説明

樹脂ペレット貯蔵装置及びその清掃方法

【課題】規格外品として処理すべき高異物樹脂ペレットをサイロ内で明確に区分けし、規格品の異物含有量を低減させるとともに、規格外品を別経路から排出し、下流設備の汚染を回避する。
【解決手段】樹脂ペレットを貯蔵するサイロ1と、前記サイロ1内の最下部近傍よりも上方に保有される低異物樹脂ペレットを、規格品として前記サイロ1外に排出する規格品排出経路2と、前記サイロ1内の最下部近傍に溜った高異物樹脂ペレットを、規格外品として前記サイロ1外に排出する規格外品排出経路3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレットが貯蔵されるサイロを備えた樹脂ペレット貯蔵装置及びその清掃方法に関し、特に、低異物を要求されるポリカーボネート系樹脂ペレット、シクロヘキサン系樹脂ペレットなどの貯蔵に好適な樹脂ペレット貯蔵装置及びその清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低異物を要求される樹脂ペレットが知られている。例えば、光ディスク基板の材料として用いられる低異物ポリカーボネート系樹脂ペレットや低異物シクロヘキサン系樹脂ペレットにあっては、サイロ、配管などの装置側から派生した金属粉、樹脂のペレット化工程(押出機から出たストランドを切断して粒状にする工程)で発生した樹脂切粉、樹脂ペレットを空送する際に配管壁との接触などにより発生する樹脂屑などの含有量を低減することが要求される。これは、当該樹脂ペレットで成形された光ディスク基板を有する光ディスクにおいて、レーザーが光ディスク上に記録された情報を読み出す際、又は光ディスク上に情報を書き込む際に、レーザーの透過を異物が阻害し、エラーを増加させるからである。特に、近年においては、光ディスクにおける記憶容量(記録密度)の増加に伴い、含有異物の低減に対する要求が益々厳しくなっており、樹脂ペレットに同伴する異物を除去する除去装置(例えば、特許文献1参照)、微粉末の発生が少ない光学用成形材料も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−270145号公報
【特許文献2】特開平11−342510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光ディスク基板等に用いられるポリカーボネート系樹脂やシクロヘキサン系樹脂に代表される低異物樹脂ペレットは、光ディスクの世界的需要の増加に伴って生産量が増加し、その生産設備も大型化してきている。例えば、樹脂ペレットを貯蔵するサイロも大型化しているが、この様なサイロでは、最初に排出(払い出し)される樹脂ペレットや、最後に排出される樹脂ペレットの異物含有量が増加する傾向がある。
【0004】
図6は、従来例に係る樹脂ペレット貯蔵装置の概略断面図、図7は、従来例に係る樹脂ペレット貯蔵装置から排出した樹脂ペレットの異物含有量を示すグラフ、図8は、従来例に係る樹脂ペレット貯蔵装置において樹脂ペレットが排出される様子を時系列的に示す説明図である。
図6に示すように、樹脂ペレット貯蔵装置として使用される一般的なサイロ100は、樹脂ペレットが投入される投入口101と、樹脂ペレットを貯溜する胴部102と、サイロ100の下部を中心に向けて絞り込むコーン部103と、サイロ100の最下部から樹脂ペレットを排出する排出口104と、サイロ100の最下部よりも上方に溜った樹脂ペレットをサンプルとして抽出するサンプル抽出口105、レベル計106とを備えて構成されている。
【0005】
図7は、上記のようなサイロ100に樹脂ペレットを充填した後、空になるまで樹脂ペレットを排出しながら測定した異物含有量の変化を示しており、サイロ100から最初に排出される樹脂ペレットや、最後に排出される樹脂ペレットにおいて、異物の含有量が増加する傾向がある。
これは静電気によりサイロ100の内壁に付着した切粉や樹脂屑の影響と考えられる。例えば、図8に示すように、サイロ100内の樹脂ペレットは、所謂、砂時計の砂の様に中心部から崩れて先に排出され、最後に外周部が崩れて排出されるため、最後に排出される樹脂ペレットは、サイロ100の内壁に付着した切粉や樹脂屑を伴い易くなる。特に、最後に排出される樹脂ペレットは、コーン部103の内壁を擦りながら落ちてくるので、最下部に溜まった金属粉、切粉、樹脂屑等の異物を多く伴って排出される。
【0006】
大型生産施設では、サイロの下流に、充填設備の様な別の設備が設けられており、サイロから最後に排出された樹脂ペレットが、含有する異物で下流の設備を汚染し、次のロットにおいて最初に排出される樹脂ペレットの異物含有量を増加させる可能性もある。
したがって、最後に排出される樹脂ペレットは、規格外品として別経路で処理されるべきである。規格外品として処理される樹脂ペレットの量は、サイロの大きさ、樹脂ペレットの規格、ロットの定義などにもよるが、ロットの区切りの境で特定バッチ数量(フレキシブルコンテナ、ローリー等の輸送容器容量)に満たないものを、他のロットと混合することなく、所謂、山欠け品として処理することができる。
【0007】
しかしながら、現実的には、規格品と規格外品の区分けが難しいため、規格外品として処理すべき樹脂ペレットが規格品に混入し、規格品の異物含有量を増加させる可能性がある。また、最後に排出される樹脂ペレットを、規格品とは別の経路で処理する場合、経路の切換え等が必要になり、設備管理が煩雑になるという問題がある。
なお、最後に排出される樹脂ペレットを規格外品としないために、アフターブレンドと呼ばれるサイロ内均一化装置を用いて、サイロ内の樹脂ペレットを均一化する場合があるが、アフターブレンドは、折角、静電気によりサイロの内壁に付着した切粉や樹脂屑を再び樹脂ペレットに混入させ、異物含有量を増加させる可能性があるので、光ディスク基板等の材料として用いられる低異物樹脂ペレットにおいては、相応しい解決手段とは言えない。
【0008】
ちなみに、特許文献1には、樹脂ペレットに同伴する微粉体を除去する除去装置が示されている。この除去装置は、樹脂ペレットが貯溜されるサイロからローリなどの輸送用容器に至る樹脂ペレット供給経路に介在し、除去装置内部に吹き込まれるイオン化気体によって、樹脂ペレットと微粉体の分離を促すとともに、分離された微粉体を排気口から排出させるものであるが、サイロに関する詳細な記述はない。
また、特許文献2には、微粉末の発生が少ない光学用成形材料が示されている。この光学用成形材料は、直径1.0mm以下の微粉体を250ppm以下、更に150ppm以下としているが、例えば、DVD−RやDVD−RAMのようなDVD用途向け低異物樹脂ペレットでは、50ppm以下、好ましくは30ppm以下でなければ、ディスクメーカーの要求は満たせない。
また、特許文献2は、押出機から吐出されたストランドのカッティング条件を定めたものであって、樹脂ペレットの貯蔵するサイロについては具体的な記述がない。
【0009】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、規格外品として処理すべき高異物樹脂ペレットをサイロ内で明確に区分けし、規格品の異物含有量を低減させることができるだけでなく、規格外品を別経路から排出し、下流設備の汚染を回避できる樹脂ペレット貯蔵装置及びその清掃方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明の樹脂ペレット貯蔵装置は、樹脂ペレットを貯蔵するサイロと、前記サイロ内の最下部近傍よりも上方に保有される低異物樹脂ペレットを、規格品として前記サイロ外に排出する規格品排出経路と、前記サイロ内の最下部近傍に溜った高異物樹脂ペレットを、規格外品として前記サイロ外に排出する規格外品排出経路とを備える構成としてある。
【0011】
このようにすると、規格外品として処理すべき高異物樹脂ペレットがサイロ内で明確に区分けされるので、規格品に対する高異物樹脂ペレットの混入を避け、規格品の異物含有量を低減させることができる。
また、規格品の排出経路と、規格外品の排出経路が別々に確保されているので、規格外品による下流設備の汚染を回避できるだけでなく、管理の簡略化も図れる。
【0012】
また、本発明の樹脂ペレット貯蔵装置は、前記サイロ内の最下部よりも上方に溜った低異物樹脂ペレットを、サンプルとして前記サイロから抽出するサンプル抽出経路を備える構成としてある。
このようにすると、サイロ内の最下部よりも上方に溜った規格品と同等の低異物樹脂ペレットを、例えば、分析評価用サンプルとして抽出することができる。
【0013】
また、本発明の樹脂ペレット貯蔵装置は、前記規格品排出経路の樹脂ペレット流入口を、複数に分割されている多重管構造としてある。
このようにすると、規格品排出経路にブレンド機能を付与し、規格品における異物含有量の均一化が図れる。
【0014】
また、本発明の樹脂ペレット貯蔵装置は、前記サイロ内の上部に設置され、前記サイロの上部から投入された樹脂ペレットを前記サイロの内壁に沿って落下させる誘導部材を備える構成としてある。
このようにすると、サイロに対する樹脂ペレットの投入開始時に、樹脂ペレットがサイロの内壁に当たり、ここに付着した切粉や樹脂屑を落下させるので、これらの切粉や樹脂屑をサイロの最下部近傍に溜め、規格品と区分けできる。これにより、前回のロットでサイロの内壁に付着残留した切粉や樹脂屑による異物含有量の増加を回避できる。
【0015】
また、本発明の樹脂ペレット貯蔵装置は、前記サイロの内圧を外気の圧力と均一化させる差圧調整用通気経路を備えるとともに、この差圧調整用通気経路に、外気からの異物混入を防止するフィルタを備える構成としてある。
このようにすると、樹脂ペレットの排出に伴ってサイロ内が負圧となっても、フィルタで濾過されたクリーンエアーによって差圧調整されるので、外気の吸入によるサイロ内の汚染を防止することができる。
【0016】
また、本発明の樹脂ペレット貯蔵装置は、前記サイロ内の圧力を正圧に保つための気体を供給する気体供給経路を備えるとともに、この気体供給経路に、異物混入を防止するフィルタを備える構成としてある。
このようにすると、クリーンな気体によってサイロ内を常に正圧に保ち、サイロ内が負圧になって外気が吸入されることによるサイロ内の汚染を防止することができる。
【0017】
また、本発明に係る樹脂ペレット貯蔵装置の清掃方法は、上記の樹脂ペレット貯蔵装置を清掃する方法であって、前記規格外品排出経路を開け、前記サイロ内の最下部に溜った高異物樹脂ペレットを前記サイロ外に排出した後、前記規格外品排出経路を開けたまま、前記サイロの内壁に付着した付着物の除去処理を行う方法としてある。
このようにすると、サイロの内壁に付着した切粉や樹脂屑を除去し、規格外品排出経路から排出することができる。これにより、前回のロットでサイロの内壁に付着残留した切粉や樹脂屑の混入による異物含有量の増加を回避できる。
【0018】
また、本発明に係る樹脂ペレット貯蔵装置の清掃方法は、前記除去処理が、前記サイロに樹脂ペレットを投入するための空送エアーを用いて、前記サイロ内をブローする処理、及び/又は、前記サイロの外壁に機械的な衝撃や振動を与える処理としてある。
このようにすると、既存設備の利用や比較的簡単な装置の追加により、サイロ内の清掃が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、規格外品として処理すべき高異物樹脂ペレットがサイロ内で明確に区分けされるので、規格品に対する高異物樹脂ペレットの混入を避け、規格品の異物含有量を低減させることができる。
また、規格品の排出経路と、規格外品の排出経路が別々に確保されているので、規格外品による下流設備の汚染を回避できるだけでなく、管理の簡略化も図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
[樹脂ペレット貯蔵装置]
まず、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置について、図1〜図5を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置の全体正面断面図、図2の(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置の下部平面断面図、下部正面断面図、図3の(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置の上部平面断面図、上部正面断面図、図4の(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置のスライドゲートバルブを示す説明図、(c)は、従来例に係るスライドゲートバルブの説明図、図5の(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置のロータリバルブを示す斜視図、平面図、側面図である。
【0022】
図1に示すように、樹脂ペレット貯蔵装置は、サイロ1、規格品排出経路2、規格外品排出経路3、サンプル抽出経路4などを備えて構成されている。
サイロ1は、上部に投入口5を有する胴部6と、サイロ1の下部を中心に向けて絞り込むコーン部7とを備え、投入口5から投入された樹脂ペレットを貯溜する。樹脂ペレットには、切粉、樹脂屑などの異物が含まれる。異物の一部は、静電気でサイロ1の内壁に付着したり、ここから落下してサイロ1の最下部に溜りやすい。
規格品排出経路2は、サイロ1内の最下部近傍よりも上方に保有される低異物樹脂ペレットを、規格品としてサイロ1外に排出する経路であり、本実施形態では、サイロ1の底部を上下方向に貫通する配管で構成される。
規格外品排出経路3は、サイロ1内の最下部近傍に溜った高異物樹脂ペレットを、規格外品としてサイロ1外に排出する経路であり、本実施形態では、コーン部7の最下部に連通する配管で構成される。
サンプル抽出経路4は、サイロ1内の最下部近傍よりも上方に保有される低異物樹脂ペレットを、サンプルとしてサイロ1外に抽出する経路であり、本実施形態では、コーン部7を斜め方向に貫通する配管で構成される。
【0023】
樹脂ペレット貯蔵装置をこのように構成すると、規格外品として処理すべき高異物樹脂ペレットがサイロ1内で明確に区分けされるので、規格品に対する高異物樹脂ペレットの混入を避け、規格品の異物含有量を低減できる。
また、規格品排出経路2と規格外品排出経路3が別々に確保されているので、規格外品による下流設備の汚染を回避できるだけでなく、管理の簡略化も図れる。
また、サンプル抽出経路4は、サイロ1内の最下部近傍よりも上方から樹脂ペレットを抽出するので、規格品と同等の低異物樹脂ペレットをサンプルとして抽出できる。
【0024】
図2に示すように、例えば、規格品排出経路2の樹脂ペレット流入口は、上方にラッパ状に広がる多重管構造とすることができる。具体的には、径寸法が異なる複数のコーン部材8を組み合せることにより、平面から見て同心円状の流入口を複数形成する。
このようにすると、複数の流入口から流入した樹脂ペレットがその下方で合流することにより、樹脂ペレットがブレンドされるので、規格品排出経路2にブレンダ機能を付加し、規格品における異物含有量の均一化が図れる。
なお、樹脂ペレット流入口は、渦巻状の多重構造にしてもよい。このようにしても、上記効果を得ることができる。
【0025】
図3に示すように、サイロ1内の上部には、サイロ1の上部から投入された樹脂ペレットをサイロ1の内壁に沿って落下させる誘導部材9を設けることが好ましい。例えば、中心部に孔10を有する傘状の部材で誘導部材9を構成すれば、投入された樹脂ペレットの80〜90%を孔10から落下させつつ、誘導部材9の斜面に載った10〜20%の樹脂ペレットを外方に導き、サイロ1の内壁に沿って落下させることができる。
このようにすると、サイロ1に対する樹脂ペレットの投入開始時に、樹脂ペレットがサイロ1の内壁に当たり、ここに付着した切粉や樹脂屑を落下させるので、これらの切粉や樹脂屑をサイロ1の最下部に溜め、規格品と区分けできる。これにより、前回のロットでサイロ1の内壁に付着残留した切粉や樹脂屑による異物含有量の増加を回避できる。
【0026】
図1に示すように、サイロ1の上部には、その内外をフィルタ11(HEPAフィルタ、好ましくはULPAフィルタ)を介して通気させる差圧調整用通気経路12を備えることが好ましい。
このようにすると、樹脂ペレットの排出に伴ってサイロ1内が負圧となっても、フィルタ11で濾過されたクリーンエアーによって差圧調整されるので、外気の吸入によるサイロ1内の汚染を防止できる。
【0027】
図1に示すように、サイロ1の上部には、サイロ1内にクリーンな気体を供給する気体供給経路13を備えることが好ましい。例えば、フィルタ14(HEPAフィルタ、好ましくはULPAフィルタ)で濾過され、露点−10℃以下まで乾燥されたクリーンエアーやクリーン窒素をサイロ1内に供給する。
このようにすると、クリーンな気体によってサイロ1内が常に正圧に保つことができるので、外気の吸入によるサイロ1内の汚染を防止できる。
【0028】
規格品排出経路2を開閉するバルブとしては、一般的に、ボールバルブ、バタフライバルブ、スライドゲートバルブなどが用いられるが、いずれもバルブが閉じる際、バルブ内での樹脂ペレットの噛み込みを避けることが難しく、せっかく低減した異物が再び発生してしまうという問題がある。
特に、一般的なスライドゲートバルブ15の場合、図4の(c)に示すように、ゲートナイフ16が収納されるゲートポケット部17とゲートナイフ16の先端の間にどうしても樹脂ペレットを噛み込んでしまうため、異物の発生リスクが他のバルブよりも高くなる。
【0029】
そこで、本実施形態のスライドゲートバルブ15は、図4の(a)に示すように、ゲートナイフ16を斜め上方から斜め下方に向けて移動させるとともに、斜め下方のゲートポケット部17を下方が開放した形状とすることにより、樹脂ペレットの噛み込みを最小限に低減する。
また、図4の(b)に示すように、ゲートナイフ16が斜め上方に格納される際、ゲートナイフ16の表面に静電気で付着した樹脂ペレットを噛み込まないように、少なくとも、露点−10℃以下まで乾燥されたクリーンエアーやクリーン窒素をゲートナイフ16に向けて噴射し、付着した樹脂ペレットを吹き飛ばすことが好ましい。
【0030】
また、サイロ1の下流に輸送用の設備を備える場合、特に、空送の場合は、エジェクタを具備することが一般的であるが、貯蔵設備が大型化し、100トンを超えるような樹脂ペレットを貯蔵する場合には、サイロ1の下流にバルブとエジェクタを具備しても、樹脂ペレットの自重による負荷が大きく、十分な空送能力を確保することができないため、ロータリバルブ18が用いられる。しかしながら、ロータリバルブ18でも、樹脂ペレットの噛み込みが発生するので、せっかく低減した異物が発生するという問題がある。
【0031】
そこで、本実施形態のロータリバルブ18は、図5に示すように、ロータリバルブ18の樹脂ペレット投入口側に、ローターブレード19と筐体20による樹脂ペレット噛み込位置21の上方にガイド部22を設け、該ガイド部22で樹脂ペレットを後続のローターブレード19側へ導くことにより、噛み込みを防止する。
この例は、ロータリバルブ18の筐体側に加工を施したものであるが、「く」の字状に加工したローターブレード19でも同様な効果が期待できる。
なお、サイロ1の内部については、ペレット接触面のすべての溶接ビードを除去し、少なくともIIB板相当の表面粗さとしなければならない。好ましくは#300、更に好ましくは#400以上のバフ研磨を施すことが好ましい。
また、スライドゲートバルブ、ロータリバルブの内部についても、ペレット接触面のすべての溶接ビードを除去し、少なくとも#300以上、好ましくは#400以上のバフ研磨を施さなければならない。
【0032】
[樹脂ペレット貯蔵装置の清掃方法]
つぎに、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置の清掃方法について、図1を参照して説明する。
本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置の清掃方法は、規格外品排出経路3を開け、サイロ1内の最下部に溜った高異物樹脂ペレットをサイロ1外に排出した後、規格外品排出経路3を開けたまま、サイロ1の内壁に付着した付着物の除去処理を行う点に特徴がある。
このようにすると、サイロ1の内壁に付着した切粉や樹脂屑を除去し、規格外品排出経路3から排出することができるので、前回のロットでサイロ1の内壁に付着残留した切粉や樹脂屑による異物含有量の増加を回避できる。
【0033】
除去処理としては、サイロ1に樹脂ペレットを投入するための空送エアーを用いてサイロ1内をブローする処理や、サイロ1の外壁にハンマリング等の機械的な衝撃や振動を与える処理があり、いずれか一方の処理や両方の処理を行うことができる。
このようにすると、既存設備の利用や比較的簡単な装置の追加により、サイロ1内の清掃が可能なる。
【0034】
つぎに、本発明の実施例及び比較例について説明する。
【0035】
[実施例1]
図1に示すサイロ1(内容積:260m、約180MTのペレットが貯蔵可能)を使用した。サイロ1は、底部から内部に突き出した樹脂配管からなる規格品排出経路2(内径12インチ、底部から内部に突き出した長さ600mm)と、サイロ1の最下部に溜まった樹脂ペレットを抜き出すための規格外品排出経路3(内径8インチ)と、サイロ1の内部中央部から樹脂ペレットをサンプリングするサンプル抽出経路4を備える構造とした。
樹脂ペレットの投入前に、サイロ1の内部をエアーブローし、また、サイロ1の外壁をハンマリングし、サイロ1の内壁に静電気で付着していたポリカーボネート微粉体を可能な限り除去した。このサイロ1にポリカーボネート樹脂ペレット(16メッシュ・アンダーのポリカーボネート微粉体を80ppm含有)を150MT投入し、規格品排出経路2から約149.3MTの樹脂ペレットを抜き出した。抜き出されたポリカーボネート樹脂ペレット中の16メッシュ・アンダーの微粉体含有量を測定したところ、その含有率は30ppmであった。16メッシュ・アンダーの微粉体除去率は、68%であった。
これは、150MTに含まれる80ppmの微粉体12kgの内7.5kgが、サイロ1の内壁に付着したと考えられる。また、サイロ1の最下部に溜まった樹脂ペレット700kgの微粉体量を調べたところ、220ppmに増加していた。
【0036】
[実施例2]
実施例1において、16メッシュパスの微粉体を200ppm含有するポリカーボネート樹脂ペレットに変更した以外は同様にして実施した結果、規格品排出経路2から抜き出されたポリカーボネート樹脂ペレット中の16メッシュパスの微粉体量は110ppmであった。16メッシュパスの微粉体除去率は、45%であった。
【0037】
[比較例1]
内部には、底部から内部に突き出した樹脂排出配管(規格品排出経路)を具備しないサイロ(内容積:260m、約180MTのペレットが貯蔵可能)を使用し、同じく樹脂ペレットの投入前に、サイロの内部をエアーブローし、また、サイロの外壁をハンマリングし、サイロの内壁に静電気で付着していたポリカーボネート微粉体を可能な限り除去した。
このサイロにポリカーボネート樹脂ペレット(16メッシュパスの微粉体を80ppm含有)を150MT投入した。樹脂排出配管(規格品排出経路)がないので、約150MTの樹脂ペレットが抜き出される。抜き出し最中のポリカーボネート樹脂ペレット中の16メッシュパスの微粉体含有量を測定したところ、その含有率は同じく30ppmであったが、抜き出し直後の0.5トン、並びにサイロが空になる前の147トンを抜き出した辺りから16メッシュパスの微粉体が増加し、始めの0.5トン、最後の1トンの微粉体量は最大で110ppm、180ppmと急増した。
これらを考慮すると、サイロを1ロットと見れば、この1ロットの樹脂ペレットの品質を一定に保つためには、特に、微粉体の多い抜き出し直後、最後を合わせた最低2〜3トン程度を山欠け品(規格外品)とし、規格品と区分けして管理する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、樹脂ペレットが貯蔵されるサイロを備えた樹脂ペレット貯蔵装置に適用でき、特に、低異物を要求されるポリカーボネート系樹脂ペレット、シクロヘキサン系樹脂ペレットなどの貯蔵に好適な樹脂ペレット貯蔵装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置の全体正面断面図である。
【図2】(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置の下部平面断面図、下部正面断面図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置の上部平面断面図、上部正面断面図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置のスライドゲートバルブを示す説明図、(c)は、従来例に係るスライドゲートバルブの説明図である。
【図5】(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット貯蔵装置のロータリバルブを示す斜視図、平面図、側面図である。
【図6】従来例に係る樹脂ペレット貯蔵装置の概略断面図である。
【図7】従来例に係る樹脂ペレット貯蔵装置から排出した樹脂ペレットの異物含有量を示すグラフである。
【図8】従来例に係る樹脂ペレット貯蔵装置において樹脂ペレットが排出される様子を時系列的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 サイロ
2 規格品排出経路
3 規格外品排出経路
4 サンプル抽出経路
5 投入口
9 誘導部材
12 差圧調整用通気経路
13 気体供給経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ペレットを貯蔵するサイロと、
前記サイロ内の最下部近傍よりも上方に保有される低異物樹脂ペレットを、規格品として前記サイロ外に排出する規格品排出経路と、
前記サイロ内の最下部近傍に溜った高異物樹脂ペレットを、規格外品として前記サイロ外に排出する規格外品排出経路と
を備えることを特徴とする樹脂ペレット貯蔵装置。
【請求項2】
前記サイロ内の最下部近傍よりも上方に保有される低異物樹脂ペレットを、サンプルとして前記サイロから抽出するサンプル抽出経路を備えることを特徴とする請求項1記載の樹脂ペレット貯蔵装置。
【請求項3】
前記規格品排出経路の樹脂ペレット流入口が、複数に分割されている多重管構造であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂ペレット貯蔵装置。
【請求項4】
前記サイロ内の上部に設置され、前記サイロの上部から投入された樹脂ペレットを前記サイロの内壁に沿って落下させる誘導部材を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂ペレット貯蔵装置。
【請求項5】
前記サイロの内圧を外気の圧力と均一化させる差圧調整用通気経路を備えるとともに、この差圧調整用通気経路に、外気からの異物混入を防止するフィルタを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂ペレット貯蔵装置。
【請求項6】
前記サイロ内の圧力を正圧に保つための気体を供給する気体供給経路を備えるとともに、この気体供給経路に、異物混入を防止するフィルタを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂ペレット貯蔵装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂ペレット貯蔵装置を清掃する方法であって、
前記規格外品排出経路を開け、前記サイロ内の最下部近傍に溜った高異物樹脂ペレットを前記サイロ外に排出した後、
前記規格外品排出経路を開けたまま、前記サイロの内壁に付着した付着物の除去処理を行う
ことを特徴とする樹脂ペレット貯蔵装置の清掃方法。
【請求項8】
前記除去処理が、前記サイロに樹脂ペレットを投入するための空送エアーを用いて、前記サイロ内をブローする処理、及び/又は、前記サイロの外壁に機械的な衝撃や振動を与える処理であることを特徴とする請求項7記載の樹脂ペレット貯蔵装置の清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−168848(P2007−168848A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368734(P2005−368734)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】