説明

横電界方式の液晶表示装置

【課題】逆回転ドメインの発生位置を正確に固定することができ、従来よりも画質・信頼性が優れた横電界方式の液晶表示装置の提供。
【解決手段】対向して配置される一対の基板と、該基板間に挟持される液晶層と、該基板の一方あるいは両方の対向する側に形成された一対の液晶駆動電極と、を少なくとも有する横電界方式の液晶表示装置において、該一対の液晶駆動電極のうちの少なくとも一方は、少なくとも1本の櫛歯形状部を有しており、該櫛歯形状部の先端部及び/又は基端部の手前において、絶縁膜を介して該櫛歯形状部と重畳する逆回転ドメイン安定化電極が配置され、該逆回転ドメイン安定化電極の一部は、該櫛歯形状部からはみ出した突起部を有し、該櫛歯形状部の先端部及び/又は基端部と該逆回転ドメイン安定化電極の突起部とを一体的にみなした場合の平面形状が、略L字型の分岐形状をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、横電界方式の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置(Liquid Crystal Display、LCD)は薄型軽量・低消費電力といった特徴を有する。
【0003】
特に、縦横のマトリックス状に配列した個々の画素を能動素子によって駆動するアクティブマトリックス型液晶表示装置(AM−LCD)は、高画質のフラットパネル・ディスプレイとして認知されており、中でも個々の画素をスイッチングする能動素子として薄膜トランジスタ(Thin-Film Transistor、TFT)を用いたもの(TFT−LCD)が広く普及している。
【0004】
多くのアクティブマトリックス型液晶表示装置では、ツイステッドネマチック(Twisted Nematic、TN)型液晶の電気光学効果を利用しており、2枚の基板間に挟持された液晶に当該基板面に概ね垂直な電界を印加して、当該液晶の分子を変位させることにより画像を表示する。これを「縦電界方式」という。一方、当該基板面に概ね平行な電界により、当該基板面に概ね平行な面内で液晶分子を変位させることによって画像を表示する「横電界方式」の液晶表示装置も、以前から知られている。この横電界方式の液晶表示装置についても、縦電界方式と同様に種々の改良がなされて来ており、そのいくつかを例示すると、以下のとおりである。
【0005】
特許文献1(米国特許第3807831号明細書、1974年発行)には、横電界方式の液晶表示装置において、相互に噛合する櫛歯状電極を用いる構成が開示されている(クレーム1、FIG.1〜4、FIG.11を参照)。
【0006】
特許文献2(特開昭56−091277号公報)には、TN型液晶の電気光学効果を利用したアクティブマトリックス型液晶表示装置において、特許文献1と同様の相互に噛合する櫛歯状電極を用いることにより、共通電極とドレインバスラインの間の寄生容量、あるいは共通電極とゲートバスラインとの間の寄生容量を低減する技術が開示されている(特許請求の範囲第2項、図7、図9〜13を参照)。
【0007】
特許文献3(特開平7−036058号公報)には、TFTを用いたアクティブマトリックス型液晶表示装置において、横電界方式を実現する技術が開示されている。この技術では、共通電極と映像信号電極または共通電極と液晶駆動電極を、絶縁膜を介して互いに異なる層に形成すると共に、共通電極または液晶駆動電極の平面形状をリング型、十字型、T字型、Π字型、エ字型あるいは梯子型といった形に形成している(特許請求の範囲第1項、第5項、図1〜23を参照)。
【0008】
特許文献4(特開平2002−323706号公報)には、液晶を駆動する横電界を発生させるための画素電極および共通電極(いずれも櫛歯状である)を、個々の画素を駆動するための能動素子に信号を供給するバスライン(データ線)よりも上位に(つまり液晶層により近い位置に)絶縁層を挟んで配置する構成が開示されている(請求項1、第1実施形態、図1〜2を参照)。この構成によれば、共通電極をバスラインを覆うように形成してバスラインからの電界を遮蔽することができるため、縦クロストークに起因する表示不良を防止することができ、また、共通電極を透明な導電性材料で形成することにより、開口率を向上させることができる、とされている。
【0009】
図11は、従来の一般的な横電界方式のアクティブマトリックス型液晶表示装置の構成の一例を説明する図である。図11(a)はその平面図であり、図11(b)は図11(a)のA−A’線に沿った断面図、図11(c)は図11(a)のB−B’線に沿った断面図である。また、図12(a)、(b)、(c)、(d)は、この液晶表示装置の製造工程を示す要部平面図である。これらの図はいずれも、一つの画素領域についてのみ示している。
【0010】
この液晶表示装置では、図11(a)および図12(b)に示すように、図の横(左右)方向に延在する複数本のゲートバスライン55と、図の縦(上下)方向に延在する複数本のドレインバスライン56とに囲まれる矩形領域内に画素領域がそれぞれ形成されており、全体として複数の画素がマトリックス状に配列されている。複数本の共通バスライン53は、ゲートバスライン55と同様に、図の横方向に延在して形成されている。ゲートバスライン55とドレインバスライン56との各交点には、それぞれの画素に対応して薄膜トランジスタ(TFT)45が形成されている。薄膜トランジスタ45のドレイン電極41、ソース電極42および半導体膜43は、それぞれ、図12(b)に示されたパターン(形状)で形成されている。
【0011】
液晶駆動電界を発生させる画素電極71及び共通電極72は、それぞれ、相互に噛合する櫛歯状部(各画素領域内に突出した細い帯状部分)を有している。ここでは、画素電極71の櫛歯状部は2本、共通電極72の櫛歯状部は1本としてある。図11(b)に示すように、画素電極71は、有機層間膜60と保護絶縁膜59を貫通するコンタクトホール61を通じて薄膜トランジスタ45のソース電極42に電気的に接続されており、共通電極72は、有機層間膜60と保護絶縁膜59と層間絶縁膜57とを貫通するコンタクトホール62を通じて共通バスライン53に電気的に接続されている。薄膜トランジスタ45のソース電極42の一部は、層間絶縁膜57を介して共通バスライン53と重畳しており、この重畳部分によって当該画素領域用の保持容量を形成している。
【0012】
この従来の液晶表示装置の断面構造は、図11(b)及び(c)に示すとおりであり、アクティブマトリックス基板と対向基板とを液晶を間に挟んで接合・一体化して構成されている。
【0013】
アクティブマトリックス基板は、透明なガラス基板11と、そのガラス基板11の内表面上に形成された共通バスライン53、ゲートバスライン55、ドレインバスライン56、薄膜トランジスタ45、画素電極71及び共通電極72を有している。共通バスライン53およびゲートバスライン55は、ガラス基板11の内表面上に直接形成されており、それらは層間絶縁膜57によって覆われている。薄膜トランジスタ45のドレイン電極41、ソース電極42、半導体膜43およびドレインバスライン56は、層間絶縁膜57上に形成されている。したがって、共通バスライン53およびゲートバスライン55は、層間絶縁膜57によって、ドレイン電極41、ソース電極42、半導体膜43およびドレインバスライン56から電気的に絶縁されている。ガラス基板11上に形成されたこれらの構造は、コンタクトホール61および62の部位を除いて、保護絶縁膜59により被覆されている。コンタクトホール61および62に起因する段差は、保護絶縁膜59上に形成された有機層間膜60によって平坦化されている。画素電極71及び共通電極72は、有機層間膜60上に形成されている。上述したように、画素電極71は、コンタクトホール61を通じてソース電極42に電気的に接続され、共通電極72は、コンタクトホール62を通じて共通バスライン53に電気的に接続されている。なお、図11(b)および(c)の断面図は模式的な図であり、実際の段差構造を忠実に再現したものではない。
【0014】
以上の構成を持つアクティブマトリックス基板の表面(画素電極71と共通電極72が形成されている面)は、有機高分子膜からなる配向膜31で覆われている。この配向膜31の表面には、液晶分子21の初期方向を所望の方向(図11(a)の矢印を参照)に向けるための配向処理が施されている。
【0015】
一方、対向基板(カラーフィルタ基板)は、透明なガラス基板12と、このガラス基板12の内表面上に各画素領域に対応して形成された、赤(R)・緑(G)・青(B)の3原色からなるカラーフィルタ(図示せず)と、各画素領域に対応する領域以外に形成された遮光用のブラックマトリックス(図示せず)とを備えている。このカラーフィルタとブラックマトリックスは、アクリル系のオーバーコート膜(図示せず)で覆われている。このオーバーコート膜の内表面上には、アクティブマトリックス基板と対向基板の間隔を制御するための柱状スペーサ(図示せず)が形成されている。そして、このオーバーコート膜の内表面は、有機高分子膜からなる配向膜32で覆われている。配向膜32の表面には、液晶分子21の初期方向を所望の方向(図11(a)の矢印を参照)に向けるための配向処理が施されている。
【0016】
上述した構成を持つアクティブマトリックス基板と対向基板は、配向膜31と配向膜32が形成された面をそれぞれ内側にして対向させ、所定間隔で重ね合わされている。両基板間の隙間には液晶20が導入されており、その液晶20を閉じ込めるために、両基板の周縁はシール材(図示せず)で封止されている。両基板の外側面には、一対の偏光板(図示せず)がそれぞれ配置されている。
【0017】
配向膜31及び配向膜32の表面は、上述したとおり、無電界時に液晶分子21が所定の方向に沿って平行に配向するように一様に配向処理されているが、その配向処理の方向は、画素電極71および共通電極72の櫛歯状部が延在する方向(図11(a)の上下方向)に対して、時計回りに15度傾いた方向とされている。
【0018】
前記一対の偏光板の透過軸の方向は、互いに直交させてあり、それら一対の偏光板のうちの一方の透過軸は、一様に配向処理した液晶の初期配向方向(無電界時の配向方向)と一致せしめられている。
【0019】
次に、図11に示した従来の液晶表示装置の製造工程を、図12を参照しながら説明する。
【0020】
アクティブマトリックス基板は、次のようにして製造される。まず、ガラス基板11の一面上にクロム(Cr)膜を形成してからこれをパターン化することにより、図12(a)に示すような形状を持つ共通バスライン53とゲートバスライン55が形成される。その後、共通バスライン53及びゲートバスライン55を覆うように、窒化シリコン(SiNx)からなる層間絶縁膜57が、ガラス基板11の全面にわたって形成される。続いて、層間絶縁膜57上に、薄膜トランジスタの半導体膜43(通常はアモルファスシリコン(a−Si)膜とされる)が、層間絶縁膜57を介して対応するゲートバスライン55と重なるように、島状のパターンで形成される。さらに、層間絶縁膜57上に、Cr膜を形成してからこれをパターン化することにより、ドレインバスライン56、ドレイン電極41およびソース電極42が形成される(図12(b)参照)。その後、層間絶縁膜57上に、これらの構造を覆うように、SiNxからなる保護絶縁膜59と、感光性アクリル樹脂からなる有機層間膜60とがこの順に重ねて形成される。続いて、保護絶縁膜59と有機層間膜60を貫通する矩形のコンタクトホール61と、層間絶縁膜57と保護絶縁膜59と有機層間膜60を貫通する矩形のコンタクトホール62とが形成される(図12(c)参照)。そして、有機層間膜60上に、透明電極材料であるITO(Indium Tin Oxide)膜を形成してからこれをパターン化することにより、有機層間膜60上に画素電極71と共通電極72が形成される。画素電極71は、コンタクトホール61を介してソース電極42に接触する。共通電極72は、コンタクトホール62を介して共通バスライン53に接触する(図12(d)及び図11(b)参照)。こうしてアクティブマトリックス基板が製造される。
【0021】
対向基板(カラーフィルタ基板)は、次のようにして製造される。まず、ガラス基板12の一面上に、カラーフィルタと遮光用のブラックマトリックス(いずれも図示せず)が形成され、その後、ガラス基板12の全面にわたって、前記カラーフィルタとブラックマトリックスを覆うようにオーバーコート膜(図示せず)が形成される。そして、このオーバーコート膜上に柱状スペーサ(図示せず)が形成される。こうして対向基板が製造される。
【0022】
上記のようにして製造されたアクティブマトリックス基板と対向基板の表面には、それぞれ、ポリイミドからなる配向膜31と32が形成される。その後、配向膜31と32の表面は、一様に配向処理される。続いて、両基板が一定の間隔(例えば4.5μm程度)となるように重ね合わせられてから、液晶注入用の孔を除いて両基板の周縁がシール材で封止される。そして、真空チャンバー内で、液晶注入用の孔から両基板間の隙間内に所定のネマチック液晶(例えば屈折率異方性が0.067のネマチック液晶)が注入された後、液晶注入用の孔が閉鎖される。こうして両基板が接合・一体化されてから、両基板の外表面にそれぞれ偏光板(図示せず)が貼り合わせられると、図11に示す構成を持つ従来の液晶表示装置が完成する。
【0023】
以上述べたような従来の横電界方式の液晶表示装置では、画素電極71および共通電極72の櫛歯状部の先端部の近傍において、液晶駆動電界の印加時に通常の液晶分子の回転方向とは逆の方向に液晶分子が回転してしまう領域(この領域は「逆回転ドメイン」と呼ばれる)が発生することが知られている。
【0024】
図13は、図11〜12に示された従来の液晶表示装置において逆回転ドメインが発生する原理を模式的に説明する図である。説明をしやすくするため、図13には、画素電極71及び共通電極72と液晶分子21のみが示してあり、これらの電極71及び72の櫛歯状部によって画素領域内に発生せしめられる液晶駆動電界(電気力線)が模式的に描かれている。
【0025】
この液晶駆動電界によって生じる液晶分子21の回転(この回転はアクティブマトリックス基板及び対向基板に対してほぼ平行な面内で起こる)の方向は、液晶分子21の初期配向方向と液晶駆動電界の方向との関係によって規定されるため、当該画素領域内のほとんどの部分で「時計回り」となる。しかしながら、画素電極71の櫛歯状部の先端部の近傍では、図13に示すように液晶駆動電界が放射状になるため、図中にハッチングで示した領域では液晶分子が「反時計回り」に回転する。つまり、図中にハッチングで示した領域が、液晶分子が「反時計回り」に回転する領域(すなわち逆回転ドメイン)となるのである。
【0026】
この他の従来技術として、特許文献5(特開平10−307295号公報)には、横電界を発生させる電極を屈曲させ、その屈曲部をもって電界作用時の液晶の駆動(回転)方向を領域ごとに意図的に異ならせ、斜め視野での表示の着色を軽減する技術が開示されている(請求項1、3、5、図1〜2、4、6を参照)。
【0027】
例えば、第1のサブ領域における液晶分子の初期配向方向と第2のサブ領域における液晶分子の初期配向方向とが同一であり、電圧印加時には、各々のサブ領域の液晶分子が、その方向を互いに対称な関係に保ちながら逆の回転方向に回転する構成とされる(請求項3を参照)。そして、この構成では、好ましくは、液晶分子を駆動する横電界は平行電極対により発生され、該平行電極対を構成する電極はV形に屈曲している構成とされる(請求項5を参照)。
【0028】
【特許文献1】米国特許第3807831号明細書
【特許文献2】特開昭56−091277号公報
【特許文献3】特開平7−036058号公報
【特許文献4】特開平2002−323706号公報
【特許文献5】特開平10−307295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
従来の構成によると、櫛歯電極先端部近傍において、液晶駆動電界が放射形状に分布し、液晶の初期配向方向との関係から所定の回転方向とは反対の方向に液晶が回転する領域(逆回転ドメイン)が形成される。櫛歯電極先端部近傍において液晶駆動電界は緩やかな放射形状となっているため、逆回転ドメインと通常ドメインとの間に発生する暗い領域(境界ドメイン)が大きくなり、またその位置も不安定である。
【0030】
したがって、表示面に指押し等の外圧が加わった場合には、逆回転ドメインの形状(あるいは境界ドメインの位置)が安定せず、外圧を開放した後にも指押し痕として認識されてしまう。また、境界ドメインの幅も大きくなってしまうために、パネル透過率のロスを生じさせているという問題がある。(逆回転ドメインはパネル透過率に寄与するが、境界ドメインは白表示時(電圧印加時)にも暗状態のままである。)
【0031】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、逆回転ドメインの発生位置を正確に固定することができ、従来よりも画質・信頼性が優れた横電界方式の液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するため、本発明は、対向して配置される一対の基板と、該基板間に挟持される液晶層と、該基板の一方あるいは両方の対向する側に形成された一対の液晶駆動電極と、を少なくとも有する横電界方式の液晶表示装置において、該一対の液晶駆動電極のうちの少なくとも一方は、少なくとも1本の櫛歯形状部を有しており、該櫛歯形状部の先端部及び/又は基端部の手前において、絶縁膜を介して該櫛歯形状部と重畳する逆回転ドメイン安定化電極が配置され、該逆回転ドメイン安定化電極の一部は、該櫛歯形状部からはみ出した突起部を有し、該櫛歯形状部の先端部及び/又は基端部と該逆回転ドメイン安定化電極の突起部とを一体的にみなした場合の平面形状が、略L字型の分岐形状をなしているものである。
【0033】
上記のような電極形状の特徴により、櫛歯電極先端部とそれに対向する電極との間に発生する電界分布を規定することが可能となり、該領域に発生する逆回転ドメインと通常ドメインとの境界を固定化することが可能となる。
【0034】
よって、櫛歯電極先端部近傍に発生する逆回転ドメインが安定化され、したがって、指押し等の外圧によって逆回転ドメインの形状が変形することがなく、指押し痕が残りにくくなる。さらに、逆回転ドメインと通常ドメインとの境界部に生じる暗いドメイン(境界ドメイン)をコンパクトに制御することができるため、結果として表示素子としての透過率を改善し、輝度上昇あるいは消費電力の削減を実現することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の横電界方式の液晶表示装置によれば、分岐形状を有する逆回転ドメイン固定化構造を採用することにより、逆回転ドメインの発生位置を正確に固定することができ、従来よりも画質・信頼性が優れた液晶表示装置が得られる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の横電界方式液晶表示装置は、櫛歯電極の先端部近傍で逆回転ドメインが発生する部位において、該櫛歯電極の先端部が分岐形状を有し、該分岐形状が液晶駆動時の逆回転ドメインを取り囲むように構成されていることを特徴とする。以下、図面を参照して、その具体的な構成について説明する。
【実施例1】
【0037】
図1は、本発明の第1実施例に係る横電界方式のアクティブマトリックス型液晶表示装置の構成を説明する図であり、図1(a)はその平面図、図1(b)は図1(a)のA−A’線に沿った断面図、図1(c)は図1(a)のB−B’線に沿った断面図である。また、図2(a)、(b)、(c)、(d)は、この液晶表示装置の製造工程を示す要部平面図である。これらの図はいずれも、一つの画素領域についてのみ示している。
【0038】
この液晶表示装置では、図1(a)及び図2(b)に示すように、図の横(左右)方向に延在する複数本のゲートバスライン55と、両図の縦(上下)方向に延在する複数本のドレインバスライン56とに囲まれる矩形領域内に画素領域がそれぞれ形成されており、全体として複数の画素がマトリックス状に配列されている。複数本の共通バスライン53は、ゲートバスライン55と同様に、両図の横方向に延在して形成されている。ゲートバスライン55とドレインバスライン56との各交点には、それぞれの画素に対応するように、薄膜トランジスタ(TFT)45が形成されている。薄膜トランジスタ45のドレイン電極41、ソース電極42および半導体膜43は、それぞれ、図2(b)に示されたパターン(形状)で形成されている。
【0039】
液晶駆動電界を発生させる画素電極71及び共通電極72は、それぞれ、図1(a)に示すような形状を有している。すなわち、共通電極72は、当該画素領域を囲むように形成された枠状の主要部と、その主要部の内部空間においてその上辺部の中央から下辺部に向かって延在する1本の櫛歯状部(当該画素領域内に下向きに突出した細い帯状部分)とを有している。この共通電極72の主要部は、他の画素領域用の共通電極(図示せず)の主要部と一体的に形成されている。この共通電極72の櫛歯状部の下端は、その下辺部には接していない。他方、画素電極71は、共通電極72の矩形の内部空間に配置されており、ソース電極42に重ねて配置された矩形板状の主要部と、その主要部の上辺の両端から共通電極72の上辺部に向かってそれぞれ延在する2本の櫛歯状部(当該画素領域内に上向きに突出した細い帯状部分)とを有している。これらの櫛歯状部は、共通電極72の櫛歯状部の両側にそれぞれ配置されており、したがって当該画素領域内で相互に噛合した形でレイアウトされている。共通電極72の櫛歯状部とその両側の画素電極71の櫛歯状部との間隔と、画素電極71と共通電極72の主要部との間隔は、ほぼ等しい。
【0040】
画素電極71(の主要部)は、有機層間膜60と保護絶縁膜59を貫通するコンタクトホール61を通じて薄膜トランジスタ45のソース電極42に電気的に接続されており、共通電極72(の主要部)は、有機層間膜60と保護絶縁膜59及び層間絶縁膜57とを貫通するコンタクトホール62を通じて共通バスライン53に電気的に接続されている。その接続態様は、図1(b)に示した通りである。薄膜トランジスタ45のソース電極42の一部は、層間絶縁膜57を介して共通バスライン53と重畳しており、この重畳部分によって当該画素領域用の保持容量を形成している。
【0041】
画素電極71の各櫛歯状部は、その先端部に分岐形状を有している。すなわち、各櫛歯状部の先端部の手前から分岐した突起部を有しており、各々の先端部と分岐による突起部とを合わせた平面形状は略L字型をなしている。これらの分岐形状による突起部は、各々の先端部の両側のうち、このような分岐形状が存在しない場合(図13参照)に先端部近傍に発生する液晶駆動電界が通常の液晶回転方向とは逆方向の液晶回転を引き起こす領域の側にのみ設けられている。
【0042】
共通電極72の櫛歯状部についても同様に、その先端部に分岐形状を有している。すなわち、各櫛歯状部の先端部の手前から分岐した突起部を有しており、各々の先端部と分岐による突起部とを合わせた平面形状は略L字型をなしている。これらの分岐形状による突起部は、各々の先端部の両側のうち、このような分岐形状が存在しない場合に先端部近傍に発生する液晶駆動電界が通常の液晶回転方向とは逆方向の液晶回転を引き起こす領域の側にのみ設けられている。
【0043】
さらに、画素電極71の二つの櫛歯状部のうちの一方(図中右側)は、その基端部にも分岐形状を有している。すなわち、櫛歯状部の基端部の手前に、分岐した突起部を有しており、この基端部と分岐形状による突起部とを合わせた平面形状は略L字型をなしている。これらの分岐形状による突起部は、このような分岐形状が存在しない場合に発生する液晶駆動電界が通常の液晶回転方向とは逆方向の液晶回転を引き起こす領域にのみ設けられている。画素電極71の二つの櫛歯状部のうちの他方(図中左側)については、その基端部の両側において逆方向の液晶回転を引き起こすことがないため、分岐形状による突起部を設けていない。
【0044】
共通電極72の櫛歯状部の基端部については、その基端部の片側(図中右側)において液晶駆動電界が逆方向の液晶回転を引き起こすが、上記の通り当該領域において画素電極71の櫛歯状部の先端部の手前から分岐した突起部を設けているため、共通電極72の櫛歯状部の基端部については分岐した突起部を設けていない。
【0045】
なお、本発明における分岐形状は、2つに分かれた枝の両方が分岐の起点に対して対称な関係になっていても、そうでなくても構わない。また、ここでは、共通電極72の櫛歯状部を1本、画素電極71の櫛歯状部を2本としたが、櫛歯状部の本数は図の構成に限定されない。
【0046】
また、本発明の構成を説明する図において、各電極の平面形状の輪郭を直線的に示し、角については直角に示しているが、この輪郭線が斜め方向あるいは曲線形状の辺を有していてもよく、また、角が丸まった形状となっても構わない。電極の断面形状についても同様に基板面に対して傾斜のある辺や曲線を含む形状となっていても構わない。
【0047】
本実施例に係る液晶表示装置の断面構造は、図1(b)、(c)に示すとおりであり、アクティブマトリックス基板と対向基板とを液晶を間に挟んで接合・一体化したものである。
【0048】
アクティブマトリックス基板は、透明なガラス基板11と、そのガラス基板11の内表面上に形成された共通バスライン53、ゲートバスライン55、ドレインバスライン56、薄膜トランジスタ45、画素電極71及び共通電極72を有している。共通バスライン53とゲートバスライン55は、ガラス基板11の内表面上に直接形成されており、それらは層間絶縁膜57によって覆われている。薄膜トランジスタ45のドレイン電極41、ソース電極42、半導体膜43、ドレインバスライン56は、層間絶縁膜57上に形成されている。したがって、共通バスライン53とゲートバスライン55は、層間絶縁膜57によって、ドレイン電極41、ソース電極42、半導体膜43、ドレインバスライン56から電気的に絶縁されている。ガラス基板11上に形成されたこれらの構造は、コンタクトホール61および62の部位を除いて、保護絶縁膜59により被覆されている。コンタクトホール61および62に起因する段差は、保護絶縁膜59上に形成された有機層間膜60によって平坦化されている。画素電極71及び共通電極72は、有機層間膜60上に形成されている。上述したように、画素電極71は、コンタクトホール61を通じてソース電極42に電気的に接続され、共通電極72は、コンタクトホール62を通じて共通バスライン53に電気的に接続されている。なお、図1(b)、(c)の断面図は模式的な図であり、実際の段差構造を忠実に再現したものではない。
【0049】
以上の構成を持つアクティブマトリックス基板の表面(画素電極71と共通電極72が形成されている面)は、有機高分子膜からなる配向膜31で覆われている。この配向膜31の表面には、液晶分子21の初期方向を所望の方向(図1(a)の矢印を参照)に向けるための配向処理が施されている。
【0050】
一方、対向基板は、透明なガラス基板12と、このガラス基板12の内表面上に各画素領域に対応して形成された、R・G・Bの3原色からなるカラーフィルタ(図示せず)と、各画素領域に対応する領域以外に形成された遮光用のブラックマトリックス(図示せず)とを備えている。このカラーフィルタとブラックマトリックスは、アクリル系のオーバーコート膜(図示せず)で覆われている。このオーバーコート膜の内表面上には、アクティブマトリックス基板と対向基板の間隔を制御するための柱状スペーサ(図示せず)が形成されている。そして、このオーバーコート膜の内表面は、有機高分子膜からなる配向膜32で覆われている。配向膜32の表面には、液晶分子21の初期方向を所望の方向(図1(a)の矢印を参照)に向けるための配向処理が施されている。
【0051】
上述した構成を持つアクティブマトリックス基板と対向基板は、配向膜31と配向膜32が形成された面をそれぞれ内側にして、所定間隔で重ね合わされている。両基板間の隙間には液晶20が導入されており、その液晶20を閉じ込めるために、両基板の周縁はシール材(図示せず)で封止されている。両基板の外側面には、一対の偏光板(図示せず)がそれぞれ配置されている。
【0052】
配向膜31及び配向膜32の表面は、上述したとおり、無電界時に液晶分子21が所定の方向に沿って平行に配向するように一様に配向処理されているが、その配向処理の方向は、画素電極71および共通電極72の櫛歯状部が延在する方向(図1(a)の上下方向)に対して、時計回りに15度傾いた方向とされている。
【0053】
前記一対の偏光板の透過軸の方向は、互いに直交させてあり、それら一対の偏光板のうちの一方の透過軸は、一様に配向処理した液晶の初期配向方向(無電界時の配向方向)と一致せしめられている。
【0054】
なお、液晶分子21の初期配向方向(配向処理方向)は、画素電極71の櫛歯状部と共通電極72の櫛歯状部が延在する方向(図1(a)の上下方向)に対して時計回りに15度傾いた方向としている(同図中の傾斜した太字矢印を参照)。このため、液晶分子21に液晶駆動電界を作用させた場合、画素領域内の主要な部分において、液晶分子21が時計回り(同図中の湾曲した太字矢印を参照)に回転するように設定されている。
【0055】
次に、図1に示した本実施例の液晶表示装置の製造工程を、図2を参照しながら説明する。
【0056】
アクティブマトリックス基板は、次のようにして製造される。まず、ガラス基板11の一面上にCr膜を形成してからこれをパターン化することにより、図2(a)に示すような形状を持つ共通バスライン53とゲートバスライン55が同時に形成される。その後、共通バスライン53、ゲートバスライン55を覆うように、SiNxからなる層間絶縁膜57が、ガラス基板11の全面にわたって形成される。続いて、層間絶縁膜57上に、薄膜トランジスタの半導体膜43(通常はa−Si膜とされる)が、層間絶縁膜57を介して対応するゲートバスライン55と重なるように、島状のパターンで形成される。さらに、層間絶縁膜57上に、Cr膜を形成してからこれをパターン化することにより、ドレインバスライン56、ドレイン電極41、ソース電極42が同時に形成される(図2(b)参照)。その後、層間絶縁膜57上に、これらの構造を覆うように、SiNxからなる保護絶縁膜59と、感光性アクリル樹脂からなる有機層間膜60とがこの順に重ねて形成される。続いて、保護絶縁膜59と有機層間膜60を貫通する矩形のコンタクトホール61と、層間絶縁膜57と保護絶縁膜59と有機層間膜60を貫通する矩形のコンタクトホール62とが形成される(図2(c)参照)。そして、有機層間膜60上に、透明電極材料であるITO膜を形成してからこれをパターン化することにより、有機層間膜60上に画素電極71と共通電極72が形成される。画素電極71は、コンタクトホール61を介してソース電極42に接触する。共通電極72は、コンタクトホール62を介して共通バスライン53に接触する。こうしてアクティブマトリックス基板が製造される。
【0057】
対向基板(カラーフィルタ基板)は、次のようにして製造される。まず、ガラス基板12の一面上に、カラーフィルタと遮光用のブラックマトリックス(いずれも図示せず)が形成され、その後、ガラス基板12の全面にわたって、前記カラーフィルタとブラックマトリックスを覆うようにオーバーコート膜(図示せず)が形成される。そして、このオーバーコート膜上に柱状スペーサ(図示せず)が形成される。こうして対向基板が製造される。
【0058】
上記のようにして製造されたアクティブマトリックス基板と対向基板の表面には、それぞれ、ポリイミドからなる配向膜31と32が形成される。その後、配向膜31と32の表面は、一様に配向処理される。続いて、両基板が一定の間隔(例えば4.5μm程度)となるように重ね合わせられてから、液晶注入用の孔を除いて両基板の周縁がシール材で封止される。そして、真空チャンバー内で、液晶注入用の孔から両基板間の隙間内に所定のネマチック液晶(例えば屈折率異方性が0.067のp型ネマチック液晶)が注入された後、液晶注入用の孔が閉鎖される。こうして両基板が接合・一体化されてから、両基板の外表面にそれぞれ偏光板(図示せず)が貼り合わせられると、図1に示す第1実施例の液晶表示装置が完成する。
【0059】
なお、n型のネマチック液晶を用いることもできる。その場合には、配向処理方向(初期配向方向)以外については上記とまったく同様の構成のまま、配向処理方向のみを前述の角度に対して90度異ならせればよい。以下ではp型ネマチック液晶を用いた場合について説明する。
【0060】
次に、以上の構成を持つ第1実施例の液晶表示装置の動作について、図3ならびに図4を参照しながら説明する。図3は、図1(a)中の画素領域の上部側について、画素電極71と共通電極72との間に電圧を印加して液晶駆動電界を発生させた時の様子を、液晶駆動電界の電気力線を破線で表すことによって示す図である。また、液晶駆動電界の作用による液晶分子21の回転方向を、円弧状の矢印によって示している。図4は、図1(a)中の画素領域の下部側について、同様に示す図である。
【0061】
すでに述べた通り、液晶20の初期配向方向は、画素電極71の櫛歯状部と共通電極72の櫛歯状部が延在する方向(図1(a)の上下方向)に対して時計回りに15度傾いた方向であるため、液晶駆動電界を作用させた場合、通常の領域では液晶分子21が時計回りに回転する。
【0062】
一方、図3ならびに図4に示すように、各々の画素電極71の櫛歯状部に設けられた分岐形状による突起部と先端部とで形成される略L字型形状と、相対する共通電極72(主要部と櫛歯状部の基端部)とに囲まれる領域(図3の2つの領域)、共通電極72の櫛歯状部に設けられた分岐形状による突起部と先端部とで形成される略L字型形状と、相対する画素電極71(主要部と櫛歯状部の基端部)とに囲まれる領域(図4の中央よりの領域)、及び、画素電極71の櫛歯状部の基端部の近くに設けられた分岐形状による突起部とその基端部とで形成される略L字型形状と、相対する共通電極72の主要部とに囲まれる領域(図4の右側よりの領域)においては、液晶駆動電界が図の左右方向に対して時計回りに傾斜して発生せしめられるため、液晶分子は反時計回りに回転し、逆回転ドメインを発生させる。
【0063】
これらの逆回転ドメインと通常領域との間には、境界ドメインが形成され、電圧印加時においても暗状態となるが、画素電極71および共通電極72に設けられた分岐形状の作用により、このような境界ドメインは小さな領域に納められる。これは、分岐形状による突起部を境界として、その両側で液晶駆動電界の傾き方向が反転するように大きく異なっており、よってそれぞれの側において時計回りの回転と反時計回りの回転とが、それぞれ強いトルクによって引き起こされるためである。
【0064】
すなわち、画素電極71および共通電極72に設けられた分岐形状の作用により、逆回転ドメインならびに境界ドメインの発生する位置が、あらかじめ意図した位置に正確に固定することが可能となる。
【0065】
よって、櫛歯電極先端部近傍に発生する逆回転ドメインが安定化され、したがって、指押し等の外圧によって逆回転ドメインの形状が変形することがなく、指押し痕が残りにくくなる。さらに、逆回転ドメインと通常ドメインとの境界部に生じる暗いドメイン(境界ドメイン)をコンパクトに制御することができるため、結果として表示素子としての透過率を改善し、輝度上昇あるいは消費電力の削減を実現することができる。
【0066】
以下、上記の効果のうち特に透過率の改善に関する効果について、実例を挙げて補足説明する。本実施例の構成を、サイズが10.4型で画素数が横640画素(×RGB)×縦480画素の液晶表示装置に適用し、パネル部分の光透過率を測定したところ7.9%の透過率が得られた。
【0067】
一方、本実施例の構成を用いずに、従来例で説明した分岐形状のない櫛歯電極による構成とした場合には、7.5%であった。この差は、本実施例の構成により境界ドメインをコンパクトに制御したことによる改善効果に相当する。また、本願発明者の先願(特開平10−26767号公報)を参考に、鋸歯型の電極形状によって逆回転ドメインの発生を完全に抑制する構成とした場合には、7.2%のパネル透過率となった。すなわち、本実施例の構成とすることにより、パネル透過率を改善できることが確認された。
【実施例2】
【0068】
図5に、本発明の第2実施例に係る液晶表示装置を示す。本実施例の液晶表示装置の構成は、前述の特許文献5に記載された技術を参考にして、液晶駆動電界を発生させる画素電極と共通電極を屈曲させ、その屈曲部をもって液晶駆動電界の作用時の液晶分子の駆動(回転)方向を領域ごとに意図的に異ならせる構成とした点で、上記第1実施例の構成と異なっており、それ以外の点は同じである。よって、第1実施例と構成が同一の要素には第1実施例の場合と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0069】
本第2実施例では、図5に示すように、液晶駆動電界を発生させる画素電極71及び共通電極72は、第1実施例の構成と同様に、相互に噛合する櫛歯状部をそれぞれ有しているが、櫛歯状部は、当該画素領域の概略中央部で、図の左右方向に延在する直線Lを境として略V字形に屈曲せしめられている。これに対応して、図の上下方向に延在するドレインバスライン56も、同様に略V字形に屈曲せしめられている。したがって、当該画素領域の形状も略V字形に屈曲している。
【0070】
当該画素領域は、屈曲位置において、直線Lより上側の第1サブ領域1と、直線Lより下側の第2サブ領域2に分割されている。画素電極71及び共通電極72は、第1サブ領域1では図の上下方向に対して反時計回りに所定角度屈曲し、第2サブ領域2では時計回りに第1サブ領域1と同一角度で屈曲している。液晶分子21の配向処理方向は、無電界時に液晶分子21が図の上下方向(図5の太線矢印を参照)に沿って平行に配向するように設定されている。各々の領域における画素電極71及び共通電極72が延びる方向の角度(オフセット角度)は、この配向処理方向に対して±10度から±25度程度の範囲の値が好ましく、例えば、±15度(第1サブ領域1では反時計回りに15度、第2サブ領域2では時計回りに15度)程度とすることができる。(オフセット角度が大きいほうが、液晶駆動の閾値電圧は下がるが、最大透過率を得るためのピーク電圧は上昇する。すなわち、印加電圧に対する透過率のカーブは緩やかになる。逆にオフセット電圧が小さいと、このカーブが急峻になる。また、オフセット角度が大きいほうが、櫛歯電極屈曲部における液晶ドメインの境界位置を安定的に固定しやすくなる。)
【0071】
液晶駆動電圧を印加した時の液晶駆動電界は、第1サブ領域1の主要な領域では図の左右方向(直線Lの方向)に対して若干反時計回りに傾いた方向に発生し、第2サブ領域2の主要な領域では図の左右方向に対して若干時計回りに傾いた方向に発生する。よって、無電界時に図の上下方向に沿って一様に配向していた液晶分子21は、当該液晶駆動電界により、第1サブ領域1では主として時計回りに、第2サブ領域2では主として反時計回りにそれぞれ回転する。このように、第1サブ領域1及び第2サブ領域2における液晶分子の回転方向が互いに異なることにより、視角変化に伴う表示の色付きを抑制することができる、という効果が得られる利点がある。
【0072】
また、本第2実施例においても、先の第1実施例の構成と同様に、画素電極71および共通電極72には分岐形状を設けてある。図6及び図7に示すように、これらの分岐形状の作用により、第1サブ領域1および第2サブ領域2のそれぞれにおいて逆回転ドメインならびに境界ドメインの発生する位置が、あらかじめ意図した位置に正確に固定することが可能となる。よって、櫛歯電極先端部近傍に発生する逆回転ドメインが安定化され、したがって、指押し等の外圧によって逆回転ドメインの形状が変形することがなく、指押し痕が残りにくくなる。さらに、逆回転ドメインと通常ドメインとの境界部に生じる暗いドメイン(境界ドメイン)をコンパクトに制御することができるため、結果として表示素子としての透過率を改善し、輝度上昇あるいは消費電力の削減を実現することができる。
【0073】
なお、本第2実施例においては、画素電極71および共通電極72の櫛歯形状部分の先端の分岐形状は、液晶分子の初期配向方向に対して平行な方向と直角な方向の分岐形状となっており、さらには、この分岐形状部分と向かい合って液晶駆動電界を発生させる電極との組み合わせ(すなわち、画素電極71あるいは共通電極72のうち一方の電極の一部で分岐形状となっている部位と、それと向かい合っている他方の電極の当該部位との組み合わせ)によって、1対の鍵括弧を組み合わせた平面形状を形成している。このような形状とすることにより、液晶の初期配向方向に対してほぼ均一に傾いた電界を発生させることができ、上記のような逆回転ドメインを安定的に固定することができるのである。ここで、この「1対の鍵括弧を組み合わせた形状」を長方形とみなした場合の短辺と長辺の比を、2:1〜3:1程度とし、その長辺が液晶の初期配向方向と一致するようにすると、その領域での液晶分子の回転の度合いが、櫛歯電極(画素電極71および共通電極72)が平行に延びる領域での液晶分子の回転の度合いとほぼ同程度となる(すなわち、印加電圧に対する透過率のカーブがほぼ一致する)ため、効率的に光透過に寄与できることとなり、都合が良い。この2:1〜3:1の関係よりも、その比が小さい場合には、この領域における液晶駆動電界の傾きが大きくなり、すなわち、櫛歯電極の延びる方向と液晶分子の初期配向方向との間の角度(オフセット角度)が大きい場合に相当する特性となる。つまり、液晶駆動の閾値電圧が下がり、最大透過率を得るためのピーク電圧が上昇する。印加電圧に対する透過率のカーブは緩やかになる。逆にその比が大きい場合には、この領域における液晶駆動電界の傾きが小さくなり、すなわち、オフセット角度が小さい場合に相当する特性となる。上記のように、2:1〜3:1程度とすることがもっとも好ましいが、1:1程度ないし4:1程度の範囲とすることも可能である。
【0074】
上記のように、本実施例において、櫛歯形状部分の先端の分岐形状を構成する2つの先端部の延びる方向は、それぞれ、液晶分子の初期配向方向に対して平行な方向と直角な方向となっており、この関係によって好ましい方向に傾斜した液晶駆動電界を発生させているが、これらの先端部の延びる方向と液晶分子の初期配向方向との関係が厳密にこの通りでなくても、多少ずれていたとしても構わない。ただし、それぞれの関係が、櫛歯形状部分の主要な部分が延びる方向と液晶分子の初期配向方向とのオフセット角度(上記の例では15度)未満にすることが望ましい。
【実施例3】
【0075】
図8に本発明の第3実施例の特徴を示す。櫛歯電極先端部の分岐形状は、図8のような形状としてもよい。また、この図8のような形状の他にも、分岐による突起部が屈曲・湾曲したような形状等、種々の形状が可能である。形状としては、第2実施例の形状の方が好ましい。これは、第2実施例の形状とした場合の方が、逆回転領域における光透過率が高くなるためである。
【実施例4】
【0076】
図9および図10に本発明の第4実施例の特徴を示す。本実施例においては、櫛歯電極の先端部そのものは分岐形状となっていないが、櫛歯電極の先端部と重畳部を有する逆回転ドメイン安定化電極を有しており、この逆回転ドメイン安定化電極と櫛歯形状の電極とを一体的にみなした場合の平面形状は、前述の第2実施例の櫛歯電極の形状と同様の特徴を有している。画素電極71と重畳部を有する逆回転ドメイン安定化電極はドレインバスライン56と同層のCr膜により形成されており、共通電極72と重畳部を有する逆回転ドメイン安定化電極はゲートバスライン55、共通バスライン53と同層のCr膜により形成されている。逆回転ドメイン安定化電極は櫛歯電極との重畳部に形成される容量の作用によって、重畳する櫛歯電極とほぼ同電位となるため、このような構成においても本発明の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の活用例として、横電界方式の液晶表示装置、同液晶表示装置を用いたコンピュータ用モニタ、液晶テレビ、携帯電話端末、GPS端末、カーナビゲーションシステム、ゲーム機、銀行・コンビニ端末、医療診断装置等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1実施例に係る横電界方式のアクティブマトリックス型液晶表示装置の構成を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A’線に沿った断面図、(c)は(a)のB−B’線に沿った断面図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る横電界方式のアクティブマトリックス型液晶表示装置の製造工程を示す要部平面図である。
【図3】図1(a)中の画素領域の上部側について、画素電極と共通電極との間に電圧を印加して液晶駆動電界を発生させた時の様子を示す図である。
【図4】図1(a)中の画素領域の下部側について、画素電極と共通電極との間に電圧を印加して液晶駆動電界を発生させた時の様子を示す図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る横電界方式のアクティブマトリックス型液晶表示装置の構成を説明する平面図である。
【図6】図5中の画素領域の上部側について、画素電極と共通電極との間に電圧を印加して液晶駆動電界を発生させた時の様子を示す図である。
【図7】図5中の画素領域の下部側について、画素電極と共通電極との間に電圧を印加して液晶駆動電界を発生させた時の様子を示す図である。
【図8】本発明の第3実施例に係る横電界方式のアクティブマトリックス型液晶表示装置の画素領域の上部側について、画素電極と共通電極との間に電圧を印加して液晶駆動電界を発生させた時の様子を示す図である。
【図9】本発明の第4実施例に係る横電界方式のアクティブマトリックス型液晶表示装置の画素領域の上部側について、画素電極と共通電極との間に電圧を印加して液晶駆動電界を発生させた時の様子を示す図である。
【図10】本発明の第4実施例に係る横電界方式のアクティブマトリックス型液晶表示装置の画素領域の下部側について、画素電極と共通電極との間に電圧を印加して液晶駆動電界を発生させた時の様子を示す図である。
【図11】従来の一般的な横電界方式のアクティブマトリックス型液晶表示装置の構成の一例を説明する図であり、(a)は平面図り、(b)は(a)のA−A’線に沿った断面図、(c)は(a)のB−B’線に沿った断面図である。
【図12】図11の液晶表示装置の製造工程を示す要部平面図である。
【図13】図11中の画素領域の上部側について、画素電極と共通電極との間に電圧を印加して液晶駆動電界を発生させた時の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 第1サブ領域
2 第2サブ領域
11、12 ガラス基板
20 液晶
21 液晶分子
31、32 配向膜
41 ドレイン電極
42 ソース電極
43 半導体膜
45 薄膜トランジスタ(TFT)
53 共通バスライン
55 ゲートバスライン
56 ドレインバスライン
57 層間絶縁膜
59 保護絶縁膜
60 有機層間膜
61、62 コンタクトホール
71 画素電極
72 共通電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置される一対の基板と、該基板間に挟持される液晶層と、該基板の一方あるいは両方の対向する側に形成された一対の液晶駆動電極と、を少なくとも有する横電界方式の液晶表示装置において、
該一対の液晶駆動電極のうちの少なくとも一方は、少なくとも1本の櫛歯形状部を有しており、
該櫛歯形状部の先端部及び/又は基端部の手前において、絶縁膜を介して該櫛歯形状部と重畳する逆回転ドメイン安定化電極が配置され、
該逆回転ドメイン安定化電極の一部は、該櫛歯形状部からはみ出した突起部を有し、
該櫛歯形状部の先端部及び/又は基端部と該逆回転ドメイン安定化電極の突起部とを一体的にみなした場合の平面形状が、略L字型の分岐形状をなしていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の液晶表示装置において、
該先端部及び/又は基端部の延びる方向は、該液晶層の初期配向方向と略一致し、
該突起部の延びる方向は、該液晶層の初期配向方向に略直交することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の液晶表示装置において、
該櫛歯形状部の該先端部及び/又は基端部を除く部分の延びる方向は、該液晶層の初期配向方向に対して斜め方向であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の液晶表示装置において、
該櫛歯形状部の該先端部及び/又は基端部を除く部分の延びる方向は、該先端部及び/又は基端部の延びる方向及び該突起部の延びる方向の各々に対して鈍角をなすことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一に記載の液晶表示装置において、
該分岐形状が、液晶駆動時の逆回転ドメインを取り囲むように構成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一に記載の液晶表示装置において、
該分岐形状に挟まれる領域における液晶駆動時の該液晶層の液晶分子の回転方向が、該分岐形状に挟まれる領域の外側の領域における液晶駆動時の該液晶層の液晶分子の回転方向とは逆方向となるように構成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の液晶表示装置において、
該突起部を境界とした両側の領域のうち、該先端部とは逆側の領域における液晶駆動時の該液晶層の液晶分子の回転方向を順方向とした場合に、該突起部を境界とした該先端部側の領域における液晶駆動時の該液晶層の液晶分子の回転方向は逆方向であり、
該液晶分子が逆方向に回転する領域は、該液晶分子が順方向に回転する領域よりも小であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一に記載の液晶表示装置において、
該突起部を境界とした両側の領域のうち、該基端部とは逆側の領域における液晶駆動時の該液晶層の液晶分子の回転方向を順方向とした場合に、該突起部を境界とした該基端部側の領域における液晶駆動時の該液晶層の液晶分子の回転方向は逆方向であり、
該液晶分子が逆方向に回転する領域は、該液晶分子が順方向に回転する領域よりも小であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一に記載の液晶表示装置において、
該櫛歯形状部は、各々の画素領域のほぼ中央の屈曲部で略V字形状に屈曲していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
請求項9記載の液晶表示装置において、
該屈曲部の各々の側における該櫛歯形状部の延びる方向と、該液晶層の液晶分子の初期配向方向とは、それぞれ所定角度異なっており、
かつ、該屈曲部の両側において該角度の関係が互いに対称となっていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一に記載の液晶表示装置において、
該一対の液晶駆動電極のうちの一方の電極の一部で分岐形状となっている部位と、該一方の電極と向かい合っている他方の電極の当該部位との組み合わせの形状が、一対の鍵括弧を組み合わせた形状となっていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
請求項11記載の液晶表示装置において、
該一対の鍵括弧を組み合わせた形状を長方形とみなした場合の長辺と短辺の長さの比が、1:1乃至4:1であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
請求項12記載の液晶表示装置において、
該長辺と該短辺の長さの比が、2:1乃至3:1であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の液晶表示装置において、
該一対の鍵括弧を組み合わせた形状を長方形とみなした場合の長辺の方向が、液晶の初期配向方向と一致するように構成されていることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−77036(P2013−77036A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−16885(P2013−16885)
【出願日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【分割の表示】特願2008−188243(P2008−188243)の分割
【原出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(303018827)NLTテクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】