説明

樹脂組成物及びこれを用いた木質成形体

【課題】
ウレタン分解物から再生樹脂を得る従来の方法では、分解物とそれと反応させる再生剤とを混合した際に室温でもこれらの反応が徐々に進むため、混合後に使用できる時間が短かく保存性が悪いという問題があった。
【解決手段】
本発明では、ウレタン樹脂分解物にホルムアルデヒドかメチロール基を有する化合物を反応させ樹脂組成物を得る。この樹脂組成物では加熱しないと反応がほとんど進まないため、混合後の保存性がよく、樹脂の無駄をなくすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び木質成型体に係り、とくに、ウレタン分解物を原料とした樹脂組成物及び木質成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂を含む廃棄物の例として、冷蔵庫、建材、クッション材などが挙げられる。近年、これら廃棄物のリサイクルに対する要望が高まっており、それぞれの素材において再利用が研究されている。しかし、ウレタン樹脂は、三次元の網目構造を有する熱硬化性樹脂であるためリサイクルが困難であり、そのリサイクルに関しては十分に研究が進んでおらず、現状は埋め立てや焼却などの処分がされている。
【0003】
一方、ウレタン樹脂を化学的に分解する方法としては、ウレタン樹脂をモノエタノールアミンで分解し、その後蒸留してポリオール及びポリアミンを単離する方法が知られている(特許文献1)。また、ウレタン分解液を再利用する技術として、ウレタン分解液をウレタンの原料(イソシアネート)に混ぜてウレタン樹脂を再生する方法(特許文献2)や、ウレタン分解液をエポキシ樹脂の硬化剤として用いて再利用する方法(特許文献3)が知られている。
【0004】
しかしながら、ウレタン分解液とイソシアネート又はエポキシとは重付加反応で架橋するため、これらを混合した後にウレタン分解物とこれら化合物との反応が室温で進むために、混合後の使用可能な時間(以後、可使時間という)が短いという問題があり、その用途が限られていた。そのため、大量に発生するウレタン樹脂廃棄物を有効に再利用する用途が見つけられていない。
【特許文献1】特開昭42−10634号公報
【特許文献2】特開平10−152578号公報
【特許文献3】特開2004−75721公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、ウレタン分解液とイソシアネート又はエポキシとの混合物は室温で反応してしまうため、可使時間が短いという問題があった。本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、ウレタン分解物を原料としつつ、可使時間の長い樹脂組成物を提供し、大量のウレタン樹脂廃棄物の有効利用できる樹脂組成物、あるいはこの樹脂組成物を利用した木質成型体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂組成物は、ウレタンを化学的に分解して得られた分解液とホルムアルデヒドを反応させた化合物であることを特徴とする。
【0007】
本発明の樹脂組成物は、ウレタンを化学的に分解して得られた分解液とメチロール基を有する化合物とを反応させて得られた化合物であることを特徴とする。
【0008】
前記メチロール基を有する化合物は、フェノール、尿素またはメラミンにホルムアルデヒドを付加反応させた化合物であることが好ましい。
【0009】
本発明の樹脂組成物は、複数の木質材料片と、前記木質材料片同士を接着する樹脂組成物とからなる木質成型体であって、前記樹脂組成物は、ウレタンを化学的に分解して得られた分解液とホルムアルデヒド及び/またはメチロール基を有する化合物とを反応させてなるものであることを特徴とする。
【0010】
ウレタンを化学的に分解した分解物は、ホルムアルデヒドとの間で重縮合反応によって樹脂組成物を合成する。すなわち加熱などの脱水反応を生じさせる積極的な合成操作を行なうことで反応が進み、常温・常圧では、実質的に合成は進まず、通常の保存環境下における可使時間が大幅に増大する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウレタンを化学的に分解した分解物を利用しつつ、可使時間の長い樹脂組成物、又はこの樹脂を用いた木質成型体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る樹脂組成物の各成分及び樹脂組成物の製造方法の実施形態について説明する。
【0013】
(ウレタン樹脂分解物)
ここで言うウレタン樹脂分解物とは、ウレタン樹脂を化学的に分解、すなわち低分子化させたものである。
【0014】
被分解物であるウレタン樹脂は、その用途等特に限定されるものではない。具体的には、発泡硬質ウレタン(硬質フォーム)、ヌレート結合を持つイソシアヌレート材、発泡半硬質ウレタン(半硬質フォーム)、発泡軟質ウレタン(軟質フォーム)、ウレタンエラストマー、RIM成型体等の種類があり、その用途としては、断熱材、構造材、寝具、自動車シート、バンパー、などが上げられる。
【0015】
ウレタン樹脂を化学的に分解する方法は、分解物中に水酸基、アミノ基を生成するものであれば特に方法は問わない。具体的には熱及び分解剤の少なくとも一方を作用させて化学的に分解する方法が挙げられる。
【0016】
熱による分解を行う際には、例えばウレタン樹脂を300℃〜500℃の温度で、常圧もしくは加圧状態下におくことにより行うことができる。但し、窒素雰囲気、無酸素雰囲気など、非酸化性雰囲気下で行なうことが望ましい。大気中で行なうとウレタン樹脂が酸素と急激に反応するため危険である。また、押出機などのスクリューフィーダや炉を用いて加熱分解を行うことができる。
【0017】
次に、分解剤を作用させて分解を行う方法について詳述する。
【0018】
分解剤の例としては、アミン類分解剤、ポリオール類分解剤、あるいは加水分解触媒などが挙げられる。その中でも、アミン類分解剤を用いることが好ましい。アミン類分解剤を用いた場合、分解物中に多くのアミノ基を含有するようになるので、後述するホルムアルデヒド及びまたはメチロール基との反応が良好になる。その結果、合成して得られる樹脂組成物に高い強度がでる。
【0019】
前記アミン類分解剤としては、一級アミン、二級アミン、三級アミンが挙げられ、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチレンジアミン、プロパンジアミン、イソプロパノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、エチルアミノエタノール、アミノブタノール、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、n−アミルアミン、イソブチルアミン、メチルジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペラジン、ピペリジン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、クロロアニリン、ピリジン、ピコリン、N−メチルモルフォリン、エチルモルフォリン、ピラゾール、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、12-アミノドデカン酸、2-エチルヘキシルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、3-(ジブチルアミノ)プロピルアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3-(メチルアミノ)プロピルアミン、3,3’-イミノビス(プロピルアミン)、3-アミノ-1-プロパノール、3−アミノクロトン酸メチル、3-メトキシプロピルアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、N,N,N',N'-テトラメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ブチルエタノールアミン、N-エチルエチレンジアミン、n-ヘキシルアミン、N-メチル-3,3’-イミノビス(プロピルアミン)、N-メチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、sec-ブチルアミン、t-ブチルアミン、アリルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジアリルアミン、ジイソブチルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ジエチレントリアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジブチルアミン、ジメチルアミン、テトラエチレンペンタミン、テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、テトラメチルエチレンジアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、プロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、モノイソプロパノールアミン、モノブチルアミン、モノメチルアミンが挙げられる。これらの化合物を2種類以上混合して使用しても問題はない。
【0020】
ウレタン樹脂分解物は、分解前のウレタン樹脂中にあるウレタン結合よりも少ない分解剤で低分子化するなどして、分解物中にウレタン結合が一部残るような状態にすることが好ましい。ウレタン結合が残っていると、再生した樹脂に元のウレタン樹脂の特性、例えば柔軟性等を付与することができる。
【0021】
また、分解が十分ではない場合、ウレタン樹脂分解物の粘度が高く、後の合成工程などにおける作業性に問題が生じる。
【0022】
具体的な平均分子量としては、用途により異なるが、通常ポリスチレン換算の平均分子量が500〜5000になるように分解すればよい。
【0023】
このような分解状態にするためには、元のウレタン樹脂の構造により多少異なるが、分解剤を被分解物であるウレタン樹脂100重量部に対し、5重量部〜100重量部、好ましくは10〜40重量部の分解剤で分解すればよい。
【0024】
分解剤を用いた場合の分解温度は150〜300℃で行えばよく、好ましくは200〜280℃である。これより温度が低いと、分解速度が遅くなり経済的に好ましくなく、これより温度が高いと熱分解が多くなり、安定した品質の分解物が得られない。
【0025】
これらの分解剤とウレタン樹脂を分解装置に投入してウレタン樹脂分解物を得る。分解装置には、従来知られているどのような分解装置を用いることもできるが、特に加熱・混合・圧縮の同時にできる押出機を用いることが望ましい。釜などのバッチ式で分解を行うと、ウレタンの熱伝導率が悪いため、ウレタン表面と内部との間で、ウレタンの分解開始時間に大きな差ができてしまう。このため、先に分解を始めた部分はより低分子量に、後に分解を始めた部分は高分子量になるため、幅広い分子量を持つ分解物となり、均一な分子量のウレタン樹脂分解物が得られなくなる。
【0026】
ウレタン樹脂とアミン分解剤とを反応させた場合の一例を説明する。
【0027】
式(P11)に示すウレタン樹脂と、式(P12)に示すジアミンとを反応させると、式(P13)に示されるようなアミン化合物や、式(P14)に示されるようなウレタン結合を残した化合物に分解される。さらにこの分解が進むと、このウレタン樹脂の原料として使用されていたポリオール(式(P15))や、原料に使用されていたイソシアネートの末端がアミノ基に代わったアミン類(式(P16))に分解される。
【化1】

【0028】
このような反応によって得られる、ウレタン樹脂分解物中の成分を具体的に述べる。ウレタン樹脂を合成する際に一般的に使用される原料である、4−4’ジフェニルメタンジイソシアネートやそのポリマーの末端基をアミノ基で置換した構造ジアミノジフェニルメタン(MDA)やそのポリマーが挙げられる。他には、トルイレンジイソシアネート(TDI)の末端基をアミノ基で置換した構造のトルイレンジアミン(TDA)などが主なアミン類として挙げられる。
【0029】
これ以外にも、NDI(1,5−ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、H6XDA(水添MDI)、LDI(リジンジイソシアネート)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニール)チオホスフェート、TMXDI(テトラメチルキシレンジイソシアネート)、リジンエステルトリイソシアネート、等のイソシアネート基がアミノ基に変換したアミン類や、ポリオールと反応させたプレポリマーの末端がアミノ基に変換したものも挙げられる。
【0030】
ウレタン樹脂分解物中ポリオール類としては、ウレタン樹脂原料として一般的に使用されているポリオールが挙げられ、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールに大別される。エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトールエチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スークロース、糖類などにプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド等を付加反応させたものが具体例として挙げられる。
【0031】
(ウレタン樹脂分解物から再生樹脂を合成する方法)
ウレタン樹脂分解物から再生樹脂を合成する方法としては、例えば(1)ホルムアルデヒドと反応させる方法、(2)メチロール基を有する化合物と反応させる方法がある。順次説明していく。
【0032】
(1)ホルムアルデヒドと反応させる方法
ホルムアルデヒドと反応させ再生樹脂を得る方法は、ウレタン分解物とホルムアルデヒドを混合した後、この混合物を加熱することにより得ることができる。また、必ずしもホルムアルデヒドを直接ウレタン樹脂分解物と混合させる必要は無く、加熱時にホルムアルデヒドを発生する化合物で代用しても構わない。加熱時にホルムアルデヒドを発生する化合物としては、ヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)、1,3-ジオキサン(ホルマール)などが挙げられる。
【0033】
ウレタン樹脂分解物とホルムアルデヒドの混合比としては、ウレタン樹脂分解物1重量部に対し、0.05〜1重量部のホルムアルデヒドを反応させるのが良い。
【0034】
ウレタン分解物は非常に複雑な混合物であり、メチロール基との反応は明確ではないが、ウレタン分解物中の主成分(アミノ基,水酸基を有する化合物)と以下の式(p21)〜(p24)に示す反応が生じているものと推定する。
【化2】

【0035】
ウレタン分解物中のアミノ基とホルムアルデヒドが付加反応してメチロール基を有する化合物をする(式(p21)の反応)。メチロール基同士は室温では通常縮合反応は生ぜず、この状態を維持する。このメチロール基同士の縮合反応(式(p22)の反応)とアミノ基との縮合反応(式(p23)の反応)、水酸基との縮合反応(式(p24)の反応)によって硬化樹脂となる。
【0036】
式(p21)の反応で得られる反応物は場合によっては室温で固体となるが、加熱すると一旦溶融すると共に、式(p22)、(p23)、(p24)の縮合反応が起こり架橋樹脂となる。なお、式(p22)〜(p24)の反応は水分の存在下ではほとんど進行せず、加熱して硬化させるのが好ましい。
【0037】
(2)メチロール基を有する化合物との反応
メチロール基を有する化合物とウレタン樹脂分解物を混合し、アミノ基及び水酸基と縮合反応させることにより樹脂を得ることができる。メチロール基を有する化合物の一般式を式(p31)に示す。
【化3】

【0038】
なおメチロール基を有する化合物としては分子中に2つ以上のメチロール基を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、フェノール性OHを有する化合物(例えば、フェノール、クレゾール、キシリノール、p−アルキルフェノール、p−フェニルフェノール、クロロフェノール、ビスフェノール、フェノールスルホン酸、レゾルシンなど)にホルムアルデヒドを反応させたものや、アミノ基を有するもの(例えば、尿素、メラミン、グアナミン、アニリン、スルホアミド、及び前述したウレタン分解物に使用するアミン類など)にホルムアルデヒドを反応させたものが挙げられる。これらのものを一部縮合反応させたものでも構わない。
【0039】
メチロール基を有する化合物とウレタン分解物の反応は、下記式(p41)、(p42)の反応であると推定される。メチロール基とアミノ基との縮合反応(式(p41)の反応)水酸基との縮合反応(式(p42)の反応)によって樹脂を形成する。
【化4】

【0040】
ウレタン分解物とメチロール基を有する化合物との混合比は特に問わないが、ウレタン樹脂分解物中の水酸基・アミノ基の数とメチロール基の数が同じか、メチロール基過剰の状態で混合すると強い樹脂ができる。好ましい混合比はウレタン分解物中の水酸基・アミノ基の含有量によって異なるが、概してウレタン分解物100重量部に対し、20〜500重量部のメチロール基を有する化合物を添加するのが好ましい。さらに好ましくは50〜300重量部である。これよりもメチロール基を有する化合物の量が少ないと硬化しない場合があり、多いと再生樹脂中に含まれるウレタン分解物の量が少なくなり、再生樹脂中にウレタン分解物の特徴を活かしにくい。これらを混合後、加熱し脱水・脱ホルムアルデヒドによる縮合が起こり樹脂となる。
【0041】
(1)、(2)共に、必要に応じて、アルコール類、ポリオール類、有機酸類、アミン類、酸性変性剤(酸性亜硫酸塩、スルファミン酸、スルファニル酸、グリコール酸、グリシンなど)、乳化剤(陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤など)、相溶化剤などを添加しても構わない。また縮合反応を進めるために、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどを添加してもよい。
【0042】
このようにして合成された樹脂は、硬化樹脂中に長鎖のポリオールやウレタン結合を含むため、ユリアやメラミン、フェノールなどのメチロール基の縮合で得られる樹脂よりも柔軟性が増す。また、硬化樹脂中にウレタン結合を導入することにより、ウレタン結合を分解する分解剤を用いることによってもう一度低分子化でき、再利用することも可能である。
【0043】
(木質成型体の製造方法)
前述のように配合したウレタン樹脂分解物とホルムアルデヒド又はメチロール基を有する化合物を接着剤とし、と木質材料を混合し、プレス成型することにより成型体を得ることができる。
【0044】
木質材料としては、木、ワラ、籾殻、サトウキビ、植物由来の繊維などが挙げられる。好ましい木質材料片のサイズとしてはどんなものでも良いが、概して最大径0.5〜100mm程度に粉砕したものを用い、これらを積層(?)して使用することが好ましい。
【0045】
木質材料片と接着剤との比率は、木質材料片99〜70重量部に対し接着剤1〜30重量部とすることが好ましく、混合機中で木質材料片を混合しながら接着剤を噴霧し、その後プレス成型する。樹脂の含有量がこれより多いと、反応で発生する水蒸気によって成型体が破裂する可能性があり、これより少ないと接着が不十分で、成型体を作ることが難しい。成型条件等は条件により異なるが、概して10〜100kg/cm2,100〜200℃、10分以内の成型時間で行うのが良い。好ましくは150℃以上の成型温度で行うのが良い。本発明の反応は脱水反応であるため、系から水分を抜くことにより反応が促進される。
【実施例1】
【0046】
以下、実施例に基づき詳細に説明する。
【0047】
(実験1)
(ウレタン樹脂の分解)
冷蔵庫の断熱材に使用されているウレタン樹脂(水酸基価450mgKOH/gのポリオールとポリメリックMDIを主成分とする:以下ウレタン樹脂A)を合成した。合成されたウレタン樹脂A:モノエタノールアミン=4:1の混合比で250℃の1軸押出し機に投入して室温で液体のウレタン樹脂分解物を得た。
【0048】
(再生樹脂の製造)
得られたウレタン樹脂分解物80重量部と、33%濃度のホルムアルデヒド溶液40重量部とをディスポカップに入れ混合したところ、しばらくすると黄土色の固体になった。得られた固体を金型に入れ150℃で成形したところ、一度溶融し、その後硬化してφ60mm×5mmのウレタン樹脂分解物を原料とした樹脂板を製造することができた。また、この固体を室温で三日置いた後、同様に150℃の金型で成形したところ、溶融後に硬化して樹脂板を製造することができた。
【0049】
(実験2)
実験1で分解したウレタン分解物40重量部と、ヘキサメチレンテトラミン20重量部を室温で混合した。混合後は茶色の液体であった。これを150℃の熱板上で加熱したところ、30秒で硬化した。この後、密閉容器中で1週間保持したが室温では硬化せず、加熱すると硬化することが確認できた。保存可能期間は1週間以上であった。
【0050】
(実験3)
実験1で分解したウレタン分解物40重量部と、メラミンにホルムアルデヒドを反応させて末端にメチロール基を有するメラミン誘導体の65%水溶液50重量部とを室温で混合した。混合後は茶色の液体であった。(以下、樹脂混合物A)これを150℃の熱板上で加熱したところ、2分で硬化した。この後、密閉容器中で1週間保持したが室温では硬化せず、加熱すると硬化することが確認できた。保存可能期間は1週間以上であった。
【0051】
(実験4)
実験1で分解したウレタン分解物40重量部と、尿素にホルムアルデヒドを反応させて末端にメチロール基を有する尿素誘導体の65%水溶液50重量部とを室温で混合した。混合後はクリーム色の液体であった。(以下、樹脂混合物B)これを150℃の熱板上で加熱したところ、2分で硬化した。この後、密閉容器中で保存したところ、3日目から一部析出物が確認されたが1週間保持したが室温では硬化せず、加熱すると硬化することが確認できた。保存可能期間は一週間以上、使用に適さなくなるまでの時間は3日であった。
【0052】
なお保存可能期間とは、3次元架橋をさせずに保存しておける期間。この期間中であれば、加熱すると溶融してその時に3次元架橋して樹脂を形成する。使用に適さなくなるまでの時間とは、粘度が高くなる、または一部成分が析出するなどの理由から、実質上使用困難になる時間である。
【0053】
(比較実験1)
実験1で分解したウレタン分解物50重量部と、ポリメリックMDI(三井武田ケミカル社製、M-200)50重量部を室温で混合した。混合後しばらくすると、発熱して反応が始まり、2分後には硬化していた。この硬化物を150℃の熱板上で加熱しても溶融しないため、成形などの方法で樹脂板を製造することができなかった。この樹脂組成での保存可能時間は2分以下であった。
【0054】
(比較実験2)
実験1で分解したウレタン分解物50重量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)50重量部を室温で混合した。混合後すぐに金型に入れ、100℃で2時間ほど加熱したところ硬化し、樹脂板が得られた。しかし、この混合したものを室温で6時間置いたところ、非常に粘度が上昇して使用が困難になり、一日後には硬化していた。この硬化物を150℃の熱板上で加熱しても溶融しないため、成形などの方法で樹脂板を製造することができなかった。以上のことから、この樹脂組成での保存可能期間は24時間以下、使用に適さなくなる6時間以下であることがわかった。
【0055】
以上の試験結果から樹脂混合後の室温における保存期間をまとめると表1のようになる。
【表1】

【0056】
このことから、本発明の樹脂組成物は、ウレタン分解物と再生剤(ホルムアルデヒドやメチロール基を有する化合物)と混合した後も、加熱しなければ架橋反応がほとんど進行しないため、混合後の保存性に大変優れていることが確認できた。
【0057】
(木質ボードの製造)
(実験5)
表層用として、木分3000重量部とポリメリックMDI(三井武田ケミカル社製、M-200)を混合した。また芯層用として、実験1で分解したウレタン分解物40重量部とメラミンにホルムアルデヒドを反応させて末端にメチロール基を有するメラミン誘導体の65%水溶液90重量部と、おがくず1600重量部と混合した。これらを、表層/芯層/表層=1/2/1に積層した後、150℃10分で成形したところ、ウレタン分解物を接着剤の一部に用いた木質ボードが得られた。この木質ボードをJIS A 5908の規格で曲げ強度を測定したところ、14.93MPaであった。
【0058】
(比較実験3)
ウレタン分解物の代わりに同量のメラミン誘導体を用いたこと以外は実験5と同様に木質ボードを成型した。この木質ボードをJIS A 5908の規格で曲げ強度を測定したところ、14.99MPaであった。
【0059】
このことから、実験5で作成したウレタン分解物を接着剤として使用したボードは、メラミンとほぼ同等の強度を持つことがわかった。
【0060】
(比較実験4)
ウレタン分解物の代わりに、ウレタン樹脂の原料として用いられている水酸基価450mgKOH/gのポリオールを用いたこと以外は実験5と同様にボードを作成したところ、樹脂が完全に硬化しておらず、プレス後に破裂した。
【0061】
(比較実験5)
ウレタン分解物の代わりに、メチレンジアニリン(MDA-220:三井武田ケミカル社製)を用いたこと以外は実験5と同様にボードを作成した。この木質ボードをJIS A 5908の規格で曲げ強度を測定したところ、13.59MPaであった。
【0062】
以上のことから、ウレタン分解物とメラミンを反応させた場合、その構成成分であるポリオールまたはポリアミンを単独で加えた場合よりも高い強度を示すことがわかった。
【0063】
(実験6)
実験1で分解したウレタン分解物80重量部と尿素にホルムアルデヒドを反応させて末端にメチロール基を有する尿素誘導体の65%水溶液100重量部と、塩化アンモニウムの15%水溶液20重量部を混合し、おがくずと混合した。この混合したものを金型に入れ、150℃10分で成形したところ、ウレタン分解物を接着剤の一部に用いた木質ボードが得られた。
【0064】
(実験7)
(ウレタンの分解)
冷蔵庫の断熱材に使用されているウレタン樹脂(水酸基価450mgKOH/gのポリオールとポリメリックMDIを主成分とする:以下ウレタン樹脂A)を合成した。合成されたウレタン樹脂:ジエタノールアミン=10:1の混合比で280℃の1軸押出し機に投入してウレタン樹脂分解物を得た。このウレタン分解液は軟化点70℃であり、室温で固体であった。
【0065】
(木質ボードの製造)
このウレタン分解物60重量部とヘキサメチレンテトラミン40重量部を粉砕機中でよく混合し、この混合物10重量部とおがくず90重量部を混合して金型に入れ、150℃10分で成形したところ、ウレタン分解物を接着剤の一部に用いた木質ボードが得られた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンを化学的に分解して得られた分解液とホルムアルデヒドを反応させた化合物であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
ウレタンを化学的に分解して得られた分解液とメチロール基を有する化合物とを反応させて得られた化合物であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
前記メチロール基を有する化合物は、フェノール、尿素またはメラミンにホルムアルデヒドを付加反応させた化合物であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
複数の木質材料片と、前記木質材料片同士を接着する樹脂組成物とからなる木質成型体であって、
前記樹脂組成物は、ウレタンを化学的に分解して得られた分解液とホルムアルデヒド及び/またはメチロール基を有する化合物とを反応させてなるものであることを特徴とする木質成型体。


【公開番号】特開2007−77336(P2007−77336A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268979(P2005−268979)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】