説明

樹脂成形品の成形方法、および樹脂成形品の成形装置

【課題】成形型に設けたガスエジェクターのガス噴出口内に樹脂材料が漏れ込むことを防止することによって、離型作業時に樹脂成形品に伸びや切れが発生することを防止し、樹脂成形品の外観品質の低下を防止し得る樹脂成形品の成形方法、および樹脂成形品の成形装置を提供する。
【解決手段】樹脂成形品の成形装置300は、第1の成形面311が形成されたコア型310と、型締めによって第1の成形面311との間にキャビティ340を形成する第2の成形面321が形成されたキャビ型320と、樹脂成形品530をコア型から離型する離型用ガスを噴出するガス噴出口351を第1の成形面に備えるガスエジェクター350と、塗膜362を形成する塗料を第2の成形面に塗布するとともに塗料をガス噴出口を覆うシール部351を形成するように第1の成形面に塗布する塗布用ガンと、溶融した樹脂材料を注入する注入手段370と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形方法、および樹脂成形品の成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や家庭で用いられる内装部品として、表皮層−発泡体層−芯材層の3層構造からなる表皮付きの成形部材を多用している。表皮の成形は、成形型内において塗装を行う型内塗装技術を採用している。型内塗装技術には、種々の方式があるが、例えば、成形型内に塗料を塗布して塗膜を予め形成し(いわゆる、モールドコート)、型締めした後にキャビティ内に流動性および接着性を備えた樹脂材料を注入し、成形型内において塗膜と一体化した樹脂成形品を成形する反応射出(RIM)成形方法が知られている。
【0003】
上記の成形方法にあっては、キャビティ内に注入した樹脂材料が成形面に貼り付くことを防止するために、樹脂の注入に先立って、成形面には離型剤を塗布している。しかしながら、接着性の優れた樹脂材料の貼り付きを離型剤によって防止することができず、樹脂成形品が成形面に貼り付いた状態で成形されることがある。この場合、型開きや離型によって、樹脂成形品に伸びや切れが生じる虞がある。
【0004】
上記のような樹脂成形品の伸びや切れを防止するために、例えば、成形型にエジェクター装置を埋設し、成形面と樹脂成形品との間にガスを噴出させて離型を行う方法を採用することができる(特許文献1参照)。エジェクター装置は、成形面に設けられたガス噴出口を弁体によって開閉させて、樹脂成形品に対してガスを噴出する。キャビティ内に溶融した樹脂材料を注入して成形を行う成形方法に上記のエジェクター装置を適用した場合、弁体によってガス噴出口を塞ぎ、ガス噴出口内への樹脂材料の流入を防止することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3949412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のRIM成形方法にあっては、弁体のみでは、流動性を備える樹脂材料を遮断することができず、弁体とガス噴出口との間に形成される僅かな隙間から樹脂材料の漏れ込みを生じさせる虞がある。
【0007】
ガス噴出口内に樹脂材料が漏れ込むと、ガス噴出口内において樹脂材料が固着し、樹脂材料の詰まりを生じさせる。樹脂材料の詰まりが生じることによって、弁体によるガス噴出口の開閉動作を正常かつ円滑に行うことが困難になる。その結果、離型作業時におけるガスの噴出が阻害され、樹脂成形品に伸びや切れが生じ、樹脂成形品の外観品質の低下を招くことになる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、成形型に設けたガスエジェクターのガス噴出口内に樹脂材料が漏れ込むことを防止することによって、離型作業時に樹脂成形品に伸びや切れが発生することを防止し、樹脂成形品の外観品質の低下を防止し得る樹脂成形品の成形方法、および樹脂成形品の成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、キャビティ内に注入した樹脂材料を成形する樹脂成形品の成形方法であって、キャビティを形成するための第1の成形面が形成され、型締め後に成形された樹脂成形品を離型するための離型用ガスを噴出するガス噴出口を第1の成形面に備えた第1の型と、第1の型に対して相対的に開閉自在に設けられるとともに型締めによって第1の成形面との間にキャビティを形成する第2の成形面が形成された第2の型と、を開いた状態とし、表層をなす塗膜を形成する塗料を第2の成形面に塗布するとともに塗料をガス噴出口を覆うシール部を形成するように第1の成形面に塗布する工程を有している。そして、塗布する工程の後に第1の型と第2の型とを型締めし、キャビティに溶融した樹脂材料を注入して表層をなす塗膜と一体化した樹脂成形品を成形する工程を有している。さらに、離型用ガスをガス噴出口から噴出することによってシール部を引き剥がすとともに第1の型から樹脂成形品を離型する工程を有している。
【0010】
また、本発明は、キャビティ内に注入した樹脂材料を成形する樹脂成形品の成形装置であって、樹脂成形品の外形形状に合致した内形形状を有するキャビティを形成するための第1の成形面が形成された第1の型を有している。さらに、第1の型に対して相対的に開閉自在に設けられるとともに型締めによって第1の成形面との間にキャビティを形成する第2の成形面が形成された第2の型と、キャビティ内において成形された樹脂成形品を第1の型から離型する離型用ガスを噴出するガス噴出口を第1の成形面に備えるガスエジェクターと、を有している。さらに、表層をなす塗膜を形成する塗料を第2の成形面に塗布するとともに塗料をガス噴出口を覆うシール部を形成するように第1の成形面に塗布する塗布用ガンと、キャビティに溶融した樹脂材料を注入する注入手段と、を有している。そして、離型用ガスをガス噴出口から噴出することによってシール部を引き剥すとともに、キャビティに注入した樹脂材料と表層をなす塗膜とが一体化して成形された樹脂成形品を第1の型から離型する。
【発明の効果】
【0011】
ガスエジェクターのガス噴出口を覆うようにして塗料を塗布することによってシール部を形成し、ガス噴出口内に樹脂材料が漏れ込むことを防止する。このため、ガス噴出口内に樹脂材料の詰まりが発生することを防止でき、ガスの噴出を阻害させることなく離型作業を行うことができる。その結果、離型作業時に樹脂成形品に伸びや切れが生じることを防止でき、樹脂成形品の外観品質の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る樹脂成形品の成形方法の工程を示すフローチャートである。
【図2】樹脂成形品の成形装置を簡略化して示す断面図である。
【図3】ガス噴出口を拡大して示す図である。
【図4】実施形態に係る樹脂成形品の成形方法を説明するための断面図である。
【図5】実施形態に係る樹脂成形品の成形方法を説明するための断面図である。
【図6】実施形態に係る樹脂成形品の成形方法を説明するための断面図である。
【図7】実施形態に係る樹脂成形品の成形方法を説明するための断面図である。
【図8】図8(A)は、弁部材のみによってガス噴出口内に樹脂材料が流入することを防止する対比例において、弁部材とガス噴出口内との間に樹脂材料が漏れ込んだ状態を示す図であり、図8(B)は、漏れ込んだ樹脂材料が固着し、弁部材によるガス噴出口の開閉動作を妨げている状態を示す図である。
【図9】9(A)および(B)は、ガスエジェクターを用いずに型開きを行う成形方法の対比例において、樹脂成形品に伸びや切れが生じた状態を示す図であり、図9(C)は、キャビティ内に厚肉部を形成することによって、樹脂成形品に伸びや切れが生じることを防止する対比例を示す図である。
【図10】他の実施形態に係る成形型を用いた樹脂成形装置および樹脂成形方法を説明するための断面図である。
【図11】他の実施形態に係る成形型を用いた樹脂成形装置および樹脂成形方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0014】
図2には、本実施形態の反応射出(RIM)成形装置を示す。本実施形態は、本発明に係る樹脂成形品の成形方法および樹脂成形品の成形装置を、RIM成形方法およびRIM成形装置に適用している。RIM成形装置によって成形される樹脂成形品530としては、例えば、表皮層−発泡体層−芯材層の3層構造からなる自動車部品の室内ドアトリムなどに用いられる表皮が挙げられる。塗料361および樹脂材料500には、ポリウレタRIM成形に一般的に用いられるウレタン系の材料を用いている。
【0015】
図2〜7を参照して、樹脂成形品の成形装置300は、概説すれば、第1の成形面311が形成されたコア型310(第1の型に相当する)と、コア型310に対して相対的に開閉自在に設けられるとともに型締めによって第1の成形面311との間に樹脂成形品530の外形形状に合致した内形形状を有するキャビティ340を形成する第2の成形面321が形成されたキャビ型320(第2の型に相当する)と、キャビティ340内において成形された樹脂成形品530をコア型310から離型する離型用ガス359を噴出するガス噴出口351を第1の成形面311に備えるガスエジェクター350と、表層をなす塗膜362(以下、塗膜と記す)を形成する塗料361を第2の成形面321に塗布するとともに塗料361をガス噴出口351を覆うシール部363を形成するように第1の成形面311に塗布する塗布用ガン360と、キャビティ340に溶融した樹脂材料510を注入する注入手段370と、を有している。そして、離型用ガス359をガス噴出口351から噴出することによってシール部363を引き剥すとともに、キャビティ340に注入した樹脂材料500と塗膜362とが一体化して成形された樹脂成形品530をコア型310から離型している。
【0016】
コア型310が有する第1の成形面311は全体的には、キャビ型320に対して突出した凸形状を有しており、キャビ型320が有する第2の成形面321は全体的には、コア型310に対して窪んだ凹形状を有している。離型させた樹脂成形品530は、キャビ型320に残置させている(図7(A)を参照)。ガスエジェクター350は、第1の成形面311に突出する方向に移動自在に設けられ、突出する方向の移動によってシール部363を押圧する弁部材354を有している(図3を参照)。以下、本実施の形態について詳述する。
【0017】
図2を参照して、樹脂成形品の成形装置300は、コア型310とキャビ型320とから構成される成形型330と、装置各部の動作を制御する制御部390と、を有している。
【0018】
コア型310は、キャビ型320に対して接近離反移動自在に設けている。成形型330の型締めは、コア型310をキャビ型320に対して接近移動(図中下方への移動であり、矢印aで示す)させて行う(図6(A)を参照)。成形型330の型開きは、コア型310をキャビ型320に対して離反移動(図中上方向への移動であり、矢印bで示す)させて行う(図7(A)を参照)。成形型330の型締めや、型開き、その他の動作は、後述する制御部390が送信する制御信号s1に従って行われる。
【0019】
コア型310が有する第1の成形面311には、樹脂成形品530の形状に合わせて部分的に凹凸部を形成している。一方、キャビ型320が有する第2の成形面321には、第1の成形面311に設けられた凹凸部に合致する形状の凹凸部を部分的に形成している。型締めによって、第1の成形面311と第2の成形面321との間に樹脂成形品530の外形形状に合致するキャビティ340を形成する。
【0020】
樹脂成形品の意匠外観上、キャビ型の成形面には、インバース形状を形成させる場合がある。インバース形状が形成された成形面からの樹脂成形品の取り出しは、型開きのみによって行うことができない。このため、一般的には、スライド型やスライドピンからなるアンダーカット処理構造を成形型に設けて樹脂成形品の取り出しを行なっている。
【0021】
しかしながら、成形型にアンダーカット処理構造を設けた場合、成形装置の装置構成が複雑化する。このため、成形品が樹脂成形品530のように可撓性を備えている場合には、型開きの際に、キャビ型上に樹脂成形品を残置させて、インバース形状部分を弾性変形させて取り出す方法を採用することがある。
【0022】
実施形態に係る成形方法にあっては、コア型310から噴出させた離型用ガス359によって、樹脂成形品530をキャビ型320上に残置させる(図7(A)を参照)。成形面にインバース形状が形成されたキャビ型を用いて行う成形方法に適用した場合において、上記のインバース形状部分を弾性変形させて樹脂成形品を成形面から取り出す方法を採用することができる。
【0023】
制御部390は、制御信号を送信し、予め設定された動作を装置各部に実行させる。制御部390は、例えば、離型用ガス359を噴き付けるタイミングや、離型用ガス359の噴出量、成形型330の型締めおよび型開きのタイミングを制御する。
【0024】
ガスエジェクター350は、チャンバ(図示せず)内に保管した離型用ガス359を供給する離型用ガス供給部352と、コア型310内に設けられたガス供給路353aと、第1の成形面311に配置されたガス噴出口351と、ガス噴出口351内に設けられた弁部材354と、を有している。
【0025】
ガスエジェクター350は、制御部390から送信された制御信号s2に従って離型用ガス359をガス供給路353aへ送り込む。離型用ガス359は、ガス供給路353aを通過させてガス噴出口351から噴出させる。
【0026】
図3(A)、および(B)を参照して、弁部材354は、離型用ガス359が供給される側に配置された係止部355と、第1の成形面311側に配置されるとともにガス噴出口351を開閉させる蓋部356と、係止部355と蓋部356とを連結する軸部357と、係止部355を支持する圧縮変形自在な弾性部材358と、を有している。弾性部材358には、バネ部材を用いているが、これに限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0027】
弁部材354は、離型用ガス359を噴出させることによって、初期位置pから第1の成形面311に突出する方向に移動し、ガス噴出口351を開いた状態とする(図3(B)を参照)。
【0028】
係止部355は、離型用ガス359の風圧を受けて弾性部材358を圧縮させつつ、第1の成形面311に突出する方向に移動する。係止部355の移動に伴って、軸部357および蓋部356も第1の成形面311に突出する方向に移動し、弁部材354全体が第1の成形面311に突出する方向に移動する。
【0029】
蓋部356を移動させることによって、ガス噴出口351を開く。離型用ガス359を噴出させている間は、係止部355が離型用ガス359の風圧を受け続ける。これにより、弾性部材358が圧縮した状態を維持するため、ガス噴出口351の開いた状態を維持することが可能になる。
【0030】
蓋部356は、シール部363を押圧するように移動し、ガス噴出口351とシール部363との間に隙間部gを形成させる。隙間部gを形成させる際、シール部363を押圧して樹脂成形品530の離型を補助する。
【0031】
離型作業時には、隙間部gに流し込むように離型用ガス359を噴出させる。樹脂成形品530には、シール部363を介して離型用ガス359を噴き付ける。離型用ガス359の噴き付けによって、シール部363を引き剥がすとともに、コア型310から樹脂成形品530を離型させる(図7(A)を参照)。
【0032】
このように、弁部材354は、第1の成形面311に突出する方向に移動し、第1の成形面311とシール部363との間に隙間部gを形成する。隙間部gに流し込むように離型用ガス359を噴出させることによって、シール部363および樹脂成形品530に対して付与する離型用ガス359の風圧を高めることができる。このため、より円滑に樹脂成形品530をコア型310から離型させることが可能になる。
【0033】
離型用ガス359の噴出を停止させると、弾性部材358が伸長し、係止部355の移動とともに弁部材354全体が初期位置pに向けて移動する。弁部材354が初期位置pに戻されることによって、ガス噴出口351が閉じる。
【0034】
離型用ガス359の種類は、特に限定されるものではないが、コストの低減を図るために空気等を用いることが望ましい。例えば、離型剤を混入させて離型用ガス359を噴出させることも可能である。シール部363を形成する塗料361の塗布不足や、シール部363の厚さ寸法の不足によってガス噴出口351内に樹脂材料500が入り込んだ場合に、樹脂材料500の除去作業を容易に行うことが可能となる。ガス噴出口351内のメンテナンスを兼ねて、定期的に離型剤を離型用ガス359に混入させてを噴出させることが望ましい。
【0035】
塗布用ガン360には、一般的な塗膜用スプレーガンを用いることができる(図5(A)を参照)。塗布用ガン360により、第1の成形面311、および第2の成形面321に塗料361を塗布する。第2の成形面321には、成形面321全体に塗料361を塗布し、製品の意匠外観を構成させるための塗膜362を形成させる。第1の成形面311には、ガス噴出口351を覆うようにして塗料361を塗布し、シール部363を形成させる。シール部363は、少なくとも、ガス噴出口351内への樹脂材料500の流入を防止する程度に形成されていればよく、第1の成形面311全体に形成させる必要はない。
【0036】
また、製品形状が複雑な場合は、ガス噴出口351のシール部363以外の部位、例えば、1〜5°程度の抜き勾配(抜き角θ、図9(A)を参照)が小さい部位に塗料361を塗布することによって、接着性が高い樹脂材料500と成形面311との離型性より、塗料361を塗布した部位と成形面311との離型性の方を高くすることが可能である。そのため、離型補助を行う様な場合は、成形面311への塗料361の塗布は、ガス噴出口351においてシール部363を形成させる部位以外の部位に塗布しても何の問題もない。
【0037】
本成形で用いられるRIM成形は、一般的に材料の接着性が高く、液体で水に近い流動性を有しているため、一般的な射出成形材料である固体(ペレット)を溶融しながら型内へ流動させる射出成形に比べたら、はるかに流動性が良い。RIM材料の流動性が非常によいために、型内に少しの隙間があると反応した材料が、接着性と流動性の良さから、隙間へ流れ込み、固着するという現象が発生する。そこで、隙間を覆うように、1層塗膜層363を形成させることによって、流動性の高い材料であっても、塗膜363を貫通して第1の成形面311の側へ漏れ出させることなく、成形することが可能になる。
【0038】
また、塗料を塗布した第1の成形面311には、少なくとも膜状態を形成していることが必要であり、あまり薄すぎてポーラス状のような微細な貫通した穴が開いている状態では、隙間への流れ込みを防止する効果を発揮することが困難である。このため、使用する塗料によっても違いはあるが、ポーラス状にならない膜厚設定を行うことが望ましい。
【0039】
上記の効果を十分に発揮させるためには、例えば、膜厚の寸法を5〜10μmと同程度、またはそれよりも大きな寸法で形成することが望ましい。また、膜厚をより大きくすることによって、膜自体の強度を高めることができ、樹脂材料510の浸入をより確実に防止することが可能になる。なお、膜厚の寸法は例示したものに限定されず、適宜変更することが可能である。
【0040】
塗料361を塗布する際には、キャビ型320の合わせ面335にマスキング治具395を配置している(図5(A)を参照)。マスキング治具395によって意図しない部位に塗料361が塗布されることを防止するためである。マスキング治具395には、例えば、適宜の形状を有した金属部材を用いることができる。
【0041】
塗膜362およびシール部363は、同一の塗料361によって形成することができ、成形作業に要するコストを低減させることができる。同一の塗料361を用いることができるため、塗膜362を形成する塗料用スプレーガンと、シール部363を形成する塗料用スプレーガンとを共用化することができ、装置の設備コストを低減させることができる。
【0042】
再び図2を参照して、注入手段370は、チャンバ(図示せず)内に保管した樹脂材料510を供給する樹脂材料供給部371と、キャビティ340内に溶融した樹脂材料510を注入するミキシングヘッド372と、を有している。注入手段370は、制御部390から送信された制御信号s3に従って樹脂材料供給部371から溶融した樹脂材料510をミキシングヘッド372へ送り込む。ミキシングヘッド372は、溶融した樹脂材料510を、コア型310とキャビ型320との間に設けられるゲートを介してキャビティ340内に注入させる(図6(B)を参照)。
【0043】
樹脂成形品の成形装置300は、成形型330から樹脂成形品530を取り出し易くするために、塗料361の塗布に先立って第1の成形面311および第2の成形面321に離型剤381を塗布する離型剤塗布手段380を備えている(図4(A)を参照、塗布後の離型剤381は図中省略する)。離型剤塗布手段380には、一般的な離型剤用スプレーガンを用いることができる。離型剤381には、例えば、樹脂成形の成形装置の離型剤として用いられるワックス、金属石けん、シリコーン系離型剤等を用いることができる。
【0044】
次に、樹脂成形品の成形方法について説明する。
【0045】
図1を参照して、樹脂成形品530の成形方法は、概説すれば、離型剤381を塗布する工程(S11)と、マスキング治具395を配置する工程(S12)と、成形面311、321に塗料361を塗布する工程(S13)と、マスキング治具395を取り外す工程と(S14)と、型締めする工程(S15)と、樹脂材料510を注入する工程(S16)と、型を開くとともに、離型用ガス359を噴出させて樹脂成形品530を離型する工程(S17)と、樹脂成形品530を取り出す工程(S18)と、を有している。樹脂成形品530を離型する工程(S17)において、コア型310とキャビ型320とを型開きしつつ離型用ガス359を噴出させている。以下、各工程について詳述する。
【0046】
図4(A)を参照して、離型剤381を塗布する工程を行う(S11)。コア型310およびキャビ型320を開いた状態とし、第1の成形面311および第2の成形面321に離型剤381を塗布する。離型剤381の塗布は、離型剤用スプレーガン380によって行う。
【0047】
図4(B)を参照して、マスキング治具395を配置する工程を行う(S12)。マスキング治具395は、キャビ型320の合わせ面335上に配置することによって、塗料361を塗布する範囲を規制する。
【0048】
図5(A)を参照して、成形面311、321に塗料361を塗布する工程を行う(S13)。第2の成形面321には、成形面321全体に塗膜362が形成されるように塗料361を塗布する。第1の成形面311には、第1の成形面311に設けられたガス噴出口351を覆うようにして塗料361を塗布し、シール部363を形成する。塗料361には、同一の塗料361を使用し、共用化された塗膜用スプレーガン360によって塗布作業を行う。
【0049】
図5(B)を参照して、マスキング治具395を取り外す工程を行う(S14)。キャビ型320の合わせ面335上に配置したマスキング治具395を取り外す。
【0050】
図6(A)を参照して、型締めする工程を行う(S15)。塗料361を塗布する工程の後に、コア型310をキャビ型320に対して接近移動させて成形型330を型締めする。コア型310が有する第1の成形面311とキャビ型320が備える第2の成形面321との間に、樹脂成形品530の外形形状に合致する形状のキャビティ340を形成する。
【0051】
図6(B)を参照して、樹脂材料510を注入する工程を行う(S16)。注入手段370によって溶融した樹脂材料510をキャビティ340内に注入する。溶融した樹脂材料510は、流動性、および塗膜362と一体化して樹脂成形品530を成形させるための接着性を備えている。溶融した樹脂材料510の注入に先立って形成されたシール部363は、ガス噴出口351内に樹脂材料510が流入することを防止する。
【0052】
ここで図8(A)には、弁部材640のみによってガス噴出口610内に溶融した樹脂材料510が流入することを防止する対比例において、弁部材640とガス噴出口610との間に樹脂材料510が漏れ込んだ状態を示し、図8(B)には、漏れ込んだ樹脂材料510が固着し、弁部材640によるガス噴出口351の開閉動作を妨げている状態を示す。
【0053】
弁部材640は、成形面620に向かう進退移動によってガス噴出口610の開閉動作を行う構成となっている。ガス噴出口610を閉じた状態とすることによって、キャビティ内に注入された樹脂材料510の流入を防止する。弁部材640の成形面620に向かう進退移動を可能とするために、弁部材640とガス噴出口610との間には、間隙を設ける必要がある。流動性を備える樹脂材料510は、この間隙からガス噴出口610内に漏れ込む(図8(A)を参照)。
【0054】
ガス噴出口610内に漏れ込んだ樹脂材料510は、その接着性によって、弁部材640とガス噴出口610との間で固着する。固着した樹脂材料520は、弁部材640によるガス噴出口610の開閉動作を妨げる。このため、離型作業時に弁部材640によるガス噴出口610の開閉動作を正常かつ円滑に行うことができず、離型に要する十分な量の離型用ガスを噴出させることが困難になる(図8(B)を参照)。その結果、成形面に貼り付いた状態で樹脂成形品を離型させることになり、樹脂成形品に後述する伸びや切れを発生させることになる(図9(B)を参照)。
【0055】
これに対して、本実施形態にあっては、溶融した樹脂材料510の注入に先立ってガス噴出口351を覆うようにして塗布した塗料361によってシール部363を形成している。シール部363は、ガス噴出口351内への樹脂材料510の漏れ込みを遮断する。このため、ガス噴出口351内に樹脂材料の詰まり520が発生することを防止でき、離型用ガス359の噴出を阻害させることなく樹脂成形品530を離型させることができる。その結果、離型作業時に樹脂成形品530に伸びや切れが生じることを防止でき、樹脂成形品530の外観品質が低下することを防止できる。
【0056】
図7(A)を参照して、成形型330を開くとともに、離型用ガス359を噴出させて樹脂成形品530を離型させる工程を行う(S17)。溶融した樹脂材料510が硬化し、塗膜362と樹脂材料500とが一体化して成形された状態でコア型310をキャビ型320から離反移動させて成形型330を開く。成形型330を開きつつ、ガスエジェクター350によって離型用ガス359を噴出させる。
【0057】
ガスエジェクター350は、離型用ガス供給部352からガス供給路353aへ離型用ガス359を送り込む。離型用ガス359は、ガス噴出口351内に設けられた弁部材354を第1の成形面311に突出する方向に移動させる。弁部材354は、突出する方向の移動によって、シール部363を押圧し、シール部363と第1の成形面311との間に隙間部gを形成する(図3(B)をも参照)。隙間部gを形成させる際、弁部材354は、シール部363を押圧して樹脂成形品530の離型を補助する。
【0058】
離型用ガス359は、隙間部gに流し込むように噴き付ける。隙間部gに流し込むように離型用ガス359を噴出させることによって、シール部363および樹脂成形品530に対して付与する離型用ガス359の風圧を高める。
【0059】
離型用ガス359の噴出によって、シール部363を第1の成形面311から引き剥がすとともに、第1の成形面311と樹脂成形品530との間に流し込むように離型用ガス359を噴出させることによって、コア型310から樹脂成形品530を離型させる。
【0060】
コア型310から離型させた樹脂成形品530は、キャビ型320上に残置させる。
【0061】
図9(A)および(B)には、ガスエジェクター350を用いずに、またはその機構が機能しない場合に型開きを行う成形方法の対比例において、樹脂成形品530に伸びや切れが生じた状態を示し、図9(C)には、キャビティ340内に厚肉部730を形成することによって、樹脂成形品530に伸びや切れが生じることを防止する対比例を示す。
【0062】
成形面711、721には、樹脂成形品530の外形形状に合致するように凸部および凹部を形成させている。キャビティ内において、この凸部の縦壁部と凹部の縦壁部とが互いに向かい合う部位は、他の部位に比べて型開きを行う際の抜き勾配(抜き角θ)が小さくなる。このような部位では、樹脂成形品530の貼り付きがより生じ易くなる(図9(A)を参照)。
【0063】
第1の成形面711に樹脂成形品530が貼り付いた状態で型開きを行うと、図示されるような樹脂成形品530の伸びが生じる。また、伸びが生じている状態で型開きを行うことによって、樹脂成形品530に切れが生じる虞がある(図9(B)を参照)。
【0064】
厚肉部730を形成して抜き勾配を大きくした場合には、樹脂成形品530の貼り付きを抑制することは可能である。しかしながら、厚肉部730は、キャビティ340内の他の部位と比較して断面積が大きくなるため、ボイド740が発生し易くなる(図9(C)を参照)。ボイド740が発生すると、樹脂成形品530の触感が硬くなるため、樹脂成形品530の製品品質が低下する。また、厚肉部740を形成するため、樹脂材料500を余分に注入する必要がある。このため、樹脂成形に要するコストの増加を招くことになる。
【0065】
これに対して、本実施形態にあっては、コア型310に設けられたガスエジェクター350から噴出させた離型用ガス359を、第1の成形面311と樹脂成形品530との間に流し込むように噴き付けて、第1の成形面311の側から樹脂成形品530を離型させる。このため、成形面311、321に離型剤381を塗布したにも関わらず、成形面311、321への樹脂成形品530の貼り付きが生じるような場合であっても、型開き時に樹脂成形品530に伸びや切れが発生することを防止できる。
【0066】
さらに、型開きしつつ離型用ガス359を噴出させるため、樹脂成形品530における第1の成形面311から離型した部位が、再度第1の成形面311に貼り付くことを防止でき、樹脂成形品530に伸びや切れが生じることをより確実に防止することができる。型開きしつつ樹脂成形品530を離型させることができるため、成形作業の作業効率を向上させることができる。
【0067】
再び図7(A)を参照して、コア型310から引き剥がされたシール部363は、塗膜362が形成された側の面と反対側の面に残存することになる。塗膜362が形成された側の面と反対側の面は、製品の意匠外観を構成しないため、残存したシール部363によって外観品質の低下が招かれる虞はない。また、シール部363は、適宜除去することも可能である。
【0068】
図7(B)を参照して、樹脂成形品530を取り出す工程を行う(S18)。離型作業時に樹脂成形品530に伸びや切れが生じることを防止したため、外観品質を低下させることなく成形された樹脂成形品530を取得することができる。
【0069】
離型させた樹脂成形品530をキャビ型320上に残置させているため、インバース形状が形成された成形面を備えるキャビ型320を用いた成形方法に適用した場合において、インバース形状部分を弾性変形させて樹脂成形品530を取り出すことができる。
【0070】
上述したように、本実施形態によれば、溶融した樹脂材料510の注入に先立ってガス噴出口351を覆うようにして塗布した塗料361によってシール部363を形成し、ガス噴出口351内への樹脂材料510の漏れ込みを遮断する。このため、ガス噴出口351内に樹脂材料の詰まり520が発生することを防止でき、離型用ガス359の噴出を阻害させることなく樹脂成形品530を離型させることができる。その結果、離型作業時に樹脂成形品530に伸びや切れが生じることを防止でき、樹脂成形品530の外観品質が低下することを防止できる。
【0071】
離型させた樹脂成形品530をキャビ型320上に残置させているため、インバース形状が形成された成形面を備えるキャビ型320を用いた成形方法に適用した場合において、インバース形状部分を弾性変形させて樹脂成形品530を取り出すことができる。
【0072】
型開きしつつ離型用ガス359を噴出させるため、樹脂成形品530における第1の成形面311から離型した部位が、再度第1の成形面311に貼り付くことを防止でき、樹脂成形品530に伸びや切れが生じることをより確実に防止することができる。型開きしつつ樹脂成形品530を離型させることができるため、成形作業の作業効率を向上させることができる。
【0073】
弁部材354は、第1の成形面311に突出する方向に移動し、第1の成形面311とシール部363との間に隙間部gを形成する。隙間部gに流し込むように離型用ガス359を噴出させることによって、シール部363および樹脂成形品530に対して付与する離型用ガス359の風圧を高めることができる。このため、より円滑に樹脂成形品530をコア型310から離型させることが可能になる。
【0074】
(他の実施形態)
図10、および図11は、他の実施形態に係る成形型330を用いた樹脂成形品の成形方法、および樹脂成形品の成形装置を説明するための断面図である。図1〜7に示した部材と共通する部材には同一の符号を付し、その説明は一部省略する。
【0075】
図10、および図11を参照して、他の実施形態における成形型330は、型締めしたコア型310とキャビ型320とが突き合わされる合わせ面335に配置された可動型410と、可動型410をコア型310に連結する連結手段420と、を備えている。
【0076】
可動型410は、成形型330の型開閉方向に移動自在に設けられており、キャビティ340とキャビティ340外部との連通を遮断する。可動型410は、型開き初期時にコア型310の型開きに連動して型開き方向に移動しつつ、離型用ガス359を噴出している状態にあるキャビティ340とキャビティ340外部との連通を遮断する。
【0077】
可動型410は、型開き初期時にコア型310の型開きに連動して型開き方向に移動しつつ、離型用ガス359を噴出している状態にあるキャビティ340とキャビティ340外部との連通を遮断する。これにより、離型用ガス359を噴出させた直後にあるキャビティ340内に外部から空気が流れ込んだ場合、離型用ガス359の噴出による離型効果が十分発揮されず、樹脂成形品530の離型が困難になる虞を防止する。
【0078】
可動型410内には、コア型310内のガス供給路353aと連通させるように形成されたガス供給路353bを設けている。型を締めることによって、両者のガス供給路353a、353bは、連通した状態になる。
【0079】
連結手段420は、可動型410内に設けられた連結穴421と、連結穴421内において成形型330の開閉方向に移動する連結ピン422と、を有している。
【0080】
連結ピン422の一側の端部は、コア型310に固定している。連結ピン422の他側の端部には、連結穴421の内壁との突き当てによって可動型410を成形型330の型開きに連動させて移動させる係合部423を設けている。連結ピン422と、係合部423が突き当てられる連結穴421内の突き当て部425との間には、一定量の距離(ストローク量)wを設けている。
【0081】
連結ピン422とコア型310との固定方法には、溶接やネジ留めを適宜選択することができる。
【0082】
次に、図10、および図11を参照して、本実施形態の樹脂成形品の成形方法について説明する。
【0083】
図10(A)を参照して、キャビティ340内に注入された樹脂材料510と、塗膜362とが一体化した樹脂成形品530を成形する。
【0084】
図10(B)を参照して、コア型310をキャビ型320に対して離反移動させるとともに、離型用ガス359を噴出させる。離型用ガス359を噴出させることによって、シール部363を引き剥がすとともに、コア型310から樹脂成形品530を離型させる。
【0085】
成形型330を開くためにコア型310を型開き方向に移動させると、コア型310とともに連結ピン422が型開き方向に移動する。連結ピン422の移動によって、係合部423が突き当て部425に突き当たる。
【0086】
図11(A)を参照して、係合部423が突き当て部425に突き当てられた状態でさらにコア型310を移動させると、コア型310の移動に連動して可動型410が型開き方向に移動し、キャビティ340とキャビティ340外部とが連通した状態になる。
【0087】
係合部423と突き当て部425との間に一定の距離wを設けることによって、コア型310が移動を開始するタイミングと、可動型410が移動を開始するタイミングとの間に時間差を設けることが可能になる。この時間差によって、型開きを行いつつ、離型用ガス359の噴出を開始した直後にあるキャビティ340とキャビティ340外部とを連通しない状態に維持することが可能になる。
【0088】
本実施形態の樹脂成形品の成形装置300にあっては、可動型410によってキャビティ340とキャビティ340外部との連通を遮断する。可動型410が移動するタイミングとコア型310が移動するタイミングとの間に時間差を設けることによって、成形型330の型開きを行いつつ、離型用ガス359を噴出させた直後にあるキャビティ340とキャビティ340外部との連通を遮断する。このため、離型用ガス359の噴出による離型効果を十分に発揮させることができ、より確実にコア型310から樹脂成形品530を離型させることが可能になる。
【0089】
図11(B)を参照して、キャビ型320に残置させた樹脂成形品530を取り出す。
【0090】
以上、本実施形態にあっても、ガス噴出口351内に樹脂材料の詰まり520が発生することを防止でき、離型用ガス359の噴出を阻害させることなく樹脂成形品530を離型させることができる。その結果、離型作業時に樹脂成形品530に伸びや切れが生じることを防止でき、樹脂成形品530の外観品質が低下することを防止できる。
【0091】
さらに、可動型410が移動するタイミングとコア型310が移動するタイミングとの間に時間差を設けることによって、成形型330の型開きを行いつつ、離型用ガス359を噴出させた直後にあるキャビティ340とキャビティ340外部との連通状態を遮断することができる。このため、離型用ガス359の噴出による離型効果を十分に発揮させることができ、より確実にコア型310から樹脂成形品530を離型させることができる。
【0092】
本実施形態は、適宜改変することが可能である。
【0093】
例えば、コア型310にガスエジェクター350を設けているが、キャビ型320にガスエジェクター350を設けることも可能である。また、コア型310にアンダーカット形状が形成されていないような場合には、キャビ型320をコア型310から離反移動させつつ離型用ガス359を噴出させて、樹脂成形品530をコア型310に残置させることも可能である。
【0094】
ガスエジェクター350を設ける個数や配置する箇所は、特に限定されるものではない。成形面311、321に設けられたガス噴出口351内から離型用ガス359を噴出させて、樹脂成形品530の離型を行い得る範囲において適宜変更することが可能である。
【0095】
離型用ガス359は、型開きとともに噴出させているが、噴出させるタイミングは適宜変更することが可能である。例えば、樹脂材料500が塗膜362と一体化した後、型開きを開始する直前に離型用ガス359の噴出を開始させることも可能である。
【0096】
塗料361および、樹脂材料500は、ウレタン系の材料に限定されるものではなく、例えば、その他の熱可塑性および熱硬化性樹脂からなる材料を用いることも可能である。
【0097】
可動型410は、コア型310に連結し、型開きに連動させて型開き方向に移動させる構成としているが、例えば、キャビ型320を移動させて型開きを行う装置構成の場合には、キャビ型320に連結させて、その型開きに連動させて移動させる構成にすることも可能である。
【0098】
ストローク量wは、適宜変更することができる。ストローク量wを調整することによって、型開きを開始するタイミングと可動型410が型開き方向へ移動するタイミングとの間の時間差を調整することが可能である。
【0099】
本発明に係る樹脂成形品の成形方法および成形装置は、反応射出成形のみに用いられるものではなく、相対的に開閉自在に設けられた複数の型の成形面に塗料を塗布して塗膜を形成し、その塗膜と樹脂材料とを一体化させた樹脂成形品の取得を目的とする成形方法および成形装置に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
300 樹脂成形品の成形装置、
310 コア型(第1の型)、
311 第1の成形面、
320 キャビ型(第2の型)、
321 第2の成形面、
330 成形型、
335 合わせ面、
340 キャビティ、
350 ガスエジェクター、
351 ガス噴出口、
352 離型用ガス供給部、
353a、353b ガス供給路、
354 弁部材、
355 係止部、
356 蓋部、
357 軸部、
358 弾性部材、
359 離型用ガス、
360 塗布用ガン、
361 塗料、
362 表層をなす塗膜、
363 シール部、
370 注入手段、
371 樹脂材料供給部、
372 ミキシングヘッド、
380 離型剤塗布手段、
381 離型剤、
390 制御部、
395 マスキング治具、
410 可動型、
420 連結手段、
421 連結穴、
422 連結ピン、
423 係合部、
425 突き当て部、
500 樹脂材料、
510 溶融した樹脂材料、
520 固着した樹脂材料、
530 樹脂成形品、
g 隙間部、
p 初期位置、
θ 抜き角、
w ストローク量、
s1、s2、s3 制御信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを形成するための第1の成形面が形成され、型締め後に成形された樹脂成形品を離型するための離型用ガスを噴出するガス噴出口を前記第1の成形面に備えた第1の型と、前記第1の型に対して相対的に開閉自在に設けられるとともに型締めによって前記第1の成形面との間に前記キャビティを形成する第2の成形面が形成された第2の型と、を開いた状態とし、
表層をなす塗膜を形成する塗料を前記第2の成形面に塗布するとともに前記塗料を前記ガス噴出口を覆うシール部を形成するように前記第1の成形面に塗布する工程と、
前記塗布する工程の後に前記第1の型と前記第2の型とを型締めし、前記キャビティに溶融した樹脂材料を注入して前記表層をなす塗膜と一体化した樹脂成形品を成形する工程と、
前記離型用ガスを前記ガス噴出口から噴出することによって前記シール部を引き剥がすとともに前記第1の型から前記樹脂成形品を離型する工程と、を有する樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記樹脂成形品を離型する工程は、前記第1の型と前記第2の型とを型開きしつつ前記離型用ガスを噴出する、請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
前記第1の成形面は、前記第2の型に対して突出した凸形状を有し、前記第2の成形面は、前記第1の型に対して窪ませた凹形状を有し、離型させた前記樹脂成形品を前記第1の型に残置させる、請求項1または請求項2に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
樹脂成形品の外形形状に合致した内形形状を有するキャビティを形成するための第1の成形面が形成された第1の型と、
前記第1の型に対して相対的に開閉自在に設けられるとともに型締めによって前記第1の成形面との間に前記キャビティを形成する第2の成形面が形成された第2の型と、
前記キャビティ内において成形された樹脂成形品を前記第1の型から離型する離型用ガスを噴出するガス噴出口を前記第1の成形面に備えるガスエジェクターと、
表層をなす塗膜を形成する塗料を前記第2の成形面に塗布するとともに前記塗料を前記ガス噴出口を覆うシール部を形成するように前記第1の成形面に塗布する塗布用ガンと、
前記キャビティに溶融した樹脂材料を注入する注入手段と、を有し、
前記離型用ガスを前記ガス噴出口から噴出することによって前記シール部を引き剥すとともに、前記キャビティに注入した前記樹脂材料と前記表層をなす塗膜とが一体化して成形された樹脂成形品を前記第1の型から離型する、樹脂成形品の成形装置。
【請求項5】
前記ガスエジェクターは、前記第1の成形面に突出する方向に移動自在に設けられ、前記突出する方向の移動によって前記シール部を押圧する弁部材を有する請求項4に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項6】
型締めした前記第1の型と前記第2の型とが突き合わされる合わせ面に配置され、前記キャビティと前記キャビティ外部との連通を遮断する型開閉方向に移動自在な可動型と、前記可動型を前記第1の型または前記第2の型に連結する連結手段とをさらに有し、
前記可動型は、型開きに連動して前記型開き方向に移動しつつ前記離型用ガスを噴出している状態にある前記キャビティと前記キャビティ外部との連通を遮断する、請求項4または請求項5に記載の樹脂成形品の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−214782(P2010−214782A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64418(P2009−64418)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】