説明

模型用ラジオコントロール送信機

【課題】操縦者がアンテナの向きを意識することなく、無線による被操縦体の遠隔操縦における信頼性を確保することができる模型用ラジオコントロール送信機を提供すること。
【解決手段】模型用ラジオコントロール送信機10に2本のポール状アンテナ40a、40bを各々のアンテナ軸が異なる方向に向くように設け、各ポール状アンテナ40a、40bからの操縦信号の送信を時分割で交互に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模型等の被操縦体を無線により遠隔操縦する模型用ラジオコントロール装置において、操作部を操作することにより被操縦体に操縦信号を無線送信する模型用ラジオコントロール送信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
模型の飛行機・ヘリコプター・車・ボート等の被操縦体を無線により遠隔操縦する模型用ラジオコントロール装置は、操縦者が操作部を操作することにより被操縦体に操縦信号を無線送信する模型用ラジオコントロール送信機(以下、ラジオコントロール送信機という)を備えている。
従来、この種のラジオコントロール送信機としては、特許文献1に開示されているようなものが知られている。特許文献1に開示されているラジオコントロール送信機は、外形が略箱型の筐体で構成され、その上面中央にはロッドアンテナ等のポール状アンテナが設けられている。筐体の正面の左右中央には、主操作部となる2本のスティックレバーが設けられているとともに、その周辺や側面には、それらの補助的な操作部となる各種レバーやスイッチ類が設けられている。スティックレバーは、図示されている状態が中立位置となっており、その位置を中心に各々が上下左右方向に傾倒操作可能となっている。このスティックレバーや各種レバーあるいはスイッチ類は、それぞれ各別にポテンショメータの回動軸に連結されており、このスティックレバーや各種レバーを操作してポテンショメータの回動量を操作することで、その操作量に応じて被操縦体への操縦信号を複数形成し、ラジオコントロール送信機から電波として発信される。なお、筐体の内部には、各種電子部品が配置された回路基板やバッテリー等が収納されている。
【0003】
このようなラジオコントロール送信機において、操縦者は、筐体の正面が手前に向くようにして筐体の両側面と背面を手で支持し、各親指を使用してスティックレバーを操作する。これにより、ラジオコントロール送信機から被操縦体への操縦信号を生成し、電波として発信される。被操縦体には、ラジオコントロール送信機より発信された操縦信号を受信する受信機ならびに被操縦体の可動部位を動作させるサーボ機構等が搭載されており、受信機で受信した操縦信号に基づいて、サーボ機構等の動作量を制御することにより被操縦体を遠隔操縦している。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−267383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、このようなラジオコントロール送信機では、発振周波数として、従来から模型用途として利用されていた周波数帯よりも利便性、安全性(耐ノイズ性)に優れた2.4GHz帯が海外を中心に利用されている。発振周波数として2.4GHz帯を利用するラジオコントロール送信機では、アンテナでの利得を高くするため、通常、1/2波長に相当する長さのダイポールアンテナを使用している。
【0006】
このダイポールアンテナは、図4に示すように、アンテナの軸方向で電界強度が著しく低下する8の字形の指向性があるとともに、2.4GHz帯の電波は指向性が強いため、アンテナの向きにより電界強度が低下する領域、いわゆるヌル点が発生する。このため、従来のラジオコントロール送信機では、アンテナを筐体外へ設け、操縦者がアンテナの向きを適宜変更できるようにしているものがあり、取り扱い説明書にもそのようなことに対する注意書きが添えられていた。
【0007】
しかしながら、操縦者の多くは、操縦の都度、そのことを意識して使用するとは限らず、たとえ意識があったとしてもアンテナの向きを変更することは面倒なものとなっていた。
また、一般的に操縦者の多くは、図5に示すように、アンテナを直立させて操縦する傾向があるため、結果的にアンテナ軸が被操縦体の方向に向くこととなり、被操縦体へは電界強度の弱い向きで使用されることになっていた。これにより、被操縦体がコントロール不能に陥る危険性があった。
【0008】
そこで、本発明は、操縦者がアンテナの向きを意識することなく、無線による被操縦体の遠隔操縦における信頼性を確保することができるラジオコントロール送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、下記(1)から(5)の本発明により達成される。
【0010】
(1)略箱型の筐体を有し、該筐体上に配設された操作部の操作に応じて模型等の被操縦体に操縦信号を無線送信する模型用ラジオコントロール送信機において、前記筐体は、その上面側に第1のポール状アンテナと第2のポール状アンテナを有し、前記第1のポール状アンテナは、その軸が前記筐体の高さ方向に沿う中心線に対して任意の角度傾斜して設けられ、前記第2のポール状アンテナは、その軸が前記筐体の高さ方向に沿う中心線に対して任意の角度傾斜して、なお且つ、前記第1のポール状アンテナとは異なる方向に向けて設けられるとともに、前記第1のポール状アンテナと前記第2のポール状アンテナへの給電は時分割で切り換えられることを特徴とする模型用ラジオコントロール送信機。
【0011】
(2)前記第1のポール状アンテナと前記第2のポール状アンテナは、各々の軸が同一平面内において略90°対向する方向に向けて設けられることを特徴とする上記(1)に記載の模型用ラジオコントロール送信機。
【0012】
(3)前記第1のポール状アンテナと前記第2のポール状アンテナは、各々の軸が前記筐体の高さ方向に沿う中心線に対して同一角度傾斜して設けられていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の模型用ラジオコントロール送信機。
【0013】
(4)前記第1のポール状アンテナと前記第2のポール状アンテナは、各々の軸が前記筐体の高さ方向に沿う中心線に対して前記筐体の幅方向に略45°傾斜して設けられることを特徴する上記(1)又は(2)に記載の模型用ラジオコントロール送信機。
【0014】
(5)前記第1のポール状アンテナと前記第2のポール状アンテナは、ダイポールアンテナであることを特徴とする上記(1)乃至(4)に記載の模型用ラジオコントロール送信機。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、模型用ラジオコントロール送信機に2本のポール状アンテナを各々のアンテナ軸が異なる方向に向くように設け、各ポール状アンテナからの操縦信号の送信を時分割で交互に切り換えることにより、一方のポール状アンテナが他方のポール状アンテナでのヌル点の影響を補完でき、操縦者がアンテナの向きを意識することなく、無線による被操縦体の遠隔操縦における信頼性を確保することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施形態という)について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態による模型用ラジオコントロール送信機(以下、ラジオコントロール送信機という)の概略構成を示す外観図である。
【0017】
図1に示すように、ラジオコントロール送信機10は、外形が略箱型の筐体20を有し、筐体20は、正面20a、背面20b、左右の側面20c、20d、上面20e、底面20f、及び左右の肩面20g、20hを有している。筐体20の正面20aの左右中央には、主操作部となる2本のスティックレバー30が設けられている。スティックレバー30は、図示されている状態が中立位置となっており、その位置を中心に各々が上下左右方向に傾倒操作可能となっている。また、筐体20の内部には、各種電子部品が配置された回路基板やバッテリー等が収納されている。なお、筐体20は、その厚み寸法Tが幅寸法W及び高さ寸法Hよりも遥かに小さいものとなっている。
【0018】
そして、本実施形態によるラジオコントロール送信機10は、筐体20の上面中央にアンテナ40が設けられている。アンテナ40は、第1のポール状アンテナ40aと第2のポール状アンテナ40bの2本のポール状アンテナで構成されている。第1のポール状アンテナ40a、第2のポール状アンテナ40bは、各々アンテナ軸の方向に電界強度の弱い領域、いわゆるヌル点が発生する、8の字形の指向性を有するアンテナであり、例えば1/2波長ダイポールアンテナである。
【0019】
このため、アンテナ40を構成する第1のポール状アンテナ40aと第2のポール状アンテナ40bは、各々のアンテナ軸が筐体20の高さ方向に沿う中心線Cに対して筐体20の幅方向に略45°傾斜させて設けられているとともに、第2のポール状アンテナ40bは、その軸が第1のポール状アンテナ40aとは同一平面内において略90°対向する方向に向けて設けられている。
これにより、第1のポール状アンテナ40aと第2のポール状アンテナ40bの各アンテナ軸は、それぞれ異なる方向に向けて設けられることになり、それぞれのアンテナの指向性を補完するようになっている。
【0020】
そして、第1のポール状アンテナ40aと第2のポール状アンテナ40bは、給電点がそれぞれの給電線を介して筐体内の後述する出力切換器に接続されている。
【0021】
図2は、本実施形態によるラジオコントロール送信機の筐体内の基本的な構成を示すブロック図である。
【0022】
同図に示すように、ラジオコントロール送信機全体の動作を制御するコントロールIC51には、ポテンショメータ52、変調回路53が電気的に接続されている。
【0023】
また、変調回路53は、高周波発振回路54と電気的に接続されているとともに、高周波増幅回路55及び出力切換器56を介してアンテナ40と電気的に接続されている。さらに、出力切換器56は、コントロールIC51にも電気的に接続されている。なお、コントロールIC51、ポテンショメータ52、変調回路53、高周波発信回路54、高周波増幅回路55、出力切換器56は、図示しない電源と接続されている。
【0024】
ポテンショメータ52はスティックレバー30に組み込まれており、スティックレバー30の操作量(回動量)を検出する。
【0025】
コントロールIC51は、ポテンショメータ52の検出値に基づいて、操作量を割り出し、この操作量に応じた信号を操縦信号として変調回路53に出力する。
【0026】
変調回路53は、高周波発振回路54で発生させた搬送波信号をコントロールIC51より生成された操縦信号で変調する。なお、変調方式は、周波数変調(FM)、パルス符号変調(PCM)又は振幅変調(AM)、あるいはスペクトラム拡散(SS)変調のいずれの変調方式であってもよい。
【0027】
高周波増幅回路55は、変調回路53で変調された操縦信号を送信用に増幅し、増幅した操縦信号を出力切換器56に出力する。
【0028】
出力切換器56は、コントロールIC51から例えば操縦信号の1フレーム毎(数msec〜数十msec毎)に出力されるタイミング信号に基づいて高周波増幅回路55で増幅された操縦信号を出力するアンテナを切り換える回路であり、アンテナ40を構成する第1のポール状アンテナ40a、第2のポール状アンテナ40bへ時分割で操縦信号を出力し、アンテナ40より操縦信号が送信される。
【0029】
このようなラジオコントロール送信機10において、操縦者は、筐体20の正面20aが手前に向くようにして筐体20の両側面20c、20dと背面20bを手で支持し、各親指を使用してスティックレバー30を操作する。これにより、操作に応じた操縦信号が生成され、時分割で切り換えられる第1のポール状アンテナ40aと第2のポール状アンテナ40bより交互に送信される。
【0030】
第1のポール状アンテナ40aと第2のポール状アンテナ40bは、各々のアンテナ軸が筐体20の高さ方向に沿う中心線Cに対して筐体20の幅方向に略45°傾斜させて設けられているとともに、第2のポール状アンテナ40bは、第1のポール状アンテナ40aと同一平面内において略90°対向する方向に向けて設けられていることにより、それぞれのポール状アンテナでの指向性を補完するようになる。
このため、本実施形態によるラジオコントロール送信機10では、アンテナ40を実質無指向性のアンテナと同等に機能させることができ、不特定方向にある被操縦体との安定した無線通信が可能となる。
【0031】
図3は、本実施形態によるラジオコントロール送信機の使用状態を示す図である。図中Aは、ラジオコントロール送信機により遠隔操縦される模型飛行機等の被操縦体を示している。
【0032】
図3において、被操縦体Aは、第1のポール状アンテナ40aのアンテナ軸の延長線上に存在している。このため、被操縦体Aは、第1のポール状アンテナ40aでのヌル点が発生する領域に存在することになり、第1のポール状アンテナ40aから送信される操縦信号を受信できない。
【0033】
しかしながら、同時に被操縦体Aは、第2のポール状アンテナ40bのアンテナ軸に対して直交方向に存在している。このため、被操縦体Aは、第2のポール状アンテナ40bによる利得(ゲイン)が最も高い領域に存在することになり、第2のポール状アンテナ40bから送信される操縦信号は受信可能となる。
【0034】
第1のポール状アンテナ40aと第2のポール状アンテナ40bからの操縦信号の送信は、非常に短い時間で切り換えられているため、第1のポール状アンテナ40aによるヌル点の影響を第2のポール状アンテナ40bが補完することになり、第1のポール状アンテナ40a、第2のポール状アンテナ40bでのヌル点の影響により被操縦体が操縦不能となるのを防止することができる。
【0035】
以上、本発明の最良の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0036】
例えば、上記実施形態では、第1のポール状アンテナと第2のポール状アンテナは、各々のアンテナ軸が同一平面内において略90°対向する方向に向けて設けられていたが、必ずしもこのような形態に限られることはない。
電波環境等の関係で電波の放射領域を狭くする必要がある場合は、第1のアンテナと第2のアンテナの各アンテナ軸が同一平面内において対向する角度を90°よりも小さくしてもよい。反対に、電波の放射領域を広くする必要がある場合には、第1のアンテナと第2のアンテナの各アンテナ軸が同一平面内において対向する角度を90°よりも大きくしてもよい。
【0037】
また、第1のポール状アンテナと第2のポール状アンテナは、各アンテナ軸が筐体の高さ方向に沿う中心線に対して筐体の幅方向に略45°傾斜して設けられていたが、この傾斜角度は45°でなくてもよく、更には両アンテナの傾斜角度は同一でなくてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、第1のポール状アンテナと第2のポール状アンテナへの給電は、操縦信号の1フレーム毎に切り換えていたが、これを例えば2フレーム毎あるいは3フレーム毎というように数フレーム毎に切り換えるようにしてもよい。
【0039】
すなわち、ラジオコントロール送信機に2本のポール状アンテナを各々のアンテナ軸を異なる方向に向けて設け、各ポール状アンテナからの操縦信号の送信を時分割で交互に切り換えることにより、一方のポール状アンテナが他方のポール状アンテナでのヌル点の影響を補完できる構成となっていればよく、以上のような形態であっても、本発明の目的とする課題に対して同様の効果を奏することができる。
【0040】
なお、上記ポール状アンテナは、ダイポールアンテナとされていたが、同様な指向性を有する他のポール状アンテナ、例えばロッドアンテナ(ホイップアンテナ)等でも同様に適応できる。但し、ダイポールアンテナを使用することにより、高いアンテナ利得が得られ、無線による被操縦体の安定した遠隔操縦をおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態による模型用ラジオコントロール送信機の概略構成を示す外観図である。
【図2】本実施形態による模型用ラジオコントロール送信機における筐体内の基本的な構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態による模型用ラジオコントロール送信機の使用状態を示す図である。
【図4】ダイポールアンテナの指向特性を示す図である。
【図5】従来の模型用ラジオコントロール送信機の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10 模型用ラジオコントロール送信機
20 筐体
30 スティックレバー
40 アンテナ
40a 第1のポール状アンテナ
40b 第2のポール状アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略箱型の筐体を有し、該筐体上に配設された操作部の操作に応じて模型等の被操縦体に操縦信号を無線送信する模型用ラジオコントロール送信機において、
前記筐体は、その上面側に第1のポール状アンテナと第2のポール状アンテナを有し、
前記第1のポール状アンテナは、その軸が前記筐体の高さ方向に沿う中心線に対して任意の角度傾斜して設けられ、
前記第2のポール状アンテナは、その軸が前記筐体の高さ方向に沿う中心線に対して任意の角度傾斜して、なお且つ、前記第1のポール状アンテナとは異なる方向に向けて設けられるとともに、
前記第1のポール状アンテナと前記第2のポール状アンテナへの給電は時分割で切り換えられることを特徴とする模型用ラジオコントロール送信機。
【請求項2】
前記第1のポール状アンテナと前記第2のポール状アンテナは、各々の軸が同一平面内において略90°対向する方向に向けて設けられることを特徴とする請求項1に記載の模型用ラジオコントロール送信機。
【請求項3】
前記第1のポール状アンテナと前記第2のポール状アンテナは、各々の軸が前記筐体の高さ方向に沿う中心線に対して同一角度傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の模型用ラジオコントロール送信機。
【請求項4】
前記第1のポール状アンテナと前記第2のポール状アンテナは、各々の軸が前記筐体の高さ方向に沿う中心線に対して前記筐体の幅方向に略45°傾斜して設けられることを特徴する請求項1又は2に記載の模型用ラジオコントロール送信機。
【請求項5】
前記第1のポール状アンテナと前記第2のポール状アンテナは、ダイポールアンテナであることを特徴とする請求項1乃至4に記載の模型用ラジオコントロール送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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