説明

樹脂組成物の製造方法および樹脂組成物

【課題】生分解性樹脂架橋体の粒子が熱可塑性樹脂中に分散された樹脂組成物を簡単に製造する。
【解決手段】電離性放射線架橋性の生分解性樹脂(A)と電離性放射線非架橋性の熱可塑性樹脂(B)を加熱混練する第一工程と、樹脂(A)と樹脂(B)が互いに分散混合した状態で、電離性放射線を照射して、樹脂(A)を架橋させる第二工程と、樹脂(A)の架橋体がゲル膨潤しうる含浸材(C)と該照射後の樹脂(A)樹脂(B)混合物を加熱混練する第三工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法および樹脂組成物に関し、詳しくは、架橋された生分解性樹脂を含む成形材料とし、フィルム、容器または筐体などの構造体や部品などの各種プラスチック製品の成形材料として、汎用の成形機で成形できるものである。
【背景技術】
【0002】
現在、多くのフィルムや容器に利用されている石油合成高分子材料は、加熱廃棄処理に伴う熱および排気ガスによる地球温暖化、さらに燃焼ガスおよび燃焼後の残留物中の毒性物質による食物や健康への悪影響、廃棄埋設処理地の確保など、その廃棄処理過程についてだけでも様々な社会問題が懸念されている。
このような石油合成高分子材料の廃棄処理の問題点を解決する材料として、デンプンや脂肪族ポリエステルに代表される生分解性高分子材料が注目されてきている。生分解性高分子材料は石油合成高分子材料に比べて、燃焼に伴う熱量が少なく、かつ自然環境での分解・再合成のサイクルが保たれる等、生態系を含む地球環境に悪影響を与えない。
これらの生分解性樹脂あるいは植物原料由来樹脂のなかでも、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルのコポリマーおよび疎水性多糖類は強度や加工性の点で石油合成高分子材料に匹敵する特性を有し、近年特に注目を浴びている素材であり、現在その応用について多くの検討が成されている。
【0003】
しかし、デンプンやセルロースの誘導体等の疎水性多糖類やポリ乳酸のような生分解性樹脂は非常に硬く、実質的に伸びが殆どなく、衝撃強度が低いという欠点を有する。他方、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートなどの生分解性樹脂は、柔軟ではあるが破壊強度が弱いという欠点を有する。このように生分解性樹脂は柔軟性と強度を兼ね備えておらず、そのままでは使用しにくいものが多い。
【0004】
そこで、これら生分解性樹脂を改良するために、従来からプラスチック樹脂で行われてきた技術である樹脂同士の混合あるいは可塑剤等の改質剤を複合化する試みが盛んに行われている。例えば、電離性放射線を利用して生分解性樹脂を架橋させることにより形状保持性を高めることが特開2003−313214号公報で提案されている。
放射線照射による生分解性樹脂の架橋は耐熱性や形状維持性を向上させるという利点を有するものであるが、これは逆に言えば生分解性樹脂の熱可塑性を失わせ成形できない状態にしてしまうため加工性が著しく損なわれる。そこで、前記したように、従来は製品として成形した後に放射線照射を行っている。しかし、所要形状に成形後に放射線照射を行うには、高額で管理コストもかかる放射線照射設備を製造現場に導入するか、照射設備のある場所まで成形物を運搬することが必要となる。よって、費用や手間がかかるため、成形品の加工性・生産性を著しく損ない、結果として過大な製造コストを要する問題がある。
【0005】
前記問題に対して、生分解性樹脂架橋物を粉砕して樹脂中に分散して樹脂組成物とすれば、成形品を後から放射線照射をする必要はなく、前記問題を解消することができる。
しかし、生分解性樹脂の架橋体を粉砕することは容易でなく、コストがかかる問題がある。即ち、液体窒素などで冷凍粉砕するなどの高コストな方法を除く、低コストな通常の粉砕方法では程度の差こそあれ必ず粉砕の際に摩擦熱で樹脂が加熱されるため、より細かく粉砕することが出来ない。具体的に、例えば生分解性樹脂の代表であるポリ乳酸は60℃という比較的低いガラス転移温度を持ち、そのガラス転移温度以上で極端に柔軟になるため、衝撃や破砕、すりつぶしなどにより粉砕を行っても十分に粉砕されず溶けたようになって変形するだけである。このように低コストな通常の粉砕方法では粉砕後の粒子の大きさを100μm程度とするのが限界であり、粉砕により得られる粉末と熱可塑性樹脂とを複合化する際により均一な混合物を得ることは困難である。
【0006】
現在、2種類以上の樹脂を加熱混合する際に高剪断力をかけてナノサイズという非常に細かい粒子レベルに樹脂同士を分散させた状態にするナノコンポジット化技術が広く行われている。例えば、特開2006−188651号公報にはポリカーボネート/ポリ乳酸アロイが記載されている。このようなナノコンポジット化技術を用いればポリ乳酸を粉砕することなく、高剪断をかけた混合によって1μmを下回る小さなサイズにすることも可能である。しかし、これらの技術では可塑剤等の担持性をポリ乳酸に付与することはできず、ポリ乳酸自身の改質はできない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−313214号公報
【特許文献2】特開2006−188651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記した問題に鑑みてなされたもので、生分解性樹脂架橋物を物理的に粉砕することなく、生分解性樹脂架橋物が微細に粒子状となって樹脂中に分散されている樹脂組成物とし、該樹脂組成物からなる成形材料により成形した成形品は、電離性放射線を放射する必要のないものとすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、第一の発明として、
電離性放射線架橋性の生分解性樹脂(A)と電離性放射線非架橋性の熱可塑性樹脂(B)を加熱混練する第一工程と、
樹脂(A)と樹脂(B)が互いに分散混合した状態で、電離性放射線を照射して樹脂(A)を架橋させる第二工程と、
樹脂(A)の架橋体がゲル膨潤しうる含浸材(C)と該照射後の樹脂(A)樹脂(B)混合物を加熱混練する第三工程と、
を備えることを特徴とする樹脂組成物の製造方法を提供している。
【0010】
前記第一工程で得た樹脂(A)と樹脂(B)とが分散混合した混練物をペレット状、シート状またはロッド状として、前記第二工程で電離性放射線を照射している。
【0011】
前記本発明の樹脂組成物の製造方法では、生分解性樹脂(A)の架橋体をゲル膨潤させうる含浸材(C)とを加熱混練している。架橋された生分解性樹脂(A)は熱可塑性を失っているが、熱可塑性樹脂(B)が溶融するため全体としては軟化して、含浸材(C)と混練可能な溶融状態となる。加熱することで生分解性樹脂(A)の架橋体の非結晶部分が運動し始め、液体状の含浸材(C)が生分解性樹脂(A)の架橋体内に吸収され、生分解性樹脂(A)の架橋体はゲル膨潤する。
一方、熱可塑性樹脂(B)には分子同士を拘束する架橋が存在しないため含浸材(C)が浸入してゲル膨潤することはない。そのため、混練された含浸材(C)は吸収能力の高い生分解性樹脂(A)に主に吸収されることとなる。よって、生分解性樹脂(A)中に含浸材(C)が含有されてなる生分解性樹脂架橋体がナノサイズからミクロンサイズの微細な粒子として熱可塑性樹脂(B)中に分散されてなる本発明の樹脂組成物を得ることができる。前記生分解性樹脂(A)の架橋体からなる粒子の平均粒径は1nm〜10μmとすることができる。
【0012】
本発明の樹脂組成物の製造方法では、生分解性樹脂(A)の架橋体に含浸させる含浸材(C)の種類によって生分解性樹脂複合体の硬さを調整することができる。例えば、疎水性多糖類やポリ乳酸などの常温では硬くて靭性に乏しい生分解性樹脂では可塑剤を含浸させることにより硬さを低下させて柔軟性や耐衝撃性を付与することが可能となる。
比較的柔軟性を有するポリブチレンアジペートテレフタレートやポリカプロラクトン、あるいはガラス転移温度60℃以上の温度で軟弱となったポリ乳酸などは重合性モノマーを含浸させて、メタクリル酸のようにガラス転移温度が高く硬いものを複合化することで、所要の硬さとし、形状維持性の高い、高ヤング率の性質に改質することが可能である。
【0013】
さらに、本発明の樹脂組成物の製造方法は、生分解性樹脂(A)中に含浸材(C)が非常に均一で微細に分散した状態を形成できる点でも優れている。生分解性樹脂と含浸材を複合化させる場合、両者を物理的に練り合わせて加熱混合して分散させると、相容化剤を使用せずにポリマーアロイ化、ナノコンポジット化といった微細分散を達成することはできない。これに対し、本発明の製造方法では、生分解性樹脂(A)の架橋体を形成する際に微細な架橋ネットワーク構造を形成しておけば、相容化剤等の薬剤を使用しなくても含浸材(C)の微分散状態を容易に形成することができる。このような生分解性樹脂(A)の架橋体の微細なネットワーク構造は、架橋助剤の量や放射線の照射量などの条件をコントロールして形成すれば良い。
このように、本発明の製造方法では、生分解性樹脂と含浸材を単に混合や配合によって複合化した場合に付き物である材料の混合ムラや混合しきれなかった大きな塊やダマなどが残存する心配もない。
【0014】
前記電離性放射線架橋性の生分解性樹脂(A)は、脂肪族ポリエステル、脂肪族および芳香族のポリエステルコポリマー、疎水性多糖類の中から選ばれる1種類あるいは数種類を含むことが好ましい。
【0015】
また、前記生分解性樹脂(A)として、特に、ポリ乳酸等の植物由来樹脂を用いることが好ましい。近年、二酸化炭素排出量を抑制する目的から、ポリ乳酸のような植物由来樹脂を石油由来樹脂に混合して石油由来樹脂の一部を代替することが盛んに行われている。本発明においても、前記のように、生分解性樹脂複合体を構成する生分解性樹脂として植物由来樹脂を用いることが好ましい。これにより石油由来の炭素の環境中への放出量を大気中の二酸化炭素を炭素源とする植物由来樹脂で代替することができる。
【0016】
また、前記非架橋性の熱可塑性樹脂(B)として、強度や耐薬品性・耐熱性に優れ、電子機器部材などに広く利用されているポリカーボネートやABS等のエンジニアリングプラスチックを用いても良い。
【0017】
前記含浸材(C)が重合性モノマーである場合、重合性モノマーが生分解性樹脂(A)内に含浸した状態で重合させることができる。
生分解性樹脂(A)の架橋体および熱可塑性樹脂(B)の混合物と含浸材(C)とを加熱混練する時の熱により重合性モノマーの重合を開始させることも可能であり、また電離性放射線照射により生分解性樹脂(A)に発生したラジカルを利用して重合性モノマーの重合を開始させることも可能である。これにより、本発明の樹脂組成物の製造工程数がさらに減少し、製造の簡略化を図ることができる。
【0018】
また、重合性モノマーを含む含浸材(C)を用い、該含浸材を重合させることで、含浸材を生分解性樹脂(A)にポリマーアロイ化させることができる。これにより、生分解性樹脂(A)と含浸材(C)が重合した後のポリマーの両者の特性を合わせた性質を有する樹脂組成物および成形品を作製することができる。例えば、軟化温度が低い生分解性樹脂を改質し軟化温度以上でも硬い性質とするなど目的に応じて生分解性樹脂に機能を付与することができる。
【0019】
前記含浸材(C)として、メタノールやDMSO(ジメチルスルオキシド)等の極性溶媒を可塑剤として用い、架橋ネットワーク構造の中に前記極性溶媒を含有させたゲル状構造としても良い。これにより、ゲル濾過や液体クロマトグラフィなどの分子篩いとしての利用が可能となり、架橋構造を制御することで分離分析技術にも応用可能である。
【0020】
本発明の樹脂組成物の製造方法において、最終形状をペレットとすることが好ましい。
なお、ペレット化せずに、前記第一の発明の製造工程の第三工程の加熱混練する工程と成形工程とを連続して所要形状に成形しても良い。其の場合、製造工程数が減少し、製造の簡略化を図ることができる。
【0021】
第二の発明として、ゲル膨潤状態の生分解性樹脂(A)が非架橋性の熱可塑性樹脂(B)に分散混合されていることを特徴とする樹脂組成物を提供している。
前記非架橋性の熱可塑性樹脂(B)は、電離性放射線により架橋されない電離性放射線非架橋性の熱可塑性樹脂である。なお、電離性放射線で生分解性樹脂を架橋する代わりに化学開始剤で架橋する場合には、前記非架橋性の熱可塑性樹脂は該化学開始剤で架橋されない熱可塑性樹脂でも良い。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、生分解性樹脂(A)の架橋のネットワーク中に含浸材(C)が含浸されている。含浸材(C)が生分解性樹脂(A)の分子間の相互作用を阻止するため、ガラス転移温度以下の温度でもガラス転移温度以上のときの柔軟な状態が維持され、優れた柔軟性および衝撃吸収性を示すようになる。かつ、生分解性樹脂(A)と含浸材(C)との複合体においては生分解性樹脂(A)の分子間の架橋がほぼ完全な形で形成されている。よって、ガラス転移温度以上の温度になっても生分解性樹脂(A)分子同士の拘束が解かれることがないため、該樹脂組成物からなる成型品は生分解性樹脂を含みながら強度の低下を防ぐことができ、形状保持力は強い。
また、本発明の樹脂組成物は、生分解性樹脂複合体と熱可塑性樹脂とがコポリマーに準ずるレベルの極めて均一な状態で共存している。よって、生分解性樹脂複合体同士の接着性が向上し、成形性が向上する。さらに、生分解性樹脂複合体のみの場合に比べて強度も向上されている。
【0023】
かつ、本発明の樹脂組成物は、生分解性樹脂複合体は構成成分である生分解性樹脂(A)が架橋されているので熱可塑性は示さないが、熱可塑性樹脂(B)は架橋されていないので、全体としては熱により溶融して、一般的な熱可塑性プラスチック材料と同様の方法により成形することができる。このように、本発明の樹脂組成物からなる成形材料には、あらかじめ架橋が施されているにもかかわらず成形工程を最終工程とすることができる。よって、汎用されている従来公知の熱可塑性プラスチックの成形方法を用いて成形することができ、成形時における利便性が大きく向上し、生分解性樹脂の使用を拡大することができる。
【0024】
前記本発明の樹脂組成物から成形される成形品は、生分解性樹脂の架橋ネットワークを備えているため、生分解性樹脂のガラス転移温度または軟化温度を超える高温時においても確実に形状と強度を維持することができる。
生分解性樹脂の架橋ネットワーク中に含浸材が含浸され生分解性樹脂分子間の相互作用を阻害していることにより、生分解性樹脂のガラス転移温度以下においても硬さや脆さを呈することはなく優れた柔軟性と伸びを有する生分解性樹脂製の成形材料および成形品とすることができる。可塑剤を含む含浸材を用いた場合にこの効果がより顕著に見られる。
このように、従来の技術では両立させにくかった生分解性樹脂のガラス転移温度以下における柔軟性・伸びの保持とガラス転移温度以上における形状・強度の維持(すなわち耐熱性)を有する。
よって、本発明の成形品は、現在、石油合成高分子材料が利用されている一般的な用途、特にゴム吸盤など軟質塩化ビニルが利用されている用途への応用することができる。また、柔軟性と形状記憶性の両方が必要となる形状記憶製品として利用することも可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の樹脂組成物の製造方法によれば、生分解性樹脂架橋体を物理的に粉砕することなく、ナノサイズからミクロンサイズの微細な粒子として熱可塑性樹脂中に分散させた樹脂組成物を簡単な工程で得ることができる。よって、生分解性樹脂架橋物を物理的に破砕する必要は無く、製造工程数を大幅に削減でき、簡便に効率よく製造でき、製造コストの大幅な削減を図ることができる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、生分解性樹脂の架橋体を粒子として熱可塑性樹脂中に分散しているため、最終工程で放射線照射する必要はなく、自由な成形加工が可能となる。即ち、本発明の樹脂組成物からなる成形材料を用いた成形品の製造において、架橋が最終工程とならない。従って、汎用されている従来公知の熱可塑性プラスチックの成形方法を用いて成形することができ、成形時における利便性が大きく向上し、生分解性樹脂の使用を拡大することができる。
【0027】
また、本発明の樹脂組成物から成形する成形品は、生分解性樹脂のガラス転移温度以下における柔軟性・伸びの保持とガラス転移温度以上における形状・強度の維持(すなわち耐熱性)を有する。
さらに、本発明の成形材料および成形品は生分解性を有していることから、自然界において生態系に及ぼす影響が極めて少なく、従来のプラスチックが有していた製造および廃棄処理に関わる諸問題を解決できる。しかも、本発明の生分解性樹脂製の成形材料および成形品は今までにない柔軟性を有する点から、これまで生分解性樹脂を利用できなかった分野への応用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施形態を説明する。
本発明の樹脂組成物は、図1に示す工程で製造している。
図1に示すように、電離性放射線架橋性の生分解性樹脂(A)、電離性放射線非架橋性の熱可塑性樹脂(B)、さらに、必要に応じて架橋助剤とを加熱混練する第一工程と、
樹脂(A)と樹脂(B)が互いに分散混合した後にペレットとし、該ペレットを電離性放射線を照射して樹脂(A)を架橋させる第二工程と、
樹脂(A)の架橋体がゲル膨潤しうる含浸材(C)と、前記照射後の樹脂(A)樹脂(B)混合物とからなるペレットを加熱混練し、該混練物をペレットとする第三工程とからなる。
【0029】
図2は、前記第一〜第三工程における樹脂組成物の状態を模式的に示している。
図2(a)は第一工程で、電離性放射線架橋性の生分解性樹脂(A)と電離性放射線非架橋性の熱可塑性樹脂(B)を混練して互いに分散混合した状態を表す。
(b)は第二工程で、電離性放射線を照射して生分解性樹脂(A)に架橋構造を施した状態を表す。
(c)は第三工程で、(b)の状態から再び加熱流動させて含浸材(C)を混合し、生分解性樹脂(A)の架橋体をゲル膨潤させた状態を表し、本発明の樹脂組成物の構成を示す模式図である。
さらに、図2(d)は模式図(b)の状態における生分解性樹脂(A)の架橋体を拡大して示す模式図である。
図2(e)は模式図(c)の状態における生分解性樹脂複合体を拡大した模式図であり、生分解性樹脂(A)の架橋体中に含浸材(C)が含浸している状態を表す。
【0030】
前記第一工程で、図2(a)に示すように、生分解性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)を加熱して溶融状態とし、樹脂(A)と樹脂(B)が互いに分散混合した状態とする。
分散状態を微細な分散状態とするため、例えば、相溶化剤の使用や高剪断混練などに代表されるナノコンポジット、ポリマーアロイまたはポリマーブレンドなどの技術分野における自体公知の手法を用いて良い。このとき、必要に応じて架橋助剤や化学開始剤などを同時に混練しておく。
この第一工程で、数十μm以下の微細な粉末粒子にすることが難しい熱可塑性樹脂(B)を、他の樹脂(A)と加熱混練することで、ミクロンサイズやナノサイズにすることができる。
【0031】
前記第二工程で、混練物のペレットに電離性放射線を照射すると、図2(b)のように生分解性樹脂(A)を架橋する。生分解性樹脂(A)の架橋体を微視的に見ると図1(d)に示したように、生分解性樹脂(A)の分子同士は架橋Xにより相互に拘束されている。
この第二工程で、電離性放射線を照射することで、生分解性樹脂(A)は含浸材(C)を吸収する能力をもったナノサイズやミクロンサイズの架橋された生分解性樹脂(A)が熱可塑性樹脂(B)と相互に分散したものを得ることができる。
【0032】
前記第三工程で架橋した生分解性樹脂(A)と架橋していない熱可塑性樹脂(B)の混練物からなるペレットを、生分解性樹脂の架橋体をゲル膨潤させうる含浸材(C)とを加熱混練する。
架橋された生分解性樹脂(A)は熱可塑性を失っているが、熱可塑性樹脂(B)が溶融するため全体としては軟化して、含浸材(C)と混練可能な溶融状態となる。加熱することで生分解性樹脂(A)の架橋体の非結晶部分が運動し始め、液体状の含浸材(C)が生分解性樹脂(A)の架橋体内に吸収され、生分解性樹脂(A)の架橋体はゲル膨潤する。一方、熱可塑性樹脂(B)には分子同士を拘束する架橋が存在しないため含浸材(C)が浸入してゲル膨潤することはない。そのため、混練された含浸材(C)は吸収能力の高い生分解性樹脂(A)に主に吸収されることとなる。これにより、図2(c)に示すように、生分解性樹脂(A)中に含浸材(C)が含有される。微視的に見ると図1(e)に示すように生分解性樹脂(A)の架橋Xのネットワーク中に含浸材(C)が含浸されている。
含浸材(C)は生分解性樹脂(A)の分子間の相互作用を阻止するため、ガラス転移温度以下の温度でもガラス転移温度以上のときの柔軟な状態が維持され、優れた柔軟性および衝撃吸収性を示すようになる。そのうえ、生分解性樹脂(A)と含浸材(C)との複合体においては生分解性樹脂(A)分子間の架橋Xがほぼ完全な形で形成されていることから、ガラス転移温度以上の温度になっても生分解性樹脂(A)分子同士の拘束が解かれることがないため、強度の低下を防ぐことができ、形状を保つことができる。
【0033】
前記のように、第一〜第三工程で製造することより、含浸材(C)が生分解性樹脂(A)に含浸した生分解性樹脂複合体がミクロンサイズ以下の微細な粒子として熱可塑性樹脂(B)中に分散した樹脂組成物が得られる。
【0034】
前記各工程について、以下に詳述する。
生分解性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の混合物を作製する前記第一工程において、まず、生分解性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)を加熱により軟化させるか、あるいは生分解性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)が溶解しうる溶媒中にこれらを溶解または分散させる。かつ、架橋助剤を添加する。
前記樹脂(A)と前記樹脂(B)が互いに分散し、架橋助剤や他の成分を添加した場合はこれらが均一になるように撹拌混合し、混練物を調整する。混練温度、混練時間は生分解性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および架橋助剤等の種類によって適宜選択する。
ついで、先に溶媒を用いた場合には溶媒を乾燥除去しても良い。さらに、得られた混練物は、取り扱いを容易とするため、ペレット状とする。なお、シート状、ロッド状に成形しても良い。
【0035】
前記生分解性樹脂(A)は、放射線照射で架橋できる生分解性樹脂であればよく、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルのコポリマー、疎水性多糖類の中から選ばれる1種類あるいは2種類以上の生分解性樹脂であることが好ましい。
【0036】
具体的には、脂肪族ポリエステルとしては、ε−カプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートアジペート、L体およびD体のポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレートもしくはポリヒドロキシアルカン酸、またはこれらのコポリマーが挙げられる。
脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルのコポリマーとしては、ポリブチレンアジペートテレフタレートなどの前記脂肪族ポリエステルにテレフタル酸など芳香族を導入した化合物が挙げられる。
疎水性多糖類としては、例えばセルロース、デンプン、キチン、キトサンまたはアルギン酸等の天然多糖類をアセチル化に代表されるエステル化等した誘導体等が挙げられる。
なかでも、生分解性樹脂(A)としては、疎水性多糖類である酢酸セルロース(CDA)、脂肪族ポリエステルであるL体およびD体のポリ乳酸、ε−カプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルのコポリマーであるポリブチレンアジペートテレフタレート等を用いることが好ましく、L体およびD体のポリ乳酸を用いることが特に好ましい。
【0037】
前記電離性放射線非架橋性の熱可塑性樹脂(B)は、架橋助剤を用いても電離性放射線照射により全く架橋しないか、ほとんど架橋せず、電離性放射線照射後も熱可塑性を失わない樹脂であればいずれでも良い。該熱可塑性樹脂(B)は生分解性樹脂(A)との混練物全体の流動性を維持する役割を担うものである
【0038】
熱可塑性樹脂(B)として、具体的には、フッ素系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリカーボネートやアクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(ABS)等のエンジニアリングブラスチック;ポリウレタン系、オレフィン系、スチレン系もしくはアミド系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。なかでも、ポリカーボネート樹脂やフッ素系樹脂が好適である。
【0039】
生分解性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の混合比率は目的とする物性や用途などに応じて相違するが、質量比で生分解性樹脂(A):熱可塑性樹脂(B)=1:0.1〜1が好ましい。
【0040】
生分解性樹脂(A)の架橋を誘起あるいは促進するために生分解性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の混練物に架橋助剤を配合している。
前記架橋助剤としては、電離性放射線の照射などにより架橋できるモノマーであれば特に制限を受けないが、例えばアクリル系もしくはメタクリル系の架橋助剤またはアリル系架橋助剤が挙げられる。
【0041】
前記アクリル系もしくはメタクリル系の架橋助剤としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0042】
前記アリル系架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジアクリルクロレンテート、アリルアセテート、アリルベンゾエート、アリルジプロピルイソシアヌレート、アリルオクチルオキサレート、アリルプロピルフタレート、ブチルアリルマレート、ジアリルアジペート、ジアリルカーボネート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルフマレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルフタレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、ジアリルセバセート、ジアリルサクシネート、ジアリルテレフタレート、ジアリルタトレート、ジメチルアリルフタレート、エチルアリルマレート、メチルアリルフマレート、メチルメタアリルマレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0043】
前記架橋助剤のうちで、比較的低濃度で高い架橋度を得ることができることからアリル系架橋助剤を用いることが好ましい。なかでもトリアリルイソシアヌレート(以下、TAICという)は生分解性樹脂に対する架橋効果が高いために特に好ましい。また、TAICと加熱によって相互に構造変換しうるトリアリルシアヌレートを用いても実質的に効果は同じである。
【0044】
前記架橋助剤は、生分解性樹脂(A)の種類にもよるが、生分解性樹脂(A)100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下の割合で配合していることが好ましい。より好ましくは3質量部以上8質量部以下である。これは、架橋助剤の配合量が3質量部未満であると、架橋助剤による生分解性樹脂の架橋効果が十分に発揮されず、含浸材との加熱混練時または生分解性樹脂のガラス転移温度もしくは軟化温度以上の高温時において複合体の強度が低下し、最悪の場合形状を維持できなくなる可能性があるからである。一方、架橋助剤の配合量を8質量部以下としているのは、架橋助剤の配合量が8質量部を超えると、生分解性樹脂に架橋助剤全量を均一に混合するのが困難になり、実質的に架橋効果に顕著な差が出なくなるからである。
【0045】
第一工程で調製する混練物には、前記生分解性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および架橋助剤以外に、本発明の目的に反しない限り、他の成分を配合しても良い。
例えば、生分解性樹脂以外の樹脂成分、硬化性オリゴマー、各種安定剤、難燃剤、帯電防止剤、防カビ剤もしくは粘性付与剤等の添加剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉末、タルク、マイカもしくはシリカ等の無機・有機充填材、染料もしくは顔料などの着色剤等を配合することもできる。
特に、生分解性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との間の接着力が低い場合には、混合物全体の強度低下を抑制するため、各種相容化剤を配合することができる。前記相容化剤としては無水マレイン酸変性ポリマーまたはアクリル変性ポリマー等を用いることができ、例えば三洋化成(株)製「ユーメックス(商品名)」、三菱レイヨン(株)製「メタブレン(商品名)」等の市販品を用いることができる。
【0046】
第二工程で前記混練物からなるペレットに電離性放射線を照射し、生分解性樹脂(A)を架橋させる。
電離性放射線としてはγ線、エックス線、β線またはα線などが使用できるが、工業的生産にはコバルト−60によるγ線照射や、電子線加速器による電子線照射が好ましい。電離性放射線の照射は空気を除いた不活性雰囲気下や真空下で行うのが好ましい。電離性放射線の照射によって生成した活性種は空気中の酸素と結合して失活すると架橋効果が低下するためである。
【0047】
前記生分解性樹脂(A)を架橋する電離性放射線の照射量は50kGy以上200kGy以下が好ましい。
架橋助剤の配合量によっては電離性放射線の照射量が1kGy以上10kGy以下であっても生分解性樹脂(A)の架橋は認められるが、ほぼ100%の生分解性樹脂(A)分子を架橋するには電離性放射線の照射量が50kGy以上であることが好ましい。さらに、後の工程で液体状の含浸材で膨潤させたときに形状の変化を抑えて均一に膨潤させるためには、電離性放射線の照射量が80kGy以上であることが好ましい。
一方、電離性放射線の照射量が200kGy以下であることが好ましいとしているのは、電離性放射線の照射量が200kGyを超えると生分解性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の分解を進行させることになるからである。電離性放射線の照射量の上限値は150kGyが好ましく、100kGyでより好ましい。
【0048】
なお、前記電離性放射線による照射に変えて、生分解性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および架橋助剤に加えて、化学開始剤を予め混合しておき、化学開始剤が熱分解する温度まで上げることによって、生分解性樹脂(A)を架橋することができる。
化学開始剤としては、熱分解により過酸化ラジカルを生成する過酸化ジクミル、過酸化プロピオニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジアシル、過酸化ペラルゴニル、過酸化ミリストイル、過安息香酸−t−ブチルもしくは2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの過酸化物触媒をはじめとするモノマーの重合を開始する触媒であればいずれでも良い。
架橋させるための温度条件は化学開始剤の種類により適宜選択することができる。架橋は、放射線照射の場合と同様、空気を除いた不活性雰囲気下や真空下で行うのが好ましい。
【0049】
第二工程においては、生分解性樹脂(A)をほぼ完全に架橋することが重要である。架橋されていない生分解性樹脂(A)を次の第三工程において含浸材(C)と混練したときは溶解してしまうか膨潤しないかのいずれかとなる。よって、形状を保ったまま含浸材で膨潤させるためには架橋ネットワークが樹脂の中に導入されていることが必須条件となる。この架橋ネットワークは成形品となった場合に強度低下の抑制および形状保持生の向上にも供する。また、含浸材(C)を含浸させる前に生分解性樹脂を架橋しておけば、含浸材の選択の際には放射線などの架橋手段に対する耐性や架橋阻害について考慮する必要がなく、含浸材(C)は生分解性樹脂(A)との相性のみで任意に選択でき、含浸材(C)に無関係に生分解性樹脂(A)の架橋状態を制御することができる。
【0050】
生分解性樹脂(A)の架橋体において生分解性樹脂がほぼ完全に架橋していることの指標として、前記架橋体のゲル分率が80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、より好ましくは実質的に100%としている。
なお、ゲル分率が実質的に100%となる場合でも、架橋点の量、すなわち架橋密度が重要で、架橋密度を上げていくことで含浸材の含有量を制御することが可能である。これは、架橋ネットワーク構造が緻密になることで構造変化・体積変化しにくくなることを利用しており、生分解性樹脂架橋物を形成する際の架橋助剤の量、架橋させる電離性放射線の量などを増減させることで架橋密度を増減させて、含浸材の含浸量を制御することが可能である。
【0051】
次の第三工程で、生分解性樹脂(A)の架橋体と熱可塑性樹脂(B)の混練物に含浸材(C)を混合し、加熱混練を行う。
含浸材(C)の添加量は、生分解性樹脂(A)に対して5質量%以上60質量%以下であることが好ましい。生分解性樹脂複合体のガラス転移温度以下での柔軟性を確保するために、含浸材の添加量を5質量%以上としている。より柔軟性向上効果を発揮させるためには含浸材の添加量が10%以上が好ましく、特に20%以上が好ましい。含浸材の添加量を60%以下としているのは、生分解性樹脂(A)のゲル膨潤による含浸材の吸収力が60〜80%程度であるから、含浸材の添加量が60%を超えると含浸材が析出するといういわゆるブリードが起こりえるためである。含浸材の添加量は50%以下が好ましい。
【0052】
混練方法としては特に限定されず公知の方法に従って良い。例えば2本あるいはそれ以上のロール混練機、ニーダー、1軸もしくは2軸混練機や押出機等が利用できる。
なかでも、剪断力の強い機器を用いて混練すれば、熱可塑性樹脂(B)中に分散した生分解性樹脂複合体をさらに微細な粒子状に粉砕することができ好ましい。具体的には回転軸が剪断力をかけやすい形状、例えば深溝形状となっているかあるいは回転軸が高速回転できる高剪断タイプの混練機や押出機、または高圧をかけた状態で混練剪断できる加圧ニーダーを用いることが好ましい。より具体的には、例えば二条深溝スクリューを有する東芝機械(株)性の高剪断二軸混練機TEM−26SSを利用した場合は、スクリュー回転速度200rpm以上であることが好ましく、より好ましくは400rpm以上、さらに好ましくは700rpm以上である。回転数の上限はより細かく粉砕する観点では特に限定されないが、回転が速すぎるとロッドの押出速度が安定せず連続製造が困難になるため、生分解性樹脂の種類にもよるが1200rpm程度が限界である。
【0053】
混練温度は熱可塑性樹脂(B)の融点あるいは軟化点以上の温度で混合物全体が流動して含浸材(C)を混練できる温度であれば良い。具体的には熱可塑性樹脂(B)としてポリカーボネートを用いた場合、混練温度は200〜250℃、生分解性樹脂(A)の分解を考慮すると200〜230℃がより好ましい。
【0054】
前記含浸材(C)は、常温で液体状のもの、または常温では固体であっても加熱して融解し液体となるものであれば、特に限定なく使用することができる。なかでも、可塑剤を含む含浸材と重合性モノマーのいずれか一方または両方を含む含浸材を用いることが好ましい。
【0055】
前記可塑剤を含む含浸材(C)は、生分解性樹脂(A)内に含浸させる必要から生分解性樹脂(A)との親和性が高いものが好ましい。よって、含浸材(C)としては、弱くとも極性を有し、且つ分子量が大きくないものが好ましく、生分解性樹脂またはその誘導体が最も適している。
具体的には、前記可塑剤は以下の(a)〜(c)の少なくとも1種を含有するものが好適に用いられる。
(a)脂肪族ポリエステル誘導体またはロジン誘導体を含む可塑剤
(b)ジカルボン酸誘導体を含む可塑剤
(c)グリセリン誘導体を含む可塑剤
なかでも、本発明の生分解性樹脂複合体の生分解性をより高く保つために生分解性を有することが好ましく、具体的には生分解性樹脂をはじめとする脂肪酸ポリエステルの低分子量物もしくはその誘導体、ジカルボン酸およびグリセリン誘導体、ラクトン類などの生分解性の認められている可塑剤が好適である。
【0056】
前記脂肪族ポリエステル誘導体としては、主成分として脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸もしくはその誘導体との重縮合体および共重縮合体、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸もしくはその誘導体およびヒドロキシカルボン酸との共重縮合体等が挙げられ、より具体的には、例えばα−ヒドロキシカルボン酸類(例えばグリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸など)、ヒドロキシジカルボン酸類(例えばリンゴ酸など)、ヒドロキシトリカルボン酸類(例えばクエン酸など)などの一種以上から合成された重合体、共重合体あるいはこれらの混合物などが挙げられる。なかでも、脂肪酸ポリエステル誘導体としては生分解性樹脂を用いることが好ましい。
前記脂肪族ポリエステルの分子量は、生分解性樹脂(A)の分子量よりも小さいことが好ましい。具体的には1×105以下、より好ましくは1×104以下、更に好ましくは1×102〜1×103である。
前記脂肪族ポリエステルの誘導体としては、脂肪族ポリエステルを化学修飾した公知の化合物を用いることができる。なかでも、生分解性樹脂誘導体を含む可塑剤である荒川化学工業(株)製「ラクトサイザーGP−4001(商品名)」を用いることが好ましい。
【0057】
前記ロジン誘導体としては、ガムロジン、ウッドロジンもしくはトール油ロジン等の原料ロジン類、該原料ロジンを不均化または水素化処理した安定化ロジンや重合ロジン、その他ロジンエステル類、強化ロジンエステル類、ロジンフェノール類、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
なかでも、本発明においては、ロジン誘導体を含む可塑剤である荒川化学工業(株)製「ラクトサイザーGP−2001(商品名)」を用いることが特に好ましい。
【0058】
前記ジカルボン酸誘導体としては、ジカルボン酸のエステル体、ジカルボン酸の金属塩またはジカルボン酸の無水物等が挙げられる。
なかでも、前記ジカルボン酸誘導体としては、特にシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸またはフタル酸などのジカルボン酸の、アセチル化体に代表されるエステル化体が好ましい。特に、本発明においてはアジピン酸エステルである大八化学工業(株)製「DAIFATTY−101(商品名)」を用いることが好ましい。
【0059】
前記グリセリン誘導体としては、グリセリンをエステル化した誘導体が挙げられる。より具体的には、グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステルまたはグリセリン脂肪酸トリエステルが挙げられる。
なかでも本発明においてはトリアセチルグリセリド(通称トリアセチン)、アセチル化モノグリセライドである理研ビタミン(株)製「リケマールPL(シリーズ)」などのアセチル化されたグリセリンがグリセリン誘導体として好適である。
【0060】
その他、前記可塑剤として、薬剤、農薬、薬品や食品などの有用物質を用いても良い。有用物質を含浸材として用い、生分解性樹脂(A)の架橋ネットワークに有用物質を担持させることにより、生分解性樹脂(A)が生分解されるにつれて有用物質が徐放されるという徐放システムを構築することができる。
含浸材として用いる薬剤、薬品としては、徐放システムのように本発明の成形材料の周囲に作用するものだけに限定されず、例えば本発明の成形材料自体に作用し、耐久性を向上させる老化防止剤や加水分解抑制剤等を用いることができる。例えば、生分解性樹脂(A)にポリ乳酸を使用した場合、加水分解しやすいポリ乳酸の性質を改良するために、含浸材にカルボジイミド等の加水分解抑制剤を溶解させておき、一緒に複合化する等の方法を用いることができる。
前記可塑剤として、メタノールやDMSO(ジメチルスルオキシド)等の極性溶媒を用いても良い。極性溶媒を使用して架橋ネットワーク構造の中に含有させることにより、ゲル濾過や液体クロマトグラフィなどの分子篩いに応用することができる。
【0061】
含浸材(C)として重合性モノマーを用いる場合は、生分解性樹脂(A)の架橋ネットワークの中で重合性モノマーを固定する目的で、重合性モノマーをグラフト重合、あるいは重合性モノマーを生分解性樹脂(A)に複合化して内部でポリマー化し、ポリマーアロイとすることが可能である。ポリマーアロイ化することによって、生分解性樹脂(A)と重合性モノマーが重合して生成するポリマーの両者の特性を合わせた硬さ等の性質のものを作製することができる。
【0062】
前記重合性モノマーとしては、電離性放射線の照射などにより架橋できるモノマーであれば特に制限を受けないが、下記の(d)〜(h)の少なくとも1種類を含有することが好ましい。
(d)アクリル酸系モノマーあるいは/およびアクリル基を有する低分子量ポリマー
(e)メタクリル酸系モノマーあるいは/およびメタクリル基を有する低分子量ポリマー
(f)スチレン系モノマー
(g)アリル系モノマーあるいは/およびアリル基を有する低分子量ポリマー
(h)カルボン酸ビニル系モノマー
なかでも、メタクリル系モノマーを含む含浸材がより好ましい。
【0063】
前記アクリル系もしくはメタクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記アクリル基を有する低分子量ポリマーもしくはメタクリル基を有する低分子量ポリマーとしては、前記アクリル系もしくはメタクリル系モノマーの1種類あるいは2種類以上を重合させて得られる分子量が100〜1000程度の低分子量ポリマーが挙げられる。
【0064】
前記スチレン系モノマーとしては、スチレン、p−メチルトルエンなどの主としてそのパラ位に官能基を備えたもの、スチレンスルフォン酸塩、クロロスチレン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。
【0065】
前記アリル系モノマーとしては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジアクリルクロレンテート、アリルアセテート、アリルベンゾエート、アリルジプロピルイソシアヌレート、アリルオクチルオキサレート、アリルプロピルフタレート、ブチルアリルマレート、ジアリルアジペート、ジアリルカーボネート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルフマレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルフタレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、ジアリルセバセート、ジアリルサクシネート、ジアリルテレフタレート、ジアリルタトレート、ジメチルアリルフタレート、エチルアリルマレート、メチルアリルフマレート、メチルメタアリルマレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
前記アリル基を有する低分子量ポリマーとしては、前記アリル系モノマーの1種類あるいは2種類以上を重合させて得られる分子量が100〜1000程度の低分子量ポリマーが挙げられる。
【0066】
前記カルボン酸ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、デカン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。
【0067】
前記含浸材(C)として重合性モノマーを含む含浸材を用いる場合は、生分解性樹脂(A)の架橋体および熱可塑性樹脂(B)の混合物と前記含浸材(C)とを加熱混練と同時にもしくはその後で、前記含浸材を重合させる。
重合性モノマーの重合には、生分解性樹脂(A)の架橋と同様、電離性放射線を用いることが好ましい。その場合、使用する電離性放射線は、生分解性樹脂(A)の架橋と同じであり、γ線、エックス線、β線あるいはα線などが使用できる。工業的生産にはコバルト−60によるγ線照射や電子線加速器による電子線が好ましい。照射量は含浸させた重合性モノマーの量にも多少依存するが、生分解性樹脂(A)の架橋ほどの量は必要なく、数kGyから数10kGyでも効果がある。
【0068】
また、電離性放射線照射による生分解性樹脂(A)の架橋工程の直後に重合性モノマーを含む含浸材の混練を行う場合には、電離性放射線照射によって生分解性樹脂(A)に発生したラジカルを利用して前記重合性モノマーを生分解性樹脂にグラフト重合させることができる。すなわち、ラジカルが消失する前に含浸材を混練することによって、残存ラジカルにより重合モノマーをグラフト重合させることができる。この場合には重合性モノマーを重合させる工程を省略することができるため、より好ましい。
【0069】
電離性放射線の照射等により発生したラジカルは空気中の酸素等との反応や熱によるゆらぎで徐々に失われていくため、生分解性樹脂(A)および含浸材(C)の種類にもよるが、電離性放射線照射による生分解性樹脂(A)の架橋を行ってから略1〜24時間以内、好ましくは1〜12時間以内、より好ましくは1〜5時間以内に重合性モノマーを含む含浸材の混練を行えば、電離性放射線の照射なしで重合性モノマーを重合させることができる。
【0070】
重合性モノマーの重合は化学開始剤を用いた方法でも行うことができる。この場合、生分解性樹脂(A)の架橋体および熱可塑性樹脂(B)の混合物に重合性モノマーを含む含浸材(C)を混練する際に同時に化学開始剤も添加し、化学開始剤が熱分解する温度まで加熱し混合することで、含浸材の生分解性樹脂(A)への含浸と重合性モノマーの重合とを一気に行うことができ、別工程とする必要がなくなることから好ましい。
前記化学開始剤としては生分解性樹脂(A)の架橋の際に用いる化学開始剤と同一の例が挙げられる。
【0071】
この第三工程において、生分解性樹脂(A)の架橋体の架橋ネットワーク内に含浸材が含浸され、生分解性樹脂(A)の架橋体がゲル膨潤した状態で室温付近まで冷却することにより、本発明の成形材料が得られる。冷却は放冷により徐々に冷却しても良いし、水冷などにより急冷しても良い。
本発明の樹脂組成物からなる成形材料においては、生分解性樹脂複合体と熱可塑性樹脂(B)とがコポリマーに準ずるレベルの極めて均一な状態で共存していることが特徴である。具体的には生分解性樹脂複合体が平均粒子径1nm〜10μmの微細な粒子として熱可塑性樹脂(B)中に分散されている。ここで生分解性樹脂複合体の粒子は必ずしも真円とは限らないため、ここで言う平均粒径は電子顕微鏡写真における生分解性樹脂複合体の島の面積から円換算で求めたものを言う。
【0072】
前記第三工程において混練した混練物をペレットとしている。
該ペレットとした樹脂組成物は成形材料として用いられる。該成形材料を熱可塑性樹脂(B)の融点または軟化点以上に加熱して成形し、生分解性樹脂製の成形品を製造している。
成形方法は特に限定されず、溶融押出成形、射出成形、インフレーション成形、圧延成形、カレンダー成形など熱可塑性樹脂の一般的な成形方法を用いて良い。
成形品の形状も特に限定されず、シート、フィルム、繊維、トレイ、容器または袋などの所望の形状に成形できる。
【0073】
なお、前記のように、第三工程で取得した混練物を押出機とペレタイザーを用いる公知方法を用いて一旦ペレット状にした後、成形を行うことが好ましいが、ペレット化せずに、混練物を連続して成形品に成形しても良い。この場合は、射出成型機や押出成型機の混練ゾーンを利用したり、射出成型機や押出成型機に混練機を接続している。
【0074】
以下、本発明について実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
(実施例)
生分解性樹脂(A)として三井化学(株)製ポリ乳酸「レイシア(LACEA)H440」を、熱可塑性樹脂(B)として三菱ガス化学(株)製ポリカーボネート「ユーピロン(Iupilon)S3000」を使用した。アリル系架橋助剤の1種であるTAIC(デグサジャパン(株)製「TAICROS」)を用意し、押出機(池貝鉄工(株)製PCM30型)を用いてシリンダ温度230℃で生分解性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)を溶融押出する際に押出機のペレット供給部にTAICをペリスタポンプにて定速滴下することで生分解性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)にTAICを添加した。その際、生分解性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、TAICの配合量が生分解性樹脂(A):熱可塑性樹脂(B):TAIC=50質量部:50質量部:5質量部になるように添加量を調整した。棒状に押し出したものは水冷ののちにペレタイザーにてペレット化し、生分解性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)と架橋助剤のペレット状混練物を得た。
【0076】
このペレット状混練物に対し、空気を除いた不活性雰囲気で電子加速器(加速電圧10MeV、電流量12mA)により電子線を90kGy照射し、ペレット状の樹脂架橋物を得た。
【0077】
得られた樹脂架橋物に、含浸材を生分解性樹脂(A)と同じ質量比になるように配合し、押出機(池貝鉄工(株)製PCM30型)を用いてシリンダ温度230℃でロッド状に押し出したものをペレタイザーにてペレット状に切断した。含浸材としては、ジカルボン酸誘導体を主成分とする可塑剤である大八化学工業(株)製可塑剤「DAIFATTY−101」を用いた。最終的な配合比率(質量部)は生分解性樹脂(A):熱可塑性樹脂(B):架橋助剤:可塑剤=50:50:5:50である。
最後に、得られた本発明の成形材料を230℃で熱プレスすることで厚み500μmのシートを得た。
【0078】
(比較例1,2)
生分解性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)と架橋助剤のペレット状混練物に対し電子線照射を行わなかったこと以外は実施例と同様にして比較例1とした。
生分解性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)と架橋助剤のペレット状混練物に対し電子線照射を行わず、成形されたシートに対し実施例と同様に90kGyの電子線照射を行ったこと以外は実施例と同様にして比較例2とした。
【0079】
実施例および比較例において得られたシートは、いずれも半透明で均一で柔軟なシートであった。
これらのシートを80℃恒温漕内で24時間放置してシートの変化について観察し、耐熱性の評価を行った。具体的には、目視で可塑剤の表面への染み出し・反り変形・白濁の有無を確認し、いずれも確認されず均一に見えた場合を「◎」と、いずれかの変化が見られたが軽微な場合を「○」と、2つ以上の変化が見られる場合を「△」と、染み出し・反り変形・白濁の全てが見られた場合を「×」と評価した。
【0080】
前記評価結果を、製造条件の相違点とともに下記表に示す。
【表1】

【0081】
実施例のシートは、耐熱性試験後においても可塑剤の表面への染み出し・反り変形・白濁のいずれも見られず、耐熱試験前の状態と変化は見られなかった。
しかし、比較例2のシートは、耐熱性試験後において可塑剤の表面への染み出しと反り変形が若干見られた。比較例1のシートは比較例2のシートよりもさらに可塑剤の染み出しと反り変形が激しく、シートの白濁も見られた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の生分解性樹脂架橋体がナノサイズからミクロンサイズで熱可塑性樹脂中に分散された樹脂組成物は、汎用されている樹脂と同様に各種のプラスチック成形品の材料として用いることができる。
例えば、生体への影響がない点から、生体内外に利用される注射器やカテーテルなどの医療用器具への適用が可能な材料である。
また、生分解性樹脂の生分解性および生体適合性あるいは生体内分解性を考えれば、本発明の生分解性樹脂製の成形材料または成形品をその坦特性を利用した有用物質の徐放システム等に応用することができる。すなわち、薬剤や薬品などの有用物質を含浸材(C)として生分解性樹脂(A)に含浸して複合化させれば、生分解性樹脂が分解するにつれて含浸されていた有用物質が徐々に放出されることとなる。このように本発明の生分解性樹脂製の成形材料および成形品は広範囲の技術分野に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の樹脂組成物の製造工程を示すブロック図である。
【図2】前記各製造工程における樹脂組成物の構成を模式的に示す図面である。
【符号の説明】
【0084】
A 電離性放射線架橋性の生分解性樹脂
B 電離性放射線非架橋性の熱可塑性樹脂
C 含浸材
X 電離性放射線架橋性の生分解性樹脂の架橋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離性放射線架橋性の生分解性樹脂(A)と電離性放射線非架橋性の熱可塑性樹脂(B)を加熱混練する第一工程と、
樹脂(A)と樹脂(B)が互いに分散混合した状態で、電離性放射線を照射して、樹脂(A)を架橋させる第二工程と、
樹脂(A)の架橋体がゲル膨潤しうる含浸材(C)と該照射後の樹脂(A)樹脂(B)混合物を加熱混練する第三工程と、
を備えることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第一工程で得た樹脂(A)と樹脂(B)とが分散混合した混練物をペレット状、シート状またはロッド状として、前記第二工程で電離性放射線を照射している請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
ゲル膨潤状態の生分解性樹脂(A)の架橋体の粒子が、非架橋性の熱可塑性樹脂(B)に分散混合されていることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
前記非架橋性の熱可塑性樹脂(B)は、電離性放射線により架橋されない電離性放射線非架橋性の熱可塑性樹脂である請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記電離性放射線架橋性の生分解性樹脂(A)は、脂肪族ポリエステル、脂肪族および芳香族のポリエステルコポリマー、疎水性多糖類の中から選ばれる1種類あるいは数種類を含む請求項3または請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記生分解性樹脂(A)の架橋体の粒子の平均粒径は1nm〜10μmである請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の方法で製造された請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形材料。
【請求項9】
請求項8に記載の成形材料を用いて成形された成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−298938(P2009−298938A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155678(P2008−155678)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】