説明

樹脂積層体

【課題】光触媒機能を有すると共に、耐候性、耐久性に優れた樹脂積層体を提供する。
【解決手段】光触媒層10、中間層20、及び樹脂基材層30を含み、中間層20が、紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子を、Si−O結合を有するマトリックス中に分散した層である樹脂積層体1。例えば、該中間層20は、下記(1)〜(6)を含むコーティング組成物から形成される。(1)アルコキシシラン化合物、(2)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子、(3)硬化触媒、(4)溶剤、(5)アミノシラン化合物、(6)エポキシシラン化合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒機能を有する樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、合成樹脂の表面に光触媒層を形成し、光触媒機能を付与した積層体が開発されている。この積層体は、表面に露出する光触媒粒子により、悪臭の元となる有機物を分解したり、防汚・抗菌作用をなしたり、親水性を発揮したりするため、ドアミラー等の自動車部品、カーポートの屋根材等の建築資材、高速道路の防音壁等の道路資材等に使用されつつある(例えば、特許文献1)。しかしながら、上記のように主に屋外で使用される場合には、太陽光による透明性低下、黄変、及び層間剥離を防止するため、耐候性能を付与する必要がある。
【0003】
光触媒機能を有する層を含む樹脂積層体では、光触媒による樹脂層の分解を防ぐために、通常、光触媒層と直接接触する層に無機材料をマトリックス成分とする中間層を配置する。さらに耐候性を付与するためには例えば、前記中間層と樹脂基材層の間に耐候層を形成する。
【0004】
耐候層としてはアクリル系樹脂等に低分子の耐候剤(紫外線吸収剤や光安定剤等)を数%添加したものがよく用いられているが(特許文献2)、耐候性の効果は十分でない。
耐候性を高めるために耐候剤を30%以上添加することが試みられているが(特許文献3)、使用時に耐候剤が樹脂基材との界面に移行し、そこで凝集し、樹脂積層体のヘーズが悪化することがあった。
【0005】
これらの問題を解決するために、アクリル系重合体に耐候性成分を結合させた高分子型耐候剤を膜にして耐候層とする手法が提案されている(特許文献4)。しかし、このような高分子型耐候剤は、通常のアクリル系重合体と比べてガラス転移点が低い。
このため、前記高分子型耐候剤のガラス移転点を越える環境で光触媒積層体を使用した場合、高分子型耐候剤が大きく膨張し、樹脂基材(例えばポリカーボネート)との界面に大きな応力が発生する。その結果、耐候層と樹脂基材層が剥離する問題があった。
【特許文献1】特開2000−17619号公報
【特許文献2】特開2005−14350号公報
【特許文献3】特開2001−47584号公報
【特許文献4】特開2002−361807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光触媒機能を有すると共に、耐候性、耐久性に優れた樹脂積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の樹脂積層体が提供される。
1.光触媒層、中間層、及び樹脂基材層を含み、
前記中間層が、紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子を、Si−O結合を有するマトリックス中に分散した層である樹脂積層体。
2.前記中間層が、下記成分(1)〜(6)を含むコーティング組成物(I)から形成されたものである1記載の樹脂積層体。
(1)アルコキシシラン化合物
(2)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子
(3)硬化触媒
(4)溶剤
(5)アミノシラン化合物
(6)エポキシシラン化合物
3.前記中間層が、下記成分(2)〜(8)を含むコーティング組成物(II)から形成されたものである1記載の樹脂積層体。
(2)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子
(3)硬化触媒
(4)溶剤
(5)アミノシラン化合物
(6)エポキシシラン化合物
(7)オルガノアルコキシシラン化合物又はポリオルガノアルコキシシラン化合物
(8)ブロック化イソシアネートシラン化合物
4.前記中間層が、紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子及び平均粒子径が1〜200nmの無機系紫外線吸収性粒子及び/又はコロイダルシリカを、Si−O結合を有するマトリックス中に分散した層である1に記載の樹脂積層体。
5.前記中間層が、下記成分(2)〜(9)を含むコーティング組成物(III)から形成されたものである4に記載の樹脂積層体。
(2)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子
(3)硬化触媒
(4)溶剤
(5)アミノシラン化合物
(6)エポキシシラン化合物
(7)オルガノアルコキシシラン化合物又はポリオルガノアルコキシシラン化合物
(8)ブロック化イソシアネートシラン化合物
(9)無機系紫外線吸収性粒子及び/又はコロイダルシリカ
6.光触媒層、無機層、中間層、及び樹脂基材層を含み、
前記中間層が、下記成分(a)〜(d)を含むコーティング組成物(A)から形成されたものである樹脂積層体。
(a)アクリル系化合物
(b)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子
(c)ラジカル開始剤
(d)溶剤
7.前記有機高分子型微粒子がアクリル系樹脂及び/又はスチレン系樹脂を含有してなるものである1〜6のいずれか記載の樹脂積層体。
8.樹脂積層体の可視光線透過率が80%以上である1〜7のいずれか記載の樹脂積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光触媒機能を有すると共に、耐候性、耐久性に優れた樹脂積層体が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[第一の樹脂積層体]
本発明の第一の樹脂積層体は、光触媒層、中間層、及び樹脂基材層を含み、中間層は、紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子を、Si−O結合を有するマトリックス中に分散した層である。
この樹脂積層体の一実施形態を図1に示す。この図に示すように、樹脂積層体1は、光触媒層10、第一の中間層20、及び樹脂基材層30からなる。
【0010】
中間層に含まれる有機高分子型微粒子は、好適には、紫外線吸収剤の機能を有する骨格を分子内に有する高分子化合物である。
有機高分子型微粒子は、好ましくはアクリル系樹脂及び/又はスチレン系樹脂を含む。例えば、紫外線吸収剤として作用する骨格(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系)を側鎖に有するアクリル系モノマー及び/又はスチレン系モノマーと他のエチレン系不飽和化合物(アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体、スチレン、酢酸ビニル等)と共重合させたものが例示される。従来の紫外線吸収基を含有する有機微粒子が一般に分子量200〜700の低分子であるのに対し、本発明の紫外線吸収基を含有する有機高分子型微粒子の重量平均分子量は通常1万を超える。プラスチックとの相溶性や耐熱性等、従来からある紫外線吸収基を含有する有機微粒子の欠点が改良され、長期にわたって耐候性能を付与できるものである。
【0011】
さらに有機高分子型微粒子は平均粒子径が1〜200nmであることが必要である。200nmを越えると光触媒機能付き樹脂積層体の透明性が低下するおそれがある。好ましい平均粒子径は100nm以下である。
【0012】
使用形態は粉末状、又は酢酸エチル等の有機溶剤に分散させた分散系や、水中に分散したエマルジョン系等が挙げられる。
具体例としては、一方社油脂工業(株)製のコーティング用高分子紫外線吸収剤ULS−700、ULS−1700、ULS−383MA、ULS−1383MA、ULS−383MG、ULS−385MG、ULS−1383MG、ULS−1385MG、ULS−635MH、ULS−933LP、ULS−935LH、ULS−1935LH、HC−935UE、XL−504、XL−524、XL−547、XL−729、XL−730、(株)ニッコー化学研究所のNCI−905−20EM、NCI−905−20EMA等が挙げられる。好ましくは、可溶化溶剤が水、メタノール、エタノール、プロパノール、メトキシプロパノール等の低級アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類であるものが挙げられる。このような溶剤を用いることにより、高分子紫外線吸収剤の分散性が向上し、沈降を防ぐことができる。さらに好ましくは可溶化溶剤が水のものである。可溶化溶媒が水の場合、Si−O結合を有するマトリックスの形成の際に必要な、シラン化合物の加水分解、縮合反応にも使用できるので好都合である。
【0013】
Si−O結合を有するマトリックスとしては、シリコーン系化合物等を使用できる。一例として、ポリオルガノアルコキシシラン、テトラエトキシシラン、又はエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類を加水分解した後、縮合したものがそのままマトリックスとなる。
【0014】
中間層は、好適には、下記成分(1)〜(6)を含むコーティング組成物(I)から形成される。
(1)アルコキシシラン化合物
(2)紫外線吸収基を含有する有機高分子型微粒子
(3)硬化触媒
(4)溶剤
(5)アミノシラン化合物
(6)エポキシシラン化合物
【0015】
他の実施形態として、中間層は、好適には、下記成分(2)〜(8)を含むコーティング組成物(II)から形成される。
(2)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子
(3)硬化触媒
(4)溶剤
(5)アミノシラン化合物
(6)エポキシシラン化合物
(7)オルガノアルコキシシラン化合物又はポリオルガノアルコキシシラン化合物
(8)ブロック化イソシアネートシラン化合物
【0016】
アルコキシシラン化合物(1)は、好ましくは2官能アルコキシシラン、3官能アルコキシシラン又は4官能アルコキシシラン、より好ましくは3官能アルコキシシラン又は4官能アルコキシシランを使用でき、さらにこれらの化合物がシロキサン結合(Si−O結合)でつながった縮合物(ポリアルコキシシラン化合物)も使用可能である。尚、これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
3官能アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネート基を2−ブタノオキシム等でブロック化したブロック化イソシアネートトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0018】
4官能のアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン等が挙げられる。
ポリアルコキシシラン化合物の具体例としては、多摩化学工業(株)製の「シリケート40」、「シリケート45」、「シリケート48」、「Mシリケート51」、「MTMS−シリケートA」等のポリアルコキシシラン化合物(アルコキシシリケート化合物)が挙げられる。
【0019】
硬化触媒(3)は、シラン化合物(1)、(5)、(6)、(7)及び(8)の加水分解及び縮合(硬化)させる触媒であり、その例として、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硝酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、グルタミン酸、乳酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、n−ヘキシルアミン、ジメチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、酢酸エタノールアミン、ギ酸ジメチルアニリン、安息香酸テトラエチルアンモニウム塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、酢酸ベンゾイルトリメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウムアセテート、オクチル酸スズ等の有機金属塩、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、SnCl、TiCl、ZnCl等のルイス酸等が挙げられる。
【0020】
これらの硬化触媒(3)のうち、紫外線吸収基を含有する有機高分子型微粒子(2)の配合量を増量しても高分散化でき、得られる膜の透明性を向上できることから、有機酸が好ましい。特に有機カルボン酸、なかでも酢酸が好ましく使用できる。これらは単独で使用してもよく、また、複数を併用してもよい。
【0021】
アミノシラン化合物(アミノ基含有シラン化合物)(5)は、アミノ基を含むがエポキシ基とイソシアネート基は含まないアルコキシシラン化合物である。具体例としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N―(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0022】
好適なアミノシラン化合物(5)を、以下の式(2)で表すことができる。
(R11Si(OR4−n (2)
(式中、R11は同じでも異なってもよく炭素数1〜4のアルキル基;ビニル基;フェニル基;又はメタクリロキシ基、アミノ基(−NH基)、アミノアルキル基(−(CH−NH)、アルキルアミノ基(−NHR基)からなる群から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、R11の少なくとも1つは、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基のいずれかで置換された炭素数1〜3のアルキル基である。上記アミノアルキル基におけるxは、1〜3の整数であり、上記アルキルアミノ基におけるRは炭素数1〜3のアルキル基である。Rは炭素数1〜4のアルキル基である。nは1又は2の整数である。)
【0023】
エポキシシラン化合物(エポキシ基含有シラン化合物)(6)は、エポキシ基を含むがアミノ基とイソシアネート基は含まないアルコキシシラン化合物である。具体例としては、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0024】
好適なエポキシシラン化合物(6)を、以下の式(3)で表すことができる。
(R21Si(OR4−n (3)
(式中、R21は同じでも異なってもよく炭素数1〜4のアルキル基;ビニル基;フェニル基;又はメタクリロキシ基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる群から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、R21の少なくとも1つは、グリシドキシ基又は3,4−エポキシシクロヘキシル基で置換された炭素数1〜3のアルキル基である。Rは炭素数1〜4のアルキル基である。nは1又は2の整数である。)
【0025】
オルガノアルコキシシラン化合物(7)は、アミノ基、エポキシ基、及びイソシアネート基を含まないオルガノアルコキシシラン化合物である。好ましくは2官能アルコキシシラン、3官能アルコキシシランである。さらに、これらの化合物がシロキサン結合(Si−O結合)で結合された部分縮合物(即ち、ポリオルガノアルコキシシラン化合物)も使用可能である。尚、これらの化合物は、単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
3官能アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシシラン、メチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリブトキシシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリプロポキシシラン、デシルトリブトキシシラン、置換基にフッ素原子を導入したトリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフッ素化アルキル(トリアルコキシ)シラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。また2種類のアルコキシ基を有するメチルジメトキシ(エトキシ)シラン、エチルジエトキシ(メトキシ)シラン等も挙げられる。
2官能アルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビス(2−メトキシエトキシ)ジメチルシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0026】
好適なオルガノアルコキシシラン化合物(7)を、以下の式(1)で表すことができる。
(RSi(OR4−m (1)
(式中、Rは同じでも異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基;フッ素化アルキル基;ビニル基;フェニル基;又はメタクリロキシ基で置換された炭素数1〜3のアルキル基である。Rは炭素数1〜4のアルキル基、もしくはエーテル基を有するアルキル基である。mは1又は2のいずれかの整数である。)
【0027】
ポリオルガノアルコキシシラン化合物(7)は、好ましくは分子量200〜6000のアルコキシシラン化合物である。例えば、以下の式で表すことができる。
好適なポリオルガノアルコキシシラン化合物(7)を、以下の式(1’)で表すことができる。
(RSin−1(OR2n+2−m (1’)
(式中、Rは同じでも異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基;フッ素化アルキル基;ビニル基;フェニル基;又はメタクリロキシ基で置換された炭素数1〜3のアルキル基である。Rは炭素数1〜4のアルキル基、もしくはエーテル基を有するアルキル基である。mはn〜2nのいずれかの整数である。nは2〜15のいずれかの整数である。)
尚、ポリオルガノアルコキシシラン化合物(7)は、複数のnが異なる化合物からなる混合物もよい。また、上記式(1’)において、アルキル基の具体例としては、上記3官能アルコキシシランにおけるアルキル基が挙げられる。
ポリオルガノアルコキシシラン化合物としては、具体的には3官能アルコキシシランであるメチルトリメトキシシランやフェニルトリメトキシシランが部分縮合してできたポリメチルメトキシシロキサン(実施例で用いたMTMS−Aが相当。メチルメトキシシロキサンと表記する場合もある。)やポリフェニルメトキシシロキサン、2官能アルコキシシランであるジエチルジエトキシシランが部分縮合してできたポリメジエチルエトキシシロキサン等が挙げられる。
【0028】
ポリオリガノアルコキシシラン化合物(7)の具体例としては、多摩化学工業株式会社製の「MTMS−A」、コルコート株式会社製の「SS−101」、東レ・ダウコーニング株式会社製の「AZ−6101」「SR2402」「AY42−163」等が挙げられる。
【0029】
ブロック化イソシアネートシラン化合物(8)とは、イソシアネート基をオキシム等のブロック剤で保護して不活性としておき、加熱により脱ブロック化してイソシアネート基が活性化(再生)されるイソシアネートシラン化合物である。
イソシアネートシラン化合物(イソシアネート基含有シラン化合物)は、イソシアネート基は含むがアミノ基とエポキシ基は含まないアルコキシシラン化合物である。具体例としては、γ―イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ―イソシアネートプロピルトリエトキシシシラン、イソシアネートシラン化合物等が挙げられる。本発明においては、これらのイソシアネートシラン化合物のイソシアネート基がブロック化された化合物を使用する。ブロック化イソシアネートシラン化合物としては、好ましくは、ブロック化イソシアネートプロピルトリエトキシシランである。
【0030】
イソシアネート基のブロック化剤としては、アセトオキシム、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルイソブチルケトオキシム等のオキシム化合物、ε−カプロラクラム等のラクタム類、モノアルキルフェノール(クレゾール、ノニルフェノール等)等のアルキルフェノール類、3,5−キシレノール、ジ−t−ブチルフェノール等のジアルキルフェノール類、トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル等の活性メチレン化合物類、メタノール、エタノール、n−ブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等の水酸基含有エーテル類、乳酸エチル、乳酸アミル等の水酸基含有エステル類、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類、アセトアニリド、アクリルアマイド、タイマー酸アマイド等の酸アミド類、イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール類、3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール類、1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール類、コハク酸イミド、フタル酸イミド等の酸イミド類等を使用できる。またブロック化剤解離温度を制御する為、ジブチル錫ジラウレート等の触媒を併用してもよい。
【0031】
上記コーティング組成物(I)及びコーティング組成物(II)は、水及び/又は有機溶剤等の溶剤(4)に混合された状態で使用する。溶剤(4)は、上記各成分を均一に混合できるものであれば特に限定されないが、例えば、水の他、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類等の有機溶剤を挙げることができる。これら有機溶剤のうち、アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、プロピレンモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等を挙げることができる。
その他の溶媒の具体例としては、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、キシレン、ジクロロエタン、トルエン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸エトキシエチル等が挙げられる。
これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
コーティング組成物(I)において、各成分(1)〜(6)の配合量は以下のとおりである。まず、溶剤(4)の配合量は、成分(1)〜(3),(5),(6)の配合量の合計100質量部に対して好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは10〜800質量部、特に好ましくは50〜600質量部である。
【0033】
成分(1)は、好ましくは5〜90質量部、より好ましくは10〜90質量部、より好ましくは15〜75質量部である。5質量部未満では無機層(マトリックスが無機物)との密着性が不足するおそれがある。配合量が90質量部を越えると有機層(マトリックスが有機物である層、例えば樹脂基材層)との密着性が不足するおそれがある。
【0034】
紫外線吸収基を含有する有機高分子型微粒子(2)の配合量は、好ましくは1〜95質量部で、より好ましくは3〜85質量部、さらに好ましくは5〜75質量部である。1質量部未満の場合は十分な耐候性を示さない場合がある。95質量部を越えると造膜性が低下する(ひび割れ)おそれがある。
【0035】
硬化触媒(3)の配合量は好ましくは0.1〜30質量部である。0.1質量部未満では硬化不良の原因となり、30質量部を超えると硬化が速すぎて中間層膜が不均一となる場合がある。
【0036】
アミノシラン化合物(5)は好ましくは3〜55質量部、より好ましくは
5〜45質量部である。55質量部を越えると造膜性が低下する(ひび割れ)おそれがある。
エポキシシラン化合物(6)は好ましくは3〜60質量部、より好ましくは5〜45質量部である。60質量部を越えると膜(中間層)の透明性が劣るおそれがある。
【0037】
コーティング組成物(I)は、上記成分(1)〜(6)を混合して調製する。少なくとも成分(1)及び成分(2)を含む第一の混合液を作製し、少なくとも成分(1),(5),(6)を含む第二の混合液を作製し、その後両者を混合するのが好ましい。このようにすることによりコーティング組成物の保存安定性(ゲル化しない等)が向上する。尚、好ましくは、成分(3),(4)は第1の混合液に混合する。
【0038】
コーティング組成物(II)において、各成分(2)〜(8)の配合量は、適宜設定できるが、例えば、以下の通りである。
(2)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子:0.1〜50重量%(より好ましくは5〜50重量%)
(3)硬化触媒:0.1〜40重量%(より好ましくは0.1〜30重量%)
(5)アミノシラン化合物:1〜60重量%(より好ましくは3〜40重量%)
(6)エポキシシラン化合物:1〜60重量%(より好ましくは5〜50重量%)
(7)オルガノアルコキシシラン化合物又はポリオルガノアルコキシシラン化合物:好ましくは10〜80重量%(より好ましくは15〜75重量%)
(8)ブロック化イソシアネートシラン化合物:1〜60重量%(より好ましくは5〜60重量%)
(4)溶剤:成分(2),(3),(5),(6),(7)及び(8)の合計を100重量部としたとき、5〜1000重量部(より好ましくは20〜800重量部)
【0039】
紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子(2)が50重量%を超えて混合される場合は、耐擦傷性や造膜性が低下する(ひび割れ)おそれがある。0.1重量%未満の場合は、十分な耐候性を示さないおそれがある。
【0040】
硬化触媒(3)が40重量%を超えて混合される場合は、コーティング液の安定性が低下するおそれがあり、0.1重量%未満の場合は、硬化不良の原因となるおそれがある。
【0041】
アミノシラン化合物(5)が60重量%を超えて混合される場合は、造膜性が低下し(ひび割れ)、1重量%未満の場合は、密着性、耐擦傷性が著しく低下するおそれがある。さらに配合量下限については、実施例で示すように、3重量%以上使用することが、耐擦傷性発現に好ましい。
【0042】
エポキシシラン化合物(6)が60重量%を超えて混合される場合は、膜の透明性、密着性、耐擦傷性、コーティング液安定性が低下し、1重量%未満の場合は、造膜性が低下する(ひび割れ)おそれがある。さらに配合量下限については、5重量%以上使用することが、造膜性発現に好ましい。より好ましくは、10重量%以上である。
【0043】
オルガノアルコキシシラン化合物又はポリオルガノアルコキシシラン化合物(7)が
80重量%を超えて混合される場合は、密着性が低下するおそれがあり、10重量%未満の場合は、耐擦傷性や造膜性が低下(ひび割れ等)のおそれがある。
【0044】
ブロック化イソシアネートシラン化合物(8)が60重量%を超えて混合される場合は、造膜性が低下し、1重量%未満の場合は、コーティング液安定性が低下するおそれがある。さらに、配合量下限については、5重量%以上使用することが、耐久性(耐湿性)発現に好ましい。より好ましくは、10重量%以上である。
上記ブロック化イソシアネートシラン化合物(8)の配合量は、イソシアネートシラン化合物及びブロック化剤の合計量である。
イソシアネートシラン化合物及びブロック化剤の配合モル比は、通常、0.9〜1.1:0.9〜1.1であり、好ましくは0.95〜1.05:0.95〜1.05である。
【0045】
溶剤(4)の配合量は、成分(2),(3),(5),(6),(7)及び(8)の合計を100重量部としたとき、好ましくは5〜1000重量部、より好ましくは20〜800重量部、特に好ましくは50〜600重量部の範囲で使用される。
【0046】
コーティング組成物(II)は、上記成分(2)〜(8)を混合して調製する。
好ましくは、少なくとも成分(7)及び成分(8)を含む第一の混合液を作製し、最後に成分(5)を混合する。
このように、分離して調製すると、コーティング組成物の液保存安定性(ゲル化しない等)が向上したりするため、好ましい。
例えば、成分(7),(6),(2)〜(4)を混合した後、成分(8)を加え、最後に成分(5)を混合する。
成分(4)は、コーティング組成物を調製後、さらに加えることによりコーティング組成物を希釈することができる。
【0047】
本発明の樹脂積層体の中間層は、好ましくは紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子及び平均粒子径が1〜200nmの無機系紫外線吸収性粒子及び/又はコロイダルシリカを、Si−O結合を有するマトリックス中に分散した層である。このような中間層を得るためには、上述した成分(2)〜(8)を含むコーティング組成物(II)に、さらに無機系紫外線吸収性粒子及び/又はコロイダルシリカ(9)を加えたコーティング組成物(III)を用いればよい。無機系紫外線吸収材及び/又はコロイダルシリカの平均粒径は、好ましくは、1〜100nmである。
【0048】
無機系紫外線吸収性粒子(9)として、半導体を例示できる。半導体は、バンドギャップ以上のエネルギーがもつ光、即ち紫外線を吸収し、伝導帯に電子が、価電子帯に正孔が生じる。エネルギー放出過程は、これらの再結合により熱等のエネルギーに変換されると考えられている。酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム等が、一般的に知られた無機系紫外線吸収性粒子である。例えば、酸化チタンのバンドギャップエネルギーはルチル型で3eV、アナターゼ型で3.2eVであり、各々約410nm、390nmの波長の光エネルギーに相当する。これよりも短波長の光、即ち紫外線を吸収することができる。より長波長の紫外線がカットできることから、ルチル型が使用されることが多い。逆にこれよりも長波長の光、即ち可視光は本質的には吸収しない。
【0049】
市販品としては、用途、製法によって使い分けることが可能であるが、酸化チタンとしては、石原産業株式会社製「中性チタニアゾルTSK−5」等、酸化セリウムは、多木化学製の酸化セリウム系紫外線吸収剤「ニードラール」、水分散タイプのアニオン型エマルションのニードラールP−10、水分散タイプのカチオン型エマルションのニードラールU−15や、粉末タイプ等、酸化亜鉛としては、住友大阪セメント社製「ZS−303」、石原産業株式会社製「超微粒子酸化亜鉛FZO」等が挙げられる。無機系紫外線吸収性粒子は、その電子の働きにより紫外線エネルギーを微弱なエネルギーに変換して放出する。この時、無機系紫外線吸収性粒子自体は物質変化を起こさないので、長期間、その効果を持続する。
【0050】
コロイダルシリカ(9)は、コロイドシリカ、コロイド珪酸ともいう。水中では、水和によって表面にSi−OH基を有する酸化ケイ素のコロイド懸濁液をいう。珪酸ナトリウムの水溶液に塩酸を加えると生成する。最近は、新しい調製法が次々に開発され、非水溶液中に分散したものや、気相法で作った微粉末状のものがあり、粒子径も数nmから数μmのものまで多彩である。本発明で使用するのは、平均粒径が1〜200nmのものである。粒子の組成も不定で、シロキサン結合(―Si−O―、−Si―O−Si−)を形成して、高分子化しているものもある。粒子表面は多孔性で、水中では一般的に負に帯電している。
【0051】
市販品としては、扶桑化学工業株式会社製「超高純度コロイダルシリカ」クォートロンPLシリーズ(品名:PL−1、PL−3、PL−7)、同社製「高純度オルガノゾル」や、日産化学工業株式会社製「水性シリカゾル(品名:スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスO、スノーテックスO−40、スノーテックスC、スノーテックスN、スノーテックスS、スノーテックス20L、スノーテックスOL)等」や「オルガノシリカゾル(品名:メタノールシリカゾル、MA−ST−MS,IPA−ST、IPA−ST−MS、IPA−ST−L、IPA−ST−ZL,IPA−ST−UP、EG−ST、NPC−ST−30、MEK−ST、MEK−ST−MS、MIBK−ST、XBA−ST、PMA−ST、DMAC−ST)等」が挙げられる。
【0052】
有機高分子型微粒子だけでも耐紫外線性に優れるが、さらに耐久性を求められた場合、中間層中の有機高分子型微粒子含量を増やす方法がある。しかし、耐擦傷性の低下が著しくなることが予想される。また、無機系紫外線吸収性粒子及び/又はコロイダルシリカのみで中間層を製造することは可能だが、中間層の可とう性が低下し、熱硬化時のクラック発生防止が困難になることから、中間層の厚みを増加させるのが困難になってくる。結果、十分な紫外線吸収能力が発揮できない。本発明では、有機高分子型微粒子と、無機系紫外線吸収剤及び/又はコロイダルシリカを共に使用することにより、他の特性を劣化させることなく優れた紫外線吸収性が得られる。
【0053】
コーティング組成物(III)において、各成分(2)〜(9)の配合量は、適宜設定できるが、例えば、以下の通りである。
(2)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子:0.1〜50重量%(より好ましくは5〜50重量%)
(3)硬化触媒:0.1〜40重量%(より好ましくは0.1〜30重量%)
(5)アミノシラン化合物:1〜60重量%(より好ましくは3〜40重量%)
(6)エポキシシラン化合物:1〜60重量%(より好ましくは5〜50重量%)
(7)オルガノアルコキシシラン化合物又はポリオルガノアルコキシシラン化合物:好ましくは10〜80重量%(より好ましくは15〜75重量%)
(8)ブロック化イソシアネートシラン化合物:1〜60重量%(より好ましくは5〜60重量%)
(9)無機系紫外線吸収性粒子及び/又はコロイダルシリカ:
成分(9)が無機系紫外線吸収性粒子のみの場合、好ましくは0.1〜50重量%(より好ましくは0.1〜30重量%)
成分(9)がコロイダルシリカのみの場合、好ましくは0.1〜80重量%(より好ましくは0.1〜50重量%)
成分(9)が無機系紫外線吸収性粒子及びコロイダルシリカの場合、好ましくは、無機系紫外線吸収性粒子が0.1〜50重量%(より好ましくは0.1〜30重量%),コロイダルシリカが0.1〜80重量%(より好ましくは0.1〜50重量%)
(4)溶剤:成分(2),(3)及び(5)〜(9)の合計を100重量部としたとき、5〜1000重量部(より好ましくは20〜800重量部)
尚、上記の(2),(3)及び(5)〜(9)の配合量は(2),(3)及び(5)〜(9)の合計量に対する重量%である。
【0054】
無機系紫外線吸収性粒子(9)が50重量%を超えて混合される場合は、造膜性が低下するおそれがあり、0.1重量%未満の場合は、十分な耐候性を示さないおそれがある。
【0055】
コロイダルシリカ(9)が80重量%を超えて混合される場合は、造膜性が低下したり、均一分散が困難になるおそれがあり、0.1重量%未満の場合は、十分な耐擦傷性付与効果が得られないおそれがある。
【0056】
コーティング組成物(III)は、上記成分(2)〜(9)を混合して調製する。
好ましくは、少なくとも成分(7)及び成分(8)を含む第一の混合液を作製し、引き続き成分(5)を混合し、最後に成分(9)を混合する。さらに好ましくは、少なくとも成分(7)、(6)、(2)、(3)を含む第一の混合液を作製し、次に成分(8)を混合して第二の混合液、さらに引き続き成分(5)を混合し第三の混合液を作製する。最後に成分(9)を混合しコーティング組成物とする。
このように、各成分を分離して調製すると、コーティング組成物の液保存安定性(ゲル化しない等)が向上するため、好ましい。特に、成分(2)や成分(9)の添加量増により液中の水の量が増加した際に、この効果がより発揮される。
例えば、成分(7),(6),(2),(3)及び(4)を混合した後、成分(8)を加える。次に、成分(5)を混合し、最後に成分(9)を混合する。
成分(4)は、コーティング組成物を調製後、さらに加えることによりコーティング組成物を希釈することができる。
【0057】
本発明のコーティング組成物のような混合材料の液保存安定性は、液pHに影響し易いことが知られている(例えば、「ゾルーゲル法のナノテクノロジーへの応用/監修:作花済夫」シーエムシー出版)。本発明のコーティング組成物の製造においては、成分(3)として酸性成分が、成分(5)、(3)として塩基性成分が混合される為、混合順序によって液pHが変化する。
液pH値、例えば、校正用pH標準液で補正したポータブルpHメーター(ハンナ社製:商品名 チェッカー1)で評価した液pH値としては、上記の第一の混合液及び第二の混合液はpH≦6、第三の混合液及び最終の混合液はpH≦7とすることが好ましい。特に、第三の混合液、即ち成分(5)混合時に液pHが8を越えると、液安定性が低下するおそれがある。コーティング組成物の製造開始時から製造終了時まで、液は酸性状態に保つことが好ましい。即ち、このような条件が維持されるような手順で、コーティング組成物を製造することが好ましい。
【0058】
また、上記の第一の混合液、第二の混合液、及び第三の混合液は、各成分の混合後、加熱処理することが好ましい。温度は30℃〜130℃、より好ましくは、50℃〜90℃であり、加熱処理時間は、30分〜24時間、より好ましくは、1時間〜8時間である。混合、加熱手段については、均一に混合、加熱できる手段であれば特に制限はない。このように加熱することで、液内の成分(7)、(5)、(6)、(8)の縮合反応が進み、耐煮沸性やその他耐久性が向上する。成分(7)、(5)、(6)、(8)の反応は、溶液Si−NMRで解析可能であり、それにより適した構造に設計できる。30℃未満や1時間未満では反応が極端に遅い場合が多く、また130℃以上や24時間以上の場合には、成分(7)、(5)、(6)、(8)の反応が進みすぎ、液がゲル化したり高粘性化し、塗布できなくなるおそれがある。
【0059】
また成分(9)を混合した後の最終液(コーティング組成物)も、加熱処理することが好ましい。室温での混合の場合、攪拌効率の影響を受けやすく、これに起因して成分(9)の分散度が低い場合は、硬化膜の透明性(全光線透過率低下、ヘイズ上昇)が低下するおそれがある。温度は30℃〜130℃、より好ましくは、50℃〜90℃であり、時間は、5分〜10時間、より好ましくは、15分〜6時間である。混合、加熱手段については、均一に混合、加熱できる手段であれば特に制限はない。30℃未満や5分未満では加熱処理の効果が乏しい場合が多く、また130℃以上や10時間以上だと、液がゲル化したり高粘性化し、塗布できなくなるおそれがある。
【0060】
尚、このコーティング組成物(I)、コーティング組成物(II)及びコーティング組成物(III)は、上述の成分以外に、硬化皮膜のレベリング剤、潤滑剤を添加することができ、これらの添加剤として、例えばポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンの共重合体、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体等を用いることができる。
この他、用途に応じて、光安定化剤(ヒンダードアミン系、Ni系、ベンゾエート系)、耐候性付与剤、着色剤、又は帯電防止剤も添加可能である。
【0061】
樹脂基材の種類に制限はないが、可視光線透過率が80%以上である透明性が高い材料が好ましい。特にポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、又はポリエステル系樹脂が好ましく、なかでも、ポリカーボネート系樹脂が透明性だけでなく力学特性にも優れ、特に好ましい。また、他の樹脂材料でも基材の厚みによっては可視光線透過率が80%以上となり使用可能である。可視光線透過率が80%未満であると、カーポートや高速道路防音壁等の用途には使い難い。積層体の密着性を向上させる目的で、樹脂基材に表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては例えば、コロナ放電処理、酸素プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理、サンドブラスト処理、溶剤処理等が挙げられる。
【0062】
光触媒層に用いられる光触媒材料としては特に制限はなく、従来公知のもの、例えば二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウム、二酸化ジルコニウム、α−Fe、酸化タングステン、硫化カドミウム、硫化亜鉛等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。これらの中で、二酸化チタン、特にアナターセ型二酸化チタンが実用的光触媒として有用である。また、これらの光触媒の活性を促進させる目的で、従来公知の光触媒促進剤を添加してもよい。光触媒促進剤としては例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の白金族金属が好ましく挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。この光触媒促進剤の添加量は、光触媒活性の観点から、通常、光触媒に対して1〜20質量%の範囲で選ばれる。
【0063】
光触媒層の形成法については後述するが、湿式法を用いる場合は、光触媒層のマトリックスに通常、シリコーン系化合物を用いる。例えば一例として、ポリオルガノシロキサン又はテトラエトキシシラン等のアルコキシシランを加水分解した後、縮合したもの等がそのままマトリックスとなる。
【0064】
本発明の積層体は、図1に示すように、光触媒層10、中間層20、樹脂基材30の三層から形成されてもよいし、光触媒層10と中間層20の間及び/又は中間層20と樹脂基材30の間に、他の層が介在していてもよい。例えば、図2に示すように、樹脂基材30と中間層20の間に有機層40を形成してもよい。また、図3に示すように、中間層20と光触媒層10の間に無機層50を設けてもよい。また、有機層と無機層を組み合わせて設けてもよい。光触媒層10と樹脂基材30の間の層構成は、しばしは積層体の密着性に影響する。
【0065】
樹脂基材30と中間層20の密着性が十分でないと予想される場合は、有機層40を設けることが好ましい。有機層40は、マトリックスが有機成分で、無機系材料ともある程度の密着性を有する従来公知の材料が使用できる。例えば、アクリルシリコーン系の塗料、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、各種市販のプライマー(ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、塩素化ポリエチレン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系等)等が使用可能である。
【0066】
同様に、光触媒層10と中間層20の密着性が十分でないと予想される場合は、無機層50を設けることが好適に行なわれる。無機層50はマトリックスが無機成分で、有機系材料ともある程度の密着性を有する従来公知の材料が使用できる。例えば、シリコーン系塗料、シリコーン変性物、ポリジメチルシロキサンとシリカとの混合物、ポリジメチルシロキサンとアクリル系樹脂の混合物、各種市販の光触媒アンダーコート剤等が用いることができる。
【0067】
層20,40,50は、通常、これらの層の原料である液状材料(例えば上記のコーティング組成物)を塗布後、乾燥又は硬化させることにより、形成される。
【0068】
塗布方法は、従来公知の方法、例えば、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が用いられる。乾燥又は硬化の条件は各種材料により異なる。特に、中間層20について言及すれば、その適当な硬化条件は、通常70〜150℃、好ましくは80℃〜140℃で30〜120分間加熱することで硬化膜が得られる。中間層20の厚みは、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜15μmである。1μm未満では耐候性が不十分なおそれがあり、20μmを越えると造膜性が低下する(ひび割れ)おそれがある。一方、層40,50の厚みは、密着性が発現する程度の厚さを有すればよいが、通常は0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μmの範囲で選定される。0.05μm未満では密着性が不十分となるおそれがあり、10μmを越えると造膜性が低下する(ひび割れ)おそれがある。積層体の製造の容易さを考えると、あるレベルの密着性が確保できるのであれば、層10,20,30のみからなる積層体が好ましい。この観点から見ると、上記のコーティング組成物は有機層にも無機層にも比較的良好な密着性を示すので、単独中間層として好適に用いることができる。
【0069】
中間層20又は無機層50に光触媒層10を形成する方法として特に制限はなく、様々な方法が使用可能である。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等のPVD法や金属溶射法等の乾式法、塗工液を用いる湿式法等が挙げられる。湿式法に用いる塗工液としては、光触媒粒子その他を適当な無機系バインダー(例えば、シリコーン系化合物等)に分散させたものが好ましく用いられる。
塗工液は、公知の方法、例えば、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等により塗布し、乾燥又は硬化させて、光触媒層10を形成することができる。光触媒層10の厚みは、通常、5nm〜2μmであり、好ましくは10nm〜2μmであり、特に好ましくは20nm〜1μmである。5nm未満では光触媒機能が十分発揮されないおそれがある。2μmを越えると、それ以上厚くしても光触媒機能はあまり向上しない。
【0070】
[第二の樹脂積層体]
本発明の第二の樹脂積層体は、光触媒層、無機層、中間層、及び樹脂基材層を含み、中間層は、後述するコーティング組成物(A)から形成されたものである。この樹脂積層体では、有機系の中間層を用いるため、光触媒層と中間層との間に無機層を用いて、光触媒による分解を防いでいる。
この樹脂積層体の一実施形態を図4に示す。この図に示すように、樹脂積層体2は、光触媒層10、無機層50、中間層22、及び樹脂基材層30からなる。
【0071】
この樹脂積層体の中間層22は、下記成分(a)〜(d)を含むコーティング組成物(A)から形成されたものである。
(a)アクリル系化合物
(b)紫外線吸収基を含有する有機高分子型微粒子
(c)ラジカル開始剤
(d)溶剤
【0072】
上記有機高分子型微粒子(b)と溶剤(d)は、コーティング組成物(I)で説明した有機高分子型微粒子(2)と溶剤(4)とそれぞれ同じである。
【0073】
アクリル系化合物(a)とは、(メタ)アクリル酸類を各種アルコールと反応させた(メタ)アクリル酸エステル類である。例えば,メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、フルオロメチルアクリレート、2,2,2−フルオロエチルメタクリレート、1,2,2,2−テトラクロロエチルアクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート類、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート等のアルコキシ(メタ)アクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート等のアリール(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル類を複数使用してもよい。また、他のエチレン系不飽和化合物(アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体、スチレン、酢酸ビニル等)を併用してもよい。さらに市販のアクリル系接着剤(例えば、コニシ(株)VP−2000等)も使用可能である。
【0074】
ラジカル開始剤(c)はアクリル系化合物(a)を高分子量化させる役割を果たす。例えば、ラジカル重合開始剤として、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジイソブチリルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキセン等のジアルキルパーオキサイド類、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチル)シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオジカーボネート、α−クミルペルオキシネオジカーボネート、t−ブチルペルオキシネオジカーボネート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−アミルペルオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジブチルペルオキシトリメチルアジペート等のアルキルパーエステル類、ジ−3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(1,1−ブチルシクロヘキサオキシジカーボネート)、ジイソプロピルオキシジカーボネート、t−アミルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネート類等が挙げられる。
【0075】
上記ラジカル開始剤は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
【0076】
コーティング組成物(A)は、水及び/又は有機溶剤(溶剤(d))に混合された状態で使用する。
【0077】
また、コーティング組成物(I)で用いるアミノシラン化合物(5)、エポキシシラン化合物(6)をさらに添加してもよい。これにより無機層50との密着性が大きく向上する場合がある。
【0078】
各成分(a)〜(d)の配合量は以下のとおりである。まず、溶剤(d)の配合量は、成分(a)〜(c)の配合量の合計100質量部に対して好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは10〜800質量部、特に好ましくは50〜600質量部である。
【0079】
成分(a)は、好ましくは5〜90質量部、より好ましくは10〜90質量部、特に好ましくは15〜75質量部である。5質量部未満では樹脂基材層30との密着性が不足するおそれがある。配合量が90質量部を越えると無機層50との密着性が不足するおそれがある
【0080】
紫外線吸収基を含有する有機高分子型微粒子(b)の配合量は、好ましくは1〜95質量部で、より好ましくは3〜85質量部、さらに好ましくは5〜75質量部である。1質量部未満の場合は十分な耐候性を示さない場合がある。95質量部を越えると造膜性が低下する(ひび割れ)おそれがある。
【0081】
ラジカル開始剤(c)の配合量は好ましくは0.005〜5質量部である。0.005質量部未満では硬化不良の原因となり、5質量部を超えると硬化が速すぎて中間層膜が不均一となる場合がある。
【0082】
アミノシラン化合物(5)を添加する場合、その配合量は好ましくは3〜55質量部、より好ましくは3〜45質量部である。55質量部を越えると造膜性が低下する(ひび割れ)おそれがある。エポキシシラン化合物(6)を添加する場合、その配合量は好ましくは3〜60質量部、より好ましくは
3〜45質量部である。60質量部を越えると膜(中間層)の透明性が劣るおそれがある。
【0083】
コーティング組成物(A)は、上記成分(a)〜(d)を混合して調製する。アミノシラン化合物(5)及びエポキシシラン化合物(6)を添加する場合は、少なくとも成分(a)及び成分(b)を含む第一の混合液を作製し、少なくとも成分(a),(5),(6)を含む第二の混合液を作製し、その後両者を混合するのが好ましい。このようにすることによりコーティング組成物の保存安定性(ゲル化しない等)が向上する。尚、好ましくは、成分(c),(d)は第1の混合液に混合する。
【0084】
尚、コーティング組成物(A)は、コーティング組成物(I)と同様の添加剤を含むことができる。
第二の樹脂積層体の中間層は、第一の樹脂積層体の中間層と同様に製造できる。
【0085】
第二の樹脂積層体の光触媒層、無機層、樹脂基材層は、第一の樹脂積層体で説明した通りである。
さらに、第二の樹脂積層体も、第一の樹脂積層体と同様に、層間に他の層を介在させることができる。例えば、必要に応じて、樹脂基材層30と中間層22の間に、図2に示すような有機層40を設けることができる。また、無機層50と中間層22の間に有機層40を設けることができる。
【0086】
第二の樹脂積層体は、第一の樹脂積層体と同様に製造できる。
【0087】
第一及び第二の樹脂積層体とも、好ましくは可視光線透過率は80%以上である。透過率が高いと、特にカーポートや防音壁等の用途に好適に使用できる。
【実施例】
【0088】
[第一の樹脂積層体]
実施例1
サンプル管に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収基結合アクリル微粒子の水分散液「ULS−1385MG」(一方社油脂工業(株)製;固形分30%で、この内の50%が紫外線吸収剤骨格)2.8g、1−メトキシ−2−プロパノールを10g仕込み、攪拌しながら、テトラメトキシシラン2gを滴下した。引き続き、20%p−トルエンスルホン酸メタノール溶液0.1g及び酢酸1.5gを滴下し、30分間攪拌した。これをA−1液とした。メチルトリメトキシシラン2g、3−アミノプロピルトリメトキシシラン2g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gの混合液をつくり、これをA−2液とした。A−1液をA−2液にゆっくり滴下し、2時間攪拌した。引き続き暗所25℃にて、1週間静置した。これをA液(コーティング組成物(I))とした。
【0089】
上記で得られたA液を、出光興産(株)製「IV2200R」を原料として作製した100mm×100mm×3mmのポリカーボネート(PC)成形体(可視光線透過率90%)の表面に、硬化皮膜が約5μmになるように塗布し、室温で5分自然乾燥させた後、120℃で1時間硬化させた。この積層中間体について後述する評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0090】
上記積層中間体の硬化皮膜側の面に、石原産業(株)製光触媒トップコート剤「STK−211」を加熱処理後厚みが約0.5μmとなるように塗布した後、100℃で30分間加熱処理して、光触媒膜を形成し、樹脂積層体を作製した。この樹脂積層体の接触角及び光線透過率を後述の評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0091】
実施例2
「ULS−1385MG」の代わりにベンゾフェノン系紫外線吸収基結合アクリル微粒子の水分散液「ULS−385MG」(一方社油脂工業(株)製;固形分30%で、この内の50%が紫外線吸収剤骨格)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層中間体及び樹脂積層体を作製し、物性評価を行なった。結果を表1に示す。
【0092】
実施例3
「ULS−1385MG」を1.2g、テトラメトキシシランを3.8g、メチルトリメトキシシラン3.8g、3−アミノプロピルトリメトキシシランを1.0g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを1.0gとした以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を製造し、これを用いて実施例1と同様にして積層中間体及び樹脂積層体を作製し、物性評価を行なった。結果を表1に示す。
【0093】
実施例4
「ULS−1385MG」を8.7g、1−メトキシ−2−プロパノールを16g、テトラメトキシシランを1.0g、20%p−トルエンスルホン酸メタノール溶液を0.05g、酢酸を0.75g、メチルトリメトキシシランを1.0g、3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.4g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.4gとした以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を製造し、これを用いて実施例1と同様にして、積層中間体及び樹脂積層体を作製し、物性評価を行なった。結果を表1に示す。
【0094】
実施例5
実施例1で用いたA液を(株)サンプラテック社製アクリル(PMMA)板(色:クリア、100mm×100mm×3mm、可視光線透過率93%)の表面に、硬化皮膜が約5μmになるように塗布し、室温で5分自然乾燥させた後、80℃で2時間硬化させた。この積層中間体を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
上記積層中間体の硬化皮膜側の面に石原産業(株)製光触媒トップコート剤「STK−211」を加熱処理後厚みが約0.5μmとなるように塗布した後、80℃で1時間加熱処理して、光触媒膜を形成し、樹脂積層体を作製した。この樹脂積層体の接触角及び光線透過率を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0095】
実施例6
前記ポリカーボネート板の表面に、石原産業(株)製有機系プライマー「ST−K300」を乾燥後の厚みが約0.3μmとなるように塗布した後、室温で30分間乾燥させた。このプライマー層上に実施例1のA液を実施例1と同様の方法で塗布、硬化させた。この積層中間体を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
次に上記積層中間体の硬化皮膜側の面に、実施例1と同様にして光触媒膜を形成した。この樹脂積層体の接触角及び光線透過率を後述の評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0096】
実施例7
容積50gのサンプル管に、ULS―1385MG:8.4g、1−メトキシ−2−プロパノール:10g、イオン交換水:1gを仕込み、700ppmで撹拌しながら、酢酸:1.0g、メチルトリメトキシシラン:4g、ジメトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン:1.9g、20%p−トルエンスルホン酸メタノール液:0.1gの順に、それぞれ1分間かけて滴下した。引き続き、室温で10分撹拌後、1日静置し、これをA’−1液とした。
容積20gのサンプル管に、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン:2.2g、2−ブタノオキシム:0.7gを仕込み、500ppmで、10分間撹拌後、1日静置し、これをA’−2液とした。
【0097】
冷却管を取り付けた200ml三口フラスコに、A’−1液と攪拌子を入れ、窒素気流下、600rpmで、80℃3時間加熱した。引き続き、A’−2液を加え、同条件にて、80℃で4時間加熱した。さらに、これに3−アミノプロピルトリメトキシシラン:0.8gを、2分間かけて滴下した後、80℃で6時間、600rpmにて加熱した。
引き続き、1週間静置し、これをA’液とした(コーティング組成物(II))。
A液の代わりに、A’液(コーティング組成物(II))を用いて、実施例1と同様にして、積層中間体及び樹脂積層体を作製し、物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
実施例8
「ULS−1385MG」を12g、及びジメトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシランを1.3g、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランを2.1gとし、メチルトリメトキシシランの代わりにMTMS−Aを3g用いた他は実施例7と同様にしてコーティング組成物を製造し、これを用いて実施例1と同様にして、積層中間体及び樹脂積層体を作製し、物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
実施例9
容積50gのサンプル管に、ULS―1385MG:8.4g、1−メトキシ−2−プロパノール:10g、イオン交換水:1gを仕込み、700ppmで撹拌しながら、酢酸:1.0g、MTMS−A:3g、ジメトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン:1.9g、20%p−トルエンスルホン酸メタノール液:0.1gの順に、それぞれ1分間かけて滴下した。引き続き、室温で10分撹拌後、1日静置し、これをA’’−1液とした。
容積20gのサンプル管に、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン:2.2g、2−ブタノオキシム:0.7gを仕込み、500ppmで、10分間撹拌後、1日静置し、これをA’’−2液とした。
【0100】
冷却管を取り付けた200ml三口フラスコに、A’’−1液と攪拌子を入れ、窒素気流下、600rpmで、80℃3時間加熱した。引き続き、A’’−2液を加え、同条件にて、80℃で4時間加熱した。さらに、これに3−アミノプロピルトリメトキシシラン:0.8gを、2分間かけて滴下した後、80℃で6時間、600rpmにて加熱した。
引き続き、暗所25℃にて、1日静置した後、650rpmで攪拌しながら、IPA−ST(日産化学工業(株)製、イソプロパノール分散、コロイダルシリカ濃度30重量%、粒子系10〜20nm(メーカー公表値)):5.7gを2分間かけて滴下した。室温で30分攪拌後、さらに80℃で60分加熱した。
引き続き、1週間静置し、これをA’’液とした(コーティング組成物(III))。
A液の代わりに、A’’液(コーティング組成物(III))を用いて、実施例1と同様にして、積層中間体及び樹脂積層体を作製し、物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
実施例10
イオン交換水を添加せず、MTMS−Aの代わりにメチルトリメトキシシランを4g用い、IPA−STの代わりにスノーテックスO−40(日産化学工業(株)製、水分散、コロイダルシリカ濃度20重量%、粒子径10〜20nm(メーカー公表値))を2.5g及びニードラールU−15(多木化学(株)製、水分散、酸化セリウム濃度15重量%,粒子径8nm以下(メーカーカタログ値))を4.7g用いた他は実施例9と同様にしてコーティング組成物を製造し、これを用いて実施例1と同様にして、積層中間体及び樹脂積層体を作製し、物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
[第二の樹脂積層体]
実施例11
サンプル管に、「ULS−1385MG」6.2g、1−メトキシ−2−プロパノールを10g仕込み、攪拌しながら、1−メチルメタクリレート6.2gと2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.062gの混合物を滴下し、30分間攪拌した。引き続き暗所25℃にて、1週間静置した。これをB液(コーティング組成物(A))とした。
実施例1と同様のポリカーボネート成形体の表面に、B液を硬化皮膜が約5μmになるように塗布し、室温で5分自然乾燥させた後、120℃で1時間硬化させた。この積層中間体(1)について後述する評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0103】
次に上記積層中間体(1)の硬化皮膜側の面に、石原産業(株)製無機系アンダーコート剤「ST−K102a」と「ST−K102b」の等量混合液を乾燥加熱後の厚みが約3μmになるように塗布し、室温で5分乾燥させた後、100℃30分間加熱した。これを積層中間体(2)とした。
次に上記積層体(2)のアンダーコート層の面に、実施例1と同様にして光触媒膜を形成した。この樹脂積層体の接触角及び光線透過率を後述の評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0104】
実施例12
サンプル管に、「ULS−1385MG」5.0g、1−メトキシ−2−プロパノールを10g仕込み、攪拌しながら、1−メチルメタクリレート2.3gと2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.043gの混合物を滴下し、30分間攪拌した。これをC−1液とした。1−メチルメタクリレート2.0g、3−アミノプロピルトリメトキシシラン1.6g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.6gの混合液をつくり、これをC−2液とした。C−1液をC−2液にゆっくり滴下し、2時間攪拌した。引き続き暗所25℃にて、1週間静置した。これをC液(コーティング組成物(A))とした。
前記ポリカーボネート板の表面に、上記で得られたC液を硬化皮膜が約5μmになるように塗布し、室温で5分自然乾燥させた後、120℃で1時間硬化させた。この積層中間体(1)について後述する評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0105】
次に上記積層中間体(1)の硬化皮膜側の面に、石原産業(株)製有機系プライマー「ST−K300」を乾燥後の厚みが約0.3μmとなるように塗布した後、室温で30分間乾燥させ、さらにその上に、石原産業(株)製無機系アンダーコート剤「ST−K102a」と「ST−K102b」の等量混合液を乾燥加熱後の厚みが約3μmになるように塗布し、室温で5分乾燥させた後、100℃30分間加熱した。これを積層中間体(2)とした。
次に上記積層体中間体(2)のアンダーコート層の面に、実施例1と同様にして光触媒膜を形成した。この樹脂積層体の接触角及び光線透過率を後述の評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0106】
比較例1
1−メチルメタクリレート4g、紫外線吸収剤2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン0.15g、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.042gをイソプロパノール8gに添加し十分に攪拌した。この液を前記ポリカーボネート板の表面に、硬化皮膜が約5μmになるように塗布し、室温で5分自然乾燥させた後、80℃で1時間硬化させた。この積層中間体について後述する評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
ここで得た積層中間体の硬化物側の面に、石原産業(株)製アンダーコート剤「ST−K102a」と「ST−K102b」の等量混合液を乾燥加熱後の厚みが約3μmになるように塗布し、室温で5分乾燥させた後、100℃30分間加熱した。その上にさらに、実施例1と同様にして光触媒膜を形成した。この樹脂積層体の接触角及び光線透過率を後述の評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0107】
比較例2
紫外線吸収剤2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの量を2g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.06gとした以外は、比較例1と同様に試料調製を行ない、物性を評価した。結果を表2に示す。
【0108】
比較例3
(株)日本触媒製・紫外線吸収性フィルムコーテング剤「UV−G101」5gと、住化バイエルウレタン(株)製イソシアネート硬化剤「デスモジュールN3200」0.05gを均一混合し、加熱乾燥後の厚みが約5μmになるように、前記ポリカーボネート板の表面に塗布した後、100℃で3分、40℃で24時間乾燥させた。この積層中間体について後述する評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
上記積層中間体の硬化物側の面に、石原産業(株)製アンダーコート剤「ST−K102a」と「ST−K102b」の等量混合液を乾燥加熱後の厚みが約3μmになるように塗布し、室温で5分乾燥させた後、100℃30分間加熱した。その上にさらに、実施例1と同様にして光触媒膜を形成した。この樹脂積層体の接触角及び光線透過率を後述の評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0109】
[評価方法]
1.樹脂積層体の評価
(1)光触媒機能
光触媒機能が発現しているか否かの指標として、親水性の度合いが挙げられる(一般に水との接触角が40°以下の親水性を有すれば防汚性を有するといわれている)。どの程度光触媒機能が発現されているかの指標として、以下の方法により接触角を測定した。
光触媒層側にブラックライトブルーランプにて1mW/cmの紫外線を照射し、接触角の経時変化を測定した。接触角は、光触媒層面にマイクロシリンジを用いてイオン交換水20mlを滴下し、水滴を画像処理接触角度計(協和界面科学(株)製、CA−A)を用いて測定した。
【0110】
(2)可視光線透過率
直読ヘイズコンピュータ(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)を用いて測定した。
【0111】
2.積層中間体の評価
(1)ヘーズ
直読ヘイズコンピュータ(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)を用いて測定した。
【0112】
(2)黄変度(YI)
SZ−optical SENSOR(日本電色工業(株)製)を用い、JIS K7105に準拠して測定した。
【0113】
(3)密着性
JIS K5400に準拠し、サンプルをカミソリの刃で2mm間隔に縦横11本ずつ切れ目を入れて100個の碁盤目をつくり、市販のセロハンテープ(「CT−24(幅24mm)」、ニチバン(株)製)を指の腹でよく密着させた後、90°の角度で手前方向に急激に剥し、皮膜が剥離しないで残存したます目数(X)をX/100で表示した。
【0114】
(4)耐候性
キセノンウェザー試験(アトラス社Ci165、出力6.5kW、ブラックパネル温度63℃、湿度50%)を実施し、上記(1)−(3)のパラメータの変化度合いで耐候性を評価した。
【0115】
(5)耐冷熱衝撃性
冷熱衝撃試験(ESPEC製、TSA−200D−Wにて、−30℃で1時間、110℃で1時間を100サイクル)を実施した。冷熱衝撃試験前後での密着性(上記(3)参照)の変化で、耐冷熱試験性を評価した。
【0116】
(6)有機高分子型微粒子の平均粒径
TEM(透過型電子顕微鏡)で中間層の断面観察を行ない、その1μm角中に存在する粒子を10個選び、米国NIH(National Institute of Health)製フリーソフト:NIH Image 1.63を使用して平均粒径を求めた。尚、実施例1−8における平均粒径は40〜60μmであった。また、実施例1で作製した中間層の断面写真(倍率:10万倍)を図5に示す。写真中の灰色(あるいは黒色)部分は、Si−O結合を有するマトリックスであり、白色部分(あるいは白点)は、紫外線線吸収基を含有する有機高分子微粒子である。これは、TEMに組み込まれた元素分析装置により確認した。
【0117】
尚、成分(1),(5),(6)が完全に加水分解・縮合した場合の非揮発分量の計算値と成分(2)中の溶媒除去後に残る量の合計を100質量%として、中間層中の紫外線吸収ユニットの含有量(wt%)を計算した値を表1に示す。さらに、中間層の密度dを1g/cm(おおよその有機物密度)及び2.5g/cm(おおよそのSiO密度)と仮定し、それぞれの仮定に対し、中間層(体積=100mm×100mm×5×10−3mm)中の紫外線吸収ユニット量(mg)を求めた。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
実施例1の中間層はSi−Oユニットを含むので、密度dは1g/cmと2.5g/cmの間にある。従って、中間層中の紫外線吸収ユニットは最大でも11.9mgである。一方、比較例2の中間層は有機成分のみなのでd〜1g/cmと考えてよく、内在する紫外線吸収ユニットはおおよそ17mgである。比較例2の方が、紫外線吸収ユニット量が多いにも拘らず、実施例1の中間層の方が耐候性に優れることが表1,2から見て取れる。これは有機微粒子が中間層内で安定に存在しているためである。同様に、実施例2〜8の中間層も耐候性が優れたものになっている。比較例1の中間層の耐候性が悪いのは低分子型紫外線吸収剤を使用していることに起因する。高分子型紫外線吸収剤をそのまま膜として用いた比較例3の中間層に関しては、耐冷熱衝撃性が劣る結果となっている。
【0121】
表1,2より、実施例の樹脂積層体では、光触媒機能が発揮され、樹脂積層体の透明性が維持されていることがわかる。さらに、実施例の樹脂積層体は、使用環境下で、黄変しにくい、ヘーズが悪化しない、界面剥離が起こりにくい等耐候性、耐熱性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の樹脂積層体は、道路関連資材(防音壁等)、建築材料(アーケードの天窓、カーポート等)に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第一の樹脂積層体の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の第一の樹脂積層体の他の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の第一の樹脂積層体の他の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の第二の樹脂積層体の他の実施形態を示す図である。
【図5】実施例1で作製した中間層の断面写真(倍率:10万倍)である。
【符号の説明】
【0124】
1 第一の樹脂積層体
2 第二の樹脂積層体
10 光触媒層
20 第一の樹脂積層体の中間層
22 第二の樹脂積層体の中間層
30 樹脂基材層
40 有機層
50 無機層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒層、中間層、及び樹脂基材層を含み、
前記中間層が、紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子を、Si−O結合を有するマトリックス中に分散した層である樹脂積層体。
【請求項2】
前記中間層が、下記成分(1)〜(6)を含むコーティング組成物(I)から形成されたものである請求項1記載の樹脂積層体。
(1)アルコキシシラン化合物
(2)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子
(3)硬化触媒
(4)溶剤
(5)アミノシラン化合物
(6)エポキシシラン化合物
【請求項3】
前記中間層が、下記成分(2)〜(8)を含むコーティング組成物(II)から形成されたものである請求項1記載の樹脂積層体。
(2)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子
(3)硬化触媒
(4)溶剤
(5)アミノシラン化合物
(6)エポキシシラン化合物
(7)オルガノアルコキシシラン化合物又はポリオルガノアルコキシシラン化合物
(8)ブロック化イソシアネートシラン化合物
【請求項4】
前記中間層が、紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子及び平均粒子径が1〜200nmの無機系紫外線吸収性粒子及び/又はコロイダルシリカを、Si−O結合を有するマトリックス中に分散した層である請求項1に記載の樹脂積層体。
【請求項5】
前記中間層が、下記成分(2)〜(9)を含むコーティング組成物(III)から形成されたものである請求項4記載の樹脂積層体。
(2)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子
(3)硬化触媒
(4)溶剤
(5)アミノシラン化合物
(6)エポキシシラン化合物
(7)オルガノアルコキシシラン化合物又はポリオルガノアルコキシシラン化合物
(8)ブロック化イソシアネートシラン化合物
(9)無機系紫外線吸収性粒子及び/又はコロイダルシリカ
【請求項6】
光触媒層、無機層、中間層、及び樹脂基材層を含み、
前記中間層が、下記成分(a)〜(d)を含むコーティング組成物(A)から形成されたものである樹脂積層体。
(a)アクリル系化合物
(b)紫外線吸収基を含有する平均粒子径が1〜200nmの有機高分子型微粒子
(c)ラジカル開始剤
(d)溶剤
【請求項7】
前記有機高分子型微粒子がアクリル系樹脂及び/又はスチレン系樹脂を含有してなるものである請求項1〜6のいずれか一項記載の樹脂積層体。
【請求項8】
樹脂積層体の可視光線透過率が80%以上である請求項1〜7のいずれか一項記載の樹脂積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−245709(P2007−245709A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30409(P2007−30409)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】