説明

樹脂の分散方法および成形体

【課題】簡便、効率的、効果的な樹脂の分散方法、特に非相溶な樹脂の分散に有用である分散方法を提供する。
【解決手段】
樹脂Aを溶融可塑化する工程と樹脂Aとは異なる樹脂Bを溶融可塑化する工程と、溶融可塑化された樹脂Aと樹脂Bとを交互にそれぞれ10層以上積層し、伸張して樹脂Aと樹脂Bの複合体を得る工程と、該複合体を溶融混練する工程とを有する樹脂の分散方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に互いに非相溶な樹脂同士を分散させるに有効な、樹脂の分散方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多種多様の樹脂素材を微細に複合して、新しい物性の発現を目指すアロイ化技術が盛んに研究されている。
【0003】
アロイの長所としては、各樹脂の特性を引き出しつつお互いの欠点を補完できることであり、例えばポリカーボネートにABSやPBTをアロイすることにより、耐衝撃性・流動性・耐薬品性などを両立することが可能である。
【0004】
一般的に、複数の異種樹脂同士の混合であるポリマーアロイが充分な効果を発揮するためには、成分となる樹脂が所望する分散径で均一に分散し結合していることが望ましい。そのため、相溶化剤の添加や、分子末端あるいは側鎖官能基においてグラフト共重合またはブロック共重合するなどして、異種樹脂間で化学的な結合を形成する方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
一方、特許文献2などでは、機械的に微分散化する方法が提案されている。しかしながら、このような方法では、分散径の微細化に限度があった。分散径の微細化が不十分であると、機械的強度が低く、成型性が劣るものとなり、フィルムなどの成形体においては、非常に厚みむらの悪いものしか得られないなどの欠点があった。
【特許文献1】特開2003−200482号公報
【特許文献2】特表平11−502559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決せんがため、溶融可塑化された樹脂Aと樹脂Bを微細に分散せしめる技術を提供することを目的とする。また、非相溶の樹脂同士であっても分散径を細かくすることができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の樹脂の分散方法は、樹脂Aを溶融可塑化する工程と樹脂Aとは異なる樹脂Bを溶融可塑化する工程と、溶融可塑化された樹脂Aと樹脂Bとを交互にそれぞれ10層以上積層し、伸張して樹脂Aと樹脂Bの複合体を得る工程と、該複合体を溶融混練する工程を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、非相溶な樹脂同士でも効率的に分散径を細かく分散させることができる。本発明の分散方法によって得られる樹脂は、例えばフィルム、シートなどの押出成形体、射出成形体などに使用したときに、耐衝撃性、剛性、熱寸法安定性、耐薬品性などが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いる樹脂(樹脂A、樹脂B)としては、溶融可塑化できる状態を有しているものであれば特に制限はなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれでもよく、単一の繰り返し単位からなる樹脂であってもよく、共重合体または2種類以上の樹脂のブレンドであってもよい。ここで、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を用いうる場合としては、硬化前に溶融可塑化できる状態がある場合が挙げられる。より好ましくは、成形性が良好であるため、熱可塑性樹脂が用いられる。また、樹脂中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。
【0010】
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチルサクシネート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体樹脂、フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。また、成形に耐え得るだけの延伸性と追従性を備える樹脂であることが好ましい。この中で、強度・耐熱性・透明性の観点から、特にポリエステルであることがより好ましい。
【0011】
本発明においてポリエステルとしては、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合体であるホモポリエステルや共重合ポリエステルのことをいう。ここで、ホモポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンジフェニルレートなどが代表的なものである。特にポリエチレンテレフタレートは、安価であるため、非常に多岐にわたる用途に用いることができ好ましい。
【0012】
また、共重合ポリエステルとは、2種以上のジカルボン酸成分もしくはジオール成分が用いられ、または、ジカルボン酸成分、ジオール成分に加えてヒドロキシカルボン酸成分が用いられた樹脂をいい、例えば、次にあげるジカルボン酸構造単位を与える成分とジオール構造単位を与える成分より選ばれる少なくとも3つ以上の成分からなる重縮合体が挙げられる。ジカルボン酸骨格を有する成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。グリコール骨格を有する成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールとそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0013】
本発明において、樹脂Aと樹脂Bには異なる樹脂が用いられるが、本発明は樹脂Aと樹脂Bが非相溶性であっても極めて高度の分散状態を達成できる。すなわち、溶融混練工程を経て得られた成形体において一方の樹脂がもう一方の樹脂に平均分散径が5μm以下、好適には1μm以下、更に好適には0.5μm以下で分散する分散状態を達成することができる。ここで非相溶な樹脂の組み合わせとは、押出混練物を、示差走査熱量計(DSC)にて測定し、熱融解・急冷を3回繰り返したときの試料にて、Tgが単一であるか、それとも二つ観察されるかで判定を行う。樹脂Aと樹脂Bが相溶系であればTgは単一となり、非相溶系であった場合、樹脂A樹脂B各々に対応する二つのTgが観察される。また、樹脂Aと樹脂Bが相溶系であってもよいが、相溶系の樹脂は通常の混練方法でも微分散化は一応可能である。しかし、本発明の分散方法によれば均一かつ簡易に微分散状態に至らしめることができる。
【0014】
本発明において溶融可塑化の工程は、単軸押出機や二軸押出機などを用いて樹脂を加熱して溶融可塑化させる。樹脂Aと樹脂Bの溶融可塑化はそれぞれ異なる押出機を用いることが一般的である。その後、溶融可塑化された樹脂Aと樹脂Bは流体積層装置に供給され交互に積層される。樹脂Aと樹脂Bは交互に数十層から数千層積層することがのぞましい。流体積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィールドブロックを用いることができる。そのフィードブロックの構造は、多数の微細スリットを有する櫛形のスリット板に部材を少なくとも1個有しており、2つの押出機から押し出された樹脂Aと樹脂Bが、各マニホールドを経由して、スリット板に導入される。ここでは導入板を介して、樹脂Aと樹脂Bが選択的に交互にスリットに流入するため、最終的にはA/B/A/B/A・・・といった多層流を得ることができる。また、スリット板をさらに重ね合わせることにより、層数を増やすことも可能である。
【0015】
また、2層以上の多層流を、スタティックミキサーやバンバリーミキサーなどで層を分割・圧縮・積層を繰り返すことで簡単に層数を増やせることから好ましく用いることができ、前記の方法と併用して使用することができる。次いで積層された樹脂Aと樹脂Bは伸張せしめられる。伸長は樹脂Aと樹脂Bの各層の厚みが減少するよう拡幅する操作のことをいい、樹脂の流路形状によって変形せしめる方法の他、樹脂Aと樹脂Bを積層後に口金からシート状に押出し、該押し出されたシート状物をロール延伸、クリップ延伸、カレンダリング、圧延などにより一軸または二軸以上の方向に伸長することにより行うことができる。伸長後の樹脂Aと樹脂Bの複合体の厚みとしては5μmから5000μmの範囲であることが好ましい。ここで、該伸長後の樹脂Aと樹脂Bの複合体において、樹脂Aからなる層の平均層厚みおよび/または樹脂Bからなる層の平均層厚みは0.5μm以下であることが好ましい。層厚みが0.5μm以下であると、溶融混練した時に非常に樹脂Aと樹脂Bがより細かく微分散したものとすることができる。該層厚みは、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.01μm以下である。
【0016】
つづいて、この複合体を溶融混練する。溶融混練は伸長後の樹脂Aと樹脂Bの複合体をそのまま溶融混練する方法や一旦固体状態とした樹脂Aと樹脂Bの複合体を粉砕機やカッター等で細片化したものを用いて溶融混練する方法が挙げられる。容易かつ効率的に混練を行うことができることから予め樹脂Aと樹脂Bの複合体を細片化することが望ましい。溶融混練は一軸混練機や三軸混練機などの連続的に処理可能な混練装置の他、バッチ型の混練装置を用いることもできる。
【0017】
また、本発明において、樹脂Aと樹脂Bの複合体を得るに際し、複数種の樹脂からなる多層積層体の製造工程から得る方法は非常に好ましい態様である。すなわち、こうした多層積層体は延伸工程において破れないようにエッジ部分の厚みを多くして押し出されたり、エッジ部分はテンタークリップで挟まれたり、ロールの姿を良くするなどのためにエッジ部分にエンボス加工を行ったりすることがあるところ、こうしたエッジ部分は製品としては適さないためにカットされる。しかし、単組成の樹脂からなるエッジ部分であればマテリアルリサイクルが可能であるが、複数種の樹脂が積層されている多層積層体のエッジ部分は元の樹脂とは性質が異なってしまうために再利用、特にマテリアルリサイクルが極めて困難であった。本発明は樹脂Aと樹脂Bの種類や各層の厚みが本発明の目的に沿うものであればこのようなエッジ部分を好適に樹脂Aと樹脂Bの複合体として用いることができる。こうした多層積層体の例としては、光学反射板として使用されるポリエチレンナフタレートとポリメチレンメタクリレートの多層積層フィルム、美しい発色をする変性ポリエステルとナイロンの多層積層繊維などを挙げることができる。これらの製品または製造工程中に発生する屑(トリミングエッジや巻き替え屑)をそのままもしくは粉砕した後に、溶融混練を行うことにより、低コストで本発明の分散方法を実施することが可能である。
【0018】
また、本発明の樹脂の分散方法は、一度溶融して成形したものを用いて溶融混練工程に用いることがあることから、IV(固有粘度)の低下が起きる可能性がある。そのような場合は、溶融混練する前に、公知の方法により予め固相重合を行ったり、溶融混練時またはその前の工程において架橋剤の添加を行うことは好ましい方法である。
【0019】
次に、本発明の微分散化方法を例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0020】
2種類の樹脂Aおよび樹脂Bをペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱されて溶融可塑化された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルタ等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。これらの2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された樹脂Aおよび樹脂Bは、次に上で説明したような多層積層装置に送り込まれる。
【0021】
このようにして多層積層された溶融体を、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着、冷却固化して未延伸シートとした後、二方向に延伸、熱処理することが好ましい。また、フィルムに走行性(易滑性)や耐候性、耐熱性などの機能を持たせるため、フィルム原料に粒子を添加してもよいが、透明性を損なわないように添加量や材質に十分な注意が必要である。添加量については好ましくはきわめて少量、さらに好ましくは無添加である。フィルムの走行性(易滑性)に関しては、前述のように易接着層の添加粒子で補助するのが好ましい。フィルム原料に添加する粒子の材質としては、添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、易滑剤としてポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレンなどの有機微粒子、同じく、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレーなどの無機微粒子などが使用できる。延伸方法としては、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方法や、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸する同時二軸延伸方法などの技術が用いられる。例えばポリエステル樹脂である場合、延伸前予熱温度および延伸温度は60〜130℃であり、延伸倍率は2.0〜5.0であり、必要ならば延伸後に140℃〜240℃の熱処理を行う。
【0022】
このように比較的薄い肉厚で加工されたフィルムを、粉砕機にて破砕するが、粉砕による粒状物、粉末、フレーク等としては、その平均粒径が約10mm以下程度にしておくのが取り扱い性、溶融性等の点から便利である。異物除去選別機にて異物の除去された破砕物を、造粒機にて圧密化して嵩比重を高くしたペレットを得る。かくして得られたペレットを、一軸または二軸スクリューの押出機に供給し、溶融押出や射出成形などを行って、所望の形状に成形する。形状としては、チップ、糸、フィルム、曲面を有するような三次元の構造体などいずれであっても良い。
【0023】
また、低コスト化のために、樹脂を粉砕等して適当な大きさの粒状物、粉末、フレーク等にして、それをペレット化することなくそのままエレマ社製押出機にて溶融混練することもより好ましい方法である。その場合の樹脂の水分含量が高い場合は、得られる製品の物性の点から樹脂の水分を除去することが必要である。水分の除去法としては、樹脂の溶融前に乾燥する方法、または樹脂の溶融と同時に行う方法を挙げることができるが、ペレット化することなく押出機等を使用して溶融混練する場合は、樹脂の溶融混練と同時に水分の除去を行うのが工程面および経済面から好ましい。押出成形機のベント圧を400〜760mmHgの減圧状態に調整して溶融混練を行うと、樹脂中の水分が除去され、しかも樹脂の固有粘度の低下を0.05以下に抑制することができ、固有粘度の低下の小さい樹脂を得ることができる。
【実施例】
【0024】
本発明に使用した物性値の評価法を記載する。
(物性値の評価法)
(1)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から算出した。また、溶液粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示した。なお、n数は3とし、その平均値を採用した。
(2)積層数、平均層厚み
伸張後の薄膜多層体(フィルム)の層構成を電子顕微鏡により観測した。ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルを、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVでフィルムの断面を40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いても良い。
【0025】
積層構造の具体的な求め方を、説明する。約4万倍のTEM写真画像を、CanonScanD123Uを用いて画像サイズ720dpiで取り込んだ。画像をJPEG形式で保存し、次いで画像処理ソフトImage−Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このJPGファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(マイクロソフト社製、Excel2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ6(間引き6)、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(ビジュアルベーシック・フォア・アプリケーションズ)プログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして各層の厚みを求め、その算術平均でもって平均層厚みを算出した。
(3)分散状態
溶融混練後に得られたペレットまたはフィルムを、四酸化オスミウムを用いるなど公知の方法により島相を染色した後、上記(2)と同様の方法にて断面観察を行い、樹脂Aと樹脂Bの分散状態を観察した。この時の条件は分解能:0.204nm(格子像)、0.38nm(粒子像)、カメラシステム:ボトム型により観察し、最終的に650倍に拡大した写真を画像解析を行い、島相の平均分散径(各島相の円相当面積直径をが1μm未満であれば◎、1μm以上5μm未満であれば○、5μm以上20μm未満であれば△、20μm以上である場合を×とした。
【0026】
(実施例1)
樹脂Aとして固有粘度0.73のポリエチレンテレフタレート(PET)“三井PET”J125[三井化学製]、樹脂Bとして、ポリプロピレン樹脂(PP)“ノーブレン”WF836DG7[住友化学製]を用いた。樹脂Aを回転式真空乾燥機(180℃・3時間)にて乾燥し、樹脂Bは、絶乾空気循環式乾燥機(90℃・5時間)にてそれぞれ乾燥した後、別々の押出機に供給した。
【0027】
樹脂AおよびBは、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、吐出比5/1で51層のフィードブロックにて交互に積層するように合流させた。この多層流をTダイから静電印加しつつシート状に押出して表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
【0028】
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸しその後一旦冷却した。この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で230℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に5%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは、6μmであった。このときのA層の厚みは197nm、B層の厚みは41nmであった。
【0029】
このフィルムを尾上機械社製バルツ型粉砕機(型式:WALD15、モーター:7.5KW、回転数:1500rpm)にて破砕し、粉砕物を2mmの目開きからなる篩で処理して得られた粉砕物を、造粒機にてペレット化した。これを先端をノズル化した一軸押出機にて溶融混練を行い(溶融温度280℃)、水槽にて冷却した後カットしてペレットを得た。この時の押出条件は、は溶融温度280℃、スクリュー圧縮比4、L/D(スクリュー長さ/スクリュー直径)23、スクリュー回転数50rpmである。このペレットの平均粒径は3mmであった。このときの樹脂Bの分散径は、通常のブレンド法によって得られたフィルムと異なり細かいものであった。
【0030】
(実施例2)
実施例1にて得られたペレットを、一軸押出機にて溶融混練を行い(溶融温度280℃)、Tダイから静電印加しつつシート状に押し出して、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、厚み500μmの未延伸シートを得た。得られた結果を表1に示す。このときの樹脂Bの分散径は、通常のブレンドによって得られたシートと異なり細かいものであった。
【0031】
(実施例3)
積層装置を51層から201層のフィードブロックに変更した以外は、実施例1と同様の方法でペレットを得、該ペレットを用いて実施例2と同様の方法で未延伸シートを得た。
【0032】
(実施例4)
実施例1においてフィードブロックの後にスタティックミキサーを3段設けて、層数を1601とした以外は、実施例1と同様の方法でペレットを得、該ペレットを用いて実施例2と同様の方法で未延伸シートを得た。
【0033】
(実施例5)
積層比を5/1から2/1にした以外は、実施例4と同様の方法で未延伸シートを得た。
【0034】
(実施例6)
実施例5において、途中得られたペレットを一軸押出機にて溶融混練を行い、ガット状に押し出して、水槽にて冷却し、それをカットしてペレットを得た。ただし、該一軸押出機の流路に型式WBのスタティックミキサー(東京日進ジャバラ製)を設けた。なお、この時の押出条件は、溶融温度280℃、スクリュー圧縮比4、L/D(スクリュー長さ/スクリュー直径)23、スクリュー回転数50rpmである。このペレットの平均粒径は3mmであった。得られた結果を表1に示す。流路にミキサーを設けることによって、さらに分散径は細かいものとなった。
【0035】
(実施例7)
実施例1において、途中得られた粉砕物を、温度280℃の直径40mmの2軸ベント押出機に投入し、ベント圧750mmHgの減圧下で、溶融混練を行い、Tダイから静電印加しつつシート状に押し出して、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、厚みが500μmの未延伸シートを得た。得られた結果を表1に示す。
【0036】
(実施例8〜11)
樹脂Bをエチレン−プロピレンコポリマー(EPC)Y2045−GP[プライムポリマー製]とした以外は、それぞれ実施例2、3、4、5と同様の方法で未延伸シートを得た。
【0037】
(実施例12)
樹脂Bをシクロオレフィンコポリマー(COC)“TOPAS”5013[ポリプラスチックス製]とし、縦延伸温度を100℃で延伸倍率を3倍、横予熱温度を125℃、横延伸温度を135℃、横延伸倍率を3.2倍とした以外は、実施例4と同様の方法で未延伸シートを得た。
【0038】
(実施例13)
樹脂Bをポリスチレン(PS)G440K[日本ポリスチレン製]とし、押出温度を270℃とした以外は、実施例4と同様の方法で未延伸シートを得た。
【0039】
(比較例1)
樹脂Aと樹脂Bは実施例1で用いたものと同じ物を使用し、それぞれ乾燥した後、これを一軸押出機にて溶融混練を行った。この時の押出条件は溶融温度280℃、スクリュー圧縮比4、L/D(スクリュー長さ/スクリュー直径)23、スクリュー回転数50rpmである。該溶融混練物をTダイから静電印加しつつシート状に押し出して、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、厚み500μmの未延伸シートを得た。得られた結果を表2に示す。このときの樹脂Bの分散径は、非常に大きなものであった。
【0040】
(比較例2)
樹脂Bを実施例8で用いたものと同じEPCとした以外は、比較例1と同様の方法で未延伸シートを得た行った。
【0041】
(比較例3)
樹脂Bを実施例12で用いたものと同じCOCとした以外は、比較例1と同様の方法で未延伸シートを得た。
【0042】
(比較例4)
樹脂Bを実施例13のPSとした以外は、比較例1と同様の方法で未延伸シートを得た。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、樹脂の微分散化に関するものであり、特に非相溶な樹脂の微分散化に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂Aを溶融可塑化する工程と樹脂Aとは異なる樹脂Bを溶融可塑化する工程と、溶融可塑化された樹脂Aと樹脂Bとを交互にそれぞれ10層以上積層し、伸張して樹脂Aと樹脂Bの複合体を得る工程と、該複合体を溶融混練する工程とを有する樹脂の分散方法。
【請求項2】
前記樹脂Aと樹脂Bの複合体は積層後または積層と同時に口金からシート状に押出し、該押出されたシート状物を一軸または二軸以上の方向に伸長して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂の分散方法。
【請求項3】
前記樹脂Aと樹脂Bの複合体を細片化する工程をさらに有し、該細片化された樹脂Aと樹脂Bの複合体でもって溶融混練工程が行われることを特徴とする請求項2に記載の樹脂の分散方法。
【請求項4】
前記樹脂Aと樹脂Bの複合体の、樹脂Aからなる層の平均層厚みおよび/または樹脂Bからなる層の平均層厚みが0.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂の分散方法。
【請求項5】
溶融混練後に得られた成形体において、樹脂Aまたは樹脂B島相の平均分散径が5μm以下であることを特徴とする請求項1〜4に記載の樹脂の分散方法。
【請求項6】
相互に非相溶の樹脂Aと樹脂Bからなる成形体であって、一方の熱可塑性樹脂がもう一方の樹脂に平均分散径5μm以下で分散している成形体。

【公開番号】特開2010−83118(P2010−83118A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258100(P2008−258100)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】