説明

樹脂積層体

【課題】界面に接着剤層を介在させなくても、接着強度が母材強度以上であり、リサイクル性が良好な樹脂積層体を提供すること。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂及びグリシジル基含有樹脂を含む組成物よりなる層(A)とカルボニル基含有フッ素樹脂、又はフッ素樹脂及び不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物よりなる層(B)からなる樹脂積層体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂及びグリシジル基含有樹脂を含む組成物よりなる層(A)とカルボニル基含有フッ素樹脂、又はフッ素樹脂及び不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物よりなる層(B)からなる樹脂積層体に関し、詳しくは、層(A)と層(B)との界面に接着剤層を介在させなくても優れた接着強度を有し、粉砕後、再利用が可能(リサイクル性が良好)な樹脂積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、分子中に塩素を含有するため、難燃性に優れるのみならず、各種の添加剤を多量に添加することができるため、広範囲に亘り、機械的特性、耐熱性、成形性及び耐候性の向上を実現することができる。
【0003】
塩化ビニル系樹脂は、上記のような特性を有しているため、特に硬質塩化ビニル系樹脂組成物の成形品は、航空機、船舶、車両等の輸送機内外装材;建築物内外装材;家具、事務用具等の日用品;家電機器、電子機器等のハウジング材;半導体装置の部品、雨どい等の建材、プレート等の工業部材、パイプ等の配管材等として使用されてきた。
【0004】
また、軟質塩化ビニル系樹脂としては、従来からフイルム、シート等の包装材、収縮チューブ等の被覆材や家電、家具、扉、什器等の表面装飾材、住宅、店舗用等の壁装材、日用雑貨、医療用部材として広く使用されてきた。
【0005】
一方、フッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、耐侯性及び電気絶縁性等に優れているため、用途が広く、自動車、OA機器等の各種分野で用いられている。
しかしながら、フッ素樹脂は、用途によっては、機械的強度及び寸法安定性が不充分となるという問題点がある。
この問題点をフッ素樹脂の優れた特性を損なわずに解消する方法が提案されてきた。
【0006】
すなわち、従来より、塩化ビニル系樹脂の力学物性を生かしつつ、フッ素樹脂の優れた表面特性を付与するために、塩化ビニル系樹脂とフッ素樹脂との樹脂積層体を得る方法が検討されているが、樹脂間の接着力が極めて低いという問題点があった。
【0007】
このため、塩化ビニル系樹脂とフッ素樹脂との界面に接着剤層を設けて接着力改良する技術が開示されている。
例えば、硬質塩化ビニル系樹脂成形体に関しては特許文献1及び2が挙げられ、軟質塩化ビニル系樹脂成形体に関しては特許文献3が挙げられる。
しかしながら、これらの方法では、接着剤層を必要としているため、製造工程が複雑となり生産性が大きく阻害されるとともに、得られる積層体を粉砕後、再利用する際に接着剤が異物となり品質を低下させるため、そのリサイクル性に劣るという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平5−096598号公報
【特許文献2】特開平11−005279号公報
【特許文献3】特開2008−18680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、塩化ビニル系樹脂及びグリシジル基含有樹脂を含む組成物よりなる層(A)とカルボニル基含有フッ素樹脂、又はフッ素樹脂及び不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物よりなる層(B)のみによって成形加工性を確保し、層(A)と層(B)との界面に接着剤層を介在させなくても優れた接着強度を有し、リサイクル性が良好な樹脂積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するべく、塩化ビニル系樹脂を含む組成物とフッ素樹脂を含む組成物の反応性及びその成形加工性について鋭意検討を行った結果、
(1)塩化ビニル系樹脂の反応性と成形加工性には、グリリジル基が有効でその当量が小さいこと
(2)フッ素樹脂の反応性と成形加工性には、カルボニル基が有効で、フッ素樹脂を含む組成物の融点が塩化ビニル系樹脂を含む組成物の成形加工温度以下で、粘弾性のゴム状領域を有すること
が重要あるという知見を得た。
【0011】
すなわち、本発明は、
1.塩化ビニル系樹脂及びグリシジル基含有樹脂を含む組成物よりなる層(A)とカルボニル基含有フッ素樹脂、又はフッ素樹脂及び不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物よりなる層(B)からなる樹脂積層体、
2.層(A)を構成する組成物のグリシジル基含有量が0.5〜20質量%、及び、層(B)を構成する組成物のカルボニル基含有量が0.5〜20質量%である上記1に記載の樹脂積層体、
3.層(A)を構成する組成物において、グリシジル基含有樹脂が塩化ビニル/アリルグリシジルエーテル共重合体及び/又は塩化ビニル/メタリルグリシジルエーテル共重合体である上記1又は2に記載の樹脂積層体、
4.層(A)を構成する組成物において、グリシジル基含有樹脂がエポキシ当量100〜1000g/eqのグリシジル(メタ)アクリレート共重合体であって、その配合量が塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、グリシジル基含有樹脂0.5〜30質量部である上記1〜3のいずれかに記載の樹脂積層体、
5.層(B)を構成する組成物において、カルボニル基含有フッ素樹脂が、カーボネート基含有テトラフルオロエチレン〔TFE〕/へキサフルオロプロピレン〔HFP〕/エチレン〔E〕系共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂積層体、
6.層(B)を構成する組成物において、フッ素樹脂及び不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物のフッ素樹脂がへキサフルオロプロピレン〔HFP〕/フッ化ビニリデン〔VDF〕系共重合体、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/へキサフルオロプロピレン〔HFP〕/フッ化ビニリデン〔VDF〕系共重合体及びテトラフルオロエチレン〔TFE〕/フッ化ビニリデン〔VDF〕系共重合体から選ばれる樹脂であるとともに、組成物中の不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂の配合量が0.5〜30質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂積層体
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂積層体は、その界面に接着剤層を介在させなくても、接着強度としての引張剪断強度が母材強度以上であり、そのため粉砕後の再利用が可能となり、リサイクル性が良好である。
また、本発明の樹脂積層体は、フッ素樹脂との相乗効果により難燃性に優れるばかりでなく、塩化ビニル系樹脂が本来有している高い物性、外観及び耐薬品性をそのままのレベルで維持し、フッ素樹脂が本来有している高い耐薬品性、耐溶剤性及び低溶出性を有すると共に、リサイクル性においても優れていることから高い生産性を確保できる。
更に、本発明の樹脂積層体は、成形加工性に優れ、押出成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、連続プレス成形法、射出成形法等の何れの成形法によっても製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の層(A)を構成する組成物は、塩化ビニル系樹脂及びグリシジル基含有樹脂を含むものである。
【0014】
塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと他のビニル化合物を30質量%以下含有する共重合体、塩化ビニル/アリル化合物共重合体等が挙げられる。
これらの塩化ビニル系樹脂は、単独で用いても良いし、2種以上を併用して用いてもよい。
なお、上記他のビニル化合物の共重合量が、30質量%を超える場合には、塩化ビニル系樹脂本来の特徴を損なうことになり好ましくない。
【0015】
他のビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン、スチレン等のα−オレフィン;ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のアルキルビニルエーテル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸、あるいはその酸無水物等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
上記塩化ビニル/アリル化合物共重合体は、乳化重合法又は微細懸濁重合法によって製造された共重合体が好ましい。
アリル化合物としては、アリルクロリド、アリルアルコール、アリルエチルエーテル、アリル−2−ヒドロキシエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル等が挙げられるが、更にこれらと共重合可能な単量体を加えた共重合体であってもよい。
上記単量体としては、例えば、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジル−p−ビニルベンゾエート、メチルグリシジルイタコネート、グリシジルエチルマレエート、グリシジルビニルスルホネート、グリシジルアリルスルホネート、グリシジルメタリルスルホネート等の不飽和酸のグリシジルエステル類;ブタジエンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、2−メチル−5,6−エポキシヘキセン等のエポキシ基を有する単量体;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のビニリデン化合物;モノメチルマレエート、ジエチルマレエート、モノブチルマレエート、ブチルベンジルマレエート、ジ−2−ヒドロキシエチルマレエート、ジメチルイタコネート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びその酸無水物;N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド;エチレン、プロピレン等のオレフィン;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類等を挙げることができる。
これらの単量体は、必要により、1種又は2種以上を用いることができるが、これらの総量は塩化ビニル/アリル化合物共重合体の50質量%以下でないと、強度が低下するおそれがある。
【0017】
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、300〜2000、好ましくは500〜1500である。
平均重合度が300未満であると、得られる樹脂積層体の強度が十分とならないおそれがあり、2000を越える場合、成形加工時に充分に混練することが難しく、加工性が低下するおそれがある。
【0018】
層(A)を構成する組成物において、グリシジル基含有樹脂としては、塩化ビニル/アリルグリシジルエーテル共重合体、塩化ビニル/メタリルグリシジルエーテル共重合体が挙げられるが、更にこれらと共重合可能な単量体を加えた共重合体であってもよい。
上記単量体としては、例えば、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジル−p−ビニルベンゾエート、メチルグリシジルイタコネート、グリシジルエチルマレエート、グリシジルビニルスルホネート、グリシジルアリルスルホネート、グリシジルメタリルスルホネート等の不飽和酸のグリシジルエステル類;ブタジエンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、2−メチル−5,6−エポキシヘキセン等のエポキシ基を有する単量体;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のビニリデン化合物;モノメチルマレエート、ジエチルマレエート、モノブチルマレエート、ブチルベンジルマレエート、ジ−2−ヒドロキシエチルマレエート、ジメチルイタコネート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びその酸無水物;N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド;エチレン、プロピレン等のオレフィン;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類等を挙げることができる。
これらの単量体は、必要により、1種又は2種以上を用いることができるが、これらの総量は塩化ビニル/アリルグリシジルエーテル共重合体及び/又は塩化ビニル/メタリルグリシジルエーテル共重合体の50質量%以下でないと、強度が低下するおそれがある。
【0019】
次に、層(A)を構成する組成物において、グリシジル基含有樹脂としては、グリシジル(メタ)クリレート共重合体が挙げられる。
この共重合体は、側鎖にエポキシ基を有する官能性の(メタ)クリレート共重合体であって、通常、グリシジル(メタ)クリレートと他のビニル単量体とを共重合することによって得られる。
他のビニル単量体としては、スチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
中でも、他のビニル単量体としては、層(A)を構成する組成物中への分散性面から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン等が好適である。
【0020】
グリシジル(メタ)アクリレート共重合体のエポキシ当量は、100〜1000g/eq.、好ましくは240〜530g/eq.、より好ましくは170〜310g/eq.である。
エポキシ当量が100g/eq.未満では、層(A)を構成する組成物中の塩化ビニル系樹脂の熱安定性が阻害され、1000g/eq.を超えると、層(B)を構成する組成物中のフッ素樹脂との接着強度が低下する。
【0021】
ここで、エポキシ当量とは、エポキシ基1モルを得るために必要な共重合体量をグラム数で表したものあり、計算式上[グリシジル(メタ)クリレートの分子量]/[グリシジル(メタ)アクリルレートの共重合体中に占める割合]で表される。
上記グリシジル(メタ)アクリレート共重合体のエポキシ当量を100〜1000g/eq.の範囲とするには、グリシジル(メタ)クリルレートが、グリシジル(メタ)アクリレート共重合体中に、約50〜99質量%程度含有されていることが必要である。
【0022】
層(A)を構成する組成物において、グリシジル基含有量は、0.5〜20質量%、好ましくは1〜10質量%である。
グリシジル基含有量が上記範囲内であると、フッ素樹脂及び不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン層との優れた接着強度を有しリサイクル性が良好な積層体を得ることができる。
【0023】
層(A)を構成する組成物において、グリシジル基樹脂の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、グリシジル基含有樹脂0.5〜50質量部、好ましくは1〜30質量部である。
特に、グリシジル基含有樹脂がエポキシ当量100〜1000g/eqのグリシジル(メタ)アクリレートの場合、該含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは2〜15質量部である。
グリシジル基含有樹脂の含有量が上記範囲内であると、フッ素樹脂及び不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン層との優れた接着強度を有しリサイクル性が良好な積層体を得ることができる。
【0024】
層(A)を構成する組成物に用いられる添加剤は、通常、塩化ビニル系樹脂組成物に用いられるものであれば特に限定されず、可塑剤、安定剤、加工助剤、衝撃改良剤、滑剤、防曇剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、無機粒子等を目的に応じて上記の特性を損なわない範囲で添加することができる。
これら添加剤の一部を例示すると、可塑剤としては、種々のアルキル鎖長や分岐構造を持ったアルキル鎖を有するフタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、ポリエステル等のエステル類化合物が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールアジピン酸エステルが好ましい。
可塑剤は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.5〜50質量部含有していることが好ましい。
【0025】
安定剤としては、2−エチルヘキシル酸、炭素数8〜22の高級脂肪酸、クエン酸、グルコン酸、ソルビン酸、安息香酸、イソデカン酸、ネオデカン酸等のカルシウム塩類、亜鉛塩類、カドミウム塩類、鉛塩類、マグネシウム塩類、バリウム塩類からなる金属石鹸系化合物が挙げられ、中でもステアリン酸カルシウムが好ましい。
また、アルキル化もしくはエステル化スズのメルカプチド類、マレエート類、カルボキシレート類等のスズ系化合物が挙げられ、更にホスファイト系化合物、エポキシ化合物、β−ジケトン系化合物、含窒素化合物、ポリオール系化合物等と併用することも可能である。
更には、三塩基性硫酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛等が挙げられる。
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ化植物油は安定剤としてだけでなく可塑剤としても有効に機能するため好ましい。
安定剤は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.1〜10.0質量部含有していることが好ましい。
【0026】
滑剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス等の炭化水素系化合物、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系化合物、脂肪酸アミド系化合物、エステル系化合物、炭素数16以上の高級アルコール系化合物、炭素数12〜30の脂肪酸から誘導される金属石鹸等が挙げられ、非酸化ポリプロピレン/低密度ポリエチレンワックスが好ましい。
滑剤は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部含有していることが好ましい。
【0027】
加工助剤としては、メチルメタクリレートやブチルメタクリレート等のアクリル酸エステルや、スチレンを含むコアシェル型ランダム共重合体が挙げられ、衝撃改良剤としてはメチルメタクリレートやブチルメタクリレート等のアクリル酸エステルや、スチレン、ブタジエン、シリコーンゴムを含むコアシェル型ランダム共重合体、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
防曇剤としては、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ヒンダートアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
帯電防止剤としては、脂肪酸アミン塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン性化合物、アルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩等のカチオン系化合物、アルキルベタイン化合物、アルキルイミダゾリン誘導体等の両性イオン化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル等の非イオン性化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ジプロピレングリコール、合成イソパラフィン石油炭化水素、トリデシルアルコール、デヒドロ酢酸等が挙げられる。
充填剤、無機粒子としてはタルク、クレイ、マイカ等のケイ酸塩、シリカ、酸化チタン等の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機化合物類と、木粉や繊維等の有機化合物類等が挙げられる。
着色剤としてはアゾ系化合物、フタロシアニン系化合物等の有機顔料や、酸化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料、キノフタリロン系化合物等の染料等が挙げられる。
【0028】
本発明の層(B)を構成する組成物は、カルボニル基含有フッ素樹脂、又はフッ素樹脂及び不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を含むものである。
ここで、カルボニル基を有する基は、カーボネート基[−OC(=O)O−]、酸無水物基[−C(=O)O−C(=O)−]を包含するものである。
【0029】
本発明の層(B)を構成する組成物において、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂に、任意の方法で、不飽和カルボン酸又はその誘導体等の酸をグラフト反応させることにより得られる樹脂を意味する。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等が用いられ、ポリプロピレンが好ましい。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又それらの酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等が挙げられ、これらのうち、無水マレイン酸を用いるのが好ましい。
【0030】
また、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂の変性部位は、赤外吸収
スペクトルにおいて、1780〜1880cm-1の間に吸収ピークを有している。
その赤外吸収スペクトルは、好ましくは、1800〜1815cm-1の間にカーボネート基に起因する吸収ピークを有し、1790〜1800cm-1の間及び1845〜1855cm-1の間に、無水マレイン酸基等の酸無水物に起因する吸収ピークを有し、或いは、1790〜1800cm-1の間、1845〜1855cm-1の間及び1800〜1815cm-1の間に、無水マレイン酸基等の酸無水物とカーボネート基の混合物に起因する吸収ピークを有している。
【0031】
また、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂の主鎖のメチレン(CH2)基に起因する2881cm-1付近における吸収ピークの高さに対する、末端カーボネート基に起因する1800〜1815cm-1の間の吸収ピークの高さの比は、1.0〜2.0、好ましくは1.2〜1.8、より好ましくは1.5〜1.7である。
【0032】
更に、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂の主鎖のメチレン(CH2)基に起因する2881cm-1付近における吸収ピークの高さに対する、無水マレイン酸基等の酸無水物に起因する1790〜1800cm-1の間の吸収ピークの高さの比は、0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.8〜1.0である。
【0033】
不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂と共に用いられるフッ素樹脂としては、上記カルボニル基含有フッ素樹脂において述べた主鎖に含フッ素単量体単位を有するポリマーが挙げられる。
【0034】
不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂の配合量は、組成物中、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂0.5〜30質量%、好ましくは2〜15質量%、より好ましくは5〜10質量%である。
不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂の配合量が上記範囲内であると、
成形加工性が良好で積層体の界面接着性が良好のものが得られる。
不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂としては、不飽和カルボン酸変性ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0035】
不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂と共に用いられるフッ素樹脂は、含フッ素モノマー単位を主鎖中に有するポリマーである。
フッ素樹脂は、更に、フッ素非含有モノマーに由来するモノマー単位を有するものであってもよいし、有しないものものであってもよい。
フッ素樹脂についての「モノマー単位」は、ポリマー分子構造の一部分であって、モノマーに由来する部分を意味する。
例えば、テトラフルオロエチレン単位は、−CF2−CF2−で表される。
【0036】
含フッ素モノマーは、フッ素原子を有する重合可能な化合物であれば特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン〔VDF〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル〔VF〕、へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、へキサフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕類、
下記一般式(i):
CH2=CX1(CF2n2 (i)
(式中、X1は水素原子又はフッ素原子を表し、X2は水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは1〜10の整数を示す。)
で表される単量体等が挙げられる。
【0037】
フッ素非含有モノマーは、フッ素原子を有さない重合可能な化合物であれば特に限定されず、例えば、エチレン〔E〕、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0038】
フッ素樹脂としては、下記共重合体(I)、下記共重合体(II)等が挙げられる。
(I)少なくとも、テトラフルオロエチレン及びエチレンを重合してなる共重合体、
(II)少なくとも、テトラフルオロエチレンと、下記一般式(ii)
CF2=CF−Rf2 (ii)
(式中、Rf2は、−CF3又は−ORf1を表し、Rf1は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を示す。)
で表される少なくとも1種以上のモノマーとを重合してなる共重合体
【0039】
共重合体(I)としては、例えば、少なくとも、テトラフルオロエチレン単位20〜80モル%及びエチレン単位80〜20モル%からなる共重合体等が挙げられる。
共重合体(I)は、主鎖中に、テトラフルオロエチレン単位とエチレン単位以外に、共重合可能なその他のモノマーに由来するモノマー単位を有するものであってもよく、その他のモノマーとしては、得られる樹脂積層体の用途に応じた種類のモノマーを適宜選択して共重合に供することができる。
その他のモノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン、トリクロロフルオロエチレン、プロピレン、
下記一般式(iii):
C(X32=CX4(CF2n5 (iii)
(式中、X3及びX4は同一又は異なって、水素原子若しくはフッ素原子を示し、X5は水素原子、フッ素原子又は塩素原子を示し、nは1〜10の整数を示す。)
で表される単量体、
下記一般式(iv):
CF2=CF−ORf1 (iv)
(式中、Rf1は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を示す。)
で表される単量体等が挙げられ、通常これらの1種又は2種以上が用いられる。
その他のモノマー単位は、共重合体(I)の分子鎖を構成するモノマー単位100モル%のうち0〜20モル%の割合で有するものであってもよい。
【0040】
フッ素樹脂としては、耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気絶縁性、薬液低透過性、非粘着性等に優れている点で、共重合体(I)が好ましく、耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気絶縁性、薬液低透過性、非粘着性、低温加工性、透明性等に優れている点で、TFE/HFP/E共重合体が好ましい。
上記TFE/HFP/E共重合体におけるHFP単位は、5〜20モル%であることが好ましく、より好ましい下限は8モル%であり、より好ましい上限は17モル%である。
また、上記TFE/HFP/E共重合体は、TFE、HFP及びEに由来する各モノマー単位に加え、TFE/HFP/E共重合体の好ましい性質を損なわない範囲で、HFP単位以外の上記その他のモノマーを1種又は2種以上有するものであってもよい。
【0041】
フッ素樹脂としては、へキサフルオロプロピレン〔HFP〕/フッ化ビニリデン〔VDF〕系共重合体、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/へキサフルオロプロピレン〔HFP〕/フッ化ビニリデン〔VDF〕系共重合体、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/フッ化ビニリデン〔VDF〕系共重合体等が好ましい。
【0042】
本発明の層(B)を構成する組成物において、カルボニル基含有フッ素樹脂は、カルボニル基[−C(=O)]、カルボニル基を有する基又は結合等を有するフッ素樹脂が挙げられ、これらの反応性部位であるカルボニル基は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0043】
カルボニル基を有する基又は結合としては、例えば、カーボネート基[−OC(=O)O−]、ハロゲノホルミル基、ホルミル基、カルボキシル基、カルボニルオキシ基[−C(=O)O−]、酸無水物基[−C(=O)O−C(=O)−]、イソシアネート基、アミド基[−C(=O)−NH−]、イミド基[−C(=O)−NH−C(=O)−]、ウレタン結合[−NH−C(=O)O−]、カルバモイル基[NH2−C(=O)−]、カルバモイルオキシ基[NH2−C(=O)O−]、ウレイド基[NH2−C(=O)−NH−]、オキサモイル基[NH2−C(=O)−C(=O)−]等が挙げられる。
上記カルボニル基を有する基又は結合としては、導入が容易であり、反応性が高い点から、カーボネート基、ハロゲノホルミル基等が好ましい。
【0044】
カーボネート基は、[−OC(=O)O−]で表される結合を有する基であり、−OC(=O)O−R基(式中、Rは有機基、周期律表第I族原子、II族原子又はVII族原子を示す。)で表される。
式中のRである有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、エーテル結合を構成する酸素分子を有する炭素数2〜20のアルキル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、エーテル結合を構成する酸素分子を有する炭素数2〜4のアルキル基等である。
その具体例としては、例えば、−OC(=O)O−CH3、−OC(=O)O−C37、−OC(=O)O−C817、−OC(=O)O−CH2CH2OCH2CH3等が挙げられる。
【0045】
ハロゲノホルミル基は、−COY(式中、Yは、周期律表VII族原子を示す。)で表されるものであり、−COF、−COCl等が好ましい。
【0046】
カルボニル基含有フッ素樹脂において、カルボニル基の含有量は、1〜15質量%、好ましくは3〜10質量%である。
カルボニル基の含有量が上記範囲内であると、塩化ビニル系樹脂及びグリシジル含有樹脂層との優れた接着強度を有しリサイクル性が良好な積層体を得ることができる。
【0047】
本発明のカルボニル基含有フッ素樹脂は、通常、重合によりフッ素樹脂を製造するに際し、反応部位であるカルボニル基を導入することにより得ることができる。
上記フッ素樹脂としては、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂と共に用いられるフッ素樹脂を挙げることができる。
カルボニル基を導入する方法としては特に限定されず、例えば、(1)カルボニル基含有単量体を共重合する方法、(2)乳化重合等の水性媒体中での重合において、ポリマー鎖末端にカルボキシル基、カーボネート基等の重合開始剤に由来する官能基を導入する方法等が挙げられる。
上記(1)の方法としては、例えば、カルボニル基含有単量体を、目的の溶融加工性を有するフッ素樹脂(塩化ビニル樹脂の加工温度で加工できるフッ素樹脂)に応じた種類と配合量の含フッ素単量体と、所望によりフッ素非含有単量体とを公知の方法により共重合させることによって得ることができる。
【0048】
上記カルボニル基含有単量体としては、例えば、カルボニル基を有する基又は結合である場合、パーフルオロアクリル酸フルオライド、1−フルオロアクリル酸フルオライド、アクリル酸フルオライド、1−トリフルオロメタクリル酸フルオライド、パーフルオロブテン酸等のフッ素を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸クロライド、ビニレンカーボネート等のフッ素を有さない単量体が挙げられる。
カーボネート基を導入するために用いられる重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0049】
カルボニル基含有フッ素樹脂としては、カーボネート基含有テトラフルオロエチレン〔TFE〕/へキサフルオロプロピレン〔HFP〕/エチレン〔Et〕系共重合体が好ましい。
【0050】
層(B)を構成する組成物において、カルボニル基含有量は、0.5〜20質量%、好ましくは1〜10質量%である。
ここで、上記のように、カルボニル基には、カーボネート基、酸無水物基が包含されるものである。
カルボニル基含有量が上記範囲内であると、塩化ビニル系樹脂及びグリシジル含有樹脂層との優れた接着強度を有しリサイクル性が良好な積層体を得ることができる。
【0051】
本発明の層(B)を構成する組成物には、通常、フッ素樹脂に配合される添加剤を配合してもよい。
【0052】
本発明の層(A)を構成する組成物及び層(B)を構成する組成物は、ブレンダー及びヘンシェルミキサー等を用いて調製される。
上記組成物を用いて、押出成形、カレンダー成形、プレス成形法、連続プレス成形、射出成形等により、フィルム、シート、板材、パイプ、異型品等の本発明の樹脂積層体に加工することができる。
上記層(A)を構成する組成物の調製及び樹脂積層体の製造は、塩化ビニル系樹脂の加工温度領域である220℃以下でなされる。
【0053】
本発明の樹脂積層体において、層(A)の厚さは、通常、0.01〜100mm、好ましくは0.5〜50mm、好ましくは1〜10mmである。
層(A)の厚さが上記範囲内であると、成形加工性を悪化させずに塩化ビニル樹脂物性を発現できる。
また、層(B)の厚さは、通常、0.001〜10mm、好ましくは0.05〜5mm、好ましくは0.10〜1mmである。
層(B)の厚さが上記範囲内であると、フッ素樹脂の有する機能を良好に発現できる。
層(A)と層(B)があればその間に何層あってもかまわない。
また、本発明の樹脂積層体の厚みは、樹脂積層体の用途により異なるが、フィルムやシートとして用いられる際は、0.03〜3.0mm程度である。プレートやパイプとして用いられる際は 1.0〜100mm程度である。
【0054】
上記のようにして得られた本発明の層(A)及び層(B)からなる樹脂積層体は、樹脂積層体界面の引張剪断強度が母材強度以上である。
また、本発明の樹脂積層体は、塩化ビニル系樹脂の力学物性とフッ素系樹脂の表面特性を兼ね備えた特徴を有する。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で用いた成分は、下記のとおりである。
[層(A)を構成する組成物の成分]
・PVC:塩化ビニル単独重合体;平均重合度1030、ヴィテック社製、商品名PVC1100
・GMA/MMA:グリシジルメタクリレート/メチルメタアクリレート共重合体;グリシジル基含有量98質量%、エポキシ当量170g/eq.、三菱レイヨン株式会社製、商品名KP6562
・GMA/PVC:グリシジルメタクリレート/塩化ビニル共重合体;グリシジル基含有量8質量%、日本ゼオン株式会社製、商品名MR−110
・可塑剤:1,4−ブタンジオールアジピン酸エステル、DIC株式会社製、商品名W1410EL
・安定剤1:三塩基性硫酸鉛;堺化学株式会社製、商品名TL5000
・安定剤2:二塩基性ステアリン酸鉛;堺化学株式会社製、商品名DSL
・安定剤3:ステアリン酸カルシウム;堺化学株式会社製、商品名SC100
・滑剤:非酸化ポリプロピレン−低密度ポリエチレンワックス;三井化学株式会社製、商品名ハイワックスNL800
【0056】
[層(B)を構成する組成物の成分]
・ETFE:エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体;カルボニル基含有量0質量%、ダイキン株式会社製、商品名ネオフロンETFE
・EFEP:カーボネート基含有エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体;カーボネート基含有量3質量%、ダイキン株式会社製、商品名ネオフロン4020
・PVDF:ポリフッ化ビニリデン;クレハ株式会社製;カルボニル基含有量0質量%、商品名W1000
・VDF/HFP:フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体;カルボニル基含有量0質量%、アルケマ株式会社製、商品名KYNAR2801
・THV:フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体;カルボニル基含有量0質量%、アルケマ株式会社製、商品名KYNAR9301
・不飽和カルボン酸変性PP:無水マレイン酸変性ポリプロピレン;無水マレイン酸基含有量 8質量%、三井化学株式会社製、商品名NP005−1A
【0057】
[接着層の成分]
・接着剤1:エポキシ・ウレタン系樹脂;セメダイン株式会社製、商品名EP001、塩化ビニル樹脂とフッ素樹脂との化学反応あり
・粘着材1:軟質アクリル樹脂;三菱レイヨン株式会社製、商品名W341、樹脂間での化学反応なし
・接着剤2:ポリエステル系樹脂;旭硝子株式会社製、商品名AG9100、塩化ビニル樹脂とフッ素樹脂との化学反応あり
【0058】
実施例1〜8、比較例1〜9
表1及び2に記した各成分及び添加剤の配合量(質量部)をヘンシェルミキサーに投入し、100℃にて3分間攪拌を行うことにより、層(A)用の組成物を調製した。
表1及び2に記した各成分及び添加剤の配合量(質量部)をタンブラーミキサーに投入し、23℃にて10分間攪拌を行うことにより、層(B)用の組成物を調製した。
層(A)用の組成物を、それぞれ、200℃でロール成形し、プレス機にて3mmのシートを得た。
層(B)用の組成物を、それぞれ、200℃粉体プレス成形し、100μmのシートを得た。
得られた層(A)のシートと層(B)のシートを重ね合わせ200℃、成形圧100Kg/cm2で10分間プレスし、樹脂積層体〔層(A)の厚さ:3mm、層(B)の厚さ:100μm)を得た。
なお、樹脂積層体に接着剤層を設ける際は、層(A)のシートに、接着剤を厚さ75μmにロール塗工し、乾燥後、成形圧100Kg/cm2で10分間プレスした。
また層(A)のシートに200℃粉体プレス成形した75μmのシート状の粘着材を成形圧100Kg/cm2で10分間プレスした。
各例で使用した層(A)及び層(B)用の組成物の特性、得られた樹脂積層体の特性を以下に示す方法に従って求めた。
その結果を表1及び2に示す。
【0059】
(官能基含有量)
層(A)及び層(B)用の組成物をロールプレス成形し、厚さ0.05〜0.2mmのフィルムを作製した。
得られたフィルムについて、Perkin−Elmer FTIRスペクトロメーター1760X(Perkin−Elmer社製)を用いて40回スキャンして、赤外吸収スペクトル分析を行い、各官能基含有量(質量%)を算出した。
1.グリジシル基
1790〜1800cm-1の間及び1845〜1855cm-1の間の吸収ピークを用い算出した。
2.カルボニル基
・カーボネート基
1800cm-1〜1815cm-1の間の吸収ピークを用い算出した。
・無水マレイン酸基
1790〜1800cm-1の間及び1845〜1855cm-1の間の吸収ピークを用い算出した。
【0060】
(成形加工性)
層(A)及び層(B)用の組成物について、190℃、押出成形法でシート成形し、以下の基準で成形加工性を判定した。
○:シート外観が良好であったもの
×:シート採取ができなかったもの
(界面接着性)
上記の押出成形で得られた層(A)のシートと層(B)のシートを重ね合わせ200℃、成形圧100Kg/cm2で10分間プレスし、樹脂積層体〔層(A)の厚さ:3mm、層(B)の厚さ:100μm 構成
層A/層B/層A)を得た。得られた積層体のシートについて、幅25mm幅に切り出し、その端の層(A)と層(B)とを刃物を用いて剥離して、両方の層(A)について掴みしろを作り、万能引張試験機を用いて10mm/分の速度で180度方向に引っ張り、引張剪断強度を測定し、以下の基準で層(A)と層(B)間の界面接着性を判定した。
○:界面接着性が良好〔層(A)と層(B)が剥離せず、シートが破れたもの、すなわち、引張剪断強度が母材の強度以上のもの〕
×:界面接着性が不良〔層(A)と層(B)が剥離したもの〕
【0061】
(リサイクル性)
上記の樹脂積層体のシートについて、これを粉砕し、A層組成物において190℃、押出成形法でシート成形しその際の積層体シート粉砕物の分散状態を目視で判定し外観の判定をおこなった。
またその押出シート(再生A層)と層(B)のシートを重ね合わせて200℃、成形圧100Kg/cm2で10分間プレスし、樹脂積層体〔層(A)の厚さ:3mm、層(B)の厚さ:100μm 構成層A/層B/層A)を得た。
得られた積層体のシートについて、幅25mm幅に切り出し、その端の層(A)と層(B)とを刃物を用いて剥離して、両方の層(A)について掴みしろを作り、万能引張試験機を用いて10mm/分の速度で180度方向に引っ張り、引張剪断強度を測定し、以下の基準で層(A)と層(B)間の界面接着性を評価し物性の判定を行った。
このようして得られた樹脂積層体のシートの外観及び物性を測定することにより、リサイクル性を評価した。
○:リサイクル性が良好
〔外観良好、引張強度がリサイクル前の70%以上〕
×:リサイクル性が不良
〔外観不良、引張強度がリサイクル前の70%未満〕
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の樹脂積層体は、塩化ビニル系樹脂の力学物性とフッ素系樹脂の表面特性を兼ね備えた特徴を有し、各種成形法により、フィルム、シート、板材、パイプ、異型品等に加工することができ、殺菌消毒装置、半導体装置、上下水道装置、表面装飾材、壁装材等の分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂及びグリシジル基含有樹脂を含む組成物よりなる層(A)とカルボニル基含有フッ素樹脂、又はフッ素樹脂及び不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物よりなる層(B)からなる樹脂積層体。
【請求項2】
層(A)を構成する組成物のグリシジル基含有量が0.5〜20質量%、及び、層(B)を構成する組成物のカルボニル基含有量が0.5〜20質量%である請求項1に記載の樹脂積層体。
【請求項3】
層(A)を構成する組成物において、グリシジル基含有樹脂が塩化ビニル/アリルグリシジルエーテル共重合体及び/又は塩化ビニル/メタリルグリシジルエーテル共重合体である請求項1又は2に記載の樹脂積層体。
【請求項4】
層(A)を構成する組成物において、グリシジル基含有樹脂がエポキシ当量100〜1000g/eqのグリシジル(メタ)アクリレート共重合体であって、その配合量が塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、グリシジル基含有樹脂0.5〜30質量部である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂積層体。
【請求項5】
層(B)を構成する組成物において、カルボニル基含有フッ素樹脂が、カーボネート基含有テトラフルオロエチレン〔TFE〕/へキサフルオロプロピレン〔HFP〕/エチレン〔E〕系共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂積層体。
【請求項6】
層(B)を構成する組成物において、フッ素樹脂及び不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物のフッ素樹脂がへキサフルオロプロピレン〔HFP〕/フッ化ビニリデン〔VDF〕系共重合体、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/へキサフルオロプロピレン〔HFP〕/フッ化ビニリデン〔VDF〕系共重合体及びテトラフルオロエチレン〔TFE〕/フッ化ビニリデン〔VDF〕系共重合体から選ばれる樹脂であるとともに組成物中の不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂の配合量が0.5〜30質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂積層体。

【公開番号】特開2010−58438(P2010−58438A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228295(P2008−228295)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】