説明

樹木状硫酸およびスルホン酸ポリグリセロールならびに炎症性疾患のためのそれらの使用

本発明は、樹木状硫酸およびスルホン酸ポリグリセロールの新規の化合物クラスに、ならびに疾患、特に炎症性疾患の治療のためのそれらの製造および使用に、そしてセレクチン阻害薬およびセレクチン指示薬としてのそれらの使用に関する。樹木状硫酸およびスルホン酸ポリグリセロールは、特に炎症性疾患に関する画像診断薬にも適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木状硫酸およびスルホン酸ポリグリセロールの新規の化合物クラスに、ならびに疾患、特に炎症性疾患の治療のためのそれらの製造および使用に、そしてセレクチン阻害薬およびセレクチン指示薬としてのそれらの使用に関する。樹木状硫酸およびスルホン酸ポリグリセロールは、特に炎症性疾患に関する画像診断薬にも適している。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
炎症は、組織の損傷および病原体の侵襲に対する基本的応答であって、この場合、白血球は、それらの抗菌、分泌および貪食活性のため、重要な役割を演じる。血管内皮への白血球の動員、ならびにその後の周囲組織への移動は、炎症反応の全形態において観察される。
【0003】
組織への白血球の移動は、血管壁上への白血球の接着により開始される。これは、白血球を感染源に蓄積させ、そして防御反応を実行させる。白血球上のそして内皮細胞上の種々の血管細胞接着分子は、血管壁上への血球の接着を媒介し、制御する。このプロセスは、連続連結分子相互作用のカスケードにおいて起こる。先ず、セレクチン(レクチン様接着分子の一ファミリー)は、内皮の表面上の白血球の「ドッキング」およびローリングを媒介する。これは白血球の低下をもたらし、例えばケモカインのような内皮の表面上のシグナル伝達分子との接触を可能にする。これらのシグナル伝達分子は、白血球の表面上のインテグリンの活性化を刺激し、これが次に内皮表面でのこれらの細胞の効率的結合を媒介する。免疫グロブリン(Ig)のスーパーファミリーの成員は、インテグリンのリガンドとして作用する。ここで安定接着白血球は、定方向的に移動し得るし、そして内皮細胞層を通して能動的に移動し得る。
【0004】
すでに言及されたように、内皮上の白血球の初期接触およびローリングは、(3つの)セレクチンおよびそれらのリガンド間の一過性受容体-リガンド相互作用により媒介される[1]。白血球と内皮との密接な接着は、その後、活性化インテグリンと免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの接着分子との相互作用により保証される[2]。所望の防御作用および組織損傷の修復のほかに、血流からの白血球の非制御移動は病理学的関連を有するものであり、組織の損傷をもたらし得る[3]。急性および慢性炎症性プロセスにおける内皮細胞接着分子の一般的関与は、それらを診断および治療のための適切な標的構造にさせる[再検討のためには、4参照]。
【0005】
セレクチンは炭水化物結合接着分子であって、これらは免疫防御のプロセス中の炎症化組織の血管内皮上への白血球の接着増大の一因となる。それらの細胞起源によって、それらはL-(白血球)、E-(内皮細胞)およびP-セレクチン(血小板および内皮細胞)に分けられる。それらのタンパク質構造およびそれらの特定分子結合特質のために、セレクチンは白血球接着を開始する;対応するリガンドの一過性結合後、白血球は、血管壁沿ったよどみない血流からの「ローリング低下」を受ける。その後、他の接着分子は、内皮上の白血球の密接な結合ならびにそれらの防御機能を成し遂げるためのそれらの溢出を媒介する。セレクチンの発見直後ならびに90年代初頭のそれらの構造の解明後、セレクチンは薬学的研究の分野における魅力的な標的構造になってきた。免疫応答におけるそれらの生理学的機能のほかに、病理学的プロセス中のセレクチン発現の調節不全、例えば慢性関節リウマチ、喘息、真性糖尿病および虚血/再還流、ならびに転移中癌細胞の組織侵襲中の関与が観察された。これは、セレクチン阻害化合物に関する集中的探索の動機となった。
【0006】
E-およびP-セレクチン、ならびにL-セレクチン・リガンドは、炎症依存的に微小血管内皮上に発現され、L-セレクチンは白血球上に提示される[1,2]。報告されたセレクチンに関しては、いくつかの高アフィン変換リガンドのみが既知である。原則として、これらはムチン様構造、即ち長く引き延ばされた糖タンパク質であって、これは実際の結合エピトープとしてそれらの富セリンまたはトレオニンタンパク質足場上にグリコシド的に付着される多数の炭水化物側鎖を有する。高柔軟性リガンド上の受容体結合の迅速形成および解離により、細胞ローリングは容器の剪断流中で媒介される。結合に不可欠な炭水化物エピトープは、特異的結合フコースおよび末端シアル酸(N-アセチルノイラミン酸)を有するN-アセチルラクトサミンベースのオリゴ糖である。四糖シアリル・ルイスX(sLeX)は、顕著に関連する結合エピトープである。結合特質を特性化するために、ならびにセレクチン阻害薬を探索するために、sLeXは、構造-機能関係のための標準リガンドとして用いられる。
【0007】
セレクチンの重要な結合相手としてのsLexについての知見、そして白血球接着の標的化遮断のための鍵としての多価性についての知見は、かなり長い間既知であり、多様なセレクチン阻害薬の開発のための基礎である[再検討のためには5を参照]。さらにその後、高アフィン変換阻害薬が利用可能な場合でさえ、標的セレクチンは直ぐにでも市販可能な治療薬の開発をもたらしていない[5]。
【0008】
目下、慢性関節リウマチおよび感染の場合の治療的介入は、炎症性サイトカインTNFαの遮断薬を用いることにより達成されている(インフリキシマブ、エタネルセプト、[6,7])。さらに、抗インテグリン抗体であるエファリズマブ[7]が市販されており、これは、感染の漸進的治療のために認可されている。さらなる化合物、例えばPan-セレクチンアンタゴニスト・ビモシアモース(1,6-ビス[3-(3-カルボキシメチルフェニル)-4-(2-アルファ-D-マンノピラノシルオキシ)フェニル]ヘキサン)(小分子薬のクラスに属し、そしてsLeXより実質的に高いセレクチンに対する親和性を有するグリコシド構造を有するセレクチン阻害化合物である)が、臨床試験で試験されている(Revotar AG, Hennigsdorfにより実施された試験)。ビモシアモースは、喘息、乾癬、アトピー性皮膚炎および再還流障害のために用いられるべきものである、と仮定される[8]。
【0009】
硫酸化sLex構造を保有する線状ネオグリコポリマーが記載されており、そして低ナノ分子範囲[5,9]ならびに樹木状ポリエチレンオキシド(PEO)グリコポリマー(硫酸化される)[10]でIC50値に達し得る。
【発明の概要】
【0010】
したがって、合成が容易であり、そして疾患、特に炎症性疾患の治療に適している化合物および化合物クラスを提供することは、本発明の一目的である。
当該目的は、樹木状スルホン酸ポリグリセロールを提供することにより、本発明により解決される。
【0011】
本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールは、以下の:
a)1〜1,000個のOH基、好ましくは1〜4個のOH基を有するポリヒドロキシ化合物である多機能性出発物質分子上の式(RO-CH22CH-OR(ここで、R=Hまたはさらなるグリセリン単位)を有するグリセリンの反復単位で構成される高分子ポリグリセロールコアであって、0〜100%、好ましくは60%の分枝度および100〜1,000,000 g/mol、好ましくは1,000〜20,000 g/molの平均分子量を有するコア;
b)-SO3Hまたは-SO3Na基によるグリセリン単位の1つまたは複数のOH基の置換、
あるいはグリセリン単位の1つまたは複数のOH基でのオリゴマースペーサーの結合であって、
ここで、オリゴマースペーサーは、以下の一般式:
-(CH2n-または-[(CH2m-O]n-
(式中、mは1〜100であり、そしてnは1〜50,000である)を有し、そしてそれに-SO3Hまたは-SO3Na基を結合し、したがって1〜100%、好ましくは1〜30%のスルホン酸化度が得られる結合;ならびに
c)110〜1,500,000 g/mol、好ましくは1,100〜30,000 g/molの分子量
を特徴とする。
【0012】
高分子ポリグリセロールコアは、グリシドールの開環重合中に、それぞれ(多)機能性出発物質分子または開始剤を用いて産生される。出発物質分子または開始剤は、それぞれ、1〜1,000個、好ましくは1〜100個、さらに好ましくは1〜4個のOH基を有するポリヒドロキシ化合物である。出発物質分子は、一般式R-(OH)x(式中、Rは、陰イオン重合の条件下で安定である任意の分子であり得るし、そしてxは1〜1000、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜4である)を有する。好ましくは、使用開始剤は、三または四機能性開始剤、例えば好ましい三機能性開始剤としての1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパン(TMP)または好ましい四機能性開始剤としてのペンタエリトロール(PE)である。出発物質分子または開始剤はそれぞれ、さらなるヘテロ官能基、例えば特にSH基、NH2基を保有し得る。特定の一実施形態では、出発物質分子は、OH基および/またはさらなるヘテロ官能基(例えばSH、NH2)を含有する。さらなる適切な開始剤が当業者に既知である。
【0013】
開始剤および重合条件の選択によって、高分子ポリグリセロールコアは、狭い多分散性で分枝度および随意調整可能分子量に達する。本発明によれば、0〜100%の分枝を有する高分子ポリグリセロールコアが用いられる。好ましくは高分枝構造は、好ましくは30〜80%の分枝度で、特に好ましくは60%の分枝度で用いられる。
【0014】
本発明による高分子ポリグリセロールコアの平均分子量は、好ましくは100〜1,000,000 g/mol、さらに好ましくは500〜100,000 g/molであり、この場合、1,000〜20,000 g/molが特に好ましい。
【0015】
本発明による高分子ポリグリセロールコアは、スルホン酸化に付される。好ましくは触媒量の塩基、例えば水酸化カリウムの存在下でのビニルスルホン酸のナトリウム塩が、スルホン酸化試薬として用いられる。到達されるスルホン酸化度は、好ましくは1〜100%、特に好ましくは10〜30%、さらに特に好ましくは30〜100%である。
【0016】
本発明による「スルホン酸化度」とは、高分子ポリグリセロールコアのグリセリン単位の官能化OH基のパーセンテージを意味する。官能化は、-SO3Hまたは-SO3Na基によるグリセリン単位の1つまたは複数のOH基の置換に、あるいはグリセリン単位の1つまたは複数のOH基でのオリゴマースペーサーの結合に起因する。
【0017】
オリゴマースペーサーは、以下の一般式:
-(CH2n-または-[(CH2m-O]n-
(式中、mは1〜100、好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜10、さらに好ましくは2であり、そして
nは1〜50,000、好ましくは1〜5,000、さらに好ましくは1〜100である)
を有し、そしてそれに-SO3Hまたは-SO3Na基を結合している。
オリゴマースペーサーは、例えばオリゴエチレングリコール(OEG)鎖、ポリエチレングリコール(PEG)鎖、脂肪族炭水化物鎖であり、あるいはその他の線状ポリエーテルでもある。
【0018】
本発明による高分子ポリグリセロールコアならびにスルホン酸化条件、即ちスルホン酸化度の選択によって、本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールの分子量は、好ましくは110〜1,500,000 g/mol、さらに好ましくは600〜150,000 g/mol、特に好ましくは1,100〜30,000 g/molである。
【0019】
本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールの特に好ましい実施形態は、以下の:
a)2,500〜20,000 g/molの平均分子量(Mn)および60%の分枝度(樹木状分枝度に対応する)を有する高分子ポリグリセロールコア、ならびに
b)10〜30%のスルホン酸化度(ビニルスルホン酸のナトリウム塩でのスルホン酸化により得られる)
を有する。
【0020】
本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールの特に好ましい実施形態は、実施例2の化合物3bのように、5,000 g/molの平均分子量、4%のスルホン酸化度、および5,200 g/molの分子量を有する高分子ポリグリセロールコアを有する(表2参照)。
【0021】
本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールのさらに特に好ましい実施形態は、実施例2の化合物3dのように、20,000 g/molの平均分子量、8%のスルホン酸化度、および21,800 g/molの分子量を有する高分子ポリグリセロールコアを有する(表2参照)。
【0022】
当該目的はさらに、樹木状硫酸ポリグリセロールを提供することにより、本発明により解決される。
本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールは、以下の:
a)1〜1,000個のOH基、好ましくは1〜4個のOH基を有するポリヒドロキシ化合物である多機能性出発物質分子上の式(RO-CH22CH-OR(ここで、R=Hまたはさらなるグリセリン単位)を有するグリセリンの反復単位で構成される高分子ポリグリセロールコアであって、0〜100%、好ましくは60%の分枝度および100〜1,000,000 g/mol、好ましくは1,000〜20,000 g/mol、さらに好ましくは2,000〜7,500の平均分子量を有するコア;
b)-SO3Hまたは-SO3Na基によるグリセリン単位の1つまたは複数のOH基の置換、
あるいはグリセリン単位の1つまたは複数のOH基でのオリゴマースペーサーの結合であって、
ここで、オリゴマースペーサーは、以下の一般式:
-(CH2n-または-[(CH2m-O]n-
(式中、mは1〜100であり、そしてnは1〜50,000である)を有し、そしてそれに-SO3Hまたは-SO3Na基を結合し、したがって1〜100%のスルホン酸化度が得られる結合;ならびに
c)200〜5,000,000 g/mol、好ましくは2,000〜50,000 g/mol、さらに好ましくは5,000〜13,500の分子量
を特徴とする。
【0023】
高分子ポリグリセロールコアは、グリシドールの開環重合中に、それぞれ(多)機能性出発物質分子または開始剤を用いて産生される。出発物質分子または開始剤は、それぞれ、1〜1,000個、好ましくは1〜100個、さらに好ましくは1〜4個のOH基を有するポリヒドロキシ化合物である。出発物質分子は、一般式R-(OH)x(式中、Rは、陰イオン重合の条件下で安定である任意の分子であり得るし、そしてxは1〜1,000、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜4である)を有する。好ましくは、使用開始剤は、三または四機能性開始剤、例えば好ましい三機能性開始剤としての1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパン(TMP)または好ましい四機能性開始剤としてのペンタエリトロール(PE)である。出発物質分子または開始剤はそれぞれ、さらなるヘテロ官能基、例えば特にSH基、NH2基を保有し得る。特定の一実施形態では、出発物質分子は、OH基および/またはさらなるヘテロ官能基(例えばSH、NH2)を含有する。さらなる適切な開始剤が当業者に既知である。
【0024】
開始剤および重合条件の選択によって、高分子ポリグリセロールコアは、狭い多分散性で分枝度および随意調整可能分子量に達する。本発明によれば、0〜100%の分枝を有する高分子ポリグリセロールコアが用いられる。好ましくは高分枝構造は、好ましくは30〜80%の分枝度で、特に好ましくは60%の分枝度で用いられる。
【0025】
本発明による高分子ポリグリセロールコアの平均分子量は、好ましくは100〜1,000,000 g/mol、さらに好ましくは500〜100,000 g/molであり、この場合、1,000〜20,000 g/molならびに2,000〜7,500が特に好ましい。
【0026】
本発明による高分子ポリグリセロールコアは、スルホン酸化に付される。好ましくはSO3およびピリジンの複合体が、スルホン酸化試薬として、そして高分子ポリグリセロールコアのOH基と等モルである濃度で用いられる。その結果生じる0〜100%の官能化、即ちスルホン酸化は、SO3対ポリグリセロールのOH基の比により調整され得る。到達されるスルホン酸化度は、好ましくは1〜100%、特に好ましくは70〜95%、さらに特に好ましくは75〜92%である。
【0027】
本発明による「スルホン酸化度」とは、高分子ポリグリセロールコアのグリセリン単位の官能化OH基のパーセンテージを意味する。官能化は、-SO3Hまたは-SO3Na基によるグリセリン単位の1つまたは複数のOH基の置換に、あるいはグリセリン単位の1つまたは複数のOH基でのオリゴマースペーサーの結合に起因する。
【0028】
オリゴマースペーサーは、以下の一般式:
-(CH2n-または-[(CH2m-O]n-
(式中、mは1〜100、好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜10、さらに好ましくは2であり、そして
nは1〜50,000、好ましくは1〜5,000、さらに好ましくは1〜100である)
を有し、そしてそれに-OSO3Hまたは-OSO3Na基を結合している。
オリゴマースペーサーは、例えばオリゴエチレングリコール(OEG)鎖、ポリエチレングリコール(PEG)鎖、脂肪族炭水化物鎖であり、あるいはその他の線状ポリエーテルでもある。
【0029】
本発明による高分子ポリグリセロールコアならびに硫酸化条件、即ち硫酸化度の選択によって、本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールの分子量は、好ましくは200〜5,000,000 g/mol、さらに好ましくは2,000〜50,000 g/mol、特に好ましくは5,000〜13,500 g/mol、特に好ましくは5,500 g/molまたは11,000 g/molまたは21,500 g/molまたは41,000 g/molまたは6,800 g/molまたは8,600 g/molまたは12,300 g/molである。
【0030】
本発明による樹木状ポリグリセロール硫酸塩の特に好ましい実施形態は、それぞれ実施例1の化合物2a(表1参照)または実施例4の化合物dPGS2500/85(表3参照)のように、2,500 g/molの平均分子量、85%の硫酸化度、および5,500 g/molの分子量を有する高分子ポリグリセロールコアを有する。
【0031】
本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールのさらに特に好ましい実施形態は、実施例1の化合物2dのように、5,000 g/molの平均分子量、79%の硫酸化度、および10,500 g/molの分子量を有する高分子ポリグリセロールコアを有する(表1参照)。
【0032】
本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールのさらに特に好ましい実施形態は、実施例4の化合物dPGS2500/92のように、2,500 g/molの平均分子量、92%の硫酸化度、および6,800 g/molの分子量を有する高分子ポリグリセロールコアを有する(表3参照)。
本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールのさらに特に好ましい実施形態は、実施例4の化合物dPGS4000/84のように、4,000 g/molの平均分子量、84%の硫酸化度、および8,600 g/molの分子量を有する高分子ポリグリセロールコアを有する(表3参照)。
【0033】
本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールのさらに特に好ましい実施形態は、実施例4の化合物dPGS6000/76のように、6,000 g/molの平均分子量、76%の硫酸化度、および12,300 g/molの分子量を有する高分子ポリグリセロールコアを有する(表3参照)。
【0034】
当該目的はさらに、疾患の治療のための薬剤としての本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールおよび/または本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールの使用により、解決される。
本発明による化合物は、例えば、薬剤として用いられる場合、1つまたは複数の本発明の化合物ならびに製薬上許容可能な担体を含む製剤組成物の形態で提供され得る。好ましくはこれらの製剤組成物は、単位剤形、例えば錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、滅菌非経口溶液または懸濁液を有する。さらなる剤形は、当業者に既知である。
【0035】
薬剤または製剤組成物は、治療的有効量の薬剤またはいくつかの薬剤、即ち治療的有効量の1つまたは複数の本発明の化合物を含む。治療されるべき疾患にもとづいて、そして患者の状態を考慮して、治療的有効量を当業者は確定し得る。薬剤または製剤組成物は、適切には、約5〜1000 mg、好ましくは約10〜500 mgの本発明による化合物を含有する。
【0036】
製薬上許容可能な担体および/または賦形剤は、所望の適用経路(例えば経口、非経口)によって、広範な種々の形態を有し得る。適切な担体および賦形剤は当該技術分野で既知であり、そして当業者により選択され得る。担体は、不活性製剤賦形剤、例えば結合剤、沈殿防止剤、滑剤、風味剤、甘味剤、防腐剤、着色剤およびコーティング剤を包含する。
【0037】
本発明による受容スルホン酸ポリグリセロールおよび/または本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールを用いることにより治療され得る疾患は、好ましくは炎症性疾患である。
治療的介入のためにすべての炎症プロセスが考慮されるが、この場合、血流からの白血球の移動は病理学的に関連し、そして組織損傷を生じる。慢性炎症性疾患、例えば慢性関節リウマチ、喘息および乾癬のほかに、本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールは虚血性再還流障害または移植片拒絶の場合にも考え得る。
【0038】
したがって本発明による化合物は、好ましくは、慢性炎症性疾患、特に慢性関節リウマチ、喘息および乾癬の治療のために、ならびに虚血性再還流障害または移植片拒絶の治療のために用いられる。
さらに好ましくは、炎症性疾患は、セレクチン媒介性白血球接着が異常調節される疾患である。
【0039】
本発明の化合物の抗炎症作用は、例えば、それらにより媒介される白血球の減少に起因すると考えられる。その結果、炎症部位での分泌サイトカインによるさらなる免疫細胞の活性化は大いに低減される(さらなる詳細に関しては、実施例参照)。
【0040】
慢性炎症性プロセスにおいて、繊維症が組織損傷後に発症する。それにより、2つのサイトカイン、即ちIFNγおよびIFNαが重要な役割を演じる。IFNγは、白血球の特定の集団(TおよびNK細胞)から選択され、そしてマクロファージの活性化をもたらし、これは次に、
1)加水分解酵素ならびに反応性酸素および窒素種を産生し(これが隣接組織の破壊をもたらす)、そして
2)TNFαを放出する(これが隣接内皮細胞上の細胞接着分子の発現増大ならびに白血球の活性化をもたらす)。
【0041】
したがって、白血球の動員増大が炎症領域で観察される。
さらに当該目的は、セレクチン阻害薬としての本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールおよび/または本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールの使用により解決される。
【0042】
それにより、選択されるのはL-セレクチンおよび/またはP-セレクチンの阻害薬の使用である。
本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールおよび/または本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールは高親和性でL-およびP-セレクチンと結合(それぞれ10 nMまたは40 nMのIC50、実施例3参照)し、したがってそれらのリガンドとの相互作用を遮断する。白血球-内皮細胞接触は低減され、したがって炎症部位への白血球の移動増大が抑止される。
【0043】
したがって本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールおよび/または本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールは、セレクチン媒介性白血球接着の阻害に適している。
さらに当該目的は、セレクチン指示薬としての本発明による樹木状ポリグリセロールスルホン酸塩および/または本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールの使用により解決される。
【0044】
本発明による「セレクチン指示薬」は、セレクチンまたはセレクチンのうちの1つ、例えばL-および/またはP-セレクチンと特異的に結合し、したがって、特にin vitroで、細胞中で、組織中で、器官中で、組織切片中で、しかし特にin vivoでも、セレクチンを標的化し、局在化し、および/または可視化するために用いられ得る。本特許出願の教示を適用することにより、当業者は本発明による化合物をセレクチン指示薬として用い得る。
【0045】
この目的のために、本発明の化合物は好ましくはシグナル伝達分子を負荷されるか、あるいはシグナル伝達分子は本発明の化合物と結合される。
好ましいシグナル伝達分子は、放射性同位元素、例えば124I、125Iまたは18Fで標識された分子、染料、特に蛍光団、例えばアミノメチルクマリン、フルオロセイン、シアニン、ローダミンおよびそれらの誘導体、あるいは発色団で標識された分子である。さらにシグナル伝達分子は、蛍光供与体または受容体、ならびに蛍光受容体または消光体であり得る(これらは特に、蛍光供与体/受容体および蛍光受容体/消光体の一部として用いられ得る)(即ち、FRET対として)。
【0046】
これまでは、炎症源の局在化および特性化は、画像臨床診断の利用可能な方法により申し分なく解決されているわけではない。本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールおよび/または本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールによる炎症領域の特異的ターゲッティングのために、これらの化合物はシグナル供与体(放射性同位体、NIR染料、磁石)を負荷され、そして可視化のために用いられる。したがって要件は、炎症領域でのシグナルの特異的結合(L-およびP-セレクチンとの)ならびに蓄積である。
【0047】
したがって本発明の化合物は、好ましくは炎症性疾患の診断のために用いられる。それにより、セレクチンのターゲッティングは、炎症の領域で起こる。
本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールおよび/または本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールはさらにヘパリン類似体として作用し、したがってヘパリンと同様に、ケモカインのいくつかと特異的に結合し得る。これらのケモカインは、前炎症性ケモカイン、特にTNFα、IL‐1、IL‐6、ならびにIL‐8およびMIP-1βである。
【0048】
本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールおよび/または本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールによるINFγまたはTNFαのようなケモカインの抑制性結合は、ケモカインの受容体との相互作用を阻止し、これが組織損傷および白血球溢出の低減を生じる。
【0049】
セレクチン、ケモカイン、凝固因子、特にL-およびP-セレクチンのようなタンパク質とのそれらの特異的相互作用のため、本発明の化合物は好ましくはさらなるin vitro適用に用いられる:
- 本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールおよび/または本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールは(市販のヘパリンセファロースと同様に)、マトリックス上に固定される。
【0050】
固定化のための好ましいマトリックスまたは表面はそれぞれ、使用、例えば用いられる分離技法によって、無機、ならびに高分子の天然および合成材料である。実例は、シリコンベースの表面(例えばガラス、シリカ)、ならびに種々の官能化および非官能化ポリマー(例えばデキストラン、アガロース、セファロース、ならびに合成親水性ポリマー)である。
【0051】
さらに固定化のためのマトリックスまたは表面はそれぞれ、無機酸化物表面、磁化または非磁化表面、シリコン含有表面、ガラス表面、シリカ膜、珪藻土、粘土、および当業者に既知であるさらなる表面から成る群から選択される。さらに固定化のためのマトリックスまたは表面はそれぞれ、粒子、膜、マトリックスまたは固相であり得る。
【0052】
- 好ましくは固定される本発明の化合物は、複合溶液または生物学的試料(例えば体液、血漿、全血、血清、さらに血液、細胞懸濁液、細胞培養の上清由来の試料)およびその他の生体分子含有溶液の分別のために、ならびにこれらの溶液/試料からの特定タンパク質(例えばL-セレクチン、P-セレクチン、ケモカイン、凝固因子)の精製のために用いられる。
【0053】
- 本発明による樹木状スルホン酸ポリグリセロールおよび/または本発明による樹木状硫酸ポリグリセロールは、例えばELISAにおいて、捕捉分子として用いられる。
樹木状硫酸およびスルホン酸ポリグリセロールは、それらが報告された阻害剤の利点を併有するため、大きな抗炎症能力を有する:
- 容易な合成(費用-効果的)
- 生体適合性(ヘパリン硫酸塩/ヘパリンとの高類似性)
- L-およびP-セレクチンに対する高親和性(IC50=それぞれ10または40 nM;in vitro測定値)。Biocoreでのin vitro分析は、活性(L-およびP-セレクチンとの結合)がそれらのサイズによって増大する、ということを示す。
【0054】
- 白血球の活性化を阻害するケモカインの結合。
本発明の樹木状ポリグリセロール硫酸塩はさらに、白血球-内皮細胞相互作用の阻害薬として開示されており、この場合、L-およびP-セレクチンリガンド構造は硫酸塩基に単純化され、そしてポリグリセロール足場に連結された。化合物は、接触性皮膚炎マウスモデルにおいて安全に用いられ、免疫応答を減衰させた(実施例および図面も参照)。
以下の図面および実施例により、本発明を例証する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1:樹木状硫酸ポリグリセロールの合成スキームである。
【図2】図2:樹木状スルホン酸ポリグリセロールの合成スキームである。
【図3】図3:選択樹木状硫酸ポリグリセロールによるL-セレクチンリガンド結合の抑制。 L-セレクチンとその合成リガンド(sLeX-チロシン硫酸塩)との結合を100%に設定した(対照値)。 ポリグリセロールコアの平均分子量[g/mol]:2a、2500;2c、10,000;2d、20,000。硫酸化度は、すべての硫酸ポリグリセロールに関して約80%であった(表1も参照)。
【図4】図4:樹木状硫酸ポリグリセロール2cによるセレクチンの競合的抑制。 合成リガンド(sLeX-チロシン硫酸塩)との結合をそれぞれ100%に設定した(対照値)。
【図5】図5:樹木状ポリグリセロールの誘導体2dによるL-セレクチンリガンド結合の硫酸化度依存性競合的抑制。 誘導体を10 nMの濃度で用いた。L-セレクチンとその合成リガンド(sLeX-チロシン硫酸塩)との結合を100%に設定した(対照値)。
【図6】図6:樹木状硫酸ポリグリセロール(dPGS)の例。
【図7】図7:dPGSは単球細胞株THP-1の増殖を抑制しない。 増殖検定:アラマーブルー T細胞の生命力は、プレドニソロンとの比較において異なる濃度でのdPGSにより影響を及ぼされない。
【図8】図8:dPGSはPBMCにおけるアポトーシスの誘導を示さない。 A:PBMC+dPGS(+/−CD3刺激) B:PBMC+dPGS(+/−LPS刺激) アポトーシス検定:アネキシンV読出し。
【図9】図9:dPGSはネズミ樹木状細胞(DC)におけるTNFα分泌を抑制しない。 ネズミ樹木状細胞+dPGS(+/−LPS) 検定:ELISA。
【図10】図10:dPGSはヒトT細胞におけるTNFα分泌の干渉を示さない。 PBMC+/−抗CD3ビーズ+dPGS 検定:ELISA。
【図11】図11:dPGSのセレクチン結合特異性。 4.000 g/molの高分子コアのMnおよび84%の硫酸化度を有するdPGSを用いた(dPGS4000/85)。
【図12】図12:セレクチン結合は、樹木状ポリグリセロールの硫酸化によっている。6.000 g/molの高分子コアのMnを有するdPGSをもちいた(dPG6000)。
【図13】図13:dPGSのコアサイズおよび硫酸化率依存性セレクチン結合。
【図14】図14:dPGSは、急性TMA誘導性アレルギー性接触性皮膚炎モデルにおける浮腫形成を低減する。 dPGSをマウスの頚襞中に注入した。
【図15】図15:dPGSは、急性TMA誘導性アレルギー性接触性皮膚炎後の顆粒球遊出を低減する。 dPGSをマウスの頚襞中に注入した。
【図16】図16:dPGSは、亜慢性TMA誘導性アレルギー性接触性皮膚炎モデルにおける浮腫形成を低減する。
【図17】図17:dPGSは、亜慢性TMA誘導性アレルギー性接触性皮膚炎モデルにおける顆粒球および好中球の浸潤を防止する。 A:顆粒球(ペルオキシダーゼ活性) B:好中球(エラスターゼ活性)、媒体に標準化(=0)。
【図18】図18:dPGSは、炎症部位でのIL‐2およびIL‐4濃度を低減する。 亜慢性TMA試験、耳ホモジネートのELISA。
【実施例】
【0056】
実施例
実施例1:樹木状硫酸ポリグリセロールの合成
実質的に[11]に記載されているように、樹木状硫酸ポリグリセロールの合成を実施する。
材料:
SO3/ピリジン複合体を、Fluka(Buchs, Switzerland)から購入した。試薬を、さらに精製せずに用いた。溶媒N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、p.a.品質、Roth, Karisruhe, Germanyから購入)をCaH2上で乾燥し、さらなる使用前に分子篩4 Å上で保存した。5 lビーカー中の蒸留水中の再生セルロース(SpectraPore 6/Roth)の管材料を用いて透析を実行したが、この場合、48時間の期間全体で溶媒を3回取り替えた。
【0057】
1. 高分子ポリグリセロールコア
ポリグリセロール 1は、樹木状(木のような)分枝を有する容易に入手可能な明確に定義されたポリマーであり、これは、グリシドールの制御陰イオン性重合により得られる[12〜14]。1の分枝度(60%)は、完全グリセロール・デンドリマーの分枝度(100%)より低い[15]。しかしながら、物理化学的特質は同様である[16]。分子量(1,000〜30,000 g/mol)および重合度(DP)は単量体および開始剤の比率により容易に適応され得るし、そして狭い多分散度が得られる(天啓的には<2.0)[14]。脂肪族ポリエーテルポリオール(例えば多糖、ポリ(エチレングリコール))の生体適合性特質のため、概して類似の特質がポリグリセロールについて予測される[13]。さらに、オリゴグリセロール(2〜10単量体単位を有する)はそれらの毒物学的特質に関して詳細に研究され、そして栄養学的および薬理学的添加剤として認可された[16、17]。したがって樹木状ポリグリセロール 1は、薬剤のための、そして樹木状ポリアニオン(ポリスルフェート、ポリカルボキシレート、ポリスルホネート)の生成のための高機能性担体として適切であるべきである。
【0058】
さらに、ポリグリセロール(PG)1a(Mn=2,500 g/mol、Mw/Mn=1.6)、1b(Mn=5,000 g/mol、Mw/Mn=1.6)、1c(Mn=10,000 g/mol、Mw/Mn=1.8)および1d(Mn=20,000 g/mol、Mw/Mn<2.0)を、前記[14]のように、1a〜cの場合は開始剤として1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(TMP)を用いて、そして1dの場合は開始剤としてペンタエリスロール(PE)を用いて調製した。
【0059】
2. 分析
Bruker ARX 300分光計で、100 mg/mlの濃度で、D2O中で、1H NMRおよび13C NMRスペクトルを記録した(それぞれ300または75.4 MHで操作)。KBrプレートを用いて、Bruker IFS 88 FT-IR分光計で、IR測定を実施した。化合物2a〜dの硫酸化度(ds)(表1)を、元素分析を用いて確定した。
【0060】
3. 硫酸ポリグリセロールの合成
溶媒としての乾燥DMF中でコアポリマーとして異なる分子量を有する樹木状ポリグリセロール(1a〜d)を、硫酸化試薬としてSO3/ピリジン複合体を用いて、Alban等[18]により記載されたβ-1,3-グルカンの硫酸化のための確立された方法の変法により、硫酸ポリグリセロールの合成を実行した(スキーム1参照)。DMF中のSO3/ピリジン複合体の濃度ならびにそのモル比(SO3/OH基)をすべての場合に一定に保持した。
【0061】
合成スキームに関しては、図1を参照。
25 mlのDMF中の5.0 gのポリグリセロール(1a、1b、1c、1d)(OH基67.5 mmol)の撹拌溶液に、67.5 mlのDMF中の10.75 g(67.5 mmol)のSO3/ピリジン複合体の溶液を、アルゴン雰囲気下で4時間、滴下した。60℃でさらに2時間、室温で18時間、反応混合物を撹拌後、50 mlの蒸留水を付加した。水溶液に、直ちに、1 MNaOHをpHが11に達するまで付加した。真空濃縮は未精製産物を生じ、これを水中での透析によりさらに精製した。溶媒を蒸発させた後、硫酸ポリグリセロール2a〜dを淡黄色固体として得て、これをさらにP22上で乾燥した。
【0062】
蒸留水中での透析後、良好な収率(50〜75%)および高純度(1H NMRにより>98%)で硫酸ポリグリセロール(2a〜d)を得た。
収量: 7.49 g(2a);8.96 g(2b);7.01 g(2c);6.86 g(2d)。
1H NMR(300 MHz,D2O): δ(ppm)0.98[t, 3H, CH3CH2C(CH2O)3-PG-OSO3Na],1.48[m, 2H, CH3CH2C(CH2O)3-PG-OSO3Na],3.40-4.00[m, CH3CH2C(CH2O)3-PG-OSO3Na],4.19, 4.33, 4.38[PG-OSO3Na],4.72[PG-OCH2CH(OSO3Na)CH2OSO3Na]。
注: 2dの場合、0.98および1.48でのピークは当てはまらない。
13C NMR(D2O,75.4 MHz): δ(ppm)66.9, 67.6, 68.2, 69.4, 70.3, 75.8, 77.2, 78.3[PG-OSO3Na]。
IR(KBr): v(cm-1)3470[OH],2930[CH],1260[S=O],780[C-O-S]。
元素分子後のイオウ含量: 2a:15.38%S、2b:14.28%S、2c:15.20%S、2d:13.96%。
【0063】
1H-NMR分光分析により、ポリグリセロールコアの分解は観察されなかった。
SO3/ピリジン濃度(OH基と等モルである)を用いて、全遊離OH基の約85%を硫酸化した(表1)。この高硫酸化度は、ポリグリセロールが多糖より容易に硫酸化に到達可能である、ということを示す(24)。
【0064】
【表1】

【0065】
NMR、IRおよび元素分析によるすべての出発材料1a〜dおよび産物2a〜dの詳細分析は、これらの樹木状硫酸ポリグリセロールの構造および官能化度を確証した。非官能化ポリグリセロールの分子量を、沈降後の1H NMRデータを用いることにより確定した。
【0066】
実施例2:樹木状スルホン酸ポリグリセロールの合成
材料:
ビニルスルホン酸のナトリウム塩(水中25重量%溶液)はSigma-Aldrich社から市販されており、それをさらに精製せずに用いた。水中での合成スルホン酸塩の透析のために、1,000 g/molのMWCOを有するRoth社からの再生セルロース(SpectraPore 6)製の透析管を用いた。
【0067】
1. 高分子ポリグリセロールコア
実施例1参照。
【0068】
2. 分析
NMR分光分析:それぞれ300 MHzまたは75.4 MHzでBruker ARX 300分光計を用いて、100 mg/mlの濃度で、D2O中で、1H NMRおよび13C NMRスペクトルを記録した。スルホン酸化度を、元素分析を用いて確定した。
【0069】
3. スルホン酸ポリグリセロールの合成
合成スキームに関しては、図2参照。
10 gのポリグリセロール 1b、1d(2.0 mmol;OH基約135 mmol)を20 mlの水中に溶解し、1 mlの水中の757 mg(13.5 mmol)の水酸化カリウムの溶液を付加して、ポリグリセロールのOH基の10%脱プロトン化に達した。氷浴の助けを借りて、反応溶液を約5℃に冷却した。次に、25重量%水溶液の形態のビニルスルホン酸(26.347 g;202.5 mmol)のナトリウム塩を、滴下漏斗を介して4時間、徐々に付加した。付加完了後、反応混合物を室温に加熱し、さらに3日間撹拌した。真空中で溶媒を除去後、得られた未精製産物を24時間水中で透析することによりさらに精製したが、この場合、水を3回取り替えた。その後、未精製産物を真空濃縮し、五酸化リン上で干燥器中で残存水の除去のために乾燥した。3〜10%の官能化度を有するわずかに黄色の高粘性液体の形態で、合成硫酸ポリグリセロール3b、3dを得た。
収量: 3b:6.58 g;3d:5.48 g。
【化1】

元素分析の結果:3b:0.58%S、3d:1.30%S。
【0070】
1H-NMR分光分析により、ポリグリセロールコアの分解は観察されなかった。
【0071】
【表2】

【0072】
実施例3:in vitroでの樹木状硫酸ポリグリセロールとセレクチンの結合
競合的結合検定において、硫酸ポリグリセロールとL-、P-およびE-セレクチンとの結合を、Biacore Xでの表面プラズモン共鳴により分析した。このアプローチにおいて、セレクチンを先ずコロイド金ビーズ上に固定した。次に分析物とセレクチンリガンドsLeX-チロシン硫酸塩(センサーチップと結合される)との結合を測定する。硫酸ポリグリセロールとともに分析物を予備インキュベートすることにより、分析物とチップ連結リガンドとの結合は、硫酸ポリグリセロールとセレクチンのリガンドの結合ドメインとの相互作用が特異的である場合、濃度依存的やり方で低減される。この場合、結合シグナルの減少が観察される。
【0073】
図3は、選択樹木状硫酸ポリグリセロールによるL-セレクチンリガンド結合の濃度依存的抑制を示す。分子量の増大に伴って、硫酸ポリグリセロールは匹敵する硫酸化度を有する漸増抑制能力を示す。図3から明らかなように、化合物2dは約10 nMのIC50値を有する。
【0074】
セレクチン特異的結合のさらなる特性化に関して、ポリグリセロール誘導体2cとともに予備インキュベートした後、L-、P-およびE-セレクチンの抑制曲線を得た(図4参照)。ここで、L-セレクチンは誘導体2cにより最良に抑制され(IC50=10 nM)、P-セレクチンに関しては、化合物は30 nMのIC50を有し、一方、E-セレクチンは抑制されない、ということは明らかである。
【0075】
L-セレクチン結合に及ぼす樹木状ポリグリセロールの硫酸化度の影響を、誘導体2d(PGコアのMn=20,000 [g/mol])の例に関して調べた。10 nMの濃度、ならびに10%、38%および76%の硫酸化度で、誘導体2dを用いた。さらにまた、分析物L-セレクチンと固定化リガンドsLeX-チロシン硫酸塩との間の相互作用に及ぼす硫酸ポリグリセロールの影響を測定した(競合的結合検定、上記参照)。対照値を100%に設定したが、これは、L-セレクチンとチップ連結リガンドsLeX-チロシンとの間の相互作用により発生される結合シグナルに対応する。分析物L-セレクチンを10 nMの種々の硫酸化ポリグリセロール誘導体とともに予備インキュベートすることにより、L-セレクチン結合シグナルの低減が硫酸化度増大を伴って測定される蛾、これを、対照値と比較したパーセント値として図5に示す。2dの10%硫酸化は、明らかに、予備インキュベーション期中にL-セレクチンと相互作用するのに十分でないと思われる;結合シグナルは対照値に対応する。2dの38%硫酸化は、L-セレクチンリガンド結合を対照値の結合シグナルの約60%に低減し、そして2dの76%硫酸化はそれを対照値の約45%に低減する。これらの測定値は、硫酸化度および結合親和性が正に相関する、ということを示す。さらに硫酸化度の閾値は特に、L-セレクチンとの相互作用を成し遂げるために必要であると思われる。
【0076】
実施例4:樹木状ポリグリセロール(dPG)および硫酸化誘導体(dPGS)
樹木状ポリグリセロールは、樹木様分枝を有する明確に定義されたポリマーである。実施例1に記載したように、詳細合成を実行した。重合度および分枝度は容易に適応され、そして狭い多分散性が得られる。
【0077】
実施例1に記載したように、240〜6,000 Daの分子量(MW)を有する異なるコア構造を、われわれは合成した。硫酸化試薬としてSO3/ピリジン複合体を用いて、化合物をさらに官能化した。樹木状ポリグリセロール足場上の硫酸塩の負荷パーセンテージ(硫酸化度)を元素分析により確定し、10〜92%の範囲であった。
dPGおよびdPGSを4℃で保存し、水溶液は−20℃で6ヶ月保存後に安定であった。
dPGSの例に関しては、図6を参照。
【0078】
【表3】

【0079】
実施例5:硫酸ポリグリセロールの細胞傷害性および免疫調節特性
本発明のポリ陰イオン性dPGSが細胞培養においてそしてin vivoでマウスにおいて安全に用いられ得るか否かを試験するために、化合物dPGS6000/76を詳細に例示的に特性化した。
細胞傷害性を試験するために、単球細胞株THP-1を用いて増殖検定を実施した。化合物dPGS6000/76は、10 μMの濃度まで細胞増殖の抑制を示さなかった(図7参照)。末梢血単核球(PBMC)を30 μMまでのdPGS6000/76の存在下で24時間培養した場合、細胞刺激と関係なく、アポトーシス細胞のわずかな増大のみが観察された。
次に、細胞性免疫調節活性に及ぼすdPGSの影響を調べた。ネズミ樹状細胞(図9参照)およびヒトPBMCのT細胞分画(図10参照)に関して、サイトカイン放出を特性化した。対照(dPGSを付加せず)と比較して、mTNFaおよびhuIL‐2の濃度は有意に変わらなかった。
【0080】
実施例6:樹木状硫酸ポリグリセロールはin vitroでのセレクチン-リガンド結合を遮断する
in vitroでのdPGSのセレクチン結合を評価するために、実施例3に記載したように、高感受性Biacoreベースの競合的結合検定を適用したが、これは、阻害化合物の50%阻害濃度(IC50)の確定を可能にする。
dPGSのセレクチン特異性を分析した。E-セレクチン結合はdPGS4000/84により影響を及ぼされなかったが、一方、L-およびP-セレクチンは効率的に抑制され、8および30 nMのIC50値を得た(図11参照)(再確証のために、実施例3に記載したようにこれらの実験を実行した)。
【0081】
次にセレクチン結合の硫酸塩依存性を、同一足場上に異なる官能化を保有する化合物を用いて確証した。30 nMの限定濃度で、誘導体の阻害作用を試験した(図12参照)。硫酸塩を全く有さないかまたは10%の硫酸塩を有するコア構造dPG6000はL-セレクチン-リガンド結合を妨げなかったが、これに比して、38%および76%硫酸化は、比結合をそれぞれ55%または26%に低減した(実施例3に記載したように、そして再確証のために、これらの実験を実行した)。
【0082】
次に、セレクチン阻害に及ぼす樹木状コアサイズの影響を特性化した(図13参照)。240 Da(3単量体単位)〜6,000 Da(80単量体単位)の範囲の分子量を有する樹木状ポリグリセロールを合成し、そしてさらに高度に硫酸化した。官能化度は、76〜92%の範囲であった。
【0083】
小化合物トリグリセロール(TGS)240/83は高マイクロモル範囲までL-セレクチン結合に及ぼす阻害を示さなかったが、しかし化合物dPGS2500/85に関しては、IC50は80 nMであった。硫酸化度をさらに7%増大することにより、その結果生じる化合物dPGS2500/92のIC50値はさらに4 nMに低減した。
【0084】
セレクチン結合は臨界サイズのポリマーコアを要するが、しかし高分子足場上の硫酸塩基の密度(硫酸化度)はより大きな重要性を有すると思われる、ということは明らかである。コアサイズのさらなる増大および等しい官能化は、セレクチン結合を改善しなかった。比較のために、L-およびP-セレクチン結合ポリマーヘパリンはこの試験に包含された。このポリ硫酸化グルコサミノグリカンは、15,000 Daの平均分子量を有し、そして約2.4硫酸塩/二糖を保有する。この化合物のL-セレクチン結合に関するIC50値は15 μMであり、それゆえdPGS2500/92より約4000倍大きかった。
【0085】
【表4】

【0086】
実施例7:dPGSは急性および亜慢性皮膚炎症モデルにおいて白血球動員を低減する
次に、皮膚炎症に関するネズミモデルにおける樹木状硫酸ポリグリセロールの影響を調べた。
急性TMA誘導性炎症応答において、化合物dPGS6000/76は浮腫形成を、したがって耳腫脹を防止した。30 mg/kgの用量では、抗炎症効力はコルチコステロイド・プレドニソロンに匹敵した(図14参照)。この抗炎症作用は、顆粒球遊出のdPGS媒介性低減に起因した(図15参照)。
【0087】
亜慢性炎症モデルにおいて、TMA誘発試験の8日後、dPGSの保護作用は依然として明白であった。dPGS処理マウスの耳厚は低減されたが、しかしプレドニソロン陽性対照の場合と同様に有効であるというわけではなかった(図16参照)。
さらに、顆粒球および好中球浸潤の明らかな低減が測定された(図17参照)、プレドニソロン標準に匹敵した。
【0088】
次に、マウス耳ホモジネート中のサイトカインレベルを測定することにより、未処置T細胞の活性化を分析した。dPGS処置マウスにおけるTh1型IL‐およびTh2型IL‐4の明白な濃度依存的減少はさらに、dPGSがTMA誘導性接触性過敏症におけるT細胞依存性皮膚炎症を弱める、ということを示す(図18参照)。
【0089】
【化2】

【0090】
【化3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
a)1〜1,000個のOH基を有するポリヒドロキシ化合物である多機能性出発物質分子上の式(RO-CH22CH-OR(ここで、R=Hまたはさらなるグリセリン単位)を有するグリセリンの反復単位で構成される高分子ポリグリセロールコアであって、0〜100%の分枝度および100〜1,000,000 g/molの平均分子量を有するコア;
b)-SO3Hまたは-SO3Na基によるグリセリン単位の1つまたは複数のOH基の置換、
あるいはグリセリン単位の1つまたは複数のOH基でのオリゴマースペーサーの結合であって、
ここで、オリゴマースペーサーは、以下の一般式:
-(CH2n-または-[(CH2m-O]n-
(式中、mは1〜100であり、そしてnは1〜50,000である)を有し、そしてそれに-SO3Hまたは-SO3Na基を結合し、したがって1〜100%のスルホン酸化度が得られる結合;ならびに
c)110〜1,500,000 g/molの分子量
を特徴とする樹木状スルホン酸ポリグリセロール。
【請求項2】
a)1〜4個のOH基を有する多機能性出発物質分子上に形成される高分子ポリグリセロールコア
を特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項3】
a)さらにヘテロ官能基、特にSH基、NH2基を含有する多機能性出発物質分子上に形成される高分子ポリグリセロールコア
を特徴とする請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
a)60%の分枝度を有する高分子ポリグリセロールコア
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
a)1,000〜20,000 g/molの平均分子量を有する高分子ポリグリセロールコア
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
b)30%のスルホン酸化度
を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
b)30%〜100%のスルホン酸化度
を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
c)1,100〜30,000 g/molの分子量
を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
シグナル伝達分子を負荷されるかまたはそれと結合されるシグナル伝達分子を有する請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
シグナル伝達分子が放射能標識誘導体の群または染料、特に蛍光団および発色団の群から選択される請求項9記載の化合物。
【請求項11】
マトリックスに固定される請求項1〜10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
マトリックスが無機または高分子性のものである請求項11記載の化合物。
【請求項13】
多機能性出発物質分子およびスルホン酸化試薬の使用を包含する請求項1〜12のいずれかに記載の化合物の製造方法。
【請求項14】
疾患の治療のための薬剤としての請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項15】
炎症性疾患の治療のための薬剤としての請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項16】
炎症性疾患が慢性炎症性疾患、特に慢性関節リウマチ、喘息および乾癬である請求項15記載の使用。
【請求項17】
炎症性疾患が虚血性再還流障害または移植片拒絶である請求項15記載の使用。
【請求項18】
セレクチン阻害薬である請求項1〜12のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項19】
セレクチン指示薬としての請求項1〜12のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項20】
L-セレクチンおよび/またはP-セレクチンの阻害薬または指示薬としての請求項18または19記載の使用。
【請求項21】
タンパク質の結合のための請求項1〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
タンパク質がセレクチン、ケモカインまたは凝固因子である請求項21記載の使用。
【請求項23】
ケモカインが前炎症性サイトカイン、特にTNFα、IL‐1、IL‐6から、ならびにIL‐8およびMIP-1βから成る群から選択される請求項22記載の使用。
【請求項24】
生物学的試料、特に体液、全血、血清、細胞懸濁液および細胞培養の上清からのタンパク質の精製のための請求項21〜23のいずれかに記載の使用。
【請求項25】
捕捉分子としての請求項21〜24のいずれかに記載の使用。
【請求項26】
疾患の治療のための薬剤としての、以下の:
a)1〜1,000個のOH基を有するポリヒドロキシ化合物である多機能性出発物質分子上の式(RO-CH22CH-OR(ここで、R=Hまたはさらなるグリセリン単位)を有するグリセリンの反復単位で構成される高分子ポリグリセロールコアであって、0〜100%の分枝度および100〜1,000,000 g/molの平均分子量を有するコア;
b)-OSO3Hまたは-OSO3Na基によるグリセリン単位の1つまたは複数のOH基の置換、
あるいはグリセリン単位の1つまたは複数のOH基でのオリゴマースペーサーの結合であって、
ここで、オリゴマースペーサーは、以下の一般式:
-(CH2n-または-[(CH2m-O]n-
(式中、mは1〜100であり、そしてnは1〜50,000である)を有し、そしてそれに-OSO3Hまたは-OSO3Na基を結合し、したがって1〜100%の硫酸化度が得られる結合;ならびに
c)200〜5,000,000 g/molの分子量
を特徴とする樹木状硫酸ポリグリセロールの使用。
【請求項27】
炎症性疾患の治療のための薬剤としての、以下の:
a)1〜1,000個のOH基を有するポリヒドロキシ化合物である多機能性出発物質分子上の式(RO-CH22CH-OR(ここで、R=Hまたはさらなるグリセリン単位)を有するグリセリンの反復単位で構成される高分子ポリグリセロールコアであって、0〜100%の分枝度および100〜1,000,000 g/molの平均分子量を有するコア;
b)-OSO3Hまたは-OSO3Na基によるグリセリン単位の1つまたは複数のOH基の置換、
あるいはグリセリン単位の1つまたは複数のOH基でのオリゴマースペーサーの結合であって、
ここで、オリゴマースペーサーは、以下の一般式:
-(CH2n-または-[(CH2m-O]n-
(式中、mは1〜100であり、そしてnは1〜50,000である)を有し、そしてそれに-OSO3Hまたは-OSO3Na基を結合し、したがって1〜100%のスルホン酸化度が得られる結合;ならびに
c)200〜5,000,000 g/molの分子量
を特徴とする樹木状硫酸ポリグリセロールの使用。
【請求項28】
炎症性疾患が慢性炎症性疾患、特に慢性関節リウマチ、喘息および乾癬である請求項27記載の使用。
【請求項29】
炎症性疾患が虚血性再還流障害または移植片拒絶である請求項27記載の使用。
【請求項30】
セレクチン阻害薬としての、以下の:
a)1〜1,000個のOH基を有するポリヒドロキシ化合物である多機能性出発物質分子上の式(RO-CH22CH-OR(ここで、R=Hまたはさらなるグリセリン単位)を有するグリセリンの反復単位で構成される高分子ポリグリセロールコアであって、0〜100%の分枝度および100〜1,000,000 g/molの平均分子量を有するコア;
b)-OSO3Hまたは-OSO3Na基によるグリセリン単位の1つまたは複数のOH基の置換、
あるいはグリセリン単位の1つまたは複数のOH基でのオリゴマースペーサーの結合であって、
ここで、オリゴマースペーサーは、以下の一般式:
-(CH2n-または-[(CH2m-O]n-
(式中、mは1〜100であり、そしてnは1〜50,000である)を有し、そしてそれに-OSO3Hまたは-OSO3Na基を結合し、したがって1〜100%のスルホン酸化度が得られる結合;ならびに
c)200〜5,000,000 g/molの分子量
を特徴とする樹木状硫酸ポリグリセロールの使用。
【請求項31】
セレクチン指示薬としての、以下の:
a)1〜1,000個のOH基を有するポリヒドロキシ化合物である多機能性出発物質分子上の式(RO-CH22CH-OR(ここで、R=Hまたはさらなるグリセリン単位)を有するグリセリンの反復単位で構成される高分子ポリグリセロールコアであって、0〜100%の分枝度および100〜1,000,000 g/molの平均分子量を有するコア;
b)-OSO3Hまたは-OSO3Na基によるグリセリン単位の1つまたは複数のOH基の置換、
あるいはグリセリン単位の1つまたは複数のOH基でのオリゴマースペーサーの結合であって、
ここで、オリゴマースペーサーは、以下の一般式:
-(CH2n-または-[(CH2m-O]n-
(式中、mは1〜100であり、そしてnは1〜50,000である)を有し、そしてそれに-OSO3Hまたは-OSO3Na基を結合し、したがって1〜100%のスルホン酸化度が得られる結合;ならびに
c)200〜5,000,000 g/molの分子量
を特徴とする樹木状硫酸ポリグリセロールの使用。
【請求項32】
L-セレクチンおよび/またはP-セレクチンの阻害薬または指示薬としての請求項30または31記載の使用。
【請求項33】
タンパク質の結合のための、以下の:
a)1〜1,000個のOH基を有するポリヒドロキシ化合物である多機能性出発物質分子上の式(RO-CH22CH-OR(ここで、R=Hまたはさらなるグリセリン単位)を有するグリセリンの反復単位で構成される高分子ポリグリセロールコアであって、0〜100%の分枝度および100〜1,000,000 g/molの平均分子量を有するコア;
b)-OSO3Hまたは-OSO3Na基によるグリセリン単位の1つまたは複数のOH基の置換、
あるいはグリセリン単位の1つまたは複数のOH基でのオリゴマースペーサーの結合であって、
ここで、オリゴマースペーサーは、以下の一般式:
-(CH2n-または-[(CH2m-O]n-
(式中、mは1〜100であり、そしてnは1〜50,000である)を有し、そしてそれに-OSO3Hまたは-OSO3Na基を結合し、したがって1〜100%のスルホン酸化度が得られる結合;ならびに
c)200〜5,000,000 g/molの分子量
を特徴とする樹木状硫酸ポリグリセロールの使用。
【請求項34】
タンパク質がセレクチン、ケモカインまたは凝固因子である請求項33記載の使用。
【請求項35】
ケモカインが前炎症性サイトカイン、特にTNFα、IL‐1、IL‐6から、ならびにIL‐8およびMIP-1βから成る群から選択される請求項34記載の使用。
【請求項36】
生物学的試料、特に体液、全血、血清、細胞懸濁液および細胞培養の上清からのタンパク質の精製のための請求項34および35のいずれかに記載の使用。
【請求項37】
捕捉分子としての請求項34〜36のいずれかに記載の使用。
【請求項38】
樹木状硫酸ポリグリセロールが、以下の:
a)1〜4個のOH基を有する多機能性出発物質分子上に構築される高分子ポリグリセロールコア
により特性化される請求項26〜37のいずれかに記載の使用。
【請求項39】
樹木状硫酸ポリグリセロールが、以下の:
a)へテロ官能基、特にSH基、NH2基をさらに含有する多機能性出発物質分子上に構築される高分子ポリグリセロールコア
により特性化される請求項26〜38のいずれかに記載の使用。
【請求項40】
樹木状硫酸ポリグリセロールが、以下の:
a)60%の分枝度を有する高分子ポリグリセロールコア
により特性化される請求項26〜39のいずれかに記載の使用。
【請求項41】
樹木状硫酸ポリグリセロールが、以下の:
a)1,000〜20,000 g/mol、好ましくは2,000〜7,500 g/molの平均分子量を有する高分子ポリグリセロールコア
により特性化される請求項26〜40のいずれかに記載の使用。
【請求項42】
樹木状硫酸ポリグリセロールが、以下の:
c)2,000〜50,000 g/mol、好ましくは5,000〜13,500 g/molの分子量
により特性化される請求項26〜41のいずれかに記載の使用。
【請求項43】
樹木状硫酸ポリグリセロールがシグナル伝達分子を負荷されるかまたはそれに結合されるシグナル伝達分子を有する請求項26〜42のいずれかに記載の使用。
【請求項44】
シグナル伝達分子が放射能標識誘導体の群または染料、特に蛍光団および発色団の群から選択される請求項43記載の使用。
【請求項45】
樹木状硫酸ポリグリセロールがマトリックスに固定される請求項30〜44のいずれかに記載の使用。
【請求項46】
マトリックスが無機または高分子性のものである請求項45記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−545545(P2009−545545A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522181(P2009−522181)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006889
【国際公開番号】WO2008/015015
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(509034096)フライエ ウニベルジテート ベルリン (1)
【出願人】(507375443)シャリテー ウニベルジテーツメディツィーン−ベルリン (2)
【Fターム(参考)】