説明

標識板

【課題】逆光時における文字図柄等の視認性、判読性をさらに向上させることができ、製造時の加工作業性を改善することが可能な標識板を提供する。
【解決手段】標識板1は、多数の孔を設けた多孔板4の前面に、透光性の白色反射シート3を、表示する文字図柄及びその周辺にのみ貼着し、白色反射シート3の前面を含む多孔板4の前面に透光性の有彩色反射シート2を貼着して構成される。有彩色反射シート2には、表示する文字図柄を切り抜き形成した切抜き部5が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路標識、公共施設等の各種情報を表示する標識装置の標識板に関し、特に、逆光時の文字図柄の視認性、判読性を向上させた標識板に関する。
【背景技術】
【0002】
朝日や夕日の方向に道路標識等を見る場合、道路標識等は朝日や夕日の逆光状態で視認しなければならず、通常の人には、逆光により、道路標識等の周辺が眩しく見え、情報を表示している標識板面が暗く見えるため、道路標識等の視認性、判読性が著しく低下する。
【0003】
そこで、従来、下記特許文献1,2,3などにおいて、逆光時の視認性を向上させた標識板が提案されている。
【0004】
このうち、特許文献1の標識板は、透明アクリル板等からなる透光板の前面に、文字図柄を表示する反射シートを貼着し、透光板の裏面に、間隔をおいてパンチングメタルを配置して構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3586171号公報
【特許文献2】特許第3662602号公報
【特許文献3】特許第3875903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この標識板は、パンチングメタルの孔または透光板を透過した逆光時の光を、バックライトとして使用し、文字図柄を表す反射シートを、逆光のバックライト効果を利用して表示する構造であり、夜間、通常の反射式標識と同様に、車両の前照灯などの光を反射シートの前面で受けて反射させ、反射シートの文字図柄を反射光により表示するようにしている。
【0007】
しかし、この特許文献1の標識板は、その前面全体が反射シートの反射面となって、夜間には、再帰反射により見やすく表示されるものの、文字図柄を表す反射シートは、その文字図柄部分のみが透光性を有し、他の反射シートの部分は全て非透光性の部分となっている。このため、逆光の際、透光する文字図柄部分とそれ以外の非透光性部分(暗く見える部分)との輝度比が高くなり、ハレーションのような現象が生じやすい。このため、逆光時、特に文字図柄が複雑な形状の場合には、文字図柄が認識しにくくなる課題があった。
【0008】
一方、上記特許文献2の標識板は、板の文字図柄の部分に多数の孔を穿設し、或いは板の文字図柄以外の部分に多数の孔を穿設して、文字図柄を表示するように構成される。このため、特許文献2の標識板の場合、逆光の際、ドライバなどの観者は多数の孔を通して逆光の光を見ることになり、観者の瞳孔は、逆光を受けたとき、著しく閉じるように作用する。また、逆光を受けながら標識板を見る観者は、多数の孔から直接太陽光を見ることとなり、これより、目に残像が残り、さらにハレーションが生じて、標識の視認性、判読性が低下する課題がある。
【0009】
一方、上記特許文献3の標識板は、アルミ板の前面に背景部分として緑色反射シートを貼着する一方、白色反射シートから文字図形部分を切り抜いたものをその緑色反射シートの前面に貼着し、さらに、文字図形部分の白色反射シートには、字画に沿ってスリットを形成して構成される。
【0010】
しかし、この特許文献3の標識板は、それを製造する場合、白色反射シートから文字図形部分を切り抜いた部材を、緑色反射シートの前面に貼着するという煩雑で熟練技術を必要とする作業を行うことになるため、製造工程における作業性が非常に悪く、多くの作業工数、加工時間、及び熟練技術を必要とするなどの課題があった。
【0011】
また、特許文献3の標識板は、アルミ板に文字図柄を表す反射シートを貼着した後、そこに多数の孔を穿設する加工を行って、標識板を製造することもできるが、この場合には、多数孔の穿設加工時に文字図柄を表す反射シートの表示面を汚し或いは傷つけやすいという不具合がある。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、逆光時における文字図柄等の視認性、判読性をさらに向上させ、製造時の加工作業性を改善することが可能な標識板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る請求項1の標識板は、多数の孔を設けた多孔板の前面に、透光性の白色反射シートを、表示する文字図柄及びその周辺にのみ重ね合わせて貼着し、該白色反射シートの前面を含む該多孔板の前面に透光性の有彩色反射シートを重ね合わせて貼着し、該有彩色反射シートには、表示する該文字図柄を切り抜き形成したことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、夜間時、有彩色反射シート及び文字図柄の白色反射シートが正面から光を受けて、再帰反射し、有彩色の下地上に白色の文字図柄を明瞭に表示する。また、逆光の際、多孔板の孔を通過して透光性のある白色反射シート及び有彩色反射シートを光が通過して表示面が明るく表示され、特に、透光性の白色反射シートのみを光が透過する文字図柄の部分が最も明るく表示され、次に(2番目に)明るい部分として素地となる有彩色反射シートの部分が表示され、文字図柄の周囲に重ね合わせた、白色反射シートと有彩色反射シートの重なり部分が3番目に明るく表示されて、板面の輝度比を小さくし、反射シートの色のコントラストにより、目に優しく表示される。
【0015】
このため、文字図柄を表示する部分に明暗の強いコントラストは生じず、ハレーションの発生を防ぎ、目に優しい状態で、文字図柄を表示することができ、標識の視認性、判読性を向上させることができる。さらに、製造時の反射シートの加工は、有彩色反射シートに、表示する文字図柄を切り抜き形成するのみとなり、加工工程数を少なくし、製造時の作業性を向上させることができる。また、白色反射シートは表示する文字図柄及びその周辺のみに配されるので、高価な白色反射シートの使用量を少なくすることができる。
【0016】
また、本発明に係る請求項2の標識板は、多数の孔を設けた多孔板の前面全体に、透光性の白色反射シートを貼着し、該白色反射シートの前面全体に透光性の有彩色反射シートを重ね合わせて貼着し、該有彩色反射シートには、表示する該文字図柄を切り抜き形成したことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、標識板の前面全体に有彩色反射シート及び文字図柄の白色反射シートが配置されるので、夜間時、有彩色反射シート及び文字図柄の白色反射シートが正面から光を受けたとき、良好に再帰反射し、反射シートを切り抜いた従来のものに比べ、有彩色の下地上に白色の文字図柄を明瞭に表示することができる。
【0018】
また、逆光の際、多孔板の孔を通過して光が透光性の白色反射シート及び有彩色反射シートを通過して標識が表示され、特に、透光性の白色反射シートのみを光が透過する文字図柄の部分が明るく表示され、下地の有彩色反射シートと白色反射シートが重なる部分はそれより暗く表示される。つまり、逆光の光は、共に多孔板を通過し、透光性の白色反射シートを通して、または透光性の白色反射シートと有彩色反射シートを通して、観者の目に届くため、目に優しく表示される。
【0019】
このため、文字図柄を表示する部分に、輝度差による強いコントラストに起因したハレーションは発生せず、従来の標識板に比べ、標識板面の色度差及び輝度差を小さくして、目に優しい状態で、文字図柄を表示することができ、標識の視認性、判読性を向上させることができる。さらに、製造時の反射シートの加工は、有彩色反射シートに、表示する文字図柄を切り抜き形成するのみとなり、加工工程数を少なくし、製造時の作業性を向上させることができる。
【0020】
ここで、上記多孔板の裏面には透光性の保護シートを貼着することが好ましい。これにより、多孔板の孔を通して標識板の内部に塵等の異物が侵入することを防止することができる。
【0021】
また、上記多孔板には、アルミニウム板の全面に多数の孔を穿設したパンチングメタルを使用することができる。また、表示される文字図柄及びその周辺部にのみ多数の孔を穿設したアルミニウム板を、多孔板として、使用することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の標識板によれば、逆光時における文字図柄等の視認性、判読性をさらに向上させることができ、製造時の加工作業性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態を示す標識板の斜視図である。
【図2】同標識板の分解斜視図である。
【図3】同標識板のIII-III断面図である。
【図4】同標識板の分解断面図である。
【図5】他の実施形態の標識板の斜視図である。
【図6】他の実施形態の標識板の分解斜視図である。
【図7】同標識板のVIII-VIII断面図である。
【図8】同標識板の分解断面図である。
【図9】さらに他の実施形態の標識板の正面図である。
【図10】同標識板の分解斜視図である。
【図11】さらに他の実施形態の標識板の分解斜視図である。
【図12】標識板を取り付ける標識用支柱の正面図(a)とその右側面図(b)である。
【図13】ビームとTバーを連結固定した箇所の拡大右側面図(a)とそのB−B断面図である。
【図14】リブとTバーを固定する係止爪の側面図(a)、そのB−B断面図(b)、そのC−C断面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4は、道路情報、公共施設等の各種情報を、標識用支柱30に取り付けて表示する標識装置の標識板1を示している。なお、実施形態を説明する図において、標識板1の各部材の厚さは、図面の見易さから、相対的に厚く、誇張して図示されており、実際の標識板1の厚さは、正面の大きさに比して相対的により薄く形成される。
【0025】
この標識板1は、多数の孔を設けた多孔板4の前面に、透光性の白色反射シート3を、表示する文字図柄及びその周辺にのみ重ね合わせ、白色反射シート3の前面を含む多孔板4の前面に透光性の有彩色反射シート2を重ね合わせ、有彩色反射シート2には、表示する文字図柄を切り抜き形成した切抜き部5を設けて構成される。
【0026】
標識板1の基板となる多孔板4は、例えばアルミニウムのパンチングメタルを長方形に裁断して構成される。多孔板4の厚さは例えば約2〜5mmであり、背面に補強用のリブ34(図12)が水平方向に溶接されている。リブ34は、例えば、アルミニウム等の金属材料を用いて、C型チャンネル材にL形アングル材を一体成形した同一断面の長尺部材として形成され、L形アングル材の部分が多孔板4の背面に溶接される。リブ34は、多孔板4の背面に、水平方向と平行に所定の間隔をおいて溶接され、多孔板4を補強し、後述のように、標識用支柱30に取り付ける際の取付部を構成する。多孔板4に形成された多数の孔4aは所定の間隔で並設される。なお、多孔板としては、上記のパンチングメタルの他、文字図柄に対応した部分にのみ多数の孔を穿設したアルミニウム板を、使用してもよい。
【0027】
多孔板4の前面に貼着される白色反射シート3は、前面から照射された光を再帰性反射する一方、背面(後面)からの光をある程度透過させる、透光性を有するプリズム型反射シートとして構成される。白色反射シート3の前面は、厚さ約0.5〜0.75mmのアクリル系PMMA等の透明プラスチック板からなり、プラスチック板の内側面には、ポリカーカーボネート樹脂のプリズム面が形成される。このプリズム面と背面のカバーシートによって、白色反射シート3は、前面から入射した光を入射方向と同じ方向に反射させる再帰性を有したプリズム型反射シートを構成している。
【0028】
白色のカバーシートは、プリズム面を形成した硬質透明プラスチック板の背面側に空間を介して貼着される。カバーシートは、薄い白色のプラスチック製または紙製シートからなり、背面からの透光性を有する白色シートである。これにより、白色反射シート3は、正面視で白色の外観を呈し、背面からの透光性を有する反射シートとなっている。
【0029】
この白色反射シート3は、表示する文字図柄及びその周辺のみに配置されて多孔板4の正面(前面)に貼着され、文字図柄(切抜き部5)の白色を表示する。なお、白色反射シート3の裏面(背面)には、予め粘着材層が形成されており、製造工程において、多孔板4の前面に白色反射シート3を貼着する場合、両者を重ね合わせ、常温で圧着し、或いは熱を加えて熱圧着される。
【0030】
さらに、白色反射シート3を貼着した多孔板4の前面には、多孔板4と同じ形状大きさの有彩色反射シート2が、その前面全体を覆うように貼着される。この有彩色反射シート2は、基本的には、上記白色反射シート3と、色を除き同様な構造となっている。
【0031】
すなわち、有彩色反射シート2は、背面(後面)からの光をある程度透過させる、透光性を有する着色された反射シートであり、前方から照射される光の再帰性を有する着色半透明プラスチック板の背面に、透光性のカバーシートを貼着して構成される。有彩色反射シート2の前面部を形成するプラスチック板は、厚さ約0.5〜0.75mmの硬質の着色半透明プラスチック板から形成され、透光性を有した有彩色に着色されている。有彩色反射シート2つまりその着色半透明プラスチック板は、有彩色として緑色または青色に着色され、緑色はダークグリーン、青色はダークブルーを含む概念である。また、緑色または青色の他、文字図柄を表示する地色として見やすい色であれば、任意の色に着色することができる。
【0032】
有彩色反射シート2の着色半透明プラスチック板の内側面には、プリズム面が形成され、このプリズム面と背面のカバーシートによって、前面から入射した光を入射方向と同じ方向に反射させる再帰性反射面を形成している。
【0033】
白色のカバーシートは、プリズム面を形成した半透明プラスチック板の背面側に、空間を介して貼着されている。カバーシートは薄い白色のプラスチック製または紙製シートで、背面からの透光性を有するシートとなっており、これにより、有彩色反射シート2は、正面視で有彩色の外観を呈し背面からの透光性を有する構造となっている。
【0034】
有彩色反射シート2は、図1のように標識板1の正面側に貼着され、有彩色反射シート2には、表示される文字図柄が切抜き部5として切り抜き形成される。有彩色反射シート2は、上記のように、文字図柄の位置に白色反射シート3を貼着した多孔板4の前面に貼着される。これにより、有彩色反射シート2の切抜き部5内に白色反射シート3が位置し、正面視で、文字図柄の切抜き部5が有彩色の地に白色で表示されるようになっている。
【0035】
有彩色反射シート2の裏面(背面)には、予め粘着材層が形成されており、製造工程において、白色反射シート3を貼着した多孔板4の前面に、白色反射シート3を覆うように、有彩色反射シート2は、常温で圧着され、或いは熱を加えて熱圧着される。
【0036】
さらに、多孔板4の背面には、透光性の保護シート6が貼着される。保護シート6は例えば薄い合成樹脂製の透明シートに粘着材層を設けて構成され、多孔板4の背面全体を覆うように貼着され、多孔板4の孔4aに入りやすい塵の侵入を防止するようになっている。
【0037】
このように、標識板1の製造時、反射シートの加工は、有彩色反射シート2に、表示する文字図柄を切り抜き形成するのみとなり、それ以外は、所定の大きさ形状に裁断された多孔板4、有彩色反射シート2、白色反射シート3、及び保護シート6を各々貼着すればよく、加工が容易で、加工工程数が少なく、製造時の作業性を向上させることができる。
【0038】
図5〜図8は他の実施形態の標識板11を示している。この標識板11は、多数の孔を設けた多孔板14の前面全体に、透光性の白色反射シート13を、重ね合わせて貼着し、白色反射シート13の前面に透光性の有彩色反射シート12を重ね合わせて貼着し、有彩色反射シート12には、表示する文字図柄を切り抜き形成した切抜き部15を設けて構成される。
【0039】
標識板11の基板となる多孔板14は、上記と同様、例えばアルミニウムのパンチングメタルを長方形に裁断して構成され、多孔板14の背面には、補強用のリブ34が図12の如く水平方向と平行に所定の間隔をおいて溶接される。
【0040】
多孔板14の前面に貼着される白色反射シート13は、上記と同様に、前面から照射された光を再帰性反射する一方、背面(後面)からの光をある程度透過させる、透光性を有するプリズム型反射シートとして構成される。白色反射シート13の前面は、厚さ約0.5〜0.75mmの硬質透明プラスチック板からなり、プラスチック板の内側面には、プリズム面が形成される。このプリズム面と背面のカバーシートによって、白色反射シート13は、前面から入射した光を入射方向と同じ方向に反射させる再帰性を有したプリズム型反射シートを構成している。
【0041】
白色のカバーシートは、プリズム面を形成した硬質透明プラスチック板の背面側に空間を介して貼着される。カバーシートは、薄い白色のプラスチック製または紙製シートからなり、背面からの透光性を有する白色シートである。これにより、白色反射シート13は、正面視で白色の外観を呈し、背面からの透光性を有する反射シートとなっている。
【0042】
さらに、白色反射シート13の前面全体に、有彩色反射シート12が貼着される。この有彩色反射シート12は、基本的には、上記白色反射シート13と、色を除き同様な構造となっている。
【0043】
すなわち、有彩色反射シート12は、背面(後面)からの光をある程度透過させる、透光性を有する着色された反射シートであり、前方から照射される光の再帰性を有する着色半透明プラスチック板の背面に、透光性のカバーシートを貼着して構成される。有彩色反射シート12の前面部を形成するプラスチック板は、厚さ約0.5〜0.75mmの硬質の着色半透明プラスチック板から形成され、透光性を有した有彩色に着色されている。有彩色反射シート12つまりその着色半透明プラスチック板は、有彩色として緑色または青色に着色され、緑色はダークグリーン、青色はダークブルーを含む概念である。
【0044】
有彩色反射シート12の着色半透明プラスチック板の内側面には、プリズム面が形成され、このプリズム面と背面のカバーシートによって、前面から入射した光を入射方向と同じ方向に反射させる再帰性反射面を形成している。
【0045】
白色のカバーシートは、プリズム面を形成した半透明プラスチック板の背面側に、空間を介して貼着されている。カバーシートは薄い白色のプラスチック製または紙製シートで、背面からの透光性を有するシートとなっており、これにより、有彩色反射シート12は、正面視で有彩色の外観を呈し背面からの透光性を有する構造となっている。
【0046】
有彩色反射シート12には、図5のように、表示される文字図柄が切抜き部15として切り抜き形成され、有彩色反射シート12は標識板11の正面つまり白色反射シート13の前面全体に貼着される。これにより、有彩色反射シート12の切抜き部15内に白色反射シート13が位置し、正面視で、文字図柄の切抜き部15が有彩色の地に白色で表示されるようになっている。
【0047】
一方、多孔板14の背面には、透光性の保護シート16が貼着される。保護シート16は例えば薄い合成樹脂製の透明シートに粘着材層を設けて構成され、多孔板14の背面全体を覆うように貼着され、多孔板14の孔14aに入りやすい塵の侵入を防止するようになっている。
【0048】
この標識板11の製造時においても、反射シートの加工は、有彩色反射シート12に、表示する文字図柄を切り抜き形成するのみとなり、それ以外は、所定の大きさ形状に裁断された多孔板14、有彩色反射シート12、白色反射シート13、及び保護シート16を各々貼着すればよく、加工が容易で、加工工程数が少なく、製造時の作業性を向上させることができる。
【0049】
図9〜図11はさらに他の実施形態の標識板21を示している。図10の標識板21は、表示する文字図柄に対応する部分にのみ分割して形成された透光性の白色反射シート23を、多数の孔を全面に設けた多孔板24に貼着し、白色反射シート23の前面に透光性の有彩色反射シート22を貼着し、有彩色反射シート22には、表示する文字図柄を切り抜き形成した切抜き部25を設けて構成される。
【0050】
一方、図11の標識板21は、表示する文字図柄に対応する部分にのみ多数の孔を設けた多孔板24に、分割形成された透光性の白色反射シート23を貼着し、白色反射シート23の前面に透光性の有彩色反射シート22を貼着し、有彩色反射シート22には、表示する文字図柄を切り抜き形成した切抜き部25を設けて構成される。
【0051】
標識板21の基板となる図10の多孔板24は、上記と同様、例えばアルミのパンチングメタルを使用し、図11の多孔板27は、アルミニウム板を長方形に裁断し、表示する文字図柄に対応する部分にのみ、つまり表示する文字図柄の背面及びその近傍部分にのみ多数の孔を穿設して構成される。また、このような多孔板24、27の背面には、補強用のリブ34が図12の如く水平方向と平行に所定の間隔をおいて溶接される。
【0052】
多孔板24、27の前面に貼着される白色反射シート23は、表示する文字図柄に対応する部分にのみ分割して形成され、前面から照射された光を再帰性反射する一方、背面(後面)からの光をある程度透過させる、透光性を有するプリズム型反射シートとして構成される。白色反射シート23の前面は、厚さ約0.5〜0.75mmの硬質透明プラスチック板からなり、プラスチック板の内側面には、プリズム面が形成される。このプリズム面と背面のカバーシートによって、白色反射シート23は、前面から入射した光を入射方向と同じ方向に反射させる再帰性を有したプリズム型反射シートを構成している。
【0053】
白色のカバーシートは、プリズム面を形成した硬質透明プラスチック板の背面側に空間を介して貼着される。カバーシートは、薄い白色のプラスチック製または紙製シートからなり、背面からの透光性を有する白色シートである。これにより、白色反射シート23は、正面視で白色の外観を呈し、背面からの透光性を有する反射シートとなっている。
【0054】
さらに、白色反射シート23の前面に、有彩色反射シート22が貼着される。この有彩色反射シート22は、基本的には、上記白色反射シート23と、色を除き同様な構造となっている。
【0055】
有彩色反射シート22は、背面(後面)からの光をある程度透過させる、透光性を有する着色された反射シートであり、前方から照射される光の再帰性を有する着色半透明プラスチック板の背面に、透光性のカバーシートを貼着して構成される。有彩色反射シート22の前面部を形成するプラスチック板は、厚さ約0.5〜0.75mmの硬質の着色半透明プラスチック板から形成され、透光性を有した有彩色に着色されている。有彩色反射シート22つまりその着色半透明プラスチック板は、有彩色として緑色または青色に着色され、緑色はダークグリーン、青色はダークブルーを含む概念である。
【0056】
有彩色反射シート22の着色半透明プラスチック板の内側面には、プリズム面が形成され、このプリズム面と背面のカバーシートによって、前面から入射した光を入射方向と同じ方向に反射させる再帰性反射面を形成している。
【0057】
白色のカバーシートは、プリズム面を形成した半透明プラスチック板の背面側に、空間を介して貼着されている。カバーシートは薄い白色のプラスチック製または紙製シートで、背面からの透光性を有するシートとなっており、これにより、有彩色反射シート22は、正面視で有彩色の外観を呈し背面からの透光性を有する構造となっている。
【0058】
有彩色反射シート22には、図10、11のように、上下に分割して形成されると共に、表示される文字図柄が切抜き部25として切り抜き形成され、有彩色反射シート22は標識板21の正面つまり白色反射シート23の前面に貼着される。これにより、有彩色反射シート22の切抜き部25内に白色反射シート23が位置し、正面視で、文字図柄の切抜き部25が有彩色の地に白色で表示されるようになっている。
【0059】
一方、図10のように、多孔板24の背面全体には、1枚の透光性の保護シート26が貼着され、図11の場合には、分割形成された保護シート28が多孔板27の孔27aを穿設した部分のみに貼着される。保護シート26、28は、例えば薄い合成樹脂製の透明シートに粘着材層を設けて構成され、多孔板24の背面全体または多孔板27の孔27aの部分のみを覆うように貼着され、多孔板24の孔24aまたは多孔板27の孔27aに入りやすい塵の侵入を防止するようになっている。
【0060】
この標識板21の製造時においても、反射シートの加工は、有彩色反射シート22に、表示する文字図柄を切り抜き形成するのみとなり、それ以外は、所定の大きさ形状に裁断された多孔板24または27、有彩色反射シート22、白色反射シート23、及び保護シート26または28を各々貼着すればよく、加工が容易で、加工工程数が少なく、製造時の作業性を向上させることができる。
【0061】
上記構成の標識板1、11、21は、例えば道路標識、公共施設の情報標識として使用され、図12,13のように、例えばF型の標識用支柱30に取り付けて使用される。なお、F型の標識用支柱30のほか、図示しないバタフライ標識用支柱或いは門型標識用支柱に取り付けることもできる。
【0062】
標識用支柱30の上部には、2本のビーム31が水平に固定され、ビーム31間に梁立鋼32が縦に固定される。一方、標識板1、11、21の背面には、上記の如く、複数の補強用のリブ34が溶接されているので、それらのリブ34に対し直角方向に、2本のTバー33を、係止爪35と固定ボルト36を用いて固定する。
【0063】
2本のTバー33はT型断面を有する長尺金属材であり、Tバー33はリブ34のC型チャンネル材の部分に、図13、14に示す如く、係止爪35及び固定ボルト36によって締め付け固定される。係止爪35は、図14のように、側面視を略L形とし且つボルト用孔を設けて形成される。
【0064】
リブ34をTバー33に固定する場合、固定ボルト36は、その頭部をリブ34のC型チャンネル材の内側に嵌め込み、係止爪35のボルト用孔に通した状態で、その先端にナットをねじ込み、係止爪35の先端部でTバー33の縁部を押し付けるように、固定ボルト36を締め付ける。
【0065】
これにより、標識板1,11,21の背面に溶接されたリブ35は、図14に示す如く、固定ボルト36と係止爪35により、Tバー33に対し固定される。Tバー33は、図13に示す如く、2本のビーム31の側部に突き出すように溶接された固定部に対し、固定ボルトなどで固定されており、これによって、標識板1,11,21は標識用支柱30に取り付けられることとなる。
【0066】
夜間、例えば車両の前照灯から光が標識板1、11、21に照射され、光がその前面の有彩色反射シート2、12、22及び白色反射シート3、13、23に当ると、再帰反射された光は車両のドライバの目に良好に届き、ドライバは標識板1,11,21の文字図柄を、緑色または青色の地の上に、白色の文字図柄として、明確に視認することができる。また、文字図柄以外の部分にのみ反射シートを使用した従来の標識板に比べ、標識板1、11、21全体が反射面となるので、夜間の標識板の視認性を向上させることができる。
【0067】
一方、図1の標識板1においては、早朝或いは夕方、朝日や夕日の逆光を受けた状態で、その前方から視認すると、多孔板4の多数の孔4aを通過して、光が背面から前面に透過し、バックライト表示のように良好な明るさで標識が表示される。このとき、図3に示すように、文字図柄の切抜き部5を通る透過光L1は、透光性の白色反射シート3を通過して、文字図柄の切抜き部5は最も明るく表示される。
【0068】
標識板1では、下地となる有彩色反射シート2の部分で、透過光L2が、着色されているため、2番目に明るい部分として下地となる有彩色反射シート2を透過して表示される。そして、文字図柄の周囲に重ね合わせた、白色反射シート3と有彩色反射シート2の重なり部分では、透過光L3が、白色反射シート3と有彩色反射シート2を通過して、3番目に明るい部分つまり最も暗い部分として表示され、これにより、標識板1の全体を見ると、明るさが順に変わるように目に優しく表示されることとなる。
【0069】
また、図7に示す標識板11では、逆光の際、多孔板14の孔を通過して光が透光性の白色反射シート13及び有彩色反射シート12を通過して標識が表示され、特に、透光性の白色反射シート13のみを光が透過する文字図柄の部分(切抜き部15)が明るく表示され、下地の有彩色反射シート12の部分はそれより暗く表示される。つまり、逆光の光は、共に多孔板14を通過し、透光性の白色反射シート13を通して、または透光性の白色反射シート13と有彩色反射シート12を通して、観者の目に届くため、目に優しく表示される。
【0070】
さらに、図11に示す標識板21では、逆光の際、多孔板27の孔27aのない部分(文字図柄の背面及びその近傍を除く部分)が、背面からの透過光が生じないので、最も暗く表示され、文字図柄の下地となる有彩色反射シート22の部分では、多孔板27を通る透過光が、白色反射シート23と有彩色反射シート22の重なり部分を透過して着色表示され、有彩色反射シート22を切り抜いた文字図柄の切抜き部25では、白色反射シート23のみを透過した透過光が最も明るい白色部分として表示される。これにより、標識板21の全体を見ると、明るさが順に変わるように輝度比を小さくし、色のコントラストにより、目に優しく表示されることとなる。
【0071】
このように、上記標識板1,11,21は、文字図柄を表示する部分に、輝度差による強いコントラストに起因したハレーションは発生せず、従来の標識板に比べ、標識板面の色度差及び輝度差を小さくして、目に優しい状態で、文字図柄を表示することができ、標識の視認性、判読性を向上させることができる。さらに、製造時の反射シートの加工は、有彩色反射シート2,12,22に、表示する文字図柄を切り抜き、切抜き部5,15,25を形成するのみとなり、加工工程数を少なくし、製造時の作業性を向上させることができる。
【0072】
なお、上記実施形態の白色反射シート3、13、23及び有彩色反射シート2、12、22には、再帰性反射機能を有したプリズム型反射シートを使用したが、背面からの透光性を有した反射シートであれば、他の構造の反射シートを使用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1 標識板
2 有彩色反射シート
3 白色反射シート
4 多孔板
4a 孔
5 切抜き部
6 保護シート
11 標識板
12 有彩色反射シート
13 白色反射シート
14 多孔板
14a 孔
15 切抜き部
16 保護シート
21 標識板
22 有彩色反射シート
23 白色反射シート
24 多孔板
24a 孔
25 切抜き部
26 保護シート
30 標識用支柱
31 ビーム
32 梁立鋼
33 Tバー
34 リブ
35 係止爪
36 固定ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の孔を設けた多孔板の前面に、透光性の白色反射シートを、表示する文字図柄及びその周辺にのみ重ね合わせて貼着し、該白色反射シートの前面を含む該多孔板の前面に透光性の有彩色反射シートを重ね合わせて貼着し、該有彩色反射シートには、表示する該文字図柄が切り抜き形成されたことを特徴とする標識板。
【請求項2】
多数の孔を設けた多孔板の前面全体に、透光性の白色反射シートを貼着し、該白色反射シートの前面全体に透光性の有彩色反射シートを重ね合わせて貼着し、該有彩色反射シートには、表示する該文字図柄が切り抜き形成されたことを特徴とする標識板。
【請求項3】
前記多孔板の裏面に透光性の保護シートが貼着されたことを特徴とする請求項1または2記載の標識板。
【請求項4】
前記多孔板には、アルミニウム板の全面に多数の孔を穿設したパンチングメタルが使用されることを特徴とする請求項1または2記載の標識板。
【請求項5】
表示される文字図柄及びその周辺部分にのみ多数の孔を穿設したアルミニウム板が、前記多孔板として使用されることを特徴とする請求項1または2記載の標識板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−241415(P2012−241415A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112444(P2011−112444)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000159021)株式会社キクテック (42)
【Fターム(参考)】