説明

樹脂添加用光沢顔料並びにそれを含む樹脂組成物及び樹脂成形体

ウェルドマークによる外観不良がなく、光輝性に優れたメタリック感及び表面光沢感を有する樹脂成形体を提供する。比表面積S(m/g)、比表面積Sと平均粒子径D(μm)との比S/D及び平均粒子厚みt(μm)と平均粒子径Dとの比t/Dにより特定される光沢顔料であって、(1)Sが0.17X/Y〜0.7X/Y〔但し、Xはアルミニウムの真比重を示す。Yは光沢顔料を構成する材料の真比重を示す。尚、光沢顔料が2種以上の材料から構成される場合には、Yは、各材料の真比重に各材料の含有割合を乗じて得られる数値の和を示す。〕であり、(2)S/Dが0.001X/Y〜0.02X/Y〔但し、X及びYの定義は、前記と同じである。〕であり、(3)t/Dが1/30〜1/3である粒子からなる樹脂添加用光沢顔料に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、樹脂添加用光沢顔料並びにそれを含む樹脂組成物及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
光沢顔料は、物品にメタリック感及び表面光沢を与えることを目的として、一般に建築材料、弱電機器、船舶、車両、自動車等に適用するメタリック塗料の成分として用いられている。
また、光沢顔料は、予め光沢顔料を含む樹脂組成物を調製し、それを成形してメタリック感及び表面光沢を有する樹脂成形体を製造する方法にも用いられている。この方法は、省エネルギー且つ省コストな方法として注目されている。例えば、特開昭51−63847号公報には、合成樹脂100重量部に対して、平均粒径30μm以下であり、平均形状比(厚み/粒径)1/20〜1である、表面が平滑で比較的球状に近いアルミニウム粒子からなる顔料を約0.3〜10重量部配合した合成樹脂組成物が開示されている。
ところで、光沢顔料を含む樹脂組成物を成形し、メタリック感及び表面光沢感を有する樹脂成形体を得る方法において、ウェルドマークによる外観不良の問題は未だ十分に解決されていない。ウェルドマークとは、溶融樹脂が金型内を流動する際に、流路に従って分岐した後、再び合流した位置に生じる樹脂のみからなる境界線のことである。即ち、ウェルドマークは、溶融樹脂の合流部分が完全に溶融しないことに起因する外観上の欠陥である。
これに関連して、ウェルドマークを目立ち難くした樹脂成形品が、例えば、特開昭61−49817号公報及び特開平7−330997号公報に開示されている。前者には、熱可塑性樹脂100容量部と最大外径10μm〜1mmの任意形状の金属粒子0.1〜20.0容量部よりなり、前記金属粒子の平均間隙Dとウェルド巾HとがD≧Hの関係であることを特徴とする樹脂成形品が開示されている。後者には、主成分がポリスチレン樹脂であり、光輝性成分として鱗片状のアルミニウム片を含むポリスチレン樹脂組成物及びその成形品であって、鱗片状のアルミニウム片の粒子径y(μm)とその配合量x(質量%)との関係がy≧500xであるポリスチレン樹脂組成物からなる成形品が開示されている。
これらの樹脂成形品は、主に光沢顔料の粒子径及び配合量を特定することによりウェルドマークを目立ち難くしたものである。従って、細粒の光沢顔料を用いて光輝性を高め、多量の光沢顔料を用いてメタリック感及び表面光沢感を高め、しかも同時にウェルドマークによる外観不良を防止又は抑制できる範囲は限定的であるため、得られる樹脂成形品の種類も限定される。
今後は、ウェルドマークによる外観不良がなく、光輝性に優れたメタリック感及び表面光沢感を有する多様な樹脂成形体の製造に寄与できる樹脂添加用光沢顔料の開発が期待される。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
[特許文献1]特開昭61−49817号公報
[特許文献2]特開平7−330997号公報
[特許文献3]特開昭51−63847号公報
[特許文献4]特開昭61−159453号公報
[特許文献5]特開昭61−241333号公報
[特許文献6]特開昭62−96566号公報
[特許文献7]特開平5−112668号公報
[特許文献8]特開2000−159926号公報
【発明の開示】
本発明は、ウェルドマークによる外観不良がなく、光輝性に優れたメタリック感及び表面光沢感を有する樹脂成形体を提供することを主な目的とする。
本発明者は、従来技術の問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、形状を特定範囲に制御した粒子からなる樹脂添加用光沢顔料を含む樹脂成形体が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の樹脂添加用光沢顔料並びにそれを含む樹脂組成物及び樹脂成形体に係るものである。
1.比表面積S(m/g:以下、比表面積Sについて単位を省略する場合も同じである。)、比表面積Sと平均粒子径D(μm:以下、平均粒子径Dについて単位を省略する場合も同じである。)との比S/D及び平均粒子厚みt(μm:以下、平均粒予厚みtについて単位を省略する場合も同じである。)と平均粒子径Dとの比t/Dにより特定される光沢顔料であって、
(1)Sが0.17X/Y〜0.7X/Y〔但し、Xはアルミニウムの真比重を示す。Yは光沢顔料を構成する材料の真比重を示す。尚、光沢顔料が2種以上の材料から構成される場合には、Yは、各材料の真比重に各材料の含有割合を乗じて得られる数値の和を示す。〕であり、
(2)S/Dが0.001X/Y〜0.02X/Y〔但し、X及びYの定義は、前記と同じである。]であり、
(3)t/Dが1/30〜1/3である
粒子からなる樹脂添加用光沢顔料。
2.比表面積S、比表面積Sと平均粒子径Dとの比S/D及び平均粒子厚みtと平均粒子径Dとの比t/Dにより特定される光沢顔料であって、
(1)Sが0.17〜0.7であり、
(2)S/Dが0.001〜0.02であり、
(3)t/Dが1/30〜1/3である
アルミニウム粒子からなる樹脂添加用光沢顔料。
3.アルミニウム粒子がその表面に酸化皮膜を有する上記第2項に記載の樹脂添加用光沢顔料。
4.含有酸素量が0.1〜1質量%である上記第3項に記載の樹脂添加用光沢顔料。
5.樹脂100重量部及び上記第1項〜第4項のいずれかに記載の樹脂添加用光沢顔料0.005〜10重量部を含む樹脂組成物。
6.上記第5項に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
7.比表面積S、比表面積Sと平均粒子径Dとの比S/D及び平均粒子厚みtと平均粒子径Dとの比t/Dにより特定される光沢顔料であって、
(1)Sが0.17X/Y〜0.7X/Y〔但し、Xはアルミニウムの真比重を示す。Yは光沢顔料を構成する材料の真比重を示す。尚、光沢顔料が2種以上の材料から構成される場合には、Yは、各材料の真比重に各材料の含有割合を乗じて得られる数値の和を示す。]であり、
(2)S/Dが0.001X/Y〜0.02X/Y〔但し、X及びYの定義は、前記と同じである。〕であり、
(3)t/Dが1/30〜1/3である
粒子からなる樹脂添加用光沢顔料を樹脂に添加する、ウェルドマークによる外観不良を生じさせることなく、光輝性に優れたメタリック感及び表面光沢感を付与する方法。
8.比表面積S、比表面積Sと平均粒子径Dとの比S/D及び平均粒子厚みtと平均粒子径Dとの比t/Dにより特定される光沢顔料であって、
(1)Sが0.17〜0.7であり、
(2)S/Dが0.001〜0.02であり、
(3)t/Dが1/30〜1/3である
アルミニウム粒子からなる樹脂添加用光沢顔料を樹脂に添加する、ウェルドマークによる外観不良を生じさせることなく、光輝性に優れたメタリック感及び表面光沢感を付与する方法。
9.樹脂添加用光沢顔料として適した顔料の選別方法であって、
(1)顔料を提供する工程、
(2)顔料の比表面積S、平均粒子径D及び平均粒子厚みtを測定する工程、及び
(3)a)Sが0.17X/Y〜0.7X/Y〔但し、Xはアルミニウムの真比重を示す。Yは光沢顔料を構成する材料の真比重を示す。尚、光沢顔料が2種以上の材料から構成される場合には、Yは、各材料の真比重に各材料の含有割合を乗じて得られる数値の和を示す。〕、b)S/Dが0.001X/Y〜0.02X/Y〔但し、X及びYの定義は、前記と同じである。〕及びc)t/Dが1/30〜1/3をすべて満たす顔料である場合には、当該顔料を樹脂添加用光沢顔料として採用する工程、
を有する選別方法。
10.樹脂添加用光沢顔料として適した顔料の選別方法であって、
(1)アルミニウム粒子からなる顔料を提供する工程、
(2)顔料の比表面積S、平均粒子径D及び平均粒子厚みtを測定する工程、及び
(3)a)Sが0.17〜0.7、b)S/Dが0.001〜0.02及びc)t/Dが1/30〜1/3をすべて満たす顔料である場合には、当該顔料を樹脂添加用光沢顔料として採用する工程、
を有する選別方法。
樹脂添加用光沢顔料
本発明の樹脂添加用光沢顔料は粒子からなり、
(1)比表面積S(m/g)、
(2)比表面積Sと平均粒子径D(μm)との比S/D、及び
(3)平均粒子厚みt(μm)と平均粒子径Dとの比t/D
により特定される。
(1)比表面積S
比表面積Sは、0.17X/Y〜0.7X/Y〔但し、Xはアルミニウムの真比重を示す。Yは光沢顔料を構成する材料の真比重を示す。尚、光沢顔料が2種以上の材料から構成される場合には、Yは、各材料の真比重に各材料の含有割合を乗じて得られる数値の和を示す。〕で表される範囲であればよいが、その中でも0.17X/Y〜0.5X/Yの範囲が好ましい。
例えば、粒子材料として、ステンレス316Lを用いる場合には、その真比重が8g/cmであること及びアルミニウムの真比重が2.7g/cmであることに基づくと、比表面積Sは0.057〜0.24m/gであればよく、その中でも0.057〜0.17m/gが好ましい。本明細書における比表面積Sは、粒子の表面に窒素を吸着させることを特徴とするBET一点法により測定した値である。
比表面積Sが0.17X/Y〜0.7X/Yである粒子からなる光沢顔料は、樹脂成形体に光輝性が高いメタリック感及び表面光沢感を与えるとともに、良好なフリップ・フロップ感を与えることができる。また、樹脂に添加した際の流動性も良好であり、凝集体の発生も少なく、粒子の破損や折損も生じにくい。従って、光沢顔料が樹脂中に均一に分散するため、ウェルドマークの発生を十分に防止又は抑制できる。
このような効果は、光沢顔料を構成する粒予の形状が円盤型又は楕円型であって、表面が滑らかで周辺部に亀裂がないものであれば、より確実に得られる。
比表面積Sが0.17X/Y未満の粒子では、光沢顔料の光輝性が乏しく、良好なメタリック感及び表面光沢感を有する樹脂成形体が得られない場合がある。比表面積Sが0.7X/Yを超える粒子では、樹脂に添加した際の流動性が低いため、ウェルドマークの発生を十分に防止又は抑制できない場合がある。
(2)比表面積Sと平均粒子径Dとの比S/D
比表面積Sと平均粒子径Dとの比S/Dは、0.001X/Y〜0.02X/Y〔但し、Xはアルミニウムの真比重を示す。Yは光沢顔料を構成する材料の真比重を示す。尚、光沢顔料が2種以上の材料から構成される場合には、Yは、各材料の真比重に各材料の含有割合を乗じて得られる数値の和を示す。〕で表される範囲であればよいが、その中でも0.001X/Y〜0.01X/Yの範囲が好ましい。
例えば、粒子材料として、ステンレス316Lを用いる場合には、その真比重が8g/cmであること及びアルミニウムの真比重が2.7g/cmであることに基づくと、S/Dは0.0003〜0.0068であればよく、その中でも0.0003〜0.0034が好ましい。本明細書における平均粒子径Dは、レーザー回折式粒度分布測定機により測定した値である。
S/Dの値は、光沢顔料を構成する個々の粒子の光輝性、樹脂に添加した際の流動性及び樹脂成形時の配向性の指標を示している。S/Dの値が0.001X/Y〜0.02X/Yの範囲の粒子からなる光沢顔料は、樹脂成形体に光輝性の高いメタリック感及び表面光沢感を与えることができる。また、樹脂に添加した際の流動性も良好であり、ウェルドマークの発生を十分に防止又は抑制することができる。
S/Dが0.001X/Y未満の粒子では、光沢顔料の光輝性が乏しく、良好なメタリック感及び表面光沢感を有する樹脂成形体が得られない場合がある。また、樹脂に添加した際の流動性が低く、光沢顔料が樹脂成形体表面から突き出す等の問題が生じる場合がある。このような突き出し等の問題は、樹脂成形体を携帯電話、携帯パソコン、電子手帳等の精密小型機器のボディーに用いる場合には致命的な欠陥となる。S/Dが0.02X/Yを超える粒子は、樹脂に添加した際に凝集体を形成し易く、樹脂成形体にウェルドマークによる外観不良を与え易い。
比表面積Sが0.17X/Y〜0.7X/Yの範囲であり、比表面積Sと平均粒子径Dとの比S/Dが0.001X/Y〜0.02X/Yの範囲である粒子は、Dの値が、通常8.5〜700μmの範囲となる。この中でも、特に15〜250μm程度が好ましい。平均粒子径Dが15〜250μm程度であれば、ウェルドマークによる外観不良を防止しつつ、より光輝性の高いメタリック感及び表面光沢感を与えることができる。
(3)平均粒子厚みtと平均粒子径Dとの比t/D
平均粒子厚みtと平均粒子径Dとの比t/Dは、1/30〜1/3で表される範囲であればよいが、その中でも1/20〜1/3の範囲が好ましい。本明細書における平均粒子厚みtは、WCA(水面拡散被覆面積)から算出される値である。算出方法は、実施例において詳細に説明する。
t/Dの値は、いわゆる平均形状係数であり、粒子の扁平度合い及び樹脂中での流動性の指標を示している。t/Dの値が1/30〜1/3で表される範囲の粒子からなる光沢顔料は、樹脂に添加した際に凝集し難く、ウェルドマークの発生を十分に防止できる。しかも、樹脂添加時の粒子の破損や折損も生じ難い。
t/Dが1/30未満の粒子は、樹脂に添加する際に、粒子の破損、折損、変形等が生じ易くなるため、ウェルドマークの発生を十分に防止又は抑制できない場合がある。t/Dが1/3を超える粒子は、樹脂成形体に十分な光輝性を与えることができず、しかも単位重量当たりの反射率も低くなる。
平均粒子径Dが8.5〜700μmの範囲であり、平均粒子厚みtと平均粒子径Dとの比t/Dが1/30〜1/3の範囲である粒子は、その平均粒子厚みtの値は、通常0.28〜233μmの範囲となる。この中でも、特に0.5〜100μm程度が好ましい。平均粒子厚みtが0.5〜100μm程度であれば、ウェルドマークによる外観不良を防止しつつ、より光輝性の高いメタリック感及び表面光沢感を与えることができる。
本発明樹脂添加用光沢顔料を構成する粒子の材料は特に限定されないが、各種樹脂に添加することにより、最終的に得られる樹脂成形体に、光輝性に優れたメタリック感及び表面光沢感を与えられるものが好ましい。
材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、ニッケル、ステンレス等の金属粉;表面に金属、金属間化合物、金属酸化物、金属窒化物等をメタライズしたガラスフレーク、セラミックス、硬質樹脂、マイカ等が挙げられる。これら材料は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
この中でも、特にアルミニウムが好ましい。アルミニウムは、樹脂成形体に光輝性の高いメタリック感及び表面光沢感を与え易い。また、比表面積、平均粒子径、平均粒子厚み等の制御が容易な点からも好ましい。
アルミニウム粒子を用いる場合には、その純度は特に限定されず、本発明の効果を妨げない限り他の金属が不純物又は合金成分として含まれていてもよい。不純物又は合金成分としては、例えば、Si、Fe、Cu、Mn、Mg、Zn等が挙げられる。
アルミニウム粒子を用いる場合には、比表面積Sは0.17〜0,7m/gの範囲であり、比表面積Sと平均粒子径Dとの比S/Dは0.001〜0.02の範囲であり、平均粒子厚みtと平均粒子径Dとの比t/Dは1/30〜1/3の範囲となる。
このようなアルミニウム粒子の中でも、特にその表面に酸化皮膜を有するものが好ましい。酸化皮膜を有するものは、酸化皮膜がないものと比べて、粒子の耐食性及び経時的安定性が優れている。
アルミニウム粒子がその表面に酸化皮膜を有する場合には、含有酸素量は、光沢顔料100質量%中に、通常0.1〜1質量%程度、好ましくは0.1〜0.5質量%、より好ましくは0.1〜0.3質量%程度である。含有酸素量が0.1〜1質量%の場合には、樹脂成形体に光輝性の高いメタリック感及び表面光沢感を与えられるとともに、粒子の耐食性及び経時的安定性も優れている。
含有酸素量が0.1質量%未満では、酸化皮膜の厚みが十分でなく、経時的安定性に欠ける場合がある。1質量%を超える場合には、酸化皮膜が却ってアルミニウム特有の高反射率を低下させ、樹脂成形体に曇った輝きを与え易い。
光沢顔料の製造方法
本発明の樹脂添加用光沢顔料の製造方法は、前記(1)〜(3)所定の形状制御ができる限り特に限定されず、公知の光沢顔料の製造方法に従って製造することができる。
例えば、粒子材料として金属粉を用いる場合には、アトマイズ粉、切削粉、箔粉、蒸着粉、その他の方法により得られた金属粉末を、ボールミル、アトライター、遊星ミル、振動ミル等により粉砕、磨砕等することにより製造できる。
具体的には、平均粒子径10〜80μm程度のアトマイズ粉、好ましくは非酸化性ガス(アルゴン、窒素、二酸化炭素、ヘリウム等又はこれらの混合ガス)で噴霧したアトマイズ粉を、ミネラルスピリッツ等の鉱油とともに、スチールボールで湿式磨砕する方法が好適な方法として挙げられる。但し、本発明の樹脂添加用光沢顔料の製造方法は、この製造方法に限定されるものではない。
磨砕処理時には、必要に応じてオレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸を磨砕助剤として添加してもよい。これらの添加量は特に限定されないが、過剰に添加すると粒子の含有酸素量が多くなるため注意が必要である。
粒子材料としてガラスフレークやセラミックス、硬質樹脂、マイカ等を用いる場合には、例えば、先ずボールミル、アトライター、遊星ミル、振動ミル、スタンプミル等の破砕機により所定粒度まで粉砕し、振動ふるいや分級機により粒度調整を行い、次いで粒子表面に金属、金属間化合物、金属酸化物、金属窒化物等をスパッタリングやめつき等によりメタライズして光沢顔料を製造できる。
樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、樹脂に本発明の樹脂添加用光沢顔料を添加して得られる。具体的には、樹脂に練り込むことにより得られる。適用可能な樹脂は特に限定されず、各種の天然樹脂又は合成樹脂が使用できる。
本発明の樹脂組成物では、合成樹脂が好ましい。合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系の樹脂;エチレン−プロピレンコポリマー、AES樹脂、AS樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、PET、PBT、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリフエニレンエーテル、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリブタジエン、ポリエーテルサルホン、ポリスルホン、ポリカーボネート等;又はこれら樹脂の共重合物、混合物、編成物等が挙げられる。これら樹脂は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
樹脂に対する光沢顔料の添加量は特に限定的ではないが、樹脂100重量部に対して、通常0.005〜10重量部が適当であり、0.01〜2重量部程度が好ましい。添加量が0.005〜10重量部程度であれば、粒子の凝集体の発生も十分に防止又は抑制できる。また、最終的に得られる樹脂成形体のメタリック感及び表面光沢感も良好である。
添加量が0.005重量部未満では、最終的に得られる樹脂成形体のメタリック感及び表面光沢感が不十分となる場合がある。10重量部を超える場合には、樹脂に添加した際に凝集体が生じ易くなり、機械的性質の低下やコスト高の要因ともなり不利である。
但し、粒子材料及び樹脂の種類、最終製品の用途等によっては、添加量を上記範囲外に設定してもよい場合もある。
樹脂に練り込む際の樹脂温度は特に限定されないが、通常100〜350℃程度が適当である。但し、温度条件は、樹脂の種類に応じて適宜調整できる。練り込みは、例えば、混練機、押出し機等を用いて行えばよい。
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、各種添加材が配合できる。添加材としては、例えば、着色顔料、染料、安定剤、分散剤、耐候剤、帯電防止剤、粘度調整剤等が挙げられる。これらの配合量は、樹脂の種類、最終製品の特性に応じて適宜調整できる。
添加材の中でも、着色顔料がよく用いられる。着色顔料としては、例えば、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ベリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。これら着色顔料は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
樹脂成形体
本発明の樹脂成形体は、公知の樹脂成形体と同様の方法により製造できる。例えば、樹脂、樹脂添加用光沢顔料、その他の添加材を均一に混練した後、成形することにより樹脂成形体を製造できる。成形方法は特に限定されず、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、カレンダー成形法、押出し成形法、ブロー成形法等が適用できる。
本発明の樹脂成形体は、樹脂添加用光沢顔料を構成する粒子形状が特定範囲に制御されているため、ウェルドマークが無いか、或いは肉眼では認識できない程度又は樹脂成形体の商品価値を損なわない程度にその発生が抑制されている。従って、本発明の樹脂成形体は、ウェルドマークによる外観不良がなく、しかも光輝性の高いメタリック感及び表面光沢感も有している。
このような特徴を有する本発明の樹脂成形体は、例えば、カメラ、ビデオカメラ等の光学機器、ラジカセ、CDプレーヤー等の音響機器、パソコン、ディスプレイ、プリンター等のOA機器、自動車、オートバイ等の内外装品、テレビ、掃除機、冷蔵庫等の家電製品、その他スポーツ用品、化粧品容器等の各種の成形品に好適に用いることができる。
顔料の選別方法
本発明は、顔料の選別方法も包含する。即ち、本発明は、
樹脂添加用光沢顔料として適した顔料の選別方法であって、
(1)顔料を提供する工程、
(2)顔料の比表面積S、平均粒子径D及び平均粒子厚みtを測定する工程、及び
(3)a)Sが0.17X/Y〜0.7X/Y〔但し、Xはアルミニウムの真比重を示す。Yは光沢顔料を構成する材料の真比重を示す。尚、光沢顔料が2種以上の材料から構成される場合には、Yは、各材料の真比重に各材料の含有割合を乗じて得られる数値の和を示す。〕、b)S/Dが0.001X/Y〜0.02X/Y〔但し、X及びYの定義は、前記と同じである。〕及びc)t/Dが1/30〜1/3をすべて満たす顔料である場合には、当該顔料を樹脂添加用光沢顔料として採用する工程、
を有する選別方法に係る。
本発明の選別方法は、本発明で製造された顔料のほか、公知の顔料にも適用することが可能である。上記工程(1)〜(3)は、本発明の樹脂添加用光沢顔料の説明に従って実施することができる。
また、特に上記工程(1)において、アルミニウム粒子からなる顔料を提供する場合には、本発明は、
樹脂添加用光沢顔料として適した顔料の選別方法であって、
(1)アルミニウム粒子からなる顔料を提供する工程、
(2)顔料の比表面積S、平均粒子径D及び平均粒子厚みtを測定する工程、及び
(3)a)Sが0.17〜0.7、b)S/Dが0,001〜0.02及びc)t/Dが1/30〜1/3をすべて満たす顔料である場合には、当該顔料を樹脂添加用光沢顔料として採用する工程、
を有する選別方法に係る。
【図面の簡単な説明】
実施例及び比較例で作製した樹脂成形体の形状及び寸法(単位:mm)を示す図である。図1中の20mm×20mmの矩形部分は中抜きである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
実施例1〜8及び比較例1〜7
平均粒子径10〜100μmのアルミニウムアトマイズパウダー1重量部にミネラルスピリット3〜10重量部及び粉砕助剤(オレイン酸又はステアリン酸)0.03〜0.1重量部を添加し、ボールミルを用いて1〜30時間磨砕した。これにより、表1に示す物性を有する15種類の樹脂添加用光沢顔料を得た。樹脂添加用光沢顔料の各物性は、光沢顔料を構成する粒子をアセトンで超音波洗浄し、乾燥させた後に下記の方法により測定した。
(1)比表面積S
比表面積測定装置(商標名[Micrometritics Flow Sorb II 2300」株式会社島津製作所製)を用いて、BET一点法により光沢顔料を構成する粒子の比表面積を測定した。
(2)平均粒子径D
レーザー回折式粒度分布測定機(商標名「SALD−1100」株式会社島津製作所製)を用いて、光沢顔料を構成する粒子の平均粒子径を測定した。なお、分散媒としては、水を用いた。
(3)平均粒子厚みt
アセトンで洗浄後、乾燥させた光沢顔料の質量w(g)と、光沢顔料を水面に均一に浮かべたときの被覆面積A(cm)を測定し、下記式1より、WCA(水面拡散被覆面積)を算出した。
次いで、WCA値を下記式2に代入して、光沢顔料を構成する粒子の平均粒子厚みを算出した。
式1:WCA(cm/g)=A(cm)/w(g)
式2:平均粒子厚み(μm)=10/(2.5(g/cm)×WCA)
このような平均粒子厚みの求め方は、例えば、Aluminum Paint and Powder,J.D.Edeards and R.I.Wray著、第三版、Reinhold Publishing Corp,New York(1955)出版、Pages16〜22等に記載されている。
(4)含有酸素量
窒素酸素分析装置(商標名「EMGA550」堀場製作所製)を用いて、不活性ガス中溶解・赤外線吸収法により、光沢顔料を構成する粒子の含有酸素量を測定した。
15種類の樹脂添加用光沢顔料をそれぞれ、ABS樹脂(商標名「GA701」住化A&L製)100重量部に対して0.5重量部づつ添加し、樹脂温度230℃で混練して15種類の樹脂組成物を調製した。なお、混練に際し、着色顔料としてカーボンブラックを一律に0.2質量%となるように配合した。
15種類の樹脂組成物を230℃で射出成形し、図1に示す形状・寸法(厚みt=3mm)の樹脂成形体を作製した。得られた樹脂成形体の表面性状を、下記基準に従って評価した。評価結果を下記表1に示す。
(i)ウェルドマーク
◎:どの角度から見ても、ウェルドマークは観察できない。
○:観察角度によっては、ウェルドマークが僅かに観察できる。
△:ウェルドマークが確認できる。
×:ウェルドマークがかなり目立つ。
(ii)メタリック感
○:反射性に優れ、鮮明なメタリック感がある。
△:反射性が低く、メタリック感が目立ちにくい。
×:反射性が乏しく、メタリック感がない。

表1の結果より、本発明の樹脂成形体(実施例1〜8)は、ウェルドマークの発生が無いか、又は樹脂成形体の商品価値が損なわれない程度に抑制されているため、ウェルドマークによる外観不良がなく、しかも鮮明なメタリック感を有することが分かる。また、表1には示されていないが、光輝性の高い表面光沢感も有していた。
これに対し、比較例1〜7の樹脂成形体は、ウェルドマークによる外観不良が確認され、しかもメタリック感も不十分であることが分かる。また、表面光沢感も不十分であった。
【産業上の利用の可能性】
本発明の樹脂成形体は、例えば、カメラ、ビデオカメラ等の光学機器、ラジカセ、CDプレーヤー等の音響機器、パソコン、ディスプレイ、プリンター等のOA機器、自動車、オートバイ等の内外装品、テレビ、掃除機、冷蔵庫等の家電製品、その他スポーツ用品、化粧品容器等の各種の成形品に好適に用いることができる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積S(m/g)、比表面積Sと平均粒子径D(μm)との比S/D及び平均粒子厚みt(μm)と平均粒子径Dとの比t/Dにより特定される光沢顔料であって、
(1)Sが0.17X/Y〜0.7X/Y〔但し、Xはアルミニウムの真比重を示す。Yは光沢顔料を構成する材料の真比重を示す。尚、光沢顔料が2種以上の材料から構成される場合には、Yは、各材料の真比重に各材料の含有割合を乗じて得られる数値の和を示す。〕であり、
(2)S/Dが0.001X/Y〜0.02X/Y〔但し、X及びYの定義は、前記と同じである。〕であり、
(3)t/Dが1/30〜1/3である
粒子からなる樹脂添加用光沢顔料。
【請求項2】
比表面積S(m/g)、比表面積Sと平均粒予径D(μm)との比S/D及び平均粒子厚みt(μm)と平均粒子径Dとの比t/Dにより特定される光沢顔料であって、
(1)Sが0.17〜0.7であり、
(2)S/Dが0.001〜0.02であり、
(3)t/Dが1/30〜1/3である
アルミニウム粒子からなる樹脂添加用光沢顔料。
【請求項3】
アルミニウム粒子がその表面に酸化皮膜を有する請求の範囲第2項に記載の樹脂添加用光沢顔料。
【請求項4】
含有酸素量が0.1〜1質量%である請求の範囲第3項に記載の樹脂添加用光沢顔料。
【請求項5】
樹脂100重量部及び請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の樹脂添加用光沢顔料0.005〜10重量部を含む樹脂組成物。
【請求項6】
請求の範囲第5項に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
【請求項7】
比表面積S(m/g)、比表面積Sと平均粒子径D(μm)との比S/D及び平均粒子厚みt(μm)と平均粒子径Dとの比t/Dにより特定される光沢顔料であって、
(1)Sが0.17〜0.7であり、
(2)S/Dが0.001〜0.02であり、
(3)t/Dが1/30〜1/3である
アルミニウム粒子からなる樹脂添加用光沢顔料を樹脂に添加する、ウェルドマークによる外観不良を生じさせることなく、光輝性に優れたメタリック感及び表面光沢感を付与する方法。

【国際公開番号】WO2004/026970
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【発行日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537591(P2004−537591)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011871
【国際出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】