説明

樹木頂点認識方法及び樹木頂点認識装置並びに樹木頂点認識のプログラム

【課題】自動的に単木の頂点を認識する方法および認識装置を提供する。
【解決手段】樹木高算出部14、検索範囲決定部17、第2の樹冠形状指数算出部41、第2の樹木頂点決定部43、閾値算出部35、局所領域設定部36等を備え、検索範囲に対応する樹木高グリッドデータをファイル15から読み込み、このグリッドデータにおけるアスペクト比の最大、最小値を基に樹冠形状をより明瞭にする所定の値に変更し、この変更された最大値、最小値を用い新たな地上開度、地下開度を求め、これらの開度から算出される樹冠形状指数を平均化し、平均化された樹冠形状指数を局所領域又はガウシアンフィルタで平滑化し、検索範囲における樹冠形状指数として算出する。そして、予め設定された局所領域の画像の平均値と標準偏差との和を閾値Hgiとして求め、閾値Hgiより大きい値の樹冠形状指数を樹冠部として抽出し、この樹冠部から最適な単木の頂点を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ計測で得た多数のデータ(DSM、DEM)から単木の頂点を認識する樹木頂点認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
森林のCO2吸収、水源涵養、木材生産などの様々な機能を向上させるためには森林管理が必要である。森林管理を行うに当たっては、樹木本数などの林分パラメータが必要となる。
【0003】
例えば、山地の特定エリアの唐松の本数を特定する場合には、写真画像等のそのエリア内の唐松の樹木の頂点を目視で特定し、これらの総数を求めていた。
【0004】
また、レーザ測距儀(以下、航空レーザ)を活用して樹木本数を推定する場合もある。
【0005】
具体的には、航空レーザ計測により取得されたデータを用いて表層のグリッドデータ(以下、DSM:Digital Surface Model)と地盤のグリッドデータ(以下、DEM:Digital Elevation Model)を作成する。さらに、DSMとDEMデータの差分をとることによって樹木高のグリッドデータを算出し、樹木高や樹木高の極大値を判別指標として単木抽出を行っていた。
【0006】
また、特開2004−33149号公報(特許文献1)は、施業林分における立木の直径、本数及び配置の調査を自動的に行うものである。
【特許文献1】特開2004−33149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、写真画像から目視によって樹木本数を求めた場合は、非常に時間がかかる。特に、エリアが広くなるとそれだけ時間がかかる。また、写真画像から樹木を1本毎に目視で正しく特定していくには、経験が必要である。
【0008】
また、従来のDEM、DSMによって単木抽出を行う手法は、樹冠形状が複雑であることから、一つの樹冠内には複数の極大値が存在しやすく、従来の手法で単木抽出処理を行うと実本数に比べ過剰に抽出されるデメリットがある。
【0009】
本発明は以上の課題を解決するためになされたもので、自動的に単木の頂点を正しく認識する樹木認識装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹木頂点認識方法は、上空から地上を撮影した所定エリアのオルソフォト画像又は/及び所望のグリッドデータを画像化した画像を表示部の画面に表示する一方、前記所定エリア内の、地盤のX、Y、Z座標値及び樹木の表層のx、y、z座標値との差を求め、この差Zci及びXci、Yci座標を樹木高グリッドデータDdiとして得て、この樹木高グリッドデータDdiに基づいて樹木の頂点を認識する樹木頂点認識方法である。
【0011】
コンピュータが、
樹冠形状指数EGiを求めるための前記グリッドデータの検索範囲Mi、前記樹木高グリッドデータDdi、前記樹冠形状指数EGiから樹冠部を抽出するための局所領域を記憶手段に記憶するステップと、
前記画像に対応する各樹木高グリッドデータDdiを中心とした検索範囲Mi毎に、検索方向kipでの各樹木高グリッドデータDppiとの樹木高及び距離から求めたアスペクト比の最大値、最小値で地上開度φ1´、地下開度φ2´を求め、これらの開度に基づいて樹冠形状指数EGiを算出して前記記憶手段に記憶する樹冠形状指数算出ステップと、
前記樹木高グリッドデータDdiに対して前記局所領域を定め、この局所領域毎に前記樹冠形状指数EGiの平均値と標準偏差とを求め、これらの和を閾値として求める閾値算出ステップと、
前記局所領域の前記閾値が求められる毎に、その樹冠形状指数EGiが前記閾値以上かどうかを判断し、閾値を超えているときに、樹冠部として抽出する樹冠部抽出ステップと、
前記樹冠部毎に、該樹木部内に存在する最適な樹木頂点を認識して、該認識した頂点を所定の形状にして前記表示部に表示又は前記頂点の座標値を出力する樹木頂点認識ステップと
を行うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、樹冠形状指数によって、自動的に精度よく単木の頂点を認識できる。
【0013】
このため、広い森林等を人手によって樹木一本毎に検索しなくともよいので、例えば森林の財産管理等に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<実施の形態1>
初めに経緯を説明する。
【0015】
尾根谷度の算出は、次の様に行う。樹木高のグリッドデータを用いて、設定した対象範囲内(検索範囲)における天頂から地表(樹冠含む)に接するまでの角度と鉛直下方から地表に接するまでの角度を求める。そして、これらの角度を例えば、8方向で計算し、それぞれ平均する。その結果をそれぞれ地上開度(φ1)と地下開度(φ2)とする。地上開度と地下開度にはさまれる角度の2 等分線と水平線との角度を尾根谷度(φ3)とする(図1参照)。検索範囲は1m・2m・5m・10mの4 通り試算し、樹冠形状を適切に表現できた2m に決定した。
【0016】
尾根谷度は大まかな樹冠形状を表現するものであり、樹高に比べ、樹木頂点と樹冠端部の値の差が大きく、樹木頂点において値が同じような傾向を示す(図2参照)。これにより画一的な閾値を用いて、樹冠部域の抽出が可能で、ここに尾根谷度の有用性があると考える。
【0017】
次に、尾根谷度に局所最大値フィルタを適用し、局所領域内の最大値を中央画素値に置き換える。この際、局所領域を3×3 に設定した。このフィルタ処理後の尾根谷度と処理前の尾根谷度を比較し、処理前後で尾根谷度が同値であったときに、その地点を「樹頂候補点」として抽出する。
【0018】
一方で、「尾根谷度>0」は尾根地形を表現し、「尾根谷度<0」は谷地形を表現するといった尾根谷度の性質を利用して、尾根谷度データに森林の状態に応じた閾値を設けることによって樹冠部を抽出する。そして、樹頂候補点と樹冠部領域を重ね合わせて、各樹冠部領域内において樹高が最も高い樹頂候補点を樹木頂点として抽出する。
【0019】
しかしながら、抽出された木頂点の総数を現地の立木本数として検証していたが、抽出された樹木頂点は実際の立木本数よりも過小になる場合があることがわかった。すなわち、これまでの手法では抽出本数が過小になる可能性がある。
【0020】
例えば、図3に示すように、尾根谷度は樹高データをもとに計算した地上開度と地下開度から算出される。このため、樹冠が隣木に接していない樹木は樹冠の端でDHM が急激に変化し、尾根谷度が大きくなる。これにより、樹冠端部が樹木頂点より大きな尾根谷度になる。
【0021】
図4は尾根谷度画像と本実施の形態2の樹冠形状指数との比較を説明する説明図であり、図4(a)は尾根谷度が樹冠端部において極大化(画像が明るい領域)している例を示す画像である。
【0022】
この極大化により、林縁部では、樹冠端部が頂点として認識されてしまったり、樹木頂点が樹冠内に複数生じたりする可能性がある。この問題を解決するには、樹冠端部の極大化を防ぎ、樹木の頂点の尾根谷度を強調して隣木との区別を明確にする方法が好ましい。
【0023】
図5は実施の形態の樹木頂点認識装置の概略構成図である。図6は本実施の形態を説明する概略フローチャートである。実施の形態の樹木頂点認識装置の概略構成図を説明する前に、図6の概略フローを説明する。図6に示すように、航空レーザ計測により取得されたデータ(DSM:Digital Surface Model)を読み込む(S20)。また、地盤のグリッドデータ(DEM:Digital Elevation Model)を読み込む(S21)。
【0024】
そして、DSMとDEMデータの差分Zci(Zci、Zci・・)を樹木高グリッドデータDdiとして求めて(S22)、樹冠形状の再現を行う(S23)。
【0025】
樹冠形状の再現は、この樹木高のグリッドデータDdi(Dd1、Dd2、・・・)を用いて例えば5m範囲(図7を参照)における各グリッドデータと自身のデータとのアスペクト比を求め、このアスペクト比を一定条件下で新たなアスペクト比に変更し、変更したアスペクト比を用いて地上開度φ1´及び地下開φ2´度を算出し(S23a)、図4(b)に示す樹冠形状指数画像のデータを算出する(S23b)。この樹冠形状指数画像については後述する。
【0026】
そして、この樹冠形状指数Geiから樹木の頂点を抽出する(S24)。樹木頂点の抽出は、樹冠形状指数Geiに局所最大値フィルタ(3×3範囲)を適用して(S24a)、「樹木頂点の候補点」を抽出する(S24b)。
【0027】
また、本実施の形態では、後述する動的閾値により樹冠部を抽出して(S24c)、樹冠部画像を得る(S24d)。
【0028】
そして、頂点候補が存在する樹冠部領域毎に樹木頂点候補の中から最高の樹木高を有する点を求め、これを樹木頂点とし(S24e)、抽出する(S24f)。これによって得られた画像を図8に示す。
【0029】
次に、図5の構成を説明する。
【0030】
(図5の説明)
図5においては、表示処理部19は、表示部13(画面)に各データベース、メモリ等の画像を表示させたり、画面の画像データを読み込む等の機能を有しているが、各データベース、メモリ等とのやり取りを示す線については記載を省力している。
【0031】
また、図5においては、特定地域の地盤のグリッドデータ(DEM:Digital Elevation Model)を記憶したデータベース10と、特定地域の表層(森林)のグリッドデータ(DSM:Digital Surface Model)を記憶したデータベース11と、特定地域のデジタル写真(オルソフォト画像)を記憶したデータベース12と、樹木高算出部14と、樹木高データが記憶されるファイル(メモリ)15と等を備えている。
【0032】
また、検索範囲決定部17と、表示処理部19と、局所最大フィルタ部20と、樹木頂点候補抽出部21と、樹木頂点候補データが記憶されるファイル22と、樹冠部抽出部23と、樹冠部のデータが記憶されるファイル24と、第1の樹木頂点決定部25と、樹木頂点データが記憶されるファイル29と出力部30等を備えている。
【0033】
さらに、本実施の形態の樹木頂点認識装置は、第1の樹冠形状指数算出部32と、閾値算出部35と、局所領域設定部36と等を備えている。
【0034】
データベース10は、地盤のグリッドデータ(DEM:Digital Elevation Model:本実施の形態では0.5m間隔の格子状のデータ)を記憶している。このグリッドデータは、地盤のX、Y、Z(地盤高Za)とを対応させて記憶させられている。つまり、レーザデータを読み込み、それぞれの同じ標高値を結んだ等高線図に対してTINを発生させて地面を復元したものである。
【0035】
データベース11は、特定地域の表層(森林)のグリッドデータ(DSM:Digital Surface Model:本実施の形態では0.5m間隔)を記憶している。このグリッドデータ(本実施の形態では0.5m間隔の格子状のデータ)は、樹木表面のX、Y、Z(Zb:樹木表面高)とを対応させて記憶している。つまり、レーザデータを読み込み、それぞれの同じ標高値を結んだ等高線図に対してTINを発生させて表層を復元したものである。
【0036】
すなわち、これらのグリッドデータは、格子間隔0.5mのX−Y平面直角座標系に、緯度経度に対応するX値、Y値とレーザ計測によって得られたZ値を割り当てている。
【0037】
樹木高算出部14は、データベース10のDSMとデータベース11のDEMとの差を求め、これをファイル15(メモリ)のX,Y座標に割付ける(以下樹木高グリッドデータDdiという)。
【0038】
検索範囲決定部17は、表示部13の画面上においてオペレータによって決められた検索範囲Miを樹冠形状指数算出部32に設定する。
【0039】
第1の樹冠形状指数算出部32は、デジタル写真を基に決定された検索範囲Miに対応する樹木高グリッドデータDdiをファイル15から読み込んで、これらのグリッドデータDdiにおけるアスペクト比(樹木高Zci/距離di)の最大、最小値を基にして樹冠形状を明瞭にする所定の値に変更する(第1のアスペクト比更新処理31a)。
【0040】
そして、この変更された新たな最大値、新たな最小値を用いて新たな地上開度φ1´(以下第1の地上開度φ1´という)、地下開度φ2´(以下第1の地下開度φ2´という)を求め、これらの開度から算出される第1−1の樹冠形状指数φ3´を、例えば8方向で平均化して、平均化した樹冠形状指数ei(以下第1−2の樹冠形状指数eiという)を得る(第1の樹冠形状指数計算処理31b)。
【0041】
次に、局所領域Ji(例えば3×3pixel)で平滑化し、これを検索範囲Mi(例えば5m)における第1−3の樹冠形状指数Geiとしてファイル(メモリ)37に保存する(平滑化処理31c)。
【0042】
前述の第1−3の樹冠形状指数Geiは、設定された樹木高グリッドデータの番号と、X、Y座標と、樹木高の差Zと、第1−1の樹冠形状指数φ3´と、第1−2の樹冠形状指数eiと、この第1−1の樹冠形状指数φ3´を得たときの地上開度φ1´と、地下開度φ2´と、検索方向毎の検索範囲以内の樹木高グリッドデータ(X、Y、Z)と、これらの樹木高グリッドデータまでの距離diと、設定された樹木高グリッドデータに対して高さの差Z等にリンク付けされている。これらを総称して第1の樹冠形状指数情報Giという。
【0043】
閾値算出部35は、示部13に表示された画像(グリッドデータ又はオルソフォト画像又はオルソフォト画像とグリッドデータとを重ね表示)内で、予め設定された局所領域Hi(例えば3×3ピクセル)の第1−3の樹冠形状指数Geiの平均値μと標準偏差σとの和を閾値Hgiとして求め、これを樹冠部抽出部23に渡す。
【0044】
局所最大値フィルタ20は、ファイル37の第1の樹冠形状指数情報Giの各樹木高グリッドデータ(X、Y、Z)に対応する第1−3の樹冠形状指数Geiに局所領域Fi(例えば3×3範囲)のフィルタを順次適用し、この結果のデータDfiをファイル27に保存する。
【0045】
樹木頂点候補抽出部21は、ファイル27のデータDfiとファイル37の第1−3の樹冠形状指数Geiとを比較し、同じ値のものを頂点候補Dgiとしてファイル22に保存する。
【0046】
樹冠部抽出部23は、閾値算出部35で求められた閾値Hgiより大きい値の、第1−3の樹冠形状指数Geiを抽出し、これを樹冠部のデータDhi(Dh1、Dh2・・・)としてファイル24に保存する。
【0047】
第1の樹木頂点決定部25は、ファイル24の樹冠部のデータDhi(Dh1、Dh2・・)とファイル22の頂点候補Dgi(Dg1、Dg2・・)とを重ね合わせ、一致したものを仮の頂点と決定し、これをファイル28に保存する。そして、同一樹冠部に複数の仮の頂点が存在するときは、この樹冠部で最も樹木高が高いものを単木の頂点として決定し、これをファイル29に保存する(Pi)。
【0048】
表示処理部19は決定した頂点を例えば○印(△印、×印、番号等の識別)にして画面に表示する。このとき、写真画像と重ねて表示してもよい。
【0049】
出力部30は、ファイル29の頂点Piの座標(XY)に樹木番号を付けてプリンタ(図示せず)又は画面に表示する。このとき、樹木高も表示してもよい。
【0050】
上記のように構成された実施の形態1の樹木頂点認識装置について以下にフローチャートを用いて説明する。
【0051】
図9は樹冠形状指数算出部32のアスペクト比を求める処理を説明するフローチャートである。
【0052】
本実施の形態では、初めに初期設定を行う(S30)。この初期設定は、例えば画面のオルソフォト画像において所定のエリアの設定、検索範囲Mi、検索方向ki等の設定である。
【0053】
前述の検索方向kiは、以下のようにして求めている。図9のS32において、任意のDdipを決定したときに、隣接するDdiを検索し、データが存在する方向の数を検索方向kiとする。例えば、任意のDdipが画像の右上角であった場合、隣接データ数は3となり、検索方向は3となる。また、任意のDdipが画像の中央であった場合、隣接データ数は8となり、検索方向は8となる。
【0054】
本実施の形態では検索範囲Miはオルソ画像を確認し、対象林分の代表的な樹木間隔未満で設定する。
【0055】
そして、樹冠形状指数算出部32は、検索範囲の樹木高グリッドデータDdi(DSMとDEMデータの差分)をファイル15から全てリードする(S31)。
【0056】
次に、これらの樹木高グリッドデータDdiの中の1つの樹木高グリッドデータDdipの番号を設定すると共に、検索方向内の1つの方向kipを設定する(S32、S33)。本実施の形態では8方向として説明する。
【0057】
次に、設定された番号の樹木高グリッドデータDdipから方向kipで検索範囲Mi内の樹木高グリッドデータDdip(以下グリッドデータDppiという)を抽出する(S34)。
【0058】
前述の地上・地下開度を算出する検索範囲Miは対象林分に応じて変化させる必要がある。検索範囲が樹木間隔より長過ぎると隣木の頂点に対して最大傾斜角をなすため、自身が頂点として検出できない可能性がある。また、樹木間隔に対して短過ぎると樹冠内の山谷形状を検出し、一つの樹冠に対して複数の樹木頂点が抽出される場合がある。以上から検索範囲は対象林分の代表的な樹木間隔未満で設定するのが良い。
【0059】
そして、設定された番号の樹木高グリッドデータDdipからグリッドデータDppiまでの間の距離diを求める(S35)。本実施の形態では、例えば5mとして説明する。
【0060】
次に、設定された番号の樹木高グリッドデータDdipとグリッドデータDppiとの垂直方向の樹木高差ΔZci(差であることを強調するためにΔを用いている)を求める(S36)。
【0061】
次に、この樹木高差ΔZciを距離diで割った値(アスペクト比Adi)を求め(S37)、これを検索方向kipと樹木高グリッドデータDdipと、この番号とに対応(総称してグリッドデータ毎のアスペクト比データViという)させてファイル37に記憶する(S38)。
【0062】
次に、図10に示すように、検索方向kipが奇数か偶数かどうかを判定する(S39a)。
【0063】
ステップS39aにおいて、検索方向kipが偶数と判定したときは、グリッドデータDppiが7個かどうかを判定する(S39b)。ステップS39bにおいて、グリッドデータDppiが7個と判定したときは、処理を後述するステップS41に移す。
【0064】
また、ステップS39bにおいて、7個ではないと判定したときは、グリッドデータDppiを次のグリッドデータに更新して処理を図9のステップS34に戻す(S39c)。
【0065】
また、ステップS39aにおいて、検索方向kipが奇数と判定したときは、グリッドデータDppiが10個かどうかを判定する(S39d)。
【0066】
ステップS39dにおいて、10個と判定したときは、処理を後述するステップS41に移す。
【0067】
前述のステップS39a、39b、39dの判定は、例えば0.5mメッシュにおいて検索範囲Miが5mであれば、上下左右方向の場合(奇数の場合)は10個入るので10個かどうかを判定している。また、斜め方向の場合(偶数の場合)は7個入るので7個かどうかを判定している。
【0068】
図11においては、5mではなく1mの検索範囲を示して、検索範囲Mi内の検索個数を説明している。
【0069】
また、ステップS41においては、検索方向kipが8方向になったかどうかを判定する(S41)。
【0070】
ステップS41において、検索方向kipが8方向全てになっていないと判定したときは検索方向を次の検索方向に更新して(S42)、処理をステップS33に戻す。
【0071】
また、ステップS41において検索方向kipが8方向全てと判定したときは、エリア内の樹木高グリッドデータDdi(Dd1、Dd2、・・・)が最後かどうかを判定し(S43)、最後でないときは、樹木高グリッドデータDdiの番号を更新して(S44)、処理を図9のステップS32に戻す。
【0072】
また、ステップS43において、樹木高グリッドデータDdiが最後と判定したときは、アスペクト比更新処理を起動する(S45)。
【0073】
このアスペクト比更新処理の方法の前にアスペクト比と第1の地上・地下開度(φ1´、φ2´)との関係を説明する。
【0074】
地上・地下開度の算出には任意の点から比較する点の距離と標高差が必要となる。算出式は次式で表される。
【0075】
Max_angle = tan-1 (最大ΔZ/d)・・・・・・式(A)
Min_angle = tan-1 (最小ΔZ/d)・・・・・・式(B)
ここで、ΔZは標高差、dは2点間の距離を表す。
【0076】
第1の地上開度φ1´= 90−Max_angle・・・・・・式(C)
第2の地下開度φ2´= 90+ Min_angle・・・・・式(D)
方向毎に求めたアスペクト比(上記例では10個)の中から最大及び最小のアスペクト比を抽出し、式Aと式Bから最大傾斜角と最小傾斜角を求め、式Cと式Dに当てはめて地上・地下開度(φ1´、φ2´)を算出する。但し、最大傾斜角と最小傾斜角の計算は後述するアスペクト比の更新の後となる。
【0077】
第1の地上開度φ1´及び第2の地下開度φ2´を求めるためのアスペクト比は例えば次のように更新する(図12参照)。
【0078】
(1).「ΔZ/d」が−1.7320(−60度)以下の場合は-1.7320(-60 度)とする。
【0079】
(樹冠端部の極大化防止)
(2).「ΔZ/d」が-1.7320(-60 度)から0(0 度)の場合は-1.7320(-60 度)とする。
【0080】
(樹冠山地形の強調)
(3).「ΔZ/d」が0(0 度)から1.7320(60 度)の場合は1.7320(60 度)とする。
【0081】
(樹冠谷地形の強調)
(4).「ΔZ/d」が1.7320(60 度)以上の場合は「ΔZ/d」の値を据え置く。
【0082】
(5).「ΔZ/d」が隣接する8 方位全てがマイナスである場合「ΔZ/d」を1000倍する。
【0083】
(樹木頂点の強調)
という処理である。
【0084】
前述の(1)から(4)で60度を基準としてアスペクト比を更新しているが、これは現地調査でスギの樹冠形状が60度程度であったため、現地の樹冠形状に適した値として採用した。
【0085】
すなわち、ここでは60度と設定しているが、想定する樹冠形状によりオペレータが任意に角度を設定する。
【0086】
更に、(5)では樹木頂点を強調するために「ΔZ/d」を1000 倍している。これにより最小角はほぼ-90度となり、最大限の樹木頂点強調が出来る。具体的には、(1)、(2)から「ΔZ/d」の変更後の値は-1.7320 となり、これを1000倍して角度を算出すると-89.9度となる。
【0087】
このように算出された第1の地上・地下開度(φ1´、φ2´)を用いて尾根谷度の算出式(φ3 =(φ1 −φ2)/2)
と同様にして第1−1の樹冠形状指数φ3´を求める。この第1−1の樹冠形状指数φ3´を8 方位で計算し、平均化したものを第1−2の樹冠形状指数eiとする。
【0088】
以下に第1−2の樹冠形状指数eiを求めるまでの処理を具体的に説明する。初めにアスペクト比更新処理について説明する。
【0089】
アスペクト比更新処理について図13のフローチャートを用いて説明を補充する。図13に示すように、アスペクト比更新処理においては、ファイル37の樹木高グリッドデータDdiを設定し、検索方向kipを設定する(S50、S51)。
【0090】
次に、設定された番号の樹木高グリッドデータDdiの検索方向kip内でのアスペクト比データViの中から値が最大なアスペクト比(MAXAdi)、値が最小のアスペクト比(MINAdi)を抽出(読込む)する(S52)。
【0091】
例えば、0.5mグリッドデータを用いて、検索範囲Miが1mであるとき、ある検索方向において、アスペクト比が-2m/0.5mと-2m/1.0mであったとすると、これらの比は-4.0と-2.0になり、最大値が-2.0、最小値が-4.0となる。
【0092】
次に、読み込んだアスペクト比MAXAdi、MINAdiが上記(3)の0〜1.7320の範囲(角度では0度〜60度)かどうかを判定する(S53)。
【0093】
ステップS53において、0〜1.7320の範囲と判定したときは、読み込んだアスペクト比MAXAdi、MINAdiを1.7320(MAXAdi、MINAdi:Adbi)として処理をステップS59に移す(S54)。これにより、頂点から下の場合は、頂点から下の谷地形であることを強調する。
【0094】
また、ステップS53において、0〜1.7320の範囲(角度では0度〜60度)ではないと判定したときは、読み込んだアスペクト比が上記(4)の1.7320以上かどうかを判定する(S55)。
【0095】
ステップS55において、アスペクト比が1.7320以上と判定したときはそのアスペクト比(Adi)をそのままの値(Adai)にして処理をステップS59に移す(S56)。
【0096】
また、ステップS55において、読み込んだアスペクト比が1.7320以上ではないと判定したときは、読み込んだアスペクト比が上記の(1)の−1.7320以下かどうかを判定する(S57)。
【0097】
ステップS57において、−1.7320以下であると判定したときは、ステップS59-1に処理を移す。
【0098】
ステップS59−1においては、抽出したアスペクト比を−1.7320(Adci)にする。
【0099】
これにより、樹冠端部と地盤との位置関係から生じるアスペクト比の極小化(樹冠形状指数では極大化)を防止する。
【0100】
また、ステップS57において、−1.7320以下ではないと判定したときは、抽出したアスペクト比(0〜−1.7320(2)(0を除く))を−1.7320(Adci)にする(S59−2)。
【0101】
これにより、樹冠端部から上の場合は、樹冠端部から上の山地形であることを強調する。
【0102】
また、前述のステップS54、ステップS56、ステップS59−2、ステップS59−1のアスペクト比をファイル37に記憶する(S59)
次に、検索方向kipが8かどうかを判定し(S61)、8方向になっていないときは検索方向を更新して処理をステップS51に戻す(S62−1)。
【0103】
ステップS62において、隣接する8方向の樹木高グリッドデータのアスペクト比が、前記水平軸を基準として全てマイナスと判定したときは、8方向の更新後のアスペクト比を1000倍(Addi)する(S63)。すなわち、頂点を強調する。
【0104】
次に、検索エリア内で樹木高グリッドデータDdiが最後かどうかを判定し(S64)、最後でないときは次の番号の樹木高グリッドデータDdiに更新して処理をステップS50に戻す(S65)。
【0105】
すなわち、ファイル37には、ステップS59の処理によって、図14に示すように、設定された番号の樹木高グリッドデータDdi(図14においてはi=1)と検索方向kpiと抽出したMAXAdi、MINAdiと更新したアスペクト比とが対応させられて保存されている。
【0106】
更新したアスペクト比は、アスペクト比Adiのままの値(Adai)又は1.7320(Adbi)又は−1.7320(Adci)若しくは上記3種類のいずれかの値を1000倍したアスペクト比(Addi)のいずれかである。
【0107】
これらを総称して本実施の形態では更新されたアスペクト比を更新アスペクト比と称する。
【0108】
次に、第1の樹冠形状指数算出部32の樹冠形状指数の算出を図16のフローチャートを用いて説明する。検索エリア内の各樹木高グリッドデータからの検索範囲において全てのアスペクト比の更新が行われると、図16に示すように樹木高グリッドデータDdiの番号を設定し(S70)、検索方向kipを設定する(S71)。
【0109】
次に、設定されたDdi、kipに対応する更新アスペクト比を引当、この更新アスペクト比の中から最大アスペクト比MAXAdi(アスペクト比Adiのまま又は1.7320又は−1.7320又は前記Adiを1000倍したアスペクト比又は1732又は-1732のいずれか)と、最小アスペクト比MINAdi(アスペクト比Adiのまま又は1.7320又は−1.7320又は前記Adiを1000倍したアスペクト比又は1732又は-1732のいずれか)読み込む(S72)。
【0110】
そして、第1の地上開度φ1´と第1の地下開度φ2´を算出する。(S73)。
【0111】
第1の地上開度φ1´=90度−tan-1(MAXAdi)
第1の地下開度φ2´=90度+tan-1(MINAdi)
次に、この第1の地上開度φ1´と第1の地下開度φ2´とを用いて第1−1の樹冠形状指数φ3´を求める(S74)。
【0112】
第1−1の樹冠形状指数φ3´=(φ1´−φ2´)/2
次に、8方位全てに対して樹冠形状指数を求めたかどうかを判断する(S75)。ステップS75において8方位全てに対して第1−1の樹冠形状指数φ3´を求めていないと判定したときは、検索方向を更新して処理をステップS71に戻す(S76)。
【0113】
次に、ステップS75で8方位全てに対して第1−1の樹冠形状指数φ3´を求めたと判定したときは、これを平均化(8方位)する(S77)。
【0114】
そして、この平均化された第1−2の樹冠形状指数eiを、樹木高グリッドデータDdiを中心とした検索範囲での第1−2の樹冠形状指数eiとして(S78)、樹冠グリッドデータDdiにリンク付けしてファイル37に記憶する(S79)。
【0115】
次に、検索エリア内の樹冠グリッドデータDdiの番号が最後かどうかを判定し、最後でないときは樹冠グリッドデータDdiの番号を更新して処理をステップS70に戻す。
【0116】
最後に第1−2の樹冠形状指数eiを局所領域Ji(例えば3×3pixel)で平滑化したものを第1−3の樹冠形状指数Geiとして検索範囲に対応させてファイル37に記憶する。
【0117】
すなわち、ファイル37には図14に示すように、設定された樹木高グリッドデータDdiと、検索方向kipと、更新前のMAX、MINのアスペクト比と、更新後のMAX、MINの更新アスペクト比とが検索方向毎に、リンクつけされて記憶されている。
【0118】
また、ファイル37には図15に示すように、設定された樹木高グリッドデータDdiの番号と、そのX、Y座標と、樹木高の差Zと、次の番号の樹木高グリッドデータと、このX、Y座標と、距離diと、第1−1の樹冠形状指数φ3´と、この第1−1の樹冠形状指数φ3´を得たときの地上開度φ1´と、地下開度φ2´とが検索方向にリンクつけされ、また、8方向全てで平均化した第1−2の樹冠形状指数ei等が対応させて記憶されている。図15には、平滑後の第1−3の樹冠形状指数Geiを対応させて例示している。
【0119】
次に、頂点候補の抽出、閾値の算出方法、樹冠部の抽出処理の概略を以下に説明する。
【0120】
頂点候補の抽出
ここでは樹冠形状指数から樹木頂点候補を抽出する。抽出方法は次の通りである。樹冠形状指数に局所最大値フィルタを適用し、局所領域Fi内の最大値を中央画素値に置き換える。この際、局所領域Fiを例えば3×3に設定した。このフィルタ処理後の指標と処理前の指標を比較し、処理前後で第1−3の樹冠形状指数Geiが同値であったときに、その地点を「樹木頂点候補」として抽出する。
【0121】
局所最大値フィルタ20は、第1−3の樹冠形状指数Geiに対して、局所領域Fiの局所最大値フィルタを適用して、これをファイル27に保存(Dfi)する。
【0122】
次に、樹木頂点候補抽出部21がファイル27のデータDfiを頂点候補(以下Dgi)として抽出し、ファイル22に保存する。具体的にはファイル37のデータの値とファイル27の同じ座標値のデータの値が同値の場合を「1」と、他を「0」としてファイル22に定義する(図20参照)。
【0123】
ここで、局所最大フィルタ部20及び樹木頂点候補抽出部21の処理について説明を補充する。
【0124】
局所最大フィルタ部20(Local max filter20ともいう)は、ファイル37の第1の樹冠形状情報Giの第1−3の樹冠形状指数Gei(Ge1、Ge2・・)に局所領域Fi内で最大となる値を局所領域Fiの中央画素値に置き換える処理を順次行う。これらをDfiとしてファイル27に保存する。
【0125】
そして、樹木頂点候補算出部21がデータDfiとファイル37のGeiとを比較し、値が同じものを頂点候補Dgiとしてファイル22に保存している。
【0126】
次に樹冠部を抽出する閾値の算出方法及び樹冠部の抽出処理を説明する。
【0127】
閾値以上の領域を樹冠部として抽出するが、これまで閾値は対象とする林分のオルソ画像で単木を目視確認して、同様に樹木が分割される値を閾値としていた。この手法で設定される閾値は一定値であることから樹冠部であっても閾値より小さい場合は樹冠部として抽出できなかった。この問題を解決するため、新たに画像に応じた閾値を局所領域Hi(3×3pixel や5×5pixel など)による算出で動的に決定する。
【0128】
初めに一つの樹冠領域を想定する。更に、この一つの樹冠領域に対して樹冠部として抽
出する領域を想定する(図17)。ここでは尾根形状による隣木との同一化を防ぐために、樹冠領域に対して半分程度を樹木頂点が一つ含まれる樹冠部として抽出する。樹冠領域を3×3pixel から9×9pixel を想定すると樹冠部は1×1 から4×4 となり、樹冠領域に対する樹冠部の割合は平均して16%となる(表1)。
【表1】

【0129】
なお、0.5m グリッドデータ使用していることから、樹冠領域は1.5m×1.5m から4.5m×4.5m となり、現地で確認した樹冠領域と同等と考える。この樹冠領域を局所領域として、樹冠部の割合が16%程度になるように、局所領域の平均値(μ)に標準偏差(σ)を足した値を閾値とした。設定根拠は次の通りである。正規分布しているヒストグラムにおいて平均値の±σの範囲は全pixel の68%を占める。更に最小値から平均値の+σの範囲を考えると84%に該当し、μ+σ以上の範囲が16%を占める(図18)。
【0130】
具体的には局所領域Hi内の平均値と標準偏差を求め、平均値と標準偏差の和を中央画素値に置き換える。第1−3の樹冠形状指数Geiと動的閾値Hgiを比較して樹冠形状指数が大きければ、樹冠部として抽出する。
【0131】
次に、図19のフローチャートを用いて具体的に樹冠部の抽出処理を説明する。初めに局所領域Hiを設定する(S80)。
【0132】
本実施の形態では所定エリアの樹木高グリッドデータDiが画像化されてオルソフォト画像に重ね表示されているとする。画面に表示された樹木高グリッドデータDdiを本実施の形態では画像化されたグリッドデータRiと称する。
【0133】
この状態で、オペレータは例えば3ピクセル×3ピクセルの局所領域Hiを入力する。樹冠部決定処理は、局所領域、検索エリアをメモリ(図示せず)に設定する初期設定を行う(S80)。
【0134】
次に、閾値算出部が検索エリアの画像化されたグリッドデータRdiを全てリードする(S81)。
【0135】
次に、これらのグリッドデータRdiの中からグリッドデータRdnを設定し(S82)、設定した局所領域Hiに基づき、グリッドデータRdn(Xdn、Ydn、樹木高dn)を中心に、このグリッドデータの座標値を有する第1の樹冠形状情報Gi(3×3)をファイル37からリードする(S83)。
【0136】
このリードされた3×3の第1の樹冠形状情報Giは、第1−3の樹冠形状指数GeiをZiとし、グリッドデータDdiのX軸をDxi、Y軸をDyiと記載する。
【0137】
例えば、
(Dx1、Dy1、Z1)、(Dx2、Dy2、Z2)、(Dx3、Dy3、Z3)
(Dx4、Dy4、Z4)、(Dx5、Dy5、Z5)、(Dx6、Dy6、Z6)
(Dx7、Dy7、Z7)、(Dx8、Dy8、Z8)、(Dx9、Dy9、Z9)
Zi:平均化、平滑された第1−3の樹冠形状指数Gei
となる。
【0138】
そして、閾値算出部35がこれらの第1−3の樹冠形状指数Geiの平均値(μ)と標準偏差(σ)とを算出し(S84)、これらの和を求め、これを設定した局所領域Hiの閾値(Hgi)として求める(S85)。
【0139】
次に、閾値算出部35は、設定したRdnに対応した閾値を樹冠部抽出部23に出力する(S86)。樹冠部抽出部23は第1−3の樹冠形状指数Geiとこの閾値とを比較する(S87)。
【0140】
そして、閾値(Hgi)に対して第1−3の樹冠形状指数Geiが大きいかどうかを判定する(S88)。ステップS88において、第1−3の樹冠形状指数Geiの方が大きいと判定したときは、樹冠部とする(S89)。
【0141】
次に、グリッドデータRdiは最後かどうかを判定し(S91)、最後でないときはグリッドデータRdiを次のグリッドデータに更新し、処理をステップS82に戻す(S92)。
【0142】
また、ステップS88において閾値(Hgi)の方が大きいと判定したときは、樹冠部ではないと判定する(S90)。
【0143】
また、樹冠部抽出部23が閾値Hgによって樹冠部のデータDhiを抽出し、これをファイル24に保存している(図21参照)。
【0144】
図21(a)のデータDhiは、閾値を超えるGeiを抽出したものであり、例えば番号1のエリアの第1−3の樹冠形状指数Geiは、(Xh5、Yh5)を「1」、(Xh6、Yh6)を「1」・・(Xh10、Yh10)を「1」として示している。
【0145】
図21の(b)は図21(a)を具体的に示すものであり、閾値を超えた画素は「1」とする。「1」が連続している範囲が樹冠部である。
【0146】
そして、ファイル24の中の頂点候補DhiのXhi、Yhiをポリゴン化(座標Xhi、Yhiと色情報)して表示処理部19によってラベルリング(纏まったエリアを(樹冠部)にラベルを振る)させる(図26参照)
次に、樹木頂点決定部25は、ファイル24のデータDhi(Dh1、Dh2・・)とファイル22の頂点候補Dgi(Dg1、Dg2・・)とを重ね合わせ一致したものを仮の頂点と決定する。そして、樹冠部のエリア内に複数の仮の頂点が存在するときは、この樹冠部のエリアで最も樹木高が高いものを単木の頂点として決定し、これをファイル29に保存する(Pi)。表示処理部19は決定した頂点を画面に表示する(図23参照)
前述の頂点の決定について説明を補充する。例えば、図22の(a)に示すように、ファイル24に第1列目が「00110011100」、第2列目が「01111011110」、第3列目が「00110001000」、第4列目が「00000100011」という具合に頂点上部域が得られた場合に、図22(b)に示すように、「1」が隣接するまとまり(「0」が区切り)を1つの樹冠部としてまとまり毎に通し番号を割り振っていく。
【0147】
そして、例えば、同一高の頂点が樹冠内に複数の頂点が存在することになると、一度、ファイル28のデータDQiを表示させて、オペレータによって指定させ、指定されたものを頂点Piと決定してファイル29に保存する。
【0148】
このような処理によって第1−3の樹冠形状指数Geiによる樹木頂点抽出結果は、図8、図23に示すように頂点が求められている。
【0149】
また、表2に尾根谷度と第1−3の樹冠形状指数Geiの樹木頂点抽出結果の比較を示す。
【表2】

【0150】
表2から、抽出精度は同程度であるが、抽出率及び正解率が向上していることが分かる。以上から第1−3の樹冠形状指数Geiの有意性が確認できた。
【0151】
また、図24の尾根谷度画像では林道に接した樹木は極大化して画像が明るくなっているが図25の樹冠形状指数画像では同箇所が暗くなり、極大化を解消していることがわかる。
【0152】
次に、尾根谷度及び第1−3の樹冠形状指数による樹木頂点の抽出数、判読による樹木頂点数と現地で樹冠上層部に到達していると確認した樹木本数を表3にまとめる。
【表3】

【0153】
表から、尾根谷度による樹木頂点抽出はP8-2 を除いて3〜4 割の程度の抽出率であったのに対して、第1−3の樹冠形状指数Geiによる樹木頂点抽出は7〜9 割の抽出率であった。また、空中写真からの情報では密度の高い森林において樹木の抽出に限界があることがわかっている。このことから、同様に上空からの情報であるレーザデータを用いた樹木頂点抽出では判読による樹木頂点数を検証値として考えることもできる。
【0154】
そこで、第1−3の樹冠形状指数Geiによる樹木頂点抽出と判読による樹木頂点の割合を算出した。その結果、第1−3の樹冠形状指数Geiによる樹木頂点抽出数は判読の樹木頂点数の8 割強〜10 割強であった。以上から、第1−3の樹冠形状指数Geiによる樹木頂点抽出は尾根谷度による抽出よりも倍近い抽出率が得られ、なおかつ、目視判読による樹木頂点抽出とほぼ同レベルで行えることが検証できた。
【0155】
また、本実施の形態は、図27に示すようなコンピュータシステムVPSによって実現するのが好ましい。VPS1は、ワークステーション、プロセッサ、マイクロコンピュータ、ロジック、レジスタ等の適宜な組み合わせからなる中央情報処理装置(CPU)と、この中央情報処理装置に必要な制御・操作情報を入力するキーボード(KB)、マウス、対話型ソフトスイッチ、外部通信チャネル等を含む情報入力部と、中央情報処理装置から出力された情報を広義な意味で表示・伝送するディスプレイ、プリンタ、外部通信チャネル等を含む情報出力部と、中央情報処理装置に読み込まれるオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム等の情報が格納されたロム(ROM)と、中央情報処理装置で随時処理すべき情報及び中央情報処理装置から随時書き込まれる情報を格納するラム(RAM)等とを備える。ROM、RAMを適宜統合、細分化することは差し支えない。
【0156】
前述のアプリケーションプログラムは、本実施の形態の、樹木高算出部14と、検索範囲決定部17と、局所領域設定部36と、第1の樹冠形状指数算出部32と、閾値算出部35と、局所最大フィルタ20(Local max filterともいう)と、樹木頂点候補抽出部21と、樹冠部抽出部23と、第1の樹木頂点決定部25と、出力部30等である。
【0157】
なお、上記実施の形態では、画面において決定した検索エリアにおける樹木の各樹木頂点を求めるとしたが、検索エリアではなく、樹木画像上で軌跡Aiを描き、この軌跡Ai上における樹木の頂点を抽出してもよい。
【0158】
つまり、軌跡Aiの樹木高グリッドデータを抽出し、この樹木高グリッドデータに対応する第1−3の樹木形状指数Geiを読み出し、この樹木形状指数Geiによって頂点を決定する。
【0159】
<実施の形態2>
スギ、ヒノキ人工林は通常3000 本/ha 植栽され、林齢17 年程度で第1 回間伐が行われる。伐採率は3 割程度であるが、自然枯死を併せると間伐後は1950 本/ha 程度となる。
【0160】
その後、6〜8 年毎に第2 回、第3 回の間伐(間伐率は共に約3 割)を行い、950 本/ha 程度の立木密度にして収穫を行う。現在日本のスギ、ヒノキの植林は少なく、そのほとんどは林齢20 年以上であり、第1 回の間伐は実施されていることと想定される。
【0161】
このことから、第2 回の間伐が終了しているか判断するためにも2000 本/ha 程度の立木密度の森林を把握することが求められる。
【0162】
本実施の形態2は2000 本/ha 程度の立木密度の密な森林(例えばスギ、ヒノキ等)においても樹木頂点の抽出精度を向上できる。
【0163】
本実施の形態2では、抽出精度の向上のために、「地上開度、地下開度の算出の見直し」と「局所加重平均」と、「樹木頂点が隣接する場合に所定の樹木頂点を除去する処理」、「森林領域の抽出」等を備える。
【0164】
(地上開度φ1´、地下開度φ2´の算出の見直し)
実施の形態1は疑似樹冠モデルという考えをもとに、DHM を用いて算出した地上・地下開度を樹冠モデルに合わせて数値を置き換えていた。このとき、樹冠端部から樹木頂点の角度を60°と設定していたが、本実施の形態2では現地で確認したスギ・ヒノキの樹形に合うように70°へと変更する。
【0165】
また、実施の形態1では林縁部の極大化を防ぐために、林縁部から地表を見下ろしたときに−60°以上の角度となる場合、林縁部の値を−60°に置き換えていた。しかし、依然として林縁部は凸の形状となり、第1−3の樹冠形状指数Geiは大きく、一方、隣接する樹冠の境界に位置する場合は、凹の形状となり、第1−3の樹冠形状指数Geiは小さくなる傾向にある。
【0166】
また、どちらも樹冠端部に位置するという点では一致しているものの、第1−3の樹冠形状指数Geiに大きな違いが生じる。そこで、この違いを解消するため、新たな樹冠形状の−70°以上の角度となるときに林縁部と規定し、その値を70°(隣接する樹冠の境界に位置する場合の角度)に置き換える。なお、ここではDHM が3m 以下の非森林領域は樹冠形状指数の最小値(-70)とした。詳細については後述する。
【0167】
(局所加重平均)
実施の形態1では、算出された地上・地下開度(φ1、φ2)を用いて尾根谷度の算出式(φ3 = (φ1 −φ2 )/ 2)と同様な計算式で第1−1の樹冠形状指数φ3´ を求め、この第1−1の樹冠形状指数φ3´ を8 方位で計算して、平均化した第1−2の樹冠形状指数eiを更に局所領域で平滑化処理して第1−3の樹冠形状指数Geiとしていた。疎林において、この平滑化は複雑な樹冠形状を滑らかにして、同一樹冠内に生じる複数の樹木頂点を絞る効果があった。
【0168】
しかしながら、密林においては上記作用により樹木頂点の抽出数を減らすという結果になり、抽出精度が低くなる場合がある。隣接する樹木頂点が平滑化により樹木頂点数が減少する例を図28に示す。図の上部分は樹冠形状指数の画像を数値化したものであり、下部分は横線部(28a、28b)の断面形状を示している。
【0169】
図28から、同一局所領域内に樹木頂点が複数含まれる場合、[1]平滑化により樹木頂点が減少する、[2]樹木頂点の位置座標が変わることが問題であるとわかる。このため、本実施の形態2では後述する局所加重平均によってこの問題を解決する。
【0170】
(森林領域の抽出)
樹冠形状指数は地表面(DSM)と地盤面(DEM)の差分(DHM)をもとにわずかな凹凸からも樹冠モデルを仮想的に作成するものである。一方で、樹木が存在しないギャップや林道などの領域においても樹冠モデルを作成してしまい、樹木が存在しない領域でも樹木頂点の抽出がなされてしまう。
【0171】
そこで、樹木が存在しない領域において樹木頂点の抽出を行わないように、森林領域の抽出を行った(図29参照)。森林領域の抽出にはDHM を用い、下層植生を含まないようにここでは一例としてDHMが3m以上の領域を森林領域とした。
【0172】
図30は本実施の形態2の樹木頂点認識装置の概略構成図である。図31は本実施の形態2の樹木頂点認識装置を説明する概略フローチャートである。初めにこの概略フローチャートを説明する。
【0173】
図31に示すように、航空レーザ計測により取得されたデータ(DSM:Digital Surface Model)を読み込む(S30)。また、地盤のグリッドデータ(DEM:Digital Elevation Model)を読み込む(S31)。
【0174】
そして、DSMとDEMデータの差分Zci(Zci、Zci・・)を樹木高グリッドデータDdiとして求めて(S32)、樹冠形状の再現処理を行う(S33)。
【0175】
この樹冠形状の再現処理は、樹木高のグリッドデータDdi(Dd1、Dd2、・・・)に対して樹木間隔程度(例えば1.5m〜5m範囲(図7を参照))を設定する(S33a)。
【0176】
次に、各グリッドデータと自身のデータとのアスペクト比を求め、このアスペクト比を一定条件下で新たなアスペクト比(スギ、ヒノキの樹冠形状に合わせて70°に変更)に合わせて変更し、変更したアスペクト比((ΔZi/di)=Adi)を用いて第2の地上開度φ1´及び第2の地下開度φ2´を算出する(S33b)。
【0177】
本実施の形態2では現地で確認したスギ・ヒノキの樹形に合うように70°へと変更する。また、実施の形態1では、林縁部の極大化を防ぐために、林縁部から地表を見下ろしたときに−60°以上の角度となる場合、林縁部の値を−60°に置き換えていた。
【0178】
しかし、依然として林縁部は凸の形状となり、樹冠形状指数は大きく、一方、隣接する樹冠の境界に位置する場合は、凹の形状となり、樹冠形状指数は小さくなっていた。
【0179】
どちらも樹冠端部に位置するという点では一致しているものの、樹冠形状指数に大きな違いがあった。そこで、この違いを解消するため、新たな樹冠形状の−70°以上の角度となるときに林縁部と規定し、その値を70°(隣接する樹冠の境界に位置する場合の角度)に置き換える。
【0180】
そして、第2の地上開度φ1´及び第2の地下開度φ2´を尾根谷度の算出式により、第2−1の樹冠形状指数φ3´を算出してこれを8方位で平均化した第2−2の樹冠形状指数eiを得た後で、ガウシアンフィルタを用いた平滑化(図32参照)を行った第2−3の樹冠形状指数eeiを得る。次に、森林領域(例えばDHMが3m以上の領域)を規定し、この森林領域における第2-3の樹冠形状指数eeiはそのままの値とし、非森林領域(例えばDHMが3m未満の領域)の樹冠形状指数を任意の数値(例えば「-70」)とする第2−4の樹冠形状指数Eeiを求め(S33c)(図29右図参照)、樹冠形状指数画像を得る(S33d)。
【0181】
この第2−4の樹冠形状指数Eei(単に樹冠形状指数Eeiという場合もある)と実施の形態1の第1−3の樹冠形状指数Geiとを総称して樹冠形状指数EGiという。
【0182】
前述の開度の算出で、樹木間隔を樹木間隔程度としたが、これは検索範囲が長すぎると過小抽出となり、短すぎると過大抽出となるためである。一例として、表4に示すように立木密度から樹木間隔を求めるのが好ましい。
【表4】

【0183】
但し、H1〜H5は検証ポイント(所定の領域を有する)を示す。
【0184】
次に、樹木頂点の算出処理を行う(S34)。
【0185】
この樹木頂点の算出処理は、第2−4の樹冠形状指数Eeiと動的閾値との比較により樹冠部のデータDhiを抽出して(S34a)、樹冠部画像を得る(S34b)。この樹冠部域の抽出を行う動的閾値の局所領域サイズは樹木間隔程度である。
【0186】
局所領域を樹木間隔程度とするのは、樹木毎の第2−4の樹冠形状指数Eeiに応じて樹冠の上部領域を抽出するためである。
【0187】
動的閾値は局所領域の平均値(μ)に標準偏差(σ)を足した値であり、この閾値に
より1 本の樹木の樹冠領域に対して約16%の中央部(樹冠の上部領域)を抽出することができる。
【0188】
また、樹冠部域の抽出は上記の通り局所領域で閾値を求め、この値と局所領域の中心画素の第2−4の樹冠形状指数Eeiとを比較して第2−4の樹冠形状指数Eeiが大きければ樹冠部域のデータDhi(DQi)として抽出する。
【0189】
表9に樹木間隔と各プロットの局所領域サイズを示す。
【表9】

この局所領域サイズを用いて抽出した樹冠部域を図34に示す。
【0190】
そして、樹冠部のデータのデータDQiに対応する第2−4の樹冠形状指数Eeiの中から樹木冠形状指数が最高値となる第2−4の樹冠形状指数Eeiを検索し、これを樹木頂点Pipとする(S34c)。
次に、検索した樹木頂点の隣接程度を判断し、隣接していると判断したときは、第2−4樹冠形状指数Eeiの大小関係を基に隣接する樹木頂点のデータPipの第2−4の樹冠形状指数Eeiの大小関係をもとに、樹木頂点のデータPipを除去して(S34d)、樹木頂点Piとした画像(図35参照)を得る(S34e)。
【0191】
次に、図30の構成を説明する。
【0192】
(図30の説明)
図30においては図1と同一の符号のものについては説明を省略する。図30に示すように、本実施の形態2の樹木頂点認識装置は、第2の樹冠形状指数算出部41と、第2の樹木頂点決定部43(隣接樹木除去処理を含む)等を備える。
【0193】
第2の樹冠形状指数算出部41は、実施の形態1と同様な樹冠形状指数の算出処理(図示せず)を備えると共に、新たな第2のアスペクト比更新処理41aと、第2の樹冠形状指数計算処理41bと、ガウシアンフィルタ処理41cと、森林領域抽出処理41d等を備えている。
【0194】
第2のアスペクト比更新処理41aは、樹木高グリッドデータDdi(X、Y、DSMとDEMの差(DSM))をファイル15から全て読み込んで、これらのグリッドデータDdiにおけるアスペクト比(樹木高Zci/距離di)を求める。このアスペクト比は、グリッドデータDdiに関連付けられてメモリ37に記憶される。
【0195】
そして、図37、図38に示す様にアスペクト比を更新する。このアスペクト比が−70°以上の角度となるときに、その値を70°に置き換える。また、−70°から0度の場合は−70°に置き換える。この新たな更新アスペクト比は、グリッドデータDdiに関連付けられてメモリ37に記憶される。また、本実施の形態2の新たなアスペクト比の更新については詳細に後述する。
【0196】
第2の樹冠形状指数計算処理41bは、アスペクト比更新処理が終わると、3×3の領域毎にこの変更された新たな最大値、新たな最小値を用いて新たな第2の地上開度φ1´、第2の地下開度φ2´を求め、これらの開度から第2−1の樹冠形状指数φ3´を求めて、8方向で平均化して、第2−2の樹冠形状指数eiを順次求める。
【0197】
ガウシアンフィルタ処理41cは、第2−2の樹冠形状指数eiの算出処理が終わると、3×3の領域毎の第2−2の樹冠形状指数eiに対して局所加重平均化処理を行った第2−3の樹冠形状指数eeiを得る。この第2−3の樹冠形状指数eeiはグリッドデータDdiに関連付けられてメモリ37に記憶される。
【0198】
森林領域抽出処理41dは、ガウシアンフィルタ処理後の第2−3の樹冠形状指数eeiの関連する樹木高グリッドデータのDHMが例えば3m以上の場合に、森林領域の第2−4の樹冠形状指数Eeiとして抽出する。この第2−4の樹冠形状指数Eeiは、グリッドデータDdiに関連付けられてメモリ37に記憶される。
【0199】
閾値算出部35は、表示部13に表示された画像(グリッドデータ又はオルソフォト画像又はオルソフォト画像とグリッドデータとを重ね表示)内で、予め設定された局所領域Hi(例えば3×3ピクセル)の第2−4の樹冠形状指数Eeiの平均値μと標準偏差σとの和を閾値Hgiとして求め、これを樹冠部抽出部23に渡す。
【0200】
樹冠部抽出部23は、閾値算出部35で求められた閾値Hgiより大きい値の第2−4の樹冠形状指数Eeiを抽出し、これを樹冠部のデータDhi(Dh1、Dh2・・・、図22(a)参照)としてファイル24に保存する。
【0201】
第2の樹木頂点決定部43は、メモリ24のデータDhiの隣接するまとまり毎に番号を割り振ったデータDQi(樹冠形状指数のデータ)をメモリ28に生成し、まとまり毎の番号の内で最大の第2−4の樹冠形状指数Eeiを持つ点を樹木頂点Pipとする。
【0202】
さらに、樹木頂点Pipに対して例えば3×3の局所領域を設定し、順次この局所領域を移動させ、局所領域の中央に樹木頂点Pipが位置するときに局所領域内に他の樹木頂点Pipが存在するかどうかを判定する。存在している場合は、第2−4の樹冠形状指数Eeiの大小を比較し、中央の樹木頂点Pipの樹冠形状指数Eeiが小さい場合、この樹木頂点を消去する。
【0203】
そして、隣接樹木消去処理が終わったデータを樹木頂点Piとしてメモリ29に記憶する。
【0204】
出力部30は、ファイル29の頂点Piの座標(XY)に樹木番号を付けてプリンタ(図示せず)又は画面に表示する。
【0205】
上記のように構成された実施の形態の樹木頂点認識装置について以下にフローチャートを用いて説明する。
【0206】
本実施の形態2では、上記の実施の形態1と同様な樹冠立体角算出処理によって、既に検索方向kip毎のグリッドデータDppiと樹木高グリッドデータDdipとの更新アスペクト比Adiが求められてファイル37に記憶され、アスペクト比更新処理が起動したとする。
【0207】
図36は実施の形態2のアスペクト比更新処理を説明するフローチャートである。
【0208】
実施の形態2のアスペクト比の更新は図37に示すように更新する。
【0209】
つまり、
(6).「ΔZ/d」が-2.7474(-70 度)以下の場合は2.7474(70 度)とする。
【0210】
(樹冠端部の極大化防止)
(7).「ΔZ/d」が-2.7474(-70 度)から0(0 度)の場合は-2.7474(-70 度)とする。
【0211】
(樹冠山地形の強調)
(8).「ΔZ/d」が0(0 度)から2.7474(70 度)の場合は2.7474(70 度)とする。
【0212】
(樹冠谷地形の強調)
(9).「ΔZ/d」が2.7474(70 度)以上の場合は「ΔZ/d」の値を据え置く。
【0213】
(樹木頂点の強調)
(10).「ΔZ/d」が隣接する8 方位全てがマイナスである場合「ΔZ/d」を1000倍する。
【0214】
という具合に更新する。
【0215】
アスペクト比更新処理は、図39に示すようにファイル37の樹木高グリッドデータDdiを設定し、検索方向kipを設定する(S100、S101)。
【0216】
次に、設定された番号の樹木高グリッドデータDdiの検索方向kip内でのアスペクト比データViの中から値が最大なアスペクト比(MAXAdi)、値が最小のアスペクト比(MINAdi)を抽出する(S102)。
【0217】
次に、読み込んだアスペクト比MAXAdi、MINAdiが上記(8)の0〜2.7474の範囲(角度では0度〜70度)かどうかを判定する(S103)。
【0218】
ステップS103において、0〜2.7474の範囲と判定したときは、読み込んだアスペクト比MAXAdi、MINAdiを2.7474(MAXAdi、MINAdi:Adbi)として処理をステップS111に移す(S104)。これにより、頂点から下の場合は、頂点から下の谷地形であることを強調する。
【0219】
また、ステップS103において、0〜2.7474の範囲(角度では0度〜70度)ではないと判定したときは、読み込んだアスペクト比が上記(9)の2.7474以上かどうかを判定する(S105)。
【0220】
ステップS105において、アスペクト比が2.7474以上と判定したときはそのアスペクト比(Adi)をそのままの値(Adai)にして処理をステップS111に移す(S106)。
【0221】
また、ステップS105において、読み込んだアスペクト比が2.7474以上ではないと判定したときは、読み込んだアスペクト比が上記の(6)の−2.7474以下かどうかを判定する(S107)。
【0222】
ステップS107において、−2.7474以下であると判定したときは、ステップS109に処理を移す。ステップS109においては、抽出したアスペクト比を+2.7474(Adbi)にする。
【0223】
これにより、樹冠端部と地盤との位置関係から生じるアスペクト比の極小化(樹冠形状指数では極大化)を防止する。
【0224】
また、ステップS107において、−2.7474以下ではないと判定したときは、抽出したアスペクト比(0〜−2.7474(7)(0を除く))を−2.7474(Adci)にする。これにより、樹冠端部から上の場合は、樹冠端部から上の山地形であることを強調する。
【0225】
また、前述のステップS104、ステップS106、ステップS110、ステップS109のアスペクト比をファイル37に記憶する(S111)
次に、検索方向kipが8かどうかを判定し(S112)、8方向になっていないときは検索方向を更新して処理をステップS101に戻す(S113)。
【0226】
ステップS113において、隣接する8方向の樹木高グリッドデータのアスペクト比が、水平軸を基準として全てマイナスと判定したときは、8方向の更新後のアスペクト比を1000倍(Addi)する(S115)。すなわち、頂点を強調する。
【0227】
次に、検索エリア内で樹木高グリッドデータDdiが最後かどうかを判定し(S116)、最後でないときは次の番号の樹木高グリッドデータDdiに更新して処理をステップS100に戻す(S117)。
【0228】
すなわち、ファイル37には、ステップS109、S110の処理によって、図38に示すように、設定された番号の樹木高グリッドデータDdiと検索方向kpiと抽出したMAXAdi、MINAdiと更新アスペクト比とが対応させられて保存されている。
【0229】
更新アスペクト比は、アスペクト比Adiのままの値(Adai)又は2.7474(Adbi)又は−2.7474(Adci)若しくは−2.7474を1000倍したアスペクト比(Addi)のいずれかである。
【0230】
従って、第2の樹冠形状指数計算処理41bは、Ddi、kipに対応する更新アスペクト比を引当、この更新アスペクト比の中から最大アスペクト比MAXAdi(アスペクト比Adiのまま又は2.7474又は−2.7474又は−2747.4のいずれか)と、最小アスペクト比MINAdi(アスペクト比Adiのまま又は2.7474又は−2.7474又は−2747.4のいずれか)読み込むことになる。
【0231】
(第2の樹冠形状指数計算処理)
そして、第2の樹冠形状指数計算処理41bは、第2の地上開度φ1´と第2の地下開度φ2´を算出する。
【0232】
第2の地上開度φ1´=90度−tan-1(MAXAdi)
第2の地下開度φ2´=90度+tan-1(MINAdi)
次に、この第2の地上開度φ1´と第2の地下開度φ2´とを用いて第2−1の樹冠形状指数φ3´を求める。
【0233】
第2−1の樹冠形状指数φ3´=(φ1´−φ2´)/2
次に、8方位全てに対して、これを平均化(8方位)し、この平均化された第2−1の樹冠形状指数φ3´を、樹木高グリッドデータDdiを中心とした検索範囲での第2−2の樹冠形状指数eiとして、樹冠グリッドデータDdiにリンク付けしてファイル37に記憶する。
【0234】
最後に第2−2の樹冠形状指eiを検索範囲に対応させてファイル37に記憶する。
【0235】
次に、本実施の形態2で用いるガウシアンフィルタ処理41cについて説明する。
【0236】
この手法は局所平均(これまでの平滑化)と異なり、対象局所領域に重みを持たせ、画像をより鮮明にすることができる。局所平均と局所加重平均の例を図40に示す。図40(a)が局所平均であり、図40(b)が局所加重平均の処理結果である。
【0237】
つまり、本実施の形態ではガウシアンフィルタという局所加重平均を用いて第2−2の樹冠形状指数eiを平滑化する。
【0238】
ガウシアンフィルタは下記の式(E)のガウス関数で加重を決定する。
【数1】

【0239】
ここで、G は各画素の加重、i,j は縦横それぞれの中心画素からの距離(画素)、νは変数を表す。
【0240】
ガウシアンフィルタは変数νを任意で変えることで、画像の平滑化の度合いを変化させることができるという利点を持っている。
【0241】
一般的に局所領域の大きさが(2N+1)×(2N+1)
の場合、νはN/2 とするのが目安である。また、νの値が小さいとより原画像に近く、νの値が大きいと局所平均画像に近づく特徴がある。図44にガウシアンフィルタを用いた平滑化の例を示す。なお、νは目安となっているN/2 とした。図から上記で述べた局所平均による平滑化の2つの問題点を解決できていることから、本実施の形態2ではガウシアンフィルタを用いた平滑化を採用する。νは、0.5〜0.7(図32参照)とする(好ましくは0.7)。
【0242】
ガウシアンフィルタ処理41は、このような第2−3の樹冠形状指数eeiを、メモリ37に記憶し、森林領域抽出処理41dが以下の処理を行う。
【0243】
(森林領域抽出処理)
次に、森林領域抽出処理を説明する。
【0244】
樹冠形状指数は地表面(DSM)と地盤面(DEM)の差分(DHM)をもとにわずかな凹凸からも樹冠モデルを仮想的に作成するものである。一方で、樹木が存在しないギャップや林道などの領域においても樹冠モデルを作成してしまい、樹木が存在しない領域でも樹木頂点の抽出がなされてしまう。
【0245】
そこで、樹木が存在しない領域において樹木頂点の抽出を行わないように、森林領域の抽出を行った(図29参照)。森林領域の抽出にはDHM を用い、下層植生を含まないようにここでは一例としてDHMが3m以上の領域を森林領域とした。そして、森林領域の第2-3の樹冠形状指数eeiはそのままの値を用い、非森林領域(例えばDHMが3m未満の領域)の樹冠形状指数を任意の数値(例えば「-70」)にしたものを第2−4の樹冠形状指数Eeiとした。この第2−4の樹冠形状指数Eeiは、グリッドデータDdiに関連付けられてメモリ37に記憶される。
【0246】
このため、ファイル37には図39に示すように、設定された樹木高グリッドデータDdiと、検索方向kipと、更新前のMAX、MINのアスペクト比と、更新後のMAX、MINのアスペクト比とが検索方向毎に、リンクつけされて記憶されている。
【0247】
また、ファイル37には図39に示すように、設定された樹木高グリッドデータDdiの番号と、そのX、Y座標と、樹木高の差Zと、次の番号の樹木高グリッドデータと、このX、Y座標と、距離diと、第2―1の樹冠形状指数φ3´と、この第2―1の樹冠形状指数φ3´を得たときの第2の地上開度φ1´と、第2の地下開度φ2´とが検索方向にリンクつけされ、また、これらの8方向全ての平均化された第2−2の樹冠形状指数ei及びガウシアンフィルタ後の第2−3の樹冠形状指数eei、森林領域抽出後の第2−4の樹冠形状指数Eei等が対応させて記憶されている。これらを総称して第2の樹冠形状指数情報Giiともいう。
【0248】
次に、閾値算出部35が予め設定された局所領域Hi(例えば3×3ピクセル)の第2−4の樹冠形状指数Eeiの平均値μと標準偏差σとの和を閾値Hgiとして求め、これを樹冠部抽出部23に渡す。
【0249】
次に、樹冠部抽出部23は、閾値算出部35で求められた閾値Hgiより大きい値の第2−4の樹冠形状指数Eeiを抽出し、これを樹冠部のデータDhi(Dh1、Dh2・・・)としてファイル24に保存する。
【0250】
次に、第2の樹木頂点決定部43は、メモリ24のデータDhiの隣接するまとまり毎に番号を割り振ったデータDQi(樹幹形状指数のデータ)をメモリ28に生成する(図46(a))。
【0251】
このデータDQiに対して以下の樹木頂点抽出処理を行う。
【0252】
データDQiは樹冠領域毎(まとまり毎)に重複しない番号が割り振られる。一つの番号につき、複数のデータDdiが存在する場合、この番号の内で最大の樹冠形状指数を持つ点を樹木頂点Pipとする。
【0253】
さらに、樹木頂点が隣接し、過剰抽出となる場合があるため、隣接樹木頂点の除去処理を行う。
【0254】
樹木頂点抽出結果(上記手法により抽出された樹木頂点Pipの抽出精度)からスギ林だけでなく、ヒノキ林においても精度良く抽出する手法が開発できたと考える。なお、樹冠部域画像と樹木頂点抽出結果を参照すると、抽出樹木頂点が隣接している場合に若干多めに樹木頂点を抽出する傾向にあるが、この点に対しては以下の手法により解決できる。
【0255】
図35に1 つの樹冠に複数の樹木頂点が存在している状況を示す。これは、樹冠部域が1 つの樹冠に対して1 つの樹冠部域が抽出されず、樹冠部が分割されたために生じたと考えられる0.5m グリッドにおいて樹木頂点が斜めに隣接する場合、2 点間の距離は0.7m であり、立木密度を考慮するとその間隔は短い。このことからも1 つの樹冠から過剰に樹木頂点が抽出されていることがわかる。
【0256】
この問題を解決するために、樹木頂点の抽出でも使用した樹冠形状指数の大小関係を利用して、隣接する樹木頂点を除去した。具体的には、Pipに対して例えば3×3の局所領域を設定し、順次この局所領域を移動させ、局所領域の中央に樹木頂点Pipが位置するときに局所領域内に他の樹木頂点Pipが存在するかどうかを判定し、存在している場合は、樹冠形状指数Eeiの大小を比較し、中央の樹木頂点Pipの樹冠形状指数Eeiが小さい場合、この樹木頂点を消去する。
【0257】
図45は隣接樹木除去処理を説明するフローチャートである。
【0258】
隣接樹木処理は、樹木頂点のデータPipに対して3×3のフィルタをかけて、このフィルタの中央の位置JDiを設定する(S201、図46(b))。
【0259】
次に、中央の位置JDiの隣接8方向の領域JDriに樹木頂点のデータPipがあるかどうかを判定する(S202)。
【0260】
ステップS202において、データPipがあると判定したときは、隣接8方向の領域JDriにデータPipに対応する第2−4の樹冠形状指数Eeiと中央の位置JDiの第2−4の樹冠形状指数Eeiとを比較して値の大小を判定する(S203、S204)。
【0261】
ステップS204において、JDiの樹冠形状指数Eeiが小さいと判定したときは、JDiの樹木頂点のデータPipを「0」とする(S206)。
【0262】
また、ステップS204において、JDiの樹冠形状指数Eeiが大きいと判定したときは、樹木頂点のデータPipがメモリ28に他にあるかどうかを判定する(S207)。他にあると判定したときは、JDiを次の番号に更新して処理をステップS201に移す(S209)。
【0263】
図46(b)においては、3×3フィルタの中央に「2」が存在し、斜め方向に「1」が存在している。「2」に対応する第2−4の樹冠形状指数が、「1」に対応する第2−4の樹冠形状指数より小さい場合は、図46(c)に示すように「2」は消去される。
【0264】
また、ステップS207において、データPipが他にないと判定したときは、メモリ28の全ての樹木頂点のデータPipを樹木頂点Piとしてメモリ29に記憶する(S208)。
【0265】
次に、樹木頂点消去について説明を補充する。
図44 に樹木頂点を除去した結果を示す。図に示す通り、同一樹冠内の樹木頂点が除去され、1つの樹冠に対して、1 つの樹木頂点が抽出されることが確認できた。
【0266】
隣接する樹木頂点を除去した結果を表5に示す。
【表5】

【0267】
H4-1、H4-2、H5-1 以外のプロットでは抽出精度に違いはないが、特にH4-1、H4-2 では樹頂点の抽出精度が向上した。現地で確認した樹冠形状とオルソ画像を勘案すると、H4 プロットは樹冠表層が他のプロットに比べて凹凸が明瞭ではなく、複雑な形状をしていると思われる。このため、1 つの樹冠に対して隣接する2つの樹冠上部が抽出され、その結果、1つの樹冠に対して隣接する2つの樹頂点が抽出されてしまったと考えられる。
【0268】
<実施の形態3>
前述の実施の形態1及び実施の形態2のDSMは、 樹冠形状明確化を行うために樹冠内部の標高データを除去している。
【0269】
これは、樹冠を透過するパルスや航空機から斜めにレーザーが照射されることで樹木間の隙間から地盤に到達するパルスが存在するため、従来のDSM には樹冠内部の標高データ(樹冠表層の標高データではなく、樹冠等を透過して取得された標高データ)も含まれている(図47参照)。このDSM を用いて樹高データ(DHM)を算出すると、樹冠形状が不明瞭になってしまう傾向にある。
【0270】
従って、樹木頂点抽出精度を向上させるためには、樹冠内部の標高データを除去し、樹冠形状を明確化したDSM を作成する必要がある。
【0271】
手動により樹冠内部の標高データを除去し、樹冠形状を明確化する手法もある。しかし、広範囲にわたる森林でのデータの処理には時間と労力がかかり、かつ、人為的な要因による再現性の問題が生じる可能性がある。
【0272】
先述したとおり、従来のDSM では地盤面の標高データも含まれているため、計測データは図48(a)のようになっている。赤点で示す樹冠表層の標高データと青点で示す地盤面の標高データではその分布域に違いがあるので、この差を用いて地盤面に存在する標高データを除去することができる。
【0273】
反射強度は反射する物体により、その値が異なり、樹木などの植物の反射強度は大きいが、道路などの人工物や地盤などの土の反射強度は小さいという特徴を持つ。また、樹冠などを透過することで、反射強度は減衰する。この特徴を活かし、標高データだけでは除去できない樹冠内部に存在する標高データを除去する。
【0274】
図48(b)に示す青点は樹冠内部に存在する標高データであり、標高データだけでは除去できないデータである。赤点で示す標高データは樹冠表層に存在するため、反射強度は大きい。一方、青点で示す樹冠内部の標高データは樹冠を透過し、減衰しているために反射強度は小さくなる。この反射強度の違いを用いて樹冠内部のデータを除去することができる。
【0275】
以上より、自動処理による樹冠形状明確化に十分な成果が得られたので、本手法による樹冠形状明確化DSM を作成し、以後の解析(樹木頂点の抽出等)を行うのが好ましい。
【0276】
なお、本実施の形態1および実施の形態2は下記に説明するように利用されることもある。
【0277】
(一元管理化)
本実施の形態2により高精度に林分パラメータが取得できることがわかった。
【0278】
任意の林分に対して、「平均樹高」「立木密度」「推定樹冠面積」といった林分パラメータが得られる。さらにこのデータを用いることで間伐林の選定に役立つ「収量比数」や「適正立木密度」が得られる。また、レーザー計測データからは「林分傾斜角」や「レーザーパルスの地盤到達率」といった情報も得られる。データの一元管理化した例を以下に示す。
【0279】
[1]林分に対して複数の情報を付与できる。
【0280】
[2]上記の取得情報を取得情報の位置や地図等の情報と共に可視的に管理できる。
【0281】
[3]データ管理・更新が容易で、データの信頼性が高められる。
【0282】
[4]一元データ管理により、データの比較・解析・評価が容易である。
【0283】
[5]他の情報(森林簿)と併せてデータを集約し、その情報も一元管理できる。
【0284】
以下に収量比数、森林整備ランクについて述べる。
【0285】
1)収量比数
収量比数は密度管理図をもとに算出するもので、最多密度における幹材積に対する現存幹材積の割合である。具体的には樹高と立木密度から算出される。梨のスギ、ヒノキ林の密度管理図に描かれている曲線式を次に示す。
【0286】
スギ林
V = (0.07155968H-1.373859 + 5062H-2.869785 / N )-1 式(F)
logNRF = 5.370947 −1.495926logH 式(G)
ヒノキ林
V = (0.035147H-1.080773 + 4711.2H-2.922894 / N )-1 式(H)
logNRF = 5.7384 −1.8482121logH 式(I)

NRF:最多密度におけるha あたりの本数(本/ha)である。
【0287】
本研究ではプロット内に含まれる樹木本数(現地調査結果、樹冠未到達の中下層木も含む)と抽出本数(開発手法によるもので、表層木のみとなる)とをもとにした立木密度を用いて収量比数を算出した。その結果を図49に示す。この図からプロット間の相対的な大小関係は大きく変わらないため、間伐の優先度を選定する情報として表層木のみの収量比数を用いることが可能とわかる。
【0288】
また、収量比数を0.7 として適正立木密度を算出した。この数値は「中庸仕立
て」と呼ばれる一般的な間伐の指標である。
【0289】
森林整備ランク
森林の生育状況だけでなく、樹種や森林の生育している状況にも注目して森林整備の優先度を評価する指標が森林整備ランクである。これは「森林管理ランク(収量比数)」「森林特性ランク(樹種や林齢)」「国土保全ランク(傾斜や保全対象)」を求め、総合的に森林整備の優先度を把握することができる。
【0290】
森林整備ランクを算出した結果を図50,51に示す。このことから、スギ林においては本指標により劣勢木の潜在状況も加味した森林整備計画が可能と考える。
【0291】
また、取得した情報を林分毎に整備し、GIS データとして一元管理する例を図52 に示す。
【0292】
これにより、森林整備ランクをオルソ画像情報に載せて把握したり、プロットを選択することで図中右上のような林分の詳細データを把握したりできる。成可能であり、下記の様な利用が考えられる。
【0293】
[1] 森林の状態や森林所有者の把握が容易
[2] 優先度を考慮した効率的な森林整備計画
[3] 情報共有・公開社会に適した森林情報のデータ整備・運用
詳細な現地調査を実施することなく、簡易・広範囲
に森林整備の優先度が把握できることは、林業経営の観点から求められているコスト削減や要間伐林の選定が急務となっている現在の社会情勢に貢献するものと考える。また、林分パラメータだけでなく、レーザー計測データのオルソ画像や既存森林簿等も情報として加えることで、さらにGIS 一元管理の利便性が高まり、公開・共有情報化社会に貢献するものと考える。
【0294】
さらに、災害等により、地面が削りとられた場合に、本手法により予めこの個所の付近のそう本数を得ておいて、再びこの個所の付近の本数を求めて、その差を求めると、どの程度の木が川に流れたかが分る。
【0295】
(樹冠面積の推定)
樹冠面積推定は樹冠形状指数Eeiをもとに、watershed アルゴリズムで行っている。実施の形態1の樹冠面積推定手法では、あらかじめ樹冠サイズを設定し、樹冠面積を推定していたため、疎密度にばらつきのある林分においては十分な樹冠面積の推定ができていなかった。そこで、アルゴリズムの見直しを行い、推定精度の向上を試みた。
【0296】
樹冠面積推定手法の改良は実施の形態1と同様にwatershed アルゴリズムを用いて行った。実施の形態1では樹木頂点から周囲を検索して集水域を推定していたが、本利用例では閾値以上の任意の点がどの樹木頂点の集水域に属しているかという考え方に基づいて樹冠面積を推定している。
【0297】
本利用例では、樹冠形状指数Eeiに設定する閾値以上を対象に樹冠面積を推定するため、最適な閾値を設定する必要がある。そこで、最適な閾値を設定するために、樹高データと樹冠形状指数の断面形状をもとに最適値を決める。
【0298】
樹高(DHM)3m 以上を森林領域と定義したことから、これに基づき、樹高3m 以上の領域と樹冠形状指数のある値以上の領域とがほぼ合致するとき、この樹冠形状指数Eeiの値を閾値とする。図33に樹高と樹冠形状指数の2 値化画像(背景にオルソ画像を表示)を示している。
【0299】
図33で示したように樹高3m以上の領域に相当する樹冠形状指数は-60 であったため、樹冠形状指数Eeiの閾値を-60 として樹冠面積を推定する。
【0300】
樹冠面積推定結果と精度改良した手法を用いて推定した樹冠面積を実施の形態1で作成した推定樹冠面積と比較した結果を図42に示す。図を見ると実施の形態1の推定面積に比べて、樹冠の大きさに応じた推定面積となっている。また、目視判読の樹冠面積と同様の大きさであり、推定手法が改善されていることがわかる。
【0301】
本利用例をヒノキ林に適用した結果の画像を図43に示し、検証結果を表6、表7、表8に示す。
【表6】

【表7】

【表8】

【0302】
表6から樹木の抽出数の精度は目視判読と比較してH4 林分で十分な精度ではなく(密林では目視判読結果は過小抽出となる)、また、被覆面積率(樹冠面積合計の抽出割合)は目視判読に比べて、全体的に過大であった。しかし、調査林分の状況やfirst パルスの地盤到達率からヒノキ林分は鬱閉していると考えられ、目視判読の樹冠面積が過小と考えられる(目視判読の樹冠面積は樹冠の大きさ、ヒノキの樹冠形状、判読写真の解像度の問題から、鬱閉状態を表すような判読面積に上方修正することは困難)。このため、林分面積をもとに樹冠面積の抽出精度を検証した。その結果、林分面積に対して推定樹冠面積の抽出率は概ね100%となり、推定樹冠が鬱閉状態を表していることがわかる。
【0303】
表7には単樹冠面積の比較を示したが、密林では目視判読が過小抽出となることや推定樹冠面積が目視判読に比べ過大であることから十分な精度が得られていない。
【0304】
また、目視判読の抽出精度を利用して林分内に含まれる実樹木本数を推定した結果及び、推定実樹木本数と開発手法による抽出樹木本数との比較結果を表8に示す。目視判読の抽出精度から推定する実樹木本数と開発手法による抽出樹木本数との割合は約9〜11 割となり、林分全域で高精度に樹木本数が抽出できていると考えられる。
【0305】
さらに、このことと推定樹冠が鬱閉状態を再現できていたことを考えると表7 の推定単樹冠面積の再現性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0306】
【図1】本発明にいたる経緯を説明の説明図である。
【図2】本発明にいたる経緯を説明する説明図である。
【図3】本発明にいたる経緯を説明する説明図である。
【図4】本実施の形態による尾根谷画像と樹冠形状指数画像との比較説明図である。
【図5】本実施の形態の樹木頂点認識装置の概略構成図である。
【図6】本実施の形態を説明する概略フローチャートである。
【図7】検索範囲の設定を説明する説明図である。
【図8】本実施の形態の樹冠形状指数による画像を説明する説明図である。
【図9】樹冠形状指数算出部32のアスペクト比を求める処理を説明するフローチャートである。
【図10】樹冠形状指数算出部32のアスペクト比を求める処理を説明するフローチャートである。
【図11】検索範囲における樹木高グリッドデータの抽出を説明する説明図である。
【図12】更新するアスペクト比と角度の関係を説明する説明図である。
【図13】アスペクト比の更新処理を説明するフローチャートである。
【図14】抽出したDppiと更新したアスペクト比等の情報を説明する説明図である。
【図15】ファイル37の樹冠形状指数情報Giの説明図である。
【図16】樹冠形状指数の算出のフローチャートである。
【図17】樹冠領域に対しての樹冠部との関係を説明する説明図である。
【図18】局所領域の平均値(μ)と標準偏差(σ)との関係を説明する説明図である。
【図19】具体的な樹冠部の抽出処理を説明するフローチャートである。
【図20】頂点候補Dgiの説明図である。
【図21】樹冠の上部のデータDhiの説明図である。
【図22】樹冠部の説明図である。
【図23】本実施の形態による疎林の頂点抽出結果を説明する説明図である。
【図24】本実施の形態の樹冠形状指数画像と尾根谷度画像との違いを説明するための説明図である。
【図25】本実施の形態の樹冠形状指数画像と尾根谷度画像との違いを説明するための説明図である。
【図26】本実施の形態による疎林の樹冠部抽出結果を説明する説明図である。
【図27】本実施の形態の具体的なハードウエア構成図である。
【図28】実施の形態2における樹冠形状指数の平滑処理(局所領域)による樹木頂点の減少を説明する説明図である。
【図29】実施の形態2による森林領域抽出結果を説明する説明図である。
【図30】本実施の形態2の樹木頂点認識装置の概略構成図である。
【図31】本実施の形態2を説明する概略フローチャートである。
【図32】本実施の形態2のガウシアンフィルタと局所平均の樹木頂点抽出結果の比較を説明する説明図である。
【図33】本実施の形態2の利用例(樹冠面積の推定)の森林領域の最適閾値の設定根拠を説明する説明図である。
【図34】本実施の形態2による樹冠部域の抽出結果を説明する説明図である。
【図35】隣接頂点の不具合を説明する説明図である。
【図36】本実施の形態2のアスペクト比更新処理を説明するフローチャートである。
【図37】本実施の形態2の地上・地下開度の置き換え変更を説明する説明図である。
【図38】本実施の形態2の抽出したDppiと更新したアスペクト比等の情報を説明する説明図である。
【図39】実施の形態2のファイル37の樹冠形状指数情報Giiの説明図である
【図40】局所平均と局所加重平均を説明する説明図である。
【図41】本実施の形態2のガウシアンフィルタの説明図である。
【図42】本実施の形態2の利用例(樹冠面積の推定)の樹冠面積推定結果を説明する説明図である。
【図43】本実施の形態2の利用例(樹冠面積の推定)の樹冠面積推定結果を説明する説明図である。
【図44】本実施の形態2の隣接頂点樹木前後の比較を説明する説明図である。
【図45】本実施の形態2の隣接樹木頂点除去処理を説明するフローチャートである。
【図46】本実施の形態2の隣接樹木頂点の除去を説明する説明図である。
【図47】実施の形態3のDSMの標高データの削除を説明する説明図である。
【図48】実施の形態3の樹冠内部データを説明する説明図である。
【図49】本実施の形態2の利用例(収量比較)を説明する説明図である。
【図50】本実施の形態2の利用例(森林整備ランク)を説明する説明図である。
【図51】本実施の形態2の利用例(森林整備ランク)を説明する説明図である。
【図52】本実施の形態2の利用例(森林整備ランク)を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0307】
10 データベース
11 データベース
13 表示部
14 樹木高算出部
17 尾根谷度算出部
21 樹木頂点候補抽出部
23 樹冠部抽出部
25 第1の樹木頂点決定部
30 出力部
32 第1の樹冠形状指数算出部
35 閾値算出部
41 第2の樹冠形状指数算出部
41a 第2のアスペクト比更新処理
41b 第2の樹冠形状計算処理
41c ガウシアンフィルタ
41d 森林領域抽出処理
43 第2の樹木頂点決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空から地上を撮影した所定エリアのオルソフォト画像又は/及び所望のグリッドデータを画像化した画像を表示部の画面に表示する一方、前記所定エリア内の、地盤のX、Y、Z座標値及び樹木の表層のx、y、z座標値との差を求め、この差Zci及びXci、Yci座標を樹木高グリッドデータDdiとして得て、この樹木高グリッドデータDdiに基づいて樹木の頂点を認識する樹木頂点認識方法であって、
コンピュータが、
樹冠形状指数EGiを求めるための前記グリッドデータの検索範囲Mi、前記樹木高グリッドデータDdi、前記樹冠形状指数EGiから樹冠部を抽出するための局所領域を記憶手段に記憶するステップと、
前記画像に対応する各樹木高グリッドデータDdiを中心とした検索範囲Mi毎に、検索方向kipでの各樹木高グリッドデータDppiとの樹木高及び距離から求めたアスペクト比の最大値、最小値で地上開度φ1´、地下開度φ2´を求め、これらの開度に基づいて樹冠形状指数EGiを算出して前記記憶手段に記憶する樹冠形状指数算出ステップと、
前記樹木高グリッドデータDdiに対して前記局所領域を定め、この局所領域毎に前記樹冠形状指数EGiの平均値と標準偏差とを求め、これらの和を閾値として求める閾値算出ステップと、
前記局所領域の前記閾値が求められる毎に、その樹冠形状指数EGiが前記閾値以上かどうかを判断し、閾値を超えているときに、樹冠部として抽出する樹冠部抽出ステップと、
前記樹冠部毎に、該樹木部内に存在する最適な樹木頂点を認識して、該認識した頂点を所定の形状にして前記表示部に表示又は前記頂点の座標値を出力する樹木頂点認識ステップと
を行うことを特徴とする樹木頂点認識方法。
【請求項2】
前記コンピュータは、
前記樹冠形状指数算出ステップが、
前記検索方向kip内での各樹木高グリッドデータDppiの樹木高と距離からアスペクト比を順次求め、これらのアスペクト比の中の最大値及び最小値を抽出し、該最大値を所定の第1の値に更新して前記地上開度φ1´を求めると共に前記最小値を所定の第2の値に更新して前記地下開度φ2´を求めて前記樹冠形状指数EGiを算出させることを特徴とする請求項1記載の樹木頂点認識方法。
【請求項3】
前記コンピュータは、
前記樹冠形状指数算出ステップが、
前記所定エリア内の前記樹木高グリッドデータDdiを順次設定するAステップと、
該樹木高グリッドデータDdiが設定される毎に、この樹木高グリッドデータに前記検索範囲Miを設定するBステップと、
前記樹木高グリッドデータDdiが設定される毎に、検索方向kipを求めて設定するCステップと、
前記検索方向kipが設定される毎に、該設定された検索方向kipに存在する前記検索範囲Mi内の樹木高グリッドデータDppiを順次設定し、水平軸上の距離に対しての垂直方向のアスペクト比を求め、求められたアスペクト比から最大および最小のアスペクト比を抽出するDステップと、
前記Dステップで抽出された最大および最小のアスペクト比を基に、該最大および最小のアスペクト比を、前記第1の所定の値の針葉樹用の新たなアスペクト比及び前記第2の所定の値の針葉樹用の新たなアスペクト比に更新し、該更新した新たなアスペクト比で前記樹冠形状指数EGiを算出させるEステップと
を行うことを特徴とする請求項2記載の樹木頂点認識方法。
【請求項4】
前記コンピュータは、
前記樹冠形状指数算出ステップが、
前記樹木高グリッドデータDdiに対して全ての検索方向kipでの隣接するグリッドデータのアスペクト比が、前記水平軸を基準として全てマイナスのアスペクト比になっているときは、前記Eステップで求められたアスペクト比を前記針葉樹の樹木頂点と認識しやすくなるように新たなアスペクト比にするFステップと
を行うことを特徴とする請求項3記載の樹木頂点認識方法。
【請求項5】
前記コンピュータは、
前記樹冠形状指数算出ステップが、
前記アスペクト比の最大値及び最小値から前記地上開度φ1´及び地下開度φ2´を順次求めるGステップと、
前記地上開度φ1´及び地下開度φ2´から樹冠形状指数φ3´を順次求めるHステップと、
全ての前記検索方向kipの前記樹冠形状指数φ3´が求められたときに、これらを平均化して、さらに局所加重平均化し、これを前記樹冠形状指数EGiとして記憶するIステップと
を行うことを特徴とする請求項1記載の樹木頂点認識方法。
【請求項6】
前記コンピュータは、
前記樹冠部抽出ステップが、
前記樹冠形状指数EGiが記憶される毎に、該樹冠形状指数EGiを読み込むと共に、前記記憶手段の前記局所領域を読み込むJステップと、
前記局所領域の平均値及び標準偏差の和を前記樹冠部の抽出のための閾値Hgiとして求めるKステップと、
前記局所領域の中央の樹冠形状指数EGiが閾値以上の場合は、該中央の値を樹冠部とする値に置き換えて表示させるLステップと
を行うことを特徴とする請求項1記載の樹木頂点認識方法。
【請求項7】
前記Dステップは、
前記樹木高グリッドデータDdi及び前記検索範囲Mi内の樹木高グリッドデータDppiが設定される毎に、垂直方向の差ΔZci及び水平方向の距離diを求めるステップと、
前記差Zciとその距離diとのアスペクト比を水平方向を基準にして順次求め、このアスペクト比を算出するステップと、
前記算出されたアスペクト比の中から最大と最小のアスペクト比を抽出するステップと、
を行うことを特徴とする請求項3記載の樹木頂点認識方法。
【請求項8】
前記Eステップは、
前記Dステップで求められたアスペクト比の最大値又は最小値が、水平方向を基準にして前記垂直方向で、
前記アスペクト比の最大値又は最小値が−2.7474〜0(0を含まない)の範囲に相当する場合は、最大値又は最小値を、−2.7474に更新し、
前記アスペクト比の最大値又は最小値が0〜+2.7474に相当する場合は、最大値又は最小値を、+2.7474に更新し、
前記アスペクト比の最大値又は最小値が−2.7474以下に相当する場合は、最大値又は最小値を、+2.7474に更新し、
前記アスペクト比の最大値又は最小値が+2.7474以上に相当する場合は、前記抽出された最大値又は最小値のままとするステップと
を行うことを特徴とする請求項3記載の樹木頂点認識方法。
【請求項9】
前記Fステップは、
前記樹木高グリッドデータDppiに対して全ての検索方向での隣接するグリッドデータとの比較で求められたアスペクト比が、前記水平軸を基準としてマイナスになっているときは、前記Eステップで求められたアスペクト比を1000倍することを特徴とする請求項4記載の樹木頂点認識方法。
【請求項10】
前記コンピュータは、
前記樹木頂点認識ステップが、
前記樹冠部毎に、該樹木部内に存在する最大の樹冠形状指数EGiの箇所を樹木頂点とするステップとを行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の樹木頂点認識方法。
【請求項11】
前記樹木頂点認識ステップは、
前記樹冠部毎に、n×nのフィルタをかけて、該フィルタの中央に樹木頂点データが存在しかつ、該フィルタ内に他の樹木頂点データが存在したときに、両者の前記樹冠形状指数EGiを比較し、前記中央の樹冠形状指数EGiの方が小さい場合、前記中央の樹木頂点を消去することを特徴とする請求項10記載の樹木頂点認識方法。
【請求項12】
上空から地上を撮影した所定エリアのオルソフォト画像又は/及び所望のグリッドデータを画像化した画像を表示部の画面に表示する一方、前記所定エリア内の、地盤のX、Y、Z座標値及び樹木の表層のx、y、z座標値との差を求め、この差Zci及びXci、Yci座標を樹木高グリッドデータDdiとして得て、この樹木高グリッドデータDdiに基づいて樹木の頂点を認識する樹木頂点認識装置であって、
樹冠形状指数EGiを求めるための前記グリッドデータの検索範囲Mi、前記樹木高グリッドデータDdi、前記樹冠形状指数EGiから樹冠部を抽出するための局所領域を記憶した記憶手段と、
前記画像に対応する各樹木高グリッドデータDdiを中心とした検索範囲Mi毎に、検索方向kipでの各樹木高グリッドデータDppiとの樹木高及び距離から求めたアスペクト比の最大値、最小値で基づいて地上開度φ1´、地下開度φ2´を求め、これらの開度に基づいて樹冠形状指数EGiを算出して前記記憶手段に記憶する樹冠形状指数算出手段と、
前記樹木高グリッドデータDdiに対して前記局所領域を定め、この局所領域毎に前記樹冠形状指数EGiの平均値と標準偏差とを求め、これらの和を閾値として求める閾値算出手段と、
前記局所領域の前記閾値が求められる毎に、その樹冠形状指数EGiが前記閾値以上かどうかを判断し、閾値を超えているときに、樹冠部として抽出する樹冠部抽出手段と、
前記樹冠部毎に、該樹木部内に存在する最適な樹木頂点を認識して、該認識した頂点を所定の形状にして前記表示部に表示又は前記頂点の座標値を出力する樹木頂点認識手段と
を有することを特徴とする樹木頂点認識装置。
【請求項13】
前記樹冠形状指数算出手段は、
前記検索方向kip内での各樹木高グリッドデータDppiの樹木高と距離からアスペクト比を順次求め、これらのアスペクト比の中の最大値及び最小値を抽出し、該最大値を所定の第1の値に更新して前記地上開度φ1´を求めると共に前記最小値を所定の第2の値に更新して前記地下開度φ2´を求めることを特徴とする請求項12記載の樹木頂点認識装置。
【請求項14】
前記樹冠形状指数算出手段は、
前記所定エリア内の前記樹木高グリッドデータDdiを順次設定するA手段と、
該樹木高グリッドデータDdiが設定される毎に、この樹木高グリッドデータに前記検索範囲Miを設定するB手段と、
前記樹木高グリッドデータDdiが設定される毎に、検索方向kipを求めて設定するC手段と、
前記検索方向kipが設定される毎に、該設定された検索方向kipに存在する前記検索範囲Mi内の樹木高グリッドデータDppiを順次設定し、水平軸上の距離に対しての垂直方向のアスペクト比を求め、求められたアスペクト比から最大および最小のアスペクト比を抽出するD手段と、
前記D手段で抽出された最大および最小のアスペクト比を基に、該最大および最小のアスペクト比を、前記第1の所定の値の針葉樹用の新たなアスペクト比及び前記第2の所定の値の針葉樹用の新たなアスペクト比に更新し、該更新した新たなアスペクト比で前記樹冠形状指数を算出させるE手段と
を有することを特徴とする請求項12記載の樹木頂点認識装置。
【請求項15】
前記樹冠形状指数算出手段は、
前記樹木高グリッドデータDdiに対して全ての検索方向kipでの隣接するグリッドデータのアスペクト比が、前記水平軸を基準として全てマイナスのアスペクト比になっているときは、前記Eステップで求められたアスペクト比を前記針葉樹の樹木頂点と認識しやすくなるように新たなアスペクト比にするF手段と
を有することを特徴とする請求項13記載の樹木頂点認識装置。
【請求項16】
前記樹冠形状指数算出手段は、
前記アスペクト比の最大値及び最小値から前記地上開度φ1´及び地下開度φ2´を順次求めるG手段と、
前記地上開度φ1´及び地下開度φ2´から樹冠形状指数φ3´を順次求めるH手段と、
全ての前記検索方向kipの前記樹冠形状指数φ3´が求められたときに、これらを平均化して、さらに局所加重平均化し、これを前記樹冠形状指数EGiとして記憶するI手段と
を有することを特徴とする請求項12記載の樹木頂点認識装置。
【請求項17】
前記樹冠部抽出手段が、
前記樹冠形状指数EGiが記憶される毎に、該樹冠形状指数EGiを読み込むと共に、前記記憶手段の前記局所領域を読み込むJ手段と、
前記局所領域の平均値及び標準偏差の和を前記樹冠部の抽出のための閾値Hgiとして求めるK手段と、
前記局所領域の中央の樹冠形状指数が閾値以上の場合は、該中央の値を樹冠部とする値に置き換えて表示させるL手段と
を有することを特徴とする請求項12記載の樹木頂点認識装置。
【請求項18】
前記D手段は、
前記樹木高グリッドデータDdi及び前記検索範囲Mi内の樹木高グリッドデータDppiが設定される毎に、垂直方向の差ΔZci及び水平方向の距離diを求める手段と、
前記差Zciとその距離diとのアスペクト比を水平方向を基準にして順次求め、このアスペクト比を算出する手段と、
前記算出されたアスペクト比の中から最大と最小のアスペクト比を抽出する手段と、
を有することを特徴とする請求項17記載の樹木頂点認識装置。
【請求項19】
前記E手段は、
前記D手段で求められたアスペクト比の最大値又は最小値が、水平方向を基準にして前記垂直方向で、
前記アスペクト比の最大値又は最小値が−2.7474〜0(0を含まない)の範囲に相当する場合は、最大値又は最小値を、−2.7474に更新する手段と、
前記アスペクト比の最大値又は最小値が0〜+2.7474に相当する場合は、最大値又は最小値を、+2.7474に更新する手段と、
前記アスペクト比の最大値又は最小値が−2.7474以下に相当する場合は、最大値又は最小値を、+2.7474に更新する手段と、
前記アスペクト比の最大値又は最小値が+2.7474以上に相当する場合は、前記抽出された最大値又は最小値のままとする手段と
を有することを特徴とする請求項17記載の樹木頂点認識装置。
【請求項20】
前記F手段は、
前記樹木高グリッドデータDppiに対して全ての検索方向での隣接するグリッドデータとの比較で求められたアスペクト比が、前記水平軸を基準としてマイナスになっているときは、前記Eステップで求められたアスペクト比を1000倍することを特徴とする請求項19記載の樹木頂点認識装置。
【請求項21】
前記樹木頂点認識手段は、
前記樹冠部毎に、該樹木部内に存在する最大の樹冠形状指数EGiの個所を樹木頂点とする手段
とを有することを請求項12乃至20のいずれかに記載の樹木頂点認識装置。
【請求項22】
前記樹木頂点認識手段は、
前記樹冠部毎に、n×nのフィルタをかけて、該フィルタの中央に樹木頂点データが存在しかつ、該フィルタ内に他の樹木頂点データが存在したときに、両者の前記樹冠形状指数EGiを比較し、前記中央の樹冠形状指数EGiの方が小さい場合、前記中央の樹木頂点を消去することを特徴とする請求項21記載の樹木頂点認識装置。
【請求項23】
上空から地上を撮影した所定エリアのオルソフォト画像又は/及び所望のグリッドデータを画像化した画像を表示部の画面に表示する一方、前記所定エリア内の、地盤のX、Y、Z座標値及び樹木の表層のx、y、z座標値との差を求め、この差Zci及びXci、Yci座標を樹木高グリッドデータDdiとして得て、この樹木高グリッドデータDdiに基づいて樹木の頂点を認識する樹木頂点認識のプログラムであって、
コンピュータに、
樹冠形状指数を求めるための前記グリッドデータの検索範囲Mi、前記樹木高グリッドデータDdi、前記樹冠形状指数から樹冠部を抽出するための局所領域を記憶手段に記憶する手段、
前記画像に対応する各樹木高グリッドデータDdiを中心とした検索範囲Mi毎に、検索方向kipでの各樹木高グリッドデータDppiとの樹木高及び距離から求めたアスペクト比の最大値、最小値で地上開度φ1´、地下開度φ2´を求め、これらの開度に基づいて樹冠形状指数EGiを算出して前記記憶手段に記憶する樹冠形状指数算出手段、
前記樹木高グリッドデータDdiに対して前記局所領域を定め、この局所領域毎に前記樹冠形状指数EGiの平均値と標準偏差とを求め、これらの和を閾値として求める閾値算出手段、
前記局所領域の前記閾値が求められる毎に、その樹冠形状指数EGiが前記閾値以上かどうかを判断し、閾値を超えているときに、樹冠部として抽出する樹冠部抽出手段、
前記樹冠部毎に、該樹木部内に存在する最適な樹木頂点を認識して、該認識した頂点を所定の形状にして前記表示部に表示又は前記頂点の座標値を出力する樹木頂点認識手段と
としての機能させるための樹木頂点認識のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図27】
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【図30】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図45】
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【図46】
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【図48】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図28】
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【図29】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図47】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【公開番号】特開2009−22278(P2009−22278A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161047(P2008−161047)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(591074161)アジア航測株式会社 (48)
【Fターム(参考)】