説明

樹脂組成物及びこの樹脂組成物を含有する被膜形成材料

【課題】
スクリーン印刷後に発生する消泡跡やピンホールを改善させや耐湿性や印刷作業性を向上させた樹脂組成物及びそれを含む皮膜形成材料を提供する。
【解決手段】
平均粒子径の異なる3種類の無機フィラーを所定比率で混合することを特徴とする樹脂組成物及びそれを含む皮膜形成材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷機、ディスペンサ、スピンコータ等の塗布方法に適したチクソトロピー性を有する樹脂組成物及びこの樹脂組成物を含有する被膜形成材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の分野においては、小型化、薄型化、高速化への対応から、耐熱性、電気特性及び耐湿性に優れる樹脂としてエポキシ樹脂に代わり、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂が使用されている。これらの樹脂は、樹脂構造が剛直であり薄膜基材に用いた場合、硬化後の基材が大きく反り、硬化膜は柔軟性に欠け、屈曲性に劣る間題がある。
【0003】
そこで、低反り性、柔軟性を改善するために、樹脂を可とう化及び低弾性率化した変性されたポリアミドイミド樹脂(引用文献1〜3参照)が提案されている。これら樹脂に、印刷性や作業性を向上させるために無機フィラーや有機フィラー等を樹脂溶液に分散させている。
【特許文献1】特開昭62−106960号公報
【特許文献2】特開平8−12763号公報
【特許文献3】特開平7−196798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気特性向上のために大量の無機フィラー、有機フィラー等を使用した樹脂組成物は、揺変性が増大し流動性が低下する問題がある。そして、揺変性が増大し流動性が低下すると、この樹脂組成物を用いた成形物は、スクリーン印刷時に巻き込まれた気泡が抜けづらくなり、樹脂硬化後に膜中に気泡が残留し、耐湿試験等の長期信頼性が低下する。また、スクリーン印刷時に巻き込まれた気泡が消泡した場合は、流動性が低下しているため消泡跡が発生し、場合によってはピンホールとなり長期信頼性や膜形成後の工程に悪影響を及ぼす問題がある
【0005】
本発明は、フィラーを用いても流動性を低下させず、長期信頼性も低下させることのない樹脂組成物を提供し、この樹脂組成物を含有した膜形成後の工程に悪影響を及ぼさない被膜形成材料をも提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、樹脂と、平均粒子径の異なる3種類の無機フィラーA、B及びCを含む樹脂組成物であって、無機フィラーAの平均粒子径が0.5μm以下であり、無機フィラーBの平均粒子径が0.8μm以上から3μm以下であり、無機フィラーCの平均粒子径が5μm以上から10μm以下であり、且つ、無機フィラーAの含有割合が、無機フィラーA、B及びCの総量に対して10%以下であり、無機フィラーBの含有割合が、無機フィラーA、B及びCの総量に対して30%以上であり、無機フィラーCの含有割合が、無機フィラーA、B及びCの総量に対して40%以上である樹脂組成物である。
(2)項(1)において、樹脂が、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、変性されたポリイミド樹脂、変性されたポリアミドイミド樹脂、又は、変性されたポリアミド樹脂から選ばれる1種以上を含む樹脂組成物である。
(3)項(1)又は(2)において、無機フィラーA、B及びCの合計含有量が、樹脂溶液固形分100重量部に対して100重量部〜300重量部である樹脂組成物である。
(4)項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する被膜形成材料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物及びこの樹脂組成物を含有する被膜形成材料は、3種類の平均粒子径の異なる無機フィラーを添加することにより、スクリーン印刷時の流動性を向上させることができる。そして、流動性を向上させることにより、消泡性、レベリング性が向上し、消泡跡やピンホールを発生させることなく印刷作業性や長期信頼性を得ることができる。
【0008】
本発明の樹脂組成物及びそれを含む皮膜形成材料は、上記の優れた特性を有し、電子部品用オーバーコート材、液状封止材、エナメル線用ワニス電気絶縁用含浸ワニス、積層板用ワニス、摩擦材料用ワニス、プリント基板分野などにおける層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト膜、接着層などや、半導体素子などの電子部品に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の樹脂溶液としては、熱硬化性、熱可塑性の樹脂等があり、熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂等が好適に用いられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂等が好適に用いられる。好ましくは、耐熱性や電気的特性を考慮してポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂及び変性されたポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂が用いられる。
【0010】
変性された樹脂としては、各種公知のものであれば特に制限はなく、例えば、シリコーン樹脂で変性されたもの、ポリカーボネート樹脂で変性されたもの、ポリブタジエンで変性されたもの等を挙げることができる。中でも、ポリカーボネート樹脂で変性されたポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0011】
ポリカーボネート樹脂で変性されたポリアミドイミド樹脂の場合、通常、可とう化及び低弾性率化成分である1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール等をカルボン酸と反応させて得られたジカルボン酸と、ポリイソシアネート及び酸無水物基を有する3価のカルボン酸又はその誘導体とを反応させて得ることができる。
【0012】
本発明で用いられる無機フィラーA、B及びCの合計添加量は、樹脂溶液固形分100重量部に対して300重量部から100重量部が好ましい。無機フィラー合計添加量が300重量部を超えて添加すると、樹脂皮膜の柔軟性が低下し反り性が徐々に大きくなり好ましくない。無機フィラー合計添加量が100重量部未満であると、流動性の向上効果が得られにくく好ましくない。
【0013】
本発明で用いる無機フィラーは、特に制約がなく、例えば、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化チタン、マイカ、タルク、炭酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、溶融シリカ、破砕シリカ、ヒュームドシリカ、硫酸バリウム、ガラス短繊維やホウ酸アルミニウムや炭化ケイ素等の各種ウィスカ等が用いられる。また、これらを数種類併用しても良い。
【0014】
本発明で用いられる無機フィラーAの平均粒子径は、0.5μm以下が好ましく、平均粒子径が0.5μm以下であれば数種類併用しても良く、フィラーの形状等、特に限定するものではない。無機フィラーAの平均粒子径が0.5μmを超えると、スクリーン印刷時に回路間に発生する流れ出しが増大し好ましくない。無機フィラーAの添加量は、無機フィラーA、B及びCの合計添加量の10%以下が好ましい。無機フィラーAの添加量が10%を超えると遥変性が大きくなりスクリーン印刷時の流動性の低下、消泡性等が低下し好ましくない。
【0015】
本発明で用いられる無機フィラーBの平均粒子径は、0.8μm以上から3μm以下が好ましく、平均粒子径が0.8μm以上から3μmであれば数種類併用しても良く、フィラーの形状等、特に限定するものではない。無機フィラーBの平均粒子径が3μm未満になるとスクリーン印刷時に回路間に発生する流れ出しが増大し好ましくない。無機フィラーAの平均粒子径が0.8μmを超えると遥変性が大きくなりスクリーン印刷時の流動性の低下、消泡性等が低下し好ましくない。無機フィラーAの添加量は、無機フィラーA、B及びCの合計添加量の30%以上が好ましい。無機フィラーBの添加量が30%未満になると遥変性が大きくなりスクリーン印刷時の流動性の低下、消泡性等が低下し好ましくない。
【0016】
本発明で用いられる無機フィラーCの平均粒子径は、5μm以上から10μm以下が好ましく、平均粒子径が5μm以上から10μmであれば数種類併用しても良く、フィラーの形状等、特限定するものではない。無機フィラーCの平均粒子径が10μmを超えると流動性が大きくスクリーン印刷時に回路間に発生する流れ出しが増大し好ましくない。無機フィラーAの平均粒子径が5μm未満になると、遥変性が大きくなりスクリーン印刷時の流動性の低下、消泡性等が低下しピンホールが発生し長期信頼性の低下原因となり好ましくない。無機フィラーCの添加量は、無機フィラーA、B及びCの合計添加量の40%以上が好ましい。無機フィラーCの添加量が40%未満になるとスクリーン印刷時の流動性の低下、消泡性等が低下しピンホールが発生し長期信頼性の低下原因となり好ましくない。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、各々、被膜形成材料として好適に用いられる。この樹脂組成物には、塗工時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、エポキシ樹脂類、レベリング剤等の界面活性剤類、染料又は顔料等の着色剤類、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、消泡剤、滑剤を添加することもできる。
【0018】
本発明の被膜形成材料は、各種電気製品や電子部品のスクリーン印刷、ディスペンサ、スピンコートなどの塗布方法に好適に用いられる。特にスクリーン印刷に好適に用いられる。
また、例えば、半導体素子、プリント基板分野などの電子部品用オーバーコート材、液状封止材、層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト層、接着層などとして好適に用いられる。更に、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、注型ワニス、マイカ、ガラスクロス等の基材と組み合わせたシート用ワニス、MCL積層板用ワニス、摩擦材料用ワニス、などにも使用できる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
攪拌機、油分分離機付冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた3リットルの四つ口フラスコに、プラクセルCD−220(ダイセル化学工業(株)製、1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオールの商品名)2000.0g(100モル)、アジピン酸292.0g(2.00モル)及びキシレン114.6gを仕込み、途中、副生してくる縮合水を除去しながら200℃まで昇温した。200℃で2時間反応させ、酸価49.7KOHmg/gのジカルボン酸Aを得た。
【0020】
ついで、攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた2リットルの四つ口フラスコに、4,4’−ジフェ二ルメタンジイソシアネート150.0g(0.60モル)、無水トリメリット酸69.12g(0.36モル)及び前記合成で得られたジカルボン酸A541.44g(0.24モル)及びγ―ブチロラクトン760.56gを仕込み、160℃まで昇温し反応させて、得られた樹脂をγ―ブチロラクトンで希釈し、不揮発分40重量%のポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
【0021】
得られたポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂溶液の固形分100重量部に対して、溶剤処理液を1重量部、シリコーン系消泡剤(信越化学工業(株)製 商品名:KS−603)を0.3重量部を配合し20℃で10分間攪拌し、更に、無機フィラーA(堺化学工業(株)製 商品名:B−30 平均粒子径:0.3μm)を10重量部、無機フィラーB(日本タルク(株)製 商品名:SG−95 平均粒子径:2.5μm)を110重量部、無機フィラーC(富士タルク(株)製 商品名:LMS−300 平均粒子径:5.5μm)を130重量部、を配合し、必要に応じてγ―ブチロラクトン等の溶剤を加えて50℃で1時間攪拌し、更に、Ep−1004(油化シェルエポキシ(株)製商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を20重量部を加え、20℃で1時間攪拌し、ポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂ペーストを得た。
【0022】
(実施例2)
実施例1に無機フィラーAを5重量部、無機フィラーBを65重量部、無機フィラーCを55重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂ペーストを得た。
【0023】
(比較例1)
実施例1に無機フィラーAを30重量部、無機フィラーBを75重量部、無機フィラーCを145重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂ペーストを得た。
【0024】
(比較例2)
実施例1に無機フィラーAを10重量部、無機フィラーBを60重量部、無機フィラーCを180重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行いポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂ペーストを得た。
【0025】
(比較例3)
実施例1に無機フィラーAを30重量部、無機フィラーBを120重量部、無機フィラーCを100重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を、行いポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂ペーストを得た。
【0026】
上記の実施例及び比較例で得られたポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂ペースト及びポリアミドイミド樹脂組成物の特性を下記の方法で測定し、結果を表に示した。
(a)耐湿性
銅箔上に、得られたポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂ペーストを印刷機(ニューロング(株)製 商品名:LS―34GX)とメッシュ版((株)ムラカミ製 150メッシュ)で印刷速度100mm/secで10mm角を印刷して乾燥前の印刷膜を得た。得られた乾燥前の印刷膜を空気雰囲気中90℃で30分乾燥後、空気雰囲気中160℃で60分加熱硬化して得られたポリアミドイミド樹脂被膜を121℃、2気圧の飽和蒸気中で100時間放置してポリアミドイミド樹脂被膜の表面を観察して剥離、膨れの有無を観察し、無いものを○、有るものを×とした。
【0027】
(b)印刷作業性
2mmのガラス板上に、得られたポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂ペーストを印刷機(ニューロング(株)製 商品名:LS―34GX)とメッシュ版((株)ムラカミ製 150メッシュ)で印刷速度100mm/secで100mm角を印刷し、空気雰囲気下で120℃、60分間加熱硬化してポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂被膜を得た。得られたポリカーボネート変性ポリアミドイミド樹脂皮膜を万能投影機(ニコン(株)製 倍率100倍)で観察して、樹脂皮膜の表面の観察をした。泡抜け跡、ピンホール、気泡が無い樹脂皮膜を○とし、泡抜け跡、ピンホール、気泡があるものを×とした。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
以上の結果から、次のことが分かる。
実施例1〜2は、平均粒子径が0.3、2.5、5.5μmの異なる3種類の無機フィラーを所定混合比で添加することにより流動性が向上しスクリーン印刷作業が改善し、消泡時に発生する消泡跡およびピンホールを発生させることなく印刷作業性に優れる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、平均粒子径の異なる3種類の無機フィラーA、B及びCを含む樹脂組成物であって、無機フィラーAの平均粒子径が0.5μm以下であり、無機フィラーBの平均粒子径が0.8μm以上から3μm以下であり、無機フィラーCの平均粒子径が5μm以上から10μm以下であり、且つ、無機フィラーAの含有割合が、無機フィラーA、B及びCの総量に対して10%以下であり、無機フィラーBの含有割合が、無機フィラーA、B及びCの総量に対して30%以上であり、無機フィラーCの含有割合が、無機フィラーA、B及びCの総量に対して40%以上である樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1において、樹脂が、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、変性されたポリイミド樹脂、変性されたポリアミドイミド樹脂、又は、変性されたポリアミド樹脂から選ばれる1種以上を含む樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2において、無機フィラーA、B及びCの合計含有量が、樹脂溶液固形分100重量部に対して100重量部〜300重量部である樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する被膜形成材料。


【公開番号】特開2006−348178(P2006−348178A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176315(P2005−176315)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】