説明

樹脂組成物および高周波同軸ケーブル

【課題】高密度ポリエチレンを用いて発泡絶縁体としても独立気泡とすることができ、ケーブルの長さ方向の安定性の指標である電圧定在波比(VSWR)が小さく、かつ減衰量の小さい樹脂組成物および高周波同軸ケーブルを提供する。
【解決手段】架橋処理されたポリエチレンと非架橋のポリエチレンとの混合物からなり、密度が0.960g/cm3以上、かつ溶融破断張力が20〜100mNである樹脂組成物で発泡絶縁層を形成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信施設やマイクロ波通信施設で用いられる高周波同軸ケーブルの絶縁体を発泡体で形成するための樹脂組成物および高周波同軸ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に必要な移動体通信施設やテレビ局のマイクロ波通信施設で用いられる高周波同軸ケーブルは、通信速度と容量のアップを目的として、使用周波数が高くなる傾向にある。これに伴い、減衰量の小さいケーブルが要求されるようになっている。同軸ケーブルの減衰量は、導体径に起因する導体損失と絶縁体材料(ポリエチレン)に起因する誘電損失とを足した値である。
【0003】
導体損失は、ケーブル形状で決定されるため変更できない。そのため減衰量低減には、誘電損失を小さくする必要がある。
【0004】
誘電損失は式1(数1)のような関係で示される。
【0005】
【数1】

【0006】
一般に誘電正接(以下tanδと略す)は、低密度ポリエチレン(LDPE)よりも高密度ポリエチレン(HDPE)の方が小さい。これは、高密度ポリエチレンの分子構造中の側鎖が少ないことが原因と考えられる。
【0007】
そのため、同軸ケーブルの絶縁材の樹脂組成物の主材料として高密度ポリエチレンが多く使用されている。
【0008】
また、主材料のtanδの他に、絶縁体として成型する際に、樹脂組成物を化学発泡や物理発泡により発泡絶縁体とすることで、誘電損失を少なくすることが提案されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−027899号公報
【特許文献2】特開2002−251923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、高密度ポリエチレンは、分岐が少なく、分子同士の絡み合いが小さいので、溶融破断張力(MT)が小さくなる。そのため高密度ポリエチレンを用い、発泡絶縁体の発泡度を上げると気泡が独立したものではなく、気泡同士がつながった連続気泡(巣)になり易い。その結果、電圧定在波比(VSWR)が増大(悪化)する。
【0011】
そのため、tanδ(誘電損失)を犠牲にしてでも、溶融破断張力の大きい低密度ポリエチレンをブレンドする必要があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、高密度ポリエチレンを用いて発泡絶縁体としても独立気泡とすることができ、ケーブルの長さ方向の安定性の指標である電圧定在波比(VSWR)が小さく、かつ減衰量の小さい樹脂組成物および高周波同軸ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、架橋処理されたポリエチレンと非架橋のポリエチレンとの混合物からなり、密度が0.960g/cm3以上、かつ溶融破断張力が20〜100mNであることを特徴とする樹脂組成物である。
【0014】
請求項2の発明は、前記混合物が、架橋処理されたポリエチレン5〜45質量%、前記非架橋のポリエチレン95〜55質量%である請求項1記載の樹脂組成物である。
【0015】
請求項3の発明は、前記架橋処理されたポリエチレンは、高密度ポリエチレンを、0.1〜5.0Mradの電子線を照射することにより架橋されてなる請求項1または2に記載の樹脂組成物である。
【0016】
請求項4の発明は、前記架橋処理されたポリエチレンが、高密度ポリエチレン100質量部にシラン化合物を0.2〜1.0質量部添加することにより架橋されてなる請求項1または2記載の樹脂組成物である。
【0017】
請求項5の発明は、前記架橋処理されたポリエチレンが、高密度ポリエチレンに有機過酸化物を添加することにより架橋されてなる請求項1または2記載の樹脂組成物である。
【0018】
請求項6の発明は、内部導体の外周に、内部充実層、発泡絶縁層、外部充実層、外部導体、外皮を順に設けた高周波同軸ケーブルにおいて、発泡絶縁層が請求項1〜5いずれかに記載の樹脂組成物の発泡体により構成されることを特徴とする高周波同軸ケーブルである。
【0019】
請求項7の発明は、前記発泡絶縁層の空洞共振摂動法による2GHzでのtanδの値が、2.0×10-4以下ある請求項6記載の高周波同軸ケーブルである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、誘電体損失の小さな高密度ポリエチレンを用いて樹脂組成物とし、しかも樹脂組成物を発泡させて発泡絶縁層を形成した際に、独立気泡とすることができ、電圧定在波比(VSWR)が小さく、かつ減衰量の小さい高周波同軸ケーブルとすることができるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明において、発泡コアの構造を示す断面図である。
【図2】本発明において、高周波同軸ケーブルの構造を示す図である。
【図3】本発明における樹脂組成物を用いて高周波同軸ケーブルを製造する装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0023】
先ず、本発明における高周波同軸ケーブルを図1、図2により説明する。
【0024】
図1は、本発明の高周波同軸ケーブルの発泡コア10の構造の断面図を示したもので、内部導体11の外周に内部充実層12が形成され、その内部充実層12に本発明の樹脂組成物を用いた発泡絶縁層13が形成され、その外周に外部充実層14が形成されて発泡コア10が形成される。
【0025】
図2は、図1の発泡コア10を用いて高周波同軸ケーブル15を構成した例を示し、発泡コア10の外周に銅コルゲートやリング状の外部導体16が形成されその外周に外皮(シース)17が被覆されて同軸ケーブル15が構成される。
【0026】
図3は、図1の発泡コア10を製造する製造装置を示したもので、送出機20からの内部導体11が、ヘッド22に供給される間に内部充実押出機21で、内部充実層が被覆される。
【0027】
一方、発泡絶縁層は、本発明の樹脂組成物が第1押出機23で溶融混練され、その溶融混練中の樹脂組成物にガス注入機24から窒素ガスなどが注入され、第2押出機25に供給され、そこで物理発泡に適した温度に下げられて供給されて発泡されてヘッド22供給され、そこで、内部充実層の外周に発泡絶縁層が形成され、さらに発泡絶縁層の外周に、外部充実層押出機26から外部充実層が押し出されて発泡コア10が形成され、その発泡コア10が、冷却水槽27にて冷却された後、巻取機28に巻き取られる。
【0028】
発明者らは、発泡絶縁層を形成する際のポリエチレンの問題を解決するため、tanδが小さく発泡成形に適する粘弾性を有するポリエチレンの体系的な研究を行った。
【0029】
その結果、高密度ポリエチレンの主鎖同士をわずかに橋掛けした状態(微架橋状態)とすることで、分岐の少ない高密度ポリエチレンにおいても絡み合いを生じさせ、溶融破断張力(MT)をコントロールすることができることを見出した。
【0030】
ここで、発泡絶縁層が部分的に架橋されたポリエチレンを単独で使用すると押出樹脂の吐出量が安定しない。このため同軸ケーブルでは内部導体の偏芯が生じ、コネクタ接続できない場合がある。吐出量を安定させるには、架橋処理されたポリエチレンに非架橋ポリエチレンを混合させることが有効であることを見出した。
【0031】
すなわち、本発明の樹脂組成物は、ポリエチレンが部分的に架橋処理されたポリエチレン(微架橋ポリエチレン)と架橋されていないポリエチレン(非架橋ポリエチレン)の混合物であり、密度が0.960g/cm3以上、かつ溶融破断張力が20〜100mNである。またポリエチレン樹脂組成物の空洞共振摂動法による2GHzでのtanδの値が2.0×10-4以下である。
【0032】
また本発明の高周波同軸ケーブルは、内部導体の外周に、内部充実層、発泡絶縁層、外部充実層、外部導体、外皮を順に設けてなり、発泡絶縁層が、ポリエチレンが部分的に架橋処理されたポリエチレン(微架橋ポリエチレン)と架橋されていないポリエチレン(非架橋ポリエチレン)の混合物からなる樹脂組成物の発泡体により構成されてなるものである。
【0033】
このように本発明における、内部導体の外周に、内部充実層、本発明の高密度ポリエチレンを用いた発泡絶縁層、外部充実層、外部導体及び外皮(シース)を順次設けた高周波同軸ケーブルは、良好な高周波特性を奏することが明らかとなった。
【0034】
本発明における樹脂組成物の溶融破断張力は、炉体径が9.55mmのキャピラリー式レオメータを用いて、内径2.095mm、長さ8.03mmのフラットキャピラリを用い、温度170℃、ピストンスピード10mm/min、引き取り加速度400m/min2の条件で測定したものである。
【0035】
樹脂組成物の溶融破断張力を20〜100mNの範囲にすることにより、気泡の粗大化の防止及び高発泡化が可能になる。その結果、電圧定在波比(VSWR)を小さくすることができ、電波エネルギーの効率的な伝送に有利となる。
【0036】
また前記微架橋後の高密度ポリエチレンの2GHzの時のtanδを2.0×10-4以下にすると、高周波同軸ケーブルのロスをさらに小さくすることが可能となる。
【0037】
微架橋高密度ポリエチレンを作製する方式としては、電子線照射、過酸化物による化学架橋・シラングラフト水架橋などが挙げられるが、どの様な架橋方式を用いてもよい。
【0038】
照射架橋の場合、酸化によるポリエチレンの劣化を防ぐため、窒素ガスなど不活性ガス雰囲気若しくは真空中で高密度ポリエチレンのペレットに電子線を0.1〜5Mrad照射して得られる。MTを適正値にするため、より好適には1.0〜4.0Mradである。パーオキサイド架橋による場合、微量のジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物と高密度ポリエチレンを樹脂温度180℃以上になるように設定した押出機中で反応させた後ペレタイズにより微架橋ペレットを得ることができる。シラングラフト水架橋による場合は、高密度ポリエチレンにビニルシラン等のシラン化合物0.2〜1.0質量%を有機過酸化物などの適当な反応開始剤および架橋反応触媒(ジブチルスズジラウレート)と共に溶融混練してグラフトポリマを作製後、これを80℃の水蒸気雰囲気中で24hrキュアすることにより得られる。
【0039】
これら微架橋した高密度ポリエチレンを、非架橋高密度ポリエチレンと適当な組成比で溶融混練することにより、溶融破断張力20〜100mNのポリエチレン樹脂組成物を得ることができる。
【0040】
微架橋高密度ポリエチレンと非架橋高密度ポリエチレンの組成比は特に規定しないが、組成比は、架橋処理されたポリエチレン5〜45質量%、非架橋ポリエチレン95〜55質量%が好ましい。押出吐出量は、微架橋ポリエチレンに非架橋ポリエチレンをブレンドすることにより安定化できる。ブレンド比率は特に規定しないが、微架橋ポリエチレンのMFRが小さい程非架橋ポリエチレン量を多くする。例えば、照射量の増加に伴って溶融破断張力は増大し、MFRは少なくなるため、照射量が3.0Mrad以上の場合は、架橋ポリエチレンと非架橋ポリエチレンの組成比は5〜30質量%/95〜70質量%がより好ましい。
【0041】
前記ポリエチレン組成物には、定法に従い発泡核剤、発泡剤、酸化防止剤、銅害防止剤、滑剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、架橋助剤を添加することができる。発泡核剤としてはタルク、シリカ、窒化ホウ素、無機酸化物、金属酸化物、化学発泡剤として市販されている有機化合物を使用することができ、化学発泡剤のADCA(アゾジカルボンアミド)またはOBSH(オキシベンゼンスルホニルヒドラジド)が好適である。
【実施例】
【0042】
次に実施例と比較例を説明する。
【0043】
先ず、表1は、密度・MFRの異なる高密度ポリエチレン(以下HDPEと略す)を、照射架橋した後の170℃の溶融破断張力(MT)及びMFRを示したものである。
【0044】
【表1】

【0045】
表1において、ユニカ6944(密度0.965、MFR8.0(190℃)、5.0(170℃))を窒素ガス雰囲気中で、それぞれ照射量1.0、2.5、3.0Mradで照射したものを、6944−A、6944−B、6944−Cとしたものである。6944−Aに示したように照射架橋前(非架橋)では溶融破断張力は10mNであるが、照射により溶融破断張力が10倍以上に大きくなり、また照射量の増加に伴って溶融破断張力が増大し、逆にMFRは少なくなる。また表1には、宇部丸善2070(密度0.962、MFR8.0(190℃)、5.0(170℃))を2070とし、宇部丸善2500(密度0.963、MFR5.0(190℃)、2.7(170℃))を2500とし、東ソー2300(密度0.953、MFR7.0(190℃)、3.8(170℃))を2300とし、これらの照射量1.0Mradとしたときの溶融破断張力及びMFRを示した。
【0046】
これらの架橋HDPEと非架橋HDPEとをブレンドして発泡材料とした。
【0047】
ブレンドした発泡材料についての実施例を表2に、比較例を表3に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
微架橋高密度ポリエチレンは、照射架橋の場合、表1で説明したように窒素ガス雰囲気下で高密度ポリエチレンのペレットに電子線を照射して作製した。
【0051】
パーオキサイド架橋による場合は、有機過酸化物としてジクミルパーオキサイド(DCP)0.1質量%を高密度ポリエチレンに添加して用いた。
【0052】
シラングラフト水架橋による場合は、高密度ポリエチレンと、ビニルシラン0.5質量%にDCPを0.05質量%溶かした溶液と、ジブチルスズジラウレート0.02質量%とを樹脂温度が180℃以上になるように設定した押出機に投入し、ペレタイズ後のペレットを80℃の水蒸気雰囲気中で24hrキュアして作製した。
【0053】
同軸ケーブルの作製は以下の手順にもとづき行った。
【0054】
HDPEに1.0質量%の発泡核剤(ADCA)を練り込み、核剤マスターバッチを作製する。前記微架橋高密度ポリエチレン組成物と核剤マスターバッチを99:1の比率でドライブレンドして発泡層用材料とした。
【0055】
この発泡層用材料を図3で説明したカスケード型物理発泡押出機の第1押出機23に投入し、ガス注入装置24で窒素ガスを圧入後、混練し、第2押出機25で発泡に適した温度まで下げていき、押出ヘッド22で予め接着層として内部充実層を被覆したφ9.0mmの内部導体11上に発泡絶縁層、外部充実層を同時に押し出し被覆して発泡絶縁体(発泡コア10)を得た。
【0056】
この発泡絶縁体を用いて製造した高発泡高周波同軸ケーブルは、減衰量の値が最も厳しい20Dアニューラとした。
【0057】
同軸ケーブルの減衰量及びVSWRの測定は、アジレント社製スカラネットワークアナライザ8757Dを用いて行い、2.2GHzでの減衰量が6.14dB/100m未満を○、6.10dB/100m未満を二重○、6.15dB/100m以上を×とした。二重○および○が合格である。VSWRは1.10以下を合格とした。
【0058】
発泡コア(絶縁層全体)=(内部充実層+発泡絶縁層+外部充実層)の発泡度測定は次の式2(数2)より求めた。
【0059】
【数2】

【0060】
メルトフローレート(MFR)の値はJIS K7210に基づいて、190℃、170℃、21.8Nの荷重で測定した。さらに、溶融破断張力を測定した170℃のMFRも測定した。
【0061】
Tanδは摂動(空洞共振器)法に基づき関東電子応用開発製2.0GHz空洞共振器を用い、ヒューレットパッカード社製ネットワークアナライザ8720Dで測定を行った。
【0062】
計算式を、式3〜式5(数3〜5)に示す。
【0063】
【数3】

【0064】
【数4】

【0065】
【数5】

【0066】
式中、
Fr,Qr :試料非装時の共振周波数と無負荷Q
Fs,Qs :試料装荷時の共振周波数と無負荷時のQ
Sc,Ss :電界に垂直な空洞共振器及び試料の断面積
α :空洞共振器のモードにより決まる定数
である。
【0067】
コネクタ取り付け性は作製した同軸ケーブルを100本に切断し、端末部200ヶ所全てに20Dアニューラ用コネクタ(日立電線20D用N型プラグコネクタ)を取り付けた。内部導体の偏芯によりコネクタが取り付けられなかったケーブルが100本中3本以上あった場合をコネクタ取り付け性不合格とした。
【0068】
実施例1〜10は溶融破断張力、tanδが規定値に入っており、減衰量、VSWR、コネクタ取り付け性いずれも合格する。
【0069】
実施例1〜6は、いずれの場合でも溶融破断張力が規定(20〜100mN)に入っており、且つ混合物材料のシートでのtanδも規定の2.0×10-4以下のためケーブル特性である2GHzの時の減衰量6.14dB/100m以下を充分満足している。またVSWRに付いても全て合格し、また、偏芯がないためコネクタ取り付け性にも優れている。
【0070】
実施例7、8は微架橋HDPEの密度が0.962g/cm3と0.963g/cm3の高密度ポリエチレンを使用した場合であるが、これらについても、減衰量、VSWR、コネクタ取り付け性いずれも規格に合格している。
【0071】
実施例5、6から、同じポリエチレンを使用してもブレンド比により、ブレンド物の溶融破断張力が変化し、よりVSWR、減衰量を改善することができる。
【0072】
実施例9、10は架橋方式が過酸化物架橋とシラン架橋の場合であるが、これらについても減衰量、VSWR共に合格している。同様に偏芯がなくコネクタ取り付け性も優れている。
【0073】
これに対して、比較例1は架橋前の非架橋HDPE6944(非照射)を用いた場合であるが、溶融破断張力(10mN)が低いため成形時に気泡が破泡し、発泡剤(ガス)抜けによる気泡の粗大化が見られた。その結果、減衰量が規格を満足できない。また、コネクタ取り付け性は巣により偏芯があるため1/2以上が取り付け不可であった。
【0074】
比較例2は、混合物材料として、98質量部の非架橋HDPE6944に、架橋HDPE6944−Aを2質量部加えた場合であるが、溶融破断張力の値が12mNで、規定の20mN以下であり、未照射同様に溶融破断張力が規定より低く、発泡時に巣を発生し、その結果、減衰量が規格を満足できない。コネクタ取り付け性は巣発生により偏芯し1/2以上が取り付け不可能であった。
【0075】
比較例3は、70質量部の非架橋HDPE6944に、架橋HDPE6944−Cを30質量部加えた場合であるが、混合物材料の溶融破断張力が120mNあり、規定の100mN以上となり、絶縁層全体が発泡度の低下によって減衰量が満足できない。これは、MTが大きくなりすぎ、流動性が損なわれたためと推定できる。
【0076】
比較例4は、架橋HDPEとして、密度が0.953g/cm3の2300を用い、この2300と非架橋HDPE(6944)との混合物であるが、2300の密度が規定値の0.960g/cm3以下であり、ブレンド後の混合物のtanδが、規定値より高い2.5×10-4であり、減衰量が規格を満足できない。
【0077】
比較例5は、微架橋HDPEの代わりに、溶融破断張力の大きいLDPEと組み合わせた場合であるが、シートでのtanδが規定より高く、減衰量が規格を満足できない。
【0078】
比較例6は、微架橋したHDPEのみを用いた場合である。押出時の流動性が悪く、押出吐出不安定による偏芯が散見され、その結果、コネクタ取り付け性が100本中5本が取り付け不可のため不合格となった。
【符号の説明】
【0079】
10 発泡コア
11 内部導体
13 発泡絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋処理されたポリエチレンと非架橋のポリエチレンとの混合物からなり、密度が0.960g/cm3以上、かつ溶融破断張力が20〜100mNであることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記混合物が、架橋処理されたポリエチレン5〜45質量%、前記非架橋のポリエチレン95〜55質量%である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記架橋処理されたポリエチレンは、高密度ポリエチレンを、0.1〜5.0Mradの電子線を照射することにより架橋されてなる請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記架橋処理されたポリエチレンが、高密度ポリエチレン100質量部にシラン化合物を0.2〜1.0質量部添加することにより架橋されてなる請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記架橋処理されたポリエチレンが、高密度ポリエチレンに有機過酸化物を添加することにより架橋されてなる請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項6】
内部導体の外周に、内部充実層、発泡絶縁層、外部充実層、外部導体、外皮を順に設けた高周波同軸ケーブルにおいて、発泡絶縁層が請求項1〜5いずれかに記載の樹脂組成物の発泡体により構成されることを特徴とする高周波同軸ケーブル。
【請求項7】
前記発泡絶縁層の空洞共振摂動法による2GHzでのtanδの値が、2.0×10-4以下である請求項6記載の高周波同軸ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−1496(P2011−1496A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146863(P2009−146863)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】