説明

樹脂フィルム製造装置、樹脂フィルムの製造方法および樹脂フィルム

【課題】 欠陥部分の発生を抑制し、品質を向上させることが可能な樹脂フィルムの製造装置を提供する。
【解決手段】 樹脂フィルム製造装置100は、ダイ2より押出されたフィルム状樹脂を、ゴムロール3の外周面とマットロール4の外周面とで挟み込むことで、フィルム状樹脂の表面形状を予め定める形状に成形して樹脂フィルムを製造する。この樹脂フィルム製造装置100は、ゴムロール3の外周面を加熱する第1加熱部8および第2加熱部9を有する加熱装置10を備える。第1加熱部8は、ゴムロール3の回転軸およびマットロール4の回転軸を含む仮想平面S0に対してダイ2が配置される側の領域において、ゴムロール3に対向して設けられる。また、第2加熱部9は、前記仮想平面S0に対してダイ2が配置される側とは反対側の領域において、ゴムロール3に対向して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学特性が付与された樹脂フィルム、樹脂フィルムの製造装置および樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用途に用いられる光学シートは、たとえば光ディスクや偏光板と組み合わせた液晶セル、位相差フィルム、拡散フィルム、輝度向上フィルム等に広く用いられている。
【0003】
光学シートにおける光の透過特性および反射特性(以下では「光学特性」という)は、光学シートの材質および光学シート表面の状態などによって決定される。光学シートの材質として、樹脂材料がよく使用される。光学シートには、たとえば、樹脂フィルムの表面に凹凸形状を形成し、光を散乱させる機能を付与したものがある。
【0004】
表面に凹凸形状が形成された樹脂フィルムは、一般に、溶融した透明樹脂をダイからフィルム状に押出し、外周面が平滑な第1冷却ロールと、外周面に凹凸形状が形成された第2冷却ロールとの間に挟み込んで第2冷却ロールの前記凹凸形状を転写し、第2冷却ロールに巻き掛けた後、引取りロールで引取ることによって得られる。
【0005】
特許文献1には、樹脂フィルムの製造方法が開示されている。特許文献1に開示の樹脂フィルムの製造方法では、ペレット化された熱可塑性樹脂である樹脂材料を加熱して溶融し、溶融した樹脂を押出す押出機と、押出機から押出された溶融状態の樹脂をフィルム状に押出すダイと、ダイからフィルム状に押出された樹脂を挟み込む複数のロールとを備える樹脂フィルム製造装置を用いて、樹脂フィルムを製造する。
【0006】
樹脂フィルムの表面状態は、樹脂を挟み込む複数のロールの表面状態が反映されるので、たとえば、樹脂フィルムの表面に凹凸を設けたい場合は、ロール表面に凹凸を設けて版とし、これを転写する。樹脂フィルムの表面を平坦にしたい場合は、ロール表面を平滑にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−196327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
表面に凹凸形状を形成した樹脂フィルムの光学特性は、版となるロールの凹凸の転写の度合いに影響される。凹凸の転写度合いは、版ロール、及びこれと対になって樹脂を挟み込むロールの表面の温度に影響される。ロールの表面に温度の不均一な部分が存在すると、その温度不均一部分に対応して、樹脂フィルムの表面に、樹脂フィルムの流れ方向に延びる筋状の欠陥部分が発生してしまう。
【0009】
本発明の目的は、欠陥部分の発生を抑制し、品質を向上させることが可能な樹脂フィルムの製造装置、樹脂フィルムの製造方法および樹脂フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、溶融押出成形法によって熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを製造する樹脂フィルム製造装置であって、
溶融状態の熱可塑性樹脂をフィルム状に押出して製膜する製膜手段と、
第1ロールおよび第2ロールからなり、前記第1ロールの回転軸と前記第2ロールの回転軸とが平行で、前記第1ロールの外周面と前記第2ロールの外周面とが当接するように配置される成形手段であって、前記製膜手段より押出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を、前記第1ロールの外周面と前記第2ロールの外周面とで挟み込むことで、フィルム状の熱可塑性樹脂の表面形状を予め定める形状に成形する成形手段と、
前記第1ロールの外周面を加熱する加熱手段であって、前記第1ロールの回転軸および前記第2ロールの回転軸を含む仮想平面に対して前記製膜手段が配置される側の領域において、前記第1ロールに対向して設けられる第1加熱部と、前記仮想平面に対して前記製膜手段が配置される側とは反対側の領域において、前記第1ロールに対向して設けられる第2加熱部とを有する加熱手段と、を備えることを特徴とする樹脂フィルム製造装置である。
【0011】
また本発明の樹脂フィルム製造装置では、前記第1加熱部は、前記第1ロールの軸線方向全体にわたって、該軸線方向に沿って予め定める間隔をあけて配列する複数の発熱体からなる発熱体群を含んで構成されることを特徴とする。
【0012】
また本発明の樹脂フィルム製造装置では、前記発熱体群において複数の発熱体は、前記第1ロールの周方向から見たときに、軸線方向に隣接するもの同士で一部が重なるように、千鳥状に配列されていることを特徴とする。
【0013】
また本発明の樹脂フィルム製造装置では、前記第1加熱部には、前記第1ロールの周方向に複数列の前記発熱体群が形成されることを特徴とする。
【0014】
また本発明の樹脂フィルム製造装置では、前記第2加熱部は、前記仮想平面に垂直な方向において、前記第1ロールの直下に設けられることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、溶融押出成形法によって熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを製造する方法であって、
製膜手段によって溶融状態の熱可塑性樹脂をフィルム状に押出して製膜する製膜工程と、
前記製膜手段より押出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を、第1ロールおよび第2ロールからなる成形手段によって成形する成形工程であって、前記第1ロールの外周面と前記第2ロールの外周面とで挟み込むことで、フィルム状の熱可塑性樹脂の表面形状を予め定める形状に成形する成形工程と、を含み、
前記成形工程において、前記第1ロールの外周面は、加熱手段によって加熱され、
前記加熱手段は、前記第1ロールの回転軸および前記第2ロールの回転軸を含む仮想平面に対して前記製膜手段が配置される側の領域において、前記第1ロールに対向して設けられる第1加熱部と、前記仮想平面に対して前記製膜手段が配置される側とは反対側の領域において、前記第1ロールに対向して設けられる第2加熱部とを有することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法である。
【0016】
また本発明は、光学特性が付与された樹脂フィルムであって、
製造時の幅方向に等間隔で複数点測定し、これを1つの測定列として、流れ方向に等間隔で複数列測定したときのヘーズの標準偏差が2.0以下であることを特徴とする樹脂フィルムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂フィルム製造装置は、製膜手段より押出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を、第1ロールの外周面と第2ロールの外周面とで挟み込むことで、フィルム状の熱可塑性樹脂の表面形状を予め定める形状に成形して樹脂フィルムを製造する装置である。そして、樹脂フィルム製造装置は、第1ロールの外周面を加熱する第1加熱部および第2加熱部を有する加熱手段を備える。第1加熱部は、第1ロールの回転軸および第2ロールの回転軸を含む仮想平面に対して製膜手段が配置される側の領域において、第1ロールに対向して設けられる。また、第2加熱部は、前記仮想平面に対して製膜手段が配置される側とは反対側の領域において、第1ロールに対向して設けられる。
【0018】
以上のように構成される樹脂フィルム製造装置では、製膜手段が配置される側の領域、およびそれとは反対側の領域のそれぞれにおいて、第1ロールの外周面に対向して設けられる第1加熱部および第2加熱部によって、第1ロールの外周面を充分に加熱することができるので、第1ロールの外周面において軸線方向に温度の不均一な部分が発生するのを抑制することができる。そのため、樹脂フィルム製造装置は、第1ロールの軸線方向に対応する樹脂フィルムの幅方向に不均一に発生し、樹脂フィルムの流れ方向に延びる筋状の欠陥部分の発生を抑制し、品質を向上させることができる。
【0019】
また本発明によれば、第1加熱部は、第1ロールの軸線方向全体にわたって、該軸線方向に沿って予め定める間隔をあけて配列する複数の発熱体からなる発熱体群を含んで構成される。これによって、第1ロールの外周面における軸線方向に対する加熱の制御を、軸線方向に配列する各発熱体で独立して高精度に行うことができるので、第1ロールの外周面において軸線方向に温度の不均一な部分が発生するのをより効果的に抑制することができる。
【0020】
また本発明によれば、発熱体群において複数の発熱体は、第1ロールの周方向から見たときに、軸線方向に隣接するもの同士で一部が重なるように、千鳥状に配列されている。これによって、発熱体群を全体として見た場合には、第1ロールの外周面において軸線方向に隙間なく発熱体が対向して配置されることになるので、第1ロールの外周面において軸線方向に温度の不均一な部分が発生するのをより効果的に抑制することができる。
【0021】
また本発明によれば、第1加熱部には、第1ロールの周方向に複数列の発熱体群が形成される。これによって、第1ロールの外周面における軸線方向に対する加熱の制御を、軸線方向に配列する複数列の各発熱体で独立して高精度に行うことができるので、第1ロールの外周面において軸線方向に温度の不均一な部分が発生するのをより効果的に抑制することができる。
【0022】
また本発明によれば、第2加熱部は、前記仮想平面に垂直な方向において、第1ロールの直下に設けられる。これによって、第1ロールの周方向に関して、第1加熱部と第2加熱部との離間距離を充分に大きくすることができるので、第1ロールの外周面を第1加熱部と第2加熱部とで明確に区別して加熱することができ、そのため、第1ロールの外周面において軸線方向に温度の不均一な部分が発生するのをより効果的に抑制することができる。
【0023】
また本発明によれば、樹脂フィルムの製造方法は、製膜工程と成形工程とを含む。製膜工程では、製膜手段によって溶融状態の熱可塑性樹脂をフィルム状に押出して製膜する。成形工程では、製膜手段より押出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を、第1ロールの外周面と第2ロールの外周面とで挟み込むことで、フィルム状の熱可塑性樹脂の表面形状を予め定める形状に成形する。
【0024】
ここで、成形工程において、第1ロールの外周面は、加熱手段によって加熱される。この加熱手段は、第1ロールの回転軸および第2ロールの回転軸を含む仮想平面に対して製膜手段が配置される側の領域において、第1ロールに対向して設けられる第1加熱部と、前記仮想平面に対して製膜手段が配置される側とは反対側の領域において、第1ロールに対向して設けられる第2加熱部とを有する。
【0025】
成形工程において、加熱手段は、製膜手段が配置される側の領域、およびそれとは反対側の領域のそれぞれにおいて、第1ロールの外周面に対向して設けられる第1加熱部および第2加熱部によって、第1ロールの外周面を充分に加熱することができるので、第1ロールの外周面において軸線方向に温度の不均一な部分が発生するのを抑制することができる。そのため、樹脂フィルムの製造方法では、第1ロールの軸線方向に対応する樹脂フィルムの幅方向に不均一に発生し、樹脂フィルムの流れ方向に延びる筋状の欠陥部分の発生を抑制し、品質を向上させることができる。
【0026】
また本発明によれば、樹脂フィルムは、製造時の幅方向に等間隔で複数点測定し、これを1つの測定列として、流れ方向に等間隔で複数列測定したときのヘーズの標準偏差が2.0以下である。これによって、光学特性であるヘーズが均一な樹脂フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態である樹脂フィルム製造装置100の構成を模式的に示す図である。
【図2】樹脂フィルム製造装置100の要部を拡大して示す斜視図である。
【図3】ゴムロール3の回転軸線方向から見た樹脂フィルム製造装置100の概略図である。
【図4】本発明の第2実施形態である樹脂フィルム製造装置200の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態である樹脂フィルム製造装置300の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の第1実施形態である樹脂フィルム製造装置100の構成を模式的に示す図である。樹脂フィルム製造装置100は、溶融押出成形法によって熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを製造する装置である。本発明の樹脂フィルムの製造方法は、樹脂フィルム製造装置100によって実現される。
【0029】
本発明に用いることができる熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ミディアムインパクトポリスチレンのようなゴム補強スチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)、アクリロニトリル−ブチルアクリレートラバー−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピルラバー−スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル−塩化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS)、ABS樹脂(たとえば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−アルファメチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体)等のスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、エチレン塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、エチレン塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PETP、PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBTP、PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、変性ポリカーボネート等のポリカーボネート系樹脂、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46等のポリアミド系樹脂、ポリオキシメチレンコポリマー、ポリオキシメチレンホモポリマー等のポリアセタール(POM)樹脂、その他のエンジニアリング樹脂、スーパーエンジニアリング樹脂、たとえば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PSU)、セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、エチルセルロース(EC)等のセルロース誘導体、液晶ポリマー、液晶アロマチックポリエステル等の液晶系ポリマーが挙げられる。また、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、熱可塑性スチレンブタジエンエラストマー(TSBC)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)、熱可塑性塩化ビニルエラストマー(TPVC)、熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPAE)等の熱可塑性エラストマーを用いることもできる。本実施形態においては、一種もしくはそれ以上の熱可塑性樹脂のブレンド体を用いたり、添加材等を含有させて用いてもよい。
【0030】
樹脂フィルム製造装置100は、押出機1と、濾過装置11と、製膜手段であるダイ2と、第1ロールであるゴムロール3と、第2ロールであるマットロール4と、鏡面ロール5と、引取りロール6と、付勢装置7と、加熱手段である加熱装置10とを含む。本実施形態において、成形手段は、ゴムロール3とマットロール4とによって構成される。
【0031】
押出機1は、図示しない押出機シリンダと、ヒータと、押出機スクリューとを含む。押出機1は、押出機シリンダ内で、ヒータからの熱および押出機スクリューの剪断摩擦熱によって熱可塑性樹脂を溶融状態にし、溶融状態の熱可塑性樹脂(溶融樹脂)を、押出機スクリューにより押出し、濾過装置11に送る。
【0032】
濾過装置11は、ポリマーフィルタを備え、押出機1から押出された溶融樹脂に対して濾過処理を行う。具体的にはポリマーフィルタに溶融樹脂を通過させることによって濾過し、ゲル化物等の異物を除去する。
【0033】
ダイ2は、濾過処理後の溶融樹脂をフィルム状に押出して製膜する。ダイ2は、たとえば、Tダイを用いることができる。
【0034】
ゴムロール3とマットロール4とは、同じ外径を有する円柱状部材からなり、2つのロールの回転軸が同一水平面上に配置される。ゴムロール3とマットロール4とは、外周面同士を接触させてニップ部を形成するように配置してもよく、外周面同士が所定の間隔(ギャップ)を空けて配置してもよい。どのように配置するかは、製造する樹脂フィルムに要求される特性に応じて設定すればよい。本実施形態では、付勢装置7がゴムロール3をマットロール4に付勢することで、ゴムロール3の外周面とマットロール4の外周面とが当接してニップ部が形成されている。
【0035】
ダイ2は、これらゴムロール3とマットロール4との上方に設けられ、ダイ2の吐出口は、下方に開放して配置される。ダイ2の吐出口は、これらゴムロール3とマットロール4のニップ部の鉛直上方に位置し、ダイ2から吐出されるフィルム状樹脂は、鉛直下方に延びて、互いに逆方向に回転するゴムロール3(回転方向A1)とマットロール4(回転方向A2)とに挟み込まれる。
【0036】
ダイ2から吐出されたフィルム状樹脂をゴムロール3とマットロール4との間に挟み込むと、ゴムロール3のゴム層がフィルム状樹脂を介してマットロール4の外周面に沿って凹状に弾性変形する。その結果、ゴムロール3とマットロール4とがフィルム状樹脂を介して所定のニップ長さで接触する。
【0037】
このニップ長さは、マットロール4の表面に形成された凹凸形状をフィルム状樹脂に転写できる長さである。ニップ長さを所定の値にするには、たとえばゴムロール3のゴム層材質およびゴム層厚みなどを調整することによって任意に設定することができる。
【0038】
ダイ2から吐出されたフィルム状樹脂は、柔軟性が高い状態であるので、ゴムロール3とマットロール4との間に挟み込まれることで、各ロールの外表面に応じたフィルムの表面形状が得られる。
【0039】
ゴムロール3は、金属製の芯材と、芯材の表面に設けられるゴム層とからなり、芯材には、鉄心が用いられる。ゴム層は、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどからなり、そのゴム層を構成するゴム材料の硬さは、JIS K6253で規定されるデュロメータ硬さでA70〜A90の範囲である。またゴム層には、後述する加熱装置10が放射する遠赤外線に対する応答性を良好にするための着色剤、および、熱伝導性を向上させるためのシリカ粉末などの充填剤が含有されている。ゴムロール3は、外表面すなわちゴム層の表面が平滑に形成され、フィルム状樹脂のゴムロール3側一方面を平坦化する。このゴムロール3の外周面は、フィルム状樹脂の温度よりも低い所定の温度となるように、後述する加熱装置10により加熱される。
【0040】
マットロール4は、表面に微小な凹凸加工を施された金属製ロールであり、フィルム状樹脂のマットロール4側他方面に凹凸形状を転写する。詳細には、たとえば金属塊を削りだしたドリルドロール、中空構造のスパイラルロールなどのロール内部に流体、蒸気等を通してロール表面の温度を制御できる金属ロールなどが挙げられ、これら金属ロールの外周面にサンドブラストや彫刻等によって所望の凹凸形状が形成されたものを用いることができる。
【0041】
マットロール4の外周面に形成される凹凸形状としては、算術平均表面粗さ(Ra)で0.1〜10μmのマット形状の他、ピッチや高さが5〜500μmのプリズム形状やレンズ形状等を採用することができる。算術平均表面粗さ(Ra)は、JIS B0601−2001に準拠して表面粗さ計で測定して得られる値である。
【0042】
ゴムロール3およびマットロール4は、いずれもフィルム状樹脂の温度よりも低い温度に保持されており、ゴムロール3とマットロール4との間に挟み込まれることで、フィルム状樹脂が所定の温度にまで冷却される。この冷却により、フィルム状樹脂の柔軟性が低下し、マットロール4の外周面に巻回された状態でマットロール4の回転(回転方向A2)に伴って搬送される。
【0043】
マットロール4の表面温度(T)は、フィルム状樹脂の熱変形温度(Th)に対して、(Th−60℃)≦T≦(Th+30℃)、好ましくは(Th−30℃)≦T≦(Th+20)、より好ましくは(Th−20℃)≦T≦(Th+10℃)の範囲内にするのがよい。
【0044】
ここで、熱可塑性樹脂の熱変形温度(Th)としては、特に限定されるものではないが、通常、60〜200℃である。熱可塑性樹脂の熱変形温度(Th)は、ASTMD−648に準拠して測定される温度である。
【0045】
ゴムロール3の表面温度は、通常、0〜70℃、好ましくは20〜40℃の範囲内にするのがよい。これに対し、ゴムロール3の表面温度が前記範囲より高い側に外れると、フィルムがゴムロール3に取られて巻きつくおそれがある。
【0046】
ゴムロール3の表面温度は、外周面が加熱装置10により加熱されることで、前記した特定の範囲内に制御される。加熱装置10について、図2および図3を用いて以下に説明する。図2は、樹脂フィルム製造装置100の要部を拡大して示す斜視図である。図3は、ゴムロール3の回転軸線方向から見た樹脂フィルム製造装置100の概略図である。
【0047】
加熱装置10は、第1加熱部8と第2加熱部9とを含む。第1加熱部8は、ゴムロール3の周方向に所定の間隔をあけて列を成して設けられる第1発熱体群81および第2発熱体群82を含んで構成される。第1加熱部8において、第2発熱体群82が、第1発熱体群81よりも、ゴムロール3の周方向に関してダイ2に近い側に設けられる。
【0048】
第1発熱体群81は、遠赤外線を放射する矩形板状の遠赤セラミックヒータからなる複数の第1発熱体811が、ゴムロール3の軸線方向両端部間にわたって、所定の間隔をあけて軸線方向に沿って配列することで構成される。複数の第1発熱体811は、それぞれ独立して発熱可能なように、個別の電源から電圧が印加されるようになっている。第1発熱体811は、ゴムロール3の軸線方向に沿って延びる棒状の第1支持部材812によって支持されて、ゴムロール3の回転軸およびマットロール4の回転軸を含む仮想平面(水平面)Sに対してダイ2が配置される側の領域、すなわち仮想平面Sよりも鉛直方向上方側において、ゴムロール3の外周面に対向して配置される。また、第1発熱体群81を構成する第1発熱体811の中心、およびゴムロール3の回転軸を含む仮想平面Sと、仮想平面Sとの成す角度θは、0〜70°の範囲に設定される。
【0049】
第2発熱体群82は、遠赤外線を放射する矩形板状の遠赤セラミックヒータからなる複数の第2発熱体821が、ゴムロール3の軸線方向両端部間にわたって、所定の間隔をあけて軸線方向に沿って配列することで構成される。複数の第2発熱体821は、それぞれ独立して発熱可能なように、個別の電源から電圧が印加されるようになっている。第2発熱体821は、ゴムロール3の軸線方向に沿って延びる棒状の第2支持部材822によって支持されて、ゴムロール3の回転軸およびマットロール4の回転軸を含む仮想平面(水平面)Sに対してダイ2が配置される側の領域、すなわち仮想平面Sよりも鉛直方向上方側において、ゴムロール3の外周面に対向して配置される。また、第2発熱体群82を構成する第2発熱体821の中心、およびゴムロール3の回転軸を含む仮想平面Sと、仮想平面Sとの成す角度θは、20〜90°の範囲に設定される。なお、角度θは、角度θよりも大きく設定される。
【0050】
また、第1発熱体群81および第2発熱体群82を含んで構成される第1加熱部8において、第1発熱体811と第2発熱体821とは、第1加熱部8をゴムロール3の周方向に関して第1発熱体群81から第2発熱体群82に向かう方向に見た場合に、第1発熱体811の隣接間の隙間から第2発熱体821が見えるように配置されている。
【0051】
第2加熱部9は、ゴムロール3を鉛直方向から見た外形と同じ大きさおよび形状の矩形板状の面状ヒータである。本実施形態では、第2加熱部9は、遠赤外線を放射する矩形板状の遠赤セラミックヒータが複数個マトリクス状に配置されたものである。この第2加熱部9は、ゴムロール3の回転軸およびマットロール4の回転軸を含む仮想平面(水平面)Sに対してダイ2が配置される側の領域とは反対側の領域、すなわち仮想平面Sよりも鉛直方向下方側の領域において、ゴムロール3に対向して設けられる。本実施形態では、第2加熱部9は、ゴムロール3の鉛直方向直下に設けられる。
【0052】
以上のように構成される加熱装置10を備える樹脂フィルム製造装置100では、ダイ2が配置される側の領域、およびそれとは反対側の領域のそれぞれにおいて、ゴムロール3の外周面に対向して設けられる第1加熱部8および第2加熱部9によって、ゴムロール3の外周面を充分に加熱することができるので、ゴムロール3の外周面において軸線方向に温度の不均一な部分が発生するのを抑制することができる。そのため、樹脂フィルム製造装置100は、ゴムロール3の軸線方向に対応する樹脂フィルムの幅方向に不均一に発生し、樹脂フィルムの流れ方向に延びる筋状の欠陥部分の発生を抑制し、品質を向上させることができる。
【0053】
さらに、加熱装置10が備える第1加熱部8は、ゴムロール3の軸線方向全体にわたって、該軸線方向に沿って所定の間隔をあけて配列する複数の第1発熱体811からなる第1発熱体群81、および、複数の第2発熱体821からなる第2発熱体群82を含んで構成される。これによって、ゴムロール3の外周面における軸線方向に対する加熱の制御を、軸線方向に配列する複数列の第1発熱体811および第2発熱体821で独立して高精度に行うことができるので、ゴムロール3の外周面において軸線方向に温度の不均一な部分が発生するのをより効果的に抑制することができる。
【0054】
図1に戻って、樹脂フィルム製造装置100において、マットロール4のゴムロール3とは反対側には、鏡面ロール5が設けられる。鏡面ロール5は、ゴムロール3、マットロール4と同じ外径を有する円柱状部材からなり、回転軸がゴムロール3、マットロール4の回転軸と同一水平面上に配置される。鏡面ロール5は、マットロール4と同様に形成される金属製ロールであり、外表面が鏡面加工されている。
【0055】
フィルム状樹脂は、マットロール4の下方側外周面をほぼ半周巻回されたのち、鏡面ロール5の外表面を約1/4周巻回されて、鏡面ロール5の鉛直方向上部で離反して、引取りロール6によって水平方向に引取られる。
【0056】
なお、フィルム状樹脂をより緩やかに冷却するために、鏡面ロール5と引取りロール6との間には、複数本の冷却ロールを設け、鏡面ロール5から順次、次の冷却ロールにフィルム状樹脂を巻回させるようにしてもよい。
【0057】
鏡面ロール5および鏡面ロール5以降の各冷却ロールの表面(外周面)温度については、任意の表面温度に設定すればよく、特に限定されないが、通常、熱可塑性樹脂の熱変形温度(Th)に対して±15℃程度が好ましい。
【0058】
引取りロール6は、一対のロールである上部ロール6aおよび下部ロール6bからなる。上部ロール6aおよび下部ロール6bとしては、たとえばゴムロール、金属ロール等が挙げられる。下部ロール6bは、電動モータ等の回転駆動手段に接続されており、この下部ロール6bと接するように上部ロール6aが回転自在に配置され、下部ロール6bの回転によって上部ロール6aも回転するように構成されている。したがって、上部ロール6aと下部ロール6bとは同じ周速度で回転する。なお、上部ロール6aと下部ロール6bとの周速度が同じになる限り、前記構成とは逆の構成、すなわち上部ロール6aを回転駆動手段に接続し、この上部ロール6aと接するように下部ロール6bを回転自在に配置してもよく、上部ロール6aおよび下部ロール6bがいずれも回転駆動手段に接続されていてもよい。
【0059】
引取りロール6で引取られた製品としての樹脂フィルムは、厚さが30〜300μmであるのが好ましい。これに対し、厚さが30μm未満であると、前記したロール構成では安定して樹脂フィルムを得ることができず、300μmを超えると、フィルムとして取り扱うことが困難となる。樹脂フィルムの厚みは、ダイ2から押出されるフィルム状樹脂の厚み、ゴムロール3とマットロール4との当接圧、ニップ部の長さにより調整することができる。
【0060】
また、樹脂フィルムは、ヘーズが通常、20〜100、好ましくは40〜95、より好ましくは60〜90の範囲内である。なお、樹脂フィルムのヘーズは、たとえば、ヘーズメータHM−150(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて測定することができる。
【0061】
樹脂フィルムは、表面に凹凸形状が形成され、光を散乱させる機能が付与されているので、たとえば光ディスクや偏光板と組み合わせた液晶セル、位相差フィルム、拡散フィルム、輝度向上フィルム等の他、自動車内装用フィルム、照明用フィルム、建材用フィルム等に適用することができるが、本発明はこれらの用途に限定されるものではない。
【0062】
図4は、本発明の第2実施形態である樹脂フィルム製造装置200の構成を示す斜視図である。樹脂フィルム製造装置200は、前記した第1実施形態の樹脂フィルム製造装置100に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。樹脂フィルム製造装置200は、加熱装置201が備える第1加熱部202の構成が、前記した加熱装置10が備える第1加熱部8と異なる以外は、樹脂フィルム製造装置100と同様に構成される。
【0063】
樹脂フィルム製造装置200の加熱装置201が備える第1加熱部202は、遠赤外線を放射する矩形板状の遠赤セラミックヒータからなる複数の第1発熱体2021が、ゴムロール3の軸線方向両端部間にわたって千鳥状に配列することで構成される。複数の第1発熱体2021は、それぞれ独立して発熱可能なように、個別の電源から電圧が印加されるようになっている。第1発熱体2021は、ゴムロール3の軸線方向に沿って延びる棒状の第1支持部材2022によって支持されて、ゴムロール3の回転軸およびマットロール4の回転軸を含む仮想平面(水平面)Sに対してダイ2が配置される側の領域、すなわち仮想平面Sよりも鉛直方向上方側において、ゴムロール3の外周面に対向して配置される。複数の第1発熱体2021は、ゴムロール3の周方向から見たときに、軸線方向に隣接するもの同士で一部が重なるように配置されている。また、第1加熱部202を構成する第1発熱体2021の中心、およびゴムロール3の回転軸を含む仮想平面Sと、仮想平面Sとの成す角度θは、0〜90°の範囲に設定される。
【0064】
以上のように構成される第1加熱部202を備える加熱装置201では、ゴムロール3の周方向から見たときに、軸線方向に隣接するもの同士で一部が重なるように配置された複数の第1発熱体2021から放射される遠赤外線によって、ゴムロール3の外周面を加熱するので、ゴムロール3の外周面における軸線方向に温度の不均一な部分が発生するのを抑制することができる。そのため、樹脂フィルム製造装置200は、ゴムロール3の軸線方向に対応する樹脂フィルムの幅方向に不均一に発生し、樹脂フィルムの流れ方向に延びる筋状の欠陥部分の発生を抑制し、品質を向上させることができる。
【0065】
図5は、本発明の第3実施形態である樹脂フィルム製造装置300の構成を示す斜視図である。樹脂フィルム製造装置300は、前記した第1実施形態の樹脂フィルム製造装置100に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。樹脂フィルム製造装置300は、加熱装置301が備える第1加熱部302の構成が、前記した加熱装置10が備える第1加熱部8と異なる以外は、樹脂フィルム製造装置100と同様に構成される。
【0066】
樹脂フィルム製造装置300の加熱装置301が備える第1加熱部302は、遠赤外線を放射する矩形板状の遠赤セラミックヒータからなる複数の第1発熱体3021が、ゴムロール3の軸線方向両端部間にわたって、所定の間隔をあけて配列することで構成される。複数の第1発熱体3021は、それぞれ独立して発熱可能なように、個別の電源から電圧が印加されるようになっている。第1発熱体3021は、ゴムロール3の軸線方向に沿って延びる棒状の第1支持部材3022によって支持されて、ゴムロール3の回転軸およびマットロール4の回転軸を含む仮想平面(水平面)Sに対してダイ2が配置される側の領域、すなわち仮想平面Sよりも鉛直方向上方側において、ゴムロール3の外周面に対向して配置される。また、第1加熱部302を構成する第1発熱体3021の中心、およびゴムロール3の回転軸を含む仮想平面Sと、仮想平面Sとの成す角度θは、0〜90°の範囲に設定される。
【0067】
以上のように構成される第1加熱部302を備える加熱装置301では、ゴムロール3の軸線方向両端部間にわたって、所定の間隔をあけて配列する複数の第1発熱体3021から放射される遠赤外線によって、ゴムロール3の外周面を加熱するので、ゴムロール3の外周面における軸線方向に温度の不均一な部分が発生するのを抑制することができる。そのため、樹脂フィルム製造装置300は、ゴムロール3の軸線方向に対応する樹脂フィルムの幅方向に不均一に発生し、樹脂フィルムの流れ方向に延びる筋状の欠陥部分の発生を抑制し、品質を向上させることができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、実施例は本発明の一実施態様であり、本発明を限定するものではない。
【0069】
(実施例1)
ゴムロール3の周方向に2列の発熱体群を有する第1加熱部8を備えた図1に示す樹脂フィルム製造装置100を用いて樹脂フィルムを製造した。
【0070】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート(カリバー301−10、住友ダウ株式会社製)を用いた。
【0071】
<押出機1>
押出機1として、シリンダ径115mmの一軸押出機(東芝機械株式会社製)を用いた。
【0072】
<ダイ2>
ダイ2として、設定温度が270℃、全幅寸法1900mmのTダイを用い、330kg/hの吐出量でフィルム状樹脂を吐出した。
【0073】
<ゴムロール3>
ゴムロール3として、外径400mm、軸線方向長さ1850mmでデュロメータ硬さA70のシリコーンゴムロールを用いた。
【0074】
<マットロール4>
マットロール4として、外径400mm、軸線方向長さ1850mmで、ブラスト処理によって算術平均表面粗さ(Ra)2.7μmの凹凸形状が形成されたステンレス鋼製の金属ロール(ドリルドロール)を用いた。なお、ゴムロール3の回転軸とマットロール4の回転軸とは、同一水平面上に配置した。
【0075】
<鏡面ロール5>
鏡面ロール5として、外径400mm、軸線方向長さ1850mmで、鏡面仕上げのステンレス鋼製の金属ロール(ドリルドロール)を用いた。
【0076】
<引取りロール6>
上部ロール6aおよび下部ロール6bがいずれも外径300mm、軸線方向長さ1850mmのシリコーンゴムロールを用いた。
【0077】
<加熱装置10>
[第1加熱部8]
第1発熱体群81を構成する第1発熱体811、および、第2発熱体群82を構成する第2発熱体821として、一辺122mmの正方形板状の遠赤セラミックヒータ(S−IIII型、坂口電熱株式会社製)を用いた。
【0078】
第1発熱体群81は、13個の第1発熱体811が、ピッチ幅(ゴムロール3の軸線方向に隣接する第1発熱体811同士の中心間の距離)135mmで、ゴムロール3の軸線方向に沿って配列することで構成される。この第1発熱体群81は、ゴムロール3の回転軸およびマットロール4の回転軸を含む仮想平面Sよりも鉛直方向上方側に配置される。また、第1発熱体群81を構成する第1発熱体811の中心、およびゴムロール3の回転軸を含む仮想平面Sと、仮想平面Sとの成す角度θは、45°に設定した。
【0079】
第2発熱体群82は、14個の第2発熱体821が、ピッチ幅(ゴムロール3の軸線方向に隣接する第2発熱体821同士の中心間の距離)135mmで、ゴムロール3の軸線方向に沿って配列することで構成される。この第2発熱体群82は、ゴムロール3の回転軸およびマットロール4の回転軸を含む仮想平面Sよりも鉛直方向上方側に配置される。また、第2発熱体群82を構成する第2発熱体821の中心、およびゴムロール3の回転軸を含む仮想平面Sと、仮想平面Sとの成す角度θは、77°に設定した。
【0080】
[第2加熱部9]
一辺122mmの正方形板状の遠赤セラミックヒータ(S−III型、坂口電熱株式会社製)を複数個マトリクス状に配置し、ゴムロール3を鉛直方向から見た外形寸法に対応した450mm×1900mmの矩形状の面状ヒータとした。この面状ヒータを、ゴムロール3の鉛直方向直下に、ゴムロール3に対向して配置した。
【0081】
<各ロールの表面温度>
マットロール4の表面温度を130℃、鏡面ロール5の表面温度を135℃に設定した。また、ゴムロール3の鉄心温度は40℃に設定した。ゴムロール3の表面温度は、外周面が加熱装置10により加熱されることで制御され、軸線方向に対応する樹脂フィルムの幅方向のヘーズが均一になるよう制御した結果、150℃となった。
【0082】
以上のように構成される樹脂フィルム製造装置100を用いて樹脂フィルムを製造した。製造される樹脂フィルムは、厚みが130μmで、幅寸法が1700mmであった。
【0083】
(実施例2)
複数の発熱体がゴムロール3の軸線方向に千鳥状に配列する第1加熱部202を備えた図4に示す樹脂フィルム製造装置200を用いて樹脂フィルムを製造した。実施例2における樹脂フィルム製造装置200は、第1加熱部202の構成が、実施例1における第1加熱部8と異なる以外は、実施例1と同様である。
【0084】
[第1加熱部202]
第1加熱部202を構成する第1発熱体2021として、一辺122mmの正方形板状の遠赤セラミックヒータ(S−III型、坂口電熱株式会社製)を用いた。第1加熱部202は、13個の第1発熱体2021が、ゴムロール3の周方向から見たときに、ゴムロール3の軸線方向に隣接するもの同士で一部が重なるように(重なり幅寸法:34mm)、ゴムロール3の軸線方向に千鳥状に配列することで構成される。この第1加熱部202は、ゴムロール3の回転軸およびマットロール4の回転軸を含む仮想平面Sよりも鉛直方向上方側に配置される。また、第1加熱部202を構成する第1発熱体2021の中心、およびゴムロール3の回転軸を含む仮想平面Sと、仮想平面Sとの成す角度θは、45°に設定した。
【0085】
以上のように構成される樹脂フィルム製造装置200を用いて樹脂フィルムを製造した。製造される樹脂フィルムは、厚みが130μmで、幅寸法が1700mmであった。
【0086】
(実施例3)
複数の発熱体がゴムロール3の軸線方向に沿って配列する第1加熱部302を備えた図5に示す樹脂フィルム製造装置300を用いて樹脂フィルムを製造した。実施例3における樹脂フィルム製造装置300は、第1加熱部302の構成が、実施例1における第1加熱部8と異なる以外は、実施例1と同様である。
【0087】
[第1加熱部302]
第1加熱部302を構成する第1発熱体3021として、一辺122mmの正方形板状の遠赤セラミックヒータ(S−III型、坂口電熱株式会社製)を用いた。第1加熱部302は、13個の第1発熱体3021が、ピッチ幅(ゴムロール3の軸線方向に隣接する第1発熱体3021同士の中心間の距離)135mmで、ゴムロール3の軸線方向に沿って配列することで構成される。この第1加熱部302は、ゴムロール3の回転軸およびマットロール4の回転軸を含む仮想平面Sよりも鉛直方向上方側に配置される。また、第1加熱部302を構成する第1発熱体3021の中心、およびゴムロール3の回転軸を含む仮想平面Sと、仮想平面Sとの成す角度θは、45°に設定した。
【0088】
以上のように構成される樹脂フィルム製造装置300を用いて樹脂フィルムを製造した。製造される樹脂フィルムは、厚みが130μmで、幅寸法が1700mmであった。
【0089】
(比較例1)
第1加熱部8を備えないこと以外は、実施例1と同様にした。
【0090】
<評価方法>
得られた樹脂フィルムの光学特性は、樹脂フィルムのヘーズを測定することによって評価した。サンプルのヘーズ測定は、ヘーズメータHM−150(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。評価サンプルは、ロールに巻き掛けられた2周分(長さ3000mm)を採取し、幅方向に等間隔で15点測定し、これを1つの測定列として、流れ方向に等間隔で15列測定した。したがって、測定位置は合計225点である。
【0091】
測定列ごとに15点のヘーズから算術平均値、最高値、最低値、最高値と最低値との差(最高値−最低値)、および標準偏差を算出し、算出した15列分の算術平均値、最高値、最低値、最高値と最低値との差(最高値−最低値)、および標準偏差のそれぞれについて、算術平均値を算出した。評価結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
実施例1〜3で製造した樹脂フィルムのサンプルは、標準偏差の算術平均値が、比較例1で製造した樹脂フィルムのサンプルよりも小さかった。これは、樹脂フィルムの流れ方向、幅方向におけるヘーズのばらつきが、比較例1よりも実施例1〜3の方が小さいことを示している。
【符号の説明】
【0094】
1 押出機
2 ダイ
3 ゴムロール
4 マットロール
5 鏡面ロール
6 引取りロール
7 付勢装置
8,202,302 第1加熱部
9 第2加熱部
10,201,301 加熱装置
11 濾過装置
81 第1発熱体群
82 第2発熱体群
100,200,300 樹脂フィルム製造装置
811,2021,3021 第1発熱体
821 第2発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融押出成形法によって熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを製造する樹脂フィルム製造装置であって、
溶融状態の熱可塑性樹脂をフィルム状に押出して製膜する製膜手段と、
第1ロールおよび第2ロールからなり、前記第1ロールの回転軸と前記第2ロールの回転軸とが平行で、前記第1ロールの外周面と前記第2ロールの外周面とが当接するように配置される成形手段であって、前記製膜手段より押出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を、前記第1ロールの外周面と前記第2ロールの外周面とで挟み込むことで、フィルム状の熱可塑性樹脂の表面形状を予め定める形状に成形する成形手段と、
前記第1ロールの外周面を加熱する加熱手段であって、前記第1ロールの回転軸および前記第2ロールの回転軸を含む仮想平面に対して前記製膜手段が配置される側の領域において、前記第1ロールに対向して設けられる第1加熱部と、前記仮想平面に対して前記製膜手段が配置される側とは反対側の領域において、前記第1ロールに対向して設けられる第2加熱部とを有する加熱手段と、を備えることを特徴とする樹脂フィルム製造装置。
【請求項2】
前記第1加熱部は、前記第1ロールの軸線方向全体にわたって、該軸線方向に沿って予め定める間隔をあけて配列する複数の発熱体からなる発熱体群を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム製造装置。
【請求項3】
前記発熱体群において複数の発熱体は、前記第1ロールの周方向から見たときに、軸線方向に隣接するもの同士で一部が重なるように、千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の樹脂フィルム製造装置。
【請求項4】
前記第1加熱部には、前記第1ロールの周方向に複数列の前記発熱体群が形成されることを特徴とする請求項2または3に記載の樹脂フィルム製造装置。
【請求項5】
前記第2加熱部は、前記仮想平面に垂直な方向において、前記第1ロールの直下に設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の樹脂フィルム製造装置。
【請求項6】
溶融押出成形法によって熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを製造する方法であって、
製膜手段によって溶融状態の熱可塑性樹脂をフィルム状に押出して製膜する製膜工程と、
前記製膜手段より押出されたフィルム状の熱可塑性樹脂を、第1ロールおよび第2ロールからなる成形手段によって成形する成形工程であって、前記第1ロールの外周面と前記第2ロールの外周面とで挟み込むことで、フィルム状の熱可塑性樹脂の表面形状を予め定める形状に成形する成形工程と、を含み、
前記成形工程において、前記第1ロールの外周面は、加熱手段によって加熱され、
前記加熱手段は、前記第1ロールの回転軸および前記第2ロールの回転軸を含む仮想平面に対して前記製膜手段が配置される側の領域において、前記第1ロールに対向して設けられる第1加熱部と、前記仮想平面に対して前記製膜手段が配置される側とは反対側の領域において、前記第1ロールに対向して設けられる第2加熱部とを有することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
光学特性が付与された樹脂フィルムであって、
製造時の幅方向に等間隔で複数点測定し、これを1つの測定列として、流れ方向に等間隔で複数列測定したときのヘーズの標準偏差が2.0以下であることを特徴とする樹脂フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−6401(P2013−6401A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142363(P2011−142363)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】