樹脂溶着部の品質評価方法および装置
【課題】不安定なレーザ反射光に頼ることなく気中で確実に溶着部の品質を評価できる、信頼性の高い樹脂溶着部の評価方法および装置を提供する。
【解決手段】レーザ透過性樹脂材11とレーザ吸収性樹脂材12との重ね合せ部をレーザ溶着した溶着部10に、レーザ透過性樹脂材11を通してレーザトーチ22から加熱用レーザ光Laを照射して、該溶着部10を溶着温度よりも低い温度に局部的に加熱する。そして、この加熱後、放冷して放射温度計23によりその間の温度変化を監視する。溶着部13が不完全であると、その不完全溶着部内に残る空隙によって周辺への熱の逸散が抑制されて、完全溶着部との間に温度変化に差が生じるので、この温度変化の差に基づいて品質判定装置27が溶着部10の品質の良否を判定する。
【解決手段】レーザ透過性樹脂材11とレーザ吸収性樹脂材12との重ね合せ部をレーザ溶着した溶着部10に、レーザ透過性樹脂材11を通してレーザトーチ22から加熱用レーザ光Laを照射して、該溶着部10を溶着温度よりも低い温度に局部的に加熱する。そして、この加熱後、放冷して放射温度計23によりその間の温度変化を監視する。溶着部13が不完全であると、その不完全溶着部内に残る空隙によって周辺への熱の逸散が抑制されて、完全溶着部との間に温度変化に差が生じるので、この温度変化の差に基づいて品質判定装置27が溶着部10の品質の良否を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材同士をレーザ溶着した溶着部の品質を非破壊で評価するための品質評価方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材同士のレーザ溶着は、一般にレーザ光に対して透過性を有する透過性樹脂材とレーザ光に対して吸収性を有する吸収性樹脂材とを重ね合せて、透過性樹脂材を通して両者の合せ面にレーザ光を照射し、吸収性樹脂材の発熱によって透過性樹脂材も加熱して合せ部を融合させる方法で行われる。なお、吸収性樹脂材としては、通常、カーボンブラックのような黒色着色剤を含有させたものが用いられる。
【0003】
ところで、上記のように行うレーザ溶着においては、透過性樹脂材の透過率のばらつき、吸収性樹脂材における着色剤の含有量のばらつき、合せ面の状態などによって加熱、溶融状況が変化し、溶着不足などの不具合が発生しやすい。このため、従来一般には、非破壊検査の一つである超音波検査を行って溶着部の品質を評価していた。しかし、この超音波検査は、水槽内に被検査物を浸漬して行うため、検査に時間がかかり、検査結果が判った段階では、生産ライン内での生産が進んで、多量の製品が不良判定になってしまう、という問題があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、溶着部の品質を気中で評価する方法が提案されている。図11は、同文献1から抜粋して示したもので、透過性樹脂部品1と吸収性樹脂部品2との接合面3に透過性樹脂部品1を通してレーザ光4を照射し、その反射光5に基づいて、接合面3の溶着状態を評価するようにしている。そこでは、接合面3が完全溶着部3Aとなっている場合には、反射光5が正反射光になるのに対し、接合面3が不完全溶着部3Bになっている場合には、反射光5が乱反射光になるので、この反射光の状態から溶着部の品質を評価できるとしている。また、溶着後に剥離を生じた場合には、反射光5の強度が小さくなるので、この反射光強度から溶着部の品質を評価できるとしている。
【特許文献1】特開2003−320588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載される品質評価方法によれば、透過性樹脂部品1の表面および内部での光の散乱、屈折に加え、接合面3での光の散乱、屈折が避けられないため、完全溶着部3Aからの反射光5が必ずしも正反射光にならず、その評価に対する信頼性が不十分である、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記した技術的背景に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、不安定なレーザ反射光に頼ることなく気中で確実に溶着部の品質を評価できる、信頼性の高い樹脂溶着部の評価方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法および装置は、樹脂溶着部を加熱および放冷して、このときの温度変化に基づいて溶着部の品質を評価することを特徴とする。このように加熱後の温度変化に基づいて溶着部の品質を評価するので、レーザ光の反射光を検出する場合のように散乱や屈折などの影響を受けずに溶着部の品質を評価できる。
【0008】
以下に、本発明の態様をいくつか例示し、それらについて項分けして説明する。
【0009】
(1)樹脂溶着部をレーザ光を利用して溶着温度よりも低い温度に加熱した後、放冷し、この加熱・放冷過程における溶着部の温度変化に基づいて溶着部の品質を評価することを特徴とする樹脂溶着部の品質評価方法。
【0010】
樹脂溶着部が完全である場合と不完全である場合とでは、熱の伝導度に差があるので、溶着部を同じように加熱しかつ放冷しても両者の温度変化に差が生じる。したがって、上記したように加熱・放冷過程における溶着部の温度変化を監視することで、樹脂溶着部の品質を確実に評価できるようになる。
【0011】
(2)予め把握した完全溶着部の温度変化と比較して溶着部の品質を評価することを特徴とする(1)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0012】
本(2)項記載の品質評価方法においては、予め把握した完全溶着部の温度変化と比較することで、溶着部の品質を簡単に評価することができる。この場合、完全溶着部との温度変化を比較する方法は任意であり、例えば、昇温過程、ピーク時、放熱過程のそれぞれの段階で比較しても、昇温から放熱に至る全体で比較してもよい。
【0013】
(3)重ね溶着された上側のレーザ透過性樹脂材を通して溶着部をレーザ照射し、溶着部を局部的に加熱することを特徴とする(1)または(2)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0014】
(4)重ね溶着された下側のレーザ吸収性樹脂材をレーザ照射し、熱伝導によって溶着部を局部的に加熱することを特徴とする(1)または(2)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0015】
本(3)項に記載されるようにレーザ透過性樹脂材を通して溶着部をレーザ照射する場合は、重ね溶着された樹脂部品の形状に左右されずに目的の部位を正確に加熱することができる。
一方、本(4)に記載されるようにレーザ吸収性樹脂材をレーザ照射する場合は、レーザ透過性樹脂材を通さないで加熱するので、レーザ透過性樹脂材の表面および内部での光の散乱、屈折等の不安定要素が取り除かれ、安定した加熱条件を確保することができる。
【0016】
(5)溶着部の局部的な加熱を該溶着部に沿って所定のピッチで繰返し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする(3)または(4)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0017】
樹脂材同士の溶着は、大きく分けてスポット的に行う場合と連続的に行う場合とがあるが、本(5)項に記載したように溶着部の局部的な加熱を溶着部に沿って所定のピッチで繰返すことで、連続的に溶着された溶着部全体の品質を評価することが可能になる。
【0018】
(6)重ね溶着された上側のレーザ透過性樹脂材を通して溶着部をレーザ照射して、溶着部の全体を同時に加熱し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする(1)または(2)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0019】
(7)重ね溶着された下側のレーザ吸収性樹脂材をレーザ照射して、熱伝導によって溶着部の全体を同時に加熱し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする(1)または(2)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0020】
本(6)項または(7)項記載の品質評価方法においては、溶着部の全体を同時に加熱するので、上記(5)項に記載されるように溶着部の局部的な加熱を該溶着部に沿って所定のピッチで繰返す場合に比べて、短時間で溶着部の全長にわたって品質を評価することができる。
【0021】
(8)統計的手法により溶着部全体における温度変化のばらつきを求め、このばらつきを加味して品質を評価することを特徴とする(5)乃至(7)の何れか1項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0022】
本(8)項に記載されるように溶着部全体における温度変化のばらつきを加味して溶着部の全長にわたって品質を評価する場合は、全体の中で異常値を発見できるので、評価精度が向上する。
【0023】
(9)樹脂溶着部またはその近傍に加熱用レーザ光を照射するレーザ照射手段と、該レーザ照射手段によるレーザ照射によって加熱された溶着部の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段の検出結果から把握した溶着部の温度変化に基づいて溶着部の品質を判定する品質判定手段とを備えていることを特徴とする樹脂溶着部の品質評価装置。
【0024】
本(9)項に記載の品質評価装置においては、レーザ照射手段からのレーザ照射によって加熱された部位の温度を温度検出手段により連続的に検出し、その検出信号を品質判定手段に送出することで、樹脂溶着部の良否を速やかに判定することができる。
【0025】
(10)温度検出手段として、放射温度計または赤外線カメラを用いることを特徴とする(9)項に記載の樹脂溶着部の品質評価装置。
【0026】
本(10)項に記載の品質評価装置においては、温度検出手段として、放射温度計または赤外線カメラを用いるので、測定対象である樹脂溶着品から離れた箇所からも温度を検出でき、しかも早い温度変化でも正確に検出できる。特に、赤外線カメラは、広域に温度を検出できるので、溶着部を同時加熱して品質を評価する場合に有用となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法および装置によれば、溶着部をレーザを利用して加熱および放冷し、このときの温度変化に基づいて溶着部の品質を評価するので、不安定なレーザ反射光に頼ることなく気中で確実に溶着部の品質を評価でき、品質評価に対する信頼性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基いて説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第1の実施形態を示したものである。同図中、10は、評価対象である樹脂溶着品であり、レーザ光に対して透過性を有するレーザ透過性樹脂材11とレーザ光に対して吸収性を有するレーザ吸収性樹脂材12とを重ね合せて、レーザ溶着されている。レーザ溶着は、従来と同様、レーザ透過性樹脂材11の上方から該樹脂材11を通してレーザ吸収性樹脂材12との合せ面にレーザ光を照射する方法で行われ、これによって両樹脂材11と12との合せ部には、両樹脂材が融合した溶着部13が形成される。なお、樹脂溶着品10は、ここでは円板状のレーザ透過性樹脂材11とこれより大径の円板状のレーザ吸収性樹脂材12とからなっており、その溶着部13は、図2に示されるように、レーザ透過性樹脂材11の外周に沿って円環状に連続に形成されている。
【0030】
本品質評価装置は、上記した樹脂溶着品10の溶着部13の品質を評価するもので、ここでは、樹脂溶着品10が載置されるテーブル20を回転(移動)させる移動装置(移動手段)21を備えている。一方、前記テーブル20の上方には、樹脂溶着品10の溶着部13に対して加熱用レーザ光Laを照射するレーザトーチ22と、該レーザトーチ22からのレーザ照射によって加熱された溶着部13から放出される赤外線Irを取込んで該溶着部13の温度を検出する放射温度計(温度検出手段)23とが配設されている。レーザトーチ22内には光学系が内蔵されており、レーザ光源24から光ファイバ25を通してレーザトーチ23内に伝送されたレーザ光Laは前記光学系で集光されて樹脂溶着品10へ向けて照射される。したがって、前記レーザトーチ22、レーザ光源24、光ファイバ25等はレーザ照射手段26を構成している。なお、図示例では、レーザトーチ22が傾斜方向に、放射温度計23が鉛直方向にそれぞれ配置されているが、これらの配置形態は任意であり、前記した形態と逆の配置としても、あるいはレーザトーチ22内の光学系を変更することで一体的に配置してもよい。
【0031】
上記放射温度計23には品質判定装置(品質判定手段)27が接続されている。品質判定装置27は、ここでは、放射温度計23の検出データを連続に取込んで温度変化として記録する記録計28とこの記録計28に記録された温度変化に基づいて溶着部13の品質の良否を判定する演算器29とからなっている。
【0032】
上記構成の品質評価装置により溶着部13の品質評価を行うには、先ず、テーブル20上に樹脂溶着品10を載置固定すると共に、このテーブル20上の樹脂溶着品10に対してレーザトーチ23と放射温度計24とを位置決めする。このとき、円環状の溶着部13がテーブル20の回転軸と同心となるように樹脂溶着品10を位置決めする。また、溶着部13上にレーザ照射ポイントLp(図2)が一致するようにレーザトーチ23を位置決めし、かつ該レーザ照射ポイントLpに指向するように放射温度計24を位置決めする。そして、前記準備完了後、レーザ光源24を起動してレーザトーチ23からレーザ光Laを樹脂溶着品10へ向けて出射させ、レーザ透過性樹脂材11を通して溶着部13をスポット的に所定時間照射する。このレーザ光Laの照射により溶着部13が局部的に加熱される。このとき、レーザ光Laの出力および照射時間を調整して溶着温度よりも低い所定温度に加熱し、その時点でレーザ照射を停止し、そのまま放冷する。
【0033】
上記した加熱および放冷によりレーザ照射部位(レーザ照射ポイントLp)の温度が上昇および降下するが、図3の左側に示すように、レーザ照射部位の溶着部13が完全溶着部13Aである場合は、その周辺(樹脂材11、12側)に熱が逸散しやすくなる。一方、図2の右側に示すように、レーザ照射部位の溶着部13が不完全溶着部13Bである場合は、該不完全溶着部13B内に残る空隙によって周辺への熱の逸散が抑制される。この結果、完全溶着部13Aと不完全溶着部13Bとでは、加熱および放冷過程における温度変化に差が生じる。
【0034】
図4は、上記した加熱および放冷過程における完全溶着部13Aの温度変化曲線Aと不完全溶着部13Bの温度変化曲線Bの一例を示したもので、完全溶着部13Aの方が不完全溶着部13Bよりも、昇温に遅れが生じ、ピーク温度が低く現れ、かつ放冷時の温度降下が急速になっている。なお、前記した完全溶着部13Aおよび不完全溶着部13Bの温度変化や両者の温度変化の差(図4)は、あくまでも一例であり、レーザ加熱条件、樹脂溶着品10を構成する樹脂材11,12の板厚等によっては異なる様子となるので、その都度確認する必要がある。しかして、上記レーザ照射部位の温度は、放射温度計23により連続して検出されており、その検出データが品質判定装置27内の記録計28に記録される。この場合、記録計28には、図3に示した温度変化が記録されることになり、品質判定装置27内の演算器29は、この記録計28に記録された温度変化曲線(温度変化データ)に基づいて溶着部13の品質の良否を判定する。本実施形態において、演算器29には、予め把握した完全溶着部13Aについての良好な温度変化曲線Aが記憶されており、演算器29は、良好な温度変化曲線Aと実測した温度変化曲線とを比較し、レーザ照射部位の溶着部13の品質の良否を判定する。この場合、良否の判定基準は任意であり、加熱開始からピーク温度に達するまでの加熱過程(昇温過程)の温度変化を基準にしても、ピーク温度を基準にしても、加熱停止後の放冷過程(冷却過程)の温度変化を基準にしても、あるいは加熱−放冷の全過程における温度変化を基準にしてもよい。なお、この良否判定の手法については、後にさらに詳述する。
【0035】
本第1の実施形態においては、上記した照射ポイントLpに対する品質判定を終えたら、移動装置21を駆動してテーブル20を所定距離だけ回転させ、レーザ照射ポイントLpを所定距離だけ溶着部13に沿って変位させる。そして、その位置で上記したレーザ照射による加熱および放冷を繰返し、上記と同様の手順で次のレーザ照射ポイントLpの溶着部13の品質を判定する。この場合、先のレーザ照射部位は、放冷により急速(2〜3秒)に常温まで温度降下するので、次のレーザ照射部位に樹脂溶着品10を移動させる間に常温まで温度が下がり、したがって、変位後、直ちにレーザ照射による加熱を行っても、前の熱の影響を受けることはほとんどない。
【0036】
このようにして、溶着部13の全長(全周)にわたって所定のピッチで品質検査を行い、溶着部13の全長にわたって品質を評価する。この場合、最終的に各レーザ照射ポイントLpごとの温度変化データを集めて統計的手法により溶着部13全体における温度変化のばらつきを求め、このばらつきを加味して溶着部13の全長にわたって品質を評価するようにしてもよい。このように温度変化のばらつきを加味して溶着部の全長にわたって品質を評価する場合は、レーザ照射ポイントLpごとに発見できなかった異常値を発見することが可能になり、評価精度が著しく向上する。しかして、この検査に要する時間はわずかであるので、検査結果を生産ラインに反映させることで、不良品の発生を最小限に抑えることができる。
【0037】
図5は、上記した一連の良否判定の処理フローの一例を示したものである。同図中、「1」は加熱開始からピーク温度に達するまでの加熱過程(昇温過程)の温度変化を基準に良否判定する場合の処理内容を、「2」はピーク温度を基準にに良否判定する場合の処理内容を、「3」は加熱停止後の放冷過程(冷却過程)の温度変化を基準に良否判定する場合の処理内容を、「4」は加熱−放冷の全過程における温度変化を基準に良否判定する場合の処理内容をそれぞれ表している。
【0038】
ここでは、先ず、昇温過程の時系列温度データに基づいて、ステップS1で昇温速度を算出し、次のステップS2で、前記算出結果と予め記憶した昇温過程良否データベース(DB)と比較して良否判定を行う。そして、ステップS2で良好と判定した場合は、次のステップS3で、溶着部13の全周についての昇温速度データに基づいて統計的手法により昇温速度のばらつきを求め、昇温速度からみた良否の最終判定を行う。
【0039】
次に、ピーク温度データとレーザ照射手段26のレーザ出力設定データとに基づいて、ステップS4で、ピーク温度と予め記憶したピーク温度良否DBと比較して良否判定を行う。そして、ステップS4で良好と判定した場合は、次のステップS5で、溶着部13の全周についてのピーク温度データに基づいて統計的手法によりピーク速度のばらつきを求め、ピーク温度からみた良否の最終判定を行う。
【0040】
次に、冷却過程の時系列温度データに基づいて、ステップS6で冷却速度を算出し、次のステップS7で、前記算出結果と予め記憶した冷却過程良否DBと比較して良否判定を行う。そして、ステップS7で良好と判定した場合は、次のステップS8で、溶着部13の全周についての冷却速度データに基づいて統計的手法により冷却速度のばらつきを求め、冷却速度からみた良否の最終判定を行う。
【0041】
このように昇温過程、ピーク温度、冷却過程の各過程ごとの良否判定の積み重ねに加えて、データばらつきも考慮して総合的に良否を判定する場合は、微細な不完全溶着でも発見することができ、検査精度が向上して品質検査に対する信頼性が著しく向上する。本発明は、前記「1」、「2」、「3」、「4」の個々の処理内容で良否判定を終了させてもよいことはもちろんで、この場合は、より短時間で品質検査を終えることができる。
【0042】
ここで、上記各処理内容「1」、「2」、「3」で用いるデータは任意であり、たとえば、「1」の処理では、昇温速度に代えて、一定時間後の温度、一定時間後の初期温度に対する温度比、一定時間後のピーク温度に対する温度比、初期温度に対する温度比の速度、ピーク温度に対する温度比の速度、ピーク温度の到達時間等を用いることができる。また、「2」の処理では、ピーク温度に代えて、初期温度に対するピークの温度比を用いることができる。さらに、「3」の処理範囲では、冷却速度に代えて、一定時間後の温度、一定時間後の初期温度に対する温度比、一定時間後のピーク温度に対する温度比、初期温度に対する温度比の速度、ピーク温度に対する温度比の速度等を用いることができる。
【0043】
なお、上記第1の実施形態において、レーザトーチ22からのレーザ出力を低く抑えて溶着部13を加熱した場合は、例えば、図6に示すように冷却過程の温度変化に、完全溶着部13A(実線A)と不完全溶着部13B(点線B)とで顕著な差が現れるようになる。したがって、上記昇温過程だけでのの処理(「3」)で詳細に良否判定をしたい場合は、低出力でレーザ加熱することが有効である。因みに、この場合のレーザ出力は100mW程度であり、上記第1の実施形態で必要とするレーザ出力の数十分の一程度で足りる。
【0044】
図7は、本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第2の実施形態を示したものである。本第2の実施形態の特徴とするところは、レーザトーチ22によるレーザ照射ポイントLpをレーザ吸収性樹脂材12の面上の、レーザ透過性樹脂材11の外周に沿う部位に設定し、レーザ吸収性樹脂材12を伝わる熱により溶着部13を間接的に加熱するようにした点にある。
【0045】
本第2の実施形態においては、レーザ照射ポイントLpの加熱−放冷により、該レーザ照射ポイントLpに隣接する溶着部の温度が局部的に上昇および降下するが、その温度変化は、一例として、図8に示されるようになる。すなわち、実線Aで表される完全溶着部の方が点線Bで表される不完全溶着部よりも、昇温が速くなりかつピーク温度が高く現れる。この差は、溶着部13における空隙の有無によるもので、空隙が存在しない完全溶着部の場合は、熱の伝導が促進される結果、上記第1の実施形態とは逆に昇温が速くなりかつピーク温度が高くなる。なお、前記した温度変化や両者の温度変化の差(図8)は、あくまでも一例であり、レーザ加熱条件、樹脂溶着品10を構成する樹脂材11,12の板厚等によっては異なる様子となるので、その都度確認する必要がある。
【0046】
本第2の実施形態における良否判定の手法は、第1の実施形態と実質同じであり、図8に示される温度変化の昇温過程、ピーク温度、冷却過程における温度変化を基準に、あるいは統計的手法によるデータ解析を判断材料とし、良否データベースと比較して良否判定を行う。このようにレーザ吸収性樹脂材12をレーザ照射して溶着部13を加熱する場合は、レーザ透過性樹脂材11を通さないでレーザを照射するので、レーザ透過性樹脂材11の表面および内部での光の散乱、屈折等の不安定要素が取り除かれ、これによって加熱条件が安定し、良否データベースとの比較判定を正確に行うことができる。
【0047】
なお、上記第1、第2の実施形態においては、レーザトーチ22および放射温度計23の位置を固定して、評価対象である樹脂溶着品10を移動手段21により所定ピッチで移動させるようにしたが、これに代えて、樹脂溶着品10の位置を固定し、レーザトーチ22および放射温度計23を一体的に移動させるようにしてもよいことはもちろんである。 また、温度検出手段としての放射温度計23は、赤外線カメラに代えてもよい。
【0048】
また、上記レーザ照射手段26は、レーザ溶着に用いたレーザ照射手段をそのまま共用してもよいものである。この場合は、レーザ溶着に用いた加工用レーザ光の出力を落して、加熱に適したレベルのレーザ光Laをレーザトーチ22から出射させるようにする。このようにレーザ照射手段を共用することで、同じ加工ライン(溶着ライン)で品質検査を行うことができ、この検査結果をその後の溶着作業に迅速に反映させることができる。また、レーザ照射手段の共用により設備コストの低減を達成できる。
【0049】
さらに、上記第1、第2の実施形態においては、円板状のレーザ透過性樹脂材11と円板状のレーザ吸収性樹脂12との重ね合せ部に形成された円環状の溶着部13を対象に品質評価を行う例を示したが、本発明は、直線状に形成された溶着部を対象に品質評価を行うことができることはもちろんである。この場合、樹脂溶着品10は、レーザトーチ22および放射温度計23に対して直線状に相対移動されることになり、これに伴って移動手段21の機能も変更される。
【0050】
また、上記第1、2の実施形態においては、各レーザ照射ポイントLpごとの品質評価の遺憾に拘わらず、溶着部13の全長にわたって検査を行うようにしたが、不良判定が出た時点で検査を中止してもよいことはもちろんである。この場合は、検査に要する時間がより一層短縮する。
【0051】
図9は、本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第3の実施形態を示したものである。本第3の実施形態の特徴とするところは、レーザトーチ22の光学系を変更して、レーザ透過性樹脂材11とレーザ吸収性樹脂材12との合せ面の全体をレーザ照射すると共に、温度検出手段として、前記合せ面の全域を撮像できる赤外線カメラ30を用いた点にある。また、品質判定装置27内の記録計28(図1)には、赤外線カメラ30による画像から検出データを取込んで、画素単体で温度変化として記録する機能をもたせる。
【0052】
本第3の実施形態においては、レーザトーチ22からのレーザ照射で、円環状の溶着部13の全体が同時に加熱されると共に、赤外線カメラ30により一度に画素単位で多数の温度変化の取込みが可能になる。本第3の実施形態における良否判定の手法は、第1の実施形態と実質同じであり、得られた温度変化の昇温過程、ピーク温度、冷却過程における温度変化を基準に、あるいは統計的手法によるデータ解析を判断材料とし、良否データベースと比較して良否判定を行う。この場合、溶着部13の全体を同時に加熱して必要な温度変化データを一度に得るので、第1または第2の実施形態のように溶着部13の局部的な加熱を該溶着部に沿って所定のピッチで繰返す場合に比べて、短時間で溶着部の全長にわたって品質を評価することができる。
【0053】
図10は、本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第4の実施形態を示したものである。本第4の実施形態の特徴とするところは、上記第3の実施形態で用いたレーザトーチ22の光学系に遮光体31を付設してレーザ光を整形し、レーザ吸収性樹脂材12の面上の、レーザ透過性樹脂材11の外周に沿う部位を円環状に同時加熱し、レーザ吸収性樹脂材12を伝わる熱により溶着部13の全体を間接的に同時加熱するようにした点にある。なお、図10(b)中、Sは円環状の加熱領域を示している。
【0054】
本第4の実施形態においては、レーザトーチ22からのレーザ照射で、円環状の溶着部13の全体が同時に加熱されると共に、赤外線カメラ30により一度に画素単位で多数の温度変化の取込みが可能になる。本第4の実施形態における良否判定の手法は、第1の実施形態と実質同じであり、得られた温度変化の昇温過程、ピーク温度、冷却過程における温度変化を基準に、あるいは統計的手法によるデータ解析を判断材料とし、良否データベースと比較して良否判定を行う。この場合、溶着部13の全体を同時に加熱して必要な温度変化データを一度に得るので、第3の実施形態と同様に短時間で溶着部の全長にわたって品質を評価することができるが、それに加えて、レーザ透過性樹脂材11を通さないでレーザを照射するので、レーザ透過性樹脂材11の表面および内部での光の散乱、屈折等の不安定要素が取り除かれ、これによって加熱条件が安定し、良否データベースとの比較判定を正確に行うことができる。
【0055】
ここで、上記第4、第5の実施形態においては、円板状のレーザ透過性樹脂材11と円板状のレーザ吸収性樹脂材12との重ね合せ部に形成された円環状の溶着部13を対象に品質評価を行うようにしたが、直線状に形成された溶着部を対象に品質評価を行う場合は、該直線状の溶着部の全体を照射できるようにレーザトーチ22からのレーザ光を整形する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第1の実施形態を示す模式図である。
【図2】本第1の実施形態におけるレーザ照射状況を平面的に示す模式図である。
【図3】本第1の実施形態におけるレーザ照射状況を断面的に示す模式図である。
【図4】本第1の実施形態における樹脂溶着部の温度変化の一例を完全溶着部(A)と不完全溶着部(B)とで対比して示すグラフである。
【図5】本第1の実施形態における良否判定の処理フローの一例を示すフロー図である。
【図6】本第1の実施形態の変形例における冷却過程の温度変化の一例を完全溶着部(A)と不完全溶着部(B)とで対比して示すグラフである。
【図7】本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第2の実施形態を示す模式図である。
【図8】本第2の実施形態における樹脂溶着部の温度変化の一例を完全溶着部(A)と不完全溶着部(B)とで対比して示すグラフである。
【図9】本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第3の実施形態を示す模式図である。
【図10】本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第4の実施形態を示す模式図である。
【図11】レーザ反射光を利用して行う従来の樹脂溶着部の品質評価方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0057】
10 樹脂溶着品
11 レーザ透過性樹脂材
12 レーザ吸収性樹脂材
13 溶着部
21 移動装置(移動手段)
22 レーザトーチ
23 放射温度計(温度検出手段)
24 レーザ光源
27 品質判定装置(品質判定手段)
28 記録計、 29 演算器
30 赤外線カメラ
La レーザ光、 Ir 赤外線
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材同士をレーザ溶着した溶着部の品質を非破壊で評価するための品質評価方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材同士のレーザ溶着は、一般にレーザ光に対して透過性を有する透過性樹脂材とレーザ光に対して吸収性を有する吸収性樹脂材とを重ね合せて、透過性樹脂材を通して両者の合せ面にレーザ光を照射し、吸収性樹脂材の発熱によって透過性樹脂材も加熱して合せ部を融合させる方法で行われる。なお、吸収性樹脂材としては、通常、カーボンブラックのような黒色着色剤を含有させたものが用いられる。
【0003】
ところで、上記のように行うレーザ溶着においては、透過性樹脂材の透過率のばらつき、吸収性樹脂材における着色剤の含有量のばらつき、合せ面の状態などによって加熱、溶融状況が変化し、溶着不足などの不具合が発生しやすい。このため、従来一般には、非破壊検査の一つである超音波検査を行って溶着部の品質を評価していた。しかし、この超音波検査は、水槽内に被検査物を浸漬して行うため、検査に時間がかかり、検査結果が判った段階では、生産ライン内での生産が進んで、多量の製品が不良判定になってしまう、という問題があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、溶着部の品質を気中で評価する方法が提案されている。図11は、同文献1から抜粋して示したもので、透過性樹脂部品1と吸収性樹脂部品2との接合面3に透過性樹脂部品1を通してレーザ光4を照射し、その反射光5に基づいて、接合面3の溶着状態を評価するようにしている。そこでは、接合面3が完全溶着部3Aとなっている場合には、反射光5が正反射光になるのに対し、接合面3が不完全溶着部3Bになっている場合には、反射光5が乱反射光になるので、この反射光の状態から溶着部の品質を評価できるとしている。また、溶着後に剥離を生じた場合には、反射光5の強度が小さくなるので、この反射光強度から溶着部の品質を評価できるとしている。
【特許文献1】特開2003−320588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載される品質評価方法によれば、透過性樹脂部品1の表面および内部での光の散乱、屈折に加え、接合面3での光の散乱、屈折が避けられないため、完全溶着部3Aからの反射光5が必ずしも正反射光にならず、その評価に対する信頼性が不十分である、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記した技術的背景に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、不安定なレーザ反射光に頼ることなく気中で確実に溶着部の品質を評価できる、信頼性の高い樹脂溶着部の評価方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法および装置は、樹脂溶着部を加熱および放冷して、このときの温度変化に基づいて溶着部の品質を評価することを特徴とする。このように加熱後の温度変化に基づいて溶着部の品質を評価するので、レーザ光の反射光を検出する場合のように散乱や屈折などの影響を受けずに溶着部の品質を評価できる。
【0008】
以下に、本発明の態様をいくつか例示し、それらについて項分けして説明する。
【0009】
(1)樹脂溶着部をレーザ光を利用して溶着温度よりも低い温度に加熱した後、放冷し、この加熱・放冷過程における溶着部の温度変化に基づいて溶着部の品質を評価することを特徴とする樹脂溶着部の品質評価方法。
【0010】
樹脂溶着部が完全である場合と不完全である場合とでは、熱の伝導度に差があるので、溶着部を同じように加熱しかつ放冷しても両者の温度変化に差が生じる。したがって、上記したように加熱・放冷過程における溶着部の温度変化を監視することで、樹脂溶着部の品質を確実に評価できるようになる。
【0011】
(2)予め把握した完全溶着部の温度変化と比較して溶着部の品質を評価することを特徴とする(1)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0012】
本(2)項記載の品質評価方法においては、予め把握した完全溶着部の温度変化と比較することで、溶着部の品質を簡単に評価することができる。この場合、完全溶着部との温度変化を比較する方法は任意であり、例えば、昇温過程、ピーク時、放熱過程のそれぞれの段階で比較しても、昇温から放熱に至る全体で比較してもよい。
【0013】
(3)重ね溶着された上側のレーザ透過性樹脂材を通して溶着部をレーザ照射し、溶着部を局部的に加熱することを特徴とする(1)または(2)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0014】
(4)重ね溶着された下側のレーザ吸収性樹脂材をレーザ照射し、熱伝導によって溶着部を局部的に加熱することを特徴とする(1)または(2)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0015】
本(3)項に記載されるようにレーザ透過性樹脂材を通して溶着部をレーザ照射する場合は、重ね溶着された樹脂部品の形状に左右されずに目的の部位を正確に加熱することができる。
一方、本(4)に記載されるようにレーザ吸収性樹脂材をレーザ照射する場合は、レーザ透過性樹脂材を通さないで加熱するので、レーザ透過性樹脂材の表面および内部での光の散乱、屈折等の不安定要素が取り除かれ、安定した加熱条件を確保することができる。
【0016】
(5)溶着部の局部的な加熱を該溶着部に沿って所定のピッチで繰返し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする(3)または(4)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0017】
樹脂材同士の溶着は、大きく分けてスポット的に行う場合と連続的に行う場合とがあるが、本(5)項に記載したように溶着部の局部的な加熱を溶着部に沿って所定のピッチで繰返すことで、連続的に溶着された溶着部全体の品質を評価することが可能になる。
【0018】
(6)重ね溶着された上側のレーザ透過性樹脂材を通して溶着部をレーザ照射して、溶着部の全体を同時に加熱し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする(1)または(2)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0019】
(7)重ね溶着された下側のレーザ吸収性樹脂材をレーザ照射して、熱伝導によって溶着部の全体を同時に加熱し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする(1)または(2)項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0020】
本(6)項または(7)項記載の品質評価方法においては、溶着部の全体を同時に加熱するので、上記(5)項に記載されるように溶着部の局部的な加熱を該溶着部に沿って所定のピッチで繰返す場合に比べて、短時間で溶着部の全長にわたって品質を評価することができる。
【0021】
(8)統計的手法により溶着部全体における温度変化のばらつきを求め、このばらつきを加味して品質を評価することを特徴とする(5)乃至(7)の何れか1項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【0022】
本(8)項に記載されるように溶着部全体における温度変化のばらつきを加味して溶着部の全長にわたって品質を評価する場合は、全体の中で異常値を発見できるので、評価精度が向上する。
【0023】
(9)樹脂溶着部またはその近傍に加熱用レーザ光を照射するレーザ照射手段と、該レーザ照射手段によるレーザ照射によって加熱された溶着部の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段の検出結果から把握した溶着部の温度変化に基づいて溶着部の品質を判定する品質判定手段とを備えていることを特徴とする樹脂溶着部の品質評価装置。
【0024】
本(9)項に記載の品質評価装置においては、レーザ照射手段からのレーザ照射によって加熱された部位の温度を温度検出手段により連続的に検出し、その検出信号を品質判定手段に送出することで、樹脂溶着部の良否を速やかに判定することができる。
【0025】
(10)温度検出手段として、放射温度計または赤外線カメラを用いることを特徴とする(9)項に記載の樹脂溶着部の品質評価装置。
【0026】
本(10)項に記載の品質評価装置においては、温度検出手段として、放射温度計または赤外線カメラを用いるので、測定対象である樹脂溶着品から離れた箇所からも温度を検出でき、しかも早い温度変化でも正確に検出できる。特に、赤外線カメラは、広域に温度を検出できるので、溶着部を同時加熱して品質を評価する場合に有用となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法および装置によれば、溶着部をレーザを利用して加熱および放冷し、このときの温度変化に基づいて溶着部の品質を評価するので、不安定なレーザ反射光に頼ることなく気中で確実に溶着部の品質を評価でき、品質評価に対する信頼性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基いて説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第1の実施形態を示したものである。同図中、10は、評価対象である樹脂溶着品であり、レーザ光に対して透過性を有するレーザ透過性樹脂材11とレーザ光に対して吸収性を有するレーザ吸収性樹脂材12とを重ね合せて、レーザ溶着されている。レーザ溶着は、従来と同様、レーザ透過性樹脂材11の上方から該樹脂材11を通してレーザ吸収性樹脂材12との合せ面にレーザ光を照射する方法で行われ、これによって両樹脂材11と12との合せ部には、両樹脂材が融合した溶着部13が形成される。なお、樹脂溶着品10は、ここでは円板状のレーザ透過性樹脂材11とこれより大径の円板状のレーザ吸収性樹脂材12とからなっており、その溶着部13は、図2に示されるように、レーザ透過性樹脂材11の外周に沿って円環状に連続に形成されている。
【0030】
本品質評価装置は、上記した樹脂溶着品10の溶着部13の品質を評価するもので、ここでは、樹脂溶着品10が載置されるテーブル20を回転(移動)させる移動装置(移動手段)21を備えている。一方、前記テーブル20の上方には、樹脂溶着品10の溶着部13に対して加熱用レーザ光Laを照射するレーザトーチ22と、該レーザトーチ22からのレーザ照射によって加熱された溶着部13から放出される赤外線Irを取込んで該溶着部13の温度を検出する放射温度計(温度検出手段)23とが配設されている。レーザトーチ22内には光学系が内蔵されており、レーザ光源24から光ファイバ25を通してレーザトーチ23内に伝送されたレーザ光Laは前記光学系で集光されて樹脂溶着品10へ向けて照射される。したがって、前記レーザトーチ22、レーザ光源24、光ファイバ25等はレーザ照射手段26を構成している。なお、図示例では、レーザトーチ22が傾斜方向に、放射温度計23が鉛直方向にそれぞれ配置されているが、これらの配置形態は任意であり、前記した形態と逆の配置としても、あるいはレーザトーチ22内の光学系を変更することで一体的に配置してもよい。
【0031】
上記放射温度計23には品質判定装置(品質判定手段)27が接続されている。品質判定装置27は、ここでは、放射温度計23の検出データを連続に取込んで温度変化として記録する記録計28とこの記録計28に記録された温度変化に基づいて溶着部13の品質の良否を判定する演算器29とからなっている。
【0032】
上記構成の品質評価装置により溶着部13の品質評価を行うには、先ず、テーブル20上に樹脂溶着品10を載置固定すると共に、このテーブル20上の樹脂溶着品10に対してレーザトーチ23と放射温度計24とを位置決めする。このとき、円環状の溶着部13がテーブル20の回転軸と同心となるように樹脂溶着品10を位置決めする。また、溶着部13上にレーザ照射ポイントLp(図2)が一致するようにレーザトーチ23を位置決めし、かつ該レーザ照射ポイントLpに指向するように放射温度計24を位置決めする。そして、前記準備完了後、レーザ光源24を起動してレーザトーチ23からレーザ光Laを樹脂溶着品10へ向けて出射させ、レーザ透過性樹脂材11を通して溶着部13をスポット的に所定時間照射する。このレーザ光Laの照射により溶着部13が局部的に加熱される。このとき、レーザ光Laの出力および照射時間を調整して溶着温度よりも低い所定温度に加熱し、その時点でレーザ照射を停止し、そのまま放冷する。
【0033】
上記した加熱および放冷によりレーザ照射部位(レーザ照射ポイントLp)の温度が上昇および降下するが、図3の左側に示すように、レーザ照射部位の溶着部13が完全溶着部13Aである場合は、その周辺(樹脂材11、12側)に熱が逸散しやすくなる。一方、図2の右側に示すように、レーザ照射部位の溶着部13が不完全溶着部13Bである場合は、該不完全溶着部13B内に残る空隙によって周辺への熱の逸散が抑制される。この結果、完全溶着部13Aと不完全溶着部13Bとでは、加熱および放冷過程における温度変化に差が生じる。
【0034】
図4は、上記した加熱および放冷過程における完全溶着部13Aの温度変化曲線Aと不完全溶着部13Bの温度変化曲線Bの一例を示したもので、完全溶着部13Aの方が不完全溶着部13Bよりも、昇温に遅れが生じ、ピーク温度が低く現れ、かつ放冷時の温度降下が急速になっている。なお、前記した完全溶着部13Aおよび不完全溶着部13Bの温度変化や両者の温度変化の差(図4)は、あくまでも一例であり、レーザ加熱条件、樹脂溶着品10を構成する樹脂材11,12の板厚等によっては異なる様子となるので、その都度確認する必要がある。しかして、上記レーザ照射部位の温度は、放射温度計23により連続して検出されており、その検出データが品質判定装置27内の記録計28に記録される。この場合、記録計28には、図3に示した温度変化が記録されることになり、品質判定装置27内の演算器29は、この記録計28に記録された温度変化曲線(温度変化データ)に基づいて溶着部13の品質の良否を判定する。本実施形態において、演算器29には、予め把握した完全溶着部13Aについての良好な温度変化曲線Aが記憶されており、演算器29は、良好な温度変化曲線Aと実測した温度変化曲線とを比較し、レーザ照射部位の溶着部13の品質の良否を判定する。この場合、良否の判定基準は任意であり、加熱開始からピーク温度に達するまでの加熱過程(昇温過程)の温度変化を基準にしても、ピーク温度を基準にしても、加熱停止後の放冷過程(冷却過程)の温度変化を基準にしても、あるいは加熱−放冷の全過程における温度変化を基準にしてもよい。なお、この良否判定の手法については、後にさらに詳述する。
【0035】
本第1の実施形態においては、上記した照射ポイントLpに対する品質判定を終えたら、移動装置21を駆動してテーブル20を所定距離だけ回転させ、レーザ照射ポイントLpを所定距離だけ溶着部13に沿って変位させる。そして、その位置で上記したレーザ照射による加熱および放冷を繰返し、上記と同様の手順で次のレーザ照射ポイントLpの溶着部13の品質を判定する。この場合、先のレーザ照射部位は、放冷により急速(2〜3秒)に常温まで温度降下するので、次のレーザ照射部位に樹脂溶着品10を移動させる間に常温まで温度が下がり、したがって、変位後、直ちにレーザ照射による加熱を行っても、前の熱の影響を受けることはほとんどない。
【0036】
このようにして、溶着部13の全長(全周)にわたって所定のピッチで品質検査を行い、溶着部13の全長にわたって品質を評価する。この場合、最終的に各レーザ照射ポイントLpごとの温度変化データを集めて統計的手法により溶着部13全体における温度変化のばらつきを求め、このばらつきを加味して溶着部13の全長にわたって品質を評価するようにしてもよい。このように温度変化のばらつきを加味して溶着部の全長にわたって品質を評価する場合は、レーザ照射ポイントLpごとに発見できなかった異常値を発見することが可能になり、評価精度が著しく向上する。しかして、この検査に要する時間はわずかであるので、検査結果を生産ラインに反映させることで、不良品の発生を最小限に抑えることができる。
【0037】
図5は、上記した一連の良否判定の処理フローの一例を示したものである。同図中、「1」は加熱開始からピーク温度に達するまでの加熱過程(昇温過程)の温度変化を基準に良否判定する場合の処理内容を、「2」はピーク温度を基準にに良否判定する場合の処理内容を、「3」は加熱停止後の放冷過程(冷却過程)の温度変化を基準に良否判定する場合の処理内容を、「4」は加熱−放冷の全過程における温度変化を基準に良否判定する場合の処理内容をそれぞれ表している。
【0038】
ここでは、先ず、昇温過程の時系列温度データに基づいて、ステップS1で昇温速度を算出し、次のステップS2で、前記算出結果と予め記憶した昇温過程良否データベース(DB)と比較して良否判定を行う。そして、ステップS2で良好と判定した場合は、次のステップS3で、溶着部13の全周についての昇温速度データに基づいて統計的手法により昇温速度のばらつきを求め、昇温速度からみた良否の最終判定を行う。
【0039】
次に、ピーク温度データとレーザ照射手段26のレーザ出力設定データとに基づいて、ステップS4で、ピーク温度と予め記憶したピーク温度良否DBと比較して良否判定を行う。そして、ステップS4で良好と判定した場合は、次のステップS5で、溶着部13の全周についてのピーク温度データに基づいて統計的手法によりピーク速度のばらつきを求め、ピーク温度からみた良否の最終判定を行う。
【0040】
次に、冷却過程の時系列温度データに基づいて、ステップS6で冷却速度を算出し、次のステップS7で、前記算出結果と予め記憶した冷却過程良否DBと比較して良否判定を行う。そして、ステップS7で良好と判定した場合は、次のステップS8で、溶着部13の全周についての冷却速度データに基づいて統計的手法により冷却速度のばらつきを求め、冷却速度からみた良否の最終判定を行う。
【0041】
このように昇温過程、ピーク温度、冷却過程の各過程ごとの良否判定の積み重ねに加えて、データばらつきも考慮して総合的に良否を判定する場合は、微細な不完全溶着でも発見することができ、検査精度が向上して品質検査に対する信頼性が著しく向上する。本発明は、前記「1」、「2」、「3」、「4」の個々の処理内容で良否判定を終了させてもよいことはもちろんで、この場合は、より短時間で品質検査を終えることができる。
【0042】
ここで、上記各処理内容「1」、「2」、「3」で用いるデータは任意であり、たとえば、「1」の処理では、昇温速度に代えて、一定時間後の温度、一定時間後の初期温度に対する温度比、一定時間後のピーク温度に対する温度比、初期温度に対する温度比の速度、ピーク温度に対する温度比の速度、ピーク温度の到達時間等を用いることができる。また、「2」の処理では、ピーク温度に代えて、初期温度に対するピークの温度比を用いることができる。さらに、「3」の処理範囲では、冷却速度に代えて、一定時間後の温度、一定時間後の初期温度に対する温度比、一定時間後のピーク温度に対する温度比、初期温度に対する温度比の速度、ピーク温度に対する温度比の速度等を用いることができる。
【0043】
なお、上記第1の実施形態において、レーザトーチ22からのレーザ出力を低く抑えて溶着部13を加熱した場合は、例えば、図6に示すように冷却過程の温度変化に、完全溶着部13A(実線A)と不完全溶着部13B(点線B)とで顕著な差が現れるようになる。したがって、上記昇温過程だけでのの処理(「3」)で詳細に良否判定をしたい場合は、低出力でレーザ加熱することが有効である。因みに、この場合のレーザ出力は100mW程度であり、上記第1の実施形態で必要とするレーザ出力の数十分の一程度で足りる。
【0044】
図7は、本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第2の実施形態を示したものである。本第2の実施形態の特徴とするところは、レーザトーチ22によるレーザ照射ポイントLpをレーザ吸収性樹脂材12の面上の、レーザ透過性樹脂材11の外周に沿う部位に設定し、レーザ吸収性樹脂材12を伝わる熱により溶着部13を間接的に加熱するようにした点にある。
【0045】
本第2の実施形態においては、レーザ照射ポイントLpの加熱−放冷により、該レーザ照射ポイントLpに隣接する溶着部の温度が局部的に上昇および降下するが、その温度変化は、一例として、図8に示されるようになる。すなわち、実線Aで表される完全溶着部の方が点線Bで表される不完全溶着部よりも、昇温が速くなりかつピーク温度が高く現れる。この差は、溶着部13における空隙の有無によるもので、空隙が存在しない完全溶着部の場合は、熱の伝導が促進される結果、上記第1の実施形態とは逆に昇温が速くなりかつピーク温度が高くなる。なお、前記した温度変化や両者の温度変化の差(図8)は、あくまでも一例であり、レーザ加熱条件、樹脂溶着品10を構成する樹脂材11,12の板厚等によっては異なる様子となるので、その都度確認する必要がある。
【0046】
本第2の実施形態における良否判定の手法は、第1の実施形態と実質同じであり、図8に示される温度変化の昇温過程、ピーク温度、冷却過程における温度変化を基準に、あるいは統計的手法によるデータ解析を判断材料とし、良否データベースと比較して良否判定を行う。このようにレーザ吸収性樹脂材12をレーザ照射して溶着部13を加熱する場合は、レーザ透過性樹脂材11を通さないでレーザを照射するので、レーザ透過性樹脂材11の表面および内部での光の散乱、屈折等の不安定要素が取り除かれ、これによって加熱条件が安定し、良否データベースとの比較判定を正確に行うことができる。
【0047】
なお、上記第1、第2の実施形態においては、レーザトーチ22および放射温度計23の位置を固定して、評価対象である樹脂溶着品10を移動手段21により所定ピッチで移動させるようにしたが、これに代えて、樹脂溶着品10の位置を固定し、レーザトーチ22および放射温度計23を一体的に移動させるようにしてもよいことはもちろんである。 また、温度検出手段としての放射温度計23は、赤外線カメラに代えてもよい。
【0048】
また、上記レーザ照射手段26は、レーザ溶着に用いたレーザ照射手段をそのまま共用してもよいものである。この場合は、レーザ溶着に用いた加工用レーザ光の出力を落して、加熱に適したレベルのレーザ光Laをレーザトーチ22から出射させるようにする。このようにレーザ照射手段を共用することで、同じ加工ライン(溶着ライン)で品質検査を行うことができ、この検査結果をその後の溶着作業に迅速に反映させることができる。また、レーザ照射手段の共用により設備コストの低減を達成できる。
【0049】
さらに、上記第1、第2の実施形態においては、円板状のレーザ透過性樹脂材11と円板状のレーザ吸収性樹脂12との重ね合せ部に形成された円環状の溶着部13を対象に品質評価を行う例を示したが、本発明は、直線状に形成された溶着部を対象に品質評価を行うことができることはもちろんである。この場合、樹脂溶着品10は、レーザトーチ22および放射温度計23に対して直線状に相対移動されることになり、これに伴って移動手段21の機能も変更される。
【0050】
また、上記第1、2の実施形態においては、各レーザ照射ポイントLpごとの品質評価の遺憾に拘わらず、溶着部13の全長にわたって検査を行うようにしたが、不良判定が出た時点で検査を中止してもよいことはもちろんである。この場合は、検査に要する時間がより一層短縮する。
【0051】
図9は、本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第3の実施形態を示したものである。本第3の実施形態の特徴とするところは、レーザトーチ22の光学系を変更して、レーザ透過性樹脂材11とレーザ吸収性樹脂材12との合せ面の全体をレーザ照射すると共に、温度検出手段として、前記合せ面の全域を撮像できる赤外線カメラ30を用いた点にある。また、品質判定装置27内の記録計28(図1)には、赤外線カメラ30による画像から検出データを取込んで、画素単体で温度変化として記録する機能をもたせる。
【0052】
本第3の実施形態においては、レーザトーチ22からのレーザ照射で、円環状の溶着部13の全体が同時に加熱されると共に、赤外線カメラ30により一度に画素単位で多数の温度変化の取込みが可能になる。本第3の実施形態における良否判定の手法は、第1の実施形態と実質同じであり、得られた温度変化の昇温過程、ピーク温度、冷却過程における温度変化を基準に、あるいは統計的手法によるデータ解析を判断材料とし、良否データベースと比較して良否判定を行う。この場合、溶着部13の全体を同時に加熱して必要な温度変化データを一度に得るので、第1または第2の実施形態のように溶着部13の局部的な加熱を該溶着部に沿って所定のピッチで繰返す場合に比べて、短時間で溶着部の全長にわたって品質を評価することができる。
【0053】
図10は、本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第4の実施形態を示したものである。本第4の実施形態の特徴とするところは、上記第3の実施形態で用いたレーザトーチ22の光学系に遮光体31を付設してレーザ光を整形し、レーザ吸収性樹脂材12の面上の、レーザ透過性樹脂材11の外周に沿う部位を円環状に同時加熱し、レーザ吸収性樹脂材12を伝わる熱により溶着部13の全体を間接的に同時加熱するようにした点にある。なお、図10(b)中、Sは円環状の加熱領域を示している。
【0054】
本第4の実施形態においては、レーザトーチ22からのレーザ照射で、円環状の溶着部13の全体が同時に加熱されると共に、赤外線カメラ30により一度に画素単位で多数の温度変化の取込みが可能になる。本第4の実施形態における良否判定の手法は、第1の実施形態と実質同じであり、得られた温度変化の昇温過程、ピーク温度、冷却過程における温度変化を基準に、あるいは統計的手法によるデータ解析を判断材料とし、良否データベースと比較して良否判定を行う。この場合、溶着部13の全体を同時に加熱して必要な温度変化データを一度に得るので、第3の実施形態と同様に短時間で溶着部の全長にわたって品質を評価することができるが、それに加えて、レーザ透過性樹脂材11を通さないでレーザを照射するので、レーザ透過性樹脂材11の表面および内部での光の散乱、屈折等の不安定要素が取り除かれ、これによって加熱条件が安定し、良否データベースとの比較判定を正確に行うことができる。
【0055】
ここで、上記第4、第5の実施形態においては、円板状のレーザ透過性樹脂材11と円板状のレーザ吸収性樹脂材12との重ね合せ部に形成された円環状の溶着部13を対象に品質評価を行うようにしたが、直線状に形成された溶着部を対象に品質評価を行う場合は、該直線状の溶着部の全体を照射できるようにレーザトーチ22からのレーザ光を整形する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第1の実施形態を示す模式図である。
【図2】本第1の実施形態におけるレーザ照射状況を平面的に示す模式図である。
【図3】本第1の実施形態におけるレーザ照射状況を断面的に示す模式図である。
【図4】本第1の実施形態における樹脂溶着部の温度変化の一例を完全溶着部(A)と不完全溶着部(B)とで対比して示すグラフである。
【図5】本第1の実施形態における良否判定の処理フローの一例を示すフロー図である。
【図6】本第1の実施形態の変形例における冷却過程の温度変化の一例を完全溶着部(A)と不完全溶着部(B)とで対比して示すグラフである。
【図7】本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第2の実施形態を示す模式図である。
【図8】本第2の実施形態における樹脂溶着部の温度変化の一例を完全溶着部(A)と不完全溶着部(B)とで対比して示すグラフである。
【図9】本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第3の実施形態を示す模式図である。
【図10】本発明に係る樹脂溶着部の品質評価方法、装置の第4の実施形態を示す模式図である。
【図11】レーザ反射光を利用して行う従来の樹脂溶着部の品質評価方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0057】
10 樹脂溶着品
11 レーザ透過性樹脂材
12 レーザ吸収性樹脂材
13 溶着部
21 移動装置(移動手段)
22 レーザトーチ
23 放射温度計(温度検出手段)
24 レーザ光源
27 品質判定装置(品質判定手段)
28 記録計、 29 演算器
30 赤外線カメラ
La レーザ光、 Ir 赤外線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂溶着部をレーザ光を利用して溶着温度よりも低い温度に加熱した後、放冷し、この加熱・放冷過程における溶着部の温度変化に基づいて溶着部の品質を評価することを特徴とする樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項2】
予め把握した完全溶着部の温度変化と比較して溶着部の品質を評価することを特徴とする請求項1に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項3】
重ね溶着された上側のレーザ透過性樹脂材を通して溶着部をレーザ照射し、溶着部を局部的に加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項4】
重ね溶着された下側のレーザ吸収性樹脂材をレーザ照射し、熱伝導によって溶着部を局部的に加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項5】
溶着部の局部的な加熱を該溶着部に沿って所定のピッチで繰返し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする請求項3または4に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項6】
重ね溶着された上側のレーザ透過性樹脂材を通して溶着部をレーザ照射して、溶着部の全体を同時に加熱し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項7】
重ね溶着された下側のレーザ吸収性樹脂材をレーザ照射して、熱伝導によって溶着部の全体を同時に加熱し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項8】
統計的手法により溶着部全体における温度変化のばらつきを求め、このばらつきを加味して品質を評価することを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項9】
樹脂溶着部またはその近傍に加熱用レーザ光を照射するレーザ照射手段と、該レーザ照射手段によるレーザ照射によって加熱された溶着部の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段の検出結果から把握した溶着部の温度変化に基づいて溶着部の品質を判定する品質判定手段とを備えていることを特徴とする樹脂溶着部の品質評価装置。
【請求項10】
温度検出手段として、放射温度計または赤外線カメラを用いることを特徴とする請求項9に記載の樹脂溶着部の品質評価装置。
【請求項1】
樹脂溶着部をレーザ光を利用して溶着温度よりも低い温度に加熱した後、放冷し、この加熱・放冷過程における溶着部の温度変化に基づいて溶着部の品質を評価することを特徴とする樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項2】
予め把握した完全溶着部の温度変化と比較して溶着部の品質を評価することを特徴とする請求項1に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項3】
重ね溶着された上側のレーザ透過性樹脂材を通して溶着部をレーザ照射し、溶着部を局部的に加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項4】
重ね溶着された下側のレーザ吸収性樹脂材をレーザ照射し、熱伝導によって溶着部を局部的に加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項5】
溶着部の局部的な加熱を該溶着部に沿って所定のピッチで繰返し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする請求項3または4に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項6】
重ね溶着された上側のレーザ透過性樹脂材を通して溶着部をレーザ照射して、溶着部の全体を同時に加熱し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項7】
重ね溶着された下側のレーザ吸収性樹脂材をレーザ照射して、熱伝導によって溶着部の全体を同時に加熱し、溶着部の全長にわたって品質を評価することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項8】
統計的手法により溶着部全体における温度変化のばらつきを求め、このばらつきを加味して品質を評価することを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の樹脂溶着部の品質評価方法。
【請求項9】
樹脂溶着部またはその近傍に加熱用レーザ光を照射するレーザ照射手段と、該レーザ照射手段によるレーザ照射によって加熱された溶着部の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段の検出結果から把握した溶着部の温度変化に基づいて溶着部の品質を判定する品質判定手段とを備えていることを特徴とする樹脂溶着部の品質評価装置。
【請求項10】
温度検出手段として、放射温度計または赤外線カメラを用いることを特徴とする請求項9に記載の樹脂溶着部の品質評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−122360(P2008−122360A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19460(P2007−19460)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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