説明

樹脂組成物およびそれを用いた記録材

下記の一般式(I)
【化1】


(Rは炭素数1または2のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜100の整数である。)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(A)および平均粒子径が1μm以上である非晶性シリカ(B)からなる樹脂組成物であり、(A)と(B)の合計100重量部に対し、(A)を10〜50重量部、(B)を50〜90重量部含有する樹脂組成物によって、低粘度かつ高濃度の分散液を得ることが容易であり、当該分散液を基材に塗工した際に、インク吸収性、滲み防止性および接着強度が優れる記録材が得られる樹脂組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(A)および平均粒子径が1μm以上である非晶性シリカ(B)からなる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコールで代表されるビニルアルコール系重合体(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある)は水溶性の合成高分子として知られており、その強度特性を利用して合成繊維ビニロンの原料に用いられ、また、その優れた皮膜形成能、界面活性能、水素結合形成能などの特徴を利用して紙加工剤、繊維用糊剤、分散剤、接着剤およびフィルムなどに利用されている。中でも紙加工用途に関してビニルアルコール系重合体は、一般紙の表面サイズ剤、アート紙・コート紙のアンダーサイズ剤、蛍光染料の分散剤、インクジェット記録材における充填材のバインダーなどとして、印刷物の品質向上のために利用されている。
【0003】
最近では、インクジェットプリンターの利用が拡大し、商業印刷におけるカラープルーフ、デザイン分野におけるデザインイメージ出力、オーバーヘッドプロジェクターの原稿などにインクジェット記録材が使用されている。これらインクジェト記録材としては、マットタイプのインクジェット記録材、光沢タイプのインクジェット記録材に大別される。
【0004】
マットタイプのインクジェット記録材は、紙またはフィルムなどの基材の表面にインク受理層を設けたものであり、インク受理層の構成物質としては、主としてインク吸収機能を有する多孔性フィラーと親水性バインダーから構成されている。このマットタイプのインクジェット記録材に要求される特性としては、インク受理層が十分な接着強度を有しシリカの脱落が少ないこと、インク吸収性が高いこと、印字後の滲みが少ないことなどが挙げられる。
【0005】
マットタイプのインクジェット記録材への上記要求に対し、多孔質フィラーとしてゲル状シリカもしくは沈降性シリカを用い、親水性バインダーとしてはポリビニルアルコールを含有する、インク受理層を設けた記録材が知られている(特許文献1)。前記記録材は、好ましくはシリカおよびポリビニルアルコールからなるコーティング剤を基材に塗工して得られる。
【0006】
この他の従来技術として、塗工性に優れ、かつ加工後の表面光沢性を向上させることのできる紙用加工剤として、オキシアルキレン基を有するビニルエステル系樹脂を主剤としてなる紙用加工剤が知られている(特許文献2)。また、インク受理性、にじみ防止性、光沢性、耐候性等の印刷適正に優れた記録シート用樹脂組成物として、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂(A)及びカチオン性基含有ポリビニルアルコール系樹脂(B)を含有してなる樹脂組成物が知られている(特許文献3)。さらに、印字後の耐水性に優れ、かつ長期間保存してもコーティング層のインク受理性能が低下しないインクジェット用記録シートとして、アミノ基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(A)およびオキシアルキレン基を含有する樹脂組成物を支持基材中または支持基材表面に有してなるインクジェット用記録シートが開示されている(特許文献4)。
【0007】
しかしながら、従来のインクジェット記録材およびそれに用いられる樹脂組成物には、幾つかの問題点が残されている。すなわち、上述のように記録材は好適には基材にコーティング剤を塗工することによって得られるが、ポリビニルアルコールおよびシリカからなる樹脂組成物を含むコーティング剤は増粘しやすく、高濃度化が難しかった。このため、前記コーティング剤を塗工後の乾燥工程で多量の水を蒸発させる必要があり、乾燥負荷が大きくなるという問題点がある。また、従来のインクジェット記録材は、インク吸収性および滲み性に更なる改良の余地があった。さらに、ロール状に巻き取られたインクジェット記録材をシート状に裁断する工程では、脱落したシリカ紛による品質低下を起こす場合があり、シリカの脱落を効果的に抑制するためには、インク受理層中のシリカ同士およびインク受理層と基材とを強固に接着する必要がある。しかしながら、従来のインクジェット記録材では、充分な接着強度が得られていなかった。
【0008】
【特許文献1】特開平10−175369号公報
【特許文献2】特開昭60−181398公報
【特許文献3】特開2003−26885公報
【特許文献4】特開2003−154746公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、低粘度かつ高濃度の分散液を得ることが容易であり、当該分散液を基材に塗工した際に、インク吸収性、滲み防止性および接着強度が優れる記録材が得られる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記課題は、下記の一般式(I)
【0011】
【化1】

(Rは炭素数1または2のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜100の整数である。)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(A)および平均粒子径が1μm以上である非晶性シリカ(B)からなる樹脂組成物であり、(A)と(B)の合計100重量部に対し、(A)を10〜50重量部、(B)を50〜90重量部含有する樹脂組成物によって解決されることが見出された。
【0012】
このとき、前記ビニルアルコール系重合体(A)中の全単量体単位に対するポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)が0.01〜1モル%であることが好適である。より好適な実施態様では、前記ビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度Pと、前記ビニルアルコール系重合体(A)中の全単量体単位に対するポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)との積P×Sが下記式(1)を満足する。
5<P×S<1500 (1)
【0013】
またこのとき、前記ビニルアルコール系重合体(A)が、前記一般式(I)におけるRがメチル基であり、Rが炭素数1〜4のアルキル基であるポリオキシプロピレン基を有する単量体単位を含有することも好適な実施態様である。より好適な実施態様では、Rがメチル基であり、Rがメチル基である。別の好適な実施態様では、前記ビニルアルコール系重合体(A)が、前記一般式(I)におけるRがメチル基であり、Rが水素原子であるポリオキシプロピレン基を有する単量体単位を含有する。
【0014】
本発明の好適な実施態様では、前記非晶性シリカ(B)が、沈降性シリカまたはゲル状シリカである。また、前記樹脂組成物がさらにカチオン性重合体(C)を含有することが好適な実施態様である。また、本発明の樹脂組成物は記録材として好適に用いられる。
【0015】
本発明の好適な実施態様は、上記一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(A)および平均粒子径が1μm以上である非晶性シリカ(B)を含む水性分散液であり、(A)と(B)の合計100重量部に対し、(A)を10〜50重量部、(B)を50〜90重量部含有するコーティング剤である。このとき、固形分濃度が10〜30重量%であることが好適である。
【0016】
また、本発明の好適な実施態様は上記コーティング剤を塗工してなる塗工物である。具体的には、前記コーティング剤を基材に塗工してなる記録材であり、より好適にはインクジェット記録材である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の樹脂組成物からなるコーティング剤を基材に塗工してなる記録材、より好適にはインクジェット記録材は、インク吸収性および滲み防止性のみならず、接着強度に優れているため、インク受理層中のシリカ同士およびインク受理層と基材とが強固に接着し、シリカの脱落が原因となるトラブル発生を効果的に抑制することが可能であり、高い工業的価値を有している。また、本発明の樹脂組成物は、低粘度かつ高濃度の分散液が得られ易いので、乾燥時の乾燥負荷も低減できる。そのため、コーティング剤としての性能に優れており、前記コーティング剤を基材に塗工してなる塗工物として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)は、上記したように、下記の一般式(I)
【0019】
【化2】

(Rは炭素数1または2のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜100の整数である。)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体である。前記ポリオキシアルキレン基のRとしては、本発明の樹脂組成物を溶液とした時の粘度を低下させられる観点から、メチル基であることが好ましい。また、一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基のRとしては水素原子およびメチル基であることが好ましく、より強力な接着強度を得る観点からは、メチル基であることがより好ましい。
【0020】
本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)においては、ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位中のオキシアルキレン繰返し単位の数nは1〜100の整数である。オキシアルキレン繰返し単位の数nが100を超える場合には、前記ビニルアルコール系重合体(A)の水への溶解性が低くなり、本発明の樹脂組成物からなる分散液の安定性が不充分になる。前記nは、5<n<80を満たすことが好ましく、8<n<50を満たすことがより好ましく、10<n<40を満たすことがさらに好ましく、15<n<35を満たすことが特に好ましい。オキシアルキレン繰返し単位の数nが5を超える場合、接着強度に優れ、かつ高濃度化した場合にも粘度の低い分散液を得ることができる。
【0021】
本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度P(以下、重合度と略記する)には特に制限はないが、通常50〜10000であり、好ましくは100〜8000であり、より好ましくは300〜5000である。本発明の好適な実施態様は、本発明の樹脂組成物からなるコーティング剤を塗工してなる塗工物でありより具体的には、前記コーティング剤を基材に塗工してなる記録材であるが、前記ビニルアルコール系重合体(A)の重合度が50未満の場合には、非晶性シリカ(B)同士のバインダーとしての接着強度および基材との接着強度が充分に得られない虞がある。一方、前記ビニルアルコール系重合体(A)の重合度が10000を超える場合には、本発明の樹脂組成物からなるコーティング剤を高濃度化した場合に、コーティング剤の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になる虞があり、かつ、前記コーティング剤を基材に塗工する際に均一な塗工層が得られにくくなる恐れがある。
【0022】
本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)において、一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン単位を有する単量体単位の含有量S(モル%)は、ビニルアルコール系重合体の全単量体単位に対して0.01〜1モル%であることが好ましい。本発明の樹脂組成物において、より優れた接着強度を得る観点からは、前記ポリオキシアルキレン単位を有する単量体単位の含有量S(モル%)の下限は、0.03モル%以上であることがより好ましく、0.05モル%以上であることがさらに好ましく、0.07モル%以上であることが特に好ましく、0.08モル%以上であることが最も好ましい。一方、本発明の樹脂組成物からなるコーティング剤を高濃度化した場合における粘度低減の効果を重視する場合は、前記含有量S(モル%)の上限は0.9モル%以下であることがより好ましく、0.8モル%以下であることがさらに好ましく、0.6モル%以下であることが特に好ましく、0.4モル%以下であることが最も好ましい。
【0023】
また、本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度Pとポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)の積(P×S)が、下記式(1)を満足することが好ましい。
5<P×S<1500 (1)
前記P×Sが5を超えるビニルアルコール系重合体(A)を用いることにより、より接着強度に優れた樹脂組成物を得ることができる。また、前記P×Sが1500未満のビニルアルコール系重合体(A)を用いることにより、本発明の樹脂組成物からなるコーティング剤を高濃度化した際の、粘度低下効果をより顕著に奏することができる。
前記P×Sは、下記式(1’)を満足することがより好ましい。
50<P×S<1000 (1’)
また、前記P×Sは、下記式(1’’)を満足することがさらに好ましい。
100<P×S<800 (1’’)
【0024】
本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)のけん化度には特に制限はないが、80〜99.99モル%であることが好ましく、85〜99.9モル%であることがより好ましく、88〜99.5モル%であることがさらに好ましい。該ビニルアルコール系重合体(A)のけん化度が80モル%未満の場合またはけん化度が99.99モル%より大きい場合には、ビニルアルコール系重合体(A)の水に対する溶解性が低下し、その結果、本発明の樹脂組成物からなるコーティング剤の取扱いが困難になる虞がある。
【0025】
本発明で用いられる、上述の一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(A)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化する方法が挙げられる。ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体の製造方法としては、ポリオキシアルキレン基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体とを共重合する方法が好ましい。
【0026】
一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を有する不飽和単量体としては、下記の一般式(II)で示される不飽和単量体が挙げられる。
【0027】
【化3】

(Rは炭素数1または2のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aはカルボニルオキシ基を表し、カルボニルイミノ基、オキシ基、アルキレンオキシ基などの2価の連結基を表す。)
【0028】
一般式(II)で示される不飽和単量体のRとしてはメチル基が好ましい。また、一般式(II)で示される不飽和単量体のRとしては水素原子、メチル基およびブチル基が好ましく、水素原子およびメチル基がより好ましい。さらに、一般式(II)で示される不飽和単量体のRがメチル基であり、Rがメチル基であることが特に好ましい。
【0029】
例えば、一般式(II)のRが水素原子の場合、一般式(II)で示される不飽和単量体として具体的には、ポリオキシプロピレンモノアクリレート、ポリオキシプロピレンモノメタクリレート、ポリオキシプロピレンモノアクリル酸アミド、ポリオキシプロピレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメタアリルエーテル、ポリオキシプロピレンモノビニルエーテル、ポリオキシブチレンモノアクリレート、ポリオキシブチレンモノメタクリレート、ポリオキシブチレンモノアクリル酸アミド、ポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシブチレンモノアリルエーテル、ポリオキシブチレンモノメタアリルエーテル、ポリオキシブチレンモノビニルエーテルなどが挙げられる。なかでも、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテル、ポリオキシブチレンモノアリルエーテルが好適に用いられ、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテルが特に好適に用いられる。
【0030】
一般式(II)のRが炭素数1〜4のアルキル基の場合、一般式(II)で示される不飽和単量体として具体的には、上記の一般式(II)のRが水素原子の場合に例示した不飽和単量体の末端のOH基が炭素数1〜4のアルコキシ基に置換されたものが挙げられる。なかでも、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテルまたはポリオキシブチレンモノアリルエーテルの末端のOH基がメトキシ基に置換された不飽和単量体が好適に用いられ、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテルの末端のOH基がメトキシ基に置換された不飽和単量体が特に好適に用いられる。
【0031】
ビニルエステル系単量体としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルなどが挙げられるが、一般に酢酸ビニルが用いられる。
【0032】
一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体とを共重合するに際しては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法を採用することができる。その中でも、無溶媒で重合する塊状重合法、またはアルコールなどの溶媒中で重合する溶液重合法が通常採用され、高重合度の重合体を得る場合には乳化重合法が採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールが挙げられ、これらの中でメタノールが好適に用いられる。重合に使用される開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤、または過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤など、公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、−30〜150℃の範囲が適当である。
【0033】
上記一般式(II)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体とを共重合させることにより、下記一般式(III)で示される単量体単位を含有するビニルエステル系重合体が得られる。前記ビニルエステル系重合体は、後述の方法に従ってビニルアルコール系重合体へと導かれる。すなわち、本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)は、好ましくは下記一般式(III)で示される単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体である。
【0034】
【化4】

(Rは炭素数1または2のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aはカルボニルオキシ基を表し、カルボニルイミノ基、オキシ基、アルキレンオキシ基などの2価の連結基を表す。)
【0035】
ビニルエステル系重合体のけん化方法としては、従来公知の方法のいずれもが好適に用いられるが、通常は、ビニルエステル系重合体のアルコール溶液にアルカリ性触媒または酸性触媒を用いてけん化する方法が採用される。けん化溶媒に用いられるアルコールとしてはメタノールが好適である。また、けん化溶媒としては、無水物のみならず少量の水を含むものも目的に応じて用いられるほか、酢酸メチル、酢酸エチルなどその他の有機溶媒を含有したものでもよい。けん化温度は通常10〜70℃の範囲から選ばれる。けん化触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドなどのアルカリ性触媒が好ましい。けん化触媒の使用量は、目的とするけん化度の大小および水分量などにより適宜決められるが、重合体中のビニルエステル単位に対してモル比で0.001以上、好ましくは0.002以上であることが望ましい。
【0036】
本発明に用いられる非晶性シリカ(B)としては、沈降性シリカまたはゲル状シリカを用いることが好ましい。前記非晶性シリカ(B)は、ケイ酸ソーダと硫酸等の酸を反応させることで得られる。この反応時の温度、濃度などの反応条件の調整により、沈降性シリカないしはゲル状シリカを選択製造することができる。一般的に、沈降性シリカは内部表面積が小さく、高吸油性という特徴があり、ゲル状シリカは内部表面積と細孔容積が大きいという特徴がある。
【0037】
本発明に用いられる非晶性シリカ(B)の平均粒子径としては、1μm以上であることが必須である。平均粒子径が1μmより小さい場合は、接着強度、インク吸収性および滲み防止性がバランス良く優れるという本発明の効果を奏することができない。非晶性シリカ(B)の平均粒子径としては、2〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。平均粒子径が15μmを超えると、粒子間に形成される空隙が大きすぎる為、インクジェット記録材の印字濃度が低下する虞がある。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、前記ビニルアルコール系重合体(A)および前記非晶性シリカ(B)からなり、(A)と(B)の合計100重量部に対し、(A)を10〜50重量部、(B)を50〜90重量部含有する。この樹脂組成物を(A)および(B)のみからなると仮定し、重量%基準に換算すると、(A)10〜50重量%および(B)50〜90重量%となる。前記(A)および(B)の配合量としては、(A)15〜45重量部および(B)55〜85重量部であることがより好ましく、(A)20〜40重量部および(B)60〜80重量部であることがさらに好ましい。前記ビニルアルコール系重合体(A)の含有量が10重量部に満たない場合または前記非晶性シリカ(B)の含有量が90重量部を超える場合は、充分な接着強度が得られない。一方、前記ビニルアルコール系重合体(A)の含有量が50重量部を超える場合または前記非晶性シリカ(B)の含有量が50重量部に満たない場合は、本発明の樹脂組成物を記録材(特に好適にはインクジェット記録材)に用いる際に、インク吸収性が不充分になる。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、上述の通り好適には記録材として用いられ、特に好適にはインクジェット記録材として用いられるが、その際、本発明の樹脂組成物に、カチオン性重合体(C)を配合することも好ましい。カチオン性重合体(C)を配合することにより、滲み防止性の効果をさらに顕著に奏することができる。前記カチオン性重合体(C)とは、カチオン化密度が2meq/g以上の重合体である。かかる重合体としては、例えば、水に溶解したときに離解してカチオン性を呈する1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーからなり、これらの中でもオリゴマーまたはポリマーが好ましい。本発明に用いられる具体的なカチオン性重合体(C)としては、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、ポリビニルアミン共重合体、ポリアリルアミン共重合体、ジアリル・ジメチル・アンモニウムクロライド共重合体、ポリエチレンイミン、カチオン基含有変性ポリビニルアルコールなどが例示されるが、これらに制限されるものではない。前記カチオン性重合体(C)の配合量は、前記ビニルアルコール系重合体(A)および前記非晶性シリカ(B)の合計重量100重量部に対して、0.5〜15重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10重量部である。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、好適にはコーティング剤として用いられる。より好適には、本発明の樹脂組成物は、前記ビニルアルコール系重合体(A)、前記非晶性シリカ(B)および水からなる水性分散液でなるコーティング剤として用いられる。すなわち、本発明の好適な実施態様は、上記一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(A)および平均粒子径が1μm以上である非晶性シリカ(B)を含む水性分散液であり、(A)と(B)の合計100重量部に対し、(A)を10〜50重量部、(B)を50〜90重量部含有するコーティング剤である。前記コーティング剤の固形分濃度は特に限定されないが、好ましくは10〜30重量%である。低粘度かつ高濃度の分散液が得られることにより乾燥時の乾燥負荷が低減できるという本発明の効果を顕著に得るためには、前記コーティング剤の濃度の下限は10重量%以上であることが好ましく、13重量%以上であることがより好ましく、16重量%以上であることがさらに好ましく、18重量%以上であることが特に好ましい。一方、コーティング剤の取り扱い性の観点からは、前記コーティング剤の固形分濃度の上限は30重量%以下であることが好ましく、28重量%以下であることがより好ましく、25重量%以下であることがさらに好ましく、23重量%以下であることが特に好ましい。
【0041】
また前記コーティング剤を塗工してなる塗工物も本発明の好適な実施態様であり、前記塗工物はより好適には記録材として用いられる。前記記録材は、好ましくはインクジェット記録材または感熱記録材として用いることが好ましく、特にインクジェット記録材として用いることが好ましい。
【0042】
また、本発明の樹脂組成物からなる記録材も本発明の好適な実施態様であり、より具体的には、前記ビニルアルコール系重合体(A)、前記非晶性シリカ(B)および水からなる水性分散液を抄紙してなる記録材である。
【0043】
本発明の樹脂組成物をインクジェット記録材として用いる場合、本発明の樹脂組成物は単独で使用してもよく、他の水溶性または水分散性樹脂と併用してもよい。本発明の樹脂組成物と併用することができる水溶性樹脂としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、カチオン化でんぷん、アラビヤゴム、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性メラミン樹脂などが挙げられる。また、本発明の樹脂組成物と併用することができる水分散性樹脂としては、SBRラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体エマルジョン、(メタ)アクリルエステル系エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョンなどが挙げられる。
【0044】
上記の記録材に用いられる基材としては、従来公知の透明性または不透明性の基材がいずれも使用できる。透明性の基材としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリイミド、セロハン、セルロイドなどのフィルム、シート、または透明性の高い紙などが挙げられる。不透明性の基材としては、一般の紙、顔料コート紙(アート紙、コート紙、キャストコート紙)、布、木材、金属板、合成紙、不透明化処理した合成樹脂系フィルムまたはシートなどが挙げられる。これらの基材の中でも、特に紙を基材とすることが好ましい。
【0045】
上記の記録材を製造する方法としては、本発明の樹脂組成物および、必要に応じてインクの定着剤などを、水性媒体に分散させてコーティング剤を調製し、得られたコーティング剤を従来公知のサイズプレス、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、キャストコーターなどを用いて基材に塗工する方法が挙げられる。ここで、塗工温度については特に制限は無いが、10℃〜60℃であることが好ましく、より好ましくは20℃〜60℃、さらに好ましくは30℃〜50℃である。また、基材が紙である場合には、上述の通り、抄紙時に本発明の樹脂組成物および水からなる水性分散液を内添する方法も使用できる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中、特に断りのない限り「%」及び「部」は重量基準であり、「重合度」は粘度平均重合度である。
【0047】
I.PVAの製造と評価
下記の方法によりPVAを製造し、その重合度P、けん化度、ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)を求めた。
【0048】
[重合度およびけん化度]
PVAの重合度およびけん化度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
【0049】
[ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量]
ビニルエステル系重合体をけん化することにより得られたゲル状物を粉砕後、メタノールによるソックスレー洗浄を3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製PVAを得た。該精製PVAを重水溶媒に溶解したものを測定試料とし、500MHzのプロトンNMR測定装置(JEOL製;GX−500)を用いたNMRスペクトル測定から、ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)を求めた。
【0050】
PVA−1
還流冷却器、撹拌機、温度計、窒素導入管、後添加液用の仕込み口およびポンプを備えた6リットルの反応器に、酢酸ビニル2232g、メタノール248g、一般式(II)におけるRがメチル基であり、Rが水素原子であり、Rが水素原子であり、Aがメチレンオキシ基であり、オキシアルキレン繰返し単位の平均値nが24であるポリオキシプロピレン基を有する不飽和単量体(ポリオキシプロピレンモノアリルエーテル(以下、POPMAと略記する))190gを仕込んだ。重合液を撹拌しながら、系内を窒素置換した。重合液を加温し、60℃で恒温状態になった時点で、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記する)2.7gを添加して重合を開始した。重合開始時点より系内の固形分濃度を分析しつつ重合を行い、1.8時間後に反応器を冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。得られた重合ペーストをn−ヘキサン中に滴下して重合体を析出させた。析出した重合体を回収してアセトンに溶解し、n−ヘキサン中で析出させる再沈−精製操作を3回実施した。さらに重合体をアセトンに溶解して蒸留水に滴下し、煮沸精製した後、60℃で乾燥して精製ポリ酢酸ビニル(以下、PVAcと略記する)を得た。
【0051】
次に、精製PVAcの濃度17.5%のメタノール溶液を調製した。この精製PVAcのメタノール溶液を40℃で撹拌しながら、水酸化ナトリウムの濃度10%のメタノール溶液を、PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.02となるように添加し、60分間のけん化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕後、メタノールによるソックスレー洗浄を3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製PVAを得た。該PVAの重合度およびけん化度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ、重合度は1700、けん化度は99モル%であった。また、プロトンNMRスペクトル測定から、該精製PVAにおけるPOPMAの末端メトキシ置換体単位の含有量を求めたところ、全単量体単位に対して0.2モル%であった。上記にて得られたPVAを以下、PVA−1と称する。
【0052】
PVA−2〜18
重合反応の条件(酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、ポリオキシアルキレン基を有する単量体の種類およびその仕込み量、重合開始剤の種類および使用量、重合時間)条件を表1に示すように変更した以外はPVA−1と同様の方法により各種のPVAを調製した。
【0053】
II.インクジェット記録材の製造と評価
下記の方法により、インクジェット記録材を製造し、前記インクジェット記録材の接着強度、インク吸収性および滲み防止性を評価した。
【0054】
[接着強度]
インクとして「SMXタックグレード10」(東洋インキ製造株式会社製)を、試験機として万能印刷試験機(MODEL MTP10C、熊谷理機製)を用いた。前記インクおよび前記試験機を用い、前記インク0.6ccを、前記試験機のアルミ製ロール(幅4cm、半径3.2cm)上に均一に塗り広げた後、線圧40kg/cm、加速度45m/秒の加速印刷の条件で、得られたインクジェット記録材に対して印刷を行い、記録紙の表面からシリカが脱落をはじめる印刷速度(m/秒)を測定した。
【0055】
[インク吸収性]
得られたインクジェット記録材に、インクジェットプリンター(EPSON製:PM−970C)を用いてブラックインクのベタ印字を行い、その後印字表面をゴム板で擦った際に、インクが転移しなくなるまでの時間を測定した。
A:3秒以内でインクがゴム板に転移しなかった。
B:インクがゴム板に転移しなくなるまで3〜10秒かかった。
C:インクがゴム板に転移しなくなるまで10秒以上かかった。
【0056】
[滲み防止性]
得られたインクジェット記録材に、インクジェットプリンター(EPSON製:PM−970C)を用いてマゼンタおよびシアンを重ね打ちしたときのインクの滲みを目視判定した。具体的操作は以下の通りである。まず、得られたインクジェット記録材に、インクジェットプリンター(EPSON製:PM−970C)を用いて、縦1cm×横2cmの長方形の形にシアンをベタ印刷した。次いで、得られた長方形の右半分に重なるように、縦1cm×横1cmの正方形の形にマゼンダを重ね打ちでベタ印刷した。このようにして得られた、左半分がシアンのみがベタ印刷され、右半分がシアンおよびマゼンダが重ね打ちでベタ印刷された長方形の、左半分と右半分の境界線を中心に、印刷されたインクの滲み具合を目視で観察し、評価を行った。
A:滲みが全く観察されず、良好な画像が得られた。
B:滲みがごく僅かに観察されたが、画像に大きな影響はなかった。
C:滲みが部分的に発生し、画像の品質が損なわれた。
D:滲みが全体的に発生し、著しく画像の品質が損なわれた。
【0057】
実施例1
ビニルアルコール系重合体(A)として上記作製したPVA―1を用い、非晶性シリカ(B)としてゲル状シリカ(サイロジェットP409:グレース製)を用い、カチオン性重合体(C)として(C−1)(昭和高分子製:ポリフィックス700;カチオン密度7.1meq/g)を用いた。
なお、上記カチオン性重合体(C)のカチオン密度は以下のようにして求めた。
【0058】
[カチオン化密度の測定法]
試料であるカチオン性重合体(C)0.1%希釈液を3g採取し、指示薬であるトルイジンブルーを一滴加えた。この溶液に、濃度2.5×10−3規定のポリビニル硫酸カリウム(PVS−K)を滴下していき、等量点(指示薬が変色し沈殿の凝集が起こる点)に達したときのPVS−Kの量を測定した。得られた結果を下記の式を用いることでカチオン密度を算出した。
カチオン密度(meq/g)
={(PVS−K濃度(規定))×(PVS−K滴定量(mL))}/{(カチオン性重合体濃度(%)/100)×サンプル量(g)}
={2.5×10−3×(PVS−K滴定量(mL))}/{(0.1/100)×3}
=(PVS−K滴定量(mL))×(5/6)
【0059】
前記PVA―1の10%水溶液を調製した。また、前記ゲル状シリカをホモミキサーにて水に分散し、シリカの20%水分散液を調製した。得られたシリカのレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−1000(島津製作所)にて測定した平均粒子径は8μmであった。このシリカ水分散液に、シリカ/PVA/カチオン性重合体の固形分基準の重量比が100/30/3となるように、濃度10%のPVA―1水溶液および前記(C−1)を添加し、必要量の水を添加して固形分濃度15%のコーティング剤を得た。ここで、前記コーティング剤は、ビニルアルコール系重合体(A)と非晶性シリカ(B)の合計100重量部に対し、ビニルアルコール系重合体(A)を23.1重量部、非晶性シリカ(B)を76.9重量部、さらにカチオン性重合体(C)を2.3重量部含有し、かつ固形分濃度が15%である水性分散液でなるものである。
BL型粘度計を用いて30℃、30rpmの条件で測定した結果、調製直後の該塗工液の粘度は45mPa・sであった。原紙(坪量:60g/mの上質紙)の表面に、上記で調製したコーティング剤を、ワイヤバーコーターを用いて固形分換算で12g/mの割合で塗工した後、100℃の熱風乾燥機で3分間乾燥してインクジェット記録材を得た。
【0060】
実施例2〜19および21
PVAの種類と量、シリカの種類と量、塗工液の濃度および粘度を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録材を製造した。得られたインクジェット記録材の評価結果を表2に併せて示す。
【0061】
実施例20
カチオン性重合体(C)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録材を製造した。得られたインクジェット記録材の評価結果を表2に併せて示す。
【0062】
比較例1〜7
PVAの種類と量、シリカの種類と量、塗工液の濃度および粘度を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録材を製造した。得られたインクジェット記録材の評価結果を表2に併せて示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
実施例22
キャスト用塗被液としてガラス転移点85℃のスチレン−2メチルヘキシルアクリレート共重合体100部、コロイダルシリカ100部、離型剤として大豆抽出物レシチンをノニオン界面活性剤で乳化したエマルジョン2部(固形分として)よりなる固形分濃度が35%の塗被液を調製した。このキャスト用塗被液を、実施例1で得られた塗工紙上にロールコーターを用いて塗被した後、ただちに表面温度が75℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後、離型させ、インクジェット記録用キャスト塗被紙を得た。この時のキャスト用塗被液の塗被量は固形分重量で5g/m2であった。得られたキャスト塗被紙の白紙光沢は、87%であった(白紙光沢;JIS−P8142に準じて測定)。
【0066】
表2の結果から、本発明の樹脂組成物からなるコーティング剤は高濃度化した場合においても粘度低減の効果が顕著であり、前記コーティング剤を塗工してなるインクジェット記録材は、接着強度、インク吸収性および滲み防止性がバランス良く優れていることが分かる。また、実施例1および実施例20の対比から、特に本発明の樹脂組成物がさらにカチオン性重合体(C)を含有することにより、さらに滲み防止性に優れたものとなることが明らかである。
【0067】
一方、PVAがポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有しない場合は、塗工層の接着強度が不充分である(比較例1および比較例2)。また、本願発明で特定するものとは異なる構造のポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を有するPVAを用いた場合も、やはり塗工層の接着強度が不充分となる(比較例3)。また、ビニルアルコール系重合体(A)の含有量が50重量%を超える場合はインク吸収性が不充分なものとなり(比較例4)、一方、ビニルアルコール系重合体(A)の含有量が10重量%に満たない場合は接着強度が不充分なものとなった(比較例5)。さらに、非晶性シリカ(B)として、平均粒子径が1μmに満たないシリカを用いた場合は、接着強度、インク吸収性および滲み防止性のいずれもが不充分なものとなった(比較例6および比較例7)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)
【化1】

(Rは炭素数1または2のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜100の整数である。)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(A)および平均粒子径が1μm以上である非晶性シリカ(B)からなる樹脂組成物であり、(A)と(B)の合計100重量部に対し、(A)を10〜50重量部、(B)を50〜90重量部含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記ビニルアルコール系重合体(A)中の全単量体単位に対するポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)が、0.01〜1モル%である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度Pと、前記ビニルアルコール系重合体(A)中の全単量体単位に対するポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)との積P×Sが下記式(1)を満たす請求項1または2記載の樹脂組成物。
5<P×S<1500 (1)
【請求項4】
前記ビニルアルコール系重合体(A)が、前記一般式(I)におけるRがメチル基であり、Rが炭素数1〜4のアルキル基であるポリオキシプロピレン基を有する単量体単位を含有する請求項1〜3いずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビニルアルコール系重合体(A)が、前記一般式(I)におけるRがメチル基であるポリオキシプロピレン基を有する単量体単位を含有する請求項4記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ビニルアルコール系重合体(A)が、前記一般式(I)におけるRがメチル基であり、Rが水素原子であるポリオキシプロピレン基を有する単量体単位を含有する請求項1〜3いずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記非晶性シリカ(B)が、沈降性シリカまたはゲル状シリカである請求項1〜6いずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物が、さらにカチオン性重合体(C)を含有してなる請求項1〜7いずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる記録材。
【請求項10】
下記の一般式(I)
【化2】

(Rは炭素数1または2のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜100の整数である。)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(A)および平均粒子径が1μm以上である非晶性シリカ(B)を含む水性分散液であり、(A)と(B)の合計100重量部に対し、(A)を10〜50重量部、(B)を50〜90重量部含有するコーティング剤。
【請求項11】
固形分濃度が10〜30重量%である請求項10記載のコーティング剤。
【請求項12】
請求項10または11記載のコーティング剤を基材に塗工してなる塗工物。
【請求項13】
請求項10または11記載のコーティング剤を基材に塗工してなる記録材。
【請求項14】
請求項10または11記載のコーティング剤を基材に塗工してなるインクジェット記録材。

【国際公開番号】WO2005/073311
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517425(P2005−517425)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000746
【国際出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】