説明

樹脂成形機および押出成形方法

【課題】特に熱可塑性合成樹脂に対する誘電加熱において均一加熱を確保しつつエネルギーコストの低減化に貢献することが可能な誘電加熱を利用した樹脂成形機を提供する。
【解決手段】原料Gとして熱可塑性合成樹脂材料が採用され、誘電加熱処理を施すことにより加熱溶融された状態の当該原料Gを所定の金型Mに射出したり、もしくはそのままダイを介して外部に押し出したりするように構成され、原料Gが装填されるシリンダ20と、このシリンダ20に同心で内装され、かつ、駆動手段の駆動で軸心回りに回転して原料Gを前進させる当該シリンダ20とは絶縁状態のスクリュー32と、シリンダ20およびスクリュー部材30の構成要素であるスクリュー32を対向電極としてシリンダ20内の原料Gに高周波を印加する高周波発生器50とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂材料を原料とし、溶融した当該原料を金型に射出もしくはダイを介して押出することにより所定の形状の製品を製造するように構成された樹脂成形機および押出成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形機は、加熱溶融させた熱可塑性合成樹脂からなる原料を金型内に射出し、当該金型のキャビティの立体形状に沿った製品を製造するもの(射出成形装置)や、ダイから押し出して成形するもの(押出成形装置)などがあり、通常、原料供給部からの紛状あるいはペレット状の原料が装填されるシリンダと、このシリンダに同心で内装されるスクリューあるいはプランジャと、シリンダの外周面に配設された内部の原料を加熱溶融させるための外熱式のヒータとを備えている。そして、射出成形の場合には、シリンダの先端の射出ノズルに金型が連設される一方、押出成形の場合には、シリンダの先端のノズルにダイが連設されるようになっている。
【0003】
そして、原料供給部からシリンダ内に導入された原料は、外熱式ヒータによって加熱溶融された後、スクリューの回転駆動またはプランジャの前進駆動により、射出成形の場合は、射出ノズルを介して金型に供給され、製品化される一方、押出成形の場合は、ノズルの先端のダイを介してそのまま外部へ押し出され、所定の冷却処理の後に製品化される。
【0004】
ところで、このような外熱式の樹脂成形機にあっては、ヒータからの熱がシリンダを通して内部の原料に外側から供給されるため熱効率が悪く、しかも原料の表面側が過加熱される傾向にあるため、均一加熱が困難で原料の表面側が黄変するという不都合の生じることがある。
【0005】
一方、例えば、特許文献1に記載の射出成形機は、原料に対する外熱加熱に代えて、マイクロ波を照射することによる誘電加熱で原料を溶融させるようになされている。具体的には、原料供給部とシリンダとの間に誘電加熱部が介設され、マイクロ波発振器からのマイクロ波がこの誘電加熱部を移動中の原料に照射される。こうすることで、原料は、表面からではなく内部から加熱されるため、原料の表面が黄変しなくなる。
【0006】
なお、特許文献2には、射出成形機から射出された溶融原料が導入される、雄型および雌型からなる金型については、当該金型のキャビティ内に導入された溶融原料の温度の均一化を図るべく、雄型および雌型を対向電極としてキャビティ内の溶融原料に全体的に高周波を印加することが記載されている。これは、雄型および雌型の双方が静止状態であることから可能な事柄であり、この方式をスクリューやプランジャのような可動部材が存在する射出成形機に直ちに適用することはできない。
【特許文献1】特開平10−180832号公報
【特許文献2】特開2003−311800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなことから、樹脂成形機で誘電加熱を適用しようとすれば、特許文献1に記載があるように、可動部分から外れた位置を移動している原料に対して誘電加熱を施さざるを得ず、しかも装置のコンパクト化の観点から誘電加熱部を大きく確保することが困難であるため、結果として短い距離の誘電加熱部内を所定の速度で移動している原料に対して誘電加熱を施すことになる。そうすると、当該原料を確実に加熱溶融させるためには、非常に大きな出力で誘電加熱を施さなければならず、局所的であることから均一加熱が困難になるばかりか、エネルギーのロスも大きく、エネルギーコストが嵩むという問題が生じる。
【0008】
本発明は、従来のかかる状況に鑑みなされたものであって、特に熱可塑性合成樹脂に対する誘電加熱において均一加熱を確保しつつエネルギーコストの低減化に貢献することが可能な誘電加熱を利用した樹脂成形機および押出成形方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明(樹脂成形機)は、原料である合成樹脂材料を誘電加熱により溶融処理して排出孔に導く樹脂成形機において、前記原料が装填される導電性のシリンダと、前記シリンダに同心で内装され、かつ、駆動手段により軸心回りに回転して前記原料を前記排出孔に向けて前進させる導電性のスクリューと、前記シリンダと前記スクリューとの間に高周波電力を印加する高周波発生器とが備えられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6記載の発明(押出成形方法)は、原料である合成樹脂材料を誘電加熱により溶融処理して排出孔に導く押出成形方法において、前記原料が装填される導電性のシリンダと、前記シリンダに同心で内装され、かつ、駆動手段により軸心回りに回転して前記原料を前記排出孔に向けて前進させる導電性のスクリューとの間に高周波発生器からの高周波電力を印加することを特徴とする押出成形方法。
【0011】
請求項1および6記載の発明によれば、シリンダ内に合成樹脂材料からなる原料を装填した状態で、駆動手段の駆動によりスクリューを軸心回りに回転させつつ、高周波発生器からの高周波電力を対向電極としてのシリンダおよびスクリューにそれぞれ印加すれば、シリンダ内の原料はスクリューの回転で前進しながら高周波を印加されることによる誘電加熱で加熱され、この加熱状態の原料が金型へ射出されて製品化される。
【0012】
このように、シリンダおよびスクリューを対向電極とすることにより、シリンダの略全長に亘って内部の原料に高周波発生器からの高周波を印加されるため、従来のようにシリンダと金型との間の狭い空間内を移動している原料に対し誘電加熱を施す場合に比較し、シリンダ内の原料に対し広範囲に亘って誘電加熱を施すことができるため、原料に対しより効率的に、かつ、均一に誘電加熱を施すことが可能になる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記シリンダと前記スクリューとの対向面の少なくとも一方側に絶縁部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
かかる構成によれば、シリンダとスクリューとの間に絶縁材料が存在することにより、これらの間で短絡が生じることはなく、シリンダとスクリューとの間の環状隙間は、装填された原料に対する高周波印加環境として優れたものになる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記シリンダは、接地されていることを特徴とするものである。
【0016】
かかる構成によれば、シリンダの内周面とスクリューの外周面との間に形成された対向電極間の環状空間は、接地により電位が「0」になっているシリンダに囲繞されているため外乱が入り難く、原料に対する高周波の印加状態が安定する。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記シリンダは、その外周面を加熱する加熱手段を有していることを特徴とするものである。
【0018】
かかる構成によれば、シリンダ内の原料は、シリンダの外周面を加熱する加熱手段による加熱により、単に誘電加熱のみが採用される場合に比較し、より効率的に、かつ、均一に加熱される。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記シリンダの上流端には、貯留した前記原料をシリンダ内へ繰り出す原料ホッパが接続されていることを特徴とするものである。
【0020】
かかる構成によれば、予め原料ホッパに原料を装填しておくことにより、当該原料ホッパからのシリンダ内への原料の繰り出し処理でシリンダ内への原料の供給がスムーズに行われる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る樹脂成形機によれば、シリンダおよびスクリューを高周波発生器の対向電極とすることにより、シリンダの略全長に亘って内部の原料に高周波発生器からの高周波が印加されるため、従来のようにシリンダと金型との間の狭い空間内を移動している原料に対し誘電加熱を施す場合に比較し、シリンダ内の原料に対し全体的に誘電加熱を施すことができ、結果として原料に対しより効率的に、かつ、均一に誘電加熱を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明に係る樹脂成形機の一実施形態を示す一部切欠き斜視図であり、図2は、そのII−II線断面図である。なお、図1および図2においてX−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
【0023】
まず、図1に示すように、樹脂成形機10は、射出成形機や押出成形機における樹脂の加熱溶融処理にも使用することができるものであり、基台11上に熱可塑性合成樹脂からなる原料Gが装填されるシリンダ20と、先端側がこのシリンダ20に同心で差し込まれるスクリュー部材30と、このスクリュー部材30を駆動回転される駆動機構(駆動手段)40と、前記シリンダ20およびスクリュー部材30に高周波を印加する高周波発生器50とが配設されるとともに、前記シリンダ20の上流端(後端)にシリンダ20内へ切り出されるべき原料Gを貯留する原料貯留部60が立設されることによって構成されている。
【0024】
シリンダ20内に供給されて誘電加熱処理に供される原料Gとしては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリエーテル、ポリ塩素化スチレンなどの塩素含有樹脂が最適である。
【0025】
なお、ポリ塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルモノマーおよび/または塩化ビニルと共重合がモノマーを、重合または共重合して得られる共重合体もしくは重合体またはその後塩素化物のことである。
【0026】
また、塩化ビニルと共重合が可能なモノマーとしては、公知のビニルモノマーの全てが含まれ、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、エチレンビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類などを挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
そして、本発明に係る樹脂成形機10は、これらの合成樹脂を原料として透明継手や透明プレート、さらには透明管等の製造に好適に適用される。特に、耐熱用途では、成形性が改善されるため、耐熱透明管、耐熱透明継手、耐熱透明プレート等の製造に好適に適用することができる。
【0028】
前記基台11は、平面視でT字状に形成されている。かかる基台11は、T字の横棒に相当する部分が長尺に設定され、この部分に主基台111が形成されているとともに、同縦棒に相当する部分が短尺に形成され、この部分に副基台112が形成されている。そして、前記主基台111には、スクリュー部材30が内装されたシリンダ20および駆動機構40が設けられているとともに、前記副基台112には、高周波発生器50が据え付けられている。
【0029】
また、主基台111における副基台112に対応した部分(すなわち、支持部材12の前後方向の中央部)には、シリンダ20およびスクリュー部材30を支持するための支持部材12が設けられている。この支持部材12は、矩形状の前方フレーム板121と、後方でこの前方フレーム板121と対向した同一形状の後方フレーム板122と、これら前方フレーム板121および後方フレーム板122間における上面および左右の面を閉止するべくこれらに被される蓋体123とを備えている。
【0030】
前記前方フレーム板121には、その中央位置にスクリュー部材30を摺接状態で貫通させるための貫通孔124(図2)が穿設されているとともに、前記後方フレーム板122には、その中央位置にベアリングBを介してスクリュー部材30を貫通させるための貫通孔125が穿設されている。
【0031】
また、前記前方フレーム板121には、その四隅部にタイロッド26を嵌挿してシリンダ20を前方フレーム板121へ締結するためのタイロッド嵌挿孔126がそれぞれ穿設されている。前記タイロッド26は、長尺のロッド本体261と、このロッド本体261の後端に形成された、ロッド本体261より大径の頭部262と、ロッド本体261の前端に螺設された雄ネジ263とを備えている。
【0032】
図3は、前方フレーム板121を背面側から見た斜視図である。なお、図3におけるXおよびYによる方向表示は、図1の場合と同様(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))である。
【0033】
図3に示すように、タイロッド嵌挿孔126は、前方フレーム板121の後面側に設けられた、タイロッド26の頭部262に対応する有底の大径孔126aと、この大径孔126a同心で孔底126cに穿設された、タイロッド26のロッド本体261に対応する小径孔126bとからなっている。かかるタイロッド嵌挿孔126の大径孔126aおよび小径孔126bにタイロッド26の頭部262およびロッド本体261がそれぞれ嵌め込まれた状態で、当該タイロッド26が前方へ向けて抜け止め状態で前方フレーム板121に装着される。
【0034】
前記シリンダ20は、円筒状のシリンダ本体21と、このシリンダ本体21の基端部(後端部)に形成されたフランジ22と、このフランジ22と前記支持部材12の前方フレーム板121との間に介設される円盤状の基端側絶縁部材23と、シリンダ本体21の先端部(前端部)に取り付けられる筒状の先端側絶縁部材24と、この先端側絶縁部材24のさらに先端側に装着されるダイブロック25と、これらシリンダ本体21、フランジ22、基端側絶縁部材23、先端側絶縁部材24およびダイブロック25を一体的に締結して前方フレーム板121へ装着する複数本(本実施形態では4本)の前記タイロッド26とを備えている。
【0035】
前記基端側絶縁部材23および先端側絶縁部材24は、本実施形態においては、強靱な合成樹脂材料であるポリテトラフルオロエチレンが採用されているが、ポリテトラフルオロエチレンに限定されるものではなく、ポリアミノや、ポリイミドなど、絶縁性能が良好で、かつ、強靱な合成樹脂材料であれば、どのようなものでも適用可能である。
【0036】
前記シリンダ本体21は、内径寸法がスクリュー部材30の最大外径寸法より若干大きめに設定され、これによってシリンダ本体21の内周面とスクリュー部材30の外周面とが互いに当接しないようになされている。そして、シリンダ本体21の内周面と、スクリュー部材30の外周面との間に、正面視で環状を呈する長尺の誘電加熱空間が形成されている。
【0037】
前記フランジ22には、同一径寸法の位置において周方向に等ピッチで複数の貫通孔221が穿設されている。これらの貫通孔221は、前記前方フレーム板121に穿設された各タイロッド嵌挿孔126と対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0038】
前記基端側絶縁部材23は、外径寸法が前記フランジ22のそれと同一に設定されている。かかる基端側絶縁部材23には、前記前方フレーム板121の貫通孔124に差し込まれる絶縁筒部231が後方に向かって突設されている。かかる絶縁筒部231は、内径寸法がスクリュー部材30のスクリュー軸31の径寸法より僅かに大きめにされている。かかる絶縁筒部231にスクリュー軸31が差し通された状態で、前方フレーム板121とスクリュー軸31との絶縁状態が確保される。また、基端側絶縁部材23における前記フランジ22に対応した位置には、当該フランジ22の貫通孔221と対向した貫通孔232が穿設されている。これらの貫通孔221,232には、前述のようにタイロッド26が挿通される。
【0039】
前記先端側絶縁部材24は、スクリュー部材30の先端部を絶縁状態で支持するためのものである。以下、先端側絶縁部材24について図4を基に説明する。図4は、先端側絶縁部材24の一実施形態を示す図であり、図4(A)は、斜視図、図4(B)は、図4(A)のIVB−IVB線断面図である。なお、図4におけるXおよびYによる方向表示は、図1の場合と同様(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))である。
【0040】
図4に示すように、先端側絶縁部材24は、内径寸法が前記シリンダ本体21の内径寸法と同一に設定されているとともに、外径寸法がシリンダ本体21の外径寸法より若干小さめに設定された絶縁筒体241と、この絶縁筒体241の前後方向の中央位置に同心で環状に形成された、外径寸法がシリンダ本体21のそれと等しい環状突起242とを備えている。
【0041】
前記絶縁筒体241には、中心位置にスクリュー部材30を摺接状態で貫通させるロッド支持孔243が形成されているとともに、周方向に等ピッチで前後方向に向けて貫通された正面視で扇形状を呈する複数の扇状孔244が設けられている。
【0042】
一方、シリンダ本体21の先端には、端面から同心で凹設された内径寸法が前記絶縁筒体241の外径寸法より僅かに大きい環状段差部211が設けられている。従って、絶縁筒体241をこの環状段差部211に差し込むことにより、先端側絶縁部材24がシリンダ本体21の先端側に装着されるとともに、シリンダ本体21に内装されているスクリュー部材30の先端がロッド支持孔243を貫通して前方へ向けて突出することになる。
【0043】
前記ダイブロック25は、シリンダ本体21から先端側絶縁部材24の扇状孔244を介して前方に向けて押し出された溶融原料G1を、射出成形の場合、金型Mのキャビティに向けて排出させるものであり、押出成形の場合、そのまま外部へ排出させるものである。かかるダイブロック25は、図1および図2に示すように、外径寸法が前記基端側絶縁部材23のそれと同一に設定された円盤部251と、この円盤部251の先端から同心で突設された筒状を呈するダイ252とを備えている。
【0044】
図5は、ダイブロック25を背面側から見た斜視図であり、図5(A)は、ダイブロック25がシリンダ本体21に装着される前に状態、図5(B)は、ダイブロック25がシリンダ本体21に装着された状態をそれぞれ示している。なお、図5におけるXおよびYによる方向表示は、図1の場合と同様(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))である。
【0045】
図5に示すように、円盤部251の縁部には、フランジ22の各貫通孔221に対向した位置に、タイロッド26の先端を貫通させるための複数の貫通孔253が穿設されている。また、円盤部251の中央部には、同心で前記先端側絶縁部材24の絶縁筒体241が摺接状態で嵌入される接続孔254が設けられている。
【0046】
前記ダイ252は、扁平な円筒状を呈し、円盤部251から同心で前方へ向けて突設されて形成されている。かかるダイ252の前端面には、溶融原料G1を射出するための排出孔255が穿設されている。
【0047】
そして、かかるダイブロック25は、各タイロッド26が前方フレーム板121の各タイロッド嵌挿孔126にそれぞれ差し通された状態で、基端側絶縁部材23およびフランジ22を順番に各タイロッド26に外嵌していく。引き続きシリンダ本体21の先端に装着された状態の先端側絶縁部材24にダイブロック25を嵌め込みつつ当該ダイブロック25の貫通孔253をタイロッド26に外嵌し、最後に各タイロッド26の先端の雄ネジ263にナットNを螺着して締結することにより、ダイブロック25がシリンダ本体21に取り付けられた状態になる。
【0048】
そして、この状態でシリンダ20は、後端のフランジ22が基端側絶縁部材23および前方フレーム板121を介してタイロッド26の頭部262に支持されるとともに、前端が先端側絶縁部材24およびダイブロック25を介してロッド本体261先端の雄ネジ263に螺着締結されたナットNに支持され、前方フレーム板121への装着状態が確実なものになっている。
【0049】
因みに、タイロッド26の前方フレーム板121への装着操作は、後方フレーム板122および駆動機構40が基台11上に組み付けられる前に行われる。
【0050】
そして、本実施形態においては、基台11におけるシリンダ本体21の前端に対応した位置に当該前端を支持するための支持台13が立設されている。シリンダ本体21の前端がこの支持台13に支持されることにより、基端側がタイロッド26を介して前方フレーム板121に固定されたシリンダ20の当該前方フレーム板121に対する装着状態が安定するようになされている。
【0051】
前記スクリュー部材30は、前方フレーム板121の貫通孔124に貫通されるとともに、前方フレーム板121より前方側がシリンダ本体21に内装される円柱状のスクリュー軸31と、このスクリュー軸31のシリンダ本体21に内装された部分に形成されたスクリュー32と、前記スクリュー軸31の後端から同心で後方に向かって延設された、スクリュー軸31と同一径寸法の絶縁性ロッド34とを備えている。
【0052】
なお、本実施形態においては、絶縁性ロッド34として強靱な合成樹脂材料であるポリテトラフルオロエチレン製のものが採用されているが、ポリテトラフルオロエチレン製のものであることに限定されるものではなく、ポリアミノ製のものや、ポリイミド製のものなど、強靱な合成樹脂材料製のものであれば、どのようなものでも適用可能である。
【0053】
前記スクリュー軸31は、シリンダ本体21より長尺に設定され、前端がダイブロック25内に位置するとともに、後端が前記支持部材12内における後方フレーム板122寄りに位置するように長さ設定されている。
【0054】
かかるスクリュー軸31の前端には、先が先鋭に形成された円錐状の円錐部311が形成されている。この円錐部311は、先端がダイブロック25の排出孔255に臨まされている。絶縁筒体241の扇状孔244を通った溶融原料G1は、この円錐部311を覆った状態でその先端を介して排出孔255から射出されることになる。
【0055】
そして、スクリュー軸31の円錐部311より直後方の部分が前記先端側絶縁部材24のロッド支持孔243に摺接状態で内嵌され、スクリュー軸31の後方側が基端側絶縁部材23に支持されていることと相俟ってスクリュー軸31の外周面と、シリンダ本体21の内周面とが電気的に絶縁状態で対向された状態になっている。
【0056】
前記スクリュー32は、スクリュー軸31におけるシリンダ本体21内に位置した部分にスクリューフィン33が螺旋状に取り付けられることによって形成されている。かかるスクリューフィン33は、外径寸法がシリンダ本体21の内径寸法より若干短径に設定されている。従って、スクリューフィン33の外周面とシリンダ本体21の内周面とは空気を介して電気的に絶縁状態になっている。
【0057】
かかるスクリューフィン33は、図2に示す例では左螺旋(左ねじ)に形成されている。従って、スクリュー部材30が後方から見て軸心回りに時計方向に回転されることにより、シリンダ本体21内の原料Gは、スクリューフィン33に誘導されて前方へ向かって移動することになる。
【0058】
前記絶縁性ロッド34は、スクリュー部材30の後方部分が接地されることなく駆動機構40の駆動力が伝達されるようにするべく設けられたものである。かかる絶縁性ロッド34は、その前端面の軸心位置に例えば角孔状の図略のキー孔が凹設されている一方、スクリュー軸31の後端面には、前記キー孔に嵌め込まれる角柱状の図略のキー突起が突設され、このキー突起がキー孔に嵌入されることによって絶縁性ロッド34がスクリュー軸31に一体回転可能に接続されている。
【0059】
かかる絶縁性ロッド34は、前端部分が支持部材12の後方フレーム板122に装着されたベアリングBに嵌入されているとともに、後端部分が後述のハウジング43に貫通した状態で、当該ハウジング43の後壁に設けられたベアリングBに支持され、これによって軸心回りに円滑に回転し得るようになっている。また、絶縁性ロッド34におけるハウジング43の前後壁の直外側には図略の環状溝が凹設されているとともに、これらの環状溝に抜け止めリング35がそれぞれ嵌め込まれ、これによってスクリュー部材30は、前後方向への移動が規制されている。
【0060】
前記駆動機構40は、スクリュー部材30に駆動力を伝達して当該スクリュー部材30を軸心回りに駆動回転させるものである。かかる駆動機構40は、基台11の後端部に横置きで、かつ、駆動軸411を前方に向けた状態で据え付けられる駆動モータ41と、この駆動モータ41の駆動力を減速状態で絶縁性ロッド34に伝達するためのギヤ機構42とを備えている。
【0061】
前記駆動軸411は、ハウジング43の前後の壁面を貫通し、前端部分がハウジング43内に位置している。
【0062】
前記ギヤ機構42は、駆動モータ41の前方位置に配設されたハウジング43内に装着されている。かかるギヤ機構42は、ハウジング43内で駆動モータ41の駆動軸411と同心で一体回転可能に外嵌された小径ギヤ421と、ハウジング43内で前記絶縁性ロッド34に一体回転可能に外嵌され、かつ、小径ギヤ421に噛合した大径ギヤ422とを備えている。従って、駆動モータ41の駆動による駆動軸411の駆動回転は、小径ギヤ421を介して大径ギヤ422へ減速状態で伝達され、これによる大径ギヤ422の回転でスクリュー部材30が回転される。
【0063】
前記高周波発生器50は、商用電源からの電力を得て当該交流電圧を高周波の高圧電圧に変換したものをスクリュー部材30およびシリンダ20に印加するためのものである。本実施形態においては、周波数2450MHzの高周波を原料Gに印加するようにしている。かかる高周波発生器50の一方の出力端子(プラス側の端子)は、先端が支持部材12内のスクリュー軸31の周面に押圧当接された摺接板51に接続されている一方、他方の端子(マイナス側の端子)は、シリンダ本体21から引き出されて接地されたリード線52に接続されている。これによりシリンダ本体21内でスクリュー32の外周面と、シリンダ本体21の内周面との間に高周波の対向電極が形成されている。
【0064】
従って、シリンダ本体21内に原料Gが供給された状態で、駆動モータ41の駆動によるスクリュー32の駆動回転で原料Gを搬送しつつ高周波発生器50からの高周波をスクリュー32およびシリンダ本体21に印加することにより、スクリュー32の外周面とシリンダ本体21の内周面との間にある原料Gは、搬送されつつ高周波の作用で誘電加熱されて高温になり、溶融されて溶融原料G1になる。この溶融原料G1は、先端側絶縁部材24の扇状孔244を通り、射出成形の場合は、ダイブロック25の排出孔255から金型Mに向けて射出され、金型Mによる射出成形処理に供されることになり、押出成形の場合は、所定の孔形状に設定されたダイ252の排出孔255から排出され、冷却処理の後に製品化される。
【0065】
前記原料貯留部60は、シリンダ本体21の後端部に立設された原料ホッパ61と、この原料ホッパ61の頂部に据え付けられた原料切り出しモータ62と、この原料切り出しモータ62の駆動により原料ホッパ61内の原料Gをシリンダ本体21内へ向けて切り出すスクリューフィーダ63とを備えている。
【0066】
前記原料ホッパ61は、シリンダ本体21の後端上面から立設された円筒状の原料供給筒611と、この原料供給筒611の上端部から上方に向かって延設された上広がりの漏斗部612と、この漏斗部612の上端部からさらに上方に向かって延設された角筒状のホッパ本体613とからなっている。
【0067】
シリンダ本体21には、原料供給筒611に対応した部分に原料受入口212が開口され、前記原料供給筒611は、この原料受入口212を覆った状態でシリンダ本体21に固定されている。かかる原料ホッパ61の上面には、その後方位置を覆うように天板614が架設されている。この天板614の前方部分には、原料Gを原料ホッパ61へ投入するための開口になっている。
【0068】
前記原料切り出しモータ62は、天板614を貫通して駆動軸621を下方へ向けて突出させた状態で天板614に縦置きで据え付けられている。かかる原料切り出しモータ62の駆動軸621には、前記スクリューフィーダ63の上端部が同心で一体回転可能に接続されている。かかるスクリューフィーダ63は、フィーダ軸631と、このフィーダ軸631の前記原料供給筒611に対応した部分の外周面に同心で形成された螺旋条632とからなっている。
【0069】
かかる構成の原料貯留部60によれば、原料ホッパ61内に原料Gが貯留された状態で、原料切り出しモータ62の駆動によりスクリューフィーダ63を軸心回りに駆動回転させることにより、原料ホッパ61内の原料Gは、スクリューフィーダ63の螺旋条632の回転に誘導されて、原料供給筒611を通ってシリンダ本体21へ向けて強制的に供給されることになる。そして、原料Gのシリンダ本体21内への供給量は、スクリューフィーダ63の回転数に支配されるため、原料Gを自然落下に任せてシリンダ本体21内へ供給する場合に比較し、原料Gの供給制御を行う上で好都合である。
【0070】
そして、本実施形態においては、シリンダ本体21の外周面に、シリンダ本体21内の原料Gに対して外部から加熱用の熱を供給するための外熱部材70が設けられている。この外熱部材70は、シリンダ本体21を密着状態で取り囲むように巻かれたジャケット71と、このジャケット71に内装されたニクロム線等の通電発熱体72とを備えている。通電発熱体72には、商用電源からの電力をオン・オフする電源装置73を介して電力が供給される。
【0071】
なお、本実施形態においては、電源装置73は、前記駆動モータ41、高周波発生器50および原料切り出しモータ62のそれぞれを対象として電力供給のオン・オフを行う機能を有している。そして、この電源装置73は、後述する制御装置80による制御で駆動モータ41、高周波発生器50、原料切り出しモータ62および通電発熱体72に関して電力供給のオン・オフを行うようになされている。
【0072】
高周波発生器50に加えて外熱部材70によってもシリンダ本体21内の原料Gに加熱処理を施し得るように構成することで、原料Gに対するより精密な加熱制御を実現することができる。
【0073】
このように構成された樹脂成形機10によれば、駆動モータ41(図2)の駆動でスクリュー部材30を軸心回りに回転させつつ、高周波発生器50の駆動でスクリュー32およびシリンダ本体21に高周波を印加し、この状態で原料切り出しモータ62を駆動させれば、原料ホッパ61内の原料Gは、スクリューフィーダ63の螺旋条632の回転に誘導されて原料ホッパ61内から原料供給筒611を通ってシリンダ本体21内の基端部に供給される。
【0074】
そして、シリンダ本体21内の基端部に供給された原料Gは、スクリュー32の駆動回転によりシリンダ本体21内を下流側(前方)に向かって搬送される。原料Gは、シリンダ本体21内でのスクリュー32の回転による搬送途中でスクリュー32の外周面とシリンダ本体21の内周面とに印加された高周波による誘電加熱で内部加熱されるとともに、場合によっては、電源装置73からの電力供給による外熱部材70の通電発熱体72の発熱で外部加熱され、これらの加熱で溶融されて溶融原料G1になる。
【0075】
この溶融原料G1は、スクリュー32の駆動回転により先端側絶縁部材24の扇状孔244を介し、射出成形の場合ダイブロック25の排出孔255を通って金型Mへ向けて射出されて金型Mを用いた射出成型品が製造され、押出成形の場合ダイブロック25の排出孔255を通った後、そのまま冷却処理されて製品化される。
【0076】
かかる制御を行うために、樹脂成形機10の近傍には、マイクロコンピュータからなる制御装置80が設けられている。図6は、樹脂成形機10の動作を制御する制御装置の一例を示すブロック図である。制御装置80は、装置全体の動作を制御するためのマイクロコンピュータからなる制御部81を備えている。制御部81は、所定の動作プログラムおよび動作に必要な所要のデータ類を記憶するROM82と、処理途中のデータを一時的に保管するRAM83に接続されている。ROM82は前記データの他、記憶領域として操業温度テーブル821を備えている。操業温度テーブル821は、原料と溶融温度との関係を示すものである。
【0077】
制御装置80は、外部より装置の動作条件等を設定するための入力部86、原料ホッパ61内の原料の有無乃至は残量の検知を行う原料センサ87およびシリンダ本体21内の温度を検出する温度センサ88に接続されている。制御部81は、原料センサ87の検出結果から原料の有無乃至は残量の判定を行う原料判定部811、温度センサ88の検出結果と操業温度テーブル821の内容とから温度の適否判定を行う温度判定部812、および量判定部811,812の判定内容に従って、駆動モータ41、高周波発振器50、原料切り出しモータ62および通電発熱体72へ駆動のための制御信号を出力する制御信号出力部813とを備えている。
【0078】
また、原料ホッパ61内の下部の適所(図2に示す例では漏斗部612の下方位置)には、原料ホッパ61内に充分に原料Gが貯留されているか否かを検出するための原料センサ87が設けられている。かかる原料センサ87が設けられるのは、原料ホッパ61内に充分な原料Gが貯留されていないのに駆動モータ41や高周波発生器50等が駆動すると、空運転となってエネルギーが無駄に消費されるので、それを防止するためである。因みに、本実施形態においては、原料センサ87として静電容量式のものが採用されている。
【0079】
前記原料センサ87の検出結果は、常に原料判定部811へ入力されるようになっている。そして、原料ホッパ61内のレベルが原料センサ87の位置以下であると原料センサ87が検出したときは、原料判定部811は、その検出信号に基づきシリンダ本体21内が空であると判別し、この判別結果を制御信号出力部814へ向けて出力する。
【0080】
この信号が入力された制御信号出力部814は、電源装置73に制御信号を出力して駆動モータ41、高周波発生器50、原料切り出しモータ62および通電発熱体72の駆動を停止させたり、図略のLCD(liquid crystal display)等からなる出力画面にそのことを報知させたりする。
【0081】
また、シリンダ本体21内の適所には、所定個数の温度センサ88が設けられ、この温度センサ88の検出結果は、温度判別部813へ逐一入力されるようになっている。そして、温度の検出結果が入力された温度判別部813は、その温度と、操業温度テーブル821が記憶している温度との比較演算を行い、その差が予め設定された許容範囲を越えているときは、当該差を許容範囲内に納めるべく、高周波発生器50および通電発熱体72へ向けて制御信号を出力する。これによる原料Gへ印加するべき高周波電力量の微調整、および通電発熱体72への電力供給の微調整により、原料Gの温度は正常な値に戻ることになる。
【0082】
以上詳述したように、本実施形態に係る樹脂成形機10は、原料Gとして熱可塑性合成樹脂材料が採用され、誘電加熱処理を施すことにより加熱溶融された状態の当該原料Gを所定の金型Mに射出したり、金型Mを用いることなくそのままダイを介して押し出し、冷却処理後に製品化したりするように構成されたものを前提とするものである。
【0083】
かかる樹脂成形機10において、原料Gが装填されるシリンダ20と、このシリンダ20に同心で内装され、かつ、駆動手段の駆動で軸心回りに回転して原料Gを前進させる当該シリンダ20とは絶縁状態のスクリュー32と、シリンダ20およびスクリュー部材30の構成要素であるスクリュー32を対向電極としてシリンダ20内の原料Gに高周波を印加する高周波発生器50とが備えられている。
【0084】
かかる構成によれば、シリンダ20内に原料Gを装填した状態で、駆動手段(本実施形態では駆動モータ41)の駆動によりスクリュー32を軸心回りに回転させつつ、高周波発生器50からの高周波電力を対向電極としてのシリンダ20およびスクリュー32にそれぞれ印加すれば、シリンダ20内の原料Gはスクリュー32の回転で前進しながら高周波を印加されることによる誘電加熱で加熱溶融され、この加熱溶融状態の原料Gが金型Mへ射出されて製品化されたり、ダイ252の排出孔255から排出されたまま冷却処理されて製品化されたりする。
【0085】
このように、シリンダ20およびスクリュー32を対向電極とすることにより、シリンダ20の略全長に亘って内部の原料Gに高周波発生器50からの高周波を印加するようにしているため、従来のようにシリンダ20と金型Mとの間の狭い空間内を移動している原料Gに対し誘電加熱を施す場合に比較し、シリンダ20内の原料Gに対し全体的に誘電加熱を施すことができ、これによって原料Gに対しより効率的に、かつ、均一に誘電加熱を施すことができる。
【0086】
また、原料Gとして、熱可塑性合成樹脂材料を粉砕して得られる粉状のものを採用しているため、加熱溶融状態になるまでの当該原料Gのシリンダ20内での移動および均一な誘電加熱均一な誘電加熱が容易に実現する。
【0087】
また、シリンダ20とスクリュー32との間およびスクリュー32と駆動機構40との間には、それぞれ互いの電気的な導通状態を絶縁する絶縁部材(基端側絶縁部材23および先端側絶縁部材24並びに絶縁性ロッド34)が介設されているため、簡単な構成でありながらシリンダ20とスクリュー32との間の絶縁状態を容易に、かつ、確実に確保することができる。
【0088】
また、シリンダ20の上流端には、貯留した原料Gをシリンダ20内へ切り出す原料ホッパ61が接続されているため、当該原料ホッパ61からのシリンダ20内への原料Gの切り出し処理でシリンダ内への原料Gの供給をスムーズに行うことができる。
【0089】
また、原料ホッパ61には、内部の原料Gを軸心回りの回転でシリンダ20内に強制搬送するスクリューフィーダ63が設けられているため、スクリューフィーダ63を回転させることにより、原料ホッパ61内の原料Gがスクリューフィーダ63の当該回転に誘導されて強制的にシリンダ20へ向けて搬送され、これにより原料Gのシリンダ20への供給作業を円滑、かつ、確実に行うことができる。
【0090】
さらに、シリンダ20の外周面には、シリンダ20内の原料Gに対し外部から加熱する外熱部材70が設けられているため、シリンダ20内の原料Gは、シリンダ20の内周面に設けられた外熱部材70による加熱により、単に誘電加熱のみが採用される場合に比較し、原料Gをより効率的に、かつ、均一に加熱することができるとともに、温度管理の制御の自由度を向上させることができる。
【0091】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0092】
(1)上記の実施形態においては、シリンダ本体21内に供給された原料Gは、溶融原料G1となった後にスクリュー32の駆動回転のみによってダイブロック25の排出孔255から金型Mに向けて射出されたり、金型Mを用いることなく排出孔255からダイを介して排出されたものにそのまま冷却処理を施したりするようになされているが、本発明は、スクリュー32の回転のみで溶融原料G1を射出することに限定されるものではなく、シリンダ本体21内の下流端に溶融原料G1が溜まった状態で、スクリュー32を前方に向けてスライドさせることにより排出させるようにしてもよい。
【0093】
(2)上記の実施形態においては、スクリュー32の外周面とシリンダ本体21の内周面との間は、中空状態とされているが、こうする代わりにシリンダ本体21の内周面およびスクリュー32の外周面の少なくとも一方側に絶縁膜等の絶縁部材を敷設してもよい。さらには、シリンダ本体21の内周面に接する絶縁筒を嵌め込んでもよい。こうすることで、原料Gに対しより効率的に高周波を印加することができる。
【0094】
(3)上記の実施形態においては、原料センサ87として静電容量式のものが採用されているが、本発明は、原料センサ87が静電容量式のものであることに限定されるものではなく、ストライカー方式のリミットスイッチや、発光素子と受光素子とを備えてなる、いわゆる光センサ等の静電容量式以外のものであってもよい。
【0095】
(4)上記の実施形態において、スクリュー部材30におけるスクリュー軸31を絶縁材料で形成し、このスクリュー軸31の周面に螺設されるスクリューフィン33のみを金属製とし、このスクリューフィン33に高周波を印加するようにしてもよい。こうすることによって、基端側絶縁部材23や先端側絶縁部材24を採用しなくてもシリンダ20とスクリュー部材30との間の絶縁状態を容易に得ることができ、装置の簡素化が実現する。
【実施例1】
【0096】
本発明に係る樹脂成形機10の原料黄変抑止効果を確認するために、実施例として樹脂成形機10を用いて高周波加熱で原料Gに加熱溶融処理を施すとともに、比較例として同一の樹脂成形機10を用いるが高周波加熱は行わず、外熱部材70のみによる外部加熱で原料Gに加熱溶融処理を施し、得られた各溶融原料G1の黄変の度合い(黄色度YI)を測定して比較した。
【0097】
原料Gとしては、重合度700の塩化ビニル樹脂(PVC)を採用した。この原料Gにアクリル系の加工助剤である「P710」を、PVCを100部として(以下同じ)1.5重量部添加するとともに、錫系の安定剤である「ONZ−7F」を0.5重量部、1.0重量部、2.0重量部および5.0重量部添加した4種類の試料を調製し、各試料について実施例および比較例の加熱溶融処理を施した。
【0098】
そして、操業温度(シリンダ20内の原料Gの温度)については、実施例および比較例の双方で170℃を目標として温度制御を行った。かかる温度条件下で溶融原料G1を押出成形した。なお、高周波加熱の場合の高周波の周波数は13.56MHzとした。
【0099】
このようにして得られた実施例および比較例の溶融原料G1について、駆動モータ41の駆動によるスクリュー32の軸心回りの回転でシリンダ20内から排出孔255を介して所定量を押し出した。その後に駆動モータ41の駆動を一旦停止してシリンダ20内の溶融原料G1を自然放冷した。そして、溶融原料G1がある程度固まったところでダイブロック25をシリンダ20から取り外し、先端側絶縁部材24を介してシリンダ20から押し出され、スクリュー軸31の円錐部311の回りを包囲した状態になっている溶融原料G1(このときには固化している)の表面を削り取ってサンプルとし、このサンプルについて黄色度を測定した。
【0100】
因みに黄色度とは、理想上の白色(黄色度は「0」)からの色相上の距離(ズレ)のことであり、白色から黄色方向への色相ズレは「プラス」、白色から青方向への色相ズレは「マイナス」を付して表現される。この黄色度の測定に関しては、「ASTM E 313」に規定されている。
【0101】
そして、本実施例においては、東京電色株式会社製の「カラーアナライザー TC−1800」を用いて黄色度を測定した。この測定においては、2度視野で、かつ、C光源を用いた反射光測定法で行い、基準板として白色反射板を用いた。そして、サンプルを基準板と光路の間に設置して測定した黄色度をYIとし、熱による劣化を評価した。
【0102】
測定結果は、以下の表1に示すとおりである。また、この測定結果をグラフ化したのが図7である。なお、表1および図7中の「Phr」は、重量部である。
【0103】
【表1】

【0104】
表1および図7から判るように、原料Gに対し高周波加熱を施した実施例の場合、従来の外熱部材70による外部加熱のみを施した比較例に比べて、安定剤の添加量の多寡に拘わらず黄色度YIが小さくなっていること、すなわち黄変し難いことを確認することができた。特に、安定剤を十分に添加した場合、安定剤との相乗効果によって黄変度を十分に低くすることが可能なことを見出すことができた。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係る樹脂成形機の一実施形態を示す一部切欠き斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】前方フレーム板を背面側から見た斜視図である。
【図4】先端側絶縁部材の一実施形態を示す図であり、(A)は、斜視図、(B)は、(A)のIVB−IVB線断面図である。
【図5】ダイブロックを背面側から見た斜視図であり、(A)は、ダイブロックがシリンダ本体に装着される前に状態、(B)は、ダイブロックがシリンダ本体に装着された状態をそれぞれ示している。
【図6】制御装置を用いた樹脂成形機の制御の一実施形態を説明するためのブロック図である。
【図7】実施例および比較例についての安定剤添加量と、黄色度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0106】
10 樹脂成形機 11 基台
111 主基台 112 副基台
12 支持部材 121 前方フレーム板
122 後方フレーム板 123 蓋体
124,125 貫通孔 126 タイロッド嵌挿孔
126a 大径孔 126b 小径孔
126c 孔底 13 支持台
20 シリンダ 21 シリンダ本体
211 環状段差部 212 原料受入口
22 フランジ 221,232,253 貫通孔
23 基端側絶縁部材 231 絶縁筒部
24 先端側絶縁部材 241 絶縁筒体
242 環状突起 243 ロッド支持孔
244 扇状孔 25 ダイブロック
251 円盤部 252 ダイ
254 接続孔 255 排出孔
26 タイロッド 261 ロッド本体
262 頭部 263 雄ネジ
30 スクリュー部材 31 スクリュー軸
311 円錐部 32 スクリュー
33 スクリューフィン 34 絶縁性ロッド
35 抜け止めリング 40 駆動機構(駆動手段)
41 駆動モータ 411 駆動軸
421 小径ギヤ 422 大径ギヤ
42 ギヤ機構 43 ハウジング
50 高周波発生器 51 摺接板
52 リード線 60 原料貯留部
61 原料ホッパ 611 原料供給筒
612 漏斗部 613 ホッパ本体
614 天板 62 原料切り出しモータ
621 駆動軸 63 スクリューフィーダ
631 フィーダ軸 632 螺旋条
70 外熱部材 71 ジャケット
72 通電発熱体 73 電源装置
80 制御装置 81 制御部
811 原料判定部 812 温度判別部
813 制御信号出力部 82 ROM
821 操業温度テーブル 86 入出力装置
87 原料存否センサ 88 温度センサ
B ベアリング G 原料
G1 溶融原料 M 金型
N ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料である合成樹脂材料を誘電加熱により溶融処理して排出孔に導く樹脂成形機において、
前記原料が装填される導電性のシリンダと、
前記シリンダに同心で内装され、かつ、駆動手段により軸心回りに回転して前記原料を前記排出孔に向けて前進させる導電性のスクリューと、
前記シリンダと前記スクリューとの間に高周波電力を印加する高周波発生器とが備えられていることを特徴とする樹脂成形機。
【請求項2】
前記シリンダと前記スクリューとの対向面の少なくとも一方側に絶縁部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形機。
【請求項3】
前記シリンダは、接地されていることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形機。
【請求項4】
前記シリンダは、その外周面を加熱する加熱手段を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂成形機。
【請求項5】
前記シリンダの上流端には、貯留した前記原料をシリンダ内へ繰り出す原料ホッパが接続されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂成形機。
【請求項6】
原料である合成樹脂材料を誘電加熱により溶融処理して排出孔に導く押出成形方法において、
前記原料が装填される導電性のシリンダと、
前記シリンダに同心で内装され、かつ、駆動手段により軸心回りに回転して前記原料を前記排出孔に向けて前進させる導電性のスクリューとの間に高周波発生器からの高周波電力を印加することを特徴とする押出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−101602(P2009−101602A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275556(P2007−275556)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(390024394)山本ビニター株式会社 (16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】