説明

樹脂成形品、床暖房用パネル及び成形金型

【課題】 樹脂成形品にバリが形成された状態であってもバリの影響を受けることなく、樹脂成形品(床暖房用パネル)を隙間なく密着させることができ、また、バリの影響によって樹脂成形品が浮き上がってしまうのを防止することができる樹脂成形品及び該樹脂成形品からなる床暖房用パネルを提供すると共に、これらを成形する成形金型を提供することを課題とする。
【解決手段】 複数の金型片に分割可能に構成された成形金型によって成形される樹脂成形品であって、周端部の少なくとも一部から延出するようにバリが形成される本体部と、該本体部の周端部よりも内側の領域から突出するように形成された突出部とを備え、該突出部よりも外側の領域の本体部と該突出部との間に前記バリが収容される収容部が形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品と該樹脂成形品からなる床暖房用パネルとこれらを成形する成形金型に関し、特に、成形された際に周端部から延出するようにバリが形成され得る樹脂成形品と床暖房用パネルとこれらを成形する成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に成形空間を備える成形金型を用い、該成形空間に樹脂材料を充填して成形することで得られる樹脂成形品が知られている。例えば、発泡樹脂粒子を成形空間に充填し、水蒸気を用いて加熱することで膨張させると共に表面を軟化させて発泡樹脂粒子同士を一体化することで得られる発泡樹脂成形品が知られている。
【0003】
該発泡樹脂成形品は、高い断熱性能を有することが知られており、外部へ熱を放出する放熱体と組み合わせることで床暖房設備を構成する部材の一つとして広く用いられている。例えば、発泡樹脂成形品は、板状に成形されて住宅等の床下に隙間なく敷設され、その上面に温水等が循環する配管等の放熱体が配置されるように構成された床暖房用パネルとして用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
上記のような発泡樹脂成形品は、一般的に、複数の金型片に分割可能に構成された成形金型を用いて成形される。係る成形金型は、各金型片が組み合わされることによって前記成形空間が形成されるように構成されており、係る成形金型を用いて成形された樹脂成形品は、その外形寸法にバラつきが少なく、例えば、所定サイズの板状に成形して敷設することで所望の領域に隙間なく敷設することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−20511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような成形金型は、継続的に使用することによって金型片が摩耗したり、欠損したりするため、金型片同士の間に成形空間に連通する隙間が生じてしまう場合がある。このため、成形空間に充填された樹脂材料が成形される際に前記隙間に入り込み、図6(a)に示すように、得られた樹脂成形品の周端部から一方向に延出するようにバリAが形成される場合がある。
【0007】
そして、バリAが形成された状態では、例えば、上述したように複数の樹脂成形品1を隙間なく敷設する場合、図6(b)に示すように、樹脂成形品1同士の間にバリAが挟まり、その厚み分の隙間が生じてしまう場合がある。係る場合には敷設された複数の樹脂成形品1全体の寸法にズレが生じ、所望の領域に設計通りに樹脂成形品1を敷設することが困難になってしまう場合がある。
【0008】
また、図6(c)に示すように、樹脂成形品1を敷設した際に、バリAが樹脂成形品1の下側に入り込んでしまう場合もある。この場合、樹脂成形品1がバリAの厚み分だけ浮き上がってしまい、樹脂成形品1自体の施工性やその上面に放熱体等を配置する際の施工性が悪いものとなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、樹脂成形品にバリが形成された状態であってもバリの影響を受けることなく、樹脂成形品(床暖房用パネル)を隙間なく密着させることができ、また、バリの影響によって樹脂成形品が浮き上がってしまうのを防止することができる樹脂成形品及び該樹脂成形品からなる床暖房用パネルを提供すると共に、これらを成形する成形金型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る樹脂成形品は、複数の金型片が組み合わされて成形空間が形成される成形金型を用いて成形される樹脂成形品であって、周端部の少なくとも一部から延出するようにバリが形成される本体部と、該本体部の周端部よりも内側の領域から突出するように形成された突出部とを備え、該突出部よりも外側の領域の本体部と該突出部との間に前記バリが収容される収容部が形成されることを特徴とする。
【0011】
係る構成の樹脂成形品によれば、周端部の少なくとも一部から延出するようにバリが形成される本体部と、該本体部の周端部よりも内側の領域から突出するように形成された突出部とを備え、該突出部と前記本体部との間に前記バリが収容される収容部が形成されることで、樹脂成形品にバリが形成された状態であっても、樹脂成形品同士を隙間なく密着させることができる。
【0012】
具体的には、バリが形成された一つの樹脂成形品を他の樹脂成形品と隙間なく密着させる際に、バリが他の樹脂成形品の端部や敷設された面と接触して変形して収容部の内側に入り込んだり、バリの延出する方向によっては収容部の内側に直接入り込んだりすることで、前記収容部の内側にバリが収容されることとなる。これにより、樹脂成形品同士の間にバリが挟まれることがなくなり、樹脂成形品同士を隙間なく密着させることができる。また、樹脂成形品と敷設される平面との間にバリが挟まれることもなくなり、樹脂成形品の一部が浮き上がってしまうのを防止することができる。
【0013】
また、本発明に係る樹脂成形品は、前記突出部が本体部の周端部の一部又は全部に沿って複数形成されることが好ましい。
【0014】
係る構成によれば、前記突出部が本体部の周端部の一部又は全部に沿って複数形成されることで、本体部の周端部に沿って前記収容部が形成されるため、本体部の周端部の一部又は全部に沿って形成されるバリを効果的に収容することができる。
【0015】
本発明に係る床暖房用パネルは、上記何れか一つに記載の樹脂成形品から構成される床暖房用パネルであって、前記本体部は、板状に成形されると共に、外部に熱を放出する放熱体を嵌め込む嵌込部が少なくとも一方の面に形成されていることを特徴とする。
【0016】
係る構成の床暖房用パネルによれば、上記何れか一つの樹脂成形品における本体部が板状に成形されると共に、該本体部の少なくとも一方の面に前記放熱体を嵌め込む嵌込部が形成されていることで、複数の床暖房用パネルを床下に敷設する際に、バリが前記収容部に収容された状態となるため、床暖房用パネル同士の間にバリが挟まれることがなく、床暖房用パネル同士を密着させて敷設することができる。これにより、床暖房用パネル同士の間に隙間が空くことで暖房効率が低下するのを抑制することができる。また、嵌込部を備えることで、床暖房用パネルに放熱体を固定することができ、意図せずに放熱体の位置がズレてしまうことを防止することができ、放熱体の載置を容易に行なうことができる。
【0017】
本発明に係る成形金型は、上記何れか一つに記載の樹脂成形品又は上記に記載の床暖房用パネルを成形する成形金型であって、前記金型片の少なくとも一つには、前記成形空間を形成する面の周端部よりも内側の領域に凹部が一つ又は複数形成されていることを特徴とする。
【0018】
係る構成の成形金型によれば、前記金型片の少なくとも一つには、前記成形空間を形成する面の周端部よりも内側の領域に凹部が一つ又は複数形成されていることで、樹脂成形品に形成されるバリが収容される収容部を備える樹脂成形品又は床暖房用パネルを成形することができる。
【0019】
具体的には、前記成形空間に樹脂材料が充填されると、前記凹部内にも樹脂材料が侵入するため、金型片における成形空間を形成する面(成形空間形成面)の凹部以外の領域によって前記本体部が形成され、前記凹部に対応する位置、即ち、本体部の周端部よりも内側の領域に前記突出部が形成される。これにより、該突出部と該突出部よりも外側の領域の本体部との間に前記収容部が形成され、バリを収容可能な樹脂成形品又は床暖房用パネルとなる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、樹脂成形品(床暖房用パネル)にバリが形成された状態であってもバリの影響を受けることなく、樹脂成形品及び床暖房用パネルを隙間なく密着させることができ、また、バリの影響によって樹脂成形品及び床暖房用パネルが浮き上がってしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は、本実施形態に係る成形金型が開かれた状態を示す断面図、(b)は、該成形金型が閉じられた状態を示す断面図。
【図2】本実施形態に係る成形金型が閉じられた状態を示す断面図と、その一部の拡大断面図。
【図3】(a)は、本実施形態に係る樹脂成形品を示した斜視図、(b)は、本実施形態に係る床暖房用パネルの断面図。
【図4】本実施形態に係る成形金型が閉じられた状態で樹脂成形品が成形された状態示す断面図と、その一部の拡大断面図。
【図5】(a)は、本実施形態に係る樹脂成形品にバリが形成された状態を示す断面図、(b)は、本実施形態に係る樹脂成形品同士を密着させて敷設した状態の断面図。
【図6】従来の樹脂成形品の端部にバリが形成された状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図1〜5を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態に係る樹脂成形品1は、図1に示すように、複数の金型片に分割可能に構成された成形金型10を用いて成形されるものである。本実施形態では、成形金型10は、対向するように配置された一対の金型片、具体的には、雄型11及び雌型12から構成されている。また、成形金型10は、複数の金型片が組み合わされることで樹脂成形品1を成形する成形空間13が形成されるように構成されている。該成形空間13は、複数の金型片に備えられた成形空間形成面同士が連結されて形成されるものであり、本実施形態では、雄型11及び雌型12の成形空間形成面同士が連結されることで、雄型11と雌型12との間に成形空間13が形成されるように構成されている。
【0024】
前記雄型11及び雌型12は、接離自在となるように少なくとも一方が対向する方向に可動するように構成されている。また、雄型11及び雌型12は、それぞれの内部に高温の水蒸気を導入可能な空間(図示せず)を備え、該空間に導入された水蒸気を成形空間13内へ導入可能に構成されている。
【0025】
前記雄型11は、その断面形状が凸状となるように構成されている。具体的には、雄型11は、雌型12と組み合わされた際(成形空間13が形成された際)に、雌型12の内側に配置される凸状面11aを備えている。また、雄型11は、雄型11と雌型12とが組み合わされた状態(以下、型閉状態と記す)において、前記成形空間13を形成する雄型成形面11a’(即ち、雄型11の成形空間形成面)と、雌型12の内面(具体的には、後述する雌型摺接面12a’’)と摺接する雄型摺接面11a’’とを備え、雄型成形面11a’及び雄型摺接面11a’’によって凸状面11aが形成されるように構成されている。
【0026】
前記雄型成形面11a’は、雄型11の成形空間形成面を構成するものであり、型閉状態において、雌型12の内側に配置可能に構成されている。本実施形態では、雄型成形面11a’は、雌型12の内側に配置可能な平面視四角形状、より詳しくは、長方形状に形成されている。そして、雄型成形面11a’は、その周端部に前記雄型摺接面11a’’が連結されている。
【0027】
前記雄型摺接面11a’’は、雄型成形面11a’の外周に沿って形成されている。具体的には、雄型摺接面11a’’は、一端部が雄型成形面11a’の周端部に連結され、雄型成形面11a’に対して略直角をなすように形成されている。また、雄型摺接面11a’’は、雄型成形面11a’の外周(具体的には、平面視長方形状の面の外周)の全域に沿って一体的に形成されている。そして、雄型摺接面11a’’は、型閉状態において、雌型12の内面(具体的には、後述する雌型摺接面12a’’)に密着した状態で摺接するように構成されている。即ち、前記凸状面11aは、型閉状態において、雌型12の内面に摺接するように構成されている。
【0028】
また、雄型11は、図2に示すように、雄型成形面11a’に凹部11bを備えている。該凹部11bの形状としては、特に限定されるものではないが、穴状又は溝状等であることが好ましく、本実施形態では、穴状の凹部11bが雄型成形面11a’に形成されている。前記凹部11bは、雄型成形面11a’の周端部よりも内側の領域に形成されている。雄型成形面11a’の端部と凹部11bとの間隔Lとしては、特に限定されるものではなく、樹脂成形品1に形成され得るバリの長さ等に応じて適宜選択することができる。例えば、雄型成形面11a’の端部と凹部11bとの間の間隔L1は、2〜5mm程度であることが好ましい。また、凹部11bの深さL2としては、特に限定されるものではなく、前記バリの長さ等に応じて適宜選択することができ、例えば、2〜5mm程度であることが好ましい。
【0029】
また、凹部11bは、底部11b’と該底部11b’の周端部に沿って形成された壁部11b’’とから構成されている。本実施形態では、壁部11b’’は、底部11b’から離れるに従って(一端側から他端側に向かって)拡開するように形成されている。より詳しくは、円形状に形成された底部11b’の周端部から離れるに従って拡径するように壁部11b’’が形成されている。なお、前記間隔L1は、雄型成形面11a’の端部と壁部11b’’の端部との間の最短長さである。また、深さL2は、底部11b’と壁部11b’’の他端部との間の最短長さである。
【0030】
本実施形態では、凹部11bは、雄型成形面11a’に複数形成されている。具体的には、凹部11bは、雄型成形面11a’の周端部の全域に沿って等間隔で複数形成されている。また、凹部11bは、雄型成形面11a’の周端部よりも内側の領域の略全域に複数形成されている。
【0031】
前記雌型12は、図1に示すように、その断面形状が凹状となるように構成されている。具体的には、雌型12は、雄型11と組み合わされた際に、凸状面11aを内側に配置可能に形成された凹状面12aを備えている。該凹状面12aは、型閉状態において、前記雄型成形面11a’と対向する雌型成形面12a’と、前記雄型摺接面11a’’と摺接する雌型摺接面12a’’とを備えている。そして、前記雌型成形面12a’と雌型摺接面12a’’の一部とによって雌型12の成形空間形成面が構成されている。
【0032】
前記雌型成形面12a’は、前記雄型成形面11a’に対応した形状に形成されている。本実施形態では、雌型成形面12a’は、平面視四角形状、より詳しくは、長方向状に形成されている。そして、雌型成形面12a’は、型閉状態において、雄型成形面11a’と略平行した状態で対向し、その一対の短辺が雄型成形面11a’の一対の短辺と略平行するように構成されている。
【0033】
一方、雌型摺接面12a’’は、雌型成形面12a’の外周に沿って形成されている。具体的には、雌型摺接面12a’’は、その一端部が雌型成形面12a’の周端部に連結され、雌型成形面12a’に対して略直角をなすように形成されている。また、雌型摺接面12a’’は、雌型成形面12a’の外周(具体的には、長方形状の面の外周)の全域に亘って、凸状面11aの外周、詳しくは、雄型摺接面11a’’を包囲可能となるように一体的に形成されている。これにより、雌型12は、型閉状態おいて、雌型成形面12a’と雌型摺接面12a’’とによって囲まれた空間に凸状面11aが配置可能となる。
【0034】
また、雌型摺接面12a’’は、型閉状態において、雄型摺接面11a’’に密着した状態で摺接するように構成されている。具体的には、雌型摺接面12a’’は、雄型摺接面11a’’と摺接する領域(摺接領域)と、成形空間形成面を構成する領域(成形領域)とを有している。前記摺接領域は、凹状面12aの凹状に開放する側に形成され、雄型摺接面11a’’に対応した形状に形成されている。一方、前記成形領域は、摺接領域よりも雌型成形面12a’側の領域に形成されている。
【0035】
上記のように構成された成形金型10は、型閉状態において、雄型摺接面11a’’と雌型摺接面12a’’の摺接領域とが密着した状態で摺接し、雄型成形面11a’と雌型成形面12a’と雌型摺接面12a’’の成形領域とによって成形空間13が形成される。本実施形態においては、成形空間13は、平面視長方形状の板状の空間に形成される。
【0036】
次に、前記成形金型10を用いて成形された樹脂成形品1について説明する。樹脂成形品1は、成形空間13内に樹脂材料が充填されて形成されたものである。樹脂材料としては、特に限定されるものではないが、本実施形態では、発泡樹脂粒子が用いられる。該発泡樹脂粒子は、成形空間13に複数充填された後、雄型11及び雌型12から成形空間13に導入される高温の水蒸気によって膨張すると共に、表面が溶融して軟化することによって一体化するように構成されたものである。
【0037】
発泡樹脂粒子としては、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂から形成されたものを用いることができる。具体的には、熱可塑性樹脂からなる樹脂粒子に発泡剤を含浸させたもの(発泡性樹脂粒子)を水蒸気等で加熱して予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)、又は、これらを含む複合樹脂が挙げられる。ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などを用いることができる。特に、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを含む複合樹脂を用いることが好ましい。
【0038】
また、樹脂成形品1は、成形空間13に対応した形状、本実施形態においては、雄型11と雌型12との対向する方向を厚み方向とする板状(平面視長方形状の板状)に成形されている。具体的には、樹脂成形品1は、図3(a)に示すように、雄型成形面11a’における凹部11b以外の領域と雌型成形面12a’との間に形成される本体部1aと、前記凹部11bによって形成される突出部1bとから構成されている。
【0039】
前記本体部1aは、板状(平面視長方形状の板状)の形状を有している。一方、前記突出部1bは、本体部1aの周端部よりも内側の領域から突出するように形成されている。また、突出部1bは、本体部1aの雄型成形面11a’によって成形される面側に本体部1aの厚み方向に沿って突出するように形成されている。即ち、突出部1bは、本体部1aの雄型成形面11a’によって成形される面の周端部よりも内側の領域に形成されている。また、突出部1bは、凹部11bに対応した形状(本実施形態では、円錐台状)に形成される。
【0040】
また、本実施形態では、突出部1bは、本体部1aに複数形成されている。具体的には、突出部1bは、本体部1aの周端部の全域に沿って等間隔で複数形成される。また、突出部1bは、本体部1aにおける雄型成形面11a’によって成形された面の略全域に形成される。即ち、突出部1bは、本体部1aの周端部よりも内側の領域の略全域に複数形成されている。
【0041】
上記樹脂成形品1は、熱を外部に放出する放熱体(温水等が循環する配管等)と共に住宅等の床下に敷設される床暖房用パネル1として用いられる場合がある。係る場合には、図3(b)に示すように、前記本体部1aは、板状に成形されると共に、前記放熱体を嵌め込む嵌込部1cが少なくとも一方の面に形成される。本実施形態では、嵌込部1cは、本体部1aにおける突出部1bが形成される面に対向する面、即ち、雌型成形面12a’によって形成される面側に形成される。また、嵌込部1cは、放熱体の外形に対応した溝状に形成され、放熱体を嵌め込むことで、床下において放熱体が意図せずに移動してしまうことを防止している。
【0042】
上記のように成形金型10によって成形される樹脂成形品1(床暖房用パネル)は、図4及び図5(a)に示すように、周端部の少なくとも一部から延出するようにバリAが形成されることがある。該バリAは、成形金型10が継続的に使用されることによって、雄型11と雌型12との間に隙間が生じた場合に形成される。詳しくは、バリAは、成形空間13内で樹脂材料が成形される際に、前記隙間に樹脂材料が入り込むことで樹脂成形品1の周端部の少なくとも一部から延出するように形成されるものである。本実施形態では、バリAは、凸状面11aと凹状面12aとの間(具体的には、雄型摺接面11a’’と雌型摺接面12a’’との間)に形成されるものである。即ち、バリAは、本体部1aの雄型11(具体的には、雄型成形面11a’)によって成形される側の周端部(以下、雄型側周端部と記す)の一部又は全部に沿って形成され得るものである。
【0043】
前記樹脂成形品1は、前記バリAを収容可能に構成された収容部2を備えている。該収容部2は、前記突出部1bよりも外側の領域の本体部1aと、該突出部1bとの間に形成され、バリAが変形した状態で収容されるように構成されている。詳しくは、突出部1bが本体部1aの周端部よりも内側の領域に形成されているため、バリAが形成される雄型側周端部と突出部1bとの間に間隔(前記雄型成形面11a’の端部と凹部11bとの間の間隔L1に相当する間隔)が形成される。これにより、前記突出部1bよりも外側の領域の本体部1aと、該突出部1bとの間に空間が形成され、係る空間が収容部2となってバリAが変形した状態で収容される。本実施形態では、収容部2は、雄型側周端部の全域に沿って形成されている。
【0044】
上記のような樹脂成形品1は、図5(b)に示すように、収容部2が成形された側(突出部1bが形成された側)を下方にして平面上に敷設されて用いられる。この際、バリAは、変形した状態(屈曲された状態)で収容部2内に収容されることとなる。この際、バリAが形成された樹脂成形品1の収容部2内にバリAが収容されてもよく、隣接する他の樹脂成形品1の収容部2内に収容されてもよい。これにより、樹脂成形品1同士の間にバリAが挟まれることがなくなり、樹脂成形品1同士を隙間なく密着した状態で敷設することが可能となる。また、樹脂成形品1の下側にバリAが挟まれることもないため、樹脂成形品1が浮き上がることなく敷設することが可能となる。
【0045】
以上のように、本発明に係る樹脂成形品(床暖房用パネル)1によれば、樹脂成形品1にバリAが形成された状態であってもバリAの影響を受けることなく、樹脂成形品1を隙間なく密着させることができ、また、バリAの影響によって樹脂成形品1が浮き上がってしまうのを防止することができる。
【0046】
即ち、前記樹脂成形品1は、該突出部1bと前記本体部1aとの間に前記バリAが変形した状態で収容される収容部2が形成されることで、バリAが形成された状態であっても、一つの樹脂成形品1を他の樹脂成形品1と隙間なく密着させる際に、バリAが他の樹脂成形品1の端部や敷設された面との接触によって突出部1b側に変形し、前記収容部2の内側に収容されることとなる。これにより、樹脂成形品1同士の間にバリAが挟まれることがなくなり、樹脂成形品1同士を隙間なく密着させることができる。また、樹脂成形品1と敷設される平面との間にバリAが挟まれることもなくなり、樹脂成形品1の一部が浮き上がってしまうのを防止することができる。
【0047】
また、前記突出部1bが本体部1aの周端部の一部又は全部に沿って複数形成されることで、本体部1aの周端部に沿って前記収容部2が形成されるため、本体部1aの周端部の一部又は全部に沿って形成されるバリAを効果的に収容することができる。
【0048】
また、前記本体部1a及び突出部1bが発泡樹脂粒子を用いて一体的に成形されてなることで、軽量な樹脂成形品1となると共に、発泡樹脂粒子中の空気によって断熱作用を備える樹脂成形品1となる。
【0049】
また、前記床暖房用パネル1が樹脂成形品1から構成されるで、複数の床暖房用パネル1を床下に敷設する際に、バリAが前記収容部2に収容された状態となるため、床暖房用パネル1同士の間にバリAが挟まれることがなく、床暖房用パネル1同士を密着させて敷設することができる。これにより、床暖房用パネル1同士の間に隙間が空くことで暖房効率が低下するのを抑制することができる。
【0050】
また、前記成形金型10は、前記雄型11が成形空間13を形成する面の周端部よりも内側の領域に凹部11bが一つ又は複数形成されていることで、雄型11の成形空間13を形成する面における凹部11b以外の領域と雌型12との間に前記本体部1aが形成され、凹部11bによって本体部1aの周端部よりも内側の領域に前記突出部1bが形成される。これにより、該突出部1bと該突出部1bよりも外側の領域の本体部1aとの間に前記収容部2が形成され、バリAを収容可能な樹脂成形品1となる。
【0051】
なお、本発明に係る樹脂成形品1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、下記の各種の変更例に係る構成を任意に選択して、上記実施形態に係る構成に採用してもよいことは勿論である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、凹部11bが雄型成形面11a’の周端部よりも内側の領域の略全面形成されているが、これに限定されるものではなく、雄型成形面11a’の周端部に沿って列を成すように凹部11bが形成されてもよい。係る場合には、突出部1bは、本体部1aの周端部に沿って列を成すように形成されることとなる。
【0053】
また、上記実施形態では、突出部1bが形成された側を下方にして樹脂成形品1を敷設しているが、これに限定されるものではなく、突出部1bを上方にして敷設するようにしてもよい。係る場合には、樹脂成形品1を床暖房用パネルとして用いる際には、嵌込部1cは、突出部1bが形成された側の面に形成される。
【0054】
また、上記実施形態では、凹部11bの底部11b’が円形状に形成されて、円錐台状の突出部1bが形成されているが、これに限定されるものではなく、他の形状の底部及び突出部であってもよい。例えば、底部が四角形状に形成されて角錐台状の突出部が形成されてもよく、壁部が底部に対して直角を成すように形成されて円柱状の突出部が形成されてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、樹脂成形品1を床暖房用パネルとして用いているが、これに限定されるものではなく、樹脂成形品1のみを壁の内側等に隙間なく埋設して断熱材として用いてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…樹脂成形品、1a…本体部、1b…突出部、2…収容部、10…成形金型、11…雄型、11a…凸状面、11a’…雄型成形面、11a’’…雄型摺接面、11b 凹部、11b’…底部、11b’’…壁部、12…雌型、12a…凹状面、12a’…雌型成形面、12a’’…雌型摺接面、13…成形空間、A…バリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金型片が組み合わされて成形空間が形成される成形金型を用いて成形される樹脂成形品であって、周端部の少なくとも一部から延出するようにバリが形成される本体部と、該本体部の周端部よりも内側の領域から突出するように形成された突出部とを備え、該突出部よりも外側の領域の本体部と該突出部との間に前記バリが収容される収容部が形成されることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
前記突出部は、本体部の周端部の一部又は全部に沿って複数形成されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂成形品から構成される床暖房用パネルであって、前記本体部は、板状に成形されると共に、外部に熱を放出する放熱体を嵌め込む嵌込部が少なくとも一方の面に形成されていることを特徴とする床暖房用パネル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の樹脂成形品、又は、請求項3に記載の床暖房用パネルを成形する成形金型であって、前記金型片の少なくとも一つには、前記成形空間を形成する面の周端部よりも内側の領域に凹部が一つ又は複数形成されていることを特徴とする成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−56857(P2011−56857A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210829(P2009−210829)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】