説明

横置き型圧縮機

【課題】エジェクタオイルポンプにより安定したオイルの供給を実現することができる横置き型圧縮機を提供する。
【解決手段】ロータリコンプレッサ10は、密閉容器12内に電動要素14と、この電動要素の回転軸により駆動される圧縮機構部18と、密閉容器内底部に構成されたオイル溜め15と、圧縮機構部の電動要素とは反対側に位置し、圧縮機構部から吐出された冷媒を用いたエジェクタ効果によりオイル溜めから回転軸にオイルを吸引するエジェクタオイルポンプ80とを備える。圧縮機構部で圧縮された冷媒を、回転軸16内を経て電動要素の圧縮機構部とは反対側における密閉容器内に吐出し、この密閉容器内の冷媒を圧縮機構部の電動要素とは反対側より密閉容器外に吐出すると共に、電動要素側が圧縮機構部側より高くなるよう傾斜させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器内に電動要素と、この電動要素にて駆動される圧縮機構部とを備え、この圧縮機構部にて冷媒を圧縮して吐出する横置き型圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種圧縮機としてのロータリコンプレッサ、特に第1の圧縮要素と第2の圧縮要素から成る圧縮機構部を備える多段圧縮式のロータリコンプレッサにおいては、通常縦型の密閉容器内上部に電動要素を配置し、下部に当該電動要素の回転軸で駆動される圧縮機構部を配置して構成されている。そして、第1の圧縮要素のシリンダの低圧室側に冷媒ガスが吸入され、ローラとベーンの動作により圧縮されて、シリンダの高圧室側より密閉容器内に吐出される。このとき密閉容器内は中間圧となる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
密閉容器内の中間圧の冷媒ガスは、第2の圧縮要素のシリンダの低圧室側に吸入され、ローラとベーンの動作により2段目の圧縮が行われて高温高圧の冷媒ガスとなり、高圧室側よりコンプレッサ外部の放熱器に流入する構成とされていた。そして、回転軸の下方に設けられた機械式のオイルポンプで、密閉容器内下部のオイル溜めに貯留されたオイルを汲み上げ安定して圧縮機構部や回転軸の摺動部の摩耗を防止していた。
【0004】
一方、単段の圧縮機では、圧縮機から吐出された冷媒ガスにてエジェクタ効果を利用したエジェクタオイルポンプが採用されている。そして、エジェクタオイルポンプのエジェクタ効果によって、密閉容器内底部のオイル溜めに貯留されたオイルが吸引され、圧縮機構部や回転軸の摺動部の摩耗を防ぐと共にシール性を確保していた。
【0005】
更に、この種ロータリコンプレッサでは、密閉容器を横置きとして高さ寸法を縮小したものもあり、その場合には回転軸は水平方向に延在して第1及び第2の圧縮要素は左右に並設されたかたちとなる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−294587号公報
【特許文献2】特開2005−36740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献2では、バッフル板を用いて密閉容器内を電動要素側と圧縮機構部側とに区画し、冷媒ガスを電動要素側の密閉容器内に吐出することで電動要素側の圧力が高くなるように構成し、それによってバッフル板の圧縮機構部側のオイルレベルを高くしてエジェクタオイルポンプによりオイルを確実に吸引できるようにしていたが、冷媒として二酸化炭素を使用する場合等には圧力損失が少ないため、電動要素側の圧力を高くすることが困難で、圧縮機構部側のオイルレベルがあまり上がらないという問題があった。
【0008】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、エジェクタオイルポンプにより安定したオイルの供給を実現することができる横置き型圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の横置き型圧縮機は、密閉容器内に電動要素と、この電動要素の回転軸により駆動される圧縮機構部と、密閉容器内底部に構成されたオイル溜めと、圧縮機構部の電動要素とは反対側に位置し、圧縮機構部から吐出された冷媒を用いたエジェクタ効果によりオイル溜めから回転軸にオイルを吸引するエジェクタオイルポンプとを備えたものであって、圧縮機構部で圧縮された冷媒を、回転軸内を経て電動要素の圧縮機構部とは反対側における密閉容器内に吐出し、この密閉容器内の冷媒を圧縮機構部の電動要素とは反対側より密閉容器外に吐出すると共に、電動要素側が圧縮機構部側より高くなるよう傾斜させたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明の横置き型圧縮機は、上記発明において密閉容器の電動要素側と圧縮機構部側の下部にそれぞれ取り付けられた脚部を備え、電動要素側の脚部の高さを、圧縮機構部側の脚部より高くしたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明の横置き型圧縮機は、上記各発明において水平に対して1度乃至10度の角度で傾斜させたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明の横置き型圧縮機は、上記各発明において圧縮機構部を第1及び第2の圧縮要素から構成し、第1の圧縮要素で圧縮された冷媒を密閉容器内に吐出し、更にこの吐出された中間圧の冷媒を第2の圧縮要素で圧縮して吐出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、密閉容器内に電動要素と、この電動要素の回転軸により駆動される圧縮機構部と、密閉容器内底部に構成されたオイル溜めと、圧縮機構部の電動要素とは反対側に位置し、圧縮機構部から吐出された冷媒を用いたエジェクタ効果によりオイル溜めから回転軸にオイルを吸引するエジェクタオイルポンプとを備えた横置き型圧縮機において、圧縮機構部で圧縮された冷媒を、回転軸内を経て電動要素の圧縮機構部とは反対側における密閉容器内に吐出し、この密閉容器内の冷媒を圧縮機構部の電動要素とは反対側より密閉容器外に吐出するようにしたので、密閉容器内の電動要素側の圧力を圧縮機構部側より高くして、オイル溜めの圧縮機構部側におけるオイルレベル(油面高さ)を高くすることが可能となると共に、電動要素側から圧縮機構部側に移動する冷媒により電動要素を冷却することが可能となる。
【0014】
特に、電動要素側が圧縮機構部側より高くなるよう傾斜させたので、オイル溜めの圧縮機構部側におけるオイルの深さをより一層深くすることが可能となる。これらにより、エジェクタオイルポンプによりオイル溜めから円滑にオイルを吸引することができるようになり、横置き型圧縮機の信頼性を著しく向上させることができるようになるものである。
【0015】
この場合、請求項2の発明の如く密閉容器の電動要素側と圧縮機構部側の下部にそれぞれ取り付けられた脚部のうちの電動要素側の脚部の高さを、圧縮機構部側の脚部より高くすれば、簡単な構成で圧縮機の電動要素側を高く傾斜させることが可能となる。
【0016】
尚、上記の傾斜は高くし過ぎれば圧縮機の高さ寸法が大きくなって横置き型圧縮機のメリットが削がれてしまうので、請求項3の発明の如く水平に対して1度乃至10度の角度で傾斜させることで、オイルレベルを確保しながら高さ寸法の拡大を最小限に抑えることができるようになる。
【0017】
また、請求項4の発明の如く圧縮機構部が第1及び第2の圧縮要素から構成されている場合には、第2の圧縮要素の排除容積で吐出冷媒ガス量や流速が決定されるので、第1の圧縮要素の吐出例外ガス容量の変化は少なくなる。従って、第1の圧縮要素で圧縮された冷媒を密閉容器内に吐出し、更にこの吐出された中間圧の冷媒を第2の圧縮要素で圧縮して吐出するようにすることにより、安定的に第1の圧縮要素から吐出される冷媒を用いてエジェクタオイルポンプによりオイルを安定して吸引することができるようになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した横置き型圧縮機の縦断正面図である。
【図2】図1の圧縮機のエジェクタオイルポンプの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。各図において、10は本発明の横置き型圧縮機の実施例として、二酸化炭素(CO2)を冷媒として使用する横置き型の内部中間圧型多段圧縮式ロータリコンプレッサである。この多段圧縮式ロータリコンプレッサ(圧縮機)10は両端が密閉された横長円筒状の横置き型密閉容器12を備え、この密閉容器12内底部をオイル溜め15としている。密閉容器12は、容器本体12Aとこの容器本体12Aの開口を閉塞する略椀状のエンドキャップ(蓋体)12Bとで構成されている。
【0020】
この密閉容器12内にはエンドキャップ12B側にモータから成る電動要素14と、水平方向に延在する電動要素14の回転軸16により駆動される第1の圧縮要素32及び第2の圧縮要素34からなる圧縮機構部18が並設して収納されている。また、密閉容器12のエンドキャップ12Bには電動要素14に電力を供給するためのターミナル20(配線を省略)が取り付けられている。
【0021】
電動要素14は、密閉容器12の内周面に沿って環状に取り付けられたステータ22と、このステータ22の内側に若干の間隔を設けて挿入設置されたロータ24とからなる。このロータ24は中心を通り密閉容器12の軸心方向(水平方向)に延在する回転軸16に固定されている。回転軸16には延在方向に渡って内部にオイル通路90が貫通形成されている。
【0022】
また、回転軸16の圧縮機構部18側の端部には、オイル吸上パイプ82が設けられており、このオイル吸上パイプ82は密閉容器12の底部に向かって密閉容器12内を迂回しながら降下し、オイル溜め15内で下方に向いて開口すると共に、上端82Aは回転軸16のオイル通路90に連通している。
【0023】
また、前記ステータ22は、ドーナッツ状の電磁鋼板を積層した積層体26と、この積層体26の歯部に直巻き(集中巻き)方式により巻装されたステータコイル28を有している。そして、前記ロータ24もステータ22と同様に電磁鋼板の積層体30で形成され、この積層体30内に永久磁石を挿入して形成されている。
【0024】
前記第1の圧縮要素32と第2の圧縮要素34は第1及び第2のシリンダ40、38によりそれぞれ構成され、これらシリンダ40、38間には中間仕切板36が挟持されている。即ち、圧縮機構部18は、第1の圧縮要素32及び第2の圧縮要素34と、中間仕切板36などから構成される。各シリンダ40、38の外周は密閉容器12の内面に当接若しくは近接している。
【0025】
即ち、第1及び第2の圧縮要素32、34は、それぞれ中間仕切板36の両側に配置された前記第1及び第2のシリンダ40、38と、180度の位相差を有して回転軸16に設けられた図示しない第1及び第2の偏心部に嵌合され、第1及び第2のシリンダ40、38内を偏心回転する図示しない第1及び第2のローラと、これらローラにそれぞれ当接し、往復動してシリンダ40、38内をそれぞれ低圧室側と高圧室側(圧縮室)とに区画する図示しない第1及び第2のベーンと、シリンダ38の電動要素14側の開口面とシリンダ40の電動要素14とは反対側の開口面をそれぞれ閉塞して回転軸16の軸受けを兼用する支持部材54、56とから構成されている。
【0026】
支持部材54、56には、内部に吐出消音室をそれぞれ構成するためのカバー66、68が取り付けられている。そして、支持部材56には第1の圧縮要素32の吐出消音室に連通するエジェクタパイプ88がカバー68を貫通して引き出されており、オイル吸い上げパイプ82下方まで延在している。
【0027】
エジェクタパイプ88の一方の端部は、オイル溜め15内においてオイル吸上パイプ82の開口内に少許挿入された状態で開口し、他方の端部は第1の圧縮要素32の吐出消音室内で開口する。オイル吸上パイプ82の開口内に挿入されたエジェクタパイプ88の開口部の外径は、オイル吸上パイプ82の開口部の内径より所定寸法小径に形成される。即ち、エジェクタパイプ88の一方の端部の外形は、オイル吸上パイプ82の開口部内に挿入された状態で、オイル吸上パイプ82の開口部の内径より所定の間隔を存して隙間が設けられている。これにより、オイル吸上パイプ82の大径の開口内にエジェクタパイプ88の小径の端部が挿入されたエジェクタオイルポンプ80が構成される。このエジェクタオイルポンプ80は圧縮機構部18の電動要素14とは反対側に位置している。
【0028】
そして、この場合の冷媒としては、地球環境にやさしく可燃性及び毒性等を考慮して自然冷媒である前記CO2(二酸化炭素)を使用し、密閉容器12内に封入される潤滑油としてのオイルとしては、例えば鉱物油(ミネラルオイル)、アルキルベンゼン油、エーテル油、エステル油、PAG(ポリアルキルグリコール)等既存のオイルが使用される。
【0029】
密閉容器12の側面には、支持部材54と支持部材56の側部に対応する位置にスリーブ141、142、143がそれぞれ溶接固定されている。そして、スリーブ142内にはシリンダ40に冷媒を導入するための冷媒導入管94の一端が挿入接続されている。そして、スリーブ141内にはシリンダ38に冷媒ガスを流入するための冷媒導入管92の一端が挿入接続されている。
【0030】
この冷媒導入管92は密閉容器12外の図示しないインタークーラ(中間冷却)を通過してスリーブ144に至り、他端はスリーブ144内に挿入接続されて圧縮機構部18の電動要素14とは反対側における密閉容器12内上部に連通している。また、スリーブ143内には冷媒吐出管96が挿入され、この冷媒吐出管96の一端は第2の圧縮要素34の吐出消音室に連通されている。
【0031】
また、密閉容器12の底部には脚部111と112が取り付けられている。脚部111は密閉容器12の電動要素側に取り付けられ、脚部112は圧縮機構部18側に取り付けられているが、脚部111を構成するゴム台座111Aの高さは、脚部112を構成するゴム台座112Aよりも高さが高く設定されている(図1)。
【0032】
これにより、多段圧縮式ロータリコンプレッサ(圧縮機)10は、電動要素14側が圧縮機構部18側よりも高く傾斜している。この場合、多段圧縮式ロータリコンプレッサ10は水平に対して1度乃至10度の角度で傾斜するように設定されている。このように傾斜させることで、オイル溜め15内のオイルは低くなる圧縮機構部18側に流下するので、エジェクタオイルポンプ80が位置する部分のオイル溜め15のオイルの深さが深くなる。
【0033】
そして、電動要素14が運転され、回転軸16が回転して回転圧縮要素18が駆動されると、冷媒導入管94から第1の圧縮要素32に冷媒が吸引される(図1に黒矢印で示す)。そして、この第1の圧縮要素32で圧縮されて中間圧となった冷媒ガスは吐出消音室内に吐出され、この吐出消音室内の冷媒ガスは、エジェクタパイプ88に流入する。このエジェクタパイプ88内に流入した冷媒は、オイル吸上パイプ82の開口部において、回転軸16のオイル通路90方向に向かって吐出される。
【0034】
エジェクタパイプ88から冷媒ガスがオイル吸上パイプ82内に吐出されると、オイル吸上パイプ82とエジェクタパイプ88との隙間の圧力は低下し、これによってその隙間から周囲のオイルを吸い込むエジェクタ効果が発生する。即ち、エジェクタパイプ88からオイル吸上パイプ82内に冷媒ガスが吐出されると、エジェクタオイルポンプ80によってオイル溜め15に貯留されたオイルは、オイル吸上パイプ82とエジェクタパイプ88との隙間からオイル吸上パイプ82内に吸い込まれる。
【0035】
そして、エジェクタオイルポンプ80のエジェクタ効果によって吸い込まれたオイルは、エジェクタパイプ88から吐出された冷媒ガスと共にオイル吸上パイプ82内を通り、回転軸16のオイル通路90内に流入する。そして、オイル通路90内に流入した冷媒ガスは回転する回転軸16の回転によって回転方向に渦を巻きながら密閉容器12内の電動要素14の圧縮機構部18とは反対側に吐出される。
【0036】
このとき、冷媒ガスの流れに混じったオイルは冷媒ガスより比重が重いので回転する回転軸16の遠心力でオイル通路90の内壁に吸着し、冷媒から分離される。即ち、オイル通路90内のオイルが混入した冷媒ガスは、回転軸16の回転による遠心力の働きによってオイル分離される。
【0037】
この分離されたオイルは、回転軸16内のオイル通路90に設けられ各摺動部に連通する図示しないオイル通路から各摺動部に供給され、摺動部を潤滑した後、密閉容器12内底部のオイル溜め15に帰還し、傾斜によって圧縮機構部18側に流下する。また、回転軸16のオイル通路90内でオイルが分離された冷媒ガスは、電動要素14の圧縮機構部18とは反対側における密閉容器12内に吐出される(図1に白抜き矢印で示す)。尚、回転する回転軸16(オイル通路90内)の中心は略冷媒ガスだけとなるので、冷媒ガスは密閉容器12内に円滑に吐出される。
【0038】
このように電動要素14の圧縮機構部18とは反対側の密閉容器12内に第1の圧縮要素32で圧縮された冷媒ガスは吐出される。そして、圧縮機構部18の電動要素14とは反対側における密閉容器12に接続された圧縮機構部18の電動要素14とは反対側に接続された冷媒導入管92に向かう。このとき、冷媒ガスは電動要素14及び圧縮機構部18と密閉容器12の隙間等を通過して(図1白抜き長矢印)冷媒導入管92に向かうので、電動要素14がこの冷媒ガスで冷却されることになる。
【0039】
また、このときの通路抵抗で密閉容器12内には、電動要素14側で圧力が高く、圧縮機構部18側で低い差圧が構成される。この差圧によっても密閉容器12内の底部のオイル溜め15に貯留されたオイルは圧縮機構部18側に移動し、電動要素14側より圧縮機構部18側のオイルレベルが上昇し易くなる。
【0040】
これにより、密閉容器12底部のオイル溜め15に貯溜されたオイルのレベル(油面)は、圧縮機構部18の電動要素14とは反対側に位置するオイル吸上パイプ82下端より所定寸法上方まで満たされる。これによって、エジェクタオイルポンプ80は支障無くオイル中に浸漬されるようになるので、エジェクタオイルポンプ80による圧縮機構部18の摺動部へのオイルの供給が円滑に行われるようになる。
【0041】
このように、オイル吸上パイプ82開口に形成したエジェクタオイルポンプ80部分はオイル中に浸漬されるので、エジェクタオイルポンプ80で密閉容器12内の中間圧の冷媒ガスを吸い込むことなく、オイル溜め15に貯溜されたオイルだけを吸い込み圧縮機構部18の摺動部へ円滑に供給することができるようになる。
【0042】
一方、密閉容器12内の中間圧の冷媒ガスは、冷媒導入管92に流入して前述したインタークーラで冷却された後、第2の圧縮要素34のシリンダ38の低圧室側に吸入される。そして、シリンダ38の低圧室側に吸入された中間圧の冷媒ガスは、ローラとベーンの動作により2段目の圧縮が行われて高温・高圧の冷媒ガスとなる。
【0043】
高温・高圧の冷媒ガスは、高圧室側から支持部材54内に形成された吐出消音室を経て、冷媒吐出管96から外部の図示しないガスクーラ(放熱器)などに流入する。このガスクーラで冷媒は放熱した後、図示しない減圧装置などで減圧され、これもまた図示しないエバポレータに流入する。
【0044】
そこで冷媒が蒸発し、その後、冷媒導入管94から第1の圧縮要素32内に吸い込まれるサイクルを繰り返す(図1に黒矢印で示す)。
【0045】
このように、圧縮機構部18の第1の圧縮要素32で圧縮された冷媒を、回転軸16内のオイル通路90を経て電動要素14の圧縮機構部18とは反対側における密閉容器12内に吐出し、この密閉容器12内の冷媒を圧縮機構部18の電動要素14とは反対側の冷媒導入管92より密閉容器12外に吐出するようにしたので、密閉容器12内の電動要素14側の圧力を圧縮機構部18側より高くして、オイル溜め15の圧縮機構部18側におけるオイルレベル(油面高さ)を高くすることが可能となると共に、電動要素14側から圧縮機構部18側に移動する冷媒により電動要素14を冷却することが可能となる。
【0046】
特に、電動要素14側が圧縮機構部18側より高くなるよう傾斜させたので、オイル溜め15の圧縮機構部18側におけるオイルの深さをより一層深くすることが可能となる。これらにより、エジェクタオイルポンプ80によりオイル溜め15から円滑にオイルを吸引することができるようになり、横置き型の多段圧縮式ロータリコンプレッサ(圧縮機)10の信頼性を著しく向上させることができるようになる。
【0047】
この場合、密閉容器12の電動要素14側と圧縮機構部18側の下部にそれぞれ取り付けられた脚部111、112のうちの電動要素14側の脚部111の高さを、圧縮機構部18側の脚部112より高くしているので、簡単な構成で多段圧縮式ロータリコンプレッサ10の電動要素14側を高く傾斜させることが可能となる。
【0048】
このとき、実施例では多段圧縮式ロータリコンプレッサ10を水平に対して1度乃至10度の角度で傾斜させているので、オイルレベルを確保しながらロータリコンプレッサ10の高さ寸法の拡大を最小限に抑えることができるようになる。
【0049】
ここで、多段圧縮式ロータリコンプレッサ10では第2の圧縮要素34の排除容積で吐出冷媒ガス量や流速が決定されるので、第1の圧縮要素32の吐出冷媒ガス容量の変化は少なくなる。従って、実施例のように第1の圧縮要素32で圧縮された冷媒を密閉容器12内に吐出し、更にこの吐出された中間圧の冷媒を第2の圧縮要素34で圧縮して吐出するようにすることで、安定的に第1の圧縮要素32から吐出される冷媒を用い、エジェクタオイルポンプ80により、オイルを安定して吸引することができるようになる。
【0050】
尚、実施例では2段圧縮式のロータリコンプレッサ10に本発明を適用したが、それに限らず、単段、若しくは、更に多段のロータリコンプレッサにおいても本発明は有効である。
【符号の説明】
【0051】
10 多段圧縮式ロータリコンプレッサ(圧縮機)
12 密閉容器
14 電動要素
15 オイル溜め
16 回転軸
18 圧縮機構部
32 第1の圧縮要素
34 第2の圧縮要素
80 エジェクタオイルポンプ
82 オイル吸上パイプ
88 エジェクタパイプ
90 オイル通路
92 冷媒導入管
111、112 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内に電動要素と、該電動要素の回転軸により駆動される圧縮機構部と、前記密閉容器内底部に構成されたオイル溜めと、前記圧縮機構部の前記電動要素とは反対側に位置し、前記圧縮機構部から吐出された冷媒を用いたエジェクタ効果により前記オイル溜めから前記回転軸にオイルを吸引するエジェクタオイルポンプとを備えた横置き型圧縮機において、
前記圧縮機構部で圧縮された冷媒を、前記回転軸内を経て前記電動要素の前記圧縮機構部とは反対側における前記密閉容器内に吐出し、該密閉容器内の冷媒を前記圧縮機構部の前記電動要素とは反対側より前記密閉容器外に吐出すると共に、
前記電動要素側が前記圧縮機構部側より高くなるよう傾斜させたことを特徴とする横置き型圧縮機。
【請求項2】
前記密閉容器の前記電動要素側と圧縮機構部側の下部にそれぞれ取り付けられた脚部を備え、前記電動要素側の脚部の高さを、前記圧縮機構部側の脚部より高くしたことを特徴とする請求項1に記載の横置き型圧縮機。
【請求項3】
水平に対して1度乃至10度の角度で傾斜させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の横置き型圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮機構部を第1及び第2の圧縮要素から構成し、該第1の圧縮要素で圧縮された冷媒を前記密閉容器内に吐出し、更にこの吐出された中間圧の冷媒を前記第2の圧縮要素で圧縮して吐出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の横置き型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−100778(P2013−100778A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245291(P2011−245291)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】