樹脂成形品
【課題】熱硬化性樹脂材のシートモールディングコンパウンド(SMC)を用いた成形品の厚肉部の、SMCの硬化時の硬化収縮や、硬化反応による発熱とその後の冷却による発熱とその後の冷却による熱収縮によって発生する内部クラックやヒケ、変形を抑制する。
【解決手段】成形品20の薄肉部位22にはSMCまたはLSMCのいずれかの成形部22aが、15mm以上の厚肉部位21の中央部にはBMC成形部21bを設けるとともに、BMC成形部21bを囲んでSMCまたはLSMCのいずれかの成形部21aを設ける。
【解決手段】成形品20の薄肉部位22にはSMCまたはLSMCのいずれかの成形部22aが、15mm以上の厚肉部位21の中央部にはBMC成形部21bを設けるとともに、BMC成形部21bを囲んでSMCまたはLSMCのいずれかの成形部21aを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)を用いた熱硬化性樹脂成形品に関するものであり、特に15mm以上の厚肉部を有する熱硬化性樹脂成形品に係るものである。
【背景技術】
【0002】
SMC等の熱硬化性樹脂はガラス繊維等で強化された複合材料であるため、強度が大きく、また、金属と比べると複雑な形状を比較的容易に成形できる特長を有するため、種々の製品に用いられている。
SMCの成形品は、圧縮成形法により製造されることがほとんどである。圧縮成形法は、プレス装置に取り付けられ、所定の温度に制御(加熱)された金型(下型と上型)に、適量の樹脂材料を投入し、プレス機による型締めにより、上型と下型で樹脂材料を加熱しながら圧縮することで、金型に沿った形状に成形し、この状態で一定時間保持することで、樹脂材料を硬化させた後、金型より取り出し成形品を得る方法である。
SMCを用いた圧縮成形による成形品の場合、製品に求められる機能により、成形品には部分的に厚肉部を設ける場合がある。SMCは硬化時の硬化収縮や硬化反応による発熱とその後の冷却による熱収縮などによって、成形品内部に歪が生じてしまうことが多い。特に肉厚が大きい成形品の場合、内部歪が大きく、内部クラックやヒケ、変形といった成形不良が発生してしまう。
【0003】
このような成形不良の発生を抑制する技術としては、金型内に予めABS樹脂などからなる中芯材を金型キャビティの中央部に配置し、その外周部に熱硬化性樹脂液を注入し、加熱する際に、熱硬化性樹脂の硬化収縮体積量に見合った体積膨張量を中芯材に発生させるとともに中芯材の膨張と熱硬化性樹脂の硬化収縮とを同期させることで、成形品表面のヒケを抑制する技術が示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−079620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記特許文献1に示された技術では、成形品表面に発生するヒケ不良を抑制することはできるが、内部に挿入した熱可塑性樹脂である中芯材が想定以上に膨張することにより、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の界面にクラックが発生してしまう等の不良が発生する場合があるという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、SMCなどの熱硬化性樹脂を用いて厚肉部を有する成形品を成形する場合に、成形品内部に発生するクラック不良を抑制し、不良のない健全な樹脂成形品を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る樹脂成形品は、熱硬化性樹脂材を加熱、圧縮して形成され、薄肉部位と厚肉部位とが一体化して設けられた樹脂成形品であって、前記薄肉部位は、SMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方で形成されており、前記厚肉部位は15mm以上の肉厚を有し、その肉厚方向中央部分にBMC成形部が設けられているとともに、前記BMC成形部を囲むようにSMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方が形成されているものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は上記のような構成を採用しているので、厚肉部位を有した樹脂成形品であるのにもかかわらず、成形品内部にクラックの発生や、ヒケさらには変形を抑制した優れた品質の樹脂成形品を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】SMCの製造工程を説明する図である。
【図2】SMC、LSMC、BMCの特性測定結果及び成形品の内部クラック発生数を示す図である。
【図3】SMC成形品の曲げ試験法を説明する図である。
【図4】参考例の成形品を示す外観図である。
【図5】参考例の成形品の断面を示す図である。
【図6】参考例の材料チャージパターンを説明する図である。
【図7】参考例の成形品の配向模式を示す図である。
【図8】成形品の内部クラックを示す模式図である。
【図9】成形品内部の発熱状況を示す模式図である。
【図10】圧縮成形時の樹脂温度変化を示す図である。
【図11】実施の形態1による成形品の断面を示す図である。
【図12】実施の形態1の厚肉部の配向模式図である。
【図13】実施の形態1の材料チャージパターンを説明する図である。
【図14】実施の形態2による成形品の断面を示す図である。
【図15】実施の形態2の材料チャージパターンを説明する図である。
【図16】実施の形態2の厚肉部の配向模式図である。
【図17】実施の形態2の他の実施例による成形品の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1による樹脂成形品の優れた特徴をより理解し易くする為、まず以下にSMC(シートモールディングコンパウンド)シートの製法およびSMC成形品から切り出した試験品の強度調査結果について説明する。
【0010】
SMCシートは、通常、図1に示す工程で製造される。図1に示すST1で不飽和ポリエステルを主材料に、粘度調整剤、離型剤、硬化剤等が混合された液状樹脂材料を幅1000mm程度の下側シート上に塗布する。ST2で塗布された樹脂材料を、ブレードを用いて樹脂材料を一定厚さに延ばす。ST3で樹脂材料の上に直径数ミクロンの繊維を1000本程度撚って撚線とした直径1mm、長さ25mm程度のガラス繊維等の強化材料を散布する。ST4で上側のシートに樹脂材料を塗布し、ブレードで一定厚さ延ばす。ST5で下側シートと上側シートを重ね合わせ、シート間に樹脂材料、強化繊維を挟み込む。ST6でシート間の樹脂を、ローラを用いて加圧・圧延し、一定の厚みにする。ST7でシートを巻き取る。
このような工程でSMCシートは製造されるため、ガラス繊維等の強化材料はシートの面方向に配向される。SMCシートは、金型の面に沿って投入(チャージ)されることが多いため、成形品となった場合にも、ガラス繊維は成形品の厚みと直交する方向に配向するケースが多い。そのため、成形品の厚み方向と直交する方向の面(平面部)に曲げ応力を受ける場合などに対して、強度を向上することができる。
【0011】
図2は、SMC、LSMC、BMCの特性測定結果及び成形品の内部クラック発生数を示す図である。
SMCを用いて成形した成形品から、試験片を切り出し、曲げ強度を測定した結果を図2(a)に示す。なお、内部クラック発生数を示す図2(b)についての説明は後述する。曲げ試験は、図3(a)、図3(b)のように実施し、面方向の曲げ強度は図3(b)に示す方向に曲げ応力が掛かった時の強度を示し、積層方向の曲げ強度は、図3(a)方向に曲げ応力が掛かった時の強度を示す。図2(a)から分かる通り、面方向の強度は積層方向の強度の20倍程度である。
SMCと同じ工程で製造されるが、長さが約1000mmのガラス繊維を用いるLSMCおよび、樹脂材料と繊維長25mm程度のガラス繊維を混練した材料であるBMC(バルクモールディングコンパウンド)の特性についても図2(a)に記している。
また、図2(a)に示す流動性とは、流動のしやすさを示す指標であり、例えば、ある加圧力でSMC、LSMC、BMCを加圧した場合に、どの程度樹脂材料の面積が広がるか(厚みをどこまで圧延(薄く)できるか)を示すものである。さらに図2(a)に示すようにLSMC(長尺のSMC)は繊維長が長いため、SMCよりも面方向強度が高いが、流動性は最も劣る結果となっている。BMCは、材料の状態では、混練されているだけなので、ガラス繊維に配向はないが、金型内での圧縮成形される時の樹脂材料流動により、面方向にガラス繊維が配向されるため、面方向と積層方向で強度に差が現れている。ただし、その差はSMCよりも小さく、3倍程度である。また、この試験により、積層方向に関しては、SMCよりもBMCの方が大きな強度を発揮できるという知見を得た。
【0012】
次に、本願発明の熱硬化性樹脂成形品を得るために実施した、試作品を参考例として説明する。
図4は参考例の熱硬化性樹脂成形品20の外観を示す図であり、幅1000mm、奥行き1200mm、高さ700mm、厚さ5〜50mmの大きさである。
図5は図4の断面図であり、これらの図から判るように厚さ50mmの厚肉部位21と、5mmの薄肉部位22とが一体化して成形されている。次にこの成形品20の製造方法を図に基づいて説明する。
図6に示すようにまず、予め下型の形状に合わせて裁断されたSMCシート材2を必要枚数重ねて、下型1に投入し、その状態で図示省略したプレス機の機構により、上型3を下降させて、SMC2を圧縮・流動(変形)させて、金型のキャビティ(上型3と下型1で形成される空間)内をSMC材2で充填し、加熱硬化することでキャビティ形状に沿った形状の成形品20となる。
【0013】
成形品20の厚肉部位21の配向模式を示す断面詳細図を図7に示す。図中の線はガラス繊維2aの配向を示している。図6のようにSMC2をチャージした場合、厚肉部位21では、図7のようにガラス繊維2aは面方向に強く配向するため、面方向には非常に強い強度を有する。しかしながら、このような成形品20の20mm以上の厚肉部位21の中央部には、図8に示すような内部クラックが発生してしまい、成形品20の品質を劣化させる不良を引起す。
SMC2を用いて、5〜50mmまでの肉厚のサンプル成形品(縦100mm、横100mmの試験片)を各50個成形し、内部クラックの発生状況を確認した結果を図2(b)に示す。肉厚15mm以下ではクラックの発生はないが、20mmで50個中の35個、25mm以上では全数にクラックが発生していた。SMC2を用いた場合には、20mm以上の肉厚を有する成形品を品質よく成形することが困難であることが分かった。
ここで、圧縮成形時の成形品内部と表面の温度を測定した結果を、図9に示す。金型温度140℃で成形を行なった。成形品の厚さ方向表面部は金型温度140℃より若干高くなった後、金型温度140℃と同等の温度になっているが、成形品の厚さ方向中央部は、圧縮開始後17〜18分で、200℃以上に達していることが分かった。樹脂の硬化反応による発熱により、このような高温となった。
【0014】
成形品厚さ方向内部の高温領域は概ね、図10に示すとおりである。この時点(加圧開始後、17〜18分)で樹脂は硬化している。成形品の冷却時に、厚さ方向中央部は200℃以上から室温まで冷却されるが、表面近傍は140℃から室温までの冷却となり、厚さ方向中央部の方が表面部よりも熱収縮量が大きくなる。このために厚さ方向中央部に発生した引張り応力により、内部にクラックが生じた。肉厚が小さくなると、高温領域(高温領域の厚さ方向の寸法)が小さくなるため、表面部との熱収縮量の差も小さく、引張り応力が小さくなり、クラックが発生しない。
また、金型1、3の近傍ほど金型からの伝熱が早く、硬化するのが早くなる。前記中央部は温度が上昇するのに時間がかかるため、金型1、3近傍(側面図)部が昇温して硬化し、弾性体となった後に、硬化反応が開始されるため(前記表面部が硬化した時点、前記中央部はまだ未硬化の状態である)、中央部の硬化収縮によっても引張り応力が発生し、クラックの原因となる。
このように、SMC2を用いた厚肉品21の成形では、20mm以上の肉厚では、内部クラックの発生を抑制することはできなかった。
【0015】
実施の形態1による熱硬化性樹脂成形品は、前述した試作品から得られた諸データに基づいて創出されたものである。まず、製造方法について説明する。
この実施の形態1の熱硬化性樹脂成形品(以下、成形品と称す)20の形状、寸法は試作した成形品で示した図4,図5と同一である。しかしながら本実施の形態1による成形品20はその断面を図11に示すように厚肉部位21の構成が前述した試作品の厚肉部位とは異なる。すなわち15mm以上であって図11では50mmの厚肉部位21はその厚さ方向の中央部分にBMC成形部21bが設けられ、このBMC成形部21bを囲んでSMC成形部21aが設けられている。上記厚肉部位21の配向模式図を図12に示す。図12からも判るように厚さ50mmの中央部はBMC21bが、その上、下表面にはSMC21aが設けられている。
【0016】
このような構成の成形品20を形成するためのSMC材とBMC材のチャージパターンを図13に示す。下型1に図11で示した成形品20の大部分を構成する仕上がり厚さ15mm以下の薄肉部位22に相当する部位に、未硬化のSMCシート材2Aを投入する。仕上がり厚さ15mm以上の厚肉部位21に相当する部位には、下型1の上面1aにSMCシート材2Bを投入し、その上部に厚肉部21の中央部分を充填するのに必要な量の硬化前の半固形状態のBMC2Cを投入した後、前記BMC2Cを囲むように厚肉部位のSMCシート材2Bを投入する。このSMCシート材2Bは下型1に投入したSMCシート材2Aを延伸したものであってもよい。ここで圧縮成形後の薄肉部位22の寸法が15mm以下となるように投入されるSMCシート材2Aの厚さは、圧縮成形後に厚さが30%圧縮されるとして、21mm(15/0.7=21mm)以下となる。このように下型1にSMC材2A、2B、BMC材2Cをチャージした状態で、上型3を図示省略のプレス材の機構によって下降させて圧縮成形することにより、圧縮成形前に投入された薄肉部位22のSMC材2Aが薄肉部のSMC成形部22aに、厚肉部位21のSMC2Bは厚肉部のSMC成形部21aに、BMC材2Cは厚肉部のBMC成形部21bと圧縮成形されて、図11に示す成形品20が得られる。なお、下型1、上型3は共に所定の温度となるよう加熱されている。
【0017】
前述した図2(b)のSMC/BMCに示したように、BMCの場合、面方向の強度は小さいが、SMCの3倍の積層方向強度を有するため、圧縮成形時の成形品厚さ方向の中央部の発熱などにより引張り応力が発生しても、厚肉部位21の内部にクラックが発生することなく、ヒケや変形を抑制した品質の安定し、歩留りの向上した成形品を得ることができる。また、厚肉部位21の表面部にSMC21a、15mm以下の薄肉部位22にSMC22aを配置しているので、面方向の曲げ強度は、BMCだけを用いる場合よりも大きく、強度と品質の優れた熱硬化性樹脂成形品を得ることができる。
また、厚肉部位21の表面部や15mm以下の部位にLSMC(長尺のSMC)を用いることもできる。この場合更に、強度を向上することができる。
また、本実施の形態1の製造方法によれば、薄肉部位22にSMCまたはLSMCを用い、厚肉部位21をSMCまたはLSMCのいずれかでBMCを囲む構成とすることにより、図11のような形状に限らず多様な形状で薄肉部位22と厚肉部位21とを有する形状の強度と品質の優れた熱硬化性樹脂成形品の製造が容易となる。
【0018】
実施の形態2.
次に実施の形態2の成形品20について説明する。
この実施の形態2による成形品20は、図14に示すような厚肉部位21が設けられている以外は、前述した実施の形態1で示した図4、図5に記載の成形品20と同様である。すなわちこの実施の形態2の厚肉部位21は、厚肉部位21の中央部分を金属性加工物などのインサートワーク21Cを設け、このインサートワーク21Cの側部であって厚肉部位21のSMC成形部21aとの空間部分にインサートワーク21Cを挟むようにBMC成形部21bを設けたものである。
厚肉部位21にインサートワーク21Cが単に設けられた成形品は、20mm以上の厚肉部位21が存在する形状であると、厚肉部厚さ方向の中央部に図8で示したような内部クラックが発生する。しかしながらこの実施の形態2による図15に述べるような材料チャージパターンにより製造される構成の成形品20は内部クラックの発生は無い。
以下、材料のチャージパターンを図15によって説明する。まず下型1に仕上がり厚さ15mm以下の薄肉部位22に相当する部位に未硬化のSMCシート材2Aを投入する。なお、投入する量は実施の形態1と同じである。仕上がり厚さは15mm以上の厚肉部位21に相当する部位には、下型1の上面1aにSMCシート材2Bを投入し、その上部に金属性加工物などのインサートワーク21Cを投入する。
次にインサートワーク21CとSMCシート材2Bとの空間部分を充填するのに十分な量の半固形状態のBMC2Cを投入後、インサートワーク21Cと厚肉部BMC2Cを囲むようにSMCシート材2Bを投入する。このSMCシート材2Bは下型1に投入したSMCシート材2Aを延伸したものであってもよい。その後実施の形態1と同様に圧縮成形することで図14に示す成形品20が得られる。図16に成形後の厚肉部21の配向模式(断面図)を示す。
【0019】
以上のように、この実施の形態2は実施の形態1と同様に、厚肉部の厚み方向中央部にはBMC成形部21bが配置されているので、圧縮成形時の成形品の厚さ方向中央部の発熱等により引張り応力が発生しても、厚肉部位21の内部にクラックが発生することなく、品質の安定した成形品を得ることができる。また、図14に示した15mm以下の薄肉部位22にSMC材22aを配置しているので、面方向の曲げ強度は、BMCだけを用いる場合よりも大きく、強度と品質の優れた熱硬化性樹脂成形品を得ることができる。
また、BMCは図2(a)に示すとおり、LSMCの3倍、SMCの1.5倍の流動性を有しており、樹脂流動時の樹脂圧力が小さい(小さな圧力で流動(変形)する)。実施の形態2のように、インサートワーク21Cの周囲にBMC2Cを配置することで、圧縮成形時の樹脂(BMC)流動により、インサートワーク21Cが変形したり、インサートワーク21Cの位置が変動したりするのを防止することができる。すなわち材料のチャージパターンに不均一があった場合などは、圧縮成形時に、金型1、3内の材料の密度が均一になるように、材料が金型1、3内で流動するが、流動抵抗の大きいSMCが大きく流動すると、インサートワーク21Cもその流動とともに位置が変動したり、インサートワーク21Cが変形したりする可能性がある。しかしながら、インサートワーク21Cの周辺に流動性の高いBMC2Cが配置されていると、BMC2Cのみが流動するため、インサートワーク21Cの位置が変動したり、変形したりすることがない。また、実施の形態1と同様に、厚肉部位21の表面部や15mm以下の部位にLSMCを用いることもできる。この場合更に、強度を向上することができる。
なお、前述した図14の厚肉部位21の構成に代替して、図17に示すような厚肉部位21であってもよい。
すなわち、図14に示した厚肉部位21はBMC成形部21bがインサートワーク21Cを挟むように設けられた構成であったが、図17に示すように、インサートワーク21Cの片側のみにBMC成形部21bを設けた構成であっても同様の効果を奏する。なおここでBMC成形部21bをインサートワーク21Cの外側に設ける例を示したが、これに限らず内側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 下型、2A 薄肉部位のSMC材、2B 厚肉部位のSMC材、
2C BMC材、3 上型、20 成形品、21 厚肉部位、
21a 厚肉部位SMC成形部、21b BMC成形部、21C インサートワーク、
22a 薄肉部位SMC成形部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)を用いた熱硬化性樹脂成形品に関するものであり、特に15mm以上の厚肉部を有する熱硬化性樹脂成形品に係るものである。
【背景技術】
【0002】
SMC等の熱硬化性樹脂はガラス繊維等で強化された複合材料であるため、強度が大きく、また、金属と比べると複雑な形状を比較的容易に成形できる特長を有するため、種々の製品に用いられている。
SMCの成形品は、圧縮成形法により製造されることがほとんどである。圧縮成形法は、プレス装置に取り付けられ、所定の温度に制御(加熱)された金型(下型と上型)に、適量の樹脂材料を投入し、プレス機による型締めにより、上型と下型で樹脂材料を加熱しながら圧縮することで、金型に沿った形状に成形し、この状態で一定時間保持することで、樹脂材料を硬化させた後、金型より取り出し成形品を得る方法である。
SMCを用いた圧縮成形による成形品の場合、製品に求められる機能により、成形品には部分的に厚肉部を設ける場合がある。SMCは硬化時の硬化収縮や硬化反応による発熱とその後の冷却による熱収縮などによって、成形品内部に歪が生じてしまうことが多い。特に肉厚が大きい成形品の場合、内部歪が大きく、内部クラックやヒケ、変形といった成形不良が発生してしまう。
【0003】
このような成形不良の発生を抑制する技術としては、金型内に予めABS樹脂などからなる中芯材を金型キャビティの中央部に配置し、その外周部に熱硬化性樹脂液を注入し、加熱する際に、熱硬化性樹脂の硬化収縮体積量に見合った体積膨張量を中芯材に発生させるとともに中芯材の膨張と熱硬化性樹脂の硬化収縮とを同期させることで、成形品表面のヒケを抑制する技術が示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−079620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記特許文献1に示された技術では、成形品表面に発生するヒケ不良を抑制することはできるが、内部に挿入した熱可塑性樹脂である中芯材が想定以上に膨張することにより、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の界面にクラックが発生してしまう等の不良が発生する場合があるという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、SMCなどの熱硬化性樹脂を用いて厚肉部を有する成形品を成形する場合に、成形品内部に発生するクラック不良を抑制し、不良のない健全な樹脂成形品を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る樹脂成形品は、熱硬化性樹脂材を加熱、圧縮して形成され、薄肉部位と厚肉部位とが一体化して設けられた樹脂成形品であって、前記薄肉部位は、SMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方で形成されており、前記厚肉部位は15mm以上の肉厚を有し、その肉厚方向中央部分にBMC成形部が設けられているとともに、前記BMC成形部を囲むようにSMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方が形成されているものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は上記のような構成を採用しているので、厚肉部位を有した樹脂成形品であるのにもかかわらず、成形品内部にクラックの発生や、ヒケさらには変形を抑制した優れた品質の樹脂成形品を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】SMCの製造工程を説明する図である。
【図2】SMC、LSMC、BMCの特性測定結果及び成形品の内部クラック発生数を示す図である。
【図3】SMC成形品の曲げ試験法を説明する図である。
【図4】参考例の成形品を示す外観図である。
【図5】参考例の成形品の断面を示す図である。
【図6】参考例の材料チャージパターンを説明する図である。
【図7】参考例の成形品の配向模式を示す図である。
【図8】成形品の内部クラックを示す模式図である。
【図9】成形品内部の発熱状況を示す模式図である。
【図10】圧縮成形時の樹脂温度変化を示す図である。
【図11】実施の形態1による成形品の断面を示す図である。
【図12】実施の形態1の厚肉部の配向模式図である。
【図13】実施の形態1の材料チャージパターンを説明する図である。
【図14】実施の形態2による成形品の断面を示す図である。
【図15】実施の形態2の材料チャージパターンを説明する図である。
【図16】実施の形態2の厚肉部の配向模式図である。
【図17】実施の形態2の他の実施例による成形品の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1による樹脂成形品の優れた特徴をより理解し易くする為、まず以下にSMC(シートモールディングコンパウンド)シートの製法およびSMC成形品から切り出した試験品の強度調査結果について説明する。
【0010】
SMCシートは、通常、図1に示す工程で製造される。図1に示すST1で不飽和ポリエステルを主材料に、粘度調整剤、離型剤、硬化剤等が混合された液状樹脂材料を幅1000mm程度の下側シート上に塗布する。ST2で塗布された樹脂材料を、ブレードを用いて樹脂材料を一定厚さに延ばす。ST3で樹脂材料の上に直径数ミクロンの繊維を1000本程度撚って撚線とした直径1mm、長さ25mm程度のガラス繊維等の強化材料を散布する。ST4で上側のシートに樹脂材料を塗布し、ブレードで一定厚さ延ばす。ST5で下側シートと上側シートを重ね合わせ、シート間に樹脂材料、強化繊維を挟み込む。ST6でシート間の樹脂を、ローラを用いて加圧・圧延し、一定の厚みにする。ST7でシートを巻き取る。
このような工程でSMCシートは製造されるため、ガラス繊維等の強化材料はシートの面方向に配向される。SMCシートは、金型の面に沿って投入(チャージ)されることが多いため、成形品となった場合にも、ガラス繊維は成形品の厚みと直交する方向に配向するケースが多い。そのため、成形品の厚み方向と直交する方向の面(平面部)に曲げ応力を受ける場合などに対して、強度を向上することができる。
【0011】
図2は、SMC、LSMC、BMCの特性測定結果及び成形品の内部クラック発生数を示す図である。
SMCを用いて成形した成形品から、試験片を切り出し、曲げ強度を測定した結果を図2(a)に示す。なお、内部クラック発生数を示す図2(b)についての説明は後述する。曲げ試験は、図3(a)、図3(b)のように実施し、面方向の曲げ強度は図3(b)に示す方向に曲げ応力が掛かった時の強度を示し、積層方向の曲げ強度は、図3(a)方向に曲げ応力が掛かった時の強度を示す。図2(a)から分かる通り、面方向の強度は積層方向の強度の20倍程度である。
SMCと同じ工程で製造されるが、長さが約1000mmのガラス繊維を用いるLSMCおよび、樹脂材料と繊維長25mm程度のガラス繊維を混練した材料であるBMC(バルクモールディングコンパウンド)の特性についても図2(a)に記している。
また、図2(a)に示す流動性とは、流動のしやすさを示す指標であり、例えば、ある加圧力でSMC、LSMC、BMCを加圧した場合に、どの程度樹脂材料の面積が広がるか(厚みをどこまで圧延(薄く)できるか)を示すものである。さらに図2(a)に示すようにLSMC(長尺のSMC)は繊維長が長いため、SMCよりも面方向強度が高いが、流動性は最も劣る結果となっている。BMCは、材料の状態では、混練されているだけなので、ガラス繊維に配向はないが、金型内での圧縮成形される時の樹脂材料流動により、面方向にガラス繊維が配向されるため、面方向と積層方向で強度に差が現れている。ただし、その差はSMCよりも小さく、3倍程度である。また、この試験により、積層方向に関しては、SMCよりもBMCの方が大きな強度を発揮できるという知見を得た。
【0012】
次に、本願発明の熱硬化性樹脂成形品を得るために実施した、試作品を参考例として説明する。
図4は参考例の熱硬化性樹脂成形品20の外観を示す図であり、幅1000mm、奥行き1200mm、高さ700mm、厚さ5〜50mmの大きさである。
図5は図4の断面図であり、これらの図から判るように厚さ50mmの厚肉部位21と、5mmの薄肉部位22とが一体化して成形されている。次にこの成形品20の製造方法を図に基づいて説明する。
図6に示すようにまず、予め下型の形状に合わせて裁断されたSMCシート材2を必要枚数重ねて、下型1に投入し、その状態で図示省略したプレス機の機構により、上型3を下降させて、SMC2を圧縮・流動(変形)させて、金型のキャビティ(上型3と下型1で形成される空間)内をSMC材2で充填し、加熱硬化することでキャビティ形状に沿った形状の成形品20となる。
【0013】
成形品20の厚肉部位21の配向模式を示す断面詳細図を図7に示す。図中の線はガラス繊維2aの配向を示している。図6のようにSMC2をチャージした場合、厚肉部位21では、図7のようにガラス繊維2aは面方向に強く配向するため、面方向には非常に強い強度を有する。しかしながら、このような成形品20の20mm以上の厚肉部位21の中央部には、図8に示すような内部クラックが発生してしまい、成形品20の品質を劣化させる不良を引起す。
SMC2を用いて、5〜50mmまでの肉厚のサンプル成形品(縦100mm、横100mmの試験片)を各50個成形し、内部クラックの発生状況を確認した結果を図2(b)に示す。肉厚15mm以下ではクラックの発生はないが、20mmで50個中の35個、25mm以上では全数にクラックが発生していた。SMC2を用いた場合には、20mm以上の肉厚を有する成形品を品質よく成形することが困難であることが分かった。
ここで、圧縮成形時の成形品内部と表面の温度を測定した結果を、図9に示す。金型温度140℃で成形を行なった。成形品の厚さ方向表面部は金型温度140℃より若干高くなった後、金型温度140℃と同等の温度になっているが、成形品の厚さ方向中央部は、圧縮開始後17〜18分で、200℃以上に達していることが分かった。樹脂の硬化反応による発熱により、このような高温となった。
【0014】
成形品厚さ方向内部の高温領域は概ね、図10に示すとおりである。この時点(加圧開始後、17〜18分)で樹脂は硬化している。成形品の冷却時に、厚さ方向中央部は200℃以上から室温まで冷却されるが、表面近傍は140℃から室温までの冷却となり、厚さ方向中央部の方が表面部よりも熱収縮量が大きくなる。このために厚さ方向中央部に発生した引張り応力により、内部にクラックが生じた。肉厚が小さくなると、高温領域(高温領域の厚さ方向の寸法)が小さくなるため、表面部との熱収縮量の差も小さく、引張り応力が小さくなり、クラックが発生しない。
また、金型1、3の近傍ほど金型からの伝熱が早く、硬化するのが早くなる。前記中央部は温度が上昇するのに時間がかかるため、金型1、3近傍(側面図)部が昇温して硬化し、弾性体となった後に、硬化反応が開始されるため(前記表面部が硬化した時点、前記中央部はまだ未硬化の状態である)、中央部の硬化収縮によっても引張り応力が発生し、クラックの原因となる。
このように、SMC2を用いた厚肉品21の成形では、20mm以上の肉厚では、内部クラックの発生を抑制することはできなかった。
【0015】
実施の形態1による熱硬化性樹脂成形品は、前述した試作品から得られた諸データに基づいて創出されたものである。まず、製造方法について説明する。
この実施の形態1の熱硬化性樹脂成形品(以下、成形品と称す)20の形状、寸法は試作した成形品で示した図4,図5と同一である。しかしながら本実施の形態1による成形品20はその断面を図11に示すように厚肉部位21の構成が前述した試作品の厚肉部位とは異なる。すなわち15mm以上であって図11では50mmの厚肉部位21はその厚さ方向の中央部分にBMC成形部21bが設けられ、このBMC成形部21bを囲んでSMC成形部21aが設けられている。上記厚肉部位21の配向模式図を図12に示す。図12からも判るように厚さ50mmの中央部はBMC21bが、その上、下表面にはSMC21aが設けられている。
【0016】
このような構成の成形品20を形成するためのSMC材とBMC材のチャージパターンを図13に示す。下型1に図11で示した成形品20の大部分を構成する仕上がり厚さ15mm以下の薄肉部位22に相当する部位に、未硬化のSMCシート材2Aを投入する。仕上がり厚さ15mm以上の厚肉部位21に相当する部位には、下型1の上面1aにSMCシート材2Bを投入し、その上部に厚肉部21の中央部分を充填するのに必要な量の硬化前の半固形状態のBMC2Cを投入した後、前記BMC2Cを囲むように厚肉部位のSMCシート材2Bを投入する。このSMCシート材2Bは下型1に投入したSMCシート材2Aを延伸したものであってもよい。ここで圧縮成形後の薄肉部位22の寸法が15mm以下となるように投入されるSMCシート材2Aの厚さは、圧縮成形後に厚さが30%圧縮されるとして、21mm(15/0.7=21mm)以下となる。このように下型1にSMC材2A、2B、BMC材2Cをチャージした状態で、上型3を図示省略のプレス材の機構によって下降させて圧縮成形することにより、圧縮成形前に投入された薄肉部位22のSMC材2Aが薄肉部のSMC成形部22aに、厚肉部位21のSMC2Bは厚肉部のSMC成形部21aに、BMC材2Cは厚肉部のBMC成形部21bと圧縮成形されて、図11に示す成形品20が得られる。なお、下型1、上型3は共に所定の温度となるよう加熱されている。
【0017】
前述した図2(b)のSMC/BMCに示したように、BMCの場合、面方向の強度は小さいが、SMCの3倍の積層方向強度を有するため、圧縮成形時の成形品厚さ方向の中央部の発熱などにより引張り応力が発生しても、厚肉部位21の内部にクラックが発生することなく、ヒケや変形を抑制した品質の安定し、歩留りの向上した成形品を得ることができる。また、厚肉部位21の表面部にSMC21a、15mm以下の薄肉部位22にSMC22aを配置しているので、面方向の曲げ強度は、BMCだけを用いる場合よりも大きく、強度と品質の優れた熱硬化性樹脂成形品を得ることができる。
また、厚肉部位21の表面部や15mm以下の部位にLSMC(長尺のSMC)を用いることもできる。この場合更に、強度を向上することができる。
また、本実施の形態1の製造方法によれば、薄肉部位22にSMCまたはLSMCを用い、厚肉部位21をSMCまたはLSMCのいずれかでBMCを囲む構成とすることにより、図11のような形状に限らず多様な形状で薄肉部位22と厚肉部位21とを有する形状の強度と品質の優れた熱硬化性樹脂成形品の製造が容易となる。
【0018】
実施の形態2.
次に実施の形態2の成形品20について説明する。
この実施の形態2による成形品20は、図14に示すような厚肉部位21が設けられている以外は、前述した実施の形態1で示した図4、図5に記載の成形品20と同様である。すなわちこの実施の形態2の厚肉部位21は、厚肉部位21の中央部分を金属性加工物などのインサートワーク21Cを設け、このインサートワーク21Cの側部であって厚肉部位21のSMC成形部21aとの空間部分にインサートワーク21Cを挟むようにBMC成形部21bを設けたものである。
厚肉部位21にインサートワーク21Cが単に設けられた成形品は、20mm以上の厚肉部位21が存在する形状であると、厚肉部厚さ方向の中央部に図8で示したような内部クラックが発生する。しかしながらこの実施の形態2による図15に述べるような材料チャージパターンにより製造される構成の成形品20は内部クラックの発生は無い。
以下、材料のチャージパターンを図15によって説明する。まず下型1に仕上がり厚さ15mm以下の薄肉部位22に相当する部位に未硬化のSMCシート材2Aを投入する。なお、投入する量は実施の形態1と同じである。仕上がり厚さは15mm以上の厚肉部位21に相当する部位には、下型1の上面1aにSMCシート材2Bを投入し、その上部に金属性加工物などのインサートワーク21Cを投入する。
次にインサートワーク21CとSMCシート材2Bとの空間部分を充填するのに十分な量の半固形状態のBMC2Cを投入後、インサートワーク21Cと厚肉部BMC2Cを囲むようにSMCシート材2Bを投入する。このSMCシート材2Bは下型1に投入したSMCシート材2Aを延伸したものであってもよい。その後実施の形態1と同様に圧縮成形することで図14に示す成形品20が得られる。図16に成形後の厚肉部21の配向模式(断面図)を示す。
【0019】
以上のように、この実施の形態2は実施の形態1と同様に、厚肉部の厚み方向中央部にはBMC成形部21bが配置されているので、圧縮成形時の成形品の厚さ方向中央部の発熱等により引張り応力が発生しても、厚肉部位21の内部にクラックが発生することなく、品質の安定した成形品を得ることができる。また、図14に示した15mm以下の薄肉部位22にSMC材22aを配置しているので、面方向の曲げ強度は、BMCだけを用いる場合よりも大きく、強度と品質の優れた熱硬化性樹脂成形品を得ることができる。
また、BMCは図2(a)に示すとおり、LSMCの3倍、SMCの1.5倍の流動性を有しており、樹脂流動時の樹脂圧力が小さい(小さな圧力で流動(変形)する)。実施の形態2のように、インサートワーク21Cの周囲にBMC2Cを配置することで、圧縮成形時の樹脂(BMC)流動により、インサートワーク21Cが変形したり、インサートワーク21Cの位置が変動したりするのを防止することができる。すなわち材料のチャージパターンに不均一があった場合などは、圧縮成形時に、金型1、3内の材料の密度が均一になるように、材料が金型1、3内で流動するが、流動抵抗の大きいSMCが大きく流動すると、インサートワーク21Cもその流動とともに位置が変動したり、インサートワーク21Cが変形したりする可能性がある。しかしながら、インサートワーク21Cの周辺に流動性の高いBMC2Cが配置されていると、BMC2Cのみが流動するため、インサートワーク21Cの位置が変動したり、変形したりすることがない。また、実施の形態1と同様に、厚肉部位21の表面部や15mm以下の部位にLSMCを用いることもできる。この場合更に、強度を向上することができる。
なお、前述した図14の厚肉部位21の構成に代替して、図17に示すような厚肉部位21であってもよい。
すなわち、図14に示した厚肉部位21はBMC成形部21bがインサートワーク21Cを挟むように設けられた構成であったが、図17に示すように、インサートワーク21Cの片側のみにBMC成形部21bを設けた構成であっても同様の効果を奏する。なおここでBMC成形部21bをインサートワーク21Cの外側に設ける例を示したが、これに限らず内側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 下型、2A 薄肉部位のSMC材、2B 厚肉部位のSMC材、
2C BMC材、3 上型、20 成形品、21 厚肉部位、
21a 厚肉部位SMC成形部、21b BMC成形部、21C インサートワーク、
22a 薄肉部位SMC成形部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂材を加熱、圧縮して形成され、薄肉部位と厚肉部位とが一体化して設けられた樹脂成形品であって、前記薄肉部位は、SMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方で形成されており、前記厚肉部位は15mm以上の肉厚を有し、その肉厚方向中央部分にBMC成形部が設けられているとともに、前記BMC成形部を囲むようにSMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方が形成されていることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
前記厚肉部位の肉厚方向中央部分には、金属材のインサートワークが設けられ、前記BMC成形部は前記インサートワークの側部に設けられているとともに、前記SMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方が前記インサートワークおよびBMC成形部を囲むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項1】
熱硬化性樹脂材を加熱、圧縮して形成され、薄肉部位と厚肉部位とが一体化して設けられた樹脂成形品であって、前記薄肉部位は、SMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方で形成されており、前記厚肉部位は15mm以上の肉厚を有し、その肉厚方向中央部分にBMC成形部が設けられているとともに、前記BMC成形部を囲むようにSMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方が形成されていることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
前記厚肉部位の肉厚方向中央部分には、金属材のインサートワークが設けられ、前記BMC成形部は前記インサートワークの側部に設けられているとともに、前記SMC成形部またはLSMC成形部のいずれか一方が前記インサートワークおよびBMC成形部を囲むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−143594(P2011−143594A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5499(P2010−5499)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]