説明

樹脂フィルムの加工方法、及び、樹脂フィルム

【課題】 レーザー光を用いて樹脂フィルムにハーフカット部等の凹部を形成した際に、凹部が形成された領域の両面から容易に破断可能な樹脂フィルムを得ることができる樹脂フィルムの加工方法を提供すること、及び、該加工方法によって形成された樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】 樹脂フィルムの他方の面に、樹脂フィルムよりも高い割合でレーザー光を吸収して発熱する発熱層を形成し、樹脂フィルムの一方の面における発熱層に対応した領域にレーザー光を照射することで、樹脂フィルムにおけるレーザー光が照射された領域の一方の面側を発熱させると共に、樹脂フィルムを透過したレーザー光を吸収して発熱した発熱層によって樹脂フィルムにおけるレーザー光が照射された領域の他方の面側を加熱し、樹脂フィルムの両面の対応する位置に一対の凹部を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を用いて樹脂フィルムの表面に凹部を形成する樹脂フィルムの加工方法、及び、該加工方法によって形成された樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の樹脂を用いて形成された樹脂フィルムが様々な分野で使用されている。例えば、物品を包装する包装材として樹脂フィルムが広く用いられており、このような包装材を用いて食品のような物品を包装することで、食品と空気との接触を抑制し、食品品質の維持が図られている。
【0003】
また、上記のような樹脂フィルムは、使用される用途に応じて様々な加工が施される。例えば、上記のような包装材として樹脂フィルムが用いられる場合には、包装された物品を容易に取り出すことが可能となるように、樹脂フィルムの所定位置に開封用切れ目(ハーフカット部)が形成される場合がある(特許文献1参照)。該ハーフカット部が樹脂フィルムに形成されることで、ハーフカット部が形成された領域に引き裂くような力を加えると、ハーフカット部を切っ掛けに容易に樹脂フィルムを破断することができる。このため、斯かる樹脂フィルムからなる包装材で包装された物品を取り出す際には、包装材を破断することで容易に取り出すことが可能となる。
【0004】
上記のようなハーフカット部を樹脂フィルムに形成する方法としては、レーザー光を用いた方法が知られている。例えば、特許文献1のように、レーザー光を吸収することで加熱されて溶解したり昇華したりする樹脂層と、レーザー光を透過させる樹脂層とが積層されてなる樹脂フィルムを用い、レーザー光を吸収する樹脂層側にレーザー光を照射することで、斯かる樹脂層のみを切断して樹脂フィルムにハーフカット部を形成する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−167319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レーザー光を用いてハーフカット部(即ち、凹部)を形成する際には、樹脂フィルムの一方の面にレーザー光が照射されるため、樹脂フィルムの一方の面側にしかハーフカット部が形成されず、他方の面は、平滑な状態となる。このような樹脂フィルムは、ハーフカット部が形成された領域に引き裂くように力を加えると、一方の面側のハーフカット部には引き裂く力が集中するものの、他方の面側の平滑な領域では引き裂く力が分散してしまう。このため、このような樹脂フィルムは、ハーフカット部が形成された領域の一方の面側から他方の面側に向かっては容易に破断が生じるものの、逆方向に向かっては破断が生じにくいものとなる。このため、斯かる樹脂フィルムを引き裂いて破断させることが困難となる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、レーザー光を用いてハーフカット部等の凹部を形成することができ、該凹部が形成された領域が容易に破断可能となる樹脂フィルムを得ることができる樹脂フィルムの加工方法を提供することを課題とする。また、斯かる加工方法によって形成された樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る樹脂フィルムの加工方法は、レーザー光を透過させると共に一部を吸収して発熱する樹脂フィルムの一方の面側にレーザー光を照射することで、レーザー光が照射された領域に凹部を形成する樹脂フィルムの加工方法において、樹脂フィルムの他方の面に樹脂フィルムよりも高い割合でレーザー光を吸収して発熱する発熱層を形成し、樹脂フィルムの一方の面における発熱層に対応した領域にレーザー光を照射することで樹脂フィルムにおけるレーザー光が照射された領域の一方の面側を発熱させると共に、樹脂フィルムを透過したレーザー光を発熱層が吸収して発熱することで樹脂フィルムにおけるレーザー光が照射された領域の他方の面側を加熱することにより、レーザー光を照射した領域の樹脂フィルムの両面の対応する位置に一対の凹部を形成することを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、樹脂フィルムの他方の面に、樹脂フィルムよりも高い割合でレーザー光を吸収して発熱する発熱層が形成され、樹脂フィルムの一方の面における発熱層に対応した領域にレーザー光を照射することで、レーザー光を照射した領域における樹脂フィルムの両面の対応する位置に一対の凹部が形成されるため、樹脂フィルムにおける一対の凹部が形成された領域(以下、凹部形成領域とも記す)の両面から容易に破断可能な樹脂フィルムを得ることができる。
【0010】
具体的には、樹脂フィルムは、一方の面に照射されたレーザー光を一部吸収することによって、レーザー光が照射された領域の一方の面側が発熱する。そして、斯かる発熱によって、レーザー光が照射された領域の一方の面側が溶解したり昇華したりすることで、一方の面側から他方の面側に向かって凹部(以下、照射面側凹部とも記す)が形成される。
【0011】
また、照射面側凹部の形成に伴って、樹脂フィルムの他方の面側における照射面側凹部に対応した位置に凹部が形成される。具体的には、樹脂フィルムの他方の面に形成された発熱層は、樹脂フィルムよりも高い割合でレーザー光を吸収するため、樹脂フィルムを透過したレーザー光を吸収した領域が発熱する。そして、樹脂フィルムにおけるレーザー光が照射された領域の他方の面側が発熱層によって加熱されて溶解したり昇華したりすることで、他方の面側から一方の面側に向かって照射面側凹部に対応した位置に凹部(以下、発熱層側凹部とも記す)が形成される。
【0012】
つまり、樹脂フィルムの一方の面へのレーザー光の照射によって、樹脂フィルムの両面の対応する位置に一対の凹部(照射面側凹部および発熱層側凹部)を形成することができる。これにより、樹脂フィルムの一方の面側と他方の面側とに働く樹脂フィルムを引き裂く力の強さに差がある場合であっても、言い換えれば、樹脂フィルムを一方の面側から引き裂くように力が働いた場合だけでなく、他方の面側から引き裂くように力が働いた場合であっても、一対の凹部が形成された領域(以下、凹部形成領域とも記す)に引き裂く力を集中させることができる。このため、凹部形成領域で樹脂フィルムを容易に破断させることができる。
【0013】
また、樹脂フィルムの一方の面側と他方の面側とに引き裂く力が均等に働いた場合には、一対の凹部の両方に引き裂き力が集中するため、樹脂フィルムの両面から凹部形成領域が破断される。このため、従来のように一方の面側からのみ破断が生じる場合よりも、樹脂フィルムを容易に破断することができる。
【0014】
前記樹脂フィルムは、オレフィン系樹脂を用いて構成されることが好ましい。
【0015】
本発明に係る樹脂フィルムは、上記何れかの樹脂フィルムの加工方法を用いて加工されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、レーザー光を用いてハーフカット部等の凹部を形成することができ、該凹部が形成された領域が容易に破断可能となる樹脂フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は、一実施形態に係る樹脂フィルムを示した斜視図および発熱層が形成された領域の断面図、(b)は、同実施形態に係る樹脂フィルムにレーザー光を照射する際の焦点位置を示した断面図。
【図2】図1に示した樹脂フィルムに一対の凹部が形成された状態を示した斜視図および発熱層が形成された領域の断面図。
【図3】樹脂フィルムに発熱層を形成し、レーザー光を照射して一対の凹部を形成した状態の樹脂フィルムの断面写真。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図1および2を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態に係る樹脂フィルムの加工方法(以下、本加工方法と記す)は、樹脂フィルムの一方の面にレーザー光を照射することで、レーザー光が照射された領域に凹部(具体的には、後述する一対の凹部1d,1e)を形成する方法である。本加工方法で用いられる樹脂フィルムとしては、図1(a)に示すように、一方向が長手となるように長尺状に形成された樹脂フィルム1を用いることができる。
【0020】
樹脂フィルム1は、一方の面(以下、レーザー光照射面とも記す)1aに照射されたレーザー光を透過させると共に一部を吸収するように構成されている。また、樹脂フィルム1は、レーザー光を吸収することで発熱し、斯かる発熱によってレーザー光が照射された領域(後述する凹部形成領域1cとなる領域)の一方の面1a側が溶解したり昇華したりすることで、一方の面1a側から他方の面1b側に向かって凹部(上述する照射面側凹部1d)が形成されるように構成されている。
【0021】
樹脂フィルム1を構成する素材としては、特定波長のレーザー光を透過させると共に一部を吸収することで溶解等が生じる程度に加熱される素材が用いられる。具体的には、用いるレーザー光の波長に応じて適宜選択することができ、例えば、オレフィン系樹脂等を用いて形成されたフィルム、又は、斯かるフィルムを一軸延伸又は二軸延伸したフィルム等を用いることができ、更には、異なる素材からなるフィルムを積層したものを用いることもできる。オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。レーザー光として炭酸ガスレーザー(赤外線光)を用いる場合には、上記オレフィン系樹脂からなるフィルムを好適に用いることができる。
【0022】
樹脂フィルム1の厚みとしては、特に限定されるものではなく、好ましくは10μm〜50μm、より好ましくは15μm〜30μmのものを用いることができる。このような厚みとすることで、樹脂フィルム1が柔軟なものとなると共に、後述する一対の凹部1d,1eの深さ等の調整を良好に行うことができる。また、樹脂フィルム1の色彩や透明性については、特に限定されるものではなく、本実施形態では、無色透明な素材を用いて樹脂フィルム1が形成されている。
【0023】
樹脂フィルム1の他方の面1bには、レーザー光を吸収して発熱する発熱層2が備えられている。該発熱層2は、後述する一対の凹部1d,1eを形成する領域、即ち、後述する凹部形成領域1cに沿って帯状に形成されている。具体的には、樹脂フィルム1における凹部形成領域1cの予定位置が帯状に形成された発熱層2の内側に位置するように、発熱層2が形成されている。また、本実施形態では、発熱層2は、樹脂フィルム1の一方向に沿って延びるように形成されており、該一方向に直交する他方向(幅方向)の略中央部に形成されている。また、樹脂フィルム1として一軸延伸された素材を用いる場合には、発熱層2は、延伸方向に沿って形成されることが好ましい。
【0024】
発熱層2は、樹脂フィルム1よりもレーザー光を高い割合で吸収して発熱するように構成されている。具体的には、発熱層2は、樹脂フィルム1を透過したレーザー光を吸収することで、自身が溶融したり昇華したりする程度に発熱するように構成されている。さらに、発熱層2は、斯かる発熱によって樹脂フィルム1を加熱可能に構成されている。具体的には、発熱層2は、レーザー光を吸収して発熱することで樹脂フィルム1を他方の面1b側から溶融させたり昇華させたりし得る程度に発熱するように構成れている。つまり、発熱層2は、斯かる発熱によって樹脂フィルム1におけるレーザー光が照射された領域(後述する凹部形成領域1cとなる領域)の他方の面1b側を溶解させたり昇華させたりすることで、他方の面1b側から一方の面1a側に向かって凹部(上述する発熱層側凹部1e)を形成するように構成されている。
【0025】
発熱層2を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、樹脂フィルム1の他方の面1bに印刷インキを塗布して印刷層を形成することで発熱層2とすることができる。印刷インキとしては、樹脂フィルム1よりもレーザー光の吸収率が高い色素成分を含有するものを用いることが好ましい。
【0026】
発熱層2の厚みとしては、特に限定されるものではなく、好ましくは1μm〜5μm、より好ましくは2μm〜3μmとすることができる。このような厚みとすることで、発熱層2と樹脂フィルム1との間に段差が生じるのを抑制することができる。これにより、発熱層2が形成された樹脂フィルム1を長手方向に巻き回してロール状にする際に、発熱層2の厚みの影響によって樹脂フィルム1が蛇行してしまうのを抑制することができる。また、発熱層2の色彩については、特に限定されるものではなく、種々の色を用いることができる。
【0027】
上記の構成からなる樹脂フィルム1に凹部を形成するレーザー光としては、特に限定されるものではなく、樹脂フィルム1を透過すると共に一部が樹脂フィルム1に吸収されて樹脂フィルム1を発熱させ得るものが用いられる。具体的には、レーザー光としては、樹脂フィルム1を構成する素材に応じて適宜選択することができ、例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー、YAGレーザー、Ti:Sレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、または炭酸ガスレーザー等を使用することができる。これらのレーザー光のうち、炭酸ガスレーザーは、高出力であり、汎用性があると共に、生産効率が良いため、特に好ましい。
【0028】
レーザー光を照射する装置(図示せず)は、レーザー光を出力するレーザー光出力部と、出力されたレーザー光を集光する集光レンズとを備えており、樹脂フィルム1に対して略直角にレーザー光を照射するように構成されている。つまり、樹脂フィルム1に照射されるレーザー光としては、集光レンズによって集光されたものを用いることができる。このような構成を用いることで、集光レンズによって集光されたレーザー光は、焦点位置でエネルギーが最大となると共に、焦点位置から離れた位置ではレーザー光が拡散した状態であるため、焦点位置よりもエネルギーが低くなる。また、レーザー光の断面形状(レーザー光の照射方向に直交する断面形状)は、焦点位置で略円形状となっている。なお、レーザー光の焦点位置での直径を集光径という。該集光径は、形成する凹部の形状、樹脂フィルム1の素材、または加工速度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、10〜500μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。
【0029】
なお、以下の説明においては、レーザー光における焦点位置と集光レンズと間の領域を集光領域L2といい、レーザー光における焦点位置よりもレーザー光の照射方向側の領域を拡散領域L3という。また、レーザー光において、焦点位置の断面積に対する集光領域L2の断面積の割合を「集光領域L2における拡散度」という。また、焦点位置の断面積に対する拡散領域L3の断面積の割合を「拡散領域L3における拡散度」という。つまり、集光領域L2および拡散領域L3における拡散度が大きいほど、即ち、焦点位置から離れるほど、レーザー光のエネルギーは、減少することとなる。
【0030】
次に、レーザー光を用いて樹脂フィルム1に凹部を形成する方法について説明する。図1(b)に示すように、樹脂フィルム1にレーザー光Lを照射する際には、樹脂フィルム1の一方の面(レーザー光照射面)1a、即ち、発熱層2が形成されていない側の面にレーザー光Lを照射する。この際、レーザー光Lの焦点位置L1は、樹脂フィルム1の厚み方向の内側(本実施形態では、厚み方向の中央部よりもレーザー光照射面1a側)に位置するように調整される。
【0031】
具体的には、焦点位置L1は、レーザー光照射面1aとの間の間隔が所定の間隔となるように調整されることが好ましい。より詳しくは、集光領域L2における拡散度が所定の範囲となる位置にレーザー光照射面1aが位置するように、焦点位置L1とレーザー光照射面1aとの間の間隔が調整されることが好ましい。言い換えれば、集光領域L2における拡散度が所定の範囲となる位置から焦点位置L1側にレーザー光照射面1aが位置することが好ましい。焦点位置L1がこのように調整されることで、レーザー光Lが照射された領域の一方の面1a側を効果的に発熱させることができ、樹脂フィルム1の一方の面1a側の凹部(後述する照射面側凹部1d)をより効率的に形成することができる。
【0032】
また、焦点位置L1は、発熱層2との間の間隔が所定の間隔となるように調整されることが好ましい。具体的には、拡散領域L3における拡散度が所定の範囲となる位置に発熱層2が位置するように、焦点位置L1と発熱層2との間の間隔が調整されることが好ましい。言い換えれば、拡散領域L3における拡散度が所定の範囲となる位置から焦点位置L1側に発熱層2が位置することが好ましい。焦点位置L1がこのように調整されることで、発熱層2による樹脂フィルム1の他方の面1b側の加熱を良好に行うことができる。具体的には、焦点位置L1から離れるに従ってレーザー光Lのエネルギーは減少するため、上記のような拡散度の範囲に発熱層2が位置することで、高いエネルギーのレーザー光Lを発熱層2が吸収することができる。これにより、発熱層2を効果的に発熱させることができ、樹脂フィルム1の加熱を良好に行うことができるため、他方の面1b側の凹部(後述する発熱層側凹部1e)をより効率的に形成することができる。
【0033】
そして、上記のように焦点位置L1を調整したレーザー光を樹脂フィルム1の一方の面(レーザー光照射面)1aにおける発熱層2に対応した領域(言い換えれば、樹脂フィルム1の厚み方向における発熱層2の投影領域内)に照射する。本実施形態では、かかる領域の略中央部にレーザー光Lが照射される。
【0034】
レーザー光Lが上記の領域に照射されることで、図2に示すように、樹脂フィルム1におけるレーザー光Lが照射された領域の両面の対応する位置に一対の凹部1d,1eが形成される。具体的には、樹脂フィルム1は、レーザー光Lの一部を吸収してレーザー光照射面1a側が発熱する。そして、斯かる発熱によってレーザー光Lが照射された領域のレーザー光照射面1a側が溶解したり昇華したりすることで、樹脂フィルム1の一方の面(レーザー光照射面)1a側から他方の面1b側に向かって凹部(以下、照射面側凹部とも記す)1dが形成される。
【0035】
一方、樹脂フィルム1の他方の面1bに形成された発熱層2は、樹脂フィルム1を透過したレーザー光Lを吸収し、レーザー光Lを吸収した領域が発熱することとなる。そして、斯かる発熱によって樹脂フィルム1の他方の面1b側が加熱される。具体的には、樹脂フィルム1の他方の面1b側における発熱層2(具体的には、レーザー光Lを吸収した領域)に重なる領域(以下、被加熱領域とも記す)が加熱される。これにより、樹脂フィルム1の被加熱領域が発熱層2からの熱によって溶解したり昇華したりすることで、樹脂フィルム1の他方の面1b側から一方の面1a側に向かって凹部(以下、発熱層側凹部とも記す)1eが形成される。
【0036】
この際、発熱層2における発熱した領域は、自身の熱によって溶融したり昇華したりすることで消失する。本実施形態では、発熱層2として印刷層が用いられる場合には、一対の凹部1d,1eが形成されることで、発熱層側凹部1eの端縁に沿って一対の印刷層2が残存することとなる。
【0037】
照射面側凹部1dおよび発熱層側凹部1eは、レーザー光照射面1aへのレーザー光Lの照射によって、樹脂フィルム1の両面の対応した位置に略同時に形成される。そして、樹脂フィルム1における照射面側凹部1dおよび発熱層側凹部1eが形成された領域が凹部形成領域1cとなる。樹脂フィルム1における凹部形成領域1cは、樹脂フィルム1の他の領域(一対の凹部1d,1eが形成されていない領域)よりも薄肉となる。具体的には、樹脂フィルム1の両面の対応した位置に一対の凹部1d,1eが形成されるため、一対の凹部1d,1eの間の樹脂フィルム1の厚みが樹脂フィルム1の他の領域よりも薄肉となっている。つまり、凹部形成領域1cは、レーザー光Lの照射前の樹脂フィルム1の厚みよりも薄肉となっている。
【0038】
また、レーザー光Lの照射に伴って、レーザー光Lを樹脂フィルム1に対して相対移動させる。具体的には、レーザー光Lを樹脂フィルム1の一方の面1aに沿って相対移動させる。本実施形態では、樹脂フィルム1の長手方向に沿って発熱層2が形成されているため、該発熱層2に沿ってレーザー光Lを相対移動させる。これにより、レーザー光Lが相対移動する方向に沿って、一対の凹部1d,1eが溝状(本実施形態では、直線状の溝状に)に形成される。これにより、樹脂フィルム1に一対のハーフカット部1d,1eを形成することができる。
【0039】
一対のハーフカット部1d,1eの深さの調整は、単位時間当たりに樹脂フィルム1および発熱層2が吸収するレーザー光Lの吸収量を調整することで行うことができる。具体的には、レーザー光Lが相対移動する速度(走査速度)を調整すること、またはレーザー光Lの出力を調整することによって一対のハーフカット部1d,1eの深さの調整を行うことができる。例えば、レーザー光Lの出力が一定の場合、レーザー光Lの走査速度を速くすることで、樹脂フィルム1および発熱層2が単位時間当りに吸収するレーザー光Lの吸収量が減少するため、一対のハーフカット部1d,1eは浅く形成される。逆に、レーザー光Lの走査速度を遅くすることで、樹脂フィルム1および発熱層2が単位時間当りに吸収するレーザー光Lの吸収量が増加するため、一対のハーフカット部1d,1eは深く形成される。
【0040】
また、レーザー光Lの走査速度が一定の場合には、レーザー光Lの出力を弱めることで、単位時間当りに吸収するレーザー光Lの吸収量が減少するため、一対のハーフカット部1d,1eが浅く形成される。逆に、レーザー光Lの出力を強くすることで、単位時間当りに吸収するレーザー光Lの吸収量が増加するため、一対のハーフカット部1d,1eが深く形成される。
【0041】
また、一対の凹部(即ち、ハーフカット部)1d,1eが形成されることによって、一対のハーフカット部1d,1eの両側には、一対のハーフカット部1d,1eに沿って盛り上がった隆起部1f,1fが形成されている。該隆起部1f,1fは、凹部形成領域1cとは反対に、レーザー光Lを照射する前の樹脂フィルム1の厚みよりも厚肉となっている。これにより、樹脂フィルム1には、薄肉となることで強度が低下した領域(即ち、凹部形成領域1c)が形成されると共に、厚肉となることで他の部分よりも強度が向上した領域(隆起部1f,1f)が形成される。
【0042】
これにより、一対のハーフカット部1d,1eが形成された樹脂フィルム10を一対のハーフカット部1d,1eを基点に引き裂く際に、凹部形成領域1cの内側のみで樹脂フィルム1を破断させることができる。具体的には、隆起部1f,1fが凹部形成領域1cの両側に形成されているため、凹部形成領域1cの内側よりも両側の方が強度が高くなっている。このため、凹部形成領域1cの内側で生じる樹脂フィルム1の破断が隆起部1f,1fを超えて外側に向かうのを防止することができる。つまり、樹脂フィルム10が破断されていく方向を凹部形成領域1c(具体的には、隆起部1f,1f)に沿って制御することができる。なお、実際に樹脂フィルム1に発熱層2を形成し、レーザー光を照射して一対の凹部1d,1eを形成した状態の写真を図3に示す。
【0043】
以上のように、本発明にかかる樹脂フィルムの加工方法によれば、レーザー光を用いてハーフカット部等の凹部を形成することができ、該凹部が形成された領域が容易に破断可能となる樹脂フィルムを得ることができる。
【0044】
即ち、樹脂フィルム1は、一方の面1aに照射されたレーザー光Lを一部吸収することによって、レーザー光Lが照射された領域の一方の面1a側が発熱する。そして、斯かる発熱によって、レーザー光Lが照射された領域の一方の面1a側が溶解したり昇華したりすることで、一方の面1a側から他方の面1b側に向かって照射面側凹部1dが形成される。
【0045】
また、照射面側凹部1dの形成に伴って、樹脂フィルム1の他方の面1b側における照射面側凹部1dに対応した位置に発熱層側凹部1eが形成される。具体的には、樹脂フィルム1の他方の面1bに形成された発熱層2は、樹脂フィルム1よりも高い割合でレーザー光Lを吸収するため、樹脂フィルム1を透過したレーザー光Lを吸収した領域が発熱する。そして、樹脂フィルム1におけるレーザー光Lが照射された領域の他方の面1b側が発熱層2によって加熱されて溶解したり昇華したりすることで、他方の面1b側から一方の面1a側に向かって、照射面側凹部1dに対応した位置に発熱層側凹部1eが形成される。つまり、樹脂フィルム1の一方の面1a側へのレーザー光Lの照射によって、樹脂フィルム1の両面の対応する位置に一対の凹部(照射面側凹部1dおよび発熱層側凹部1e)を形成することができる。
【0046】
これにより、樹脂フィルム1の一方の面1a側と他方の面1b側とに働く樹脂フィルム1を引き裂く力の強さに差がある場合であっても、言い換えれば、樹脂フィルム1を一方の面1a側から引き裂くように力が働いた場合だけでなく、他方の面1b側から引き裂くように力が働いた場合であっても、凹部形成領域1cに引き裂く力を集中させることができるため、凹部形成領域1cで樹脂フィルム1を容易に破断させることができる。
【0047】
また、樹脂フィルム1の一方の面1a側と他方の面1b側とに引き裂く力が均等に働いた場合には、一対の凹部1d,1eの両方に引き裂き力が集中するため、樹脂フィルム1の両面から凹部形成領域1cが破断される。このため、従来のように一方の面からのみ破断が生じる場合よりも、樹脂フィルム1を容易に破断することができる。
【0048】
また、レーザー光Lの吸収率が低い素材(例えば、オレフィン系樹脂等)を用いて樹脂フィルム1が形成されている場合には、発熱層2が形成されていないと、樹脂フィルム1にレーザー光Lを照射しても、樹脂フィルム1の一方の面1a側に浅い凹部しか形成されず、樹脂フィルム1を容易に破断させることが困難となる。また、レーザー光の出力を高めることで十分な発熱を得ようとした場合であっても、樹脂フィルム1が容易に溶断してしまい、凹部を形成できない場合もある。しかしながら、発熱層を形成することで、樹脂フィルム1の両面の対応する位置に一対の凹部を形成することができるため、レーザー光Lの吸収率が低い素材からなる樹脂フィルム1であっても、凹部形成領域1cで容易に破断させることができる樹脂フィルム1となる。
【0049】
なお、本発明に係る包装袋の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、樹脂フィルム1が長尺状に形成されているが、これに限定されるものではなく、樹脂フィルム1の長手方向に直交する幅方向に沿って樹脂フィルム1が切断されて、枚葉体状に形成された樹脂フィルムを用いてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、一対のハーフカット部1d,1eが直線状に形成されているが、これに限定されるものではなく、曲線状や破線状に形成されてもよい。また、一対の凹部1d,1eを点状に形成し、樹脂フィルム1の一方向に沿って複数設けるようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、発熱層2として、印刷層が用いられているが、これに限定されるものではなく、樹脂フィルム1を透過したレーザー光を吸収して発熱することで、樹脂フィルム1に凹部を形成しえる層であればよい。
【符号の説明】
【0053】
1…樹脂フィルム、1c…凹部形成領域、1d…照射面側凹部、1e…発熱層側凹部、1f…隆起部、2…発熱層、L…レーザー光、L1…焦点位置、L2…集光領域、L3…拡散領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を透過させると共に一部を吸収して発熱する樹脂フィルムの一方の面側にレーザー光を照射することで、レーザー光が照射された領域に凹部を形成する樹脂フィルムの加工方法において、
樹脂フィルムの他方の面に樹脂フィルムよりも高い割合でレーザー光を吸収して発熱する発熱層を形成し、樹脂フィルムの一方の面における発熱層に対応した領域にレーザー光を照射することで樹脂フィルムにおけるレーザー光が照射された領域の一方の面側を発熱させると共に、樹脂フィルムを透過したレーザー光を発熱層が吸収して発熱することで樹脂フィルムにおけるレーザー光が照射された領域の他方の面側を加熱することにより、レーザー光を照射した領域の樹脂フィルムの両面の対応する位置に一対の凹部を形成することを特徴とする樹脂フィルムの加工方法。
【請求項2】
前記樹脂フィルムは、オレフィン系樹脂を用いて構成されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルムの加工方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂フィルムの加工方法を用いて加工されたことを特徴とする樹脂フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−218063(P2012−218063A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89467(P2011−89467)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000241186)朋和産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】