説明

樹脂組成物及びそれを成形してなる包装用フィルム

【課題】汎用の成形機にて生産性高く製造でき、結果として化石燃料が節約でき、実用上充分な機械物性を備えた樹脂組成物及びそれを成形してなる包装用フィルムを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン、ポリ乳酸および多価アルコールカルボン酸エステルを含む樹脂組成物において、この樹脂組成物中の前記ポリ乳酸の割合が3質量%以上50質量%以下であり、前記多価アルコールカルボン酸エステルの割合が0.01質量%以上25質量%以下であり、かつ前記ポリ乳酸の190℃21NにおけるMFRをポリオレフィンの190℃21NにおけるMFRで除した値が1/30以上30以下であることを特徴とする樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物由来の樹脂組成物及びそれを成形してなる包装用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策として二酸化炭素の排出抑制が重要となっており、また化石燃料の枯渇に対する懸念もあり、植物由来原料を用いたプラスチックが検討されている。それらの中でもとうもろこし等を原料として作られるポリ乳酸は特に注目を集めており、ポリ乳酸を用いた包装材料も実用化され始めている。
【0003】
ポリ乳酸は硬くて脆い樹脂であり、フィルム、袋等の包装材料に適用して実用可能なフィルム物性を保持させるためには特許文献1のように可塑剤を添加するなどの方法をとるか、又は特許文献2のように二軸延伸など加工時に特殊な処理をするなどの方法が採られている。これらの方法では既存の生産設備ではない新規の製造設備が必要となるほか、成型加工性が劣り生産性も低く、製造時のエネルギー消費が大きくなり、結果として充分に化石燃料が節約できない。
【0004】
ポリオレフィンは、石油系プラスチックではあるが、フィルム製造時のエネルギー使用量が比較的少なく、また、低コストであるため、包装材料として広く用いられている。そこで、ポリオレフィンとポリ乳酸とをブレンドすることにより、既存設備にて生産性よく製造し化石燃料の消費を抑制した包装材料を製造できることが期待されるが、ポリオレフィンとポリ乳酸は相溶性が低く、単純にブレンドすることは困難であり、様々の検討がなされている。
【0005】
例えば特許文献3ではポリエステルと非相溶熱可塑性樹脂のブレンド物が提案されているが、易引裂性フィルムであり汎用包装に用いるには強度不足である。ポリ乳酸にポリエチレン系樹脂をブレンドした特許文献4の組成物では通常フィルム成膜に用いられる単軸押出機にてフィルム成形した場合、充分に分散せず、実用可能なフィルム物性が得られなかった。そして、ポリ乳酸にポリアルキルアクリル酸エステル、ポリオレフィン、ポリアルキルアクリル酸エステルとポリオレフィンのブロック共重合体等をブレンドした特許文献5の樹脂組成物においては、柔軟性などの機械物性が包装材料としては不十分であり、包装材料として適切な樹脂組成物ではなかった。
【特許文献1】特開平11−323113号公報
【特許文献2】特開2004−352334号公報
【特許文献3】特開2004−323616号公報
【特許文献4】特開2005−232228号公報
【特許文献5】特開2005−239957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような従来の欠点に鑑み、汎用の成形機にて生産性高く製造でき、結果として化石燃料が節約でき、引張弾性、引裂強度などの実用上充分な機械物性を備えた樹脂組成物およびそれを成形してなるフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は以下の構成をとる。
1.ポリオレフィン、ポリ乳酸および多価アルコールカルボン酸エステルを含む樹脂組成物において、この樹脂組成物中の前記ポリ乳酸の割合が3質量%以上50質量%以下であり、前記多価アルコールカルボン酸エステルの割合が0.01質量%以上25質量%以下であり、かつ前記ポリ乳酸の190℃21NにおけるMFRをポリオレフィンの190℃21NにおけるMFRで除した値が1/30以上30以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【0008】
2.上記樹脂組成物中において、ポリ乳酸100質量部に対し多価アルコールカルボン酸エステルが0.3質量部以上50質量部以下である前記1に記載の樹脂組成物。
3.上記ポリオレフィンが、ポリエチレンである前記1に記載の樹脂組成物。
4.上記多価アルコールカルボン酸エステルが、グリセリンカルボン酸エステルまたはポリグリセリンカルボン酸エステルである前記1に記載の樹脂組成物。
【0009】
5.前記1〜4いずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる包装用フィルム。
6.前記1〜4いずれかに記載の樹脂組成物をインフレーション成形により成形してなる包装用フィルム。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては植物由来の包装材料を製造する上で以下に列挙する効果が得られる。
(1)従来の成形機で生産性高く食品等の包装フィルムやショッピング袋、レジ袋等の包装材料を製造する事ができる。
(2)実用上、充分な強度、風合いを持ち、耐引裂性を持つ包装材料が製造できる。
【0011】
(3)本発明において、この樹脂組成物中の前記ポリ乳酸の割合が3質量%以上50質量%以下であり、前記多価アルコールカルボン酸エステルの割合が0.01質量%以上25質量%以下であり、かつ前記ポリ乳酸の190℃21NにおけるMFRをポリオレフィンの190℃21NにおけるMFRで除した値が1/30以上30以下であることから、環境負荷低減効果を維持した上で、柔軟性、耐引裂性などの実用上充分な機械特性を備え、併せて分散性及びブリード抑制効果も発揮され、これによって全ての原料を直接単軸押出機などでインフレーション成形することで包装用フィルムを得ることさえも可能となった。特に、多価アルコールカルボン酸エステルとして、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、ジグリセリン酢酸エステルを用いた際に、この作用効果が大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、発明を実施するための最良の形態により、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリオレフィンはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセンなどの不飽和炭化水素を主として重合してなる重合体である。これらの単一のオレフィンからなるポリオレフィンであってもよいし共重合体であっても良い。また、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸、塩化ビニル等を共重合したものであっても構わない。これらは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、またグラフト共重合体であっても構わない。本発明に好適に用いる事ができるポリオレフィンとしては高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン−メタクリル酸共重合体、ポリエチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリプロピレン−無水マレイン酸共重合体等を挙げる事ができる。包装材料として用いるにあたっては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンを主として含むポリオレフィンが物性、生産性の面から好ましい。
【0013】
包装材料の強度、生産性等のバランスを考慮してポリオレフィンのMFR(「メルトマスフローレート」樹脂の流動性を表す指標)は190℃21NにおけるMFRが通常3以下のものが用いられる。薄肉で高強度の包装材料ではMFRが1以下のものを230℃以上の高温で成形する場合もある。一方、ポリ乳酸のMFRは工業的には2以上のものが用いられる。ここで、ポリ乳酸とポリオレフィンとの間のMFRの差が著しく大きい場合、混練むらが生じたり、適性加工温度の温度範囲が狭くなったりして加工が困難となる。その為、ポリ乳酸の190℃21NにおけるMFRをポリオレフィンの190℃21NにおけるMFRで除した値が1/30以上30以下であることが好ましい。薄肉で強度をもたせるにはMFR値の小さいポリオレフィン樹脂が必要となるが、上記比が30を超えると混錬むらが発生するのでMFR値の大きいポリオレフィンを加えて上記比を調整することができる。MFR値の大きいポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレンや直鎖低密度ポリエチレンが好ましく、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン−無水マレイン酸共重合体などのポリ乳酸との相溶性の高い官能基を含む共重合体を用いることが、ポリオレフィンとポリ乳酸の分散性が高まりより好ましい。
【0014】
本発明に用いるポリ乳酸はL−乳酸の重合体、D−乳酸の重合体あるいはL−乳酸とD−乳酸の共重合体である。L−乳酸とD−乳酸の比率は特に限定なく用いることができる。L−乳酸とD−乳酸の共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体であってもかまわない。また、本発明の性能を阻害しない範囲で多価アルコールや多塩基酸、ヒドロキシカルボン酸などと共重合していてもかまわない。また、鎖長延長剤としてイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、アゾ化合物、多価金属化合物、多官能リン酸エステル、亜リン酸エステルなどを用いても良い。
【0015】
本発明に用いられる多価アルコールカルボン酸エステルは包装材料に適度な柔軟性、および強度を付与し、また、ポリ乳酸の分散性、組成物の加工性を向上するために加えられている。本発明の多価アルコールカルボン酸エステルは任意の多価アルコールとカルボン酸のエステルである。多価アルコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、トリメチレンプロパノール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールやこれらの重合体、また、エチレンオキシド付加重合体、プロピレンオキシド付加重合体などのアルキレンオキシド付加重合体などを挙げる事ができる。カルボン酸としては蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの飽和脂肪酸や2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソステアリン酸などの分岐飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトオレイン酸、エルシン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸、シクロヘキサン酸、シクロヘプタン酸などの脂環族カルボン酸、グリコール酸、乳酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸およびその重合脂肪酸、安息香酸、桂皮酸などの芳香族カルボン酸などを挙げる事ができる。イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸などの多価カルボン酸もゲル化などを生じない範囲で使用する事ができる。これらの内、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルやポリエチレングリコール脂肪族芳香族カルボン酸エステルが柔軟性、加工性のバランスが良く好ましく、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、ジグリセリン酢酸エステルがより好ましい。
【0016】
本発明におけるポリオレフィン、ポリ乳酸、多価アルコールカルボン酸エステルの比率であるが、これまでに述べた物性、加工性を発揮するためにはポリオレフィンがマトリックスを形成する必要がある。従って好ましいポリ乳酸の比率としては3質量%以上50質量%以下である。かかる比率よりポリ乳酸が多い場合は、十分な物性、加工性が得られず、また少ない場合は十分な環境負荷低減効果が得られない。多価アルコールカルボン酸エステルは主にポリ乳酸相及びポリ乳酸相とポリオレフィン相の界面に存在して、ポリ乳酸の柔軟性向上及び分散性を向上させる。従って、多価アルコールカルボン酸エステルは、ポリ乳酸100質量部に対して0.01質量%以上25質量%以下であることが好ましい。より好ましくはポリ乳酸100質量部に対し、多価アルコールカルボン酸エステル0.3質量部以上50質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以上30質量部以下である。多価アルコールカルボン酸が50質量部を超える場合は、包装材料から激しくブリードアウトしたり、強度が低くなったりする。0.3質量部より少ない場合はポリ乳酸の分散性が低下し、良好な包装材料が成形できない。
【0017】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的効果を損なわない限り、その他の添加剤、例えば紫外線等の光吸収剤、熱安定剤、染料、顔料、無機充填剤、加水分解抑制剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、結晶造核剤、帯電防止剤、防曇剤等を添加してもよい。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、押出成形、射出成形、カレンダー成形など公知のプラスチック成形方法により包装材料、例えばフィルム、シート、袋、テープ等に成形することができる。その際、一般的に行われるように一部または全部の原料を予め二軸押出機により溶融混練し、ペレット化してから成形加工してもよいが、本発明の組成物は分散性が良好であるため全ての原料を直接単軸押出機などでインフレーション成形するなどの方法にて成形することが可能となった。
【0019】
本発明の包装用フィルムを製造する際には、例えばインフレーション法により得られたフィルムをさらにフィルム長手方向もしくは幅方向に延伸を行い、その後熱処理を行う方法でも成形することができる。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されない。
[製造例1]
液添ライン、ストランドダイを備えた同方向噛合型2軸押出機によりポリ乳酸(三井化学社製、レイシアH−440 MFR=2.5)100質量部に対し、多価アルコールカルボン酸エステル1(理研ビタミン社製、リケマールPL−019:グリセリン脂肪酸エステル)を25質量部配合し、設定温度185℃で押出し、ストランドを冷却、切断した後、80℃で3時間乾燥し、ポリ乳酸マスターバッチ1を得た。
【0021】
[製造例2]
液添ライン、ストランドダイを備えた同方向噛合型2軸押出機によりポリ乳酸(三井化学社製、レイシアH−440 MFR=2.5)100質量部に対し、多価アルコールカルボン酸エステル2(理研ビタミン社製、リケマールPL−710:ポリグリセリン脂肪酸エステル)を25質量部配合し、設定温度185℃で押出し、ストランドを冷却、切断した後、80℃で3時間乾燥し、ポリ乳酸マスターバッチ2を得た。
【0022】
[製造例3]
液添ライン、ストランドダイを備えた同方向噛合型2軸押出機によりポリ乳酸(三井化学社製、レイシアH−440 MFR=2.5)100質量部に対し、多価アルコールカルボン酸エステル3(理研ビタミン社製、リケマールL−71−D:ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル)を18質量部配合し、設定温度185℃で押出し、ストランドを冷却、切断した後、80℃で3時間乾燥し、ポリ乳酸マスターバッチ3を得た。
【0023】
[分析方法1]MFR
JIS K 7210 のA法に従い分析した。サンプルはペレットのまま、又はフィルム成形後温度23℃、湿度50%で1日保管した後、細かく切断し試験に供した。試験温度190℃、試験荷重21Nで実施した。
【0024】
[分析方法2]引張弾性率
JIS K 7127/2/50 に従い分析した。サンプルはフィルム成形後温度23℃、湿度50%で1日保管した後、押出方向に対し横方向に幅25mm長さ150mmに切断し試験に供した。
【0025】
[分析方法3]引裂強度
JIS K 7128−3 に従い分析した。サンプルはフィルム成形後温度23℃、湿度50%で1日保管した後、押出方向に対し縦方向に打ち抜き作製した。試験速度は200mm/分で行った。
【0026】
[植物化度]
樹脂組成物の全質量中、植物原料より製造されたポリ乳酸の質量比が3%以上の場合○,3%未満の場合×とする。
【0027】
[分散性]
フィルムの性状を目視にて評価し、ムラやスジが見られない場合は○、見られる場合は×とする。
【0028】
[ブリード]
フィルム成形後、温度40℃、湿度65%RHにて1週間保管した後、フィルムの表面を目視にて評価し、ブリードが見られないものを○、見られる場合は×とする。
【0029】
[実施例1]
高圧法低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LF440HB MFR=2.1)100質量部に対し、ポリ乳酸マスターバッチ1を20質量部配合し、単軸押出機にて180℃で押出し、厚さ50μmのインフレーションフィルムを成形した。成形したフィルムを用い評価した。結果を表1にまとめた。
【0030】
[実施例2]
気相法リニア低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLL UF240 MFR=2.8)100質量部に対し、ポリ乳酸マスターバッチ1を20質量部配合し、単軸押出機にて180℃で押出し、厚さ100μmのTダイキャストフィルムを成形した。成形したフィルムを用い評価した。結果を表1にまとめた。
【0031】
[実施例3]
気相法リニア低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLL UF240 MFR=2.8)100質量部に対し、ポリ乳酸マスターバッチ2を10質量部、ポリ乳酸(三井化学社製、レイシアH−440 MFR=2.5)を20質量部、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学社製、ボンドファーストE MFR=3.1)を3質量部配合し、単軸押出機にて180℃で押出し、厚さ100μmのTダイキャストフィルムを成形した。成形したフィルムを用い評価した。結果を表1にまとめた。気相法リニア低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLL UF240 MFR=2.8)100質量部、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学社製、ボンドファーストE MFR=3.1)3質量部を同様にフィルム化し、ポリオレフィン部のMFRを測定したところ3.0であった。
【0032】
[実施例4]
高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックHD HF313 MFR=0.05)100質量部に対し、ポリ乳酸マスターバッチ3を10質量部、ポリ乳酸(三井化学社製、レイシアH−440 MFR=2.5)を5質量部、カルボン酸変性ポリオレフィン(三井化学社製、アドマーNF 500 MFR=1.8)を5質量部配合し、単軸押出機にて230℃で押出し、厚さ20μmのインフレーションフィルムを成形した。成形したフィルムを用い評価した。結果を表1にまとめた。高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックHD HF313 MFR=0.05)100質量部、カルボン酸変性ポリオレフィン(三井化学社製、アドマーNF 500 MFR=1.8)5質量部を同様にフィルム化し、ポリオレフィン部のMFRを測定したところ0.147であった。
【0033】
[実施例5]
高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックHD HF313 MFR=0.05)100質量部に対し、気相法リニア低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLL UF240 MFR=2.8)を30質量部、ポリ乳酸マスターバッチ1を15質量部配合し、単軸押出機にて230℃で押出し、厚さ20μmのインフレーションフィルムを成形した。成形したフィルムを用い評価した。結果を表1にまとめた。高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックHD HF313 MFR=0.05)100質量部、気相法リニア低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLL UF240 MFR=2.8)30質量部を同様にフィルム化し、ポリオレフィン部のMFRを測定したところ0.69であった。
【0034】
[比較例1]
高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックHD HF313 MFR=0.05)100質量部を単軸押出機にて250℃で押出し、厚さ20μmのインフレーションフィルムを成形した。成形したフィルムを用い評価した。結果を表1にまとめた。
【0035】
[比較例2]
高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックHD HF313 MFR=0.05)100質量部に対し、ポリ乳酸マスターバッチ2を10質量部配合し、単軸押出機にて230℃で押出したが、充分混練せずフィルムが成形できなかった。さらに温度を上昇して押出しを試みたところ、ポリ乳酸が押出機内で分解し、成形が出来なかった。
【0036】
[比較例3]
気相法リニア低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLL UF240 MFR=2.8)100質量部を単軸押出機にて170℃で押出し、厚さ100μmのTダイキャストフィルムを成形した。成形したフィルムを用い評価した。結果を表1にまとめた。
【0037】
[比較例4]
気相法リニア低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLL UF240 MFR=2.8)100質量部に対し、ポリ乳酸(三井化学社製、レイシアH−440 MFR=2.5)を5質量部配合し、単軸押出機にて170℃で押出し、厚さ100μmのTダイキャストフィルムを成形した。成形したフィルムを用い評価した。結果を表1にまとめた。
【0038】
[比較例5]
気相法リニア低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLL UF240 MFR=2.8)100質量部に対し、ポリ乳酸(三井化学社製、レイシアH−440 MFR=2.5)を50質量部、ポリ乳酸マスターバッチ1を100質量部配合し、単軸押出機にて180℃で押出し、厚さ20μmのインフレーションフィルムを成形した。成形したフィルムを用い評価した。結果を表1にまとめた。
【0039】
[比較例6]
液添ライン、ストランドダイを備えた同方向噛合型2軸押出機により高圧法低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LF440HB MFR=2.1)100質量部に対し、ポリ乳酸(三井化学社製、レイシアH−440 MFR=2.5)25質量部、多価アルコールカルボン酸エステル1(理研ビタミン社製、リケマールPL−019:グリセリン脂肪酸エステル)45質量部を配合し、設定温度185℃で押出し、ストランドを冷却、切断した後、80℃で3時間乾燥してコンパウンドのペレットを得た。得られたペレットを単軸押出機にて190℃で押出し、厚さ20μmのインフレーションフィルムを成形した。成形したフィルムを用い評価した。結果を表1にまとめた。
【0040】
【表1】

【0041】
表1より本発明の発明品は従来のポリオレフィンと同様の柔軟性を持ち、同等以上の耐引裂性などの実用上充分な機械特性を持つ事がわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン、ポリ乳酸および多価アルコールカルボン酸エステルを含む樹脂組成物において、この樹脂組成物中の前記ポリ乳酸の割合が3質量%以上50質量%以下であり、前記多価アルコールカルボン酸エステルの割合が0.01質量%以上25質量%以下であり、かつ前記ポリ乳酸の190℃21NにおけるMFRをポリオレフィンの190℃21NにおけるMFRで除した値が1/30以上30以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
上記樹脂組成物中において、ポリ乳酸100質量部に対し多価アルコールカルボン酸エステルが0.3質量部以上50質量部以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
上記ポリオレフィンが、ポリエチレンである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
上記多価アルコールカルボン酸エステルが、グリセリンカルボン酸エステルまたはポリグリセリンカルボン酸エステルである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる包装用フィルム。
【請求項6】
請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物をインフレーション成形により成形してなる包装用フィルム。

【公開番号】特開2008−195834(P2008−195834A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32799(P2007−32799)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】