
【0043】
10 空洞
2 自動車
4 Aピラー
6 ロッカー
11 担持体
12 構造発泡体
20 構造補強材料
22 保持領域
24 接着剤
26 クリップ
32 フレームレール
33 構造用発泡体
36 燃料タンク密閉部材
40 バンパー
42 Bピラー
44 ドア/乗降口
100 幼児用シートベルト補強物
111 インサート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性物質、短い遷移相を有する低粘性熱可塑性物質、低融点金属合金、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された基材を備えている構造補強材料(20)であって、
前記構造補強部材(20)は、STPの周辺で、固体、成形可能な塊、及びそれらの混合体から成るグループから選択された相の状態であり、
前記構造補強材料(20)は、活性化温度における加熱中に、実質的な液状相に移行し、
活性化及び冷却に続いて、前記構造補強材料(20)は、実質的固体であり、空洞を十分に補強する強度を有することを特徴とする構造補強材料。
【請求項2】
前記基材は、結晶性環状オリゴエステルに基づいた熱硬化性物質を備えていることを特徴とする請求項1に記載の構造補強材料。
【請求項3】
前記基材は、一液型エポキシ熱硬化性物質を備えていることを特徴とする請求項1に記載の構造補強材料。
【請求項4】
前記基材は、一液型のポリウレタンエラストマーのホットメルト熱硬化物質を備えていることを特徴とする請求項1に記載の構造補強材料。
【請求項5】
前記基材は、約140℃で約10分〜約195℃で約30分の遷移相を有する熱可塑性物質を備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の構造補強材料。
【請求項6】
前記基材は、約150℃で約10分〜約175℃で約30分の遷移相を有する熱可塑性物質を備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の構造補強材料。
【請求項7】
前記基材は、約150℃で約15分〜約170℃で約30分の遷移相を有する熱可塑性物質を備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の構造補強材料。
【請求項8】
前記基材は、約500mPas〜約100000mPas、好適には約5000mPas〜約30000mPas、より好適には約7000mPas〜約18000mPasの範囲の粘性を有する熱可塑性物質を備えていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の構造補強材料。
【請求項9】
前記基材は、共晶金属合金を備えていることを特徴とする請求項1に記載の構造補強材料。
【請求項10】
前記基材は、約100℃〜約190℃、好適には約120℃〜約180℃、より好適には約140℃〜約170℃の範囲の融点を有している金属合金であることを特徴とする請求項9に記載の構造補強材料。
【請求項11】
前記基材は、Sn、In、Bi、Pb、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された金属に基づく合金を備えていることを特徴とする請求項9又は10の何れか一項に記載の構造補強材料。
【請求項12】
前記活性化温度は、少なくとも約120℃〜約190℃、好適には少なくとも約140℃〜約180℃、より好適には少なくとも約150℃〜約170℃の範囲に亘ることを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の構造補強材料。
【請求項13】
前記引張強度は、少なくとも約20MPa、好適には少なくとも約20MPa〜約70MPaであることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の構造補強材料。
【請求項14】
前記ヤング係数は、少なくとも約500MPa、好適には少なくとも約500MPa〜約3000MPaであることを特徴とする請求項1〜13の何れか一項に記載の構造補強材料。
【請求項15】
(a)インサート(111)を形成するため、担持体(11)に請求項1〜14の何れか一項に記載の構造補強材料(20)を付着する段階と、
(b)前記インサート(111)を空洞(10)内に挿入する段階と、
(c)前記構造補強材料(20)が実質的液状になり、前記空洞(10)内に流れ込むように、前記インサート(111)を活性化温度にまで加熱する段階と、
(d)前記構造補強材料(20)が前記空洞(10)内で固化し、前記空洞(10)の少なくとも一部に付着し、それによって前記空洞(10)を補強するように、前記インサート(111)を冷却する段階と、
を備えていることを特徴とする空洞(10)を補強する方法。
【請求項16】
前記担持体(11)は、金属、プラスチック、又はそれらの組み合わせを備えていることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記付着する段階(a)は、機械的締結部品(26)の使用を備えていることを特徴とする請求項15又は16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記付着する段階(a)は、接着剤(24)の使用を備えていることを特徴とする請求項15又は16の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
液状構造補強材料(20)の流れを制御するための少なくとも一つの物理的障壁を含む担持体(11)を部分修正する準備段階をさらに備えていることを特徴とする請求項15〜18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも一つの物理的障壁は、構造発泡体(12)を備えていることを特徴とする請求項15〜19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記空洞は、金属を備えていることを特徴とする請求項15〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記空洞は、自動車(2)内にあることを特徴とする請求項15〜21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
(a)第一端部及び前記第一端部に対向する第二端部と、前記第一端部及び前記第二端部間の少なくとも一つの保持領域(22)を有する担持体(11)であって、前記少なくとも一つの保持領域は、該保持領域に固着された構造補強材料(20)を備えている、担持体(11)と、
(b)請求項1〜14の何れか一項に記載される前記構造補強材料(20)であって、活性化後の後に、前記構造補強材料は空洞を十分に補強する強度を有し、熱硬化性物質及び固体から成るグループから選択された相にある、構造補強材料と、
(c)前記担持体の前記第一端部、又は前記担持体の前記第一端部近傍の未架橋の膨張性発泡体(12)と、
(d)前記担持体の前記第二端部、又は前記担持体の前記第二端部近傍の未架橋の膨張性発泡体(12)と、
を備え、
活性化温度への加熱時に、前記膨張した発泡体(12)は、前記構造補強材料が、前記膨張した発泡体(12)を超えて延在する前記保持領域(22)から流れ出ることを妨げることを特徴とする構造補強インサート(111)。
【請求項24】
前記保持領域(22)は、前記担持体(11)内の空洞にあることを特徴とする請求項23に記載の構造補強インサート。
【請求項25】
前記構造補強材料は、機械的締結部品(26)で前記保持領域に固着されていることを特徴とする請求項23〜24の何れか一項に記載の構造補強インサート。
【請求項26】
前記構造補強材料は、接着剤(24)で前記保持領域に固着されていることを特徴とする請求項23〜24の何れか一項に記載の構造補強インサート。
【請求項27】
請求項23〜26の何れか一項に記載の構造補強インサートを備える空洞(10)を備える自動車(2)。
【請求項28】
(a)前記空洞(10)内のインサート(111)であって、保持領域(22)を含んでいる前記インサート(111)と、
(b)請求項1〜14の何れか一項に記載の、架橋されるか、又は固化された構造補強材料(20)と、
を備えている補強された空洞(10)であって、
前記架橋されるか、又は固化された構造補強材料(20)は前記保持領域(22)から流れ出て、空洞(10)の少なくとも一部に付着し、空洞(10)を補強することを特徴とする補強された空洞(10)。
【請求項29】
前記空洞(10)は、自動車(2)のフレームレール(6)内にあることを特徴とする請求項28に記載の補強された空洞(10)。
【請求項30】
前記空洞(10)は、自動車(2)のAピラー(4)内、又はBピラー(42)内にあることを特徴とする請求項28〜29の何れか一項に記載の補強された空洞(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−513584(P2010−513584A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540784(P2009−540784)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063974
【国際公開番号】WO2008/071792
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】