標的核酸配列の検出方法
【課題】簡便且つ短時間での核酸検出を可能とするLAMP増幅産物、及びLAMP増幅産物中に存在する標的核酸配列の検出方法を提供すること。
【解決手段】両端の相補的配列部分および該相補的配列部分の間に存在するターゲット配列部分を含み、且つハイブリダイゼーションにより二本鎖部分およびそれ以外のループ状一本鎖部分を含んでなるステム・アンド・ループ構造の測定用核酸を準備する工程と、一端が固相基体表面に結合されたプローブ核酸を準備する工程と、前記測定用核酸のターゲット配列部分を前記プローブ核酸にハイブリダイズさせる工程と、前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を検出する工程とを具備し、ハイブリダイズしたときに、前記測定用核酸の二本鎖部分が前記固相表面から離間する方向に伸びるように、前記プローブ核酸および前記ターゲット配列部分の双方における5′→3′の配列の向きを設定するターゲット核酸配列の検出方法。
【解決手段】両端の相補的配列部分および該相補的配列部分の間に存在するターゲット配列部分を含み、且つハイブリダイゼーションにより二本鎖部分およびそれ以外のループ状一本鎖部分を含んでなるステム・アンド・ループ構造の測定用核酸を準備する工程と、一端が固相基体表面に結合されたプローブ核酸を準備する工程と、前記測定用核酸のターゲット配列部分を前記プローブ核酸にハイブリダイズさせる工程と、前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を検出する工程とを具備し、ハイブリダイズしたときに、前記測定用核酸の二本鎖部分が前記固相表面から離間する方向に伸びるように、前記プローブ核酸および前記ターゲット配列部分の双方における5′→3′の配列の向きを設定するターゲット核酸配列の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的核酸配列の検出技術に関し、詳しくはLAMP増幅産物中に存在する標的核酸配列の検出方法並びに標的核酸配列の検出に用いるLAMP増幅産物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感染症の原因菌を特定することは、適切な治療薬を選択するために重要である。現状の微生物検査には培養法と核酸増幅法が使われている。
近年培養法は、検出感度の向上や培養日数の短縮のために更なる改良工夫がなされている。特に、抗原抗体反応を用いたイムノクロマトグラフィーは簡便な識別法として急速に普及してきている(例えば、特許文献1及び2参照。)。しかしながら、依然として、菌の発育に数週間かかることから、医療現場のニーズに対応できているとは言い難い。患者は、判定結果がでるまでの間、誤った治療を受けているケースが少なくない。
【0003】
一方、核酸増幅法は、それぞれの微生物に特異的なプライマーを使用し、増幅の有無を調べることで、菌種あるいは耐性菌を判定する方法である。試料調製も含めて、6−7時間程度で結果がわかり、迅速検査法として大変有用である。また、近年のゲノム解析競争の結果、多くの生物の全遺伝子情報が解析されつつあり、今後、幅広い菌種判定に使用されることが期待される。
【0004】
核酸増幅技術として一般的に知られている方法がPCR法(Polymerase Chain Reaction法 Roche社)である。PCR法は、遺伝子クローニングや構造決定など遺伝子解析ツールとして幅広く使用されている。しかしながら、PCR法においてはサーマルサイクラーのような複雑な温度制御装置が必要なこと、反応時間が2時間以上かかる点が不利である。またPCR法では、万が一誤って相補鎖合成が行われてしまった場合にはその生成物が鋳型となり増幅してしまい、誤った判定をしてしまう可能性がある。実際に、プライマーの末端の1塩基相違のみでは特異的な増幅を制御することは困難である。
【0005】
また、一般的にPCR法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検出する場合、生成される産物が2本鎖であるため、プローブとハイブリダイゼーション反応させる場合に、相補鎖がプローブに対するコンペティターとなりハイブリ効率が低く検出感度が悪いのが問題であった。そこで、ターゲットを1本鎖にするために、相補鎖を分解する、または分離するといった方法がとられているが、いずれも、酵素の使用、磁気ビーズの使用などによる高価格化、操作における煩雑性が課題として残されていた。
【0006】
この問題を解決する遺伝子増幅法として、LAMP法(Loop-mediated isothermal amplification法)が開発された。LAMP法は等温条件下、1時間足らずで遺伝子増幅が達成される。最終産物量もPCR産物と比較し100−1000倍多い。また、6箇所のプライマー領域を設定するためPCR法と比較すると特異性が高いという利点がある(例えば、特許文献3参照)。これらの特徴からLAMP法は微生物・ウィルス、さらには遺伝子変異(例えば、特許文献4参照)などを迅速かつ高感度に検出する技術として、期待されている。
【0007】
現在LAMP法を用いた検査としては、増幅の過程で生成される副産物ピロリン酸Mgの白濁を測定することにより、遺伝子増幅の有無を判定する方法が製品化されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、前記副産物ピロリン酸Mgの白濁を測定する方法では、万が一目的産物以外の増幅が起こってしまった場合の確認方法がない。また複数の標的遺伝子を同時に検出することができないという問題点を有する。
その他、LAMP増幅産物を検出する手法として、インターカレーターを用いるものや光学的特性を利用する方法がある(例えば、特許文献6参照。)。さらに別の方法として、LAMP産物中に存在する1本鎖ループ部分にハイブリダイズするプローブを蛍光標識し、反応液の蛍光偏光度を測定するものや(例えば、特許文献7参照。)、1本鎖ループ部分にハイブリするプライマーの5’末端側に不溶性担体を固定化し、増幅反応に伴う凝集反応を観察するものがある(例えば、特許文献8参照)。
【特許文献1】特開2001−103981号公報 (段落0011−0012)
【特許文献2】特開2002−125695号公報 (段落0002)
【特許文献3】特許第3313358号公報
【特許文献4】特許第2003−159100号公報
【特許文献5】特開2003−174900号公報
【特許文献6】特開2002−186481号公報
【特許文献7】特開2002−272475号公報
【特許文献8】特開2002−345499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
増幅法としてLAMP法を採用した場合には、産物中に1本鎖ループ部分が存在する。LAMP増幅産物を検出する手法として、該1本鎖領域に標的配列を設計する技術が開示されていることは上述の通りであるが(例えば、特許文献7、8参照)、1本鎖領域に標的配列が設けられたLAMP増幅産物と基板上のプローブとのハイブリダイゼーション反応を利用した検出技術については、複雑な構造上の問題も含め不明確な部分は多く、このためLAMP法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検出する技術の確立が切望されているのが実情である。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑み開発されたものであり、簡便且つ短時間での核酸検出を可能とするLAMP増幅産物、及びLAMP増幅産物中に存在する標的核酸配列の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等が前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、LAMP産物に特徴的な複雑な高次構造が、ハイブリダイゼーション反応時においてプローブが結合した基体と物理的な障害を起こす要因となり、その結果ハイブリダイゼーション効率に悪影響を及ぼすことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明により、両端の相補的配列部分および該相補的配列部分の間に存在するターゲット配列部分を含み、且つ前記両端の相補的配列部分のハイブリダイゼーションにより形成された二本鎖部分およびそれ以外のループ状一本鎖部分を含んでなるステム・アンド・ループ構造の測定用核酸を準備する工程と、
一端が固相基体表面に結合され且つ前記ターゲット配列部分に対して相補的な配列を有するプローブ核酸を準備する工程と、
前記測定用核酸と前記プローブ核酸とを反応させることにより、前記測定用核酸のターゲット配列部分を前記プローブ核酸に特異的にハイブリダイズさせる工程と、
前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を検出する工程とを具備し、
前記プローブ核酸および前記ターゲット配列部分がハイブリダイズしたときに、前記測定用核酸の二本鎖部分が前記固相表面から離間する方向に伸びるように、前記プローブ核酸および前記ターゲット配列部分の双方における5′→3′の配列の向きを設定することを特徴とする、ターゲット核酸配列の検出方法が提供される。
【0012】
本発明の一態様において、前記測定用核酸及びプローブ核酸はDNAである。
また、本発明の他の態様において、前記プローブ核酸はDNAチップを構成している。
【0013】
また、本発明の他の態様において、前記測定用核酸はLAMP法により増幅されたLAMP産物であり、該LAMP産物における前記ターゲット配列は、LAMP産物のF1領域とF2領域との間、F2c領域とF1c領域との間、B1領域とB2領域との間、および/またはB2c領域とB1c領域との間に挿入されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を、蛍光ラベルに基づいて検出してもよいし、あるいは二本鎖特異的で且つ電位差を生ずるインターカレータを用いて電気的に検出してもよい。
【0015】
また、本発明により、ターゲット配列を検出するためにLAMP法により増幅されたLAMP産物であって、前記ターゲット配列がLAMP産物のF1領域とF2領域との間(F2領域含む)、F2c領域とF1c領域との間(F2c領域含む)、B1領域とB2領域との間(B2領域含む)、および/またはB2c領域とB1c領域との間(B2c領域含む)に挿入されていることを特徴とするLAMP産物が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ハイブリダイゼーション効率の高いLAMP増幅産物の提供が可能となり、また核酸検出におけるハイブリダイゼーション反応において、一本鎖調製工程を経ることなく、なお且つ複雑な温度制御も不要な、簡便且つ短時間での核酸検出が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0018】
<測定用核酸>
本発明の方法における第一の特徴は、両端の相補的配列部分および該相補的配列部分の間に存在するターゲット配列部分を含み、且つ前記両端の相補的配列部分のハイブリダイゼーションにより形成された二本鎖部分およびそれ以外のループ状一本鎖部分を含んでなるステム・アンド・ループ構造の測定用核酸を対象として、ターゲット核酸配列の検出が行なわれることである。このようなステム・アンド・ループ構造の核酸は、例えば一本鎖DNAまたはRNAが自己ハイブリダイゼーションしたときにも形成されるが、最も典型的な例は、LAMP法による増幅産物として形成される。
【0019】
ここで、LAMP法におけるプライマー設計および得られる増幅産物について、図1および図2を参照して説明する。図1は、検出しようとする二本鎖DNAを示している。従来、LAMP増幅産物においては、ターゲット配列が、増幅産物のステム・アンド・ループ構造の中央に位置するように含まれていた(図2)。このようにターゲット配列を増幅・検出しようとする場合は、その両側に位置する配列に基づいて、合計4種類のプライマー配列(FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマー、B3プライマー)を設定する。FIPプライマーおよびBIPプライマーは、各々二つの領域(FIP=F1c+F2、BIP=B2+B1c)を含んでいる。これらプライマーとして用いられる合計6つの領域を、以下では夫々プライマー領域と称することにする。上記4種類のプライマーを用いてLAMP増幅を行なうと、図1の二本鎖DNAの夫々の鎖から、図2に示すようなダンベル型のステム・アンド・ループ構造の増幅産物が得られる。その増幅機構については説明を省略するが、必要であれば、例えば特開2002−186481号公報(特許文献5)を参照されたい。
【0020】
一方、本発明では、図2に示したような従来のターゲット配列の位置とは異なり、一本鎖のループ部分にターゲット配列が位置するようにプライマーを設計する。即ち、図3に示すように、本発明においては、ターゲット配列(図3ではFPc、FP、BP、BPcの何れか)が、プライマー領域F1とF2との間(F2領域含む)、プライマー領域F2cとF1cとの間(F2c領域含む)、プライマー領域B1とB2との間(B2領域含む)、および/またはプライマー領域B2cとB1cとの間(B2c領域含む)の何れかに位置するように、6つのプライマー領域を設定する。ターゲット配列は、上記それぞれの領域間に形成される一本鎖のループ部分のいずれの部位に位置するように設計されていてもよく、したがって、プライマー領域F1とF2との間のループ部分には、F2領域自体も含まれる。こうして設定された6つのプライマー領域に基づいて4種類のプライマーを作製し、これらプライマーを用いてLAMP増幅を行なうことにより、図4に示すようなLAMP増幅産物の一部を得る。このLAMP増幅産物中においては、ターゲット配列FPc、FP、BP、BPcが増幅産物のダンベル構造における一本鎖ループの中に位置することとなる。一方、プライマー領域F1cとF1、およびB1cとB1は、もともと相補的な配列を有しているので、相互に自己ハイブリダイゼーションを生じて二本鎖を形成することとなる。このように増幅産物中に含まれるターゲット配列は図4に示すような一本鎖の状態のものが存在することから、変性操作を行なうことなく、図示のように各ターゲット配列に対して相補的なプローブ核酸(FP、FPc、BP、BPc)との特異的ハイブリダイゼーションにより検出することができる。特異的ハイブリダイゼーションとは、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphisms:SNPs)または変異が存在する場合、その僅かの違いも検出することが可能であることを意味している。
【0021】
<プローブ核酸>
本発明においては、図4で説明したように、ステム・アンド・ループ構造を有する測定用核酸の一本鎖のループ構造内に含まれるターゲット配列を、これと相補的な配列を有するプローブ核酸を用いて検出する。このプローブ核酸は固相基体表面に固定化されたものであり、典型的にはDNAチップとして構成されたものを用いるが、他のマイクロアレイを構成するプローブを用いてもよい。
【0022】
DNAチップとは、数センチ角のガラスやシリコン基板上に異なる配列のプローブを数十から数十万種類固定化したもので、一度に複数の配列情報を調べることができる。これにより従来、数週間かかっていた遺伝子発現パターンの解析や一塩基多型などの解析を数日で行うことが可能になった。現在は新しい遺伝子の探索、機能の解明、研究支援技術として主に用いられているが、最近になって病気の診断技術としても普及し始めている。
【0023】
DNAチップの代表的なものとしては、AFFYMETRIXの技術が一般的に紹介されている(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 1994, p 5022-5026参照。)。この技術は、蛍光で標識したサンプル遺伝子をチップ上のプローブと反応させ、高感度な蛍光解析装置を使って検出する方式である。また別の検出方法として、電流検出型のDNAチップも開発されている。これは、2本鎖DNAに特異的に反応する挿入剤を添加し、挿入剤から得られる電気化学的な信号を測定する方法である。電気化学的なDNAチップは標識が不要で検出に高価な装置が必要ないことから第二世代のDNAチップとして期待されている(例えば、特開平5−199898号公報参照)。
【0024】
<測定用核酸とプローブとのハイブリダイゼーション反応>
前記測定用核酸は、その中に含まれる一本鎖のターゲット配列と前記プローブ核酸との特異的ハイブリダイゼーション反応により、前記固体表面に結合される。本発明においては、プローブ核酸およびターゲット配列部分がハイブリダイズしたときに、測定用核酸の二本鎖部分が固相表面から離間する方向に伸びるように、プローブ核酸および前記ターゲット配列部分の双方における5′→3′の配列の向きを設定することを、更なる特徴の一つとする(図5(A)参照)。すなわち、かかる特徴は、プローブ核酸およびターゲット配列部分の双方における5′→3′の配列の向きが図5(C)に例示したような向きを有する場合、LAMP産物に特徴的な複雑な高次構造が、プローブが結合した基体と立体障害を起こし(図6(B)参照)、これが要因となってハイブリダイゼーション効率が低下するとの知見に基づき見出されたものであり、プローブ核酸およびターゲット配列部分がハイブリダイズしたときに、測定用核酸の二本鎖部分が固相表面から離間する方向に伸びるようにプローブ核酸およびターゲット配列部分双方における5′→3′の配列の向きを図5(B)に例示したように設定することにより、LAMP産物とプローブ核酸が結合した固相基体との立体障害が回避され(図6(A)参照)、これによりハイブリダイゼーション効率を向上させることを可能としたものである。
【0025】
<プローブ核酸にハイブリダイズした測定用核酸の検出>
本発明において、プローブ核酸にハイブリダイズした測定用核酸の有無を検出する手段は特に限定されるものではなく、例えば、蛍光ラベルに基づいて検出してもよいし、あるいは二本鎖特異的で且つ電位差を生ずるインターカレータを用いて電気的に検出してもよい。
【実施例1】
【0026】
以下に、本発明による核酸検出方法を実施例を用いてより具体的に説明する。
本実施例では、サンプル用核酸としてLAMP増幅産物を製造し、ハイブリダイゼーション反応後、該LAMP増幅産物中に存在する標的核酸を電流検出方式を用いて検出した。LAMP反応は以下に示す2組のプライマーを使用し、N-Acetyltransferase 2 (NAT2) 遺伝子の一部分を増幅させた。
【0027】
(1)合成オリゴヌクレオチド
プライマー1
標的核酸配列がLAMP増幅産物の2本鎖領域(ステム領域)に存在するように設計する。図7に周辺ゲノム配列を示す。
【0028】
NAT F3 Primer : 5’ ACAGAAGAGAGAGGAATCTGGT 3’
NAT FIP Primer: 5’ TGTTTCTTCTTTGGCAGGAGATGAGAA-GGACCAAATCAGGAGAGAGCA 3’
NAT B3 Primer : 5’ GATGAAGCCCACCAAACAGTA 3’
NAT BIP Primer: 5’ ATGAATACATACAGACGTCTCC-CTGGGGTCTGCAAGGAAC 3’。
【0029】
プライマー2
標的核酸配列がLAMP増幅産物の1本鎖領域(ループ領域)に存在するように設計する。図8に周辺ゲノム配列を示す。
【0030】
NAT F3 Primer : 5’ ACAAACAAAGAATTTCTTAATTCTCAT 3’
NAT FIP Primer: 5’ CGTCTGCAGGTATGTATTCATAGACTCAAAAAATATACTTATTTACGCTTGAACC 3’
NAT B3 Primer : 5’ CGACCAGATCTGTATTGTCTT 3’
NAT BIP Primer: 5’ ATAACCACATCATTTTGTTCCTTGCATGAATTTTCTATAGGTGAGGATGA 3’。
【0031】
(2)LAMP反応溶液
LAMP反応溶液は以下の組成とした。
滅菌超純水 1.5μL
Bst DNA ポリメラーゼ 1 μL
バッファー 12.5μL
Tris HCl(pH8.0) 40 mM
KCl 20 mM
MgSO4 16 mM
(NH4)2SO4 20 mM
Tween20 0. 2%
Betaine 1.6 M
DNTP 2.8 mM
F3−プライマー(10μM) 0.5 μL
B3−プライマー(10μM) 0.5 μL
FIP−プライマ(10μM) 4 μL
BIP−プライマ(10μM) 4 μL
テンプレート(purified human genome) 1 μL
合計 25 μL。
【0032】
(3)LAMP法による核酸増幅
温度は58℃、時間は1時間として核酸増幅を行った。この時、テンプレートの代わりに滅菌水を添加したものをnegative controlとした。
【0033】
(4)標的核酸の増幅確認
上記の方法で増幅したLAMP産物を図9に示すようにアガロースゲル電気泳動で確認した。また、目的産物の有無は制限酵素切断により確認した。図9において、レーン1〜7はそれぞれ以下に示すサンプル1〜7に対応する。
【0034】
電気泳動の結果を以下に示す。
1.100bP ladder (TAKARA)
2.Negative control: 二本鎖領域に標的核酸が存在
3.Positive control: 二本鎖領域に標的核酸が存在
4.Negative control: 一本鎖領域に標的核酸が存在
5.Positive control: 一本鎖領域に標的核酸が存在
6.PstI 制限酵素処理:二本鎖領域に標的核酸が存在
7.PstI 制限酵素処理:一本鎖領域に標的核酸が存在。
【0035】
制限酵素による消化を行った結果、理論通りの断片を得ることができた。さらに、未消化でのバンドの殆どが消化後には推定されるバンドへ変化したことから、非特異的な産物はほとんどないことが示唆された。
【0036】
(5)核酸プローブ固定化電極の作製
核酸プローブの塩基配列を以下に示す。
Positive-probe FP: AACCTCGAACAATTG
3’ SH, 5’ SH プローブ 計二本
Positive-probe FPc: CAATTGTTCGAGGTT
3’ SH, 5’ SH プローブ 計二本
N-probe NP: CTGGACGAAGACTGA。
【0037】
FPプローブとFPcプローブは互いに相補的な関係にある。FPプローブおよびFPcプローブについて、それぞれ3´SHおよび5´SH修飾プローブ計4本を検討した。一方、N−プローブは、ネガティブコントロールとして使用したプローブであり、上記4本のプローブとは無関係な配列を有する。
【0038】
この標識プローブを含むプローブ溶液を金電極上にスポットし、1時間静置後、メルカプトヘキサノール溶液に浸し、0.2×SSC溶液で洗浄した。その後、超純水で洗浄、風乾し、プローブ固定化電極とした。電極配置は図10に示した通りである。
【0039】
(6)核酸プローブへのLAMP産物のハイブリダイゼーション
試料核酸は、上記(3)で増幅したLAMP産物を用いた。(4)で作製した核酸プローブ固定化表面を2×SSCの塩を添加したLAMP産物に浸漬し、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。その後、超純水で軽く洗浄した。この電極を挿入剤であるヘキスト33258溶液を50μM含むリン酸緩衝液中に15分間浸漬した後、ヘキスト33258分子の酸化電流応答を測定した。
【0040】
(7)結果
電流測定の結果を、各プローブを固定した電極における電流値増加量として図11に示す。二本鎖部分(ステム部分)に標的配列が存在するLAMP産物では、NP、3´SH FP、3´SH FPc、5´SH FP、および5´SH FPcのすべてにおいてハイブリダイズに由来する電流値増加は見られなかった(図11(A))。これに対し、一本鎖ループ部分に標的核酸が存在するLAMP産物では、NP、3´SH FP、5´SH FPcではハイブリダイズに由来する電流値増加は見られなかったが、3´SH FPcと5´SH FPでは、ハイブリダイズに由来すると推測される電流値増加が見られた(図11(B))。
【0041】
ループ状一本鎖部分に標的核酸が存在する産物で、電流値増加が見られなかった3´SH FPおよび5´SH FPcでは、LAMP産物の一本鎖ループ部分とハイブリダイゼーションする場合、LAMP産物の二本鎖部分が基体に近接する方向に伸びることとなり立体障害を起こし(図5(B)、又は図6(A)参照)、一方電流値増加が見られた3´SH FPcと5´SH FPでは、LAMP産物の二本鎖部分が基体から離間する方向に伸びることとなり立体障害が回避される(図5(C)、又は図6(B)参照)。
【0042】
これらの結果から、まず、LAMP産物をDNAチップで検出するには、標的核酸をループ状一本鎖部分に設計することが必須であることが明らかになった。さらに、ハイブリダイゼーション反応時におけるLAMP産物と基体との立体障害を回避するために、LAMP産物の二本鎖部分が基体表面から離間する方向に伸びるように、プローブ核酸および標的配列部分の双方における5´→3´の配列の向きを設定することが必要であることが明らかとなった。
【実施例2】
【0043】
次に本発明による核酸検出方法の応用例として、標的核酸配列の一塩基変異(Single Nucleotide Polymorphisms:SNPs)を検出した。
【0044】
実施例2では、サンプル用核酸として実施例1と同じくLAMP産物を製造し、ハイブリダイゼーション後、該LAMP産物中に存在する標的核酸配列のSNPsを電流検出方式を用いて検出した。
【0045】
(1)検出に用いたLAMP産物
LAMP産物については、実施例1、(1)合成オリゴヌクレオチド プライマー2を用い増幅させたものと同一のものを使用した。
【0046】
(2)検出に用いたプローブ
核酸プローブの塩基配列を以下に示す。
【0047】
Positive-probe FPc: CAATTGTTCGAGGTT 3’ SH (実施例1で使用したもの)
Positive-probe FPc SNP: CAATTGTTGGAGGTT 3’ SH
Positive-probe FPc 25mer: ATCTTCAATTGTTCGAGGTTCAAGC 3’ SH
Positive-probe FPc 25mer SNP: ATCTTCAATTGTTGGAGGTTCAAGC 3’ SH
N-probe NP: CTGGACGAAGACTGA 3’ SH
FPcとNPは実施例1で使用したものと同一のものである。FPc SNPはFPc配列の中央付近の配列をG→Cに変換したものである。FPc 25merはFPcの上流側、下流側にそれぞれ5塩基ずつ標的核酸配列をのばしたものである。FPc 25mer SNPは、FPc 25mer配列の中央付近の配列をG→Cに変換したものである。上記5本のプローブはすべて3´SH修飾とした。
【0048】
プローブの固定化は、実施例1と同様の方法で行った。電極配置は図12に示した通りである。
【0049】
(3)核酸プローブへのLAMP産物のハイブリダイゼーション
試料核酸は、上記(1)で増幅したLAMP産物を用いた。(2)で作成した核酸プローブ固定化表面を2×SSCの塩を添加したLAMP産物に浸漬し、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。その後、35、40、45℃の0.2×SSCバッファーにそれぞれ40分間浸漬し、その後、超純水で軽く洗浄したものとハイブリダイゼーション後に超純水で軽く洗浄しただけのもの、計4種類の洗浄条件の基板を作成した。この電極を挿入剤であるヘキスト33258溶液を50μM含むリン酸緩衝液中に15分間浸漬した後、ヘキスト33258分子の酸化電流応答を測定した。
【0050】
(4)結果
電流測定の結果を、各プローブを固定化した電極における電流値増加量として図13に示す。FPcとPFcSNPについては、(A)ハイブリ後、超純水で軽く洗浄しただけの基板で、PFcSNPでは電流値増加がみられないが、FPcでは優位な電流値増加が見られている。さらに、(B)ハイブリ後、0.2×SSC溶液で洗浄を35℃、40分行った基板では、FPcとPFcSNP共に電流値増加が見られなくなった。このことから、FPcとPFcSNPは(A)の洗浄条件の場合に一塩基変異を判定できることが明らかになった。
【0051】
標的配列を長くしたFPc25merとPFc25merSNPについては、(C)ハイブリ後、0.2×SSC溶液で洗浄を40℃、40分行った基板では、FPc25mer、PFc25merSNP共に電流値増加が見られているが、(D)ハイブリ後、0.2×SSC溶液で洗浄を45℃、40分行った基板では、PFc25merSNPでは電流値増加がみられないが、FPc25merでは優位な電流値増加が見られている。このことから、FPc25merとPFc25merSNPは(D)の洗浄条件の場合に一塩基変異を判定できることが明らかになった。
【0052】
これらの結果から、プローブの配列の違いによって、ハイブリ、または洗浄条件を適宜選択すること、逆にハイブリ、洗浄条件を定めて、その条件にあった最適プローブを選択することによって一塩基変異を検出できることが明らかになった。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】従来のLAMP法による増幅方法を説明するための模式図。
【図2】従来のLAMP法を用いて得られる増幅産物を説明するための模式図。
【図3】本発明の測定用核酸の製造における増幅方法を説明するための模式図。
【図4】本発明の測定用核酸を説明するための模式図。
【図5】ループ状一本鎖部分に標的配列が存在するLAMP産物と核酸プローブとのハイブリダイゼーション反応を模式的に示した説明図であり、(A)及び(B)はLAMP産物の二本鎖部分が基盤に離間する方向に伸びるようにプローブ核酸および標的配列部分の双方における5´→3´の配列の向きが設定された状態を示し、(C)は該二本鎖部分が基盤に近接する方向に伸びるように同5´→3´の配列の向きが設定された状態を示す。
【図6】ループ状一本鎖部分に標的配列が存在するLAMP産物と核酸プローブとのハイブリダイゼーション反応を模式的に示した説明図であり、(A)はLAMP産物の二本鎖部分が基盤に離間するように伸びている状態を示し、(B)は該二本鎖部分が基盤に近接する方向に伸びている状態を示す。
【図7】二本鎖領域(ステム領域)に標的核酸が存在するように設計したプライマー及び標的配列のNAT遺伝子上の位置を示す図。
【図8】一本鎖領域(ループ領域)に標的核酸が存在するように設計したプライマー及び標的配列のNAT遺伝子上の位置を示す図。
【図9】二本鎖領域(ステム領域)又は一本鎖領域(ループ領域)に標的配列が存在するように設計したLAMP増幅産物及び制限酵素処理をした産物の電気泳動図。
【図10】実施例においてLAMP産物の検出のために用いた電極配置を示す説明図。
【図11】実施例においてLAMP産物を電気的に検出した測定結果を示すグラフであり、(A)は二本鎖部分に標的核酸を含むLAMP産物の測定結果を示すグラフ、(B)は一本鎖ループ部分に標的核酸を含むLAMP産物の測定結果を示すグラフ。
【図12】実施例2においてLAMP産物の一塩基変異検出のために用いた電極配置を示す説明図。
【図13】実施例2においてLAMP産物の一塩基変異を電気的に検出した測定結果を示すグラフであり、(A)はハイブリダイゼーション後、超純水で軽く洗浄した基板の測定結果を示すグラフ、(B)はハイブリダイゼーション後、35℃の洗浄バッファーに40分浸漬した基板の測定結果を示すグラフ、(C)はハイブリダイゼーション後、40℃の洗浄バッファーに40分浸漬した基板の測定結果を示すグラフ、(D)はハイブリダイゼーション後、45℃の洗浄バッファーに40分浸漬した基板の測定結果を示すグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的核酸配列の検出技術に関し、詳しくはLAMP増幅産物中に存在する標的核酸配列の検出方法並びに標的核酸配列の検出に用いるLAMP増幅産物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感染症の原因菌を特定することは、適切な治療薬を選択するために重要である。現状の微生物検査には培養法と核酸増幅法が使われている。
近年培養法は、検出感度の向上や培養日数の短縮のために更なる改良工夫がなされている。特に、抗原抗体反応を用いたイムノクロマトグラフィーは簡便な識別法として急速に普及してきている(例えば、特許文献1及び2参照。)。しかしながら、依然として、菌の発育に数週間かかることから、医療現場のニーズに対応できているとは言い難い。患者は、判定結果がでるまでの間、誤った治療を受けているケースが少なくない。
【0003】
一方、核酸増幅法は、それぞれの微生物に特異的なプライマーを使用し、増幅の有無を調べることで、菌種あるいは耐性菌を判定する方法である。試料調製も含めて、6−7時間程度で結果がわかり、迅速検査法として大変有用である。また、近年のゲノム解析競争の結果、多くの生物の全遺伝子情報が解析されつつあり、今後、幅広い菌種判定に使用されることが期待される。
【0004】
核酸増幅技術として一般的に知られている方法がPCR法(Polymerase Chain Reaction法 Roche社)である。PCR法は、遺伝子クローニングや構造決定など遺伝子解析ツールとして幅広く使用されている。しかしながら、PCR法においてはサーマルサイクラーのような複雑な温度制御装置が必要なこと、反応時間が2時間以上かかる点が不利である。またPCR法では、万が一誤って相補鎖合成が行われてしまった場合にはその生成物が鋳型となり増幅してしまい、誤った判定をしてしまう可能性がある。実際に、プライマーの末端の1塩基相違のみでは特異的な増幅を制御することは困難である。
【0005】
また、一般的にPCR法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検出する場合、生成される産物が2本鎖であるため、プローブとハイブリダイゼーション反応させる場合に、相補鎖がプローブに対するコンペティターとなりハイブリ効率が低く検出感度が悪いのが問題であった。そこで、ターゲットを1本鎖にするために、相補鎖を分解する、または分離するといった方法がとられているが、いずれも、酵素の使用、磁気ビーズの使用などによる高価格化、操作における煩雑性が課題として残されていた。
【0006】
この問題を解決する遺伝子増幅法として、LAMP法(Loop-mediated isothermal amplification法)が開発された。LAMP法は等温条件下、1時間足らずで遺伝子増幅が達成される。最終産物量もPCR産物と比較し100−1000倍多い。また、6箇所のプライマー領域を設定するためPCR法と比較すると特異性が高いという利点がある(例えば、特許文献3参照)。これらの特徴からLAMP法は微生物・ウィルス、さらには遺伝子変異(例えば、特許文献4参照)などを迅速かつ高感度に検出する技術として、期待されている。
【0007】
現在LAMP法を用いた検査としては、増幅の過程で生成される副産物ピロリン酸Mgの白濁を測定することにより、遺伝子増幅の有無を判定する方法が製品化されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、前記副産物ピロリン酸Mgの白濁を測定する方法では、万が一目的産物以外の増幅が起こってしまった場合の確認方法がない。また複数の標的遺伝子を同時に検出することができないという問題点を有する。
その他、LAMP増幅産物を検出する手法として、インターカレーターを用いるものや光学的特性を利用する方法がある(例えば、特許文献6参照。)。さらに別の方法として、LAMP産物中に存在する1本鎖ループ部分にハイブリダイズするプローブを蛍光標識し、反応液の蛍光偏光度を測定するものや(例えば、特許文献7参照。)、1本鎖ループ部分にハイブリするプライマーの5’末端側に不溶性担体を固定化し、増幅反応に伴う凝集反応を観察するものがある(例えば、特許文献8参照)。
【特許文献1】特開2001−103981号公報 (段落0011−0012)
【特許文献2】特開2002−125695号公報 (段落0002)
【特許文献3】特許第3313358号公報
【特許文献4】特許第2003−159100号公報
【特許文献5】特開2003−174900号公報
【特許文献6】特開2002−186481号公報
【特許文献7】特開2002−272475号公報
【特許文献8】特開2002−345499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
増幅法としてLAMP法を採用した場合には、産物中に1本鎖ループ部分が存在する。LAMP増幅産物を検出する手法として、該1本鎖領域に標的配列を設計する技術が開示されていることは上述の通りであるが(例えば、特許文献7、8参照)、1本鎖領域に標的配列が設けられたLAMP増幅産物と基板上のプローブとのハイブリダイゼーション反応を利用した検出技術については、複雑な構造上の問題も含め不明確な部分は多く、このためLAMP法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検出する技術の確立が切望されているのが実情である。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑み開発されたものであり、簡便且つ短時間での核酸検出を可能とするLAMP増幅産物、及びLAMP増幅産物中に存在する標的核酸配列の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等が前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、LAMP産物に特徴的な複雑な高次構造が、ハイブリダイゼーション反応時においてプローブが結合した基体と物理的な障害を起こす要因となり、その結果ハイブリダイゼーション効率に悪影響を及ぼすことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明により、両端の相補的配列部分および該相補的配列部分の間に存在するターゲット配列部分を含み、且つ前記両端の相補的配列部分のハイブリダイゼーションにより形成された二本鎖部分およびそれ以外のループ状一本鎖部分を含んでなるステム・アンド・ループ構造の測定用核酸を準備する工程と、
一端が固相基体表面に結合され且つ前記ターゲット配列部分に対して相補的な配列を有するプローブ核酸を準備する工程と、
前記測定用核酸と前記プローブ核酸とを反応させることにより、前記測定用核酸のターゲット配列部分を前記プローブ核酸に特異的にハイブリダイズさせる工程と、
前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を検出する工程とを具備し、
前記プローブ核酸および前記ターゲット配列部分がハイブリダイズしたときに、前記測定用核酸の二本鎖部分が前記固相表面から離間する方向に伸びるように、前記プローブ核酸および前記ターゲット配列部分の双方における5′→3′の配列の向きを設定することを特徴とする、ターゲット核酸配列の検出方法が提供される。
【0012】
本発明の一態様において、前記測定用核酸及びプローブ核酸はDNAである。
また、本発明の他の態様において、前記プローブ核酸はDNAチップを構成している。
【0013】
また、本発明の他の態様において、前記測定用核酸はLAMP法により増幅されたLAMP産物であり、該LAMP産物における前記ターゲット配列は、LAMP産物のF1領域とF2領域との間、F2c領域とF1c領域との間、B1領域とB2領域との間、および/またはB2c領域とB1c領域との間に挿入されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を、蛍光ラベルに基づいて検出してもよいし、あるいは二本鎖特異的で且つ電位差を生ずるインターカレータを用いて電気的に検出してもよい。
【0015】
また、本発明により、ターゲット配列を検出するためにLAMP法により増幅されたLAMP産物であって、前記ターゲット配列がLAMP産物のF1領域とF2領域との間(F2領域含む)、F2c領域とF1c領域との間(F2c領域含む)、B1領域とB2領域との間(B2領域含む)、および/またはB2c領域とB1c領域との間(B2c領域含む)に挿入されていることを特徴とするLAMP産物が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ハイブリダイゼーション効率の高いLAMP増幅産物の提供が可能となり、また核酸検出におけるハイブリダイゼーション反応において、一本鎖調製工程を経ることなく、なお且つ複雑な温度制御も不要な、簡便且つ短時間での核酸検出が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0018】
<測定用核酸>
本発明の方法における第一の特徴は、両端の相補的配列部分および該相補的配列部分の間に存在するターゲット配列部分を含み、且つ前記両端の相補的配列部分のハイブリダイゼーションにより形成された二本鎖部分およびそれ以外のループ状一本鎖部分を含んでなるステム・アンド・ループ構造の測定用核酸を対象として、ターゲット核酸配列の検出が行なわれることである。このようなステム・アンド・ループ構造の核酸は、例えば一本鎖DNAまたはRNAが自己ハイブリダイゼーションしたときにも形成されるが、最も典型的な例は、LAMP法による増幅産物として形成される。
【0019】
ここで、LAMP法におけるプライマー設計および得られる増幅産物について、図1および図2を参照して説明する。図1は、検出しようとする二本鎖DNAを示している。従来、LAMP増幅産物においては、ターゲット配列が、増幅産物のステム・アンド・ループ構造の中央に位置するように含まれていた(図2)。このようにターゲット配列を増幅・検出しようとする場合は、その両側に位置する配列に基づいて、合計4種類のプライマー配列(FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマー、B3プライマー)を設定する。FIPプライマーおよびBIPプライマーは、各々二つの領域(FIP=F1c+F2、BIP=B2+B1c)を含んでいる。これらプライマーとして用いられる合計6つの領域を、以下では夫々プライマー領域と称することにする。上記4種類のプライマーを用いてLAMP増幅を行なうと、図1の二本鎖DNAの夫々の鎖から、図2に示すようなダンベル型のステム・アンド・ループ構造の増幅産物が得られる。その増幅機構については説明を省略するが、必要であれば、例えば特開2002−186481号公報(特許文献5)を参照されたい。
【0020】
一方、本発明では、図2に示したような従来のターゲット配列の位置とは異なり、一本鎖のループ部分にターゲット配列が位置するようにプライマーを設計する。即ち、図3に示すように、本発明においては、ターゲット配列(図3ではFPc、FP、BP、BPcの何れか)が、プライマー領域F1とF2との間(F2領域含む)、プライマー領域F2cとF1cとの間(F2c領域含む)、プライマー領域B1とB2との間(B2領域含む)、および/またはプライマー領域B2cとB1cとの間(B2c領域含む)の何れかに位置するように、6つのプライマー領域を設定する。ターゲット配列は、上記それぞれの領域間に形成される一本鎖のループ部分のいずれの部位に位置するように設計されていてもよく、したがって、プライマー領域F1とF2との間のループ部分には、F2領域自体も含まれる。こうして設定された6つのプライマー領域に基づいて4種類のプライマーを作製し、これらプライマーを用いてLAMP増幅を行なうことにより、図4に示すようなLAMP増幅産物の一部を得る。このLAMP増幅産物中においては、ターゲット配列FPc、FP、BP、BPcが増幅産物のダンベル構造における一本鎖ループの中に位置することとなる。一方、プライマー領域F1cとF1、およびB1cとB1は、もともと相補的な配列を有しているので、相互に自己ハイブリダイゼーションを生じて二本鎖を形成することとなる。このように増幅産物中に含まれるターゲット配列は図4に示すような一本鎖の状態のものが存在することから、変性操作を行なうことなく、図示のように各ターゲット配列に対して相補的なプローブ核酸(FP、FPc、BP、BPc)との特異的ハイブリダイゼーションにより検出することができる。特異的ハイブリダイゼーションとは、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphisms:SNPs)または変異が存在する場合、その僅かの違いも検出することが可能であることを意味している。
【0021】
<プローブ核酸>
本発明においては、図4で説明したように、ステム・アンド・ループ構造を有する測定用核酸の一本鎖のループ構造内に含まれるターゲット配列を、これと相補的な配列を有するプローブ核酸を用いて検出する。このプローブ核酸は固相基体表面に固定化されたものであり、典型的にはDNAチップとして構成されたものを用いるが、他のマイクロアレイを構成するプローブを用いてもよい。
【0022】
DNAチップとは、数センチ角のガラスやシリコン基板上に異なる配列のプローブを数十から数十万種類固定化したもので、一度に複数の配列情報を調べることができる。これにより従来、数週間かかっていた遺伝子発現パターンの解析や一塩基多型などの解析を数日で行うことが可能になった。現在は新しい遺伝子の探索、機能の解明、研究支援技術として主に用いられているが、最近になって病気の診断技術としても普及し始めている。
【0023】
DNAチップの代表的なものとしては、AFFYMETRIXの技術が一般的に紹介されている(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 1994, p 5022-5026参照。)。この技術は、蛍光で標識したサンプル遺伝子をチップ上のプローブと反応させ、高感度な蛍光解析装置を使って検出する方式である。また別の検出方法として、電流検出型のDNAチップも開発されている。これは、2本鎖DNAに特異的に反応する挿入剤を添加し、挿入剤から得られる電気化学的な信号を測定する方法である。電気化学的なDNAチップは標識が不要で検出に高価な装置が必要ないことから第二世代のDNAチップとして期待されている(例えば、特開平5−199898号公報参照)。
【0024】
<測定用核酸とプローブとのハイブリダイゼーション反応>
前記測定用核酸は、その中に含まれる一本鎖のターゲット配列と前記プローブ核酸との特異的ハイブリダイゼーション反応により、前記固体表面に結合される。本発明においては、プローブ核酸およびターゲット配列部分がハイブリダイズしたときに、測定用核酸の二本鎖部分が固相表面から離間する方向に伸びるように、プローブ核酸および前記ターゲット配列部分の双方における5′→3′の配列の向きを設定することを、更なる特徴の一つとする(図5(A)参照)。すなわち、かかる特徴は、プローブ核酸およびターゲット配列部分の双方における5′→3′の配列の向きが図5(C)に例示したような向きを有する場合、LAMP産物に特徴的な複雑な高次構造が、プローブが結合した基体と立体障害を起こし(図6(B)参照)、これが要因となってハイブリダイゼーション効率が低下するとの知見に基づき見出されたものであり、プローブ核酸およびターゲット配列部分がハイブリダイズしたときに、測定用核酸の二本鎖部分が固相表面から離間する方向に伸びるようにプローブ核酸およびターゲット配列部分双方における5′→3′の配列の向きを図5(B)に例示したように設定することにより、LAMP産物とプローブ核酸が結合した固相基体との立体障害が回避され(図6(A)参照)、これによりハイブリダイゼーション効率を向上させることを可能としたものである。
【0025】
<プローブ核酸にハイブリダイズした測定用核酸の検出>
本発明において、プローブ核酸にハイブリダイズした測定用核酸の有無を検出する手段は特に限定されるものではなく、例えば、蛍光ラベルに基づいて検出してもよいし、あるいは二本鎖特異的で且つ電位差を生ずるインターカレータを用いて電気的に検出してもよい。
【実施例1】
【0026】
以下に、本発明による核酸検出方法を実施例を用いてより具体的に説明する。
本実施例では、サンプル用核酸としてLAMP増幅産物を製造し、ハイブリダイゼーション反応後、該LAMP増幅産物中に存在する標的核酸を電流検出方式を用いて検出した。LAMP反応は以下に示す2組のプライマーを使用し、N-Acetyltransferase 2 (NAT2) 遺伝子の一部分を増幅させた。
【0027】
(1)合成オリゴヌクレオチド
プライマー1
標的核酸配列がLAMP増幅産物の2本鎖領域(ステム領域)に存在するように設計する。図7に周辺ゲノム配列を示す。
【0028】
NAT F3 Primer : 5’ ACAGAAGAGAGAGGAATCTGGT 3’
NAT FIP Primer: 5’ TGTTTCTTCTTTGGCAGGAGATGAGAA-GGACCAAATCAGGAGAGAGCA 3’
NAT B3 Primer : 5’ GATGAAGCCCACCAAACAGTA 3’
NAT BIP Primer: 5’ ATGAATACATACAGACGTCTCC-CTGGGGTCTGCAAGGAAC 3’。
【0029】
プライマー2
標的核酸配列がLAMP増幅産物の1本鎖領域(ループ領域)に存在するように設計する。図8に周辺ゲノム配列を示す。
【0030】
NAT F3 Primer : 5’ ACAAACAAAGAATTTCTTAATTCTCAT 3’
NAT FIP Primer: 5’ CGTCTGCAGGTATGTATTCATAGACTCAAAAAATATACTTATTTACGCTTGAACC 3’
NAT B3 Primer : 5’ CGACCAGATCTGTATTGTCTT 3’
NAT BIP Primer: 5’ ATAACCACATCATTTTGTTCCTTGCATGAATTTTCTATAGGTGAGGATGA 3’。
【0031】
(2)LAMP反応溶液
LAMP反応溶液は以下の組成とした。
滅菌超純水 1.5μL
Bst DNA ポリメラーゼ 1 μL
バッファー 12.5μL
Tris HCl(pH8.0) 40 mM
KCl 20 mM
MgSO4 16 mM
(NH4)2SO4 20 mM
Tween20 0. 2%
Betaine 1.6 M
DNTP 2.8 mM
F3−プライマー(10μM) 0.5 μL
B3−プライマー(10μM) 0.5 μL
FIP−プライマ(10μM) 4 μL
BIP−プライマ(10μM) 4 μL
テンプレート(purified human genome) 1 μL
合計 25 μL。
【0032】
(3)LAMP法による核酸増幅
温度は58℃、時間は1時間として核酸増幅を行った。この時、テンプレートの代わりに滅菌水を添加したものをnegative controlとした。
【0033】
(4)標的核酸の増幅確認
上記の方法で増幅したLAMP産物を図9に示すようにアガロースゲル電気泳動で確認した。また、目的産物の有無は制限酵素切断により確認した。図9において、レーン1〜7はそれぞれ以下に示すサンプル1〜7に対応する。
【0034】
電気泳動の結果を以下に示す。
1.100bP ladder (TAKARA)
2.Negative control: 二本鎖領域に標的核酸が存在
3.Positive control: 二本鎖領域に標的核酸が存在
4.Negative control: 一本鎖領域に標的核酸が存在
5.Positive control: 一本鎖領域に標的核酸が存在
6.PstI 制限酵素処理:二本鎖領域に標的核酸が存在
7.PstI 制限酵素処理:一本鎖領域に標的核酸が存在。
【0035】
制限酵素による消化を行った結果、理論通りの断片を得ることができた。さらに、未消化でのバンドの殆どが消化後には推定されるバンドへ変化したことから、非特異的な産物はほとんどないことが示唆された。
【0036】
(5)核酸プローブ固定化電極の作製
核酸プローブの塩基配列を以下に示す。
Positive-probe FP: AACCTCGAACAATTG
3’ SH, 5’ SH プローブ 計二本
Positive-probe FPc: CAATTGTTCGAGGTT
3’ SH, 5’ SH プローブ 計二本
N-probe NP: CTGGACGAAGACTGA。
【0037】
FPプローブとFPcプローブは互いに相補的な関係にある。FPプローブおよびFPcプローブについて、それぞれ3´SHおよび5´SH修飾プローブ計4本を検討した。一方、N−プローブは、ネガティブコントロールとして使用したプローブであり、上記4本のプローブとは無関係な配列を有する。
【0038】
この標識プローブを含むプローブ溶液を金電極上にスポットし、1時間静置後、メルカプトヘキサノール溶液に浸し、0.2×SSC溶液で洗浄した。その後、超純水で洗浄、風乾し、プローブ固定化電極とした。電極配置は図10に示した通りである。
【0039】
(6)核酸プローブへのLAMP産物のハイブリダイゼーション
試料核酸は、上記(3)で増幅したLAMP産物を用いた。(4)で作製した核酸プローブ固定化表面を2×SSCの塩を添加したLAMP産物に浸漬し、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。その後、超純水で軽く洗浄した。この電極を挿入剤であるヘキスト33258溶液を50μM含むリン酸緩衝液中に15分間浸漬した後、ヘキスト33258分子の酸化電流応答を測定した。
【0040】
(7)結果
電流測定の結果を、各プローブを固定した電極における電流値増加量として図11に示す。二本鎖部分(ステム部分)に標的配列が存在するLAMP産物では、NP、3´SH FP、3´SH FPc、5´SH FP、および5´SH FPcのすべてにおいてハイブリダイズに由来する電流値増加は見られなかった(図11(A))。これに対し、一本鎖ループ部分に標的核酸が存在するLAMP産物では、NP、3´SH FP、5´SH FPcではハイブリダイズに由来する電流値増加は見られなかったが、3´SH FPcと5´SH FPでは、ハイブリダイズに由来すると推測される電流値増加が見られた(図11(B))。
【0041】
ループ状一本鎖部分に標的核酸が存在する産物で、電流値増加が見られなかった3´SH FPおよび5´SH FPcでは、LAMP産物の一本鎖ループ部分とハイブリダイゼーションする場合、LAMP産物の二本鎖部分が基体に近接する方向に伸びることとなり立体障害を起こし(図5(B)、又は図6(A)参照)、一方電流値増加が見られた3´SH FPcと5´SH FPでは、LAMP産物の二本鎖部分が基体から離間する方向に伸びることとなり立体障害が回避される(図5(C)、又は図6(B)参照)。
【0042】
これらの結果から、まず、LAMP産物をDNAチップで検出するには、標的核酸をループ状一本鎖部分に設計することが必須であることが明らかになった。さらに、ハイブリダイゼーション反応時におけるLAMP産物と基体との立体障害を回避するために、LAMP産物の二本鎖部分が基体表面から離間する方向に伸びるように、プローブ核酸および標的配列部分の双方における5´→3´の配列の向きを設定することが必要であることが明らかとなった。
【実施例2】
【0043】
次に本発明による核酸検出方法の応用例として、標的核酸配列の一塩基変異(Single Nucleotide Polymorphisms:SNPs)を検出した。
【0044】
実施例2では、サンプル用核酸として実施例1と同じくLAMP産物を製造し、ハイブリダイゼーション後、該LAMP産物中に存在する標的核酸配列のSNPsを電流検出方式を用いて検出した。
【0045】
(1)検出に用いたLAMP産物
LAMP産物については、実施例1、(1)合成オリゴヌクレオチド プライマー2を用い増幅させたものと同一のものを使用した。
【0046】
(2)検出に用いたプローブ
核酸プローブの塩基配列を以下に示す。
【0047】
Positive-probe FPc: CAATTGTTCGAGGTT 3’ SH (実施例1で使用したもの)
Positive-probe FPc SNP: CAATTGTTGGAGGTT 3’ SH
Positive-probe FPc 25mer: ATCTTCAATTGTTCGAGGTTCAAGC 3’ SH
Positive-probe FPc 25mer SNP: ATCTTCAATTGTTGGAGGTTCAAGC 3’ SH
N-probe NP: CTGGACGAAGACTGA 3’ SH
FPcとNPは実施例1で使用したものと同一のものである。FPc SNPはFPc配列の中央付近の配列をG→Cに変換したものである。FPc 25merはFPcの上流側、下流側にそれぞれ5塩基ずつ標的核酸配列をのばしたものである。FPc 25mer SNPは、FPc 25mer配列の中央付近の配列をG→Cに変換したものである。上記5本のプローブはすべて3´SH修飾とした。
【0048】
プローブの固定化は、実施例1と同様の方法で行った。電極配置は図12に示した通りである。
【0049】
(3)核酸プローブへのLAMP産物のハイブリダイゼーション
試料核酸は、上記(1)で増幅したLAMP産物を用いた。(2)で作成した核酸プローブ固定化表面を2×SSCの塩を添加したLAMP産物に浸漬し、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。その後、35、40、45℃の0.2×SSCバッファーにそれぞれ40分間浸漬し、その後、超純水で軽く洗浄したものとハイブリダイゼーション後に超純水で軽く洗浄しただけのもの、計4種類の洗浄条件の基板を作成した。この電極を挿入剤であるヘキスト33258溶液を50μM含むリン酸緩衝液中に15分間浸漬した後、ヘキスト33258分子の酸化電流応答を測定した。
【0050】
(4)結果
電流測定の結果を、各プローブを固定化した電極における電流値増加量として図13に示す。FPcとPFcSNPについては、(A)ハイブリ後、超純水で軽く洗浄しただけの基板で、PFcSNPでは電流値増加がみられないが、FPcでは優位な電流値増加が見られている。さらに、(B)ハイブリ後、0.2×SSC溶液で洗浄を35℃、40分行った基板では、FPcとPFcSNP共に電流値増加が見られなくなった。このことから、FPcとPFcSNPは(A)の洗浄条件の場合に一塩基変異を判定できることが明らかになった。
【0051】
標的配列を長くしたFPc25merとPFc25merSNPについては、(C)ハイブリ後、0.2×SSC溶液で洗浄を40℃、40分行った基板では、FPc25mer、PFc25merSNP共に電流値増加が見られているが、(D)ハイブリ後、0.2×SSC溶液で洗浄を45℃、40分行った基板では、PFc25merSNPでは電流値増加がみられないが、FPc25merでは優位な電流値増加が見られている。このことから、FPc25merとPFc25merSNPは(D)の洗浄条件の場合に一塩基変異を判定できることが明らかになった。
【0052】
これらの結果から、プローブの配列の違いによって、ハイブリ、または洗浄条件を適宜選択すること、逆にハイブリ、洗浄条件を定めて、その条件にあった最適プローブを選択することによって一塩基変異を検出できることが明らかになった。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】従来のLAMP法による増幅方法を説明するための模式図。
【図2】従来のLAMP法を用いて得られる増幅産物を説明するための模式図。
【図3】本発明の測定用核酸の製造における増幅方法を説明するための模式図。
【図4】本発明の測定用核酸を説明するための模式図。
【図5】ループ状一本鎖部分に標的配列が存在するLAMP産物と核酸プローブとのハイブリダイゼーション反応を模式的に示した説明図であり、(A)及び(B)はLAMP産物の二本鎖部分が基盤に離間する方向に伸びるようにプローブ核酸および標的配列部分の双方における5´→3´の配列の向きが設定された状態を示し、(C)は該二本鎖部分が基盤に近接する方向に伸びるように同5´→3´の配列の向きが設定された状態を示す。
【図6】ループ状一本鎖部分に標的配列が存在するLAMP産物と核酸プローブとのハイブリダイゼーション反応を模式的に示した説明図であり、(A)はLAMP産物の二本鎖部分が基盤に離間するように伸びている状態を示し、(B)は該二本鎖部分が基盤に近接する方向に伸びている状態を示す。
【図7】二本鎖領域(ステム領域)に標的核酸が存在するように設計したプライマー及び標的配列のNAT遺伝子上の位置を示す図。
【図8】一本鎖領域(ループ領域)に標的核酸が存在するように設計したプライマー及び標的配列のNAT遺伝子上の位置を示す図。
【図9】二本鎖領域(ステム領域)又は一本鎖領域(ループ領域)に標的配列が存在するように設計したLAMP増幅産物及び制限酵素処理をした産物の電気泳動図。
【図10】実施例においてLAMP産物の検出のために用いた電極配置を示す説明図。
【図11】実施例においてLAMP産物を電気的に検出した測定結果を示すグラフであり、(A)は二本鎖部分に標的核酸を含むLAMP産物の測定結果を示すグラフ、(B)は一本鎖ループ部分に標的核酸を含むLAMP産物の測定結果を示すグラフ。
【図12】実施例2においてLAMP産物の一塩基変異検出のために用いた電極配置を示す説明図。
【図13】実施例2においてLAMP産物の一塩基変異を電気的に検出した測定結果を示すグラフであり、(A)はハイブリダイゼーション後、超純水で軽く洗浄した基板の測定結果を示すグラフ、(B)はハイブリダイゼーション後、35℃の洗浄バッファーに40分浸漬した基板の測定結果を示すグラフ、(C)はハイブリダイゼーション後、40℃の洗浄バッファーに40分浸漬した基板の測定結果を示すグラフ、(D)はハイブリダイゼーション後、45℃の洗浄バッファーに40分浸漬した基板の測定結果を示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端の相補的配列部分および該相補的配列部分の間に存在するターゲット配列部分を含み、且つ前記両端の相補的配列部分のハイブリダイゼーションにより形成された二本鎖部分およびそれ以外のループ状一本鎖部分を含んでなるステム・アンド・ループ構造の測定用核酸を準備する工程と、
一端が固相基体表面に結合され且つ前記ターゲット配列部分に対して相補的な配列を有するプローブ核酸を準備する工程と、
前記測定用核酸と前記プローブ核酸とを反応させることにより、前記測定用核酸のターゲット配列部分を前記プローブ核酸に特異的にハイブリダイズさせる工程と、
前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を検出する工程とを具備し、
前記プローブ核酸および前記ターゲット配列部分がハイブリダイズしたときに、前記測定用核酸の二本鎖部分が前記固相表面から離間する方向に伸びるように、前記プローブ核酸および前記ターゲット配列部分の双方における5′→3′の配列の向きを設定することを特徴とする、ターゲット核酸配列の検出方法。
【請求項2】
前記測定用核酸およびプローブ核酸がDNAであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プローブ核酸は、DNAチップを構成していることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定用核酸はLAMP法により増幅されたLAMP産物であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記LAMP産物における前記ターゲット配列は、LAMP産物のF1領域とF2領域との間、F2c領域とF1c領域との間、B1領域とB2領域との間、および/またはB2c領域とB1c領域との間に挿入されていることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を、蛍光ラベルに基づいて検出することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を、二本鎖特異的で且つ電位差を生ずるインターカレータを用いて電気的に検出することを特徴とする、請求項2乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ターゲット配列を検出するためにLAMP法により増幅されたLAMP産物であって、前記ターゲット配列がLAMP産物のF1領域とF2領域との間(F2領域含む)、F2c領域とF1c領域との間(F2c領域含む)、B1領域とB2領域との間(B2領域含む)、および/またはB2c領域とB1c領域との間(B2c領域含む)に挿入されていることを特徴とするLAMP産物。
【請求項1】
両端の相補的配列部分および該相補的配列部分の間に存在するターゲット配列部分を含み、且つ前記両端の相補的配列部分のハイブリダイゼーションにより形成された二本鎖部分およびそれ以外のループ状一本鎖部分を含んでなるステム・アンド・ループ構造の測定用核酸を準備する工程と、
一端が固相基体表面に結合され且つ前記ターゲット配列部分に対して相補的な配列を有するプローブ核酸を準備する工程と、
前記測定用核酸と前記プローブ核酸とを反応させることにより、前記測定用核酸のターゲット配列部分を前記プローブ核酸に特異的にハイブリダイズさせる工程と、
前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を検出する工程とを具備し、
前記プローブ核酸および前記ターゲット配列部分がハイブリダイズしたときに、前記測定用核酸の二本鎖部分が前記固相表面から離間する方向に伸びるように、前記プローブ核酸および前記ターゲット配列部分の双方における5′→3′の配列の向きを設定することを特徴とする、ターゲット核酸配列の検出方法。
【請求項2】
前記測定用核酸およびプローブ核酸がDNAであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プローブ核酸は、DNAチップを構成していることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定用核酸はLAMP法により増幅されたLAMP産物であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記LAMP産物における前記ターゲット配列は、LAMP産物のF1領域とF2領域との間、F2c領域とF1c領域との間、B1領域とB2領域との間、および/またはB2c領域とB1c領域との間に挿入されていることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を、蛍光ラベルに基づいて検出することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記プローブ核酸にハイブリダイズした前記測定用核酸の有無を、二本鎖特異的で且つ電位差を生ずるインターカレータを用いて電気的に検出することを特徴とする、請求項2乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ターゲット配列を検出するためにLAMP法により増幅されたLAMP産物であって、前記ターゲット配列がLAMP産物のF1領域とF2領域との間(F2領域含む)、F2c領域とF1c領域との間(F2c領域含む)、B1領域とB2領域との間(B2領域含む)、および/またはB2c領域とB1c領域との間(B2c領域含む)に挿入されていることを特徴とするLAMP産物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−259510(P2008−259510A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119103(P2008−119103)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【分割の表示】特願2004−93662(P2004−93662)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【分割の表示】特願2004−93662(P2004−93662)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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