説明

樹脂組成物及び灯具のリフレクタ

【課題】 表面平滑性に優れ、軽量で、耐熱性をさらに改善した灯具用リフレクタを与える成形性に優れた樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる灯具のリフレクタを提供する。
【解決手段】 (A)200℃以上の融点を有する結晶性重合体、(B)非晶性脂環構造含有重合体、並びに(C)軟化点150℃以上の石油樹脂および軟化点150℃以上のフェノール樹脂からなる群より選ばれる高軟化点樹脂を含有し、前記結晶性重合体と前記非晶性脂環構造含有重合体との重量比が10/90〜50/50であり、かつ、前記結晶性重合体と前記非晶性脂環構造含有重合体の合計量100重量部に対して、前記高軟化点樹脂1〜20重量部含有する樹脂組成物を用いて、灯具のリフレクタを成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば四輪自動車、二輪自動車その他の車両に用いられる前照灯、尾灯その他の灯具に組み込まれるリフレクタ(エクステンションリフレクタも含む)に好適な樹脂組成物およびそれからなる耐熱性に優れたリフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、省エネルギー化、低燃費化の要請のもと、車両の軽量化のための検討が種々行われている。車両に搭載される前照灯、尾灯などの車両用灯具についても、その軽量化のため、従来のガラス製や金属製の部材を樹脂化する検討が行われている。
車両用灯具を構成するリフレクタを樹脂化しようとすると、複雑な形状であっても設計通りに成形できること、光反射面となる表面の平滑性に優れた成形体を与え、光源が発する熱に耐えうる(耐熱性に優れる。)樹脂材料が求められる。
例えば、特許文献1には、脂環式構造含有重合体樹脂に、結晶性重合体を配合して成る樹脂組成物からなる車両用灯具のリフレクタが開示されている。そして、ガラス繊維などの無機繊維を配合した結晶性重合体を用いることが好ましいことが記載され、実施例においては、ガラス繊維を配合したポリブチレンテレフタレートやポリフェニレンサルファイドを結晶性重合体として使用されている。
しかし、ガラス繊維などの無機繊維は比重が高く、更なる車両の軽量化の要請に対応しきれるものではなく、またガラス繊維などを配合しない場合は耐熱性が低下する場合があった。
【0003】
また、特許文献2には、無機充填剤が配合された結晶性オレフィン系重合体、脂環構造含有重合体、及び、相溶化剤からなる樹脂組成物であって、無機充填剤の配合量を特定範囲とする比較的低比重の樹脂組成物が開示され、該樹脂組成物は、成形性に優れており、表面平滑性および耐熱性に優れ、かつ軽量な車両用灯具のリフレクタを与えることを開示している。
ところが、近年では、車両の軽量化のため車両用灯具を小型化することも求められており、車両用灯具の小型化に伴い、より高温での耐熱性が要求されるようになってきた。このような耐熱性向上の要求に対し、前記樹脂組成物は十分満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開平11−283423号公報
【特許文献2】特開2009−197200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、表面平滑性に優れ、軽量で、耐熱性をさらに改善した灯具用リフレクタを与える成形性に優れた樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる灯具のリフレクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、(A)高融点の結晶性重合体、(B)非晶性脂環構造含有重合体、および(C)石油樹脂およびフェノール樹脂からなる群より選ばれる高軟化点樹脂を含有し、それぞれの含有割合を特定範囲とした樹脂組成物が、成形性に優れており、表面平滑性に優れ、軽量で、耐熱性をさらに改善した灯具用リフレクタを与えることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂組成物は、成形性に優れているので、ヒケ、反り、シルバー、ヤケなどの成形不良を引き起こすことなく容易に樹脂成形体を成形でき、表面平滑性に優れ、軽量で、耐熱性をさらに改善した灯具用リフレクタを与える。



【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の樹脂組成物は、(A)200℃以上の融点を有する結晶性重合体、(B)非晶性脂環構造含有重合体、及び(C)高軟化点樹脂を所定の割合で含有するものである。
【0008】
<(A)200℃以上の融点を有する結晶性重合体>
本発明で使用される結晶性重合体は、200℃以上の融点、好ましくは220〜300℃の融点、より好ましくは240〜300℃の融点、特に好ましくは250〜270℃の融点を有するものである。このような融点の高い結晶性重合体を配合することで、得られるリフレクタの熱変形温度が高くなり、耐熱性が向上する。また、結晶性重合体の融点が高すぎると樹脂組成物の成形性が悪化したり、リフレクタの表面平滑性が低下する場合がある。
本発明でいう融点とは、ISO11357―3に基づいて測定されたものである。
【0009】
本発明において用いることが出来る結晶性重合体としては、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリフェニルスルファイド(PPS)、シンジオタクチィックポリスチレン、液晶ポリマー(芳香族多環縮合系ポリマー)などを挙げることが出来る。
結晶性重合体の中でも、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)が耐熱性と成形体の表面平滑性とのバランスに優れる点で好ましく、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)が軽量性の面でより好ましく、吸湿性が低いため高温高湿下においてもリフレクタの反射膜層の膜膨れなどが起きる恐れが少ない点で、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が特に好ましい。
【0010】
本発明において、結晶性重合体としては、重合体全体が結晶化しているもののみでなく、部分的に結晶化しているものも含み、その結晶化度は、特に限定されないが、一般に10〜90%の範囲にある。
【0011】
<(B)非晶性脂環構造含有重合体>
本発明で使用される非晶性脂環構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有する、非晶性樹脂(融点を有しない樹脂)であり、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
【0012】
重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械的強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造を有するものが最も好ましい。
【0013】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性、及び成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
【0014】
本発明に使用される非晶性脂環構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%である。非晶性脂環構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が過度に少ないと耐熱性に劣り好ましくない。非晶性脂環構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択される。
【0015】
この非晶性脂環構造含有重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体及びその水素化物が好ましい。
【0016】
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン系単量体を重合してなるものであり、開環重合によって得られるものと、付加重合によって得られるものに大別される。
【0017】
開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物などが挙げられる。付加重合によって得られるものとしてノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が、耐熱性、機械的強度等の観点から好ましい。
【0018】
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが例示でき、上記ノルボルネン系単量体は、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0019】
ノルボルネン系単量体の開環重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0020】
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、これらの単量体を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
【0021】
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
これらの、ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体とを付加共重合する場合は、付加重合体中のノルボルネン系単量体由来の構造単位と付加共重合可能なその他の単量体由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0022】
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素重合体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素化物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、又はそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0023】
本発明で使用される非晶性脂環構造含有重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000以上であり、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは8,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000の範囲であるときに、機械的強度と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
【0024】
本発明で使用される非晶性脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50〜300℃、好ましくは100〜280℃、特に好ましくは135〜250℃、さらに好ましくは150〜200℃の範囲であるときに、耐熱性と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
本発明でいうガラス転移温度(Tg)とは、JIS K 7121に基づいて測定されたものである。
【0025】
ちなみに、これらの非晶性脂環構造含有重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明において、(A)200℃以上の融点を有する結晶性重合体と、(B)非晶性脂環構造含有重合体との重量比は10/90〜50/50であり、好ましくは15/85〜40/60、より好ましくは20/80〜30/70である。
(A)200℃以上の融点を有する結晶性重合体が多すぎると、軽量性及び表面平滑性が不十分であり、少なすぎると耐熱性に劣り好ましくない。
【0027】
<(C)高軟化点樹脂>
本発明で使用される高軟化点樹脂は、軟化点150℃以上の石油樹脂および軟化点150℃以上のフェノール樹脂の群から選ばれるものである。
それらの軟化点は、好ましくは150〜220℃、さらに好ましくは160℃〜210℃、特に好ましくは180〜200℃の範囲である。
軟化点が低いと、耐熱性が低下する。一方、軟化点が過度に高いと樹脂組成物の成形性が悪化したり、レフレクタの表面平滑性が低下する場合がある。
なお、軟化点は、JIS K 2207に基づいて測定されたものである。
【0028】
石油樹脂は、通常、ナフサの熱分解生成物中の炭素数5〜9の留分に含まれるオレフインやジオレフィン等を主単量体成分として、熱重合、アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合などして得られるものであり、さらに、カルボキシ基、水酸基などの極性基を導入したものや、水素添加したものも含まれる。
石油樹脂は、例えば、合成ポリテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、イソプレン系樹脂、水素添加炭化水素樹脂や、それらの変性物などと分類される場合もある。
本発明においては、石油樹脂の中でも、その軟化点が150℃以上のものを選択して用いる。石油樹脂の軟化点は、単量体の種類、単量体混合物の組成、分子量、分子量分布などを適宜調節して調製される。
軟化点150℃以上の石油樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、ネオポリマー170S(新日本石油社製)、ネオポリマー160(新日本石油社製)、クリアロンP150(ヤスハラケミカル社製)、トーホーハイレジン#150(東邦化学工業社製)などが例示できる。
【0029】
フェノール樹脂は、フェノール、クレゾール、p−アルキルフェノールなどのフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類とを、酸性触媒下または塩基性触媒下に、付加縮合させて得られる、ノボラック型やレゾール型の重合体であり、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、重合ロジン、不均斉化ロジンなどのロジン類と、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール類と、前記レゾール型重合体とを反応させて得られる、いわゆる、ロジン変性フェノール樹脂も含まれる。
本発明においては、フェノール樹脂の中でも、その軟化点が150℃以上のものを選択して用いる。フェノール樹脂の軟化点は、単量体の種類、単量体混合物の組成、分子量、分子量分布、変性率などを適宜調節して調製される。
軟化点150℃以上のフェノール樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、ショウノールCKM−2400(昭和高分子社製)、荒川化学社製のタマノル340、タマノル350、タマノル352、タマノル354、タマノル366、タマノル380、タマノル406、タマノル412、タマノル414、タマノル417、タマノル423などが挙げられる。
【0030】
高軟化点樹脂は、単独で、あるいは2種以上併用して配合されてもよく、その配合量は、(A)200℃以上の融点を有する結晶性重合体と、(B)非晶性脂環構造含有重合体(A)と(B)の合計量100重量部に対して1〜20重量部であり、好ましくは1〜10重量部であり、より好ましくは1〜5重量部である。高軟化点樹脂が多すぎると、成形体の外観が悪化すると共に、耐熱性が低下し、少なすぎると成形体の表面平滑性が不十分である。
【0031】
<その他の配合剤>
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、その他の各種配合剤(樹脂工業において通常用いられる配合剤)を単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0032】
その他の配合剤としては、熱可塑性樹脂材料で通常用いられているものであれば格別な制限はなく、例えば、ゴム質重合体、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤などの配合剤が挙げられる。
【0033】
ゴム質重合体としては、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性エラストマーである。
具体例としては、乳化重合又は溶液重合したスチレン・ブタジエン・ゴム、ハイスチレンゴムなどのランダム又はブロック・スチレン・ブタジエン系共重合体、これらの水素添加物;イソプレン・ゴム、その水素添加物;クロロプレンゴム、その水素添加物;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体などの飽和ポリオレフィンゴム;エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、α−オレフィン・ジエン共重合体、ジエン共重合体、イソブチレン・イソプレン共重合体、イソブチレン・ジエン共重合体などのジエン系重合体、これらのハロゲン化物、ジエン系重合体又はそのハロゲン化物の水素添加物、又は、これらを無水マレイン酸やグリシジルメタクリレートやエポキシ等で変性したものなどが挙げられる。
これらの中でも、成形体の表面平滑性が良いことから、スチレン・ブタジエン・ゴム、ハイスチレンゴムなどのランダム又はブロック・スチレン・ブタジエン系共重合体の水素添加物、及び、これらの無水マレイン酸やグリシジルメタクリレートやエポキシ等の変性体が好ましい。
また、ゴム質重合体は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、配合量は、(A)200℃以上の融点を有する結晶性重合体、(B)非晶性脂環構造含有重合体、及び(C)高軟化点樹脂の合計量に対して好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%の範囲である。この範囲でゴム質重合体を添加すると、脂環構造含有重合体に対する結晶性重合体の均一分散が促進されて表面平滑性により優れる成形体が得られるが、ゴム質重合体が多すぎると耐熱性が低下する恐れがある。
【0034】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられるが、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、(A)200℃以上の融点を有する結晶性重合体、(B)非晶性脂環構造含有重合体、及び(C)高軟化点樹脂の合計量100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0035】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯体系紫外線吸収剤などが挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
【0036】
近赤外線吸収剤は、例えば、シアニン系近赤外線吸収剤;ピリリウム系赤外線吸収剤;スクワリリウム系近赤外線吸収剤;クロコニウム系赤外線吸収剤;アズレニウム系近赤外線吸収剤;フタロシアニン系近赤外線吸収剤;ジチオール金属錯体系近赤外線吸収剤;ナフトキノン系近赤外線吸収剤;アントラキノン系近赤外線吸収剤;インドフェノール系近赤外線吸収剤;アジ系近赤外線吸収剤;等が挙げられる。
【0037】
染料としては、本発明に係る樹脂組成物に均一に分散・溶解するものであれば特に限定されないが、本発明で用いられる重合体との相溶性が優れるので油溶性染料(各種C.I.ソルベント染料)が広く用いられる。油溶性染料の具体例としてはThe Society of Diyes and Colourists社刊Color Index vol.3に記載される各種のC.I.ソルベント染料が挙げられる。
顔料としては、ジアリリド系顔料、アゾレーキ系顔料、縮合アゾ系顔料、ペンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料が挙げられる。
【0038】
可塑剤としては、燐酸トリエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸一塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤、主骨格が主にC−C又はC=C構造である常温で液状の炭化水素ポリマーなどが使用できるが、これらの中でも燐酸トリエステル系可塑剤が好ましく、トリクレジルフォスフェート、トリキシリルフォスフェートが特に好ましい。
帯電防止剤としては、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの長鎖アルキルアルコール、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレートなどの多価アルコールの脂肪酸エステルなどが挙げられるが、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが特に好ましい。
【0039】
これらの配合剤の配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、(A)200℃以上の融点を有する結晶性重合体、(B)非晶性脂環構造含有重合体、及び(C)高軟化点樹脂の合計量100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0040】
本発明では、本発明に係る樹脂組成物中に、有機又は無機の充填剤を配合しても良い。有機又は無機の充填剤としては、例えば、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、塩基性炭酸マグネシウム、ドワマイト、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベストなどの鉱物;ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの繊維;ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデンなどを例示できる。
【0041】
これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて添加することができる。充填剤の配合割合は、本発明の目的を損ねない範囲で、それぞれの機能及び使用目的に応じて適宜定めることができるが、軽量化の観点からは、無機の充填剤を用いないのが好ましい。
【0042】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を必要に応じて混合してなる。
樹脂組成物の混合方法としては、(C)高軟化点樹脂及びその他の配合剤を、それぞれ独立して、(A)又は(B)のいずれかの重合体にあらかじめ配合されてもよいし、(A)と(B)を混合する際に配合されてもよい。
混合方法は、重合体中に配合剤が十分に分散する方法であれば、特に限定されない。例えば、ミキサー、一軸混練機、二軸混練機、ロール、ブラベンダー、押出機などで樹脂を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させて凝固法、キャスト法、又は直接乾燥法により溶剤を除去する方法などがある。
二軸混練機を用いる場合、混練後は、通常は溶融状態で棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切り、ペレット化して用いられることが多い。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、成形性に優れ、表面平滑性、軽量性及び耐熱性に優れる成形体を与えうる。
本発明の樹脂組成物の用途としては、配管、チューブ、樹脂成形加工用の樹脂型や離型フィルム、半導体製造用キャリアなどの工業資材分野;民生用又は工業用の照明灯具のカバーやリフレクタ、電線の被覆材、絶縁フィルム、コンデンサーフィルム、電子素子の封止材、電子回路基板、車載用電子機器部品などの電気電子分野;光ディスクなどのレーザー装置用のミラーや内装部品、リアプロジェクションテレビ用のミラーなどの光学分野;バンパー、車両用灯具のカバーやリフレクタ、ボンネット、ドアトリムなどの車両用部材分野;などが挙げられ、特に灯具のリフレクタに好適である。
【0044】
<灯具のリフレクタ>
本発明の灯具のリフレクタは、上記の樹脂組成物を成形して得られるものである。成形方法は、従来公知の成形方法に従えば良く、射出成形、プレス成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、多層ブロー成形、コネクションブロー成形、二重壁ブロー成形、延伸ブロー成形、真空成形、回転成形などが挙げられる。成形精度からは、射出成形、プレス成形が好ましい。成形時の樹脂の溶融温度は脂環構造含有重合体の種類によっても異なるが、通常200〜400℃、好ましくは250〜350℃である。リフレクタの形状は特に限定されず、例えば、車両用灯具のリフレクタに用いる場合、適用する車両に併せて適宜設計することができる。通常、上記の樹脂組成物を成形して得られたリフレクタ形状の成形物の一面に反射膜層を形成してリフレクタとして使用される。
【0045】
<反射膜層の形成>
上記のリフレクタ形状の成形体の一面に、アルミニウム、ニッケル、金等の反射率の高い金属を用いて反射膜層を形成する場合、その方法は特に限定されず公知の方法に従えば良く、例えば、通常の蒸着法、すなわち真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等が挙げられる。
【0046】
反射膜を成膜する時の条件は特に限定されないが、例えば、アルミニウムを真空蒸着し反射膜を形成する場合は、以下の条件が好ましい。すなわち、真空度は0.1〜1,000Pa、好ましくは1〜100Paの範囲であり、この範囲にある時、キメが細かく接着力に優れたアルミニウム膜を蒸着することができる。成形品を加熱しながら製膜しても良く、成形品の表面温度を常温〜100℃の範囲で成膜すると接着力が高まり好ましい。反射膜の厚みは、5〜10,000nm、好ましくは10〜2,000nmであり、膜厚が過度に薄すぎると反射率が低過ぎ、リフレクタとして十分な反射率が得られず、また過度に厚すぎても反射率が上がらず、成膜時間が長くなり生産性が低下する。膜厚が上記の範囲にある時、高い生産性で高反射率の反射膜が得られ、好ましい。
【0047】
上記の樹脂組成物を成形して得られたリフレクタ形状の成形物と上述した反射膜との密着性を向上させるために、リフレクタ表面を改質処理及び/又はプライマー処理を施しても良い。表面改質処理の例としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理などのエネルギー線照射処理や重クロム酸カリウム溶液等の酸化剤水溶液と接触させる薬品処理が挙げられる。
【0048】
必要に応じて、上記の樹脂組成物を成形して得られたリフレクタ形状の成形物及び反射膜にキズ、汚れが付かないように保護層を設けても良い。保護層形成の方法は特に限定されない。例えば、紫外線硬化型樹脂、又は熱硬化型樹脂を、スピンコート、スプレー塗装、ディッピング、フローコーティング等の方法で成形品表面に塗布後、硬化する方法が挙げられる。
【0049】
また、本発明の灯具のリフレクタは、表面平滑性、軽量性及び耐熱性に優れると同時に、成形性が良く薄肉で複雑な形状も可能であることから、民生用又は工業用の照明灯具や車両用灯具などに好適である。
本発明において、「車両」とは、二輪自動車、三輪自動車、四輪自動車その他の自動車、鉄道車両、フォークリフトその他の産業用車両等々、広義の車両を意味する。車両用に限らず、外灯、室内照明、携帯電灯、レーザー照明などの一般に使われる灯具中に使用されるリフレクタとしても使用することが可能である。中でも、より耐熱性が要求される車両用灯具に特に好ましく用いられる。
【0050】
また、「車両用灯具」とは、こうした各種車両に装着された照明用もしくは識別用、標識用の灯具を意味し、特に限定はされないが、前照灯(ヘッドランプ)、尾灯(テールランプ)、制動灯(ストップランプ)、方向指示灯(いわゆるウインカー)、車幅灯、後退灯などが該当する。
【0051】
本発明において、リフレクタとは、ランプユニットの光源からの光を集光又は拡散して所望の配光特性を得るための主リフレクタに限らず、エクステンションリフレクタ、及びこれらに接続又は連結される部材(たとえばスリーブやレンズホルダなど)をも含む概念で用いる。
【0052】
本発明において、「エクステンションリフレクタ」とは、車両用灯具のボディとカバー(又はアウタレンズ)とで形成される灯室内の、ランプの周囲に設けられ、少なくとも一主面に鏡面処理が施される、灯具の一構成部品であって、灯具を外部から観察したときに灯室内全体を鏡面色に見せて見栄えを向上させる目的、及び/又は、一のランプから隣接するランプ側へ漏洩する光を遮断して各ランプによる表示の視認性を高める目的で使用されるものである。自動車用灯具のエクステンションリフレクタとしては、前照灯や尾灯に多用することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、部又は%は、特に断りがない限り、重量基準である。
【0054】
各種物性の測定法は次のとおりである。
(1)融点はISO11357―3に基づいて測定した。
(2)水素添加率は、H−NMRにより測定した。
(3)ガラス転移温度は、JIS K 7121に基づき、示差走査熱量分析計(DSC6220S11、ナノテクロノジー社製)を用い、ガラス転移温度より30℃以上に加熱した後、冷却速度−10℃/分で室温まで冷却し、その後、昇温速度10℃/分で昇温する過程で測定した。
(4)軟化点は、JIS K 2207(環球式)に基づいて測定した。
(5)比重は、アルミニウム蒸着を実施していない成形板を、ASTM D 792に基づいて測定した。
(6)外観観察は、アルミニウム蒸着を実施していない成形板の、ひけ、反り、シルバー、ヤケ及び着色の有無を目視で観察し、これらの不良の無い物を「○」、不良の発生したものを「×」と判断した。
(7)表面平滑性は、アルミニウム蒸着を実施した試験片の、超深度形状測定顕微鏡:VK−8500(キーエンス社製)を用いて測定された最大高さRmax値が5μm未満のものを「○」、5μm以上のものを「×」と判断した。
(8)耐熱外観変化は、アルミニウム蒸着を実施した試験片を、水平な板上に置き、150℃及び155℃のギヤーオーブン中で72時間加熱保持した後、試験片の外観変化について試験し耐熱性を評価した。外観変化は、試験温度150℃及び155℃において、耐熱性試験前に比べて蒸着膜の外観に変化の無かったものを「◎」、150℃においては外観変化がなく、155℃において鏡面に曇りがみられたものを「○」、150℃において鏡面の曇り、形状の変化、反射不良、膜フクレ、変色などの生じたものを「×」とした。
【0055】
[参考例1]
シクロヘキサン258リットルを装入した反応容器に、常温、窒素気流下でビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(以下、「NB」という)(120kg)を加え、5分間撹拌を行った。さらにトリイソブチルアルミニウムを系内の濃度が1.0ml/リットルとなるように添加した。続いて、撹拌しながら常圧でエチレンを流通させ系内をエチレン雰囲気とした。オートクレーブの内温を70℃に保ち、エチレンにて内圧がゲージ圧で6kg/cmとなるように加圧した。10分間撹拌した後、予め用意したイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリド及びメチルアルモキサンを含むトルエン溶液0.4リットルを系内に添加することによって、エチレン、NBの共重合反応を開始させた。このときの触媒濃度は、全系に対してイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドが0.018mmol/リットルであり、メチルアルモキサンが8.0mmol/リットルである。
【0056】
重合中、系内にエチレンを連続的に供給することにより、温度を70℃、内圧をゲージ圧で6kg/cmに保持した。60分後、イソプロピルアルコールを添加することにより、重合反応を停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、その後、水1mに対し濃塩酸5リットルを添加した水溶液と1:1の割合で強撹拌下に接触させ、触媒残渣を水相へ移行させた。この接触混合液を静置したのち、水相を分離除去し、さらに水洗を2回行い、重合液相を精製分離した。
【0057】
次いで精製分離された重合液を3倍量のアセトンと強撹拌下で接触させ、共重合体を析出させた後、固体部(共重合体)を濾過により採取し、アセトンで十分洗浄した。さらに、ポリマー中に存在する未反応のモノマーを抽出するため、この固体部を40kg/mとなるようにアセトン中に投入した後、60℃で2時間の条件で抽出操作を行った。抽出処理後、固体部を濾過により採取し、窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥し、エチレン・NB共重合体(A)を得た。
【0058】
以上のようにして、得られたエチレン・NB共重合体(非晶性脂環構造含有重合体A)のTgは137℃であり、NB単位含量は51モル%であった。
【0059】
[参考例2]
参考例1のNBをテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(TCD)に変えた以外は、参考例1と同様に重合反応を行なった。得られたエチレン・TCD共重合体(非晶性脂環構造含有重合体B)のTgは144℃であり、TCD単位含量は32モル%であった。
【0060】
[参考例3]
参考例1のNBをテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(TCD)に変え、エチレンにて内圧がゲージ圧で5kg/cmとなるた以外は、参考例1と同様に重合反応を行なった。得られたエチレン・TCD共重合体(非晶性脂環構造含有重合体C)のTgは151℃であり、TCD単位含量は35モル%であった。
【0061】
[参考例4]
<開環重合>
窒素で置換した反応器に、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(以下、「MTF」という)とトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(以下、「DCP」という)とテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下、「TCD」という)(重量比50/10/40)の混合物7部(重合に使用するモノマー全量に対して1%)とシクロヘキサン1600部を加え、トリ−i−ブチルアルミニウム0.57部とイソブチルアルコール0.21部、反応調整剤としてジイソプロピルエーテル0.85部、及び分子量調節剤として1−ヘキセン4.86部を添加した。ここに、シクロヘキサンに溶解させた0.65%の六塩化タングステン溶液24.3部を添加して、55℃で10分間攪拌した。次いで、反応系を55℃に保持しながら、MTFとDCPとTCD(重量比50/10/40)の混合物を693部とシクロヘキサンに溶解させた0.65%の六塩化タングステン溶液48.9部とをそれぞれ系内に150分かけて連続的に滴下した。その後、30分間反応を継続し重合を終了した。
重合終了後、ガスクロマトグラフィーにより測定したモノマーの重合転化率は重合終了時で100%であった。
<水素添加>
得られた開環重合反応液を耐圧性の水素化反応器に移送し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名「T8400RL」、ニッケル担持率57%)1.4部及びシクロヘキサン167部を加え、180℃、水素圧4.6MPaで6時間反応させた。この反応溶液を、ラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製、製品名「フンダフィルター」)して水素化触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。次いで、ゼータープラスフィルター30H(キュノーフィルター社製、孔径0.5〜1μm)にて順次濾過しさらに別の金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した。開環重合体水素添加物の水素転化率は99.9%であった。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、開環重合体水素添加物(非晶性脂環構造含有重合体D)を得た。Tgは154℃であった。
尚、開環重合体合成時の重合転化率が100%であり、水素転化率も99.9%と高水準であることから、開環重合体水素添加物中の、MTF由来の構造単位(MTF単位)、DCP由来の構造単位(DCP単位)、及びTCD由来の構造単位(TCD単位)は、開環重合体の製造に用いたモノマーの使用量に等しいと推定される。
【0062】
[実施例1]
(A)成分としてポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製;ノバデュラン5008)30重量部、(B)成分として参考例1で作製した非晶性脂環構造含有重合体A70重量部、(C)成分としてロジン変性フェノール樹脂(荒川化学社製;タマノル414)5重量部、酸化防止剤(チバガイギー社製;イルガノックス1010、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)0.1重量部を2軸混練機で混練して、ペレット化した。このペレットを、片面を鏡面加工した厚さ0.5mm×長さ200mm×幅100mmの金型を用いて、樹脂温度280℃、型温度120℃で射出成形し成形板を得た。さらに、成形板の鏡面側に真空蒸着法で厚さ400nmのアルミ反射膜を形成し、試験片を作成した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0063】
[実施例2]
(B)成分として参考例2で作製した非晶性脂環構造含有重合体Bを用いた以外は実施例1と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0064】
[実施例3]
(B)成分として参考例3で作製した非晶性脂環構造含有重合体Cを用いた以外は実施例1と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0065】
[実施例4]
(B)成分として参考例4で作製した非晶性脂環構造含有重合体Dを用いた以外は実施例1と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0066】
[実施例5]
(A)成分を15重量部、(B)成分を85重量部とした以外は実施例4と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0067】
[実施例6]
(A)成分を45重量部、(B)成分を55重量部とした以外は実施例4と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0068】
[実施例7]
(C)成分を2重量部とした以外は実施例4と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0069】
[実施例8]
(A)成分をナイロン(旭化成ケミカルズ社製;レオナ1500)とした以外は実施例4と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0070】
[実施例9]
(C)成分を20重量部とした以外は実施例8と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0071】
[実施例10]
(A)成分を45重量部、(B)成分を55重量部、(C)成分を芳香族系石油樹脂(新日本石油社製;ネオポリマー170S)10重量部とした以外は実施例8と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0072】
[実施例11]
(C)成分をロジン変性フェノール樹脂(荒川化学社製;タマノル412)10重量部とした以外は実施例8と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0073】
[実施例12]
(A)成分をポリエチレンテレフタレート(三菱化学社製;ノバペックスGS400)、(C)成分を10重量部とした以外は実施例5と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0074】
[比較例1]
(A)成分を5重量部、(B)成分を95重量部とした以外は実施例4と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0075】
[比較例2]
(A)成分を60重量部、(B)成分を40重量部とした以外は実施例4と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
外観観察においては、成形体にひけが見られた。
【0076】
[比較例3]
(C)成分を0.5重量部とした以外は実施例8と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0077】
[比較例4]
(C)成分を25重量部とした以外は実施例4と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
外観観察においては、成形体にシルバー不良が見られた。
【0078】
[比較例5]
(C)成分をロジン変性フェノール樹脂(荒川化学社製;タマノル135)とした以外は実施例4と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0079】
[比較例6]
(C)成分を配合せず、変わりに熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ社製;タフテックH1051)を2重量部配合した以外は実施例12と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0080】
[比較例7]
(A)成分をポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製;プライムポリプロE185G)とした以外は実施例4と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0081】
[比較例8]
(C)成分を配合せず、変わりに熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ社製;タフテックH1051)を2重量部、無機充填剤としてタルク(日本タルク社製;MICRO ACE L−1)を10重量部配合したとした以外は比較例7と同様にして、成形板及び試験片を作製した。
成形板の比重及び外観観察、試験片の表面平滑性及び耐熱外観変化の試験を行った、結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
この結果から、以下のことがわかる。
(A)結晶性重合体の配合比率が低い場合には耐熱性が低く(比較例1)、配合比率が高い場合には表面平滑性及び外観に劣り、比重も大きい(比較例2)。
(C)高軟化点樹脂の配合比率が低い場合には表面平滑性及び耐熱性が劣り(比較例3)、高い場合には成形体の外観不良が起こる(比較例4)。
(C)高軟化点樹脂の軟化点が低い場合には、耐熱性に劣る(比較例5)
(C)成分に熱可塑性エラストマーを用いた場合には、表面平滑性及び耐熱性が劣り(比較例6)
(A)成分に融点の低いポリプロピレンを用いた場合には、いずれも耐熱性が劣る(比較例7〜8)。
本発明の樹脂組成物を用いた成形体は、耐熱性が高く、表面平滑性が優れる(実施例1〜12)。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)200℃以上の融点を有する結晶性重合体、(B)非晶性脂環構造含有重合体、並びに(C)軟化点150℃以上の石油樹脂および軟化点150℃以上のフェノール樹脂からなる群より選ばれる高軟化点樹脂を含有し、前記結晶性重合体と前記非晶性脂環構造含有重合体との重量比が10/90〜50/50であり、かつ、前記結晶性重合体と前記非晶性脂環構造含有重合体の合計量100重量部に対して、前記高軟化点樹脂1〜20重量部含有する樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂組成物からなる灯具のリフレクタ。

【公開番号】特開2011−63687(P2011−63687A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214545(P2009−214545)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】