説明

樹脂押出機用排出樹脂切断装置

【課題】本発明は、複数の樹脂排出孔を有する樹脂切断板をカバーに対して摺動回転させ、互着を防止して所定の樹脂塊を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明による樹脂押出機用排出樹脂切断装置は、ダイバータバルブ本体(3)の下部の樹脂排出孔(15)を有するカバー(14)の下面に、複数のガイド孔(16)を有する樹脂切断板(17)を設け、前記樹脂切断板(17)をウォームギア(20a)で回転駆動することにより、前記ダイバータバルブ本体(3)の樹脂排出孔(15)から垂下する溶融樹脂材料(21)を所定長さで切断する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂押出機用排出樹脂切断装置に関し、特に、複数の樹脂排出孔を有する樹脂切断板をカバーに対して摺動回転させ、互着を防止して所定の樹脂塊を得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成樹脂原料は、通常、揮発成分の分離除去、改質、均質化などを目的として、大容量のスクリュ式混練押出機により溶融混練して押出され、引続き、後工程における取扱いを容易にすることを目的とし、造粒装置により造粒されている。このような加工処理に使用されるスクリュ式混練押出造粒装置は、スクリュ式混練押出機と、その先端(下流端)にダイバータバルブを介して連結される造粒装置と、により構成されている。
【0003】
前記ダイバータバルブは、前記スクリュ式混練押出機と前記造粒装置とを連通する流路及びスクリュ式混練押出機と機外とを連通する流路の二つの流路を切り換える弁装置である。
【0004】
スクリュ式混練押出造粒装置において、スクリュ式混練押出機により溶融混練して押出され、引続き、造粒装置により造粒される合成樹脂原料は、所定の物性を備えた均質な製品として生産されることが要求される。しかし、運転開始後、また、運転中に合成樹脂原料のグレードあるいは種類を変更された後などのスクリュ式混練押出機の運転状態が安定するまでの暫くの間は、溶融混練された合成樹脂原料の物性が変化して安定せず、所定の物性すなわち品質を備えた均質な製品を得ることができない。さらに、連続運転中に、造粒装置を何らかの原因で運転停止しなければならない場合がある。
【0005】
ダイバータバルブがスクリュ式混練押出機と機外とを連通する流路に切り換えた状態にある場合、スクリュ式混練押出機において溶融混練された高温溶融状態の合成樹脂原料が、通常、ダイバータバルブの下方に開口する排出孔から機外へ排出される。機外へ排出される合成樹脂原料は、例えば搗きたての餅のような状態で垂下るように排出され、そのままでは床上に順次堆積する。排出されて床上に堆積する排出樹脂原料は、堆積直後、又はその後冷却されて大きな塊となった状態において、その後の処理及び取扱いが困難であり多大な労力と時間とが必要になる。
【0006】
このような排出樹脂原料に対し、処理及び取扱いを容易にするために、従来から、ダイバータバルブの樹脂排出孔において、小片に切断して小さな樹脂塊にすることが行われている。例えば、特許文献1において、樹脂排出孔を細線が繰返し横断することにより排出樹脂原料を小片に切断する方法、および、樹脂排出孔を横断して張渡される細線と、細線を保持すると共に排出孔の周囲を往復移動できる保持装置と、細線が排出孔を越えて往復回動するように保持装置を往復動させる駆動装置と、で構成された装置が示されている。
【0007】
また、特許文献2に示される方法及び装置では、ダイバータバルブに2個の排出口を形成し、ダイバータバルブのそれぞれの排出口を個別に開口すると共に、そのうちの少なくとも1個の排出口の少なくとも一部を常時開口するように配置した2個の穴が形成された開閉板を、ダイバータバルブの排出口を横断して直線的に往復動させることにより、それぞれの排出口から連続的に排出される合成樹脂材料を、小片に切断して落下させている。
このようにして切断された切断片の合成樹脂材料は、ダイバータバルブ下方に用意した作業車両に直接、若しくは床上及びシュートに落下した後必要に応じて散水により冷却され、作業者によりかぎ棒等を使用して作業車両あるいはベルトコンベアに乗せて搬送されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−109225号公報
【特許文献2】特開2003−340905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の装置は以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、特許文献1の構成では、往復動の切り替えのために、切断装置及びその駆動装置はセンサー等を備えた複雑な構造を必要とし、また、往復動の切り替えには物理的に、また制御のための信号の確認などにより一定の待機時間を要するため、その間の樹脂排出時間が長く、切断される樹脂塊の長さが長くなったり不均一になると言う問題があった。さらにこの長い樹脂塊は、特に押出機の処理能力が大きく、ダイバータバルブから排出される樹脂の量が多い場合、水冷、空冷による冷却・固化に時間を要し、固化していない状態で他の樹脂塊と接触して互着を起こし、さらに大きな塊となるため、排出樹脂の取り出し・処理が非常に困難であった。
また、特許文献2の構成では、ダイバータバルブの排出孔を複数個設け、一つ一つの排出孔からの樹脂排出量を少なくし、排出樹脂を小さく切断する場合、排出孔同士の間隔が狭く、隣り合う排出孔から排出される溶融樹脂塊同士が、落下中に、または落下直後に互いに接触し互着するため、排出孔同士の間隔を大きくしなければならず、ダイバータバルブ自体を非常に大きくする必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による樹脂押出機用排出樹脂切断装置は、1個の樹脂排出孔が設けられダイバータバルブの下端の開口を覆うように配設された板状のカバーと、複数個のガイド孔が同心円位置に設けられると共に外周に従動ギアが形成され前記カバーの下面に支軸を介し前記カバーに対して摺動回転する円盤状の樹脂切断板と、前記樹脂切断板の近傍に設けられ前記従動ギアと噛み合うウォームギアが形成された駆動軸と、からなり、前記駆動軸が回転駆動されて前記樹脂切断板を前記支軸を中心に回転させることにより、前記樹脂切断板が前記カバーの下面に沿って摺動状態で回転し、前記樹脂排出孔から排出される溶融樹脂材料が前記樹脂排出孔を介して樹脂塊に切断される構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明による樹脂押出機用排出樹脂切断装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、従来の装置のように往復動の切り替えによる待機時間がなく、制御方法による反応遅れもないため、素早くかつ均一に排出樹脂を切断できるので、排出樹脂塊の冷却・固化が容易となり、未固化樹脂塊同士の互着を防ぐことが出来、排出樹脂の取り出し・運搬・処理が容易で安全になる。
また、樹脂切断板の作動方向・速度が一定で切断された樹脂塊の落下位置のばらつきが少ないので、排出樹脂用シュート上等での樹脂塊同士の接触を防ぐことができ、また散水による冷却効果も高まり、樹脂塊同士の互着をより防ぐことができる。また、切断板にスクレーバーを並設することで樹脂塊の切断板への付着を防ぐことができ、その効果を増大させることができる。
また、駆動装置は一定速度で駆動軸を回転させるだけでよいので複雑な構造を必要とせず、単純な装置でよい。また、押出機自体の処理能力が大きく、切断速度を高速にする必要が有る場合も駆動装置の回転数を上げる、またはガイド孔の数を増やすことで容易に対応できる。従って切断装置を従来よりもコンパクトにすることができ、省スペース化に寄与できる。
排出樹脂の互着が解消され、排出樹脂の取扱いが容易になるため、排出樹脂の処理作業に要する時間・労力・人員を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による樹脂押出機用排出樹脂切断装置を示す断面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、複数の樹脂排出孔を有する樹脂切断板をカバーに対して摺動回転させ、互着を防止して所定の樹脂塊を得るようにした樹脂押出機用排出樹脂切断装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明による樹脂押出機用排出樹脂切断装置の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明による排出樹脂の切断装置が設けられたスクリュ式押出機の要部を示す側面断面図であり、図2は、図1の矢印A方向の矢視図である。図1において符号1で示されるものは押出機2に接続されたダイバータバルブであり、このダイバータバルブ1のダイバータバルブ本体3には入口4から出口5に連通する流路6が形成されている。前記ダイバータバルブ本体3内には、この流路6に連通可能な直線水平流路7及び排出用曲折流路8が互いに独立し、ピストン9が昇降自在に設けられている。このダイバータバルブ本体3上には、支柱10及び取付板11を介してシリンダ12が設けられている。このシリンダ12のロッド13は、前記ピストン9に接続されており、このシリンダ12のB方向における作動によってピストン9が昇降できるように構成されている。尚、前述のダイバータバルブ本体3は前述の特許文献1で開示された構成と同一で周知である。
【0015】
本発明においては、前記ダイバータバルブ本体3の下部に板状のカバー14を設けており、このカバー14は板厚方向に貫通する樹脂排出孔15が形成されている。
前記カバー14の下部には、板厚方向に貫通する複数のガイド孔16を有する円盤状の樹脂切断板17が支軸22によって回転自在に設けられている。このガイド孔16は樹脂切断板17が回転して前記排出孔15と連通するように樹脂切断板17の同一円周上に等間隔に設けられている。前記樹脂切断板17の外周18は従動ギア18aを有するウォームホイール構造となっており、この樹脂切断板17の近傍には駆動軸20が回転自在に設けられている。この駆動軸20のウォームギア20aは樹脂切断板17の外周18の従動ギア18aと接触しており、この駆動軸20の作動によって樹脂切断板17が回転できるように構成されている。
尚、駆動軸20は図示しない駆動機によって回転するように構成されている。尚、前記駆動軸20は、前記カバー14の下面14aに取付けた一対の保持体23、24によって回転自在に保持されている。
【0016】
次に、以上のように構成されたダイバータバルブの樹脂切断板17により、排出する溶融樹脂材料を処理する場合について述べる。図1に示されるように、前記ピストン9の排出用曲折流路8が入口4に連通された状態で、かつ図2のように樹脂排出孔15とガイド孔16の一つが連通された状態で押出機2が運転されると、この押出機2の先端から吐出された溶融樹脂材料21は、ダイバータバルブ本体3の入口4、排出用曲折流路8、樹脂排出孔15及びガイド孔16を経て垂下して排出される。この溶融樹脂材料21の垂下状態で前記駆動機により駆動軸20を一定速度で回転させると、ウォームギア20a及び従動ギア18aを介して樹脂切断板17が一定速度で回転し、樹脂排出孔15が同一円周上に等間隔に設けられているガイド孔16と一定周期で連通・閉止を繰り返す。この閉止の際に樹脂排出孔15より垂下した溶融樹脂材料21が樹脂切断板17によって切断される。従って、樹脂切断板17を一定速度で回転させることによって排出される溶融樹脂を均等に切断し下方に落下させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明による樹脂押出機用排出樹脂切断装置は、溶融樹脂の切断だけではなく、食品等の練り物の切断にも適用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 ダイバータバルブ
2 押出機
3 ダイバータバルブ本体
4 入口
5 出口
6 流路
7 直線水平流路
8 排出用曲折流路
9 ピストン
10 支柱
11 取付板
12 シリンダ
13 ロッド
14 カバー
15 樹脂排出孔
16 ガイド孔
17 樹脂切断板
18 外周
18a 従動ギア
20 駆動軸
20a ウォームギア
21 溶融樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂排出孔(15)が設けられダイバータバルブ(1)の下端の開口(1A)を覆うように配設された板状のカバー(14)と、複数個のガイド孔(16)が同心円位置に設けられると共に外周に従動ギア(18a)が形成され前記カバー(14)の下面に支軸(22)を介し前記カバー(14)に対して摺動回転する円盤状の樹脂切断板(17)と、前記樹脂切断板(17)の近傍に設けられ前記従動ギア(18a)と噛み合うウォームギア(20a)が形成された駆動軸(20)と、からなり、
前記駆動軸(20)が回転駆動されて前記樹脂切断板(17)を前記支軸(22)を中心に回転させることにより、前記樹脂切断板(17)が前記カバー(14)の下面(14a)に沿って摺動状態で回転し、前記樹脂排出孔(15)から排出される溶融樹脂材料(21)が前記樹脂排出孔(15)を介して樹脂塊に切断されることを特徴とする樹脂押出機用排出樹脂切断装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−188620(P2010−188620A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35587(P2009−35587)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】