説明

樹脂フィルム

【課題】例えば導光板や光ファイバーシートのように光をフィルムの側面から入射して使用する用途では、入射面の表面粗さが大きいと、光の散乱や反射による損失が大きくなり、光の利用効率が低下するフィルムについて、断面の算術平均粗さを100nm以下にすることにより光散乱を抑制したフィルムを提供する。
【解決手段】厚み方向を含むフィルム断面1の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下である樹脂フィルム。更に、厚み方向を含むフィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さをRa(X)、Ra(Y)、Ra(Z)とし、これらRa(X)、Ra(Y)、Ra(Z)の範囲が、100nm以下である樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平滑な厚み方向を含むフィルム断面を持つ樹脂フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面の凹凸を平坦にする加工は産業上のあらゆる分野で行われており、代表的なものとしては、研磨法(特許文献1)やプラズマCVM法(特許文献2)によるシリコンウェハの表面平滑化や、溶液を用いた化学浸食による平滑化があげられる。しかし、これらの技術は主に金属などの硬い材料に対して行われており、高分子材料は対象になっていなかった。というのも、高分子材料の表面を平滑にするには上記の技術では困難であり、例えば研磨は表面粗さが大きくなるという問題があり、またプラズマCVM法では材料の変質や溶融、また化学エッチングでは溶解ムラによる表面粗さの不均一といった問題があった。
【0003】
しかし、導光板や光ファイバーシートといった光をフィルムの側面から入射して使用する用途では、入射面の表面粗さが大きいと、光の散乱や反射による損失が大きくなり、光の利用効率が低下するという問題があるため、入射面の平滑であることが求められている。通常、フィルム等の高分子材料を切り出す場合、金型での打ち抜きやブレードによる切削により、任意の形状や大きさに切り出されるが、これらの加工法で得られたフィルムの断面の算術平均粗さは数十μmとなる。この場合、例えば光ファイバーシートや導光板といった光を低損失で伝搬する用途に用いられるフィルムについては、光を断面より入射すると光の散乱が起こり、損失が大きくなる。その結果、入射面の光散乱による光利用効率の低下という問題があった。
【特許文献1】特開2004−296671号公報
【特許文献2】特開平06−168924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、例えば導光板や光ファイバーシートのように断面での光散乱が問題となるフィルムについて、断面の算術平均粗さを100nm以下にすることにより光散乱を抑制したフィルムに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は厚み方向を含むフィルム断面の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下であることを特徴とする樹脂フィルムについてである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フィルム断面での光散乱を押さえることによる光利用効率の高い導光板や光ファイバーシートを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の詳細を説明する。厚み方向を含むフィルム断面の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下であることを特徴とする樹脂フィルムであり、算術平均粗さ(Ra)とはJIS B0601−1994の規定による。ここで、樹脂フィルムとは、厚みにより区分されるフィルムではなく、厚みが3cm以下であり、かつ高分子材料を使用したものを表わすこととする。また、厚み方向を含むフィルム断面とは、溶融押出成型法、溶液流延法、カレンダー法などにより作製されたフィルムに関しては、フィルム長手方向と厚み方向よりなる断面もしくはフィルム幅方向と厚み方向よりなる断面を指し、その他射出成形等により作製されたフィルムに関しては、厚み方向を含む断面を指す。また、フィルム断面におけるフィルム断面厚みとはフィルム厚みを指し、フィルム断面幅とはフィルム断面厚み方向と直交する方向のフィルム断面の長さを指す。断面の算術平均粗さが100nm以下であると、光を入射したときの散乱が小さくなるため、光利用効率が高いフィルムを得ることができる。好ましくは60nm以下である。さらに好ましくは40nm以下である。このような場合、光の散乱が非常に小さくなり、入射した光をほぼ全てフィルム中に導くことが可能となる。
【0008】
また、本フィルムでは、厚み方向を含むフィルム断面の異なる3ヶ所の位置(X、Y、Z)における算術平均粗さをRa(X)、Ra(Y)、Ra(Z)とし、これらRa(X)、Ra(Y)、Ra(Z)の範囲が100nm以下であることが好ましい。ここで、異なる3ヶ所の位置(X、Y、Z)における算術平均粗さRa(X)、Ra(Y)、Ra(Z)はJIS B0601−1994の規定による。また、フィルム断面の異なる3ヶ所の位置の表面粗さとは、図1に示すように、フィルム断面厚み:2の3分の1の長さを1辺とする正方形の重心を、フィルム断面幅:3の4等分点においた場所における、その正方形で表される領域内の算術平均粗さのことであり、断面を垂直方向からみたときの、中央の位置をY:5、左隣りをX:4、右隣りをZ:6とする。Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z)が共に100nm以下であると、フィルム断面全体に渡り粗さムラのない均一な断面を得られることとなり、光を入射したときの導光ムラの少ないフィルムを得ることが可能となる。より好ましくは50nm以下である。
【0009】
また、本フィルムでは、厚み方向を含むフィルム断面の十点平均粗さ(Rz)が200nm以下であることが好ましい。ここで、十点平均粗さ(Rz)とはJIS B0601−1994の規定による。光を入射する際、入射面に複数の大きな凹凸が存在すると、入射角度の増加に伴う光の反射が増加し、光利用効率が減少する。Rzが200nm以下であると、光の散乱を押さえることが可能となる。より好ましくは100nm以下である。
【0010】
樹脂フィルムの断面を平滑にする手法としては、マイクロブレードを回転させることにより断面を平滑に切り出す方法や、樹脂の融点近傍まで加熱した鏡面基板にフィルム断面を押し当てることによる鏡面転写法が知られている。しかし、前者の技術では、加工した断面に回転したブレードの加工スジが残るためにRaが100nm程度の表面粗さを得るのが困難である。また、後者については、断面を押し当てた際、溶融した樹脂がバリとなってフィルムに残ること、鏡面基板に付着した樹脂汚れによるRaの増加という問題があった。
【0011】
また、その他の平滑面を得るための手法として、研磨紙を用いて断面を研磨するという手法があげられる。しかし、従来の手法では、これらのケースではシリコン基板や光ファイバフェルールといった硬質素材を研磨可能であるもの、樹脂フィルムについては、加工面のRaを均一に100nm以下に加工するのは困難であり、さらに厚さ数十μm程度のフィルムを幅数cmに渡り均一に研磨することが困難であるという問題があった。
【0012】
本フィルムを作製するための方法としては、研磨による加工を用いる。その方法としては、図2に示すように曲げ弾性率3000MPa以上の支持板:7を用いて樹脂フィルムを両側から挟み、治具:8に固定する。治具への固定は固定ビス:9を締めて金属板:10で挟み込むことにより行う。固定ビスの数は、フィルム幅によるが、1cm毎に1ヶ所の間隔で設けることが好ましい。また、治具:8にフィルムを固定する際、各ビスの締め付ける強さが異なると研磨ムラが発生するため、トルクレンチ等を用いて全てのビスを均一な力で締め付ける必要がある。また、フィルムは、図3に示すように研磨するフィルム断面および支持板が突出するように固定する。このときの固定治具からフィルム断面までの距離:11は、研磨するフィルムおよび支持板の曲がりを防ぐという観点から、10mm以下が好ましい。より好ましくは5mm以下である。固定治具からフィルム断面までの距離が5mm以下であると、研磨板に接触させたときの研磨するフィルムおよび支持板の曲がりが微小となり、研磨ムラを低減することができる。また、同様の観点から、指示板の曲げ弾性率は3000MPa以上が好ましい。より好ましくは5000MPa以上である。5000MPa以上であると、研磨板に接触させたときの研磨するフィルムおよび支持板の曲がりが微小となり、研磨ムラを低減することができる。さらに、支持板の材質は、研磨板の摩耗を低減するという観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0013】
このように治具に固定したフィルムの断面を、回転する研磨板に押さえつけることによりフィルム断面の研磨を行う。これを図4に示す。研磨板は円形のものを用い、その半径(r):12は研磨する断面幅の1.5倍以上のものを使用する。研磨板の回転は、研磨断面の中心位置(P’):13を中心に研磨板が自転する運動と、点P’が点P”:14を中心とする半径r’:15の円周上を旋回する運動を同時に行うこととする。ここで、r’=r/4とする。この異なる2種類の回転運動を組み合わせることにより、断面のRaが100nmの樹脂フィルムを得ることが可能となる。研磨板の自転速度は3rpm以上10rpm以下が好ましい。10rpmより大きくなると、フィルムの研磨ムラが大きくなり、同様に3rpmより小さいと研磨ムラが大きくなる。また、研磨板の旋回速度は500rpm以下が好ましい。500rpmより大きくなると、フィルム断面と研磨板の摩擦が増加し、研磨焼けによるフィルム断面の変形・変性が発生する。また、Raもばらつきが大きくなり安定しない。より好ましくは300rpm以下である。300rpmであると、研磨焼けが発生することなく、またRaのばらつきも少なくなる。
【0014】
研磨するフィルム断面の位置は、図4に示すようにフィルム断面の中心位置(P):16が、P’よりr”:17だけ離れた位置となり、かつフィルム断面幅の方向と直線PP’P”が直交するように配置した状態から、研磨を開始する。ここで、r”=r/2とする。複数の樹脂フィルムの研磨を同時に行う場合は、どれか一つの樹脂フィルムに対する点PがP’P”上に位置するように配置し、研磨を開始する。
【0015】
フィルム断面には0.5MPa以下の圧力が加わるようにすることが好ましい。0.5MPa以上の圧力が加わると、研磨板にフィルム断面が引っかかり、研磨板あるいは固定治具が振動することにより表面の研磨ムラが発生するためである。より好ましくは0.3MPa以下であり、この場合、研磨板とフィルム断面の引っかかりはほぼ解消することができる。
【0016】
研磨に用いる研磨材の粒度は、#8000以上である必要がある。#8000以下であると、断面のRaが100nm以上となり、また深い研磨傷が生じ、Rz、Ry共に大きな値となるためである。また、研磨は#8000以上の研磨板のみで行うのではなく、研磨時間の短縮と研磨板の摩耗による研磨ムラの発生を防ぐという観点から、粒度の粗い研磨材から細かい研磨材へと段階的に研磨を行い、最終的に#8000以上で行うことが好ましい。その際、研磨の段階数は特に限定しないが、研磨工程の簡略化の観点から、4段階の研磨を行うことが好ましい。また、各段階の研磨材の粒度は、最終的に用いる研磨材の粒度を研磨段階数で割った数に各段階の数を掛けた粒度に近いものを用いることが好ましい。
【0017】
本達成方法において、研磨に用いる砥粒には酸化アルミニウム(ホワイトアランダム:WA)、グリーンカーボランダム(GC)、Cr(K)、Fe(ROI)、酸化セリウム(CeO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、シリコン(SiO)といったものが挙げられる。研磨に用いる砥粒の材質は限定しないが、樹脂への傷つけ易さなどの観点から、酸化アルミニウムを用いるのが好ましい。また、本手法では研磨剤は不要であり、純水を用いて研磨することが可能であるが、直径100nm以下の無機粒子を含む研磨剤を用いて行うとより均一に断面を研磨することが可能である。
【0018】
また、研磨断面の幅は、研磨ムラを抑えるという観点から、2m以下であることが好ましい。2mより長くなると、研磨ムラが大きくなり、断面粗さのばらつきが大きくなる。より好ましくは1mである。さらに好ましくは50cm以下である。研磨断面の幅が50cm以下のフィルムでは、Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z)の値がほぼ一致する断面を達成することが可能となる。
【0019】
また、本フィルムの厚みは3000μm以下が好ましい。3000μmより大きくなると、フィルムの研磨ムラが大きくなる。より好ましくは2000μm以下であり、さらに好ましくは1000μm以下である。1000μm以下であると、前面に渡り均一なフィルムを作製可能となる。
【0020】
以上のフィルムは、フィルム厚み方向もしくは幅方向に2層以上積層されているフィルムであってもよい。この場合、厚み方向を含むフィルム断面のRaは断面全体のRaを指し、各層のRaではない。本達成方法では、研磨板との摩擦による層間剥離を押さえることが可能であるため、厚み方向を含むフィルム断面のRaが100nm以下の樹脂フィルムを得ることが可能である。
また、積層される樹脂の屈折率は異なっていても良い。積層する樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(屈折率nが1.49、以下、屈折率はn)およびメチルメタクリレートを主成分とするコポリマー(n=1.47〜1.50)、ポリスチレン(n=1.58)およびスチレンを主成分とするコポリマー(n=1.50〜1.58)、脂環式オレフィン(n=1.51〜1.53)、スチレンアクリロニトリルコポリマー(n=1.56)、ポリ4−メチルペンテン1(n=1.46)、エチレン/酢ビコポリマー(n=1,46〜1.50)、ポリカーボネート(n=1.50〜1.57)、ポリエチレンテレフタレート(n=1.58〜1.68)、ポリエチレンテレフタレートコポリマー(n=1.54〜1.64)、ポリエチレンナフタレート(n=1.65〜1.73)、ポリクロロスチレン(n=1.61)、ポリ塩化ビニリデン(n=1.63)、ポリ酢酸ビニル(n=1.47)、メチルメタククリレート/スチレン、ビニルトルエン又はα−メチルスチレン/無水マレイン酸三元コポリマー又は四元コポリマー(n=1.50〜1.58)、ポリジメチルシロキサン(n=1.40)、ポリアセタール(n=1.48)、ポリイミド(n=1.56〜1.60)、フッ化ポリイミド(n=1.51〜1.57)、ポリテトラフルオロエチレン(n=1.35)、ポリフッ化ビニリデン(n=1.42)、ポリトリフルオロエチレン(n=1.40)、パーフルオロプロピレン(n=1.34)、およびこれらフッ化エチレンの二元系、又は三元系コポリマー(n=1.35〜1.40)、ポリフッ化ビニリデンとポリメチルメタクリレート・ブレンドポリマー(n=1.42〜1.46)、CF=CF−O−(CF)x−CF=CFモノマーの重合体(n=1.34)およびフッ化エチレンのコポリマー(n=1.31〜1.34)、CF=CF−O−(CF)−0−CF=CFモノマーの重合体(n=1.31)およびフッ化エチレンのコポリマー(n=1.31〜1.34)、一般式CH=C(CH)COORfで表わされるフッ化メタクリレートを主成分とするコポリマーで、基Rfが(CH)n(CFHであるコポリマー(n=1.37〜1.42)、Rfが(CH(CFFのもの(n=1.37〜1.40)、RfがCH・(CFのもの(n=1.38)、RfがC(CFのもの(n=1.36)、RfがCHCFCHFCFのもの(n=1.40)、RfがCHCF(CFのもの(n=1.37)、およびこれらのフッ化メタクリレートのコポリマー(n=1.36〜1.40)、およびこれらのフッ化メタクリレートとメチルメタクリレートコポリマー(n=1.37〜1.43)、一般式CH2=CH・COOR’fで表わされるフッ化アクリレートを主成分とするポリマー、但しRf’が(CH(CFFのもの(n=1.37〜1.40)、Rf’が(CH(CFHのもの(n=1.37〜1.41)、Rf’がCHCFCHF・CFのもの(n=1.41)、RfがCH(CHのもの(n=1.38)、およびこれらフッ化アクリレートコポリマー(n=1.36〜1.41)、およびこれらフッ化アクリレートと前記フッ化メタクリレートコポリマー(n=1.36〜1.41)、およびこれらフッ化アクリレートとフッ化メタクリレートとメチルメクレートコポリマー(n=1.37〜1.43)、一般式CH=CF・COOR″fで表わされる2−フルオロアクリレートを主成分とするポリマー、およびそのコポリマー(n=1.37〜1.42)(但し、式中R”fはCH、(CH(CFF、(CH(CFH、CHCFCHFCF、C(CFを示す)などがある。このなかで、より低いRaが得られるという観点から、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンおよびスチレンを主成分とするコポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、メチルメタククリレート/スチレン、脂環式オレフィンが好ましい。
【0021】
以上のフィルムは、導光板として用いてもよい。導光板の用途としては、ノートパソコンや携帯電話、LCDディスプレイなどの液晶ディスプレイのサイドライト方式に用いられるものが挙げられる。その達成方法としては、例えば金型に光硬化性樹脂を流しこれに光を照射するといった手法や、射出成形法により作製した基板を目的の大きさに加工し、この板の光を入射する面を先述の達成方法を用いて加工後、表面の処理を施すというものである。
【0022】
また、以上のフィルムは、光導波路フィルムとして用いてもよい。光導波路フィルムとは、光伝送に用いられる配線材料であり、厚み1mm以下のフィルムの内部に、光を通すコア材料を埋め込んだ構造よりなるフィルムである。その達成方法としては、直接露光法やRIE法、フォトブリーチング法、金型プレス法といった代表的な手法を用いて作製した光導波路フィルムの端面を、先述の達成方法を用いて加工するといったものである。
【0023】
また、以上のフィルムは、コアとなる熱可塑性樹脂とクラッドとなる熱可塑性樹脂を少なくとも含んでなるフィルムであって、コアがフィルム長手方向に延在しながらフィルム幅方向に配列した構造をとり、かつコアがクラッドに周囲を囲まれた断面形状を有することを特徴とする光導波路フィルムであってもよい。このような光導波路フィルムの断面図を図5に示す。コアとなる熱可塑性樹脂Aからなる分散体(コア):18は、フィルム幅方向:21の方向に少なくとも5個以上配列し、また、各々のコアはフィルム長手方向:22の方向に伸びている構造を有する。コア数は、数が多ければ多いほど、多くの情報を伝送できる観点から、32個以上が好ましく、より好ましくは64個以上、さらに好ましくは、128個以上である。その数は、積層装置のコアとクラッド樹脂の積層数を調整することにより、容易に任意の数を達成することができる。コアの数が多いほど、より多チャンネルでの通信が可能な高密度配線となり、効率の高い光伝送が可能となる。コア数の上限については特に限定するものではないが、実用上の特性を維持するためには、2000個以下であることが好ましい。また、その長さは、短〜中距離用通信用途に用いる観点から、少なくとも1cm以上であることが好ましい。また、必要な長さのみ取り出して利用できるように、数十〜数百m以上の長さでロール状に巻かれていることがより好ましい。
【0024】
一方、図5のフィルム断面における海島構造の海である熱可塑性樹脂Bからなるクラッド:19は、分散体である各々のコアの周りを囲い、フィルム状の外形を形成するものである。なお、フィルム厚み方向:20とフィルム幅方向:21の断面内のコア形状は、円、楕円、四角、台形などのいかなる幾何学図形でも良い。しかし、情報通信用途に用いる場合は、コア形状に依存したモード分散が発生する観点から、できるだけ対称性が良い図形であることが好ましく、最も好ましい形状は、円形である。対称性には、線対称、転対称などがある。コア径は、小さ過ぎると光量が少なくなる観点から10μm以上が好ましく、一方、大きすぎるとコア内に光を閉じ込めることが難しくなる観点から、5mm以下が好ましい。より好ましくは、20μm以上1mm以下である。特に、情報通信用途に用いる場合は、マルチモード対応の観点から20μm以上100μm以下であることが好ましい。ここでのコア径とは、図6に示したように、フィルム厚み方向の2本の平行線とコアが接する間隔:23とフィルム幅方向の2本の平行線とコアが接する間隔:24の長さの平均値である。
【0025】
この光導波路フィルムは、溶融押出プロセスを用いて幅方向に積層したフィルムとして製膜されることにより得ることができる。つまり、2台の押出機を用いて、コアとなる熱可塑性樹脂Aとクラッドとなる熱可塑性樹脂Bを押出し、これを、積層装置を用いて交互に積層し、さらにこの幅方向に積層されたポリマー流を厚み方向の上下から熱可塑性樹脂Bで挟み込み、ダイスリット部から溶融状態でシート上に押し出し、その後キャスティングドラムにて固化することで、光導波路フィルムが得られる。ここで、幅方向に交互に積層とは、2種類の熱可塑性樹脂よりなるA層とB層がフィルム幅方向にABABAB・・・と交互に並んでいる構造をさしている。両端の層が同じポリマーよりなるため、合計の総数は奇数となる。
【0026】
押出機には、単軸押出機と二軸押出機のどちらを用いても良い。光導波路フィルムに用いる熱可塑性樹脂の屈折率を調整する手段として、2種以上の異なる屈折率の熱可塑性樹脂をナノレベルで相溶(アロイ)化することにより屈折率の調整を可能とする混練化技術がある。このような場合は、スクリュー構成が非常に重要である。例えば、アロイ化を行う際は、単軸スクリューでは、ダルメージタイプ、マドックスタイプが好ましく、二軸スクリューでは、パドルの組合せにより練りを強くしたスクリュー構成にすることが好ましい。一方、1台の押出機から1種の熱可塑性樹脂を押出す場合は、余り混練が強すぎると、光損失の原因となる異物が発生するため、フルフライトスクリューを用いた単軸押出機が好ましい。そのスクリューのL/Dは、28以下であることが好ましく、より好ましくは、24以下である。また、スクリューの圧縮比は、3以下であることが好ましく、より好ましくは、2.5以下である。また、光損失の原因となる異物を除去する方法としては、真空ベント押出や濾過フィルターなどの公知の技術を用いることが効果的である。真空ベントの圧力は、差圧で1〜300mmHg程度が好ましい。また、濾過フィルターとしては、溶融押出中にFSS(Fiber Sintered Stereo)リーフディスクフィルタを用いことにより、高精度濾過することができる。異物の大きさや量などの発生状態、及び樹脂粘度による濾圧に依存したフィルターの濾過精度を適宜変更することが好ましいが、本達成方法においては25μm以下の濾過精度フィルターを用いることが好ましい。より好ましくは、10μm以下、さらに好ましくは5μmである。また、その際の押出機先端の樹脂圧は、樹脂漏れを少なくする観点から、20MPa以下が好ましく、よりこの好ましくは、10MPa以下である。
本フィルムを作製するための積層装置としては、高い積層精度を達成することが可能であるという点から、コームタイプフィードブロックを用いることが好ましい。このコームタイプフィードブロックの詳細は、特開2005−352237に記載されている。
【0027】
該コームタイプフィードブロックを用いた本光導波路フィルムの製造方法を説明する。2台の押出機を用いて、図7に示すようなフィードブロック:27の両側に存在するマニホールド:25に、コアとなる熱可塑性樹脂Aとクラッドとなる熱可塑性樹脂Bを送る。マニホールド:25の間に挟まれたスリット板:26の細孔部にそれぞれの樹脂が交互に流入し、これが合流することで幅方向に積層した構造を得ることができる。スリット板:26の各スリットの長さおよび間隙を調整することにより、各層ごとの吐出量を調節することが可能となる。具体的にスリット板:26の細孔部に流入する樹脂の吐出量と圧力損失の関係は、下記(3)式で表されることが知られている。
ΔP=12・L・μ/h/t3・Q ・・・ (3)式
ΔP:圧力損失
L :細孔部の長さ
μ :樹脂粘度
t :細孔部の間隙
h :細孔部の奥行き
Q :吐出量
すなわち、圧力損失を一定とすることで容易に流量を変化させることができるため、コア径、クラッド径を任意の径へ調整することができるのである。一方、コア数については、スリット板:26の細孔部の数を調整することに達成することができる。
本光導波路フィルムでは、スリット板の中央部とスリット板の壁面付近との圧力損失の違いより生じるコア断面積の差をなくすため、スリット長さを微調整することにより、断面積が均一なコアが連続的に並んでいる構造を達成することができる。つまり、図8のように、スリット板の中央部からスリット板の壁面付近に向かうにつれて、スリット長を徐々に短くすることにより、断面積が均一なコアを得ている。中央部スリット:28の先端と端部スリット:29の先端がなす角度:30は3°以上が好ましい。より好ましくは5°以上である。スリット数が偶数の場合は、中央に位置する二つのスリットと、そのスリットに対応する再壁面側にあるスリットとのなす角度とする。熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの粘度により角度の最適値は変化するが、5°以上の傾斜があると、おおよその樹脂に対して断面積が均一なコアを得ることができる。また、このスリット長の傾斜は直線的でなくてもよく、例えば複数段傾斜構造やあるいは曲線傾斜構造であってもよい。複数段傾斜構造とは傾斜角度が変化する点が存在するような構造である。また、曲線傾斜構造とはスリット長の傾斜が曲線を描く構造であり、例えば2次関数的にスリット長が変化する構造である。また、スリット細孔部の間隙を徐々に大きくすることで、断面積が均一なコアを得ることも可能である。
また、該コームタイプフィードブロック:27を用いるに当たり、熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの加熱ムラより生じる積層乱れを低減するために、マニホールド:25に接続する短管内にスタティックミキサーを入れるのが好ましい。スタティックミキサーを入れることにより、熱可塑性樹脂の加熱ムラは解消され、精密な幅方向積層が可能となる。
【0028】
次に、図9のように、積層構造となった熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂B溶融積層体は、マルチマニホールドダイ:31へ導かれる。ここで、本光導波路フィルムの製造工程においては、2種3層複合型(α/β/α構造)のダイを用いることで、熱可塑性樹脂B/幅方向積層体/熱可塑性樹脂Bと積層された溶融体を得ている。その後、マルチマニホールドダイ:31よりシート状に押し出された溶融積層体を、キャスティングドラムなどを用いて冷却個化することで、コアが長手方向に延在し、クラッドとなる熱可塑性樹脂Bに周りを囲まれたコアとなる熱可塑性樹脂Aからなる分散体(コア)がフィルム長手方向に延在しながらフィルム幅方向に配列した構造である光導波路フィルムが得られる
ここで、コア形状を崩さないようにするという観点から、コームタイプフィードブロック:27におけるポリマー流の幅方向圧縮比は、0.5以上が好ましい。幅方向圧縮比が0.5より小さくなると、幅方向の圧縮が大きくなることでコア形状が大きく乱れ、精密な積層構造を保つことができない。より好ましくは0.7以上である。ここで、ポリマー流の圧縮比とは、コームタイプフィードブロック:27出口の幅:32をスリット板両壁面の幅:34で割った値である。また、同様の観点から、ダイの拡幅比は0.8以上1.2以下が好ましい。より好ましくは、0.9以上1.1以下である。ここで、ダイの拡幅比とは、ダイのポリマー吐出部の幅:35をダイのポリマー流入部(コームタイプフィードブロック出口の幅):32で除した値である。
また、同様の観点から、本光導波路フィルム製造する際、コームタイプフィードブロック:27とマルチマニホールドダイ:31の間に短管を入れずに直接連結することが好ましい。直接連結することで、ポリマー合流部からポリマー吐出口までの距離が短くなり、ポリマー合流後のコア形状の乱れを防ぐことができる。コア形状の乱れを防ぐためには、ポリマー流入部からダイ吐出口までの距離:36を、最も長いスリットのスリット長:35で除した値が20以下であることが好ましい。20以上であると、ポリマーが流路を通過する時間が長くなるため、積層乱れが生じやすくなり、コア形状が乱れる。
【0029】
また、得られるフィルム表面の平面性を保つために、冷却個化の際は、静電印加法によりキャスティングドラム上にシートを密着させるのが好ましい。静電印加法とは、タングステンなどのワイヤーに3〜10kV程度の電圧をかけることにより、電界を発生させて、溶融状態のシートをキャスティングドラムに静電密着させて、冷却固化されたシート得る方法のことである。その他、公知の表面粗さが0.4〜0.2SレベルのHCrメッキのタッチロールによるカレンダリングキャストやエアチャンバーによるキャストを行っても良い。
【実施例】
【0030】
本発明に使用した物性値の評価方法を記載する。
(1)フィルム断面の算術平均粗さの測定法
加工を施した断面について、レーザー顕微鏡(LEXT OLS3500 島津製作所社製)を用いて算術平均粗さ(Ra)の測定を行った。対物レンズは、フィルムの断面厚み方向全域に渡り画面内に入る倍率のものを用いた。フィルム厚み1200μm以上のフィルムについては×5対物レンズ(OLYMPUS社製 MPLFLN5x)、1200μm未満のフィルムについては×20倍対物レンズ(OLYMPUS社製 MPLFLN20x)を用いた。測定は、フィルム断面幅を15等分する14本の線と、フィルム断面厚みを2等分する1本の線がそれぞれ交わる14個の点について、各点を中心とする一辺がフィルム断面厚みと等しい正方形のRaを求め、この値を平均したものをRaとした。
(2)フィルム断面の異なる3カ所の位置での算術平均粗さの測定法
フィルム断面幅方向の4等分線とフィルム断面厚み方向の2等分線がそれぞれ交わる点を中心とする、1辺の長さがフィルム断面厚みの3分の1の正方形のRaを求めた。
(3)フィルム断面の十点平均粗さの測定法
(1)と同様の手法を用い、各点におけるフィル断面の十点平均粗さ(Rz)を求め、これを平均したものをRzとした。
【0031】
(実施例1)
加工する樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(厚み600μm、幅30cm)を用いた。カッターナイフを用いてフィルムを切り出し、これをポリカーボネート板(弾性率5500MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を3mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は10rpm、旋回速度は300rpm、また研磨圧力は0.25MPaで行い、また研磨剤には粒径100nmの酸化アルミニウムを分散させた水を使用した。研磨は4段階で行い、まず粒度#2000の研磨材を用いて行い、次に#4000、#6000と行い、最終的に#8000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ40nmとなり、非常に平滑な面を達成していることがわかった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=50nm、Ra(Y)=35nm、Ra(Z)=30nmとなり、研磨ムラのない平滑な面を達成していることがわかった。また、フィルム断面のRzを測定したところ40nmとなり、深い傷のない面を達成していることがわかった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0032】
(実施例2)
加工する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートの両面にアクリル系の塗材を塗布したフィルム(厚み2000μm、幅195cm)を用いた。金型による打ち抜きにより得られたフィルムについて、これをポリカーボネート板(弾性率5000MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を10mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は6rpm、旋回速度は270rpm、また研磨圧力は0.4MPaで行い、また研磨剤には粒径200nmの酸化クロムを分散させた水を使用した。研磨は4段階で行い、まず#2000の研磨材を用いて行い、次に#4000、#6000と行い、最終的に#8000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ98nmとなり、平滑な面を達成していることがわかった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=102nm、Ra(Y)=80nm、Ra(Z)=99nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ210nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0033】
(実施例3)
加工する樹脂としては、ポリメチルメタクリレートの両面に屈折率の異なる樹脂を塗布したフィルム(厚み3000μm、幅200cm)を用いた。金型による打ち抜きにより得られたフィルムについて、これをアクリル板(弾性率3500MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を5mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は10rpm、旋回速度は350rpm、また研磨圧力は0.3MPaで行い、また研磨剤には粒径100nmの酸化ジルコニウムを分散させた水を使用した。研磨は5段階で行い、まず#1000の研磨材を用いて行い、次に#2000、#4000、#6000と行い、最終的に#8000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ89nmとなり、平滑な面を達成していることがわかった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=77nm、Ra(Y)=120nm、Ra(Z)=103nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ150nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0034】
(実施例4)
加工する樹脂としては、ポリカーボネート(厚み1990μm、幅80cm)を用いた。ブレードによる切り出しにより得られたフィルムについて、これをポリカーボネート板(弾性率3000MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を8mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は9rpm、旋回速度は480rpm、また研磨圧力は0.35MPaで行い、また研磨剤には水を使用した。研磨は5段階で行い、まず#1000の研磨材を用いて行い、次に#2000、#4000、#6000と行い、最終的に#8000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ93nmとなり、平滑な面を達成していることがわかった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=110nm、Ra(Y)=118nm、Ra(Z)=65nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ100nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0035】
(実施例5)
加工する樹脂としては、スチレン共重合ポリメチルメタクリレート(厚み1050μm、幅158cm)を用いた。ブレードによる切り出しにより得られたフィルムについて、これをポリエチレンテレフタレート板(弾性率5500MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を7mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は8rpm、旋回速度は500rpm、また研磨圧力は0.3MPaで行い、また研磨剤には研磨剤には粒径100nmの酸化アルミニウムを分散させた水を使用した。研磨は4段階で行い、まず#2500の研磨材を用いて行い、次に#6000、#8000と行い、最終的に#10000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ50nmとなり、平滑な面を達成していることがわかった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=125nm、Ra(Y)=98nm、Ra(Z)=50nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ98nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0036】
(実施例6)
加工する樹脂としては、コアとなる熱可塑性樹脂Aであるポリエチレンテレフタレート(3000poise/270℃)、およびクラッドとなる熱可塑性樹脂Bとしてポリプロピレン(1000poise/270℃)が幅方向に交互に積層された光導波路フィルム(厚み1000μm、幅15cm)を用いた。熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれの単軸押出機にて270℃で溶融させ、濾過精度5μmのFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A組成物/熱可塑性樹脂B組成物=3.3/1になるように計量しながら、スリット長の傾斜角度が3°のスリット板を用いて101層のコームタイプのフィードブロック(幅方向圧縮比0.8)にて合流させて、フィルム幅方向に交互に積層された積層体とした。その内訳は、熱可塑性樹脂Aが51層、熱可塑性樹脂Bが50層からなる幅方向に交互に積層された周期構造を有する積層体であった。さらに、3台目の単軸押出機から、250℃で溶融したクラッドとなる熱可塑性樹脂Bが、フィルム厚み方向の最外層部にくるように、ギアポンプを用いて、積層体との吐出比が10/1となるようにマルチマニホールドダイ部(拡幅比1.0、熱可塑性樹脂B/101層積層体/熱可塑性樹脂B=1/20/1)で合流させて、厚み方向上下がクラッドに覆われたフィルム幅方向積層体とした。また、本装置構成におけるスリット流入口からダイ吐出口までの距離の比は7とした。その後、ワイヤーで9kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸シートである光導波路フィルムを得た。このフィルムをカッターナイフを用いてフィルムを切り出し、これをアクリル板(弾性率3500MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を2mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は7rpm、旋回速度は280rpm、また研磨圧力は0.5MPaで行い、また研磨剤には研磨剤には粒径100nmのFe(ROI)を分散させた水を使用した。研磨は8段階で行い、まず#100の研磨材を用いて行い、次に#240、#500、#1000、#2000手、#4000、#6000と行い、最終的に#8000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ90nmとなり、平滑な面を達成していることがわかった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=108nm、Ra(Y)=46nm、Ra(Z)=111nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ155nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0037】
(実施例7)
加工する樹脂としては、フィルム厚み方向にポリメチルメタクリレートとポリエチレンナフタレートが交互に積層されたフィルム(厚み65μm、幅100cm)を用いた。カッターナイフを用いてフィルムを切り出し、これをポリカーボネート板(弾性率6000MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を3mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は8rpm、旋回速度は200rpm、また研磨圧力は0.45MPaで行い、また研磨剤には研磨剤には粒径50nmの酸化アルミニウムを分散させた水を使用した。研磨は4段階で行い、まず#2000の研磨板を用いて行い、次に#4000、#6000と行い、最終的に#8000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ48nmとなり、平滑な面を達成していることがわかった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=98nm、Ra(Y)=50nm、Ra(Z)=104nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ120nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0038】
(実施例8)
加工する樹脂としては、フィルム両面にフッ素系の塗材を塗布したフィルム(厚み1800μm、幅98cm)を用いた。金型による打ち抜きにより得られたフィルムについて、これをポリエチレンテレフタレート板(弾性率3000MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を6mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は3rpm、旋回速度は320rpm、また研磨圧力は0.4MPaで行い、また研磨剤には水を使用した。研磨は4段階で行い、まず#2500の研磨材を用いて行い、次に#6000、#8000と行い、最終的に#10000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ89nmとなり、平滑な面を達成していることがわかった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=80nm、Ra(Y)=75nm、Ra(Z)=136nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ150nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0039】
(実施例9)
加工する樹脂としては、ポリ乳酸(厚み2980μm、幅50cm)を用いた。金型による打ち抜きにより得られたフィルムについて、これをポリカーボネート板(弾性率5200MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を6mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は5rpm、旋回速度は350rpm、また研磨圧力は0.25MPaで行い、また研磨剤には水を使用した。研磨は4段階で行い、まず#2000の研磨板を用いて行い、次に#4000、#6000と行い、最終的に#8000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ66nmとなり、平滑な面を達成していることがわかった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=49nm、Ra(Y)=78nm、Ra(Z)=69nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ207nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
加工する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートの両面にポリメチルメタクリレートを貼り合わせたフィルム(厚み3050μm、幅180cm)を用いた。金型による打ち抜きにより得られたフィルムについて、これをポリプロピレン板(弾性率2000MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を5mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は1rpm、旋回速度は200rpm、また研磨圧力は0.5MPaで行い、また研磨剤には水を使用した。研磨は2段階で行い、まず#6000の研磨材を用いて行い、次に#10000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ145nmであった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=155nm、Ra(Y)=203nm、Ra(Z)=288nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ190nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0041】
(比較例2)
加工する樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(厚み900μm、幅120cm)を用いた。金型による打ち抜きにより得られたフィルムについて、これをアクリル板(弾性率3500MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を15mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は5rpm、旋回速度は450rpm、また研磨圧力は0.5MPaで行い、また研磨剤には水を使用した。研磨は4段階で行い、まず#1000の研磨材を用いて行い、次に#2000、#4000と行い、最終的に#6000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ303nmであった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=222nm、Ra(Y)=398nm、Ra(Z)=401nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ579nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0042】
(比較例3)
加工する樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(厚み3100μm、幅108cm)を用いた。金型による打ち抜きにより得られたフィルムについて、これをポリカーボネート板(弾性率6000MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を7mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は5rpm、旋回速度は700rpm、また研磨圧力は0.3MPaで行い、また研磨剤には粒径100nmの酸化ジルコニウムを分散させた水を使用した。研磨は4段階で行い、まず#2000の研磨材を用いて行い、次に#4000、#6000と行い、最終的に#8000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ224nmであった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=254nm、Ra(Y)=603nm、Ra(Z)=125nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ813nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0043】
(比較例4)
加工する樹脂としては、実施例6の熱可塑性樹脂Aとしてシクロオレフィンポリマー(2000poise/270℃)、熱可塑性樹Bとしてポリブチレンテレフタレート(1100poise/270℃)を使用し、幅方向301層積層用のフィードブロックを用い、そのスリット傾斜角度を5°、幅方向圧縮比0.3のものを用い、マルチマニホールドダイに拡幅比1.7のものを使用し、スリット流入口からダイ吐出口までの距離の比を20とした条件にて作製した光導波路フィルム(厚み1000μm、幅30cm)を用いた。カッターナイフを用いてフィルムを切り出し、これをポリカーボネート板(弾性率4000MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を8mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は20rpm、旋回速度は500rpm、また研磨圧力は0.6MPaで行い、また研磨剤には粒径100nmの酸化アルミニウムを分散させた水を使用した。研磨は4段階で行い、まず#2000の研磨材を用いて行い、次に#4000、#6000と行い、最終的に#8000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ324nmであった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=459nm、Ra(Y)=399nm、Ra(Z)=241nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ601nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0044】
(比較例5)
加工する樹脂としては、加工する樹脂としては、フィルム厚み方向にポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートが交互に積層されたフィルム(厚み200μm、幅55cm)を用いた。カッターナイフを用いてフィルムを切り出し、これをアクリル板(弾性率3500MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を12mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は9rpm、旋回速度は400rpm、また研磨圧力は0.25MPaで行い、また研磨剤には粒径200nmの酸化クロムを分散させた水を使用した。研磨は1段階で行い、#8000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ500nmであった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=601nm、Ra(Y)=464nm、Ra(Z)=556nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ811nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0045】
(比較例6)
加工する樹脂としては、加工する樹脂としては、ポリエチレンナフタレート。(厚み300μm、幅250cm)を用いた。カッターナイフを用いてフィルムを切り出し、これをポリエチレン板(弾性率2800MPa)で両側から挟み、固定治具からフィルム断面までの距離を10mmに設定し、研磨を行った。その際、研磨板の自転速度は16rpm、旋回速度は550rpm、また研磨圧力は0.6MPaで行い、また研磨剤には粒径50nmの酸化セリウムを分散させた水を使用した。研磨は4段階で行い、まず#2000の研磨材を用いて行い、次に#4000、##6000と行い、最終的に#8000の研磨材を用いて研磨を行った。得られたフィルム断面のRaを測定したところ466nmであった。また、フィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さ(Ra(X)、Ra(Y)、Ra(Z))を測定したところ、Ra(X)=424nm、Ra(Y)=613nm、Ra(Z)=605nmであり、また、フィルム断面のRzを測定したところ892nmであった。得られた樹脂フィルムの物性結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ディスプレイ部材、太陽電池部材、情報通信部材、装飾部材、照明部材などの用途に用いることができるが、特にサイドライト方式の導光板や、装置間通信や装置内通信などの短〜中・長距離用の光導波路に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】厚み方向を含むフィルム断面の説明
【図2】研磨治具へ固定した厚み方向を含むフィルム断面の説明
【図3】研磨治具へ固定した厚み方向を含むフィルム断面の説明その2
【図4】厚み方向を含むフィルム断面と研磨板の位置の説明
【図5】光導波路フィルムの断面図および全体図の例
【図6】コア径の説明
【図7】コームタイプフィードブロックによるマルチコア光導波路の製造方法の上面図
【図8】スリット板の正面図
【図9】コームタイプフィードブロックによるマルチコア光導波路の製造方法の正面図
【符号の説明】
【0050】
1 :厚み方向を含むフィルム断面
2 :フィルム断面厚み
3 :フィルム断面幅
4 :フィルム断面におけるX位置
5 :フィルム断面におけるY位置
6 :フィルム断面におけるZ位置
7 :支持板
8 :フィルム固定治具
9 :固定ビス
10:樹脂フィルムおよび支持板を固定するための金属板
11:固定治具からフィルム断面までの距離
12:研磨板の半径
13:研磨板の中心位置
14:研磨板の旋回運動の中心位置
15:研磨板が旋回運動を行う円の半径
16:フィルム断面の中心位置
17:研磨板の中心位置とフィルム断面の中心位置との距離
18:コアとなる熱可塑性樹脂Aからなる分散体(コア)
19:クラッドとなる熱可塑性樹脂B
20:フィルム厚み方向
21:フィルム幅方向
22:フィルム長手方向
23:フィルム幅方向の2本の平行線とコアが接する間隔
24:フィルム厚み方向の2本の平行線とコアが接する間隔
25:マニホールド
26:スリット板
27:積層装置(コームタイプフィードブロック)
28:スリット板の中央部に位置するスリット
29:スリット板の最端部に位置するスリット
30:中央スリットと端部スリットがなす角度
31:マルチマ二ホールドダイ
32:コームタイプフィードブロック出口の幅(マルチマニホールドダイのポリマー流入部の幅)
33:スリット板両壁面の幅
34:マルチマニホールドダイのポリマー吐出部の幅
35:最も距離の長いスリット部のスリット長
36:コームタイプフィードブロックのポリマー流入部からマルチマニホールドダイのポリマー吐出部までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向を含むフィルム断面の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下であることを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項2】
厚み方向を含むフィルム断面の異なる3カ所の位置(X、Y、Z)での算術平均粗さをRa(X)、Ra(Y)、Ra(Z)とし、これらRa(X)、Ra(Y)、Ra(Z)の範囲が、100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
フィルムの厚みが10μm以上3000μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
厚み方向を含むフィルム断面において、十点平均粗さ(Rz)が200nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
フィルム厚み方向もしくはフィルム幅方向に2層以上積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
屈折率の異なる2種類以上の樹脂を含んでなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂フィルムを用いた導光板。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂フィルムを用いた光導波路フィルム。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂フィルムであって、コアとなる熱可塑性樹脂とクラッドとなる熱可塑性樹脂を少なくとも含んでなるフィルムであって、コアがフィルム長手方向に延在しながらフィルム幅方向に配列した構造をとり、かつコアがクラッドに周囲を囲まれた断面形状を有することを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項10】
曲げ弾性率3000MPa以上の支持板を用いて樹脂フィルムを両側から挟むことで治具に固定し、粒度#8000以上の研磨剤を用いて研磨することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−191153(P2009−191153A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33016(P2008−33016)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】