説明

樹脂カプセルアンカー

【課題】 樹脂と硬化剤の十分な混合性を得ることによりボルトや鉄筋がコンクリートに対して高い固着強度を発現しうる樹脂カプセルアンカーの提供。
【解決手段】 ガラス管容器の周方向に絞り部を有しており、そのガラス容器中に硬化性樹脂が密封され、絞り部外側に硬化剤が充填配置されている樹脂カプセルアンカーにおいて、ガラス管絞り部の間隔が10mmから40mmであることを特徴とする樹脂カプセルアンカー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あと施工アンカーに用いる樹脂カプセルアンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート等の構造物にあと施工でボルトや鉄筋を取り付ける場合には2成分系からなる樹脂カプセルアンカーが使われており、容器内あるいは容器外に2成分である樹脂と硬化剤が分離されて配置されており、これが施工時に電気ハンマードリルなどでアンカーボルトへの回転・打撃あるいは人力によるハンマーなどの打撃により破砕・混合されて樹脂が硬化することによりボルトや鉄筋がコンクリートに固定される方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
この公知文献にある樹脂カプセルアンカーでは施工時に樹脂と硬化剤の混合性が不十分な場合があり十分な固着強度を発揮できない場合があった。
【特許文献1】特開昭63−217037号公報
【特許文献2】特開平5−171695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、樹脂と硬化剤の十分な混合性を得ることによりボルトや鉄筋がコンクリートに対して高い固着強度を発揮しうる樹脂カプセルアンカーの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ガラス管絞り部の間隔と硬化剤の充填外径を選定することで樹脂カプセルアンカー施工時に樹脂と硬化剤の安定的混合性が得られ、高い固着強度が得られることを見出し、発明するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.ガラス管容器の周方向に絞り部を有しており、そのガラス容器中に硬化性樹脂が密封され、絞り部外側に硬化剤が充填配置されている樹脂カプセルアンカーにおいて、ガラス管絞り部の間隔が10mmから40mmであることを特徴とする樹脂カプセルアンカー。
2.充填した硬化剤の外径を、ガラス管外径以下としたことを特徴とする1.に記載の樹脂カプセルアンカー。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、高い固着強度で、製造性にも優れた樹脂カプセルアンカーを提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について、好ましい形態を中心に、具体的に説明する。
本発明の樹脂カプセルアンカーは、ガラス管容器の周方向に絞り部を有しており、そのガラス容器中に硬化性樹脂が密封され、絞り部外側に硬化剤が充填配置されたことを特徴とする。
本発明のガラス管絞り部は、筒状のガラス管を加熱しながら絞り形状に作ったロールを当ててガラス管を回転させながら複数の絞り部を形成することで効率的に得られるものであるが絞り部の数を多くすると非効率となり絞り部の数はできるだけ少なくしたほうが製造性の観点から望ましい。
【0007】
絞り部の間隔(隣接する絞り部中心間の距離)を10mm未満にしようとするとガラス管を加熱しながら絞り形状を作る作業の工程でガラス管の真直度が狂いやすく実質的に作業時間がかかりすぎて工業的生産には適さなかった。
10mm以上の間隔を取ればガラス管の真直度は、飛躍的に良くなりコンクリートに開けた孔への挿入施行時にも何ら問題はなかった。
【0008】
また、絞り部の間隔を大きくするとガラス管真直度は上がり作業工程も良好であるがその後の工程で絞り部の外側に配した硬化剤の間隔も広くなってしまい樹脂カプセルアンカーをコンクリートへ施工したときにガラス管内部にある硬化性樹脂とガラス管絞り部外側の硬化剤とがうまく混合できず硬化性樹脂の未硬化が発生して十分な固着強度が得られない。
そこで、発明者らはガラス管絞り部の間隔と硬化剤の充填外径を選定することで樹脂カプセルアンカー施工時に樹脂と硬化剤の安定的混合性が得られることを見いだした。
【0009】
ガラス管絞り部の断面形状は三角形以上の多角形、あるいは半円形、半楕円形などが選定できるがひずみの発生がなければあらゆる形状で良く、硬化剤の必要容量から選定できる。
ガラス管絞り部の外側に充填する硬化剤は施工時にガラス管が破壊し、さらにボルトや鉄筋の回転あるいは打撃で破壊・混合され硬化性樹脂を硬化させるもので、過酸化ベンゾイルを無機物の硫酸カルシウム等で感度を低下させたものが好ましく、バインダーでガラス管絞り部の外側への付着性を持たせて配置することが好ましい。
【0010】
硬化剤の量は任意に選定することが出来るがガラス管外径よりも大きくなると施行時に孔への挿入抵抗が増加しスムースに入らなかったり途中で挿入停止する。
更に強引に挿入しようとするとガラス管が絞り部より割れて怪我をする恐れがある為、硬化剤の外径はガラス管外径以下とする必要があり、絞り部に充填される硬化剤の容量からガラス管絞り形状と絞り径を決めることが好ましい。
【0011】
また、絞り部の絞り径(絞り部の最小外径)は、ガラス管外径の0.3倍から0.8倍が好ましい、絞り径をガラス管外径の0.3倍以上にすると輸送時、取扱い時等にガラス管が絞り部より破壊したり製造性が低下するのを防止できる。一方0.8倍以下にすると必要量の硬化剤を絞り部に配置することができ、硬化性樹脂と硬化剤が充分に混合し、硬化性樹脂の硬化性が向上する。
【0012】
また、硬化剤の硬さは輸送取り扱い上で容易に破壊しない程度で且つ施行時にボルトや鉄筋の回転あるいは打撃で破壊する程度が好ましい。
ガラス管内に充填する樹脂は、硬化性の不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂などである。
次に、実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
[実施例1]
図1a〜cは本発明に係るガラス管絞り部を有し上部が開放された有底ガラス管内に樹脂を充填したあと溶封して絞り部に硬化剤を充填した樹脂カプセルアンカーである。
上部が開放された有底ガラス管の管外径はいずれも16.5mm絞り部径は外径の0.55倍、肉厚0.55mm全長150mmであり絞り部の間隔はa10mm、b20mm、c40mmである。
これにあと施工アンカー用に調整されたエポキシアクリレート樹脂14.5gを入れガラス管全長が120mmになるように口元をガス炎で溶封した。
次に硬化剤として過酸化ベンゾイル40部、硫酸カルシウム60部、SBラテックス固形分2部、シリカ系体積増量剤5部、水22部を混合しスラリーを作り上記ガラス管絞り部に塗布・乾燥して乾燥後の硬化剤量がいずれも3.5gになるように調整した、そのときいずれも硬化剤外径はガラス管外径よりも小さかった。
こうして得られたものが図1a〜cの樹脂カプセルアンカーである。
【0014】
次にこれらの樹脂カプセルアンカーを各3本ずつ穿孔径19mm、穿孔長140mmの孔をあけたコンクリートに挿入してM16ボルトを1.5kgハンマーで打ち込み施工をした。
15℃24時間養生を行った後固着強度を測定した。測定機器はアンカーボルト用引っ張り試験機ANSER−5−III(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)を用いて行った。その結果a、b、cいずれも平均90200Nであり強度も安定しており個別のばらつきも平均値との差が5000N以内と小さかった。
さらにそれらのボルトをコンクリートから引き抜いてみたところa,b,cのエポキシアクリレート樹脂は完全硬化しておりコンクリートと硬化した樹脂界面はむらが見られなかった。
結果を表1に記載する。
【0015】
[比較例1]
図1d、eは、本発明に係るガラス管絞り部を有し上部が開放された有底ガラス管内に樹脂を充填したあと溶封して絞り部に硬化剤を充填した樹脂カプセルアンカーである。
上部が開放された有底ガラス管の管外径はいずれも16.5mm絞り部径は外径の0.55倍、肉厚0.55mm全長150mmであり絞り部の間隔はd60mm、e80mmである。
これに実施例1同様にあと施工アンカー用に調整されたエポキシアクリレート樹脂14.5gを入れガラス管全長が120mmになるように口元をガス炎で溶封し、同じく実施例1同様に硬化剤として過酸化ベンゾイル40部、硫酸カルシウム60部、SBラテックス固形分2部、シリカ系体積増量剤5部、水22部を混合しスラリーを作り上記ガラス管絞り部に塗布・乾燥して乾燥後の硬化剤量がいずれも3.5gになるように調整した、そのときいずれも硬化剤外径はガラス管外径よりも小さかった。
こうして得られたものが図1d、eの樹脂カプセルアンカーである。
【0016】
次にこれらの樹脂カプセルアンカーをこれも実施例1同様に各3本ずつ穿孔径19mm、穿孔長140mmの孔をあけたコンクリートに挿入してM16ボルトを1.5kgハンマーで打ち込み施行し15℃24時間養生を行った後固着強度を測定した。
その結果dは平均68600N、eは平均57800Nの固着強度でありa〜cに比べて強度が低く個別のばらつきも大きかった。
さらにそれらのボルトをコンクリートから引き抜いてみたところdのエポキシアクリレート樹脂は完全硬化していたもののコンクリートと硬化した樹脂界面に一部硬化剤の未反応物が確認された。
また、eのエポキシアクリレート樹脂にはほぼ硬化剤と硬化剤の中間付近に未硬化の部分が確認された。
結果を表1に記載する。
【0017】
[比較例2]
上部が開放された有底ガラス管の管外径はいずれも16.5mm絞り部径は外径の0.85倍、肉厚0.55mm全長150mmであり絞り部の間隔は20mmである。
これに実施例1同様にあと施工アンカー用に調整されたエポキシアクリレート樹脂14.5gを入れガラス管全長が120mmになるように口元をガス炎で溶封し、同じく実施例1同様に硬化剤として過酸化ベンゾイル40部、硫酸カルシウム60部、SBラテックス固形分2部、シリカ系体積増量剤5部、水22部を混合しスラリーを作り上記ガラス管絞り部に塗布・乾燥して乾燥後の硬化剤量がいずれも3.5gになるように調整した、そのときいずれも硬化剤外径は18.5mmでありガラス管外径よりも大きかった。
【0018】
こうして得られた樹脂カプセルアンカーをこれも実施例1同様に各3本ずつ穿孔径19mm、穿孔長140mmの孔をあけたコンクリートに挿入してM16ボルトを1.5kgハンマーで打ち込み施工しようとしたが2本は孔の途中まで入ったもののガラス管外径よりも大きい硬化剤がコンクリート孔との摩擦抵抗により挿入困難となった。
また、もう1本は同じく孔の途中まで入ったもののガラス管外径よりも大きい硬化剤がコンクリート孔との摩擦抵抗により挿入時にガラス管が破損して施工できなかった。
【0019】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、樹脂カプセルアンカーを用いてボルトや鉄筋をコンクリートに施工するとき高い固着強度を発揮することができ、あと施工アンカーに用いる樹脂カプセルアンカー用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明実施例(a〜c)及び比較例(d、e)に用いた絞り部を有したガラス管を示す平面模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管容器の周方向に絞り部を有しており、そのガラス容器中に硬化性樹脂が密封され、絞り部外側に硬化剤が充填配置されている樹脂カプセルアンカーにおいて、ガラス管絞り部の間隔が10mmから40mmであることを特徴とする樹脂カプセルアンカー。
【請求項2】
充填した硬化剤の外径を、ガラス管外径以下としたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂カプセルアンカー。

【図1】
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【公開番号】特開2006−219952(P2006−219952A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36460(P2005−36460)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】