説明

標本用先端および先端保持部品

【課題】透過型電子顕微鏡において、見本を傾斜させる時、見本の有益領域では焦点が動かない、または観測分野が動かない動作を提供する。
【解決手段】バレル21の内部には、先端保持部22を支持するバレル21の一端に隣接して位置し、しかもバレル21、スライド枠37aおよび端版37bの内壁で囲んだ空間35がある。カム軸36の回転で、スライド31および先端保持部22は、バレルの長い軸に垂直に移動する。標本は、Z軸(透過型電子顕微鏡の光軸)における実質的な直線通路を移動する。ダイヤルを回すと、スライド31、先端保持部22および標本用先端23が起き上がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型電子顕微鏡で分析する見本を支持する標本用先端および標本保持部品に関する。更に、本発明は、標本用先端に標本を配置する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
透過型電子顕微鏡は、生物学から物理化学の分野までの開発領域範囲を通じて広範囲に使用する多角的な道具である。透過型電子顕微鏡は、最も有効な映像装置のひとつであり、表面の形態ばかりでなく、内部構造および金属、半導体、たんぱく質、重合体を含む異なる物質における欠点を研究するために使用することができる。
【0003】
透過型電子顕微鏡(TEM)の動作を図示する配置図を図1に示す。本来的に、透過型電子顕微鏡は、電子の高エネルギー光線を放射する電子ガン1と、研究時に標本の上に光学軸A−Aに沿って光線を制御したり、平行にする一連の電磁レンズ2とから構成されている。電子が物質を通して送られるように、薄い見本4(厚さ100nm以下)が使用される。電子は見本によって分散し、その物質に応じた回折図形特性を形成する。別の一連のレンズ5は、電子線が見本を通じて透過した時に、分散された電子線から映像を形成するために使用される。映像または回折図形は、のぞき窓7を通して電子蛍光物質で塗膜したスクリーン6で見たり、またはカメラ箱8を通してモニターに写した絵に変えたりする。一方、映像を横切る電子濃度の量測定の技術が用いられてもよい。全体の透過型電子顕微鏡孔は、電子線が気体粒子によって粉砕されるのを防ぐために、10−2Pa以下の圧力に開けられる。
【0004】
透過型電子顕微鏡でしばしば要求される高い分析を得るために、一般に見本は電磁レンズまたは極片2cおよび5aの内部に配設される。高い分析を行う極片の内部にあるすき間は小さく、そして最大限の大きさに厳しい制限を行っている。典型的な見本4は、直径が3ミリメートル円盤で、最大限の高さが約1ミリメートルである(図2)。電子が見本を通して送られるために、特別な見本を準備する技術は、100nm以下に物質を薄くするようにしている。最良の技術では、物質は孔10がディスクの中心に形成されるまで、電気分解研磨法またはイオン薄膜化法を使用して見本ディスクの中心から離れる。薄い、電子透明領域11は孔を囲んでいる。
【0005】
準備した見本4は、要求した場所にその見本を保持するように透過型電子顕微鏡の壁を通して伸びている先端保持部に配置する。見本が保持される先端保持部の終端に標本用先端が配置されている。一般に、これは、先端保持部の不可欠な部分である。標本用先端にはいろいろな種類があり、その具体例は、図3a、3b、および3cに示される。一般に、見本は標本用先端における環状の凹部に保持され、孔10で一致する中心開口部13に供給され、そして見本4の電子透過範囲を囲んでいる。しばしば標本は、見本を支持して供給する薄い網または格子に置かれている。最後に、見本はクリップリングまたは同様の機械的な取付手段によってその場所に保持される。有用な保持部は、加熱場所、冷却場所、標本の電圧と電流を測定する電気的な場所および歪の場所を含んでいる。そのような場所は、例えばアメリカ特許5,225,683号明細書に記載されており、先端保持部に交換可能に配置できる伝統的な留め金手段および傾斜手段を持った多くのタイプの標本用先端を開示している。
【0006】
特殊なタイプの見本を配置する限定された技術が存在している。例えば、イギリス特許公開2,121,208号は、凝固乾燥および低温部分を配置する技術を記載している。圧力要素は標本を位置付けるために使用され、適応した圧力のために、標本は乾燥中マウントに取付けたようになる。
【特許文献1】英国特許公開2,121,208号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
見本の一連の透過型電子顕微鏡映像を結合することにより、標本の立体形を創造することが可能となる。これは、"電子断層X線写真法"と呼ばれ、そして多くの複雑な標本は平面的な投影器自体では等しく描写できないので、重要な開発器材である。例えば、電子断層X線写真法は、しばしば触媒またはウィルスのような小さな単一の粒子を映像するために使用される。
【0008】
立体形を形成することが要求される一連の映像を得るために、見本は可能な限り大きな角度を通して傾斜されなければならない。上記に記述したように、アメリカ特許5,225,683号明細書の記述を含む伝統的な先端保持部は、大きくそして、高い分析極片内部の限られた空間において、一般に見本をプラス/マイナス40度以上まで傾斜させることはできない。傾斜範囲を増加させるには、保持部のサイズを小さくすることが有益である。
【0009】
さらに、見本を傾斜させる時に、見本の有益領域では焦点が動かない、または観測分野が動かないことが重要である。有益点は傾斜軸として同じ高さであるように見本を配置することにより成し遂げられる。これは、"頁の中心の高さ"と呼ばれている。伝統的に標準的な保持部は、透過型電子顕微鏡に配置された時に、見本の標準的なサイズや厚さがおよそ頁の中心の高さになるように設計されている。透過型電子顕微鏡に関して、先端保持部の高さは、透過型電子顕微鏡に関する3方向(X,Y,Z)における保持部の動作を提供する測角器の焦点を調節すればよい。この点に関しては、例えば日本特開2001−68047に開示されている。しかしながら、見本の厚さの多様性のために、この技術は見本が中心点にあり、見本の乙軸の高さをユーザーが上手に調節できたならば有用となるという事を保証していない。
【0010】
アメリカ特許3,778,621号明細書は、電子顕微鏡用標本傾斜装置を開示している。本装置はXY軸に配置する標本の傾斜、およびX軸(本装置の軸に平行)における横方向への動作を提供している。標本の場所は、XY図またはYZ図において弓状の通路に沿って標本が動くように回転してもよい。しかしながら、本装置は複雑かつ精巧な構造で、しかもXY図においても標本を動かさないで、標本のZ軸位置を上手に転回する能力を提供しないものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、透過型電子顕微鏡で標本用先端を配置する標本用先端保持体の組立は、標本用先端を支持する標本用先端と、支持軸に実質的に垂直な方向で動作する延長支持部に連結される先端保持部と、支持部に関して先端保持部の動作を生じさせる支持部に配置する作動器とを具備している。
【0012】
2つの部品から組み立てた先端保持部を形成し、作動手段を提供することにより、支持軸に垂直に支持部に関する先端保持部を置換することが可能である。これは、中心点を上手に転回する透過型電子顕微鏡において、標本の高さを調節することが可能となる。補足説明をすると、用語の"標本"は通常、使用時に見本が配置される網または格子のような追加する支持物を備えているが、研究される見本を備えている。高さの調節は標本用先端保持体の組立部品に組み込まれており、ユーザーが手動で調節してもよい。これは、本来の高さ位置に正確な調節ができ、しかも中心の高さで標本を堅実にセットすることである。これは、どんな標本の厚さでも、高さは観測(高い拡大でさえ)で残存する標本を同じ領域に、しかも支持部が傾斜する角度が何であれ、一般には焦点にセットすることができる。
【0013】
好ましくは、先端保持部と伸長する支持部との間における動作は、実質的に直線運動である。その調節は、別の軸で置換を避ける一方向で直線に沿って場所を見つける。例えば、動作が実質的に乙軸(透過型電子顕微鏡の光軸に平行)に沿っている場合には、標本の高さは見本の横移動なしに調整してよい。標本用先端保持体の組立部品の中に積算する乙軸調節を有することにより、顕微鏡測角器の高さを偏心する最適位置にセットし、標本の正しい焦点位置をセットすることが可能である。これはまた、顕微鏡測角器を使用する標本を傾斜させるため極片のすき間内に空間を最大限とるものである。
【0014】
都合のいいことには、伸長する支持部は動作方向に伸びる細長い開口部または凹部で構成され、そして先端保持部は細長い開口部または凹部とスライド的に連動する突起を具備している。
これにより、先端保持部と細長い支持部の間の正確な直線状の関連する動作となる。細長い開口部または凹部に先端保持部の動作が案内される。好ましくは、細長い開口部または凹部は、(乙軸における)透過型電子顕微鏡の光学軸に平行に伸びている。
【0015】
内部構造を用いる作動器を操作することが可能となる。しかしながら、好ましくは、作動器は、先端保持部を制御する位置から操作するのに適している。
この高さ調整を成し遂げるためのいくつかの異なる配置は考えることができ、例えば、先端保持部の動作は、モーター、圧電素子駆動、熱膨張、レバーまたは片持ばりによって駆動することができる。しかしながら、好ましくは、作動器はカム軸が回転した時に、スライドが支持軸に対して実質的に垂直方向へ動くような先端保持部のスライド形成部に提供した、または先端保持部に連結したカム従動節を連動するように配置した細長い支持部に沿って伸びる回転可能なカム軸を具備し、この配置は、操作者に簡単で、かつ標本の高さを正確な方法で制御することを提供しており、頻繁にメンテナンスを要求するようないかなる複雑な部品を含んでいない。都合のいいことには、細長い支持部における細長い開口部または凹部とスライドして連動する先端保持部にスライドは突起を形成してある。
【0016】
一般的に、細長い支持部はバレルであり、作動器はバレル内に伸びている。作動手段用に支持と保護を提供すること、および透過型電子顕微鏡の中に取付けるコンパクトユニットに帰着していることは、便利な配置である。
好ましくは、バレルまたは他の細長い支持部は、カム軸とTEM凹部における真空を保つためのバレルとの間に気体の通路を妨げる内部封止手段をさらに提供する。別の方法として、封止手段は標本保持部品の他の場所に提供するか、または設計から外してもよい。しかしながら、良好な封止がカム軸とバレル自体の間にされた場合には、バレルに封止手段を配置することは便利である。これにより、チップ保持集成体を通じてTEMの中に気体が入ることを防ぐことができる。
【0017】
先端保持部は、完全に標本用先端で形成してよい。しかしながら、先端保持部は取り外し可能に標本用先端を支持するのに適していることが好ましい。先端保持部から標本用先端を取り外せるようにすることにより、交換可能な標本用先端が用いられる。異なる型式の標本用先端は、検査される見本および使用するTEM技術に従って選択される。
【0018】
例えば、多くのTEMはX線分析装置を装備しており、エネルギー分散型分光器(EDS)のような技術を実施するのに用いる。そのような場合に、EDS検出器に面している標本用先端の一側が、検出器の通路に直接的に離れないで切り欠いてあれば有用である。これにより、検出器が使用された場合には、検出器は見本物質および配置した格子からひとつの信号だけを受信する。
標本が標本用先端の上に配置されると、各標本は交換可能な標本用先端と共に集成体として処理され、貯えられる。更に、標本用先端保持集成体は標本用先端を具備していることが好ましい。
【0019】
標本用先端を取り外し可能に支持するためには、先端保持部をネジまたはクリップで標本用先端を支持するように提供する。
【0020】
しかしながら、先端保持部は、標本用先端と取り外し可能に支持するために締め付け手段で提供することが好ましい。標本用先端を先端保持部に締め付ける多くの方法はあるが、先端保持部がピボットにより連結した2つの部材、そして少なくとも2つの部材間に標本用先端の一部分を締め付けるように、別の部材に向かって2つの部材を駆り立てるバイアス手段を具備することが好ましい。この直接の配置は操作する上で容易であり、TEMにおける標本用先端を確実に支持する。
【0021】
本発明による第2の観点は、透過型電子顕微鏡における標本を支持する標本用先端は、標本が平らな平面に接着され、標本の下部を通して電子が透過するように位置した切り欠き部を提供している。標本用先端による障害物なしに標本を通して電子が透過するように標本用先端が形成されるので効果的である。標本用先端の上に標本を接着することにより、複雑な機械的なクリップまたは試験用支持部にばら荷を加えるケージ(かご)を必要とせずに、ある場所に標本を正確に保持することが可能となる。そこで、TEM極片内の限られた場所により大きな角度で傾斜される標本を置くことによって、標本用先端の寸法を小さくすることが可能となる。この配置で、小さな高い分析極片すき間にプラス/マイナス80度の見本傾斜のような高い傾斜角を実現することができる。
【0022】
一般的に、固い見本は標本用先端のような上に直接に配置される。しかしながら、より柔らかい見本は更に支持を要求される。そこで、この場合における標本は、配置した格子に見本が接着される格子を具備している。その後、使用時に標本は標本用先端の平らな表面に接着される。標本(配置する格子および見本を含み、見本自体を具備する)は、標本用先端の完全な一部となる。
【0023】
より進んだものとしては、標本用先端保持集成体の先端保持部は、上述したような標本用先端を支持している。集成体の結合は、本来の場所の高さ調整および超高分析TEMにおける電子断層写真術を成し遂げるのに特に十分に適した試験用保持体を提供するサイズを小さくした標本を提供する。
小さな標本用先端は、TEMの中に大きな角度の見本傾斜を行わせることができ、利益ある点が真の中心を持つ高さに位置するように標本の高さを正確に鋭く調整することが可能であるバレル軸に垂直な方向に先端保持部の動作をさせることである。
【0024】
本発明の更なる観点では、透過型電子顕微鏡は、凹部の中に本発明の第一の観点の延長上にある標本用先端保持集成体を有している。作動手段は、凹部の外側から操作することが好ましい。
【0025】
また、本発明は透過型電子顕微鏡における標本を支持する標本用先端に標本を配置する方法を提供する。この方法は、次のステップを具備している。
a)標本用先端における平らな表面の少なくとも一部に、または標本の少なくとも一部に接着剤を適用し、
b)標本の少なくとも部分的に電子透過部分を通す電子の通路を、標本用先端によって中断しないような位置で、標本用先端における標本を配置し、および
c)接着手段によって標本用先端に配置した標本を接着する。
この配置する手順では、標本用先端に提供される機械的な取付部材を全く要求していない。そのために、標本用先端の大きさを小さくすることができ、TEMの内部における傾斜角度を増加させることができる。標本を保護し、その操作性を大きく増加する標本用先端に取付けた標本を取り扱い、貯えることができる。
【0026】
前述したように、見本が十分に固い場合には、標本は見本それ自体を具備すればよい。しかしながら、見本がより多くの支持を要求する場合には、更に標本は配置した格子に標本が接着されていることを備えている。
そのために、更にこの方法ではステップ(a)以前に配置した格子に見本を接着するステップを具備している。
【0027】
この段階で、標本はTEMに使用のために用意する。しかしながら、チップ保持部品のサイズは見本および/または配置した格子の側部を削り落とすことによって、更に小さくすることができる。これは、標本チップに標本を配置する前か後かのいずれかに行われる。そのために、この方法は更に標本チップを突出するまたは突出するだろう標本の少なくともいくつかの領域を取り除く段階を具備している。別の方法として、物理的により小さい標本を使用することもできる。上記各々の方法は、チップに配置した時に標本の改良した傾斜角度を提供する。
【0028】
TEMにおける分析後に、望むならば、標本は機械的な手段により、または接着剤が溶解する適当な溶剤の中にチップをつけることにより、標本チップから取り外すことができる。
本発明の第2の観点における標本チップを組成する本発明による標本保持部品の具体例は添付図面を参照して記載し、公知の標本支持部と対比する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
透過型電子顕微鏡における標本用先端を配置する標本用先端保持集成体は図4、5および6に図示されている。集成体20は、透過型電子顕微鏡の外側から、使用時に見本が配置される極片のすき間まで十分に長く伸長するバレル21と、バレス21の一端に連結される先端保持部22とから構成されている。先端保持部22は、標本チップ23を支持するようになっている。図において、標本用先端は別部品として示されているが、標本用先端23は、先端保持部22と一体に形成できることが望ましい。集成体の他端には、バレル21が透過型電子顕微鏡の一側および以下に説明するダイヤル25に対して適合するように設計したハウジング24を備える。集成体20は、集成体を透過型電子顕微鏡に置いた時に、バレルと透過型電子顕微鏡間の気体通路が妨げられるような方法で、バレルの周りに適合する重合体の封止リング26を供給している。これは、透過型電子顕微鏡が成功する操作のために要求される高い真空を維持できるようにするものである。
【0030】
先端保持部22とバレル21はともに連結されており、2つの部品間の関連する動作がバレルの軸に対して垂直な方向に可能となる。この調整は図7bに示してある。バレル21の内部には、先端保持部22を支持するバレル21の一端に隣接して位置し、しかもバレル21、スライド枠37aおよび端板37bの内壁で囲んだ空間35がある。空間35または凹部は動作方向に典型的には伸びる。端板37bは、バレル21の内壁に溶接するか、または取付けられ、先端保持部22の背面部を通して通過する中央の開口に設けられている。開口は伝統的には円形であるが、動作方向に伸びることができる。これは、先端保持部のいかなる不慮の回転動作を妨げる付随する効果を有している。開口は、そこを通過する先端保持部よりも大きく、先端保持部の関連する置換えができるようになっている。スライド31は、A方向に沿って上下に動作できるように、空間35の内部に配設してある。スライドおよび空間(必要ならば開口)の調整を再度方向づけることにより、バレル21の軸に対して垂直ないかなる方向にもスライド前後に動作させることができるようになる。
【0031】
先端保持部22は、ねじ手段34によりスライド31に固定されている。これは、先端保持部のメンテナンス、取替、保管のために容易に取り外せるようになっている。また、他の固定方法を使用することも可能であり、またはスライド31を先端保持部22と一体成形することも可能である。
バレル21における開口または凹部にスライドしてかみ合う先端保持部22に有効に形成する突起は、スライド31および先端保持部22の一部に取付けられる。
【0032】
スライド31にバイアスカを分配するスプリング33または他の手段は、スライド31と空間35の基台の間に配設される。スライド31は、カム軸36と接触するカム従動歯車32を供給している。スプリング33は、カム軸36に対してカム従動歯車32を押圧する。
【0033】
カム軸36は、バレル21内に回転するように配置されており、カム軸36がダイヤル25に連結している離れた端部にバレル21を通してスライド31から伸長している。カム軸36が回転できるようにするために、カム軸はベアリングに配設されている。本実施例では、ブッシュ(図示していない)は用いられているが、ローラーまたは他のベアリングタイプを用いてもよい。カム軸の一端38で、カム軸36は偏心する直径を有し、カムを限定し、スライド31におけるカム従動歯車32と接触している。内部の封圧リング39は、標本保持体を通して透過型電子顕微鏡に気体が入らないようにするために、カム軸36とバレル21の間に配設されている。
【0034】
カム軸36の回転で、スライド31および先端保持部22は、バレルの長い軸に垂直に移動する。標本4は、Z軸(実質的に透過型電子顕微鏡の光学軸A−Aに平行)における実質的な直線通路を移動する。標本4のZ高さは、標本の横への移動なしで隣接(焦点光線)するように、他の軸における置換を避けている。スプリング33は、カム従動歯車32およびカム軸36のカム端部38(偏心する直径)が動作範囲で互いに接触するように働いている。カム軸は保持集成体の離れた端部でダイヤル25を回すことによって回転するようにしてもよい。本実施例では、ダイヤルを右回りに回すと、スライド31、先端保持部22および標本用先端23が起き上がる。反時計方向へダイヤルを回すと、構成部品を低くする。もちろん、集成体はその方向が反対になるように調整することができる。操作者は、顕微鏡の外側の保持集成体の裏側でダイヤル25を回すことにより、透過型電子顕微鏡に配置した標本のZ軸部分を調整することができる。このように、真の中心高さは、全体の保持集成体20を動かさないで、または電子線を再度焦点させないで、上手に転回してもよい。
【0035】
その機構が最小限または最大限の調整で最も低いまたは最も高い接触点を越えないようにするために、180度の角度でハウジング24から突出するピン(図示していない)と連動するダイヤル面の中に設けたスロットがある。偏心の直径が調整なしでその中間点の接触があり、カム軸36はプラス/マイナス90度のような角度以上を通して回転できない事を保証している。操作者を手助けするために、また、標本高さセットの再生産性を改良するために、ダイヤル25およびハウジング24に一連のインデックス・マークがある。
【実施例】
【0036】
第一実施例では、全体の調整範囲は、Z軸に対して760マイクロンである。そのため、スライド移動は、プラス/マイナス380マイクロンに限定される。もちろん、調整範囲は、カム軸36およびスライド31の寸法を変えることにより、増加したり、減少したりすることができる。
【0037】
本実施では、標本用先端が取り外しおよび取替えできるように先端保持部を調整してある。先端保持部22は、軸ピン29およびスプリング30を介して先端保持部22の本体に連結した。移動可能な圧縮アーム28と均一の面にしてある。標本用先端23は、先端保持部22の終端にある孔の中に該チップをスライドすることにより、また圧縮アーム28および先端保持部22の本体部の間に該チップを置くことにより、先端保持部に保持される。
【0038】
ピン29は、十分な広さの先端保持部22の反対側に伸び、軸に取付ける先端保持部におけるスロットに圧縮アーム28を保持する。均等の圧力が標本用先端23の裏の中に構成したフラット表面に及ぼされるように、スプリング30または他のバイアス手段は圧縮アーム28の終端に圧力を掛ける。
その後、標本用先端23は、先端保持部22、先端保持部22に停止を促し、圧縮アーム28からスプリング力を保持する標本23の裏面における孔の中に標本用先端23の取付けによって望んでいない直線に移動される。
【0039】
標本用先端23は、標本用先端23および圧縮アーム28の表面を接触することにより、直角に移動される。操作者は小さい圧力を掛けることにより圧縮アームを外してもよく、例えば、圧縮アーム28のスプリング端部における円状のすきま領域28aにピンセットの一端を用いて外してもよい。この圧力は、スプリング30を圧縮し、標本用先端23における圧力を解放する圧縮アーム28を回転するものである。
【0040】
標本用先端23は、先端保持部22から取外してもよいので、交換可能な標本用先端を用いることができる。以下に詳述するように、異なる標本用先端を異なる標本物質または異なる透過型電子顕微鏡技術から選択してもよい。
図8aおよび8bは2種類の標本用先端を示し、透過型電子顕微鏡における標本を支持するために、上述したチップ保持集成体との関連で使用される。各標本用先端23aまたは23bは、一端に薄い平面40と他端に隣接する平らな縁42を有する、ある長さの硬質物質から構成されている。チップ物質は、その使用する用途によって選択すればよい。例えば、チタニウムはほとんどの用途に適しているが、X線によるマイクロ分析にはベリリウムが適している。
【0041】
平面の領域には、標本用先端23によって妨げない見本4を通して電子の通路を認めるために41aまたは41bのような切り欠きを設けてもよいし、またはその他の形状にしてもよい。図8aおよび8bにそれぞれ示す標本用先端23aおよび23bは、支持標本自体の構造を明確に示すために標本を取り外した状態を示してある。
【0042】
図2に示したような標準的な透過型電子顕微鏡の見本4は、孔10および見本4の電子透過領域11が前記切り欠き41aまたは41bに位置するように平面40に配置される。図9に示す完成した標本保持部品は、見本4の縁が以下に詳述するような理由のために取り除かれている。しかしながら、この方法は任意である。見本を注意して配置することにより、見本を通して透過する電子線は、標本用先端23によってさえぎられない。見本4は、粘着性ある接着剤または他の接着剤の手段により標本用先端23における位置に接着される。
【0043】
標本用先端の背面端部の平らな表面42は、上述したような先端保持部における標本用先端を配置できるようになっている。クリップを使用する、または他の機械的な取付手段というよりは、むしろ標本用先端23に見本4を粘着することにより、標本用先端の大きさを充分に小さくすればよい。加えて、締め付ける機構または位置を確認する機構のようないかなる種類の標本の必要性は除去され、このように透過型電子顕微鏡極片の狭いすき間の間に、非常に薄い標本を取付けられるようになっている。
【0044】
実施例では、標本用先端23は、直径1.5ミリメートルである。違った伝統的な試験用保持体なら、機械的な取付装置を作ることを必要としないので、標本用先端23は、そこに位置する見本4よりも小さくてよいことが可能である(典型的には、直径3ミリメートル)。標本用先端のサイズを小さくすると、透過型電子顕微鏡で得られる見本の傾斜角を充分に増加させることが可能となる。
【0045】
検査する見本形状の見本4は、図9aに示すように、標本用先端23に直接配置してもよい。しかしながら、要求される見本の寸法は、しばしば壊れやすく、標本用先端に特別な支持が必要となる。そこで、格子9を配置することが必要とされる(見本が粘着されるために)。その後、標本用先端23の表面40に粘着される。図9bは、格子9を配置し、図9aのように縁を切り落した標本用先端に粘着されている見本(図示していない)を示している。
【0046】
もし望むならば、標本用先端集成体の大きさは、さらに試験用見本または格子が図9aおよび図9bに図示したように標本用先端の両側面に対して平らになるように試験用見本または格子の左右の縁を切り落とすことにより小さくしてもよい。これは、見本が標本用先端に接着される前後に行われる。その代わりとして、見本は取付の前に小さくした大きさ(例えば、直径1.5ミリメートルのディスク)を準備する。そのような準備により、小さく高い分析極片のすき間にプラス/マイナス80%の見本の傾斜を行うことができる。傾斜範囲が増加すると、非常に広い範囲の角度で見本の透過型電子顕微鏡映像が得られ、また電子的な断層X線写真法のような技術で行われたときに、特殊な使用法である。
【0047】
一旦、接着すれば、個々の見本は交換可能な部品として取り扱い、貯えておくことができる。標本用先端23に見本を接着することにより、標本用先端23は有効に標本を扱い、見本4それ自体よりも硬くなって扱いやすくなる。
これは、検査が行われるたびに、見本を正確に再配置することができるので、柔らかい見本を防護し、また透過型電子顕微鏡で得た結果の再生産性を改良することになる。もし望むならば、標本は機械的手段または接着剤用の適切な溶剤に標本用先端をぬらすことより、取り外すことができる。
【0048】
多くの型式の標本用先端は、上述した標本保持部品で使用してもよい。図8では、J形状の標本用先端23aおよびC形状の標本用先端23bが図示されている。2つの標本用先端は、エネルギー分散型分光器(EDS)分析を促進するように構成されている。使用時に標本用先端の範囲は、検出器の路に直接的にならないように、エネルギー分散型分光器が外れる面になる。
【0049】
C形状の標本用先端23bは、ほとんどの配置した格子および見本と組み立て可能とすべきである。J形状の標本用先端23aは、薄い配置した格子および壊れやすい見本用にいくつかのより多くの支持を要求する。特別の型式に適合するための特に薄い見本で使用する十分な円形の開口部またはEDS分析が行われない場合における状況において使用される十分な円形の開口部を含む他の標本用先端の設計は、標本の形状および大きさが直視されている。
交換可能な標本用先端23は、使用時に見本タイプに再利用できるように、また捨てることができるように作られる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】伝統的な透過型電子顕微鏡の働きを図解した略図である。
【図2】図2のaは、透過型電子顕微鏡で分析するために準備する典型的な標本の平面図であり、図2のbは、図2aに示す標本のX−X線からの断面図である。
【図3】図3a、3bおよび3cは、様々な伝統的先端保持部の端部を示している。
【図4】本発明の第2の観点である標本用先端を支持する本発明の一例である標本用先端保持体の組立を示す斜視図である。
【図5】図4に示す標本用先端保持体の組立と標本用先端の平面図である。
【図6】図4および図5に示す標本用先端保持体の組立と標本用先端の平面図である。
【図7】図7aは、図5の拡大部分を示す図であり、図7bは、図7aに示すY−Y線に沿った、図4から図6までに図解した標本用先端保持体の組立の一部と標本用先端の断面図である。
【図8】図8aは、本発明の第2の観点における標本用先端の第一実施例を示す斜視図であり、図8bは、本発明の第2の観点における標本用先端の第二実施例を示す斜視図である。
【図9】図9aは、標本を取付けた標本用先端の斜視図であり、9bは、格子を取付けた標本用先端の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型電子顕微鏡に標本を配置する標本保持部品であって、該標本保持部品は、標本用先端を支持するための先端保持部を具備し、支持軸に実質的に垂直方向に動作するようにして細長い支持部に連結された前記先端保持部と、前記支持部に連結する先端保持部の動作を行なわせるために該支持部に配置する作動器とを具備することを特徴とする標本保持部品。
【請求項2】
前記先端保持部は、前記細長い支持部との間の動作が実質的に直線状であることを特徴とする請求項1記載の標本保持部品。
【請求項3】
前記先端保持部は、前記細長い支持部との間の動作が、前記透過型電子顕微鏡の光学軸に実質的に平行であることを特徴とする請求項1または2記載の標本保持部品。
【請求項4】
前記細長い支持部は、動作方向に伸びる細長い開口または凹部を有し、前記先端保持部は前記細長い開口または凹部とスライドして連動する突起を具備していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の標本保持部品。
【請求項5】
前記細長い開口または凹部は、前記透過型電子顕微鏡の光学軸に実質的に平行方向に伸びていることを特徴とする請求項4記載の標本保持部品。
【請求項6】
前記作動器は、前記先端保持部から離れた位置から操作するのに適していることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の標本保持部品。
【請求項7】
前記先端保持部は、標本を取り外し可能に支持するのに適していることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の標本保持部品。
【請求項8】
前記標本保持部品は、標本を具備していることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の標本保持部品。
【請求項9】
前記先端保持部は、前記標本を取り外し可能に支持するよう締め付け手段を有していることを特徴とする請求項7または8記載の標本保持部品。
【請求項10】
前記先端保持部は、ピボットに連結した2つの部材と、該2つの部材の間に標本の少なくとも一部を締め付けるように、一方に向かって前記2つの部材を動作させるバイアス手段とを具備していることを特徴とする請求項9記載の標本保持部品。
【請求項11】
前記細長い支持部はバレルであり、前記作動器は該バレル内部に伸長していることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の標本保持部品。
【請求項12】
前記作動器は、前記細長い支持部に沿って伸びている回転可能なカム軸を具備し、前記先端保持部の一部を形成するスライドまたは前記先端保持部に連結したスライドに供給するカム従動歯車を連動するように調整し、前記スライドを前記カム軸が回転した時に前記支持軸に実質的に垂直方向に動作するように構成したことを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の標本保持部品。
【請求項13】
前記支持部は、前記カム軸と前記細長い支持部との間に気体の通路を妨げる封止手段を有していることを特徴とする請求項12記載の標本保持部品。
【請求項14】
透過型電子顕微鏡に標本を支持する標本用先端であって、実質的に平らな表面に接着される標本を供給する先端部と、電子が透過する前記標本の下部に位置する切り欠き部とを具備していることを特徴とする標本用先端。
【請求項15】
前記標本は、見本を具備していることを特徴とする請求項14記載の標本用先端。
【請求項16】
前記標本は、配置する格子に接着される見本を具備し、少なくとも平らな表面に前記格子を配置することを特徴とする請求項15記載の標本用先端。
【請求項17】
請求項1乃至13の何れかに記載の標本保持部品であって、前記先端保持部が標本用先端を支持することを特徴とする請求項14乃至16の何れかに記載の標本保持部品。
【請求項18】
標本保持部品が伸びる排気凹部を有する請求項1乃至13の何れかまたは請求項17記載の透過型電子顕微鏡。
【請求項19】
前記排気凹部の外部から操作できる作動手段を有する請求項18記載の透過型電子顕微鏡。
【請求項20】
透過型電子顕微鏡に標本を支持する標本用先端に標本を配置する方法であって、該方法は次のようなステップを具備している。
a)標本用先端の平らな表面の少なくとも一部に、および/または標本の少なくとも一部に粘着物を使用し、
b)前記標本の少なくとも部分的に電子透過部分を通す電子の通路が、前記標本用先端によって中断しないような位置で、該標本用先端における標本を配置し、および
c)接着手段によって前記標本用先端に配置した標本を接着すること。
【請求項21】
前記標本が見本を具備していることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記標本は、接着される見本を配置した格子に具備していることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記標本用先端の平らな表面の少なくとも一部に、および/または標本の少なくとも一部に粘着物を使用する前に、前記配置した格子に前記見本を接着することを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記標本用先端の平らな表面の少なくとも一部に、および/または標本の少なくとも一部に粘着物を使用する前に、または前記接着手段によって標本用先端に配置した標本を接着した後に、前記標本用先端を突き出す少なくとも標本のいくつかの領域を取り除くことを特徴とする請求項20乃至23の何れかに記載の方法。
【請求項25】
前記粘着物が、高真空適合の粘着物であることを特徴とする請求項20乃至24の何れかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−49010(P2006−49010A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2004−225959(P2004−225959)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(504294983)ローパー インダストリーズ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ROPER INDUSTRIES LTD.
【Fターム(参考)】