説明

樹脂材の塗膜剥離装置

【課題】剥離筒周壁の塗膜通過孔の形状を改良し、樹脂材の塗膜層を越えて再生材に食い込むことを防ぎ、再生材の歩留まりを向上させることができる塗膜剥離装置を提供する。
【解決手段】角型筒状体18に穿設される塗膜通過孔が、所定の間隔をおいて穿設した多数の打ち抜き小孔28を剥離筒18の長手方向に一列に配置した小孔列Kと、該小孔列Kよりも広い間隔で穿設される多数の打ち抜き小孔28’,28’間に、天孔29a及び該天孔29aを中心とした径大の凸状エンボス部29bからなる円形突出環29を介在させて剥離筒18の長手方向に一列に配置した小孔突出環列Lとを、剥離ロールの回転方向側に交互に多列状に配設したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の不良バンパー又は廃車の使用済バンパーなど樹脂材の塗装膜を剥離・除去し、これを再生材として新車のバンパーや樹脂部品に加工して樹脂材を再利用するためのバンパーなど樹脂材の塗膜剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バンパーなど樹脂材の塗膜剥離装置として、一端を供給側とし他端を排出側とした剥離筒と、複数の突条を外周に有し、前記剥離筒の内壁面との間に剥離処理用の間隙を形成するよう配設された剥離ロールと、前記剥離筒の排出側の吐出口を塞ぐようにして配設した押え板と、該押え板の押し付け力を加減し流出量及び前記剥離筒内の圧力を調整する圧力調節部と、を備えた樹脂材の剥離装置は周知である。
【0003】
特許文献1には、剥離筒と剥離ロールとの間に粗粉砕体を通し、衝撃作用及び攪拌作用により粗粉砕体の表面塗膜を擦りとって剥離するようにした装置が開示されており、これにより、塗膜の分離処理が簡略になり、コストを低減することができ、またスペースも取らないといったメリットが生じる。
【0004】
特許文献2には、使用済バンパーを洗浄破砕乾燥処理して破砕原料とし、この破砕原料を精米機と同様の回転駆動する塗膜剥離機に供給し、ここで破砕原料から塗膜を剥離して、塗膜と塗膜のない再生母材に分離する装置が開示されており、これにより、破砕原料を加圧攪拌しながらその表面の塗膜を削り取り、破砕原料の塗膜が剥離されるから、塗料の種類、塗装の方法に関係なくどんなバンパーでも処理できる利点がある。
【0005】
特許文献3には、周壁に粉砕物から剥離させた塗膜を通過させる塗膜通過孔が形成された角型筒状体及び柱面に突条及び溝が形成されるとともに、気体を噴出させる気体噴出孔が形成された剥離ロールからなる塗膜剥離部と、粉砕物導入部と、粉砕物送込部と、粉砕物排出部とを有した塗膜剥離装置が開示されており、これにより、剥離ロールの柱面に突条及び溝を設けて、塗膜剥離の起点となるキズを塗膜に予めつけることができるから、塗膜の剥離効率をより高めることができるものである。
【0006】
特許文献4には、加温手段を設けた剥離筒に、複数の擦り突起をロール軸に螺旋並びで突設した剥離ロールを内蔵してなり、前記擦り突起は剥離筒の内面に近接した擦り頂上面と剥離ロールの自転方向上流側に上り傾斜前面とを有し、剥離筒の内面と剥離ロールの擦り頂上面との間で樹脂廃棄物を擦り合わせる表面塗膜剥離装置が開示されており、これにより、発生する摩擦熱を最低にしながら、擦り合わせによる衝撃作用のみを樹脂廃棄物に与えることができ、連続的な処理が可能となるものである。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2、3及び4記載の塗膜剥離装置にあっては、剥離筒の周壁に、粉砕物から剥離された塗膜を通過させるための多数の塗膜通過孔が形成されており、その形状は、例えば、図6に示すように、剥離筒101の長手方向に対して斜めに細長い長孔スリット102を平行状態に多数穿設するとともに、該長孔スリット102間に角型エンボス103を立設したものとなっている。
このような多数の長孔スリット102及び角型エンボス103からなる塗膜通過孔を有する剥離筒101を用いる場合、角型エンボス103端面を微視的に観察すると、角部が鋭利な刃物のような形状となっており、塗膜剥離しようとする樹脂材の表面を大きく削って、樹脂材の塗膜層を越えて再生材に食い込む状態となってしまう。つまり、角型エンボス103は切削作用を向上させるために設けたものであり、樹脂材を塗膜剥離装置に1回通過させる程度では特に大きな影響はないが、塗膜剥離装置に4〜5回通過させて塗膜を完全に除去しようとすると、再生材を大きく削り過ぎてしまい、歩留まりが悪くなる問題があった。また、長孔スリット102では、厚みが4mm以下の平板状の多角形状の樹脂材にあっては、剥離工程中に長孔スリット102から樹脂材が漏出してしまい、歩留まり悪化の要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−276364号公報
【特許文献2】特開平11−58379号公報
【特許文献3】特開2001−88128号公報
【特許文献4】特開2005−96270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点にかんがみ、剥離筒周壁の塗膜通過孔の形状を改良し、樹脂材の塗膜層を越えて再生材に食い込むことを防ぎ、再生材の歩留まりを向上させることができる塗膜剥離装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、一端を供給側とし他端を排出側とした剥離筒と、複数の突条を外周に有し、前記剥離筒の内壁面との間に剥離処理用の間隙を形成するよう配設された剥離ロールと、前記剥離筒の排出側の吐出口を塞ぐようにして配設した抵抗蓋と、該抵抗蓋の押し付け力を加減し流出量及び前記剥離筒内の圧力を調整する圧力調節部と、を備えた樹脂材の塗膜剥離装置であって、前記剥離筒は、多角形状の角型筒状体からなり、該角型筒状体に穿設される塗膜通過孔が、所定の間隔をおいて穿設した多数の打ち抜き小孔を前記剥離筒の長手方向に一列に配置した小孔列Kと、該小孔列Kよりも広い間隔で穿設される多数の打ち抜き小孔間に、天孔及び該天孔を中心とした径大の凸状エンボス部からなる円形突出環を介在させて前記剥離筒の長手方向に一列に配置した小孔突出環列Lとを、前記剥離ロールの回転方向側に交互に多列状に配設して形成する、という技術的手段を講じた。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記小孔列Kを構成する多数の打ち抜き小孔と、前記小孔突出環列Lを構成する多数の打ち抜き小孔及び天孔とを、同じ孔径に設定するとともに、小孔突出環列Lを構成する円形突出環の凸状エンボス部の底径を、前記小孔及び天孔の孔径の略2倍の大きさに設定することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記小孔列Kを構成する多数の打ち抜き小孔と、前記小孔突出環列Lを構成する多数の打ち抜き小孔及び円形突出環とを密集させて配設し、角型筒状体に穿設される塗膜通過孔の開口率を23%以上30%未満に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、角型筒状体に穿設される塗膜通過孔の形状を、小孔列Kと小孔突出環列Lとを交互に配設した構成とすることで、従来の鋭利な刃物のような角型エンボス端面に比べて、円形突出環の側面部が半球状のなだらかな曲面となっており、樹脂材の塗膜層を越えて再生材に食い込むおそれがなく、また、円形突出環の天孔端面により塗膜のみを剥離することができ、再生材の歩留まりを向上させることができる。
【0014】
また、請求項2記載の発明によれば、同じ孔径の多数の打ち抜き小孔を穿設して小孔列Kを複数列設けた後、打ち抜き小孔間に、プレス加工法によって小孔の孔径の略2倍の大きさで凸状エンボス部を成形すれば小孔突出環列Lが出来上がり、塗膜通過孔の加工を簡略化することができる。
【0015】
さらに、請求項3記載の発明によれば、角型筒状体に穿設される塗膜通過孔の開口率を23%以上30%未満の範囲に設定しているから、塗膜を通過させる効果が大きく、かつ、厚みが4mm以下の平板状の多角形状の樹脂材であってもスリットから漏出する虞(おそれ)が少なく、歩留まり向上が可能となる。また、角型筒状体の強度を確保して、剥離筒からの流出量及び剥離筒内の圧力を適宜に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る塗膜剥離装置の縦断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図及び塗膜通過孔の拡大図である。
【図3】剥離筒の側面図及び塗膜通過孔の拡大図である。
【図4】図3のB−B線における断面図である。
【図5】塗膜通過孔の一部拡大斜視図である。
【図6】従来の剥離筒の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る塗膜剥離装置の縦断面図であり、図2は図1のA−A線に沿った断面図及び塗膜通過孔の拡大図であり、図3は剥離筒の側面図及び塗膜通過孔の拡大図であり、図4は図3のB−B線における断面図であり、図5は塗膜通過孔の一部拡大斜視図を示すものである。
【0018】
図1乃至図3において、塗膜剥離装置1は、粉砕物導入部2と、一端を供給側とし他端を排出側とした剥離筒及び剥離ロールからなり、粉砕物から塗膜を剥離させる塗膜剥離部3と、該塗膜剥離部3に粉砕物を連続的に送り込む粉砕物送込部4と、前記剥離筒の排出側の吐出口を塞いで、粉砕物の排出を抑制しながら連続的に排出させる粉砕物排出部5とを有したものである。
【0019】
粉砕物導入部2は、粉砕物を貯留するホッパー6と、該ホッパー6下方を手動で開閉するシャッター7と、ホッパー6に貯留された粉砕物をブリッジの崩壊を伴って間欠的に粉砕物送込部4に送るロータリーバルブ8とが設けられている。符号9はロータリーバルブ8を間欠的に回転駆動させるモータである。
【0020】
前記粉砕物送込部4と塗膜剥離部3との間は、剥離筒10によって連通自在となっており、該剥離筒10内に回転自在な中空軸11が内装されている。そして、該中空軸11の一端側にプーリ12が軸着され、他端側であって粉砕物送込部4を形成する部分に送りロール13が軸着され、塗膜剥離部3を形成する部分に剥離ロール14が軸着される。すなわち、送りロール13は粉砕物の送り方向の上流側に位置し、剥離ロール14が粉砕物の送り方向の下流側に位置するよう中空軸11に対し同心状に一体的に設けてある。そして、プーリ12に巻き掛かるベルト15にはモータ16のモータプーリ17に連絡され、モータ16からの回転力が中空軸11伝達される構成となっている。
【0021】
前記剥離ロール14には、周面に複数の突条14a及び噴風溝14bが形成されており、該剥離ロール14と、剥離筒10に装着された角型筒状体18と、該角型筒状体18を囲繞する塗膜回収樋19とにより塗膜剥離部3が形成される。粉砕物排出部5は、剥離筒10の先端側に開口される再生材吐出口20と、この再生材吐出口20を塞ぐように圧接自在に配設した抵抗蓋21と、該抵抗蓋21の押し付け力を加減し流出量及び前記剥離筒内の圧力を調整する圧力調整装置22と、前記再生材吐出口20と連通して再生材を機外に排出する再生材排出樋23とにより構成される。そして、塗膜回収樋19下端の排出口19aには、剥離済みの塗膜を回収するバッグフィルター(図示せず)に至る連絡管が接続されることになり、塗膜回収樋19内には、この空間の静圧が適度であるか否かを検出する静圧計センサノズル24を臨ませてある。
【0022】
前記中空軸11は、その中空部に噴風通路25を形成するとともに、該噴風通路25の一端側に噴風供給管26が接続される。そして、噴風供給管26には噴風ファン27が接続され、該噴風ファン27により生成した圧搾空気が噴風供給管26及び噴風通路25を介して剥離ロール14の噴風溝14bから吐出することになり、これにより、角型筒状体18から塗膜回収樋19への塗膜の排出を促進することができる。
【0023】
前記剥離筒10に装着される角型筒状体18は、図2に示す例では6角形であるが、これに限らず、7角形、8角形、10角形又は円筒を採用することができる。そして、角型筒状体18の網板18aに塗膜通過孔が穿設されるのであるが、本実施形態の塗膜通過孔は(図2及び図3参照。)、所定の間隔をおいて穿設した多数の打ち抜き小孔28…を剥離筒10の長手方向側に一列に配置した小孔列Kと、該小孔列Kよりも広い間隔で穿設した多数の打ち抜き小孔28’、28’間に、天孔29a及び該天孔29aを中心とした径大の凸状エンボス部29bからなる円形突出環29を介在させて、剥離筒の長手方向側に一列に配置した小孔突出環列Lとを、前記剥離ロール14の回転方向側に交互に多列状に配設して形成したものである。このように小孔列Kと小孔突出環列Lとを、交互に配設した構成とすることで、従来の鋭利な刃物のようなスリット端面に比べて、円形突出環29の側面部29cが半球状のなだらかな曲面であるから、樹脂材の塗膜層を越えて再生材に食い込むおそれがなく、円形突出環29の天孔29a端面により塗膜のみを剥離することができ、再生材の歩留まりを向上させることができる。
【0024】
そして、小孔列Kを構成する多数の打ち抜き小孔28…と、小孔突出環列Lを構成する多数の打ち抜き小孔28’…及び天孔29aとを、同じ孔径(例えば、2mm)に設定するとともに、小孔突出環列Lを構成する円形突出環29の凸状エンボス部29bの底径を、小孔28、28’及び天孔29aの孔径の略2倍の大きさ(例えば、4mm)に設定するとよい。これにより、同じ孔径の多数の打ち抜き小孔28…を穿設して小孔列Kを複数列設けた後、打ち抜き小孔28’、28’間に、プレス加工法によって小孔28の孔径の略2倍の大きさで凸状エンボス部29bを成形すれば小孔突出環列Lが出来上がり、塗膜通過孔の加工を簡略化することができる。
【0025】
また、小孔列Kを構成する多数の打ち抜き小孔28…と、小孔突出環列Lを構成する多数の打ち抜き小孔28’…及び円形突出環29とを密集させて配設し、角型筒状体18に穿設される塗膜通過孔の開口率を23%以上30%未満の範囲に設定するとよい。すなわち、開口率が23%よりも小さい場合は、塗膜を通過させる効果が少なく、また、開口率が30%を超えると角型筒状体18自体が強度不足となって、剥離筒10からの流出量及び前記剥離筒内の圧力を調整することができなくなる問題が生じる。さらに、厚みが4mm以下の平板状の多角形状の樹脂材であってもスリットから漏出する虞が少なく、歩留まり向上に寄与する。
【0026】
次に作用を説明する。塗膜剥離工程の前処理において、例えば、ポリプロピレン樹脂製の廃棄バンパーは、ハンマーミル等の粉砕機で粉砕され、厚みが4mm以下、粒径が15mm以下の平板状かつ多角形状の粉砕片となる。そして、本実施形態の塗膜剥離装置1に好適な原料としては、この粉砕片の容積重が400〜600g/リットルの範囲にあり、かつ、安息角が45〜65°に成形されたものがよい。粉砕片には、廃棄バンパーの表面塗膜であるアクリル系樹脂又はポリウレタン系樹脂の塗膜が付着しており、その塗膜の厚さは約100μm〜200μmの範囲にあって、塗膜剥離装置1に4〜5回通過させると、粉砕片から塗膜が完全に剥離され、再生材として利用することができる。
【0027】
本実施形態の塗膜剥離装置1において、まず、粉砕片がホッパー6内に投入される。そして、ホッパー6下方のロータリーバルブ8を駆動し、シャッター7を開放すると、ホッパー内の粉砕片はブリッジが崩壊されて粉砕物送込部4に至る。粉砕物送込部4では、モータ16からの回転力が送りロール13に伝達され、塗膜剥離部3の角型筒状体18と剥離ロール14との間隙に連続的に送入されることになる。
【0028】
塗膜剥離部3では、粉砕片が剥離ロール14周面に形成された複数の突条14a,14aによる撹拌作用と角型筒状体18による切削作用とを受け、表面の塗膜が剥離されるようになる。これを図4を参照して詳述する。図4は図3のB−B線における断面図を示すものであり、塗膜層Tが付着した粉砕片Fが角型筒状体18に接触する様子が図4(b)に示される。剥離ロール14の撹拌作用によって適当な接触圧力を加えると、粉砕片Fが円形突出環29に衝突したときに塗膜層Tが破壊されて切削作用が生じ、塗膜がT1のように剥がれ落ちる。このとき、円形突出環29の側面29cが半球状のなだらかな曲面であるから、塗膜層Tを越えて再生材に食い込むおそれがなく、塗膜のみを剥離することができ、再生材の歩留まりを向上させることができる。また、大きな平板状の粉砕片Fであっても、図3に示すように横一列状に穿設された小孔列Kと、小孔28’,28’間に円形突出環29を設けた小孔突出環列Lとを、縦方向に交互に配設した構成となっているから、粉砕片Fのいずれかの部分が常に円形突出環29に接触状態にあり、剥離作用が促進されることになる。そして、小孔28’のみならず、円形突出環29に天孔29aが穿設されているものであるから、剥離された塗膜の排出作用が大きくなる。
【0029】
塗膜が剥離された後、粉砕片は、粉砕物排出部5の抵抗蓋21を外方へ押し広げながら再生材吐出口20から連続的に排出されることになる。そして、粉砕片から塗膜を完全に剥離させる場合には、再生材吐出口20から排出された粉砕片をホッパー6内に戻して粉砕片から塗膜を剥離させる操作を複数回、例えば、2乃至10回程度繰り返すことが好ましく、必要に応じて剥離操作を繰り返す代わりに塗膜剥離装置1を多段に設置することも可能である。なお、再生材吐出口20から排出された粉砕片をホッパー6内に戻すための搬送装置としては、粉粒体を管内の高速気流に投入して、気流とともに搬送するニューマ配管を利用するのがよく、また、ニューマ配管には粉砕片を加温するためにヒータを取り付けることもできる。
【実施例1】
【0030】
塗膜剥離装置として、図1に示すような粉砕物導入部2と、塗膜剥離部3と、粉砕物送込部4と、粉砕物排出部5とを有したものを使用した。
【0031】
塗膜剥離部3には、図2及び図3に示すような6角形の角型筒状体18を使用し、その打ち抜き孔形状は、図2及び図3に示すように、約2mm厚の網板18aに、所定の間隔をおいて約2mm径の打ち抜き小孔28が横一列状に穿設された小孔列Kと、該小孔列Kとは別の列にあって、小孔列Kよりも広い間隔で穿設される約2mm径の打ち抜き小孔28’、28’間に、約2mm径の天孔29a及び該天孔29aを中心とした約4mm径の凸状エンボス部29bからなる円形突出環29を介在させて横一列状に配置した小孔突出環列Lとを、前記剥離ロールの回転方向側に交互に多列状に配設した構成とした。
【0032】
原料として、ポリプロピレン樹脂製の廃棄バンパーを使用し、これを粉砕して、厚みが4mm以下、粒径が15mm以下の平板状かつ多角形状の粉砕片とした。そして、容積重が400〜600g/リットルの範囲にあり、かつ、安息角が45〜65°に成形されたものとした。この粉砕片には、廃棄バンパーの表面塗膜であるアクリル系樹脂又はポリウレタン系樹脂の塗膜が付着しており、その塗膜の厚さは約100μm〜200μmの範囲にあった。
【0033】
従来の細長いスリットからなる塗膜通過孔(図6参照)は、角型エンボス103端面が鋭利な刃物のような形状となっており、塗膜剥離しようとする樹脂材の表面を削って、樹脂材の塗膜層を越えて再生材に食い込む状態となり、製品歩留りは63.8%であった。これに対し、実施例1の塗膜通過孔(図2及び図3参照)にあっては、円形突出環29が半球状のなだらかな曲面であるから、樹脂材の塗膜層を越えて再生材に食い込むおそれがなく、塗膜のみを剥離することができ、製品歩留りは76.9%であった。また、粉砕片F(図4参照)の角部が削れる割合も低くかった。
【0034】
また、実施例1の塗膜通過孔(図2及び図3参照)の開口率を算出すると、24%であった。一方、従来の斜めに細長いスリットからなる塗膜通過孔(図6参照)の開口率を算出すると、22.5%であった。実施例1によれば、従来のものより開口率が大きいために、塗膜を通過させる効果が大きく、かつ、厚みが4mm以下の平板状で多角形状の樹脂材であってもスリットから漏出する虞が少なく、歩留まり向上に寄与するようになった。さらに、角型筒状体の強度を確保し、剥離筒からの流出量及び剥離筒内の圧力を適宜に調整することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
車両の不良バンパー又は廃車の使用済バンパーなど樹脂材の塗装膜を剥離・除去し、これを再生材として新車のバンパーや樹脂部品に加工して樹脂材を再利用するためのバンパーなど樹脂材の塗膜剥離装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 塗膜剥離装置
2 粉砕物導入部
3 塗膜剥離部
4 粉砕物送込部
5 粉砕物排出部
6 ホッパー
7 シャッター
8 ロータリーバルブ
9 モータ
10 剥離筒
11 中空軸
12 プーリ
13 送りロール
14 剥離ロール
15 ベルト
16 モータ
17 モータプーリ
18 角型筒状体
19 塗膜回収樋
20 再生材吐出口
21 抵抗蓋
22 圧力調整装置
23 再生材排出樋
24 噴風ノズル
25 噴風通路
26 噴風供給管
27 噴風ファン
28 小孔
29a 天井孔
29b 凸状エンボス部
29 円形突出環
K 小孔列
L 小孔突出環列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を供給側とし他端を排出側とした剥離筒と、複数の突条を外周に有し、前記剥離筒の内壁面との間に剥離処理用の間隙を形成するよう配設された剥離ロールと、前記剥離筒の排出側の吐出口を塞ぐようにして配設した抵抗蓋と、該抵抗蓋の押し付け力を加減し流出量及び前記剥離筒内の圧力を調整する圧力調節部と、を備えた樹脂材の塗膜剥離装置であって、
前記剥離筒は、多角形状の角型筒状体からなり、該角型筒状体に穿設される塗膜通過孔が、所定の間隔をおいて穿設した多数の打ち抜き小孔を前記剥離筒の長手方向に一列に配置した小孔列Kと、該小孔列Kよりも広い間隔で穿設される多数の打ち抜き小孔間に、天孔及び該天孔を中心とした径大の凸状エンボス部からなる円形突出環を介在させて前記剥離筒の長手方向に一列に配置した小孔突出環列Lとを、前記剥離ロールの回転方向側に交互に多列状に配設して形成されることを特徴とする樹脂材の塗膜剥離装置。
【請求項2】
前記小孔列Kを構成する多数の打ち抜き小孔と、前記小孔突出環列Lを構成する多数の打ち抜き小孔及び天孔とを、同じ孔径に設定するとともに、小孔突出環列Lを構成する円形突出環の凸状エンボス部の底径を、前記小孔及び天孔の孔径の略2倍の大きさに設定してなる請求項1記載の樹脂材の塗膜剥離装置。
【請求項3】
前記小孔列Kを構成する多数の打ち抜き小孔と、前記小孔突出環列Lを構成する多数の打ち抜き小孔及び円形突出環とを密集させて配設し、角型筒状体に穿設される塗膜通過孔の開口率を23%以上30%未満の範囲に設定してなる請求項1又は2記載の樹脂材の塗膜剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−179603(P2010−179603A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26240(P2009−26240)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】