説明

樹脂レンズおよび樹脂レンズの成形方法

【課題】ゲートの切断部分を基準とするマークを使用可能で、かつ、鏡面部と光学的機能部の光軸との間に入子の回転によるずれが発生することがない樹脂レンズを提供する。
【解決手段】ピックアップレンズとして用いられる樹脂レンズ1である。光学的機能を有する光学的機能部2と、その周囲に鍔状に形成されるフランジ部3とを有する。光ディスクに近接する第2面11側のフランジ面31に、光学的機能部2の傾きを測定可能とする反射光を生ずる鏡面部41と、成形時に使用される金型に係る情報を示すマーク37とが設けられている。フランジ面31の内周部33より外の外周部34にマーク37が形成されている。第2面11側の光学的機能面21と鏡面部41を有する内周部33とが金型の入子71により成形される。また、フランジ面31のマーク37を有する外周部34は、金型の入子71より外側のホルダの形成面で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のレンズである樹脂レンズに係り、特に光ディスクの光ピックアップ装置の対物レンズ(ピックアップレンズ)に好適に用いられる樹脂レンズおよび樹脂レンズの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブルーレイディスク、DVD、CD等の光ディスクの読取や書き込みのための光ピックアップ装置に用いられる対物レンズは、ガラスモールドレンズに代えてたとえば熱可塑性樹脂製の樹脂レンズが用いられるようになっており、このような対物レンズはたとえば射出成型により成形されている。
【0003】
射出成形に際しては、通常、一つの成形品に複数の樹脂レンズが含まれるような構造となっている。すなわち、成形品は、複数個取りの構造となっている。また、一つの射出成形金型で一度に複数の成形品を成形可能となっている。したがって、射出成形金型においては、樹脂レンズを成形するための複数のキャビティが設けられた状態となっている。
また、一種類の樹脂レンズを大量に生産する場合には、一種類の樹脂レンズを成形するのに複数の射出成形金型を用いる場合もあり、同じ樹脂レンズでも成形の際に用いられた射出成形金型が異なる場合がある。
【0004】
ここで、各射出成形金型の各キャビティで製造される各樹脂レンズにおいては、どうしても品質的な差が生じる可能性がある。そこで、樹脂レンズの品質管理や、製造管理や、光ピックアップ装置等の光学装置に組み込まれた後の樹脂レンズの来歴管理等のために樹脂レンズの成形時に用いられた射出成形金型および同一金型内におけるキャビティを示すマークを付けるマーキングが行われている。
【0005】
また、前記光ピックアップ装置の対物レンズとしての樹脂レンズは、たとえば、集光機能等の光学的機能を有する光学機能部と、光学装置への位置決めおよび固定に使用されるフランジ部とを有する。そして、フランジ部は、たとえば、光学機能部の外周に鍔状に形成されている。
【0006】
また、前記対物レンズとしての樹脂レンズは、光ディスクに近接して配置されることになるので、たとえば、光ピックアップ装置の対物レンズを取り付ける取付け枠の先端部分に樹脂レンズが取り付けられる。この際に、たとえば、樹脂レンズの光学的機能部が取付け枠の内周側に配置され、フランジ部が取付け枠の枠部分に配置され、フランジ部がたとえば接着等により取付け枠に固定される。
したがって、樹脂レンズは、光ピックアップ装置に取り付けた状態で、光ディスクをむく側が露出された状態となる。
【0007】
そこで、前記マークは、樹脂レンズの光ディスク側を向く面の光学的機能の邪魔にならないフランジ部に設けられることになる。
また、フランジ部には、鏡面部が設けられている。この鏡面部は、フランジ部を形成する金型の形成面に鏡面加工を施すことにより、当該鏡面加工が施された部分で成形された部分に形成される。
この鏡面部は、フランジ部の内周側に円環状に形成され、他の部分より光の反射率を高めたものとなっている。
【0008】
そして、鏡面部は、たとえば、樹脂レンズを上述のように光ピックアップ装置に取り付ける際に、鏡面部に向かって光を照射するとともに、鏡面部からの反射光を光センサ(ここでは、たとえば、CCDカメラ)捉え、たとえば、発射光の強度や、計測位置や、計測された形状等から樹脂レンズの傾き等を検知することができる。
【0009】
そして、このような光ピックアップ装置の対物レンズとして用いられる樹脂レンズにおいて、前記フランジ部に設けられる鏡面部にマークをマーキングすることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
鏡面部にマークを形成することで、マークが見易い状態となる。また、上述のように光ピックアップの取付け枠の先端に設けられて光ディスクに近接することになる樹脂レンズの光ディスク側を向く面においては、光学的機能部やフランジ部の鏡面部が光ディスク等に接触しないように、フランジ部の最も光ディスク側となるトップ面が、光学的機能部や鏡面部より前側に突出した状態となっている。
【0010】
これにより、鏡面部にマークをたとえば突出した状態に設けた場合でも、トップ面により保護され、成形から光ピックアップ装置の組み付けまでの間に、鏡面部から突出するマークが接触して削れてしまうような事態を防止することができる形状となっている。
【0011】
【特許文献1】特開2004−191948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前記対物レンズ用の金型においては、一般的に、少なくともフランジ部より内側となる光学機能部を形成する部分が入子となっており、金型に対して回転自在とされている。すなわち、可動金型と固定金型からなり型開きして成形品を取り出す射出成形金型において、樹脂レンズを成形するキャビティの少なくとも樹脂レンズの光学的機能部を形成する部分は、固定金型および可動金型に入子として設けられている。
【0013】
そして、入子は円柱状に形成されて回転可能となっており、円形状の光学的機能部の形成に際し、入子を回転して最適な樹脂レンズ形状となるように入子の回転角度を調整できるようになっている。
そして、基本的には、光学的機能部とフランジ部とからなる樹脂レンズにおいて、少なくとも光学的機能部となる樹脂レンズの中央側の面は入子の形成面で形成され、樹脂レンズの光学的機能部より外周側となるフランジ部は、金型の入子が挿入された部分の周囲(ホルダ)の形成面で形成される。
【0014】
また、射出成形金型には、樹脂レンズとなる部分を成形するキャビティと、キャビティに樹脂を充填するために、樹脂が射出されるスプルーと、スプルーから多数個取りのために複数設けられた各キャビティに樹脂を供給するランナと、ランナとキャビティとの間の形成されたゲートを有するものとなっている。したがって、射出成形金型から取り出される成形品は、スプルー、ランナ、ゲートおよびキャビティ内に充填されて冷却して固化されたものとなっており、樹脂レンズとする際には、キャビティで成形された樹脂レンズに繋がるゲートで形成されたゲート部を切断し、成形品から樹脂レンズを切り離す必要がある。なお、ゲート部は、一般的に樹脂レンズの外周部分の一箇所に設けられており、成形品から切り離された樹脂レンズには、その外周の一箇所に切断部を有することになる。
【0015】
この切断部は、樹脂レンズの角度の基準として使用可能となっている。
したがって、前記マークは、前記切断部からの間隔や、切断部とレンズの中心とを結ぶ線分とマークとレンズの中心とを結ぶ線分とがなす角度の違いによって区別可能に形成される場合がある。たとえば、円環状のフランジ部の互いに60度離れた二箇所に突起があるようなマーク(二つの突起それぞれとレンズの中心とを結ぶ2本の線分のなす角度が60度となるマーク)であっても、一方の突起の切断部からの前記角度が30度、60度、90度という違いがあれば、同じ二つの突起のマークでも複数種類に使いわけることが可能となる。
言い換えれば、切断部と1個のマークがなす前記角度に複数種類のものを設ければ、1個のマークでも複数種類の意味を持たせることができる。
【0016】
このような状態で、上述のようにフランジ部の鏡面部にキャビティや金型を区別するマークを設ける場合に、前記樹脂レンズの光ディスクに望む側の面を形成する金型において、中央側の光学機能部を形成する入子を、フランジ部との境界部分までとし、鏡面部およびマークを入子の外側の形成面で形成することが行われている。
この場合に、入子側にはマークを形成する部分がないので、入子を回転させてもマークの位置が変わることがなく、特に上述のゲートの切断部分に対するマークの前記角度が代わることがない。しかし、光学的機能部を形成する入子とフランジ部の鏡面を形成する入子の外側の金型部分とが別体とされ、かつ、入子がその外側の部分に対して回転させられる可能性があることから、たとえば、光学的機能部の光軸の方向と、鏡面部で光が反射される方向とがなす角度が入子の回転により微妙にずれる可能性がある。これにより、鏡面部の光の反射を用いた樹脂レンズの角度合わせの精度が低下する可能性がある。
【0017】
また、光学的機能部の外周部、すなわち、フランジの内周部に鏡面部を形成するものとし、入子を光学的機能部だけではなくフランジ部の内周部となる鏡面部まで形成可能なものとしてもよい。
この場合に、光学的機能部と鏡面部とが一つの入子の形成面で一体に形成されることになり、入子を回転させても、光学的機能部の光軸方向と、鏡面部の光の反射方向とにずれが生じることがなく、樹脂レンズの取付に際し、その取付精度が低下するのを防止することができる。
【0018】
しかし、鏡面部にマークを形成するものとすると、回転する入子の形成面にマーク形成用の凹部か凸部が設けられ、入子を回転してしまうと上述の切断部とマークとの位置関係が異なるものとなってしまい、切断部を基準としてマークを読み取ることができなくなってしまう。
【0019】
すなわち、切断部とマークとの位置関係が樹脂レンズによって変わらないものであれば、マークの位置を自動読取するような場合でも、切断部を基準として容易にマークの読取が可能となるが、入子を回転することで、マークの切断部に対する相対位置が変化してしまうと、切断部を考慮せずに複数のマークの相対位置だけで、情報を特定できるようにマークを設定する必要があり、マークが煩雑になってしまう。言い換えれば、同じマークでも切断部を基準として使用できる場合に比較して、切断部を基準として使用できない場合にはマークで示すことが可能な情報量が低下してしまう。
【0020】
また、入子の形成面の製作において、たとえば、光学的機能部の光学的機能面を形成するとともに鏡面部となる鏡面を形成するための形成面を形成した後に、マークを形成するためのマーク形成部を設けるものとすると、マーク形成部を形成する際に、上述の形成面を傷付けてしまう可能性が生じる。
【0021】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、ゲートの切断部を基準とするマークを使用可能で、かつ、鏡面部と光学的機能部の光軸との間に入子の回転によるずれが発生することがない樹脂レンズおよび樹脂レンズの成型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の樹脂レンズは、 光学的機能を有する光学的機能部と、当該光学的機能部の周囲に形成されたフランジ部と、光学的機能部の傾きを測定可能とする反射光を生ずる鏡面部と、成形時に使用される金型に係る情報を示すマークとが設けられた樹脂レンズであって、
前記フランジ部に前記鏡面部が形成され、前記フランジ部の前記鏡面部が形成された面の当該鏡面部の形成範囲外となる位置に前記マークが形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項1に記載の発明においては、光学的機能部の傾きを測定可能とする反射光を生ずる鏡面部の形成範囲外となる位置に成形時に使用される金型に係る情報を示すマークが形成されているので、樹脂レンズを成形する際に、鏡面部を形成する金型部分と、マークを形成する金型部分を別体とすることが可能となる。
これにより、鏡面部がたとえば回転可能な入子部分で形成されていても、マークを回転しない金型部分に設けることが可能となり、成形される樹脂レンズに対して入子の回転角度の違いでマークの角度が異なるようなことを防止可能となる。
また、樹脂レンズにおいて、光学的機能部が回転自在な入子により形成されるような場合に、鏡面部の形成範囲内にマークを形成するものとした場合に、マークが回転しないように鏡面部を入子の範囲外となる金型部分で形成すると、光学的機能部を形成する入子となる金型部分と、鏡面部を形成する金型部分とが相対的に回転移動することで、入子によって形成される光学的機能部の傾きと鏡面部の傾きとの間の関係に変化が生じ、鏡面部からの発射光による光学的機能部の傾きの測定に誤差が生じることになり、傾きの測定精度が低下するが、鏡面部とマークとをそれぞれ別の金型部分で形成することが可能となることにより、鏡面部を光学的機能部と同じ入子で形成し、マークを入子と異なる金型部分で形成することが可能となり、これにより、入子の回転により樹脂レンズ上のマークが回転するのを防止し、かつ、入子の回転により鏡面部と光学的機能部との傾きにずれが生じるのを防止することができる。
【0024】
また、請求項2に記載の樹脂レンズは、請求項1に記載の発明において、
光ディスク用のピックアップレンズとして用いられ、
前記フランジ部の前記光ディスクに臨む面の内周側となる内周部に前記鏡面部が形成され、
前記フランジ部の前記内周部より外周側に前記マークが形成されていることを特徴とする。
【0025】
請求項2に記載の発明においては、樹脂レンズは、光ディスクへの情報の読取や書込みに用いられる光ピックアップ装置の対物レンズ、すなわち、ピックアップレンズとなる。
そして、ピックアップレンズは、光学的機能部とその周囲に設けられたフランジ部とを有し、フランジ部の光ディスク側を向く面に、上述の鏡面部とマークが形成されている。
そして、鏡面部は、フランジ部の光学的機能部側、すなわち、光学的機能部に隣接して連続的に繋がる内周部に設けられている。
【0026】
したがって、鏡面部と光学的機能部を一つの金型部分としての入子で形成可能となり、内周部より外周側に形成されるマークを入子の外側の金型部分(ホルダ)で形成可能となり、上述のように光学的機能部と鏡面部との傾きが、入子の回転によりずれるのを防止することができる。また、入子の外側の金型部分で、マークを形成するので、入子が回転することにより、樹脂レンズ上におけるマークの角度位置がずれるのを防止することができる。
【0027】
また、請求項3に記載の樹脂レンズは、請求項2に記載の発明において、
前記光ディスク側の面の前記光学的機能部と当該光学的機能部の周囲となるフランジ部の内周部とが一つの第1金型により形成され、
前記フランジ部の内周部より外周側の前記マークが形成される部分が、前記第1金型の周囲に配置され、当該第1金型に対して別体となっている第2金型により形成されていることを特徴とする。
【0028】
請求項3に記載の発明においては、鏡面部と光学的機能部を一つの第1金型で形成可能となり、内周部より外周側に形成されるマークを第1金型の外側の第2金型で形成可能となっているので、上述のように光学的機能部と鏡面部との傾きが、第1金型の回転によりずれるのを防止することができる。また、第1金型の外側の第2金型で、マークを形成するので、第1金型が回転することにより、樹脂レンズ上におけるマークの角度位置がずれるのを防止することができる。
【0029】
また、請求項4に記載の樹脂レンズは、請求項3に記載の発明において、前記光学的機能部と前記鏡面部を備える内周部とを形成する形成面を非球面加工機により加工された第1金型を用いて当該光学的機能部および内周部が形成されていることを特徴とする。
【0030】
請求項4に記載の発明においては、樹脂レンズの光学的機能部および鏡面部を備える内周部を形成するための第1金型の形成面を一つの非球面加工機で加工可能となるので、金型のコストの低減を図ることできる。これにより、樹脂レンズのコストを低減することができる。
なお、光学的機能部および鏡面部を形成する金型においては、樹脂レンズの光学的機能部および鏡面部が表面粗さが小さくなっていることが要求されるので、金型の形成面も表面粗さが小さくなっている必要がある。すなわち、光学的機能部を形成する金型部分も、鏡面部を形成する金型部分も十分に表面粗さを小さくできる精密加工機で形成される必要があるが、本発明では、光学的機能部と鏡面部とが同じ第1金型の形成面で形成されるので、第1金型の鏡面部を形成する部分と、光学的機能部を形成する部分との両方を精密加工が可能な非球面加工機で加工することができる。そして、非球面加工機では、一度加工プログラム用データを設定することにより、光学的機能部と鏡面部との両方を形成するための第1金型の形成面を一気に加工することができる。
【0031】
また、請求項5に記載の樹脂レンズは、請求項3または4に記載の発明において、
光軸に直交し、かつ、肉厚内にある所定の基準面からの前記光軸方向に沿った距離を高さとした場合に、
第1金型により形成された前記フランジ部の内周部と、前記第2金型により形成された前記フランジ部の内周部より外周側の部分との境界の高さ位置より高い位置に、前記フランジ部のトップ面が設けられていることを特徴とする。
【0032】
請求項5に記載の発明においては、第1金型と第2金型との境界部分に対応するフランジ部の内周部とその外側との間においては、第1金型と第2金型とのクリアランスに樹脂が入り込むことによりバリが生じる可能性があるが、前記境界部分がフランジ部のトップ面より低い位置となっていることにより、バリがフランジ部より高く突出した状態となるのを防止することができる。
【0033】
なお、形成される可能性があるバリの長さ(高さ)より、フランジ部の前記境界部分からトップ面までの光軸方向に沿った距離が長い(トップ面の高さが高い)必要がある。
また、ピックアップレンズにおいて、鏡面部およびマークが形成される面が光ディスク側を向いて、光ディスクに近接することになり、フランジ部のトップ面より、バリが突出してしまうと、光ディスクにバリが接触する可能性がある。
したがって、本発明においては、フランジ部のトップ面が樹脂レンズで最も光ディスクに近づく構成とし、バリが形成される可能性があるフランジ部の内周部の外縁部分(前記境界部分)の高さ位置が少なくとも形成されるバリの長さ分以上にフランジ部のトップ面に対して低くなっている構成となる。
【0034】
また、請求項6に記載の樹脂レンズは、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、
前記トップ面より低い位置に前記マークが形成されるマーク形成面が設けられ、
前記マークが前記マーク形成面から高さ方向に突出して設けられるとともに前記マークの高さが前記トップ面より低くなっていることを特徴とする。
【0035】
請求項6に記載の発明においては、マークの形成に際して、マークがマーク形成面から突出する構造すなわち、マークが凸となる形状となっていれば、金型の形成面には、逆にマークを形成する部分を凹部として形成することになり、金型におけるマークのための形状の形成が容易となる。
【0036】
しかし、マークを凸とした場合に、マークが他の部材等と接触するような場合に、マークが擦れたり削られたりする可能性があり、マークが認識しずらい状態となる可能性がある。そこで、フランジ部のトップ面をマーク形成面より高くするとともにさらにマーク形成面から突出して形成されたマークより高くすることで、マークを保護し、マークが擦れたり削られたりして認識しずらい状態となるのを防止することができる。
【0037】
なお、ここで、フランジ部の外周側の面をトップ面とすることで、フランジ部の外周部の内側を保護できることになるが、フランジ部の内周部に鏡面部を形成し、その外側、すなわち、フランジ部の外周側にマークが形成されているので、半径方向におけるマークの位置とトップ面の位置とが重なる可能性があり、この場合に、マークの位置と、トップ面の位置が周方向にずれた状態となることが好ましい。
【0038】
また、請求項7に記載の樹脂レンズは、請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の発明において、
前記フランジ部の前記光学的機能部の光軸に直交する平面にマークを形成したことを特徴とする。
【0039】
請求項7に記載の発明においては、光軸に直交する平面にマークを形成することにより、樹脂レンズの一方の面に正対した際にマークを認識し易い状態となる。
【0040】
また、請求項8に記載の樹脂レンズは、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の発明において、
前記フランジ部の鏡面部を前記光学的機能部の光軸に直交する平面に対して設定した角度だけ傾けたことを特徴とする。
【0041】
請求項8に記載の発明においては、上述のように光学機能面と鏡面部とを一つの金型で形成可能となっており、これにより、光学機能面の光軸に直交する平面上に鏡面部を設けずに僅かにずらすような構造としてもよい。すなわち、鏡面部の光軸に対する角度が90度となっていなくても当該角度が設定された角度となっていれば、たとえば、光軸と前記角度の鏡面部から反射される反射光との交点部分にセンサを配置するなどして、最適な測定が可能となる。また、金型の形成に非球面加工機を使用するものとすれば、鏡面部の角度をどのように形成することも容易に可能となる。
【0042】
また、請求項9に記載の樹脂レンズは、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の発明において、
前記フランジ部の鏡面部を前記フランジ部の周方向に沿って円環条に形成するとともに、半径方向中心に向かうにつれて凹むように傾けて形成したことを特徴とする。
【0043】
請求項9に記載の発明においては、鏡面部が概略凹面鏡の一部となるような構造となり、反射光が概略集光するような状態となるので、センサの位置が集光の焦点となる位置よりも大きく離れた状態とならなければ、問題なく傾きを測定可能となる。さらに、集光させることで、樹脂レンズの傾きのずれの測定において、精度を向上できる。また、この際も金型の形成に非球面加工機を用いるものとすれば、容易に鏡面部を半径方向中心に向かうにつれて凹むように傾けて形成することができる。
【0044】
また、請求項10に記載の樹脂レンズの成型方法は、光ディスク用のピックアップレンズとして用いられ、光学的機能を有する光学的機能部と、当該光学的機能部の周囲に形成されたフランジ部と、光学的機能部の傾きを測定可能とする反射光を生ずる鏡面部と、成形時に使用される金型に係る情報を示すマークとが設けられた樹脂レンズの成形方法であって、
前記樹脂レンズの前記光ディスクに臨む面側の成形に際し、
前記光学的機能部と当該光学的機能部の周囲となるフランジ部の前記鏡面部が形成される内周部とが一つの第1金型により形成され、
前記フランジ部の内周部より外周側の前記マークが形成される部分が、前記第1金型の周囲に配置されるとともに当該第1金型に対して別体となっている第2金型により形成されることを特徴とする。
【0045】
請求項10に記載の発明においては、請求項1から請求項3の発明とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、光学的機能部を形成する金型部分を回転可能な入子で構成する場合に、入子の回転により光学的機能部の光軸方向と、鏡面部の光の反射方向とがずれることと、マークの角度がずれることとの両方を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本実施の形態の樹脂レンズとなる成形品について説明する。図1〜図2(a),(b),(c)は、この例の樹脂レンズを含む成形品を示し、図3(a)、(b)はこの例の樹脂レンズと射出成形金型の入子との関係を示すものであり、図4(a),(b),(c)は、この例の樹脂レンズにおけるマークを説明するためのものであり、図5(a),(b),(c)は、この例の鏡面部を説明するためのものである。なお、図4においては、図3に示される樹脂レンズとマークが異なるものとなっている。
【0048】
図1および図2に示すように、この例の樹脂レンズ1は、射出成形により形成されるもので、一つの成形品10から複数個の樹脂レンズ1を複数個取り(例えば、4個取りや8個取り)するようになっている。
そして、成形品10は、射出成形金型において、樹脂レンズ1が成形されるキャビティに樹脂(例えば、熱可塑性樹脂)を導くために、樹脂が射出されるスプルー、スプルーから複数のキャビティに向かって分岐し、樹脂を各キャビティに分散して導くためのランナ、ランナとキャビティとの間のゲートに対応して成形されている。したがって、成形品10は、スプルーで形成されるスプルー部1a、ランナで形成されるランナ部1b、ゲートで形成されるゲート部1c、キャビティで形成されると共に成形される樹脂レンズ1とからなっている。
【0049】
なお、射出成形金型は、固定金型と可動金型とを備え、成形時には、固定金型と可動金型を付き合わせた状態として成形品10となる樹脂が充填される部分を密閉状態とし、樹脂充填後に冷却されて成形品10がある程度固化した段階で、固定金型から可動金型を離すように移動して型開きすることにより、樹脂が充填される部分を開放し、成形品10を取り出すことになる。この際に、成形品10は、一般的に型開きした固定金型と可動金型のうちの固定金型から離型され、可動金型に保持された状態となる。
【0050】
そのため、成形品10は、固定金型と可動金型とを比較した場合に、可動金型より固定金型から離型し易い形状とされている。
言い換えれば、可動金型に残り易い形状とされており、その一つとして、ランナ部1bにランナロック1dが形成され、ランナ部1bがランナロック1dを形成する部分を有する可動金型側に残り易い形状となっている。なお、可動金型と固定金型との境界部分は、図1に示される成形品において、ランナ部1bの軸方向に沿った中心線の部分となっている。
【0051】
なお、可動金型に成形品が保持された状態でランナロック1dは、可動金型から成形品10を取り出す際に成形品10を押し出すエジェクトピン81が接触した状態となっており、このランナ部1bのランナロック1dの部分がエジェクトピン81により押し出される。
そして、図2から図4に示すように、この樹脂レンズ1は、たとえば、ブルーレイディスクの光ピックアップ装置のピックアップレンズ(対物レンズ)として使用されるものである。
ここで、樹脂レンズ1の形状の説明において、光軸に直交し、かつ、肉厚内にある所定の基準面を、この例では固定金型と可動金型とのパーティングラインに沿った平面とし、当該基準面からの前記光軸方向に沿った距離を高さと表現する。なお、基準面から離れるほど高く、近づくほど低くなる。また、後述の第1面12側でも第2面11側でも基準面からの距離を高さでそれぞれ表すものとする。
【0052】
ピックアップレンズとしての樹脂レンズ1は、集光機能等の光学的機能を有する光学的機能部2と、光学的機能部2の周囲に鍔状に形成されるフランジ部3とを備えている。
また、樹脂レンズ1は、情報の読取や書込みが行われる光ディスク側を向く第2面11と、光源からの光が入射する第1面12とを有し、それぞれが光学的機能部2の表面となる光学的機能面21,22と、フランジ部3の表面となるフランジ面31,32とを有する。
すなわち、第2面11は、その中央部が光学的機能面21となり、その外周部がフランジ面31となっており、第1面12は、その中央部が光学的機能面22となり、その外周部がフランジ面32となっている。
【0053】
そして、光学的機能部2の第2面11側の光学的機能面21は、光ディスクに近接して配置されることになり、緩やかな凸面状に湾曲した形状となっている。そして、フランジ部3の第2面11側のフランジ面31の少なくとも一部は、同じ第2面11側の光学的機能面21より高くなっており、フランジ部3の方が、光学的機能部2より、光ディスク側に出っ張った状態となっている。
【0054】
また、樹脂レンズ1の第1面12側においては、光学的機能部2の光学的機能面22が湾曲して光源側(光ディスクの反対側)に大きく突出した形状となっている。
そして、光ピックアップ装置に当該樹脂レンズ1が取り付けられるが、樹脂レンズ1の取り付け位置は、光ピックアップ装置において、光ディスクに最も近接する位置であり、取り付け枠に樹脂レンズ1がそのフランジ部3を固定された状態となる。なお、この際には、樹脂レンズ1の第1面12側となるフランジ部3の第1面12側のフランジ面32が前記取り付け枠の先端面に当接されて、たとえば、接着固定される。そして、光学機能部2は取り付け枠の内部空間に対応し、光が通過可能となっている。
【0055】
そして、この例において、光ディスク側を向く樹脂レンズ1の第2面11のフランジ部3のフランジ面31に鏡面部41とマーク37とが設けられている。
なお、フランジ面31は、光ディスク側を向くことから、光ピックアップ装置の取り付け枠に樹脂レンズ1を取り付けた状態でもマーク37を認識可能に露出するとともに、取り付け枠に樹脂レンズ1を設置して固定する際に、鏡面部41に光を照射するとともに、所定のセンサで鏡面部41から反射光を認識させることで、取り付け枠上の樹脂レンズ1の傾きを測定可能となっている。
【0056】
そして、この例において、鏡面部41は、樹脂レンズ1の第2面11側となるフランジ部3のフランジ面31に形成されている。そして、鏡面部41は、樹脂レンズ1の断面円形状に形成された光学的機能部2の第2面11側の光学的機能面21の外周縁に連続して円環状で帯状に形成されている。すなわち、鏡面部41は、フランジ面31の光学的機能面21に連続する内周部33に光学的機能面21に連続する面として形成されている。
また、鏡面部41は、この例において、光学的機能部2の光軸に対して直交する平面とされている。
【0057】
また、フランジ部3の内周部33の外側には、内周部33より高い外周部34が形成されている。当該外周部34には、樹脂レンズ1の第2面11側において、最も高いトップ面35が形成されている。そして、トップ面35も光学的機能部2の光軸に対して直交する平面となっている。
また、フランジ部3の内周部33と、外周部34との間には段差が形成され、上述のように内周部33より外周部34の方が高くなっている。この段差は、外周部34側が高く突出することで、外周部34より内周側の鏡面部41や光学的機能面21を保護するためである。
【0058】
また、内周部33から内側(内周部33を含む)は、後述の円柱状の入子71の先端面に形成された形成面で形成され、外周部34は、金型において入子71の外側となるホルダ(図示略)の先端面に形成された形成面で形成されるが、この際に、2つの形成面の境界部のクリアランスに樹脂が入り込むことで、内周部33と外周部34との境界39(図5(b)に図示)にバリが突出した状態に発生する可能性がある。
そこで、この例では、内周部33と外周部34との境界部分に段差を形成し、当該境界部分より外側において、外周部34が形成されるバリの推定される長さよりも高く突出した状態となっている。これにより、バリがフランジ部3の最も高い位置となるトップ面35より低い位置に配置され、樹脂レンズ1を光ディスクに近接させた際に、バリが光ディスクに接触することがないようになっている。なお、例えば、バリの突出の光軸方向に沿った突出長さを0.03mm程度とすることが可能なので、前記段差、すなわち、鏡面部41とトップ面35との間の距離を0.04mm程度とすることが可能である。なお、この数値に限定されるものではなく、バリよりもトップ面35が高く配置される構成となっていればよい。
【0059】
また、基本的にトップ面35は、フランジ部3の外周部34の形状に対応して円環状で帯状に形成されているが、マーク37が形成されるマーク形成面36の部分で、低くなるように切り欠かれた形状となっている。
すなわち、フランジ部3の外周部34は、高く突出したトップ面35と、当該トップ面35より僅かに低くされたマーク形成面36がフランジ部3の外周部34の円周方向に並んで配置された状態となっている。なお、マーク形成面36は、例えば、マーク37が比較的狭い範囲内にまとまって設けられていれば、図2や図3に示すように一つだけ形成されるが、マーク37が樹脂レンズ1のフランジ面31に分散して形成されている場合には、図4に示すように、マーク形成面36が複数設けられることになる。
この場合に、トップ面35が複数のマーク形成面36により複数に分断された状態となる。
【0060】
そして、トップ面35とマーク形成面36は、同じ半径距離となる位置、すなわち、一つの円周方向に沿った円環状の部分にあり、角度によってトップ面35となっている部分と、マーク形成面36となっているところとがある。
そして、マーク形成面36には、高さ方向に突出する円形ドーム状の突起であるマーク37が形成されている。マーク37は例えば複数形成され、かつ、複数形成されたマーク37の角度位置で、樹脂レンズ1が形成された金型と、当該金型に複数設けられて樹脂レンズ1を形成するキャビティのひとつを示すものとなっている。
【0061】
また、マーク37は、似通った形状の樹脂レンズ1の種類の情報を含むものとしてもよい。すなわち、ほぼ同形状の樹脂レンズ1で種類の違いが見分けずらいレンズにおいて、種類が異なるレンズにそれぞれ異なるマークを付けることで、金型に関する情報とともに樹脂レンズ1の種類の違いの情報を含むものであってもよい。なお、樹脂レンズ1の種類が違えば、金型も異なるので、マーク37が示す金型の情報に、異なる樹脂レンズ1の金型同士の区別がつくようになっていてもよい。
【0062】
また、マーク37は、樹脂レンズ1の基準からの角度が設定されており、樹脂レンズ1の角度の基準は、樹脂レンズ1の成形に際し、成形品10から樹脂レンズ1を取り出す際に切り取った切断部分44となる。したがって、マーク37は、複数のマーク37の配置が全く同じとなっていても、基準位置からの角度が異なるマーク37となって別の情報を示すことになる。これにより、同じパターンのマーク37でも、基準位置からの角度が異なることで、違う情報を示すことが可能となり、マーク37によって示される情報の情報量を多くすることができる。
なお、図4(c)に示すように、マーク37のマーク形成面36からの突出高さは、マーク形成面36からトップ面35までの前記光軸方向に沿った長さ(高さの差)より短くなっており、マーク37の先端は、トップ面35より僅かに低くなっている。
【0063】
また、金型のキャビティ部分、特に光学的機能部を成形する部分は、可動金型と固定金型のそれぞれにおいて、上記入子71,72となっている。
そして、入子71,72は、その周囲のホルダ(入子71,72を挿入可能な孔を有する金型部分)に対して回転自在となっており、入子を回転して調整することにより、光学特性を向上可能となっている。すなわち、一対の入子71,72同士を回転調整することで、成形される樹脂レンズの光学特性が変化するので、その中でも最も好ましい状態にすることが可能となっている。
【0064】
そして、この例では、固定金型と可動金型のうちの第2面11側を形成する一方の金型(この例では可動金型)では、前記入子71のキャビティに対応する形成面が、光学的機能部2の第2面11側となる光学的機能面21だけではなく、フランジ部3の第2面11側のフランジ面31の前記鏡面部41を備える内周部33まで形成するものとなっている。
【0065】
すなわち、入子71の径は、光学的機能面21の径より大きく、フランジ面31の内周部33までを含むものとなっている。したがって、光学的機能面21とフランジ面31の内周部33は、一体となった金型部分である一つの入子71(第1金型)により形成されるようになっている。
それに対して、フランジ面31の外周部34に形成されるトップ面35、マーク形成面36およびマーク形成面36上のマーク37は、回転可能な入子71に対して固定された状態のホルダ(第2金型)の形成面によって形成されるようになっている。
【0066】
なお、可動金型および固定金型において、入子71,72の中心と樹脂レンズの光学的な中心とがほぼ一致して形成されており、円柱状の入子71,72(第1金型)が円柱状の孔を有するホルダ(第2金型)に挿入された状態となっている。また、ホルダに対して入子71,72を回転可能とするために、ホルダの円柱状の孔の内周面と、入子71,72の外周面との間には、僅かなクリアランスがある状態となっている。
【0067】
以上のことから、フランジ面31の内周部33に形成される鏡面部41は、光学的機能面21を形成する入子71により形成されることになる。したがって、入子を回転して入子の角度が変わっても、入子により光学的機能面21と鏡面部41が一緒に形成されるので、光学的機能面21だけを入子で形成し、鏡面部41をホルダで形成した場合のように、入子の角度が異なることにより、光学的機能面21と鏡面部41との間で差異が生じるようなことがない。
【0068】
例えば、光学的機能面21の光軸と、鏡面部41の光の反射方向を平行にするものとした場合に、光学的機能面21が回転可能な入子で形成され、鏡面部41がホルダで形成されると、光学的機能面21の光軸の誤差と、鏡面部41の光の発射方向の誤差とにより、入子の回転角度を変えた際に、光学的機能面21の光軸と、鏡面部41の光の反射方向との誤差による差異が異なるものとなってしまう。
【0069】
それに対して、この例では、光学的機能面21と鏡面部41とが一つの入子で形成されるので、入子の回転角度が変わっても、光学的機能面21と鏡面部41との関係は変化しないので、鏡面部41に光を照射して反射光から樹脂レンズ1の傾きを調整する際に、入子の角度が異なることにより、樹脂レンズ1の傾きの測定結果が変わってしまうような事態を防止することができる。
また、この例では、マーク37は、鏡面部41ではなく、鏡面部41が形成される内周部33より外側の外周部34のマーク形成面36に形成されることになるので、マーク37は、入子の外側のホルダで形成されることになる。
【0070】
したがって、マーク37の形成位置は、入子の回転角度を変更しても変化することがない。ここで、樹脂レンズ1がほぼ真円だと、マーク37の全ての角度が入子の回転角度によって変化しても、マーク37が示すことが可能な情報量は変化しないが、一般的に樹脂レンズには上述のゲートを切断した切断部分44を有し、当該切断部分44により樹脂レンズ1が真円ではなく、角度による違いが発生する。そして、切断部分44は、回転角度の基準位置として用いることができ、これによりマーク37の同じパターンの配置でも、回転角度の基準位置からの角度の違いにより異なる情報を示すことが可能となり、情報量を多くすることができる。
【0071】
すなわち、鏡面部41にマーク37を形成せずに、鏡面部41が形成される範囲であるフランジ面31の内周部33の範囲外となる内周部33の外側の外周部34にマーク37を設けることで、鏡面部41は光学的機能面21と回転自在な入子で形成し、入子が回転しても光学的機能面21と鏡面部41との関係に変化が生じないようにし、かつ、マーク37を鏡面部41の外側の外周部34のマーク形成面36に形成することで、入子71ではなく回転しないホルダ側で形成可能となり、同じパターン種類のマーク37でも指示することが可能な情報量を多くすることができる。なお、この例では、図2、図3に示すようにゲート部1cの切断部分44において、フランジ部3の円状の外縁の一部を、直線状にしているが、図4に示すように、直線部分を設けない形状としてもよい。この場合にゲート部1cの切断部分44のみを基準としてもよいし、円周上に基準を設けないものとしてもよい。また、フランジ部3の円状の外縁の一部を直線状にした場合に、この直線部分をマーク37の位置の基準にすることが可能となり、かつ。直線はホルダの形成面により形成されるので、ホルダにより、マーク37とその位置の基準となる直線部分との両方が形成されることになる。
【0072】
なお、この例では、マーク形成面36をマーク37の形成位置によって異なるものとすることになり、マーク37の形成位置によって、トップ面35とマーク形成面36との配置パターンも異なる場合が生じる。したがって、このトップ面35とマーク形成面36とマーク37とで情報を示すものとしてもよい。例えば、同じ2つのマーク37が同じパターンで配置されたものとしても、それぞれのマーク37用に独立して2つのマーク形成面36が設けられている場合と、一つのマーク形成面36に2つのマーク37がある場合とで、異なる情報を示すものとしたり、二つのマーク形成面36,36にそれぞれマーク37がある場合と、2つのマーク形成面36,36のうちの一方にだけマーク37がある場合とで異なる情報を示すものとしてもよい。
【0073】
さらには、突起状のマーク37を用いずに、トップ面35とマーク形成面36とからなるパターンをマークとしてもよい。すなわち、フランジ面32で最も高いトップ面35とそれより低いマーク形成面36とのパターンをマークとしてもよく、フランジ面31の円環状の外周部34のマーク形成面36となる円弧と、マーク形成面36より高いトップ面35となる円弧との組み合わせをマークとして用いてもよい。なお、この場合に各円弧の曲率半径は同じで、外周部34と同じものとなる。
【0074】
また、前記入子71の形成面は、非球面加工機により形成されるものである。すなわち、樹脂レンズ、特に非球面レンズとなる樹脂レンズを成形するための金型、特に、光学的機能面21,22を形成する金型は、非球面加工機で加工されるが、この例では、さらに、入子71が光学的機能面21だけでなく、その周囲の鏡面部41まで形成しているので、入子71の鏡面部41を形成する部分も光学的機能面21を形成する部分と一体に加工することになる。
なお、非球面加工機は、球面も加工可能であり、樹脂レンズが球面レンズであったとしても、その金型を加工することが可能である。
【0075】
そして、非球面加工機で光学的機能面21を形成する部分と鏡面部41を形成する部分とを一つの加工機による一つの工程で加工することで、金型の加工において、工程数の低減等によりコストダウンを図ることが可能となる。なお、光学的機能部2の表面は極めて滑らかに表面粗さを小さく形成する必要があるのに対して、フランジ部3の表面は必ずしもそれほど表面粗さを小さくする必要はないが、フランジ部の鏡面部41は、鏡面とするために表面粗さを小さくする必要がある。それに対応して、光学的機能部2を形成する金型の形成面と、鏡面部41を形成する金型の形成面はそれぞれ表面粗さを小さくする必要がある。この例では、これらの表面粗さを小さくすべき形成面が一つの入子71に形成されるので、別々の金型部分に表面粗さの小さい形成面を形成するよりも、効率的に金型の製造が可能となる。
また、鏡面部41は、図5(b)に示すように、基本的に樹脂レンズ1の光軸に直交する平面として加工するが、入子71の鏡面部41を形成する部分は、非球面加工機ならば光軸に直交する平面に加工することも、平面の角度を光軸に直交する角度から変更することも、平面以外に円錐台形状とする加工や、凹面鏡状の加工なども行うことが可能であり、図5(c)に示すように、円環帯状の鏡面部41aにおいて、中心に向かうにつれて、凹むようにすり鉢状の形状(略円錐状や略凹面鏡状)に加工するものとしてもよい。
【0076】
このような加工を施すことで、鏡面部41aからの光の反射を用いて樹脂レンズ1の取り付け角度を調整する際に、反射光を集光するようにし、反射光を検知するセンサのセンサ位置における測定精度を向上することが可能となる。
また、平面状とする場合も、光軸に対して直交する平面ではなく、所定の角度を持たせた平面とすることも可能であり、樹脂レンズ1の取り付け角度を測定する際に光の照射角度や光センサの配置等を作業性が向上するように変更するようなことも可能である。
【0077】
また、ホルダの形成面は、フランジ面31のトップ面35、マーク形成面36およびマーク37が設けられる外周部34を形成することになるが、ホルダの形成面は、その表面粗さ等が光学的機能面21や鏡面部41ほど精密に加工される必要がなく、精密加工が可能な非球面加工機を使用しなくてもよい。また、マーク37を形成するための構造を設ける際に、ホルダの形成面には、光学機能面を形成するための形成面がないので、光学的機能面を形成する形成面を傷付けるようなことがない。
【0078】
すなわち、入子側でフランジ面31の内周部33にマーク37を設けるような場合に、基本的に非球面加工機で光学的機能面21を形成するための形成面を加工した後にマーク37を形成するための窪み等を形成するものとすると、先に形成した光学的機能面21を形成するための形成面を傷付ける可能性が生じてしまうが、ホルダにマーク37用の窪みを設ける構成ならば、ホルダには光学的機能面21を形成する形成面がないので、当該形成面を傷付ける可能性がなく、光学的機能面21を形成する形成面を傷付けて金型が使用できなくなってしまう虞がない。これにより余計なコストが発生する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態に係る樹脂レンズを成形した際の樹脂レンズを含む成形品を示す断面図である。
【図2】前記成形品の樹脂レンズ部分を示す(a)要部正面図、(b)要部側面図、(c)要部背面図である。
【図3】前記樹脂レンズと当該樹脂レンズを示す(a)正面図、(b)側面図である。
【図4】前記樹脂レンズを示す(a)正面図、(b)側面図、(c)要部拡大側面図である。
【図5】前記樹脂レンズを示す(a)断面図、(b)要部拡大断面図、(c)変形例としての要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 樹脂レンズ
11 第2面
12 第1面
2 光学的機能部
21 光学的機能面
22 光学的機能面
3 フランジ部
31 フランジ面
32 フランジ面
33 内周部
34 外周部
35 トップ面
36 マーク形成面
37 マーク
41 鏡面部
71 入子(第1金型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的機能を有する光学的機能部と、当該光学的機能部の周囲に形成されたフランジ部と、光学的機能部の傾きを測定可能とする反射光を生ずる鏡面部と、成形時に使用される金型に係る情報を示すマークとが設けられた樹脂レンズであって、
前記フランジ部に前記鏡面部が形成され、前記フランジ部の前記鏡面部が形成された面の当該鏡面部の形成範囲外となる位置に前記マークが形成されていることを特徴とする樹脂レンズ。
【請求項2】
光ディスク用のピックアップレンズとして用いられ、
前記フランジ部の前記光ディスクに臨む面の内周側となる内周部に前記鏡面部が形成され、
前記フランジ部の前記内周部より外周側に前記マークが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂レンズ。
【請求項3】
前記光ディスク側の面の前記光学的機能部と当該光学的機能部の周囲となるフランジ部の内周部とが一つの第1金型により形成され、
前記フランジ部の内周部より外周側の前記マークが形成される部分が、前記第1金型の周囲に配置され、当該第1金型に対して別体となっている第2金型により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の樹脂レンズ。
【請求項4】
前記光学的機能部と前記鏡面部を備える内周部とを形成する形成面を非球面加工機により加工された第1金型を用いて当該光学的機能部および内周部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の樹脂レンズ。
【請求項5】
光軸に直交し、かつ、肉厚内にある所定の基準面からの前記光軸方向に沿った距離を高さとした場合に、
第1金型により形成された前記フランジ部の内周部と、前記第2金型により形成された前記フランジ部の内周部より外周側の部分との境界の高さ位置より高い位置に、前記フランジ部のトップ面が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の樹脂レンズ。
【請求項6】
前記トップ面より低い位置に前記マークが形成されるマーク形成面が設けられ、
前記マークが前記マーク形成面から高さ方向に突出して設けられるとともに前記マークの高さが前記トップ面より低くなっていることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂レンズ。
【請求項7】
前記フランジ部の前記光学的機能部の光軸に直交する平面にマークを形成したことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂レンズ。
【請求項8】
前記フランジ部の鏡面部を前記光学的機能部の光軸に直交する平面に対して設定した角度だけ傾けたことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂レンズ。
【請求項9】
前記フランジ部の鏡面部を前記フランジ部の周方向に沿って円環条に形成するとともに、半径方向中心に向かうにつれて凹むように傾けて形成したことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂レンズ。
【請求項10】
光ディスク用のピックアップレンズとして用いられ、光学的機能を有する光学的機能部と、当該光学的機能部の周囲に形成されたフランジ部と、光学的機能部の傾きを測定可能とする反射光を生ずる鏡面部と、成形時に使用される金型に係る情報を示すマークとが設けられた樹脂レンズの成形方法であって、
前記樹脂レンズの前記光ディスクに臨む面側の成形に際し、
前記光学的機能部と当該光学的機能部の周囲となるフランジ部の前記鏡面部が形成される内周部とが一つの第1金型により形成され、
前記フランジ部の内周部より外周側の前記マークが形成される部分が、前記第1金型の周囲に配置されるとともに当該第1金型に対して別体となっている第2金型により形成されることを特徴とする樹脂レンズの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−14983(P2010−14983A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174982(P2008−174982)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(391002775)マクセルファインテック株式会社 (40)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】