説明

樹脂成形機のバルブスリーブ回転による色替え装置

【課題】バルブピンに配設したスリーブ片の回転により樹脂合流部の位置を変えて滞留部の残留樹脂を新しい樹脂で除去できるようにした色替え装置の提供。
【解決手段】マニホールド2に設けられる横方向の溶融樹脂の流通路3と、この流通路と連通する縦方向の流通路4を備え、前記横方向の流通路3を貫通し、かつ前記縦方向の流通路4内を縦装するバルブピン5を設け、溶融樹脂を前記マニホールド2の横方向の流通路3より縦方向の流通路4を経てゲート8を介してキャビティに射出可能とすると共に、前記バルブピン5のマニホールド2の流通路に挿通させる箇所に管状の樹脂流変更用スリーブ片10を配設し、前記スリーブ片10の端部のマニホールド2の流通路に対応して臨まれる箇所に傾斜面11を設けて溶融樹脂の色替え時にバルブピン5を中心に回転可能に設けて溶融樹脂の流通方向を可変できるようにしたことを特徴とするバルブスリーブ回転による色替え装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形樹脂原料の色替え交換時の滞留溶融樹脂を簡単に無くすようにした樹脂成形機のバルブスリーブ回転による色替え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に各種樹脂成形機における溶融樹脂を原料とするホットランナーの成形加工では、成形品の色彩ないしは素材原料を途中で変更する場合がある。
【0003】
この場合、金型内の溶融樹脂の流通路には、前の溶融樹脂が残留しているので、新しい原料を試験的に流出させて残留樹脂を除去しなければならない(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−127178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂成形機のマニホールドを貫通するバルブピンを用いてゲートを開閉する場合は、マニホールドにおいてバルブピンの樹脂流通路の当接する前面の反対側、即ち、後面側に残留量が多く滞留し、中々容易に取り除くことができないという問題があった。
【0006】
即ち、溶融樹脂の流通路とバルブピンが交差する部分である流動樹脂がバルブピンにより2分割され、バルブピン裏側で合流するが、合流点で流速が落ち滞留しがちとなる。色替えの場合は、この滞留部に残った色替え前の樹脂を少しずつ引き出し、なかなか色替えできないという問題があった。
【0007】
本発明は叙上の点に着目して成されたもので、バルブピンに配設したスリーブ片の回転によりバルブピンの樹脂合流部の滞留部の位置を変えて滞留部の残留樹脂を交換しようとする新しい樹脂で除去できるようにした樹脂成形機のバルブスリーブ回転による色替え装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は叙上の課題を解決するために以下の技術的構成を有する。
【0009】
(1)マニホールドに設けられる横方向の溶融樹脂の流通路と、この流通路と連通する縦方向の流通路を備え、前記横方向の流通路を貫通し、かつ前記縦方向の流通路内を縦装するバルブピンを設け、溶融樹脂を前記マニホールドの横方向の流通路より縦方向の流通路を経てゲートを介してキャビティに射出可能とすると共に、前記バルブピンのマニホールドの流通路に挿通させる箇所に管状の樹脂流変更用スリーブ片を配設し、前記スリーブ片の端部のマニホールドの流通路に対応して臨まれる箇所に傾斜面を設けると共に、前記スリーブ片を溶融樹脂の色替え時にバルブピンを中心に回転可能に設けて溶融樹脂の流通方向を可変してバルブピン後方の溶融樹脂の流出側の樹脂滞留部内の旧い樹脂を取り除くことができるようにして成ることを特徴とする樹脂成形機のバルブスリーブ回転による色替え装置。
【0010】
(2)管状の樹脂流変更用スリーブ片は、金型内に設けた駆動手段によりバルブピンを中心とした回動偏倚できるようにして成ることを特徴とする前記(1)記載の樹脂成形機のバルブスリーブ回転による色替え装置。
【0011】
(3)駆動手段は、摘子を有する回転軸の先端に噛合部を備え、管状の樹脂流変更スリーブ片の噛合部と噛合させて成ることを特徴とする前記(2)記載の樹脂成形機のバルブスリーブ回転による色替え装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マニホールド内に縦装させたバルブピンの樹脂流後方に形成される樹脂残留部に滞留する旧い樹脂を新たな樹脂が流通する過程で、管状の樹脂流変更用スリーブ片を回動偏倚させてスリーブ片の傾斜面を旧い樹脂の流れの方向と異ならせて、新たな樹脂の流れの方向を形成し、バルブピンの後方に形成された旧い樹脂の滞留部の樹脂を流し去ることができるので、色替樹脂によるためし成形作用を少なくして速やかな色替え樹脂成形を行うことができる。
【0013】
そして、樹脂変更用スリーブ片は、スパナーなどの工具で回転させることができるが、歯車構成を用いて金型外からも簡単に遠隔制御して有効な色替え時の効率的な新しい樹脂への交換作業を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る色替え装置の全体の構成図
【図2】図1の要部構成である樹脂流変更用スリーブ片の装着状態を示す要部の拡大断面図
【図3】図2の樹脂流変更用スリーブ片の傾斜面と樹脂の流通路との関係を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は横断面図
【図4】図3における樹脂流変更用スリーブ片の作動状態を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は横断面図
【図5】本発明に係る駆動手段の一例を示す説明断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施例を図面と共に説明する。
【実施例】
【0016】
1は樹脂成形機の金型、2は溶融樹脂が流通するマニホールド、3は溶融樹脂の流通路、4は前記マニホールド2と連通する溶融樹脂の流通路で、前記溶融樹脂の流通路3と直交して設けられる。5はバルブピンを示し、基端にはピストン6が設けられ、金型1内に設けられるシリンダー7内に配設されて大気圧又は油圧などの作動流体でシリンダー7内のピストン6は往復動し、バルブピン5は前記溶融樹脂の流通路3及び4内で連動して往復動する。8はキャビティに通ずるゲートを示し、前記バルブピン5の先端部9で開閉される。
【0017】
10はバルブピン5に挿通される管状の樹脂流変更用スリーブ片で、先端には傾斜面11が形成され、マニホールド2の溶融樹脂の流通路4に臨まれ、前記流通路4を流れる溶融樹脂の流通方向Wを変えるように働く。そして、溶融樹脂の流通路4に臨まれるバルブピン5の後方に樹脂滞留部Xが形成される。
【0018】
12は前記樹脂流変更用スリーブ片10を回転させるための駆動手段で、簡単には金型1の間隙又は一部を取り外すなどして樹脂流変更用スリーブ片10に対して、スパナーなどの工具(図示せず)を用いて樹脂流変更用スリーブ片10の頭部を係止又は把持させて好みの角度に回動させて傾斜面11の位置を変更させ、バルブピン5の樹脂滞留部Xへの溶融樹脂の流通状態を変化させることができる。なお、前記傾斜面11はテーパー状とか円弧状など好みの形状に形成でき、樹脂流を滑らかに案内させることができる。
【0019】
叙上の構成に基づいて、作用を説明する。
【0020】
最初の樹脂で樹脂成形処理された後、新たな樹脂、即ち色替えされた新しい樹脂で樹脂成形する際、金型1の溶融樹脂の流通路3,4には残留した旧い樹脂のため新たな色替え樹脂は、ためし取り成形処理が行われる。
【0021】
その際、樹脂滞留部Xでの残留樹脂を速やかに除去するためのバルブピン5に挿通されている管状の樹脂流変更用スリーブ片10を回動変位させる。
【0022】
この変位により樹脂流変更用スリーブ片10の先端の傾斜面11は溶融樹脂の流通方向Wと異なった状態で対抗するので、新たな樹脂はバルブピン5による分流状態が異なり、樹脂滞留部Xには新たな樹脂が侵入し、残留している旧い樹脂を押し出して、旧い樹脂の残留分は、少ない数のためし取り成形で残留樹脂分は綺麗に取り除くことができる。
【0023】
そして、完全に新しい樹脂に変換された時点で樹脂流変更用スリーブ片10を前記したスパナーなどの工具を用いて現状の状態に回動させて、以後新しい樹脂による反覆樹脂成形処理を行わせることができる。
【0024】
つぎに図5に基づいて樹脂流変更用スリーブ片10の駆動手段12について、一例を示す。
【0025】
13は樹脂流変更用スリーブ片10の頂部に設けた受動用の噛合部、14は前記噛合部13と噛合する駆動用の噛合部で、ベベルギヤ構成を備える。15は前記噛合部14の軸杆で金型1内を挿通軸支させて金型1外に突出させて摘子16を固着してある。
【0026】
従って、摘子16を指頭で把持して左右いずれかの方向へ回転させればベベルギヤの噛合部14の回転作用は噛合部13との噛合で樹脂流変更用スリーブ片10を回動させることができる。
【0027】
色替えのためのためし取り成形修了後、摘子16を反対方向に回転させて元の状態に戻すことにより、新たな樹脂による成形操作を行わせることができる。
【0028】
なお、駆動手段12の一例を示したが、その他種々、好みの構成の駆動手段を採用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 金型
2 マニホールド
3,4 流通路
5 バルブピン
6 ピストン
7 シリンダー
8 ゲート
9 先端部
10 樹脂流変更用スリーブ片
11 傾斜面
12 駆動手段
13,14 噛合部
15 軸杆
16 摘子
X 樹脂滞留部
W 溶融樹脂の流通方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニホールドに設けられる横方向の溶融樹脂の流通路と、この流通路と連通する縦方向の流通路を備え、前記横方向の流通路を貫通し、かつ前記縦方向の流通路内を縦装するバルブピンを設け、溶融樹脂を前記マニホールドの横方向の流通路より縦方向の流通路を経てゲートを介してキャビティに射出可能とすると共に、前記バルブピンのマニホールドの流通路に挿通させる箇所に管状の樹脂流変更用スリーブ片を配設し、前記スリーブ片の端部のマニホールドの流通路に対応して臨まれる箇所に傾斜面を設けると共に、前記スリーブ片を溶融樹脂の色替え時にバルブピンを中心に回転可能に設けて溶融樹脂の流通方向を可変してバルブピン後方の溶融樹脂の流出側の樹脂滞留部内の旧い樹脂を取り除くことができるようにして成ることを特徴とする樹脂成形機のバルブスリーブ回転による色替え装置。
【請求項2】
管状の樹脂流変更用スリーブ片は、金型内に設けた駆動手段によりバルブピンを中心とした回動偏倚できるようにして成ることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形機のバルブスリーブ回転による色替え装置。
【請求項3】
駆動手段は、摘子を有する回転軸の先端に噛合部を備え、管状の樹脂流変更スリーブ片の噛合部と噛合させて成ることを特徴とする請求項2記載の樹脂成形機のバルブスリーブ回転による色替え装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91213(P2013−91213A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233948(P2011−233948)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(390029218)世紀株式会社 (11)
【Fターム(参考)】